JP2009074868A - ニッケル基合金部品の寿命推定方法 - Google Patents

ニッケル基合金部品の寿命推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多結晶のニッケル基合金からなるニッケル基合金部品について高精度に寿命を推定することができるニッケル基合金部品の寿命推定方法を提供する。
【解決手段】多結晶ニッケル基合金から形成されたニッケル基合金部品1の寿命推定方法であって、ニッケル基合金部品1の各部位における使用時の使用温度の推定値と応力の推定値とに基づいて、相対的に損傷の度合いが大きい最損傷部位Wを特定する第1工程と、最損傷部位Wについて1または複数の手法により破断までの破断時間を求める第2工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ニッケル基合金部品の寿命推定方法に関するものである。
ニッケル基合金は、高温下における強度と耐クリープ性に優れ、ガスタービン、ジェットエンジン、化学プラント等に使用されている。このような性質を有するニッケル基合金であっても、高温・高応力に曝される使用環境下では、経年劣化による疲労破壊やクリープ破壊等が生じる。従って、このような高温・高応力下で使用されるニッケル基合金部品の余寿命を正確且つ定量的に予測することは、ニッケル基合金部品の検査や交換等の時期を計画する上で非常に重要である。
例えば下記特許文献1には、クリープ試験終了後のニッケル基合金試料から、(1)γ´相(析出物)の円相当直径の平均値とラーソン・ミラー・パラメータとの関係、(2)ラーソン・ミラー・パラメータとラフト化比率(γ´相の応力負荷を受ける方向のアスペクト比と無負荷のアスペクト比の比)との関係を予め求めておき、使用時間が既知の寿命推定対象におけるγ´相の円相当直径及び(1)の関係からラーソン・ミラー・パラメータを求め、このラーソン・ミラー・パラメータ、寿命推定対象を測定して求めたラフト化比率及び(2)の関係に基づいてクリープ破断寿命比(使用時間/未使用状態からの破断時間)を推定する技術が開示されている。
特開平8−297079号公報
ところで、例えば論文「三浦信祐、他2名、“多結晶Ni基超合金,IN−100,のクリープ変形により形成されるγ´相のラフト構造”、鉄と鋼、社団法人日本鉄鋼協会、2004年8月1日、Vol.90、No.8、p.567−573」に記載されているように、多結晶ニッケル基合金の結晶方位は各結晶粒によって異なり、またγ´相のラフト化は結晶粒の結晶方位によって異なる。
従って、上記従来技術は、単結晶ニッケル基合金には適用できるものの、多結晶ニッケル基合金には適用することができない。すなわち、多結晶ニッケル基合金では各結晶粒の結晶方位が異なるので、上記従来技術のように各結晶粒の結晶方位の違いを考慮しないで一律に測定した応力負荷面と応力負荷無し面の長径及び短径に基づいてラフト化比率を求める手法は、多結晶ニッケル基合金に適用した場合に大きな誤差を含むものとなる。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、多結晶ニッケル基合金からなるニッケル基合金部品について迅速かつ高精度に寿命を推定することができるニッケル基合金部品の寿命推定方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、第1の解決手段として、多結晶ニッケル基合金から形成されたニッケル基合金部品の寿命推定方法であって、前記ニッケル基合金部品の各部位における使用時の使用温度の推定値と応力の推定値とに基づいて、相対的に損傷の度合いが大きい最損傷部位を特定する第1工程と、前記最損傷部位について1または複数の手法により破断までの破断時間を求める第2工程とを有する、という手段を採用する。
また、本発明は、第2の解決手段として、上記第1の解決手段における前記第1工程が、前記ニッケル基合金部品の使用時の応力軸方向に垂直な断面において前記使用温度の推定値が最も高い垂直断面最損傷部位を特定する第1A工程と、前記垂直断面最損傷部位の応力軸方向に位置する前記各部位のうち、前記使用温度の推定値と、前記応力の推定値と、前記ニッケル基合金部品の使用開始から経過した使用時間と、前記ニッケル基合金部品の同等部品について予め取得されたクリープマスターカーブとに基づいて、前記最損傷部位を特定する第1B工程と、からなるという手段を採用する。
また、本発明は、第3の解決手段として、上記第1又は第2の解決手段における前記ニッケル基合金部品が前記ニッケル基合金からなる基材の表面に金属コーティング層が形成されたものである場合、前記第1工程では、前記ニッケル基合金部品と同等な複数の試料について、前記ニッケル基合金部品の使用によって前記基材に形成される拡散層の厚さ(拡散層厚)とラーソン・ミラー・パラメータとの関係をそれぞれ求める第1C工程と、各試料に関する前記関係に基づいて拡散層厚とラーソン・ミラー・パラメータとの関係を示す第1の近似式を求める第1D工程と、前記第1の近似式とラーソン・ミラー・パラメータの定義式との第1の連立方程式に、前記各部位における拡散層厚の測定値と、前記使用時間とを代入する第1E工程と、から前記使用温度の推定値を求める、という手段を採用する。
