JPH07288965A - 揺動型アクチュエータ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 不作動時におけるアームのロック作用が確実
であると共に、可動コイルのデータゾーンにおける作動
を円滑に行い得る、安価なアームロック用スペースの小
さい揺動型アクチュエータを提供する。 【構成】 支柱を介して対向して設けた一対の平板状ヨ
ークの一方の内面に、厚さ方向に着磁した平板状永久磁
石を固着し、この永久磁石と他方のヨ−クとの間で磁気
空隙を形成するハウジングと、一端に可動コイルを他端
に機能部材を各々固着して軸回転自在としたアームを備
え、前記磁気空隙内に前記可動コイルを配置して作動可
能とし、不作動時にアームをロックする機構として、永
久磁石の後方端部近傍に突出部を設け、この突出部の先
端面に磁性片を設け、一方可動コイル側には前記突出部
に磁気吸着する磁性片を設けたことを特徴とする揺動型
アクチュエータ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば磁気ディスク用
アクチュエータのような揺動型アクチュエータ、すなわ
ち磁気ヘッドのような機能部材が円弧軌跡を描いて揺動
するように構成されたアクチュエータに関するものであ
り、特に不作動時におけるロック作用が確実であるよう
に改良された揺動型アクチュエータに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】図５は従来の揺動型アクチュエータの例
を示す要部説明図であり、図５（ａ）は一部破砕した平
面図、図５（ｂ）は図５（ａ）におけるＡ方向矢視図を
示す。図５において、１は上下一対のヨークであり、例
えば軟鉄のような強磁性材料によって平板状に形成され
る。前記一対のヨークは端部において支柱２によって接
合されハウジングを形成する。下側のヨーク１の表面に
は永久磁石３を固着し、永久磁石３と上部ヨーク１との
間に磁気空隙４を形成する。

【０００３】５はアームであり、一端に偏平型の可動コ
イル６を、他端に磁気ヘッドのような機能部材（図示せ
ず）を各々固着し、可動コイル６が前記永久磁石３によ
って形成される磁気空隙４内に位置するように、軸７を
介して回動若しくは揺動自在に配設する。

【０００４】上記の構成により可動コイル６に信号電流
を通電すると、フレミングの左手の法則に従って、可動
コイル６に軸７回りの駆動力が作用し、アーム５を回動
若しくは揺動させ、アーム５の他端に設けた機能部材、
例えば磁気ヘッドを、磁気ディスク上の所定の記録トラ
ックに位置決めすることができる。なお揺動方向の切り
替えは、可動コイル６への通電電流の向きを反転させる
ことによって行う。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記のアクチュエータ
が不作動時においては、アームをロックしておく必要が
あり、従来から機械的ロック機構を備えたものがある。
しかしながらこれらの機械的ロックをするための余剰の
部材を装着する必要があるため高価となると共に、寿命
および信頼性の点で満足できない場合が多い。このため
駆動用の永久磁石の一部を利用し、若しくは係止用永久
磁石を別個に設けることにより、可動コイルに設けた強
磁性材料からなる磁性片との間に磁気的吸引力を作用さ
せて磁気力によってロックさせる手段が提案されている
（例えば特公昭６３−４８１１０号公報参照）。

【０００６】上記の磁気的吸引力、すなわち保持力は、
可動コイルがラッチゾーン（退避ゾーン）に位置したと
きが大であり（例えば７ｇ・ｃｍ以上）、データゾーン
においては可動コイルの作動を円滑にするために小であ
ること（例えば１．５ｇ・ｃｍ以下）が要求される。し
かしながら上記従来のものでは、このような要求を満足
させることができないという問題点がある。すなわち保
持力を大に形成すると、アクチュエータの不作動時にお
けるアームのロック作用が確実であるという利点がある
ものの、可動コイルのデータゾーンにおける作動に支障
を来すこととなり、一方保持力を低減させると、可動コ
イルのデータゾーンにおける作動が容易になるが、アー
ムのロック作用が不確実となり、相反作用がある。

【０００７】更に、最近の２．５インチ以下の小型ハー
ドディスクドライブ（以下ＨＤＤと記す）の揺動型アク
チュエータにおいては、３．５インチ以上のＨＤＤ用揺
動型アクチュエータで採用されてきたアームのロック機
構に係わる従来技術をそのまま踏襲できないという問題
がある。これは２．５インチ以下の小型ＨＤＤの場合、
３．５インチ以上のＨＤＤに比較してアームロック装置
用スペースが十分に確保できないことによる。

