JPH07284666A - 重質油の水素化処理用触媒及びそれを用いる重質油の水素化処理方法 - Google Patents

重質油の水素化処理用触媒及びそれを用いる重質油の水素化処理方法

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JPH07284666A
JPH07284666A JP6101739A JP10173994A JPH07284666A JP H07284666 A JPH07284666 A JP H07284666A JP 6101739 A JP6101739 A JP 6101739A JP 10173994 A JP10173994 A JP 10173994A JP H07284666 A JPH07284666 A JP H07284666A
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catalyst
hydrotreating
oil
coal
catalyst according
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JP6101739A
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English (en)
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Yasuo Obayashi
康男 大林
Yuji Noguchi
裕司 野口
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Idemitsu Kosan Co Ltd
Original Assignee
Idemitsu Kosan Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 柔らかくかつ可燃性の炭素質物質を担体とし
て用い、これに水素化活性を有する金属成分を分散性よ
く担持させ、重質油の水素化処理に用いた場合に摩耗が
少なく、十分な水素化活性を有し、さらに、未分解回収
油を、触媒を除去しないでもそのまま触媒と共に燃料と
して使用することができる水素化処理用触媒を提供す
る。この水素化処理用触媒を用いて重質油の各種水素化
処理を有利に行うための方法を提供する。 【構成】 炭素質物質に少なくとも周期表VIA族金属
の化合物及び/又は周期表VIII族の鉄族金属の化合
物を、水酸基及び/又はエーテル結合を有する水溶性有
機化合物(但し、酸は除く。)の存在下で担持してなる
重質油の水素化処理用触媒、ならびに、この水素化処理
用触媒の存在下で重質油を水素化処理する重質油の水素
化処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、重質油の水素化処理用
触媒に関し、より詳しく言うと、常圧残油、減圧残油、
オイルサンド油、石炭液化油等の重質油の水素化処理、
例えば水素化脱硫、水素化脱金属、水素化分解、水素化
脱窒素、単純水素化(水添)等に対して高活性を示し、
有用中間留分を収率よく得ることができる上に、スラッ
ジ、コークの副生が少なく、しかも、触媒担体が可燃性
の炭素質物質であるので、灰分の混入も少なく、未分解
回収油、すなわち、生成油から中間留分等を除去した残
油を、触媒を除去しないでもそのまま触媒と共に燃料と
して使用することができるなどの利点を有する実用上有
用な、重質油の水素化処理用触媒に関する。
【0002】本発明は、また、重質油の水素化処理方法
に関し、より詳しく言うと、上記各種の重質油の水素化
処理を、上記本発明の水素化処理用触媒を適用して有利
に行う方法に関する。
【0003】なお、本発明の水素化処理方法は、常圧残
油、減圧残油、オイルサンド油、石炭液化油等の、硫黄
分、重金属等の不純物やアスファルテン、残留炭素分の
多い重質油若しくは超重質油を、燃料油(灯油、軽油
等)やプロセス原料油等として好適な中間留分に富んだ
精製炭化水素油に転化し、これら燃料油あるいはプロセ
ス原料油等として好適な各種の精製された中間留分製品
と燃料油等としての性状が改善された精製重油(未分解
回収油)の製造分野に有利に適用される。また、潤滑油
等の水素化精製分野にも好適に適用される。
【0004】
【従来の技術】近年、地球環境保全及び資源の有効利用
の点から、また、炭化水素油の水素化処理、例えば水素
化脱硫、水素化脱金属、水素化分解、水素化脱窒素等の
重要性がますます増加している。それに伴い、こうした
水素化処理反応に対してより有効な高活性を示す触媒、