また、本発明は、第4の解決手段として、上記第3の解決手段における前記第2工程では、前記第1C工程から第1E工程によって求められた前記使用温度の推定値を、前記クリープマスターカーブに当てはめることにより前記最損傷部位の破断時間を求める、という手段を採用する。
また、本発明は、第5の解決手段として、上記第1から4のうちいずれかの解決手段における前記第2工程が、異なる試験温度でクリープ試験を行った前記ニッケル基合金部品と同等な複数の試料について、前記試料の応力軸に直交する直交面における複数の結晶粒の結晶方位と結晶粒の結晶格子面に沿って析出した複数の析出物の厚さとをそれぞれ計測すると共にラーソン・ミラー・パラメータを求める第2A工程と、前記結晶粒の結晶方位と析出物の厚さとに基づいて析出物の真の厚さ(析出物厚)を求める第2B工程と、前記複数の試料のラーソン・ミラー・パラメータと、前記結晶方位と前記応力軸とのなす負荷角度の余弦値との関係の直線性が良好な領域における特定の前記負荷角度の前記析出物厚と、に基づいて第2の近似式を求める第2C工程と、前記第2の近似式とラーソン・ミラー・パラメータの定義式との第2の連立方程式に、前記最損傷部位から得られる前記特定の負荷角度と同一の負荷角度における析出物厚と、前記ニッケル基合金部品の使用開始から経過した使用時間と、を代入することにより前記最損傷部位における使用温度の推定値を求める第2D工程と、このようにして求めた前記最損傷部位の使用温度の推定値を、前記クリープマスターカーブに当てはめることにより前記最損傷部位における破断時間を求める第2E工程と、に基づいて前記最損傷部位の破断時間を求める、という手段を採用する。
また、本発明は、第6の解決手段として、上記第1から5の解決手段における前記第2工程では、前記最損傷部位から作成した試料に対してクリープ試験を行って破断時間を求める、という手段を採用する。
また、本発明は、第7の解決手段として、上記第1から6の解決手段における前記ニッケル基合金部品がガスタービンの動翼または静翼である、という手段を採用する。
本発明によれば、ニッケル基合金部品の各部位のうち相対的に損傷の度合いが大きい最損傷部位を特定し、最損傷部位について1または複数の手法により破断時間(寿命)の推定を行うので、最損傷部位以外の部位における破断時間を推定する必要が無く、クリープ破壊の生じる可能性が最も高い部位に集中して1または複数の手法で寿命の推定を行うことができ、迅速且つ高精度に寿命を推定することが可能となる。
また、前記第1工程は、垂直断面最損傷部位の応力軸方向に位置する各部位のうち、使用温度の推定値と、応力の推定値と、ニッケル基合金部品の使用開始から経過した使用時間と、前記ニッケル基合金部品の同等部品について予め取得されたクリープマスターカーブとに基づいて最損傷部位を特定するので、最損傷部位を迅速に特定することができ、より迅速且つ高精度にニッケル基合金部品の寿命の推定を行うことができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、ガスタービンにおける圧縮機やタービンの構成部品となる動翼(ガスタービン動翼)を寿命推定対象とする。
図1は、使用開始から所定時間が経過したガスタービン動翼1を示す図であり、図2は、使用開始から所定時間が経過したガスタービン動翼1の要部断面図である。ガスタービン動翼1は、図1に示すように翼型断面を有する棒状部品であり、タービン軸(回転軸)に放射状に取り付けられて使用される。また、ガスタービン動翼1は、図2に示すように、多結晶ニッケル基合金からなる基材1a上に拡散層1b、コーティング層1c及び酸化膜層1dが形成されている。ガスタービン動翼1はタービン回転軸に放射状に取り付けられて使用に供されるので、応力軸Lは、図示するようにガスタービン動翼1の長さ方向となる。
本来(使用開始前)のガスタービン動翼1は、基材1aの表面にアルミニウム(Al)からなるコーティング層1cが形成されたものであるが、高温環境下での使用によってコーティング層1cのアルミニウムが基材1a内に拡散することによって拡散層1bが形成されると共に、酸化によってコーティング層1cの表面に酸化膜層1dが形成される。
本実施形態は、ガスタービン動翼1の全体を評価対象とするのではなく、ガスタービン動翼1についてクリープ損傷が最も激しい部位(最損傷部位)を最初に特定し、当該最損傷部位について寿命の推定を行うものである。
より具体的には、ガスタービン動翼1に作用する遠心力Fの方向(応力軸Lの方向)に垂直な断面Srにおけるガスタービン動翼1の表面(翼状表面)の使用時における温度分布(使用温度の分布)を推定し、この断面Srにおいて使用温度が最も高い部位を垂直断面最損傷部位Bとして特定する。すなわち、断面Srは応力軸Lに垂直なので、断面Srにおけるガスタービン動翼1の表面の各部位には同一の応力が作用すると考えることができ、よって上記表面の各部位のうち使用温度が最も高い部位Bは、断面Srにおいてクリープ損傷が最も激しい部位(垂直断面最損傷部位B)とみなすことができる。