【０００８】本発明は、上記従来技術に存在する問題点
を解決し、特に２．５インチ以下の小型ＨＤＤ用揺動型
アクチュエータにおいても利用でき、不作動時における
アームのロック作用が確実であると共に、可動コイルの
データゾーンにおける作動を円滑に行い得る、安価なア
ームロック用スペースの小さい揺動型アクチュエータを
提供することを目的とするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、支柱を介して対向して設けた一対の平板状ヨークの
一方の内面に、厚さ方向に着磁した平板状永久磁石を固
着し、この永久磁石と他方のヨ−クとの間で磁気空隙を
形成するハウジングと、一端に可動コイルを他端に機能
部材を各々固着して軸回転自在としたアームを備え、前
記磁気空隙内に前記可動コイルを配置して作動可能と
し、不作動時にアームをロックする機構として、永久磁
石の後方端部近傍に突出部を設け、この突出部の先端面
に磁性片を設け、一方可動コイル側には前記突出部に磁
気吸着する磁性片（以降、永久磁石に設けた磁性片と区
別するため係止片と称する）を設ける、という技術的手
段を採用した。

【００１０】本発明において、構成部材としての永久磁
石はその厚さ寸法が制限されるため動作点が高くとれな
いので、保磁力の大なる希土類系のものを使用すること
が好ましい。更に近年のものにおいては一層の薄型化お
よび高性能化が要求されるため、磁気空隙内に高い磁束
密度を確保する点で、Ｒ−Ｆｅ−Ｂ系（Ｒ：Ｙ、Ｎｄ等
の希土類元素の１種以上）の永久磁石を使用することが
より好ましい。

【００１１】次に本発明におけるアームは、非磁性材料
によって構成するのであるが、可動コイルを一体的に内
蔵させるために、熱可塑性樹脂材料等の有機重合体によ
って構成することが好ましい。このような熱可塑性樹脂
材料としては、例えばポリフェニレンサルファイド樹
脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹
脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエス
テル樹脂等の公知の樹脂（好ましくは耐熱性を有する樹
脂）を使用することができる。

【００１２】上記の樹脂の内では、縦弾性率（測定法：
ＡＳＴＭ Ｄ−６３８）が１０×１０⁴ｋｇ／ｃｍ²以上
（より好ましくは１３×１０⁴ｋｇ／ｃｍ²以上）のもの
が好ましい。特に熱可塑性樹脂として液晶ポリマー（溶
融状態で結晶性を示す）の一種である液晶性ポリエステ
ル樹脂（主鎖中に剛直鎖を有するポリエステル）を使用
すると好ましい。

【００１３】

【作用】上記の構成により、不作動時においてはロック
動作を行う側の永久磁石突出部に設けた強磁性体からな
る磁性片と、可動コイル側アームに設けた強磁性体から
なる係止片との間に作用する磁気的吸引力により、可動
コイルすなわちアームを確実に係止することができる。
また可動コイルの作動時においては、前記磁性片から係
止片が離れた位置を取るため、前記磁気的吸引力は作用
せず、可動コイルすなわちアームの揺動には全く影響し
ない。また、アームロック用スペースは小さくてすみ、
小型ＨＤＤに適用できる。

【００１４】

【実施例】図１は本発明の実施例における揺動型アクチ
ュエータの要部説明図で、アームがロックされた状態を
示す図、図２は磁気回路の要部を示す図で、図２（ａ）
は断面平面図、図２（ｂ）は図２（ａ）におけるＢ方向
要部矢視図であり、同一部分は前記図５と同一の参照符
号で示す。図２において、永久磁石３は、例えばＮｄ−
Ｆｅ−Ｂ系磁石材料によって略扇形に平板状に形成し、
厚さ方向に着磁し、図２（ａ）に図示するように、表面
にＮ、Ｓ磁極が現れるように構成する。このような永久
磁石３を製作する際、別々に準備した２個の永久磁石を
破線部分で接合して一体化しても良い。

【００１５】なお永久磁石３の支柱２側の一方の端部、
すなわちロック動作を行う端部にはブロック状の突出部
８を、一体又は永久磁石３と同一材料からなるブロック
片を接合組立構造で設け、この突出部８の先端面、すな
わち図２（ａ）において上側の端面に、例えば軟鉄のよ
うな強磁性材料により矩形平板状に形成した磁性片９
を、その長手方向がアーム揺動時可動コイルのえがく弧
に平行もしくはほぼ平行になるように設ける。この場
合、磁性片９は、突出部８の磁気的吸引力によって吸引
保持され得るが、接着剤を併用してもよい。

【００１６】次に磁気回路を組み立てる場合には、図２
（ａ）のようにして永久磁石３を固着した下側ヨーク
に、前記図５に示すような支柱２を固着し、更に上側ヨ
ーク１を装着し、止めねじ（図示せず）によって固着す
れば良い。

【００１７】次に図３は本発明の実施例におけるアーム
５を示す平面図であり、同一部分は前記図５と同一の参
照符号で示す。図３において７ａは前記図５における軸
７が挿通される孔である。１０は矩型形状をした強磁性
体からなる係止片であり、アーム５の可動コイル６側の
一方の側端部に、図１に示すように、その長手方向が前
記突出部８の先端に固着した磁性片９の長手方向と、吸
着した状態ではほぼ直角をなす部位に設ける。係止片１
０は例えば軟鉄のような強磁性材料によって形成し、ア
ーム５と一体に設けることが好ましい。この場合、アー
ム５は例えばガラス繊維入りのポリフェニレンサルファ
イド樹脂によって形成し、射出成形手段によれば、可動
コイル６および係止片１０と一体に成形され得る。