特に、硫黄分や重金属類等の多い重質な炭化水素油、例
えば常圧残油、減圧残油、オイルサンド油、石炭液化油
等の重質油若しくは超重質油に対して十分な活性を示
し、しかもスラッジやコークの副生が少なく、硫黄分、
重金属等が十分に低減された有用中間留分に富んだ精製
油を効率よく得ることができる性能のよい触媒の開発が
望まれている。
【0005】水素化処理用触媒としては、従来、対象と
する原料や反応等の目的に応じて、活性金属の種類・組
み合わせ、その担持率、担体の種類、添加成分の種類や
有無などについて多種多様な組成のものが使用若しくは
提案されている。中でも特に、重質油の脱硫、脱金属、
脱窒素、分解、水添などを行うための水素化処理用触媒
としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、アルミナ−ボ
リア、アルミナ−マグネシア、ゼオライト等の多孔性無
機酸化物系担体に、周期表VIA族金属(特に、Mo、
W)とVIII族の鉄族金属(Co、Ni、Fe)を酸
化物等の形態で担持した触媒(例えば、CoO・MoO
3/Al23、NiO・MoO3/Al23、NiO・W
3/Al23、NiO・CoO・MoO3/Al23
ど)が一般的であり、これらは、特に脱硫反応を伴う場
合など硫黄分含有炭化水素油を原料とする場合には、通
常、予備硫化処理し活性化した後に使用されている。
【0006】上記のような重質油特に超重質油の水素化
処理にあたっては、触媒を固定床として用いるとコーク
の析出により運転が難しいので、スラリー床(懸濁床)
によることが多い。ところが、スラリー床で上記のよう
なアルミナ担持触媒等の無機酸化物を担体とする触媒を
用いると、触媒が固いため、装置が摩耗しやすい;
その結果、触媒摩耗物等の微細な無機物(灰分)が生
じ、その分離除去が容易でないため、触媒粒子を除去し
たとしても蒸留後の未分解回収油(中間留分等を蒸留等
によって分離した残油)には灰分が多く残留し、その品
質を低下させる;といった問題点がある。未分解回収油
は劣質なため、自家燃料として使用することが多いが、
そのような灰分の多い未分解回収油を燃焼させるとボイ
ラーの管壁が無機物で汚れるという問題生じる。
【0007】このような問題を解決するには、触媒の担
体として柔らかく可燃性のものを用いることが有効と思
われる。
【0008】そこで、ポリマー、石炭等の有機系の担体
を用いることが考えられる。しかしながら、こうした有
機物系の担体に上記のような活性金属成分を常法に従っ
て担持すると、活性金属成分の分散度等の担持状態が悪
くなることが多く、担体によっては、従来の無機酸化物
担体系触媒のような十分な活性が得られなかったり、あ
るいは、活性や中間留分の収率が十分な場合にもヘプタ
ンに不溶なコークやスラッジ等の固形分の副生が多いな
ど、十分な触媒性能が得られないことが判明した。実
際、米国特許第4,214,977号明細書には、担体
として褐炭や瀝青炭を用い、これらに上記のような活性
金属類を担持した水素化処理用触媒が提案されている
が、該公報に記載の方法に従って同様の触媒を調製し、
重質油の水素化処理に対するその性能をテストしたとこ
ろ、上記同様に固形分の副生が多く、活性の点でも不十
分であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事情
に鑑みてなされたものである。
【0010】本発明の第一の目的は、前記摩耗や灰分の
混入の問題を解決すべく担体として比較的柔らかくしか
も可燃性の石炭類や木材等の炭素質物質を用い、これに
活性金属成分を十分な担持率まで分散性よく担持し性能
の良い触媒を得るための調製条件を明らかにし、重質油
の水素化処理に対して十分に高い活性を示し、有用中間
留分を収率よく得ることができる上に、固形分(コーク
やスラッジ等)の副生が少なく、しかも可燃性の担体を
用いていることから灰分の混入が著しく少なくなり、未
分解回収油を、触媒を除去しないでもそのまま触媒と共
にボイラー等の燃料として好適に使用することができる
などの利点を有する重質油の水素化処理用触媒を提供す
ることにある。
【0011】本発明は、また、上記の本発明の高活性水
素化処理用触媒を用いて、常圧残油、減圧残油、オイル
サンド油、石炭液化油等の重質油の各種水素化処理を有
利に行うための方法を提供することも目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、石炭等の
柔軟で可燃性の炭素質物質に活性金属成分を分散性よく
担持することができれば、前記目的を達成できると考
え、その担持条件等について種々の検討・実験を繰りか
えした。その結果、それらの活性金属の化合物を水溶液