次に、垂直断面最損傷部位Bの応力軸方向におけるガスタービン動翼1の表面についての使用温度の分布と使用時応力の分布とをそれぞれ推定する。すなわち、遠心力Fの方向に垂直な各断面におけるガスタービン動翼1の表面の使用温度の分布の状態はほぼ同様のものとなるので、垂直断面最損傷部位Bの遠心力方向に位置する各部位が各断面において最も使用温度が高い部位であるとみなすことができる。また、上述の通り各断面において生じる応力はその断面において同一と考えられるから、垂直断面最損傷部位Bの遠心力Fの方向に位置する各部位が各断面においてクリープ損傷が最も激しい部位であるとみなすことができる。従って、この垂直断面最損傷部位Bの遠心力方向に位置する各部位の中で最もクリープ損傷が激しい部位が最損傷部位Wとなる。
そして、垂直断面最損傷部位Bの遠心力方向に位置する各部位における使用時応力(推定値)から、予めガスタービン動翼1と同等の試料から取得したクリープ破断データを参照してラーション・ミラー・パラメータPを求めて、このラーション・ミラー・パラメータPと、垂直断面最損傷部位Bの遠心力方向に位置する各部位における使用温度(推定値)とを下記ラーソン・ミラー・パラメータ定義式(1)に代入することにより各破断時間を算出し、この破断時間が最も短い部位をガスタービン動翼1の全体において損傷が最も激しい部位W(最損傷部位)と特定する。そして、本実施形態では、この最損傷部位Wのみについて破断時間(余寿命)の推定を行う。
まず、上述のように、初めにガスタービン動翼1に作用する遠心力方向に垂直な断面Srの温度分布を求める。本実施形態においては、基材1a上に形成される拡散層1bの厚さd(拡散層厚)から断面Srの温度分布を求める。
具体的には、以下に説明するように、ラーソン・ミラー・パラメータPの定義式(1)と、使用開始前のガスタービン動翼1と同等な複数の試料に関する熱時効試験(熱処理)の試験結果から同定されたラーソン・ミラー・パラメータPと拡散層1bの厚さd(拡散層厚)との近似式(2)と、P=Pとして上記定義式(1)と近似式(2)とを連立させて得られる関係式(3)に基づいてガスタービン動翼1の使用温度Tの推定値を求め、この使用温度Tの推定値をガスタービン動翼1の使用温度と初期破断時間とに相当する関係(クリープマスターカーブ)に当てはめることにより破断時間(寿命)を推定するものである。なお、各変数の添字Eは、試料に関するものを意味するが、関係式(3)においてはガスタービン動翼1の拡散層厚dを代入するので、dをdとしている。
P=T・(C+logt) (1)
=(d−β)/α (2)
T=(d−β)/{α(C+logt)} (3)
ラーソン・ミラー・パラメータは、周知のように、金属部品のクリープ破壊における温度と時間との関係を示すパラメータとして、上記定義式(1)で表される。この定義式(1)において、Tは使用温度(絶対温度)、tは使用時間、Cは材料固有の材料定数である。
また、近似式(2)におけるα,βは、上記試料に関する実験結果に基づいて同定される定数である。本実施形態では、以下に説明するように、定数α,βをより正確に同定するために、実際に使用された複数のガスタービン動翼1から取得した拡散層厚dの分布範囲に該当する熱時効試験(熱処理)の試験結果に限定して材料定数Cを最適化する。
上記熱時効試験(熱処理)では、上記複数の試料について試験温度Tと試験時間tを変えた熱時効試験(熱処理)を行う。試験温度Tは、大まかに把握されるガスタービン動翼1の実際の使用温度範囲内及びその近傍における複数温度、例えば4つの試験温度T1,T2,T3,T4が設定され、一方、試験時間tについては、ガスタービン動翼1の実際の使用時間範囲内における複数の時間、例えば3つの試験時間t1,t2,t3が設定される。すなわち、熱時効試験(熱処理)では、各試料について4つの試験温度T1,T2,T3,T4と3つの試験時間t1,t2,t3とが設定される。
そして、上記定義式(1)における使用温度Tに試験温度T1,T2,T3,T4をそれぞれ代入すると共に使用時間tに試験時間t1,t2,t3をそれぞれ代入することにより、各試料に関するラーソン・ミラー・パラメータPを求める。ラーソン・ミラー・パラメータPの算出に際しては、別途クリープ試験等で材料定数Cを算出してこの値を設定する。
続いて、上記各試料を研磨して内部を露出させ、顕微鏡を用い拡散層厚dを計測する。この拡散層厚dは、顕微鏡から出力される試料の画像について画像処理装置を用いて画像処理することによって、あるいは検査員が試料の画像を目視することによって計測される。なお、顕微鏡は拡散層厚dを計測するのに適切な分解能を有していればよく、例えば光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いることができる。