【００１８】上記構成の磁気回路とアームとを図５に示
すように組み立てれば、揺動型アクチュエータを構成す
ることができる。この揺動型アクチュエータについてア
ーム５の係止特性を評価した結果について記述する。

【００１９】図４はアーム角度とトルクとの関係を示す
図であり、ａは本発明の実施例のもの、ｂは係止片を設
置しないものを示す。図４において、アーム角度０°の
位置は、図３に示すアーム５の可動コイル６が、図２
（ａ）に示す永久磁石３のＳ極側端部に位置した場合を
示す。この位置においては、図１に示すように、アーム
５に固着された係止片１０は、永久磁石３の突起部８に
設けた磁性片９とほぼ直交している。従って係止片１０
は磁性片９の磁界中近傍にあって、磁性片９に吸引され
る結果、アーム５は係止されている。

【００２０】図４においてトルクとは図３に示すアーム
５が横軸に示すアーム角度の位置にあるときに、アーム
５を水平方向に揺動させるに必要なトルクを表してい
る。本実施例においてはアーム角度０°におけるトルク
が１０ｇ・ｃｍ強であり、アーム５の係止用として必要
とされる７ｇ・ｃｍを充分上回っているためアーム５を
充分に係止できる。そしてアーム５が揺動してラッチゾ
ーンとデータゾーンとの境界であるアーム角度１°を越
えて揺動した場合のデータゾーンにおいてはトルク値は
大幅に低下し、１ｇ・ｃｍ未満となる。従ってアーム５
は円滑に揺動することができ、係止片を設置しない場合
に比較してロック特性を著しく改善できるのである。

【００２１】本発明において、ロック動作を行う側の永
久磁石突出部に設けられた磁性片および当該磁性片に対
応する可動コイルの部位に設置した係止片の寸法は、適
用される揺動型アクチュエータを構成する永久磁石３の
形状および磁気特性と対応させて適宜に選定され得る。
例えばロック動作を行う側の永久磁石の突出部に設置さ
れる磁性片の高さ寸法は永久磁石の高さ寸法と同程度、
幅および厚み寸法は要求されるロック力によりそれぞれ
１〜１０ｍｍ、０．１〜１ｍｍに設定するのが好まし
い。また、永久磁石端面に対応する可動コイルの部位に
設置する係止片の寸法は、例えば高さ寸法がコイル厚み
寸法と同程度、幅および厚み寸法はそれぞれ永久磁石に
設ける磁性片とほぼ同等の寸法に設定することが好まし
い。

【００２２】本発明においては、ヨーク１、１を支柱２
を介して固着する手段として止めねじによる例について
記述したが、例えばリベット状のものを打ち込み、若し
くは圧入して締結するものであっても良い。

【００２３】

【発明の効果】本発明は以上記述のような構成および作
用であるから、２．５インチ以下の小型ＨＤＤにも利用
できるロック機構用スペースの小さい揺動型アクチュエ
ータであり、不作動時においては永久磁石のロック動作
を行う側の端面に設けた磁性片と当該磁性片に対応する
可動コイルの部位に設けた係止片との間に作用する磁気
的吸引力により、可動コイルすなわちアームを確実に係
止することができる。また可動コイルの作動時において
は、永久磁石端面の磁性片からアームの強磁性体係止片
が離れた位置を取るため、前記磁気的吸引力は作用せ
ず、可動コイルすなわちアームの揺動には全く影響せ
ず、アームを円滑に揺動させ得るという効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例におけるアームのロック状態を
示す図である。

【図２】本発明の実施例における磁気回路の要部を示す
図であり、（ａ）は一部断面平面図、（ｂ）は（ａ）に
おけるＢ方向矢視図である。

【図３】本発明の実施例におけるアームを示す平面図で
ある。

【図４】本発明の実施例及び比較例のものにおけるアー
ム角度とトルクとの関係を示す図である。

【図５】従来の揺動型アクチュエータの例を示す要部説
明図であり、（ａ）は一部破砕した平面、（ｂ）は
（ａ）におけるＡ方向矢視を示す。

【符号の説明】

２ 支柱 ３ 永久磁石 ８ 突出部 ９ 磁性片 １０ 係止片

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 支柱を介して対向して設けた一対の平板
   状ヨークの一方の内面に、厚さ方向に着磁した平板状永
   久磁石を固着し、この永久磁石と他方のヨ−クとの間で
   磁気空隙を形成するハウジングと、一端に可動コイルを
   他端に機能部材を各々固着して軸回転自在としたアーム
   を備え、前記磁気空隙内に前記可動コイルを配置して作
   動可能とし、不作動時にアームをロックする機構とし
   て、永久磁石の後方端部近傍に突出部を設け、この突出
   部の先端面に磁性片を設け、一方可動コイル側には前記
   突出部に磁気吸着する磁性片を設けたことを特徴とする
   揺動型アクチュエータ。