等から担持する際に、その担持を水酸基及び/又はエー
テル結合を有する特定の水溶性有機化合物の存在下で行
うことによって、各種の石炭類、更には、木材、パル
プ、紙、植物繊維等のセルロース系有機物質等の種々の
炭素質物質に該活性金属成分を十分な担持率まで分散性
よく担持することができ、各種の重質油の水素化処理に
十分な性能を示す水素化処理用触媒を得ることに成功し
た。
【0013】また、こうして調製した本発明の水素化処
理用触媒を、実際にスラリー床等による各種重質油の水
素化処理に適用したところ、十分な水素化処理活性(水
素化脱硫、水素化脱金属、水素化分解等に対する活性)
と有用中間留分の収率が得られる上に、固形分(コーク
及びスラッジ等)の副生が十分に低減されることが確認
された。更に、柔軟で可燃性の炭素質物質を担体に用い
ていることから灰分の混入が著しく少なくなり、そし
て、反応後あえて触媒を除去せずに回収した未分解油を
その触媒と共にボイラーの燃料として用いたところ、ボ
イラーの管壁等への無機物の付着が無視できる程に低減
することも確認した。
【0014】本発明者らは、上記の知見に基づいて本発
明を完成するに至った。
【0015】すなわち、本発明は、炭素質物質に少なく
とも周期表VIA族金属の化合物及び/又は周期表VI
II族の鉄族金属の化合物を、水酸基及び/又はエーテ
ル結合を有する水溶性有機化合物(但し、酸は除く。)
の存在下で担持してなることを特徴とする重質油の水素
化処理用触媒を提供するものである。
【0016】また、本発明は、上記本発明の水素化処理
用触媒の適用例として、該水素化処理用触媒の存在下で
重質油を水素化処理することを特徴とする重質油の水素
化処理方法を併せて提供するものである。
【0017】A.水素化処理用触媒とその調製 本発明の水素化処理用触媒は、担体として炭素質物質を
用いて調製されるが、該炭素質物質としては、各種の石
炭、多種多様なセルロース系有機物質、石油系のコーク
等の各種コーク類、各種のポリマーなど、あるいは、こ
れらに化学的及び/又は物理的加工処理を施したもの、
グラファイト、活性炭、無定形炭素など様々なものを挙
げることができる。これらの中でも、触媒担体のコス
ト、触媒性能(水素化処理活性、有用中間留分の収率、
水素化処理後の残留固形分の低減効果等)、使用後の触
媒担体の燃焼容易性などを総合的に判断すると、石炭及
びセルロース系有機物質が好ましい。
【0018】ここで、該石炭としては、各種のものが使
用可能であり、例えば、無煙炭、半無煙炭、瀝青炭、亜
瀝青炭、褐炭、泥炭、草炭などが好適に使用され、中で
も特に、瀝青炭、亜瀝青炭及び褐炭が好ましい。なお、
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混
合物等として併用することもできる。
【0019】また、前記セルロース系有機物質として
は、例えば、木材、紙、パルプ、チップ、木質繊維、植
物繊維をはじめとする多種多様なものが使用可能であ
り、中でも特に、チップや紙などが好ましい。
【0020】ここで、木材は、針葉樹、広葉樹あるいは
草木類等の各種の原木の各種の部分(茎、枝、樹皮な
ど)から得られるものが使用可能であり、これらは、適
当なサイズ・形状に加工されたものであれば、生木状の
もの、枯木状のもの、あるいはこれらに例えば乾燥、湿
潤、温水若しくは熱水処理、スチーム処理、酸処理、塩
基処理、ハロゲン化処理、亜硫酸(塩)処理、アルカリ
金属塩水溶液、有機溶媒等による洗浄や抽出等の処理、
部分酸化処理、水素化処理、硫化処理、乾留等の種々の
化学的あるいは物理的処理を施したものなど適宜各種の
形態で使用することができる。もちろん、例えば合板等
に加工されたものや使用後の回収材、加工工程で副生す
る端材、オガクズや廃材等を利用してもよい。
【0021】また、紙やパルプについても同様であり、
各種の原料から得られる各種の形態のものが使用可能で
ある。紙について言えば、セルロース性繊維からなるも
のであれば洋紙、和紙、半合成紙、合成紙、複合紙など
どのようなものでもよく、例えば、通常の印刷用のも
の、包装用のもの、障子紙、壁紙等の建材用若しくは意
匠用のものあるいはトイレットペーパーやティッシュ類
等々いずれも使用可能である。また、経済性の点から、
適宜、古紙や再生紙、切断等によって副生したクズ紙な
どを使用してもよい。これらの各種の紙類の中でも、特
に、トイレットペーパーやティッシュ類等の担持液が滲
み込みやすいものが好適に使用される。パルプも溶解パ
ルプ、製紙用パルプのいずれも使用可能である。
【0022】前記木質繊維としては、各種の木や木材、
パルプ、紙等から得られるセルロース性の繊維若しくは