図3は、このようにして求められた各試料のラーソン・ミラー・パラメータPと拡散層厚dとの関係を示す点(計測点)を片対数グラフ上に示した図である。この図では、試料毎に異なる表記方法で計測点を示している。本実施形態では、このような各試料に関する計測点の全てに例えば最小二乗法を適用することにより、全ての試料に関するラーソン・ミラー・パラメータPと拡散層厚dとの関係を示す特性直線を求める。このようにして各試料に関する熱時効試験(熱処理)の試験結果から得られた特性直線は、上述した近似式(2)において定数α、βが同定されたものである。
ここで、図3に破線で示すように、同一温度における試料の計測点は良好な直線性を示す。つまり各温度については近似性の高い特性直線を求めることができるが、全ての温度の計測点を1本の特性直線を求めるための要素とした場合には、異なる温度域が含まれるので、近似性の高い1本の特性直線を求めることは困難である。
本実施形態では、このような事情を回避して、より近似性の高い特性直線N、つまり近似式(2)を求めるために、上記と同様に顕微鏡を用いて実際に使用された複数のガスタービン動翼1から拡散層厚dの分布範囲Hを予め取得し、各試料に関するラーソン・ミラー・パラメータPを求める際に、分布範囲Hに該当する試料の熱時効試験(熱処理)の試験結果(計測点)のみに限定して材料定数Cを最適化する。すなわち、近似式(2)の近似性が最も高くなるように、図3に示すように各試料に関する計測点を分布範囲H内に狭く限定し、この上で各試料に関するラーソン・ミラー・パラメータPを求める際の材料定数Cを最適化する。なお、関係式(3)における材料定数Cも上記最適化したものを用いる。
図4は、このような材料定数Cを最適化処理前の各試料のラーソン・ミラー・パラメータPと拡散層厚dとの関係を示す計測点を片対数グラフ上に示した図である。この図4に示すように、材料定数Cについて最適化処理を行わない場合、各試料の計測点に関する特性直線は、分布範囲H内において比較的乖離しており、各試料の全計測点から求められる1本の特性直線は近似性が低いものとなる。
本実施形態では、近似式(2)を特定することによって得られた近似性の高い関係式(3)に、ガスタービン動翼1に作用する遠心力方向に垂直な断面Srにおける各周縁の拡散層厚dを上記と同様に顕微鏡観察により求め、この拡散層厚dを関係式(3)に代入することにより、断面Srにおけるガスタービン動翼1の表面(翼状表面)の使用時における温度分布(使用温度Tの分布)を求める。
例えば、図1において、断面Srの縁に沿って拡散層厚dを計測していき、この計測された拡散層厚dを順次関係式(3)に代入して、断面Srにおけるガスタービン動翼1の表面(翼状表面)の使用時における温度分布(使用温度Tの分布)を推定し、この断面Srにおいて使用温度が最も高い部位を垂直断面最損傷部位Bとして特定する。
次に、垂直断面最損傷部位Bを特定した後に、ガスタービン動翼1の垂直断面最損傷部位Bを含む垂直断面最損傷部位Bの遠心力方向の各部位における使用温度Tの推定値と応力σの推定値を求める。図1においては、遠心力方向に沿う全ての部位のうち部位B11〜B14を例示として示すが、遠心力方向に沿う全ての部位について使用温度Tを推定して構わない。ここで、使用温度Tの推定値については、断面Srの場合と同様に拡散層厚dと近似式(3)から、応力σについては、その部位に生じる遠心力F及びその部位から遠心力方向側端面までの棒の自重並びに断面Srの断面積に基づいて求めている。なお、遠心力方向に垂直な各断面の断面積は一定としている。
図5は、上記ガスタービン動翼1と同等な動翼にクリープ試験を行って得られたクリープマスターカーブを示しており、試料に負荷した応力σとラーソン・ミラー・パラメータPとの関係に相当する特性直線を示している。なお、このクリープマスターカーブのラーソン・ミラー・パラメータPは、未使用状態から破断までの使用時間t(初期破断時間)と使用温度Tとから求めている。
この図5に示すクリープマスターカーブに、上記のようにして求めた各部位における応力σの推定値を当てはめることにより、各部位におけるラーソン・ミラー・パラメータPを求め、この各ラーソン・ミラー・パラメータPと各部位の使用温度Tとラーソン・ミラー・パラメータの定義式(1)より未使用状態からの初期破断時間を求める。さらに、初期破断時間から使用時間tを減算することにより、各部位の破断までの破断時間(余寿命)を算出する。そして、各部位の中で破断時間(余寿命)が最も短い部位を最損傷部位Wとして特定する。
例えば関係式(3)により、ある部位B11における応力σの推定値σ11が求まれば、クリープマスターカーブにより、応力σ11に対応するラーソン・ミラー・パラメータP11を求めることができる。このラーソン・ミラー・パラメータP11と、部位B11における使用温度Tの推定値と、ラーソン・ミラー・パラメータの定義式(1)に代入することにより、部位B11における初期破断時間を求めることができ、この初期破断時間の推定値から使用時間を減算することにより、破断時間(余寿命)を推定することができる。
