JPH0728551Y2 - 断熱板 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 考案の技術分野 本考案は、たとえば冷凍倉庫の壁を構築する際に用いら
れる断熱板に関する。

考案の技術的背景ならびにその問題点 冷凍倉庫などの壁には断熱のための壁材が張付けられて
いる。図で示せば第６図に示す如く、コンクリート壁等
から成る壁１の内側面２にたとえば押出法発泡ポリスチ
レン製のブロック３を３層に重ねた壁材４が張付けられ
ている。壁１と壁材４との間にはアスファルト塗布によ
る防湿層５が設けられている。また、ブロック３相互間
にはアスファルト塗布による接着層６が設けられ、各ブ
ロックを接着するようになっている。そして壁材４は断
熱ボルト７によって壁１に固定されている。なお、壁材
４の内側には庫内８の貨物との接触によって壁材４が損
傷しないように荷摺板９が配設されている。

上記ブロック３の素材である押出法発泡ポリスチレンは
物性が安定しており、また断熱性も良好なことからこの
種の断熱材としては好適なものである。

しかし、この発泡ポリスチレンは押出法で成形する関係
上、厚さが150mmを超えるブロック３は製造がきわめて
困難であり、工業的に一般的でない。

そこで、従来の壁材４にあっては、第６図に示す如く、
ブロック３を３層もしくはそれ以上の層にするなどし
て、断熱に必要な所要の厚さD₁を確保していた。しか
し、このように比較的薄手のブロック３を多層に組む
と、施工時間が長くなり、施工業が煩雑であると共に、
ブロック３相互間のすき間が多くなり、断熱性が低下す
る虞がある。

一方、断熱材としては押出法発泡ポリスチレンの他に発
泡ポリウレタンが知られている。この発泡ポリウレタン
は発泡ポリスチレンと比べるとコスト高ではあるが、断
熱性の点ではむしろ上回る性質を具備する。このような
発泡ポリウレタンは、フロンガスを使用して発泡させる
のが一般的であり、発泡の際に使用されたフロンガスは
発泡ポリウレタンの独立気泡内に残留する。フロンガス
は不活性であり、独立気泡内で流動することが少なく、
このようにフロンガスが残留している発泡ポリウレンタ
ンは、空気が充満している発泡ポリウレタンよりも優れ
た断熱性を示す。しかしながら、この発泡ポリウレタン
を長期間空気に晒すと、独立気泡内に残留しているフロ
ンガスが次第に空気と置換され、この発泡ポリウレタン
の断熱性能が劣化する傾向があり、結果として発泡ポリ
ウレタンを用いた構造体の断熱性が悪くなる傾向を生ず
る。

従って、断熱材として発泡ポリウレタンを使用する場合
には、発泡ポリウレタンと空気とが接触しないようにす
ることが望ましい。

冷凍倉庫等における断熱用壁材として、発泡ポリウレタ
ン材や発泡ポリスチレン板が多用されているが、こうし
た発泡樹脂板を使用する場合、発泡樹脂板の機械的損傷
を防止するために、発泡樹脂板表面にアルミニウム板等
の補強板を貼付して使用されることが多い。発泡ポリウ
レタン材の表面にアルミニウム板を貼付することによ
り、発泡ポリウレタンと空気との接触面積は低減され、
フロンガスが空気置換されることにより発泡ポリウレタ
ンの断熱性の低下はある程度抑制されるが、こうしたア
ルミニウム板等の貼付により断熱材自体が著しく重くな
り、発泡樹脂を単独で用いる場合のように手作業による
断熱壁の敷設が困難になる。また、アルミニウム板のよ
うな表面保護板は、熱伝導性物質であり、この表面保護
板によって断熱壁の断熱性能は向上することはなく、む
しろこうした表面保護板が外部と熱的に連結している場
合には、こうした表面保護板を貼付することによって断
熱性能が低下することもある。

考案の目的 本考案は上述した問題点を有効に解決すべく創案するに
至ったものであって、耐候性・寸法安定性に優れると共
に、断熱性をも飛躍的に向上し、しかも施工性にも優れ
た断熱板を提供することを目的としている。

考案の概要 この目的を達成するため、本考案の断熱材は、 押出法発泡ポリスチレンからなる２つの被覆層（14,1
4）と、割型（15,16）内に対置された該２つの押出法発
泡ポリスチレン被覆層（14,14）間に注入されて該押出
法発泡ポリスチレン被覆層（14,14）に接着するように
発泡成形された発泡ポリウレタン層（13）とからなるこ
とを特徴としている。

これにより、本考案では、断熱板を、ポリスチレン／ポ
リウレタン／ポリスチレンの順に、発泡ポリウレタン層
を中間にするようにして三層構造に形成している。しか
も、発泡ポリウレタン層は２枚の押出法発泡ポリスチレ
ン板の間に原料ウレタンを注入して発泡させることによ
り形成されているため、接着剤を用いることなく押出法
発泡ポリスチレン板の表面に接着積層されている。その
ため、発泡ポリウレタン層は、押出法発泡ポリスチレン
層により狭まれており、空気に晒されることがなく、品
質劣化、即ち発泡ポリウレタンが本質的に有している断
熱性の経時的低下がない。しかも接着剤を使用していな
いので接着面における劣化もない。また、発泡ポリウレ
タンは発泡ポリスチレンに比べて断熱性に優れている。
したがって、本考案では、耐候性にも優れ、断熱性にも
優れた断熱板を提供することができる。