繊維束、布状のものなどを挙げることができる。
【0023】また、前記植物繊維としては、各種の植物
を原料とした天然繊維若しくはその加工品(糸や布でも
よい)が使用可能であり、例えば、木綿、カポック、パ
ンヤ等の種子毛繊維、コウゾ、ミツマタ、亜麻、黄麻等
のジン皮繊維、麻等の葉脈繊維、あるいは、ヤシ、麦わ
ら、ゼンマイ、藤ズル等のその他の系統のものなど各種
のものを挙げることができる。
【0024】なお、前記木材、紙、パルプ、チップ、木
質繊維、植物繊維等は、それぞれを単独で担体として使
用してもよいし、2種以上を混合物若しくは複合物等と
して併用することもできる。
【0025】ところで、前記石炭やセルロース系有機物
質等の炭素質物質は、少なくとも触媒調製時に活性金属
成分が担持しやすいように、適宜各種のサイズ若しくは
形状のものとして使用される。もちろん、その際、用い
る反応方式に適合するように、予め、所定のサイズ・形
状にして用いてもよい。
【0026】例えば、石炭について言えば、適当な粒度
に粉砕したり、その後篩別したものをそのまま用いても
よいし、あるいは、適宜、造粒や成形を施したものを用
いてもよい。スラリー床に使用する場合には、単に微粉
状に粉砕したものも好適となる。
【0027】また、セルロース系有機物質についても同
様であり、例えば、木材の場合には、オガクズ状、チッ
プ状など適当なサイズ・形状にして使用すればよい。
紙、パルプ、木質繊維、植物繊維等についても、適当な
サイズ・形状のチップ状に適宜切断したり、ほぐした
り、あるいは、成形、加工して使用すればよい。
【0028】なお、これらの炭素質物質は、場合に応じ
て、担持に先駆けて前記木材についての説明に記載した
ような各種の化学的処理や物理的処理を施してから用い
てもよい。
【0029】本発明の水素化処理用触媒は、前記各種の
炭素質物質を担体として用い、これに少なくとも周期表
VIA族金属の化合物及び/又は周期表VIII族の鉄
族金属の化合物を、水酸基及び/又はエーテル結合を有
する水溶性有機化合物(但し、酸は除く。)の存在下
で、担持することによって調製される。
【0030】なお、以下、この特定の水溶性有機化合物
を他の一般のものと区別するために水溶性有機化合物
[I]と呼ぶことにする。また、VIA族金属と鉄族金
属を、適時、活性金属と呼ぶ。
【0031】前記VIA族金属としては、モリブデン、
タングステン及びクロムを挙げるこことができ、これら
の中でも、通常は、モリブデンやタングステンが好まし
い。一方、前記鉄族金属としては、鉄、コバルト及びニ
ッケルを挙げることができる。これらVIA族金属と鉄
族金属のうちどのような金属種を担持するかは、場合に
応じて適宜選定すればよい。
【0032】一般的には、1種又は2種以上のVIA族
金属種と1種又は2種以上の鉄族金属種を、金属の組み
合わせ効果を考慮して適宜組み合わせて用いることが好
ましく、特に、例えば、Ni−Mo、Ni−W、Co−
Mo、Co−W、Ni−Mo−W、Ni−Co−Mo、
Fe−Mo、Fe−W等の組み合わせが好ましいが、必
ずしもこれらに限定されるわけではない。
【0033】場合によっては、1種又は2種以上のVI
A族金属種のみを担持することもあるし、あるいは、1
種又は2種以上の鉄族金属種のみを担持することもあ
る。更には、いずれの場合にも、必要に応じて適宜、V
IA族金属及び鉄族金属以外の他の金属種等を添加して
もよい。なお、鉄族金属種のみを担持する場合には、活
性の点から、通常、少なくともNiを用いることが好ま
しく、すなわち、この場合の担持金属種としては、Ni
単独、あるいは、Ni−Co,Ni−Fe及びNi−F
e−Coの組み合わせが好適となる。また、VIA族金
属種のみを担持する場合には、通常、少なくともMoを
用いることが好ましく、すなわち、この場合の担持金属
種としては、Mo単独、あるいは、Mo−W,Mo−C
r及びMo−W−Crの組み合わせが好適となる。
【0034】本発明の水素化処理用触媒における前記活
性金属成分の好適な担持量は、担体として使用する炭素
質物質の種類や形態、担持する金属の種類、その組み合
わせ、あるいはまた、水素化処理する重質油の性状、プ
ロセスの目的等によって異なるので、一律に定めること
ができないが、通常は、触媒重量(担持乾燥後の触媒の
重量)あたりの金属の重量%で計算して、VIA族金属
(合計量)が0.5〜30重量%の範囲に、かつ、鉄族
金属(合計量)が1〜50重量%の範囲になるように選
定するのが好ましく、特に、前者を2〜15重量%の範
囲に、かつ、後者を2〜20重量%の範囲に選定するの
がより好ましい。ここで、VIA族金属の担持量が0.