上記のように最損傷部位Wを特定した後、拡散層1bからの寿命推定手法、析出物評価からの寿命推定手法、クリープ試験からの寿命推定手法のうちいずれかを行う。但し、破断時間(余寿命)の推定結果は、拡散層1bからの寿命推定手法、析出物評価からの寿命推定手法、クリープ試験に基づく寿命推定手法の順に早く求めることができるが、逆にその結果の信頼性は順に低いものとなっている。そのため、ガスタービン動翼1の作動環境や効率、使用時間等によっていずれかの上記寿命推定手法が適宜選択されて破断時間(余寿命)が求められる。
図6は、上記ガスタービン動翼1と同等な動翼にクリープ試験を行って得られたクリープマスターカーブを示しており、上記ガスタービン動翼1の未使用状態から破断までの使用時間t(初期破断時間)と使用温度Tとの関係に相当する特性曲線を示している。
以下、各寿命推定手法について説明する。
まず、初めに拡散層1bからの寿命推定手法について説明する。
拡散層1bからの寿命推定手法は、上記のように求めた最損傷部位Wにおける拡散層厚dを測定値から求めた使用温度Tの推定値をクリープマスターカーブに当てはめることによってガスタービン動翼1の未使用状態から破断までの使用時間t(初期破断時間)の推定値を求める。そして、ガスタービン動翼1の使用開始から現在までの使用時間tを上記初期破断時間の推定値から減算することによりガスタービン動翼1の破断時間(余寿命)を求める。例えば関係式(3)により、最損傷部位Wの使用温度Tが求まると、クリープマスターカーブにより使用温度Tにおける初期破断時間tの推定値が求められる。そして、この初期破断時間tの推定値からガスタービン動翼1の使用時間tを減算すれば、最損傷部位Wの破断時間(余寿命)tが推定される。
続いて、析出物評価からの寿命推定手法について説明する。
図7は、使用開始から所定時間が経過したガスタービン動翼1の上記応力軸Lと直行する断面Srにおける結晶粒と結晶方位の関係を示す測定結果である。この図7に示すように、ガスタービン動翼1の応力軸Lに直交する断面Srには、多数の結晶粒Gが分布している。また、これら結晶粒Gは、図示する立方体が示すように互いに異なる結晶方位を有している。
なお、ガスタービン動翼1は、使用開始から時間が経過するに従って、未使用時には立方体状であった結晶粒内の析出物(γ´相)が板状となって、結晶粒の結晶格子面に沿って粗大化することが知られている。
以下に説明するように、ラーソン・ミラー・パラメータPの定義式(1)と、使用開始前のガスタービン動翼1と同等な複数の試料に関するクリープ試験の試験結果から同定されたラーソン・ミラー・パラメータPと析出物の真の厚さ(析出物厚D)との近似式(4)と、P=Pとして上記定義式(1)と近似式(4)とを連立させて得られる関係式(5)に基づいてガスタービン動翼1の使用温度Tの推定値を求め、この使用温度Tの推定値をガスタービン動翼1の使用温度Tと初期破断時間との関係を示す特性図(図6に示すクリープマスターカーブ)に当てはめることにより破断時間(余寿命)を推定するものである。
P=T・(C+logt) (1)
=(D−β)/α (4)
T=(D−β)/{α(C+logt)} (5)
また、本実施形態では、上記近似式(4)を求めるに際して、その近似性を高めるために、各々の結晶粒の結晶方位を考慮することによって、正確な析出物厚Dを求めると共に、析出物厚Dと結晶方位の関係から定数α,βをより正確に同定する。なお、各変数の添字Eは、上記と同様に試料に関するものを意味するが、関係式(5)においてはガスタービン動翼1の析出物厚Dを代入するので、DをDと表記している。
上記クリープ試験では、上記複数の試料について、同一の引張(負荷)応力σについて異なる試験温度Tが設定される。試験温度Tは、ガスタービン動翼1の実際の使用温度範囲内における複数温度、例えば3つの試験温度T4,T5,T6が設定され、一方、引張応力については、例えばガスタービン動翼1に作用する実際の負荷応力、例えばガスタービン動翼1に加わる遠心力Fを断面Srの断面積で除した値が設定される。
そして、上記定義式(1)における使用温度Tに試験温度T4,T5,T6(T4<T5<T6)をそれぞれ代入すると共に、使用時間tに各試料の試験時間t4,t5,t6(t4<t5<t6)をそれぞれ代入することにより、各試料に関するラーソン・ミラー・パラメータPを求める。
図8は、上記試料における析出物の測定厚Mと析出物厚Dとの関係を示す模式図であり、符号Gは結晶粒を、またEは析出物をそれぞれ示している。上述したように各試料についてラーソン・ミラー・パラメータPを求めて、各試料に作用する応力の応力軸Lに直交する断面Sを露出させて、走査型電子顕微鏡を用いることにより当該断面Sの各析出物Eについて測定厚Mをそれぞれ測定すると共に、走査型電子顕微鏡にEBSP(Electron Back Scattering Pattern)検出器を接続することにより上記断面Sの各結晶粒Gについて結晶方位DI(結晶格子面Sの法線方向)をそれぞれ測定する。
図9は、上記図8における結晶粒Gの結晶方位DI(結晶格子面Sの法線方向)と応力軸Lとのなす角度θ(負荷角度)を示す模式図である。