さらに、予め形成された押出法発泡ポリスチレンは、型
内成型法発泡ポリスチレンおよび発泡ポリウレタンより
も成型品の寸法精度がよく、寸法安定性に優れている。
このような寸法精度のよい押出法発泡ポリスチレンを割
型に対設して、この間にウレタンを注入して発泡させる
ため、本考案の断熱板はウレタンの発泡倍率あるいは発
泡の際の圧力に拘わりなく一定の厚さを有している。す
なわち、本考案は、２つの押出法発泡ポリスチレン層が
外側に配置されていることから、寸法安定性にも優れた
断熱板を提供することができる。

さらに割型内に押出法発泡ポリスチレンを対置してこの
間隙にウレタンを注入して発泡させることで、発泡する
ポリウレタン自体が接着剤として作用するため、押出法
発泡ポリスチレンとポリウレタンとを接着剤を用いるこ
となく、積層し一体化することができる。しかも、割型
内に押出法発泡ポリスチレンを対置してこの間にウレタ
ンを注入して発泡させているので、本考案の断熱板は反
りが生じにくい。

また、機械的強度の高い押出法発泡ポリスチレンをポリ
ウレタン層の保護層として配置することで、従来の断熱
板のように、ポリウレタン層を保護するための金属板等
の保護材などを必要しないため、軽量であり、断熱板を
容易に施工することができる。

以上から、本考案では、耐候性・寸法安定性に優れると
共に、断熱性をも飛躍的に向上し、施工性にも優れた断
熱板を提供することができる。

考案の具体的説明 第１図は施工後の本考案の一実施例に係る断熱板の断面
図、 第２図は第１図に示す断熱板の製造方法を概念的に示す
断面図、 第３図は本考案の他の実施例に係る断熱板の斜視図、 第４図および第５図はそれぞれ本考案に係る断熱用壁材
のその他の実施例を示す断面図である。

第１図に示す如く、本考案に係る断熱板12は所要の厚み
D₂を有する一体形ブロックで構成されている。この断熱
板12は、予め押出法により成形された発泡ポリスチレン
から成る被覆層14,14と、この押出法発泡ポリスチレン
を割型内に対置させて、この２枚の押出法発泡ポリスチ
レンにより形成される間隙に原料ウレタンを注入して発
泡させることにより形成された発泡ポリウレタン層13と
から形成されている。

本実施例では、この断熱板12を使用した壁材は、両被覆
層14,14間に発泡ウレタン層13が形成された三層構造と
なっている。被覆層14を構成する予め押出法で成形され
た発泡ポリスチレン材は、型内成形法発泡ポリスチレン
よりも機械的強度が高く、さらにコスト的、性能的に好
ましく、従って本考案では被覆層14,14として押出法発
泡ポリスチレンが用いられる。

発泡ポリウレタン層13の厚みd₁は、両被覆層14,14間の
間隔を増減することにより任意に設定することが可能で
ある。一方、押出法発泡ポリスチレンからなる被覆層14
の厚みd₂は、押出法で発泡ポリスチレンで被覆層14を成
形する際の成形技術上の制約限界である100mm程度と
し、発泡ポリウレタン層13の断熱性と相俟って所望の断
熱性能を得るようにしている。

断熱板12はアスファルトなどの防湿層５を介して壁１の
内側面２に取付けられ、断熱ボルト７によって壁１に固
定されている。互いに隣接する断熱板12と断熱板12との
間にはアスファルトなどによる接着層６が設けられ、こ
の接着層６によって断熱板12相互が接着させるととも
に、庫内８における冷気の漏洩が阻止されるようになっ
ている。このような断熱板12の内側には従来と同様に荷
摺板９が配設されている。

なお、第１図に示す実施例では、断熱板12を壁１の内側
面２に一層だけ配設したが、本考案はこれに限らず、本
実施例に係る断熱板12を従来例のブロック３のように、
段違いに多層配設する（第６図参照）ようにしても良
い。このように多層配設する実施例の場合にも、断熱板
12の肉厚を自由に設定できるため、従来では断熱板用の
ブロック３を多数積層する必要があったのを、より少い
断熱板12の積層数で断熱壁を構築することが可能にな
り、施工作業が容易となる。