5重量%未満であったり、あるいは、鉄族金属の担持量
が1重量%未満であると、十分な水素化処理活性が得ら
れないことがある。一方、VIA族金属の担持量を30
重量%より大きくしたり、あるいは、鉄族金属の担持量
を50重量%より大きくしても、それ以上の活性の向上
は見られず、かえって、活性が低下するなどの支障を生
じることがある。
【0035】なお、前記したようにMo等のVIA族金
属のみを担持する場合やNi等の鉄族金属のみを担持す
る場合にも、それぞれを、前記同様の範囲に選定するの
が好ましいが、一般に、その活性は、VIA族金属と鉄
族金属を上記の範囲に選定して担持した場合と比較して
低くなる傾向がある。
【0036】以上のように選定した活性金属種を前記炭
素質物質に担持するに際して、該担持を前記特定の水溶
性有機化合物すなわち水溶性有機化合物[I]の存在下
で行うことが必要あるが、その他の点については特に制
限はなく、これらの活性金属は、それぞれ、適当な化合
物の水溶液等の形態で、所定の炭素質物質に担持すれば
よい。その際の担持手法としても特に制限はなく、後述
するように各種の担持方式が適用可能である。
【0037】炭素質物質に活性金属化合物を担持する際
に用いる担持液を調製するに際して、前記活性金属は様
々な化合物として使用することができる。この担持液
は、通常水溶液の形態をとっているが、該担持液の調製
に際しては、後述のように、前記水溶性有機化合物
[I]の他にも、場合に応じて他の適当な添加剤を添加
し、その活性金属化合物の溶液性を向上させたり、溶液
の安定性を向上させることができるので、活性金属化合
物は、必ずしもそれ自体が水溶性のものでなくても使用
可能である。要するに、活性金属種は、できるだけ均一
に溶解させた状態で担持に供することが望ましいが、調
製原料として用いる活性金属化合物としては、結果とし
てそのような条件を満たすものであれば、どのような種
類及び形態のものでも適用可能である。
【0038】担持液の調製に際して、前記のVIA族金
属は、例えば、酸化物(MoO3、WO3、CrO
3等)、水酸化物若しくは酸素酸(モリブデン酸、タン
グステン酸、ヘテロポリ酸、水酸化クロム等)、酸素酸
塩(例えば、モリブデン酸アンモニウム、タングステン
酸アンモニウム、ヘテロポリ酸塩、クロム酸アンモニウ
ム等)、ハロゲン化物若しくはオキシハロゲン化物(例
えば、MoCl5、MoOCl3、WCl6、WOCl4
WO2Cl、CrCl3、CrO2Cl2等)、硫化物(例
えば、MoS2、WS2等)、シアン化物、硝酸塩[Cr
(NO33等]、硫酸塩[Cr2(SO43等]、酢酸
塩等の有機酸塩、アルコキシドなど、また、これらの錯
塩等の錯体類[例えば、EDTA錯体、アセチルアセト
ナト錯体、ニトロシル錯体、カルボニル錯体等々]、更
には、ヒドロゲルやゾル状化合物等のコロイド形態のも
のなど、様々な種類・形態のものとして、1種あるいは
2種以上を使用することができる。
【0039】これらの中でも、Mo及びWについては、
通常、MoO3やWO3等の酸化物、モリブデン酸やタン
グステン酸等の酸素酸類、パラモリブデン酸塩、メタモ
リブデン酸塩、パラタングステン酸塩、メタタングステ
ン酸塩等の酸素酸塩などが好適に使用され、特に、パラ
モリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩、パラタングステ
ン酸塩、メタタングステン酸塩などが好適に使用され
る。なお、これらのモリブデン酸塩、タングステン酸塩
には、アンモニウム塩、アルカリ塩等の各種の塩があ
り、これらはいずれも使用可能であるが、通常は、アン
モニウム塩が特に好適に使用される。
【0040】なお、これらのMoやWの酸化物、酸素酸
類あるいは酸素酸塩の中にも、そのままでは水に対する
溶解度はあまり大きくないものあるが、そのようなもの
についても、担持液中に前記水溶性有機化合物[I]を
溶解含有させることによって溶解度を向上させることが
できるし、また、それでも不十分の場合には、適宜他の
添加剤、例えばEDTA等を添加したり、液のpHを調
整するなどして溶解度を更に向上させることもしばしば
好適に採用される。