各結晶粒Gの断面Sは、応力軸Lに直交する面であるが、結晶粒Gの結晶方位DIは、応力軸Lに関係なく個々の方向となる。すなわち、負荷角度θは、結晶粒G毎に異なった値となる。従って、各結晶粒Gについて得られた測定厚Mに同じく各結晶粒Gについて得られた負荷角度θの余弦値cosθ(負荷角余弦値)を乗算することにより、各結晶粒Gについて結晶方位DIの方向における析出物Eの真の厚さ(析出物厚D)を求める。
以上の処理によって、試料毎にラーソン・ミラー・パラメータPが求められると共に、各試料の断面Sにおける複数の結晶粒Gについて結晶方位DIが求められ、また複数の結晶粒Gの結晶格子面Sに沿って各々粗大化する複数の析出物Eについて析出物厚Dが求められる。
図10は、上記負荷角余弦値cosθと析出物厚Dの関係を示したグラフである。
図10(a)は、試験温度T5、試験時間t4でクリープ試験を行った場合の関係であり、負荷角余弦値cosθが大きい結晶粒Gほど析出物厚Dが直線状に大きくなっている。一方、図10(b)は、試験温度T5、試験時間t6でクリープ試験を行った場合の関係であり、負荷角余弦値cosθが略0.8以上の領域では直線性が崩れている。
この直線性の崩れは、負荷角度θが0°に近いので、結晶格子面Sの受ける負荷応力が引張応力の大きさに近く比較的に大きいことと、長時間の試験によって析出物Eの崩壊が始まったためであると推測される。なお、試験温度T6、試験時間t4の場合についても、負荷角余弦値cosθが1近傍においては直線性が崩れる傾向が認められる。
一方、図11は、負荷角余弦値cosθが0.8の場合と1.0の場合とについて、各試料のラーソン・ミラー・パラメータPと析出物厚Dとの関係を示す点(計測点)を片対数グラフ上に示した特性図である。この図において、白丸は負荷角余弦値cosθが1.0の場合の計測点を示し、黒丸は負荷角余弦値cosθが0.8の場合を示し、また曲線状の破線は白丸の計測点に最小二乗法を適用することにより求めた近似曲線を、直線状の実線は黒丸の計測点に最小二乗法を適用することにより求めた近似直線を示している。
上記近似曲線は、負荷角余弦値cosθが1.0の場合には、ラーソン・ミラー・パラメータPと析出物厚Dとの関係が直線近似することができないと共にその近似性が低いことを示し、また上記近似直線は、負荷角余弦値cosθが0.8の場合には、ラーソン・ミラー・パラメータPと析出物厚Dとの関係を直線近似することができると共にその近似性が高いことを示している。
このような図10及び図11の特性を総合的に解釈すると、ラーソン・ミラー・パラメータPと析出物厚Dとの関係を高精度に直線近似する、つまり上述した近似性の高い近似式(4)を求める(定数α、βを高精度に同定する)ためには、負荷角余弦値cosθと析出物厚Dとの関係が直線近似することが可能な負荷角余弦値cosθの領域、つまり負荷角余弦値cosθが1.0近傍の領域を除外した領域において近似式(4)を求める必要がある。
すなわち、本実施形態では、負荷角余弦値cosθの値として、図10(b)において直線性が良好な負荷角余弦値cosθが0.8以下の領域の析出物厚Dをのうち最も大きな値(例えば0.8)を限定的に採用することにより、近似式(4)の定数α、βを高精度に同定する。
そして、P=Pとして、上記のようにして求めた近似式(4)とラーソン・ミラー・パラメータPの定義式(1)とを連立させて得られる関係式(5)に、ガスタービン動翼1の使用時間t及び上記のように限定的に採用した負荷角度θ(例えば、cosθ=0.8)と同一の負荷角度となる最損傷部位Wにおける析出物の析出物厚Dを代入することにより、最損傷部位Wにおける使用温度Tの推定値を求める。このガスタービン動翼1の最損傷部位Wにおける析出物の析出物厚Dは、垂直な断面(例えば断面Sr)を露出させて、負荷角度θと同一の負荷角度となる結晶粒Gから直接的に求められる析出物厚Dを用いてもよいし、図10のように各結晶粒Gから析出物厚Dと負荷角度の余弦値との関係を求めて、この関係から負荷角度θと同一の負荷角度となる析出物厚Dを求め、これを用いてもよい。
そして、図6に示すクリープマスターカーブに上記使用温度Tの推定値を当てはめることにより、ガスタービン動翼1の未使用状態から破断までの使用時間t(初期破断時間)を求め、この初期破断時間tからガスタービン動翼1の使用開始から現在までの使用時間tを減算することにより最損傷部位Wの破断時間(余寿命)を求める。
続いて、クリープ試験の寿命推定手法について説明する。
クリープ試験の寿命評価では、ガスタービン動翼1の最損傷部位Wから複数の試料を作成して、拡散層厚dより推定された使用温度T及び計算で求められた応力σ、あるいはこの使用温度T及び応力σに近い値の試験温度及び試験応力でクリープ試験を行い、残りの破断時間を特定する。
このような本実施形態によれば、損傷が激しくクリープ破壊が生じる可能性が最も高いと思われる最損傷部位Wを特定して、最損傷部位Wに対して集中的に破断時間(余寿命)を推定するので、他の部位の破断時間(余寿命)を推定しなくてもよく、迅速且つ高精度に寿命の推定を行うことができる。