本考案の断熱板12は、第２図に示す割型15,16に押出法
発泡ポリスチレン被覆層14,14を対向配置させ、こうし
て配置した押出法発泡ポリスチレン14,14により成形さ
れる間隙に原料ウレタンを注入してこの間隙内でウレタ
ンを発泡させることにより形成される。さらに詳しく説
明すると、割型15,16の中にあらかじめ被覆層14として
の押出法発泡ポリスチレン材を対向配置しておき、その
後、割型15,16を閉じて、両被覆層14,14間の隙間内にウ
レタンを注入する。こうして注入されたウレタンをこの
間隙内で発泡させる。こうして割型15,16内に配置され
た押出法発泡ポリスチレン間に注入されて発泡させるこ
とにより、ポリウレタンは、被覆層である押出法発泡ポ
リスチレン14,14の表面に接着剤を用いることなく良好
に接着し、これによって一体型の三層断熱板12ができ上
る。こうして押出法発泡ポリスチレン14,14の間でウレ
タンを発泡させることにより、接着剤を使用することな
く、押出法発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタンおよび
押出法発泡ポリスチレンがこの順序で積層され、発泡ポ
リウレタンが押出法発泡ポリスチレンによって被覆さ
れ、発泡ポリウレタンと空気との接触が遮断される。

断熱板12の側端は第１図に示す如く直線状としてもよい
が、第３図に示すように四角形に二辺において発泡ウレ
タン層13を突出させ、他の二辺において発泡ポリウレタ
ン層13を凹ませるようにしたり、また第４図に示す如く
階段状にしたり、さらに第５図に示す如くコ字状の凹部
17を形成してもよい。このような複雑な形状を与えるこ
とにより、断熱板12相互のすき間からの冷気の漏洩をよ
り効果的に阻止できるとともに、断熱板12相互の連結も
より強固なものとなる。

なお、第４図および第５図に示す実施例では、断熱板12
の側端にも被覆層14を配してある。これにより発泡ポリ
ウレタン層13は施工前から完全密封状態とされ、発泡ポ
リウレタン層13の品質劣化を略完全に防止できる。また
第５図に示す実施例では、凹部17相互間にやとい実18を
嵌合し、このやとい実18によって、断熱板12のずれや浮
上りを防止するように断熱板12相互を連結するようにな
っている。やとい実18の材質としては、発泡ポリスチレ
ン、発泡塩化ビニル等が用いられる。なお、第４図およ
び第５図に示す如く庫内８側の押出法発泡ポリスチレン
被覆層14相互間にすき間19を設け、このすき間19にウレ
タンコーキング20を施しても良い。そうすれば、冷気の
漏洩防止がより効果的となる。

以上本考案の実施例につき説明したが、本考案は上記実
施例以外にも種々に変形可能である。たとえば、本考案
の断熱板は壁の外側に配設することも可能である。

考案の効果 以上説明してきたように、本考案によれば、発泡ポリウ
レタン層を中間にするようにして、押出法発泡ポリスチ
レン、発泡ポリウレタンおよび押出法発泡ポリスチレン
の三層がこの順序に積層された構造に成形しているた
め、ポリウレタン層が空気に晒されることがなく品質劣
化することがない。そのため、耐候性にも優れ、断熱性
にも優れている。さらに、割型に対置された二枚の押出
法発泡ポリスチレンの間にウレタンを注入して発泡させ
て発泡ポリウレタン層を形成しているので、押出法発泡
ポリスチレンの間隔を調整することにより、厚物の断熱
材を形成することができ、しかも発泡ポリウレタンを押
出法発泡ポリスチレンを割型内に配置してウレタンを発
泡させているので、厚手の断熱板であっても反りが生じ
ない。このように本考案の断熱板は厚いため、薄物の断
熱材を多数積層する必要がなく、従って本考案の断熱板
を用いることにより、例えば冷凍倉庫の断熱壁を容易に
構築することができる。

さらに、２つの押出法発泡ポリスチレン層が外側に配置
され、発泡ポリウレタン層が割型に配置された押出法発
泡ポリスチレンの間で発泡することにより形成されてい
るため、発泡ポリウレタンの発泡状態に拘わりなく寸法
安定性にも優れている。

また、押出法発泡ポリスチレンがポリウレタン層を保護
するため、金属板等の保護材などを必要とせず、本考案
の断熱板は軽量であり、断熱板を容易に施工することが
できる。

以上から、本考案では、耐候性・寸法性に優れると共
に、断熱性をも飛躍的に向上し、施工性にも優れた断熱
板を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は施工後の本考案の一実施例に係る断熱板の断面
図、 第２図は第１図に示す断熱板の製造方法を概念的に示す
断面図、 第３図は本考案の他の実施例に係る断熱板の斜視図、 第４図および第５図はそれぞれ本考案に係る断熱板のそ
の他の実施例を示す断面図、 第６図は従来の断熱板の断面図である。 １……壁、５……防湿層 ６……接着層、７……断熱ボルト ８……庫内、13……発泡ポリウレタン層 14……押出法発泡ポリスチレン被覆層

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】押出法発泡ポリスチレンからなる２つの被
   覆層と、割型内に対置された該２つの押出法発泡ポリス
   チレン被覆層間に注入されて該押出法発泡ポリスチレン
   被覆層と接着するように発泡成形された発泡ポリウレタ
   ン層とからなることを特徴とする断熱板。