【0041】一方、前記鉄族金属も、担持液の調製に際
して、様々な化合物として使用することができ、具体的
には例えば、例えば、硝酸塩、炭酸塩、塩基性炭酸塩、
硫酸塩、塩化物等のハロゲン化物、硫化物、シアン化物
などの無機塩、酢酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩等の有機
酸塩、酸化物、水酸化物、アルコキシドなど、更にはこ
れらの錯塩等の錯体類、例えば、アンミン錯体、アコ錯
体、EDTA錯体、アセチルアセトナト錯体、カルボニ
ル錯体、ハロゲン酸、ハロゲン酸塩等、更には、ヒドロ
ゲルやゾル状化合物、金属コロイド等のコロイド形態の
ものなど、様々な種類・形態のものとして、1種あるい
は2種以上を使用することができる。
【0042】なお、これらの中でも、コバルト及びニッ
ケルについては、通常、硝酸塩、炭酸塩、塩基性炭酸塩
等が好ましく、鉄については、通常、硝酸塩等が好まし
い。
【0043】前記水溶性有機化合物[I]は、水酸基及
び/又はエーテル結合を有し、酸ではない水溶性有機化
合物であればどのような種類及び構造のものでもよく、
また、1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合物
等として使用してもよい。
【0044】ここで、酸ではない水溶性有機化合物と
は、水に対して十分な溶解性又は親和性を有する有機化
合物であって、分子全体として通常酸性化合物とはみな
されない化合物、好ましくは、例えばフリーのカルボキ
シル基やスルホン酸基等の酸性基を持たない化合物のこ
とを言う。すなわち、いわゆる酸性化合物ではないもの
であれば、水酸基やエーテル結合の他に、例えばエステ
ル基、アミノ基等の他の官能基を有しているものでもよ
い。
【0045】こうした水溶性有機化合物[I]の存在下
で前記所定の活性金属化合物を担持することによって、
前記各種の炭素質物質に該活性金属成分が良好な担持状
態になるように担持することができ、重質油や超重質油
の水素化処理において、活性と有用中間留分の収率が十
分な上に、コーク、スラッジ等の残留固形分の副生が少
ない所望の高性能の水素化処理用触媒を容易に得ること
ができるのである。
【0046】このような水溶性有機化合物[I]として
は、多種多様なものがあるが、中でも好ましいものの代
表例を示すと、例えば、メタノール、エタノール、プロ
パノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、
シクロヘキサノール等の一価のアルコール類、エチレン
グリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、ペ
ンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレング
リコールやグリセリン等の多価アルコール類の部分エー
テルあるいは水溶性エーテル類、ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンフ
ェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニル
エーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテ
ル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシ
エチレンソルビタンモノラウレート等のエーテル結合含
有水溶性高分子、ポリビニルアルコール等の水酸基含有
水溶性高分子、スクロース、グルコース、フルクトース
等の各種糖類、メチルセルロース、水溶性デンプン等の
水溶性多糖類若しくはその誘導体などを例示することが
できる。
【0047】なお、これら各種の水溶性有機化合物
[I]は、1種のみを用いてもよく、場合に応じて2種
以上を混合物としてあるいは別々に添加するなどして併
用してもよい。
【0048】これら各種の水溶性有機化合物[I]の中
でも、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコ
ール系界面活性剤が好ましく、特に、ポリオキシエチレ