また、計測された拡散層厚dを近似式(2)に代入して求めた使用温度Tの推定値に基づいて垂直断面最損傷部位Bと特定し、垂直断面最損傷部位Bを含んで遠心力方向に平行に沿った各部位のうち、計算で求められた応力σと使用温度Tの推定値とに基づいて、最損傷部位Wを特定するので、最損傷部位Wの特定を迅速且つ高精度に特定することができる。
また、本実施形態の拡散層1bからの寿命推定手法によれば、近似式(2)、つまりラーソン・ミラー・パラメータPと拡散層厚dとの関係が複数の試料に関する熱時効試験(熱処理)の試験結果から高精度に特定されるので、関係式(3)と拡散層厚dとに基づいてガスタービン動翼1の各部位の使用温度Tをより迅速且つ精度良く推定することが可能である。よって当該使用温度Tの推定値に基づいてガスタービン動翼1の破断時間(余寿命)を高精度に推定することができる。
また、本実施形態の析出物評価からの寿命推定手法よれば、近似式(4)、つまりラーソン・ミラー・パラメータPと析出物(γ´相)の析出物厚Dとの関係が、複数の試料に関するクリープ試験の試験結果から高精度に特定される。すなわち、応力軸Lと直交する断面Sにおける結晶粒Gの析出物Eについて測定された測定厚Mを結晶格子面が接する結晶粒Gの結晶方位DIから求められた負荷角余弦値cosθを用いて析出物厚D(析出物Eの真の厚さ)を求め、当該析出物厚Dに基づいて近似式(4)を求めるので、使用温度Tの推定値を精度良く求めることが可能であり、よって破断時間(余寿命)の推定値を精度良く求めることができる。
また、本実施形態の析出物評価からの寿命推定手法よれば、負荷角余弦値cosθと析出物厚Dとの関係の直線性が良好な負荷角余弦値cosθの領域の析出物厚Dのみに限定して近似式(4)を特定するので、使用温度Tの推定値をさらに精度良く求めることが可能であり、よって破断時間(余寿命)の推定値をさらに精度良く求めることができる。
また、本実施形態のクリープ試験の寿命推定手法によれば、最損傷部位Wと特定して行うので試料を少なくすることができると共に、信頼性が最も高い余寿命を求めることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下の変形例が考えられる。
(1)上記最損傷部位Wの寿命評価は、上記3つのうちいずれか一つでなく、複数を組み合わせて用いてもよい。例えば、コーティングからの寿命推定手法により、迅速な寿命推定結果を得て、この結果に基づいてガスタービンを稼動させつつクリープ試験による寿命推定手法を行って信頼性の高い結果を求めてもよい。
(2)上記実施形態では、断面Srにおける最も高い温度の垂直断面最損傷部位Bを求め、垂直断面最損傷部位Bの応力軸方向の各部位における使用温度及び応力を求めたが、これは必須の構成要件ではなく、最損傷部位Wを合理的かつ迅速に特定するためにこのような構成にしたものであるから、その近傍の部位についての破断時間tから最損傷部位Wを特定してもよい。
また、最損傷部位Wは単数のものだけではなく、損傷度が同様の場合は複数となる場合もあり得る。
(3)上記実施形態では、拡散層厚dから使用温度を推定したが、例えばFEM解析を行ってガスタービン動翼1の各部位の使用温度を求めてもよい。また、応力分布についてもFEM解析の結果を用いてよい。この場合は、アルミニウム合金がコーティングされていないニッケル基合金部品についても本発明を適用することができる。
(4)上記実施形態では、ラーソン・ミラー・パラメータPの算出に際して、別途クリープ試験等で材料定数Cを算出してこの値を設定したが、一般的に用いられる「20」に設定してもよい。
本発明の一実施形態において、使用開始からある程度時間が経過したガスタービン動翼1を示す図である。 本発明の一実施形態において、使用開始からある程度時間が経過したガスタービン動翼1の内部状態を示す要部断面図である。 本発明の一実施形態において、材料定数Cを調整した後の各試料のラーソン・ミラー・パラメータPと拡散層厚dの関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態において、材料定数Cを調整する前の各試料のラーソン・ミラー・パラメータPと拡散層厚dとの関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態において、ガスタービン動翼1の応力σとラーソン・ミラー・パラメータPとの関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態において、ガスタービン動翼1の未使用状態から破断までの使用時間t(初期破断時間)と使用温度Tとの関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態において、ガスタービン動翼1の応力軸Lとの直行面における結晶粒界と結晶方位の関係を示す概念図である。 本発明の一実施形態において、析出物の測定厚Mと析出物厚Dの関係を示す図である。 本発明の一実施形態において、結晶方位DIと応力軸Lの為す負荷角度θを示す図である。 本発明の一実施形態において、負荷角余弦値cosθと析出物厚Dの関係の一例を示した図である。 本発明の一実施形態において、負荷角余弦値cosθが0.8の場合と1.0の場合とについて、各試料のラーソン・ミラー・パラメータPと析出物厚Dとの関係を示す図である。