ン鎖の平均分子量が300〜6000であるポリエチレ
ングリコール及びポリオキシエチレン鎖の平均分子量が
300〜6000であるポリエチレングリコール系界面
活性剤が好ましい。
【0049】なお、このような比較的高分子量のポリエ
チレングリコールやポリエチレングリコール系界面活性
剤が特に好ましいのは、担持液中の活性金属化合物の溶
解性若しくは溶解安定性をより一層の効果的に保持する
ことができる上に、担持液の表面張力、粘度等の物性も
好適な範囲に制御しやすく、活性金属成分が該水溶性有
機化合物と共に炭素質物質担体に分散性よく担持され、
担持後(乾燥後)もその水溶性有機化合物が該活性金属
と共に残留するので、該活性金属成分の凝集を十分に抑
制するという優れた効果を発揮するからである。
【0050】しかしながら、ポリエチレングリコールや
ポリエチレングリコール系界面活性剤の場合にも、分子
量があまり大きいと溶解に時間がかかり過ぎたり、ま
た、場合によっては、担持液の粘度が極端に大きくな
り、かえって担持状態が悪化するなどの支障を生じるこ
とがある。
【0051】なお、前記ポリエチレングリコール及びポ
リエチレングリコール系界面活性剤としては、市販品や
合成品など各種のものが使用可能であり、このうちポリ
エチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、ポ
リオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキ
シエチレン(20)ソルビタンモノラウレート[但し、
これらの( )内の数値はポリオキシエチレン単位の平
均付加モル数を表す。]等を例示することができるが、
これらの限定されるものではなく、分子量あるいは平均
分子量や末端基の種類など様々なものを1種単独で、あ
るいは1種又は2種以上の混合物や組成物等として使用
することができる。また、場合に応じて、例えば、ポリ
エチレングリコールとポリエチレングリコール系界面活
性剤を併用してもよい。
【0052】本発明の水素化処理用触媒は、前記所定の
炭素質物質を担体として用い、これに、前記所定の活性
金属化合物を、前記水溶性有機化合物[I]のうちの少
なくとも1種の存在下で担持する限り、他の点について
は、従来と同様の手法によって調製することができる。
ただし、この水素化処理用触媒の場合には、担体として
可燃性の炭素質物質を用いているので、担持後、通常実
施されるような高温での空気等の酸素を比較的多く含有
するガスによる焼成は避けた方がよい。言い換えれば、
そのような高温で焼成しないでも、この炭素質物質担体
系触媒の場合には、後述するように比較的低温での乾燥
処理で十分な水素化処理活性が得られるのである。
【0053】この水溶性有機化合物[I]の存在下で実
施する活性金属化合物の担持は、例えば、各種の含浸法
(真空含浸法、加熱含浸法等)、浸漬法、混練法、スプ
レー法など公知の各種の担持操作手法に従って好適に行
うことができる。通常は、担持に供する前記活性金属化
合物を適当な濃度の水溶液とした状態で水溶性有機化合
物[I]の存在下で担持する方法が好適に採用される。
その際、担持に供する各成分あるいは溶液の添加混合順
序あるいは方式としては特に制限はなく、これらを同時
に添加混合してもよいし、逐次的に添加混合してもよ
い。具体的には例えば、水溶性有機化合物[I]を予め
炭素質物質に添加若しくは担持して、次いで、活性金属
化合物の水溶液を添加して担持してもよいし、あるい
は、水溶性有機化合物[I]と活性金属化合物を共に溶
解した水溶液を炭素質物質に添加して担持してもよい
し、あるいは、活性金属化合物の水溶液と水溶性有機化
合物[I]を炭素質物質に同時に添加して担持してもよ
いし、あるいは、炭素質物質に活性金属化合物の水溶液
を添加し、担持操作の途上で水溶性有機化合物[I]を
添加して担持を完了させてもよいし、更には、同じ組成
の担持液や異なる組成の担持液を複数の段階に分けて担
持するなど、この担持は様々な手順で行うことができ
る。
【0054】その際、担持系に共存あるいは添加する水
溶性有機化合物[I]の割合は、担体として使用する炭
素質物質の乾燥重量100重量部に対して、通常、0.