符号の説明
1…ガスタービン動翼(ニッケル基合金部品)
1a…基材
1b…拡散層
B1…垂直断面最損傷部位
G,G…結晶粒
…析出物
…所定面
…結晶格子面
L,L…応力軸
D,D…析出物厚
DI…結晶方位
d,d…拡散層厚
W…最損傷部位

Claims (7)

  1. 多結晶ニッケル基合金から形成されたニッケル基合金部品の寿命推定方法であって、
    前記ニッケル基合金部品の各部位における使用時の使用温度の推定値と応力の推定値とに基づいて、相対的に損傷の度合いが大きい最損傷部位を特定する第1工程と、
    前記最損傷部位について1または複数の手法により破断までの破断時間を求める第2工程と、
    を有することを特徴とするニッケル基合金部品の寿命推定方法。
  2. 前記第1工程は、
    前記ニッケル基合金部品の使用時の応力軸方向に垂直な断面において前記使用温度の推定値が最も高い垂直断面最損傷部位を特定する第1A工程と、
    前記垂直断面最損傷部位の応力軸方向に位置する前記各部位のうち、前記使用温度の推定値と、前記応力の推定値と、前記ニッケル基合金部品の使用開始から経過した使用時間と、前記ニッケル基合金部品の同等部品について予め取得されたクリープマスターカーブとに基づいて、前記最損傷部位を特定する第1B工程と、
    からなることを特徴とする請求項1に記載のニッケル基合金部品の寿命推定方法。
  3. 前記ニッケル基合金部品が前記ニッケル基合金からなる基材の表面に金属コーティング層が形成されたものである場合、
    前記第1工程では、
    前記ニッケル基合金部品と同等な複数の試料について、前記ニッケル基合金部品の使用によって前記基材に形成される拡散層の厚さ(拡散層厚)とラーソン・ミラー・パラメータとの関係をそれぞれ求める第1C工程と、
    各試料に関する前記関係に基づいて拡散層厚とラーソン・ミラー・パラメータとの関係を示す第1の近似式を求める第1D工程と、
    前記第1の近似式とラーソン・ミラー・パラメータの定義式との第1の連立方程式に、前記各部位における拡散層厚の測定値と、前記使用時間とを代入する第1E工程と、
    から前記使用温度の推定値を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル基合金部品の寿命推定方法。
  4. 前記第2工程では、前記第1C工程から第1E工程によって求められた前記使用温度の推定値を、前記クリープマスターカーブに当てはめることにより前記最損傷部位の破断時間を求めることを特徴とする請求項3に記載のニッケル基合金部品の寿命推定方法。
  5. 前記第2工程は、異なる試験温度でクリープ試験を行った前記ニッケル基合金部品と同等な複数の試料について、前記試料の応力軸に直交する直交面における複数の結晶粒の結晶方位と結晶粒の結晶格子面に沿って析出した複数の析出物の厚さとをそれぞれ計測すると共にラーソン・ミラー・パラメータを求める第2A工程と、
    前記結晶粒の結晶方位と析出物の厚さとに基づいて析出物の真の厚さ(析出物厚)を求める第2B工程と、
    前記複数の試料のラーソン・ミラー・パラメータと、前記結晶方位と前記応力軸とのなす負荷角度の余弦値との関係の直線性が良好な領域における特定の前記負荷角度の前記析出物厚と、に基づいて第2の近似式を求める第2C工程と、
    前記第2の近似式とラーソン・ミラー・パラメータの定義式との第2の連立方程式に、前記最損傷部位から得られる前記特定の負荷角度と同一の負荷角度における析出物厚と、前記ニッケル基合金部品の使用開始から経過した使用時間と、を代入することにより前記最損傷部位における使用温度の推定値を求める第2D工程と、
    このようにして求めた前記最損傷部位の使用温度の推定値を、前記クリープマスターカーブに当てはめることにより前記最損傷部位における破断時間を求める第2E工程と、
    に基づいて前記最損傷部位の破断時間を求めることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載のニッケル基合金部品の寿命推定方法。
  6. 前記第2工程では、前記最損傷部位から作成した試料に対してクリープ試験を行って破断時間を求めることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載のニッケル基合金部品の寿命推定方法。
  7. 前記ニッケル基合金部品は、ガスタービンの動翼または静翼であることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載のニッケル基合金部品の寿命推定方法。
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