1〜100重量部の範囲に選定するのが好適であり、特
に、5〜50重量部の範囲に選定するのが好ましい。こ
の割合が上記の基準で0.1重量部未満であると水溶性
有機化合物[I]の添加効果が十分に発揮されず、一
方、100重量部を超えると、担持液における活性金属
化合物の溶解性が悪くなるなどの理由によって、均一に
担持することが困難になることがある。
【0055】なお、前記担持は、水溶性有機化合物
[I]の他に、必要に応じて他の添加成分の共存下で行
ってもよい。例えば、担持途上のあるいは担持に供する
活性金属化合物の水溶液の安定性を更に向上させて、担
持をより均一にかつ安定に行うために、カルボン酸等の
適当な有機酸を添加することが好適に採用される。
【0056】この場合、有機酸としては、各種のものが
使用可能であり、具体的には例えば、蓚酸、酒石酸、コ
ハク酸、マロン酸、リンゴ酸、クエン酸、蟻酸、酢酸、
プロピオン酸などを例示することができる。これらの有
機酸は、必要に応じて、1種又は2種以上添加してよ
い。
【0057】その際、添加する有機酸の割合は、担体と
して使用する炭素質物質の乾燥重量100重量部に対し
て、例えば、0.1〜100重量部の範囲に選定するの
が好ましく、特に、5〜50重量部の範囲に選定するの
が好ましい。この割合が上記の基準で0.1重量部未満
であると有機酸の添加効果が十分に発揮されず、一方、
100重量部を超えると、活性金属化合物の溶解性が悪
くなるなどの理由によって、かえって均一に担持するこ
とが困難になることがある。
【0058】本発明の水素化処理用触媒は、以上のよう
にして所定の活性金属化合物を担持した後、適宜、乾燥
することによって得ることができる。
【0059】この乾燥温度としては、通常、50〜15
0℃、好ましくは、80〜120℃の範囲に選定するの
が好適である。この乾燥は、通常、空気雰囲気中で好適
に実施される。このような温度範囲ならば、空気中で乾
燥しても担体の炭素質物質が燃焼する心配がないし、ま
た、多くの場合、この空気中での乾燥だけでも担持した
活性金属化合物を活性種に十分に活性化できるからであ
る。なお、この乾燥は、必ずしも空気雰囲気で行わない
でもよく、用いた活性金属化合物の種類によっては、例
えば、減圧乾燥、あるいは不活性ガス気流中での乾燥に
よっても十分な活性化がなされるし、また、場合に応じ
て水素等の還元性ガスや他の適当なガス雰囲気中で乾燥
・活性化を行ってもよい。
【0060】また、必要に応じて、乾燥後、適宜適当な
温度で、例えば、窒素等の不活性ガスで処理したり、あ
るいは、炭素質物質が燃焼しない範囲で適当な酸素濃度
のガスによって焼成してもよいし、更には、水素や硫化
水素あるいはその混合ガス等によって還元若しくは予備
硫化等の活性化処理を行ってもよい。
【0061】こうして調製した本発明の水素化処理用触
媒は、各種の重質油若しくは超重質油の水素化処理に対
して、十分な活性を有し、十分な有用中間留分の収率を
与える上に、コーク、スラッジ等の残留固形分の副生が
少ないなど優れた触媒性能を有しており、しかも、担体
に柔軟で可燃性の炭素質物質を用いているので、スラリ
ー床に用いても触媒や装置の摩耗の問題がなく、生成油
やその蒸留残油(未分解回収油)への灰分の混入も著し
く少なくなり、したがって、触媒を除去しないでも未分
解回収油等をそのままボイラー用等の燃料として好適に
利用することができるなどの種々の利点を有している。
【0062】前記本発明の水素化処理用触媒は、必ずし
も重質油の水素化処理に限らず、他の一般的のより軽質
な含硫炭化水素油の水素化処理にも有効な触媒となる
が、特に重質油や超重質油の水素化処理に効果的に使用
することができるので、重質油の水素化処理用触媒と称
している。
【0063】以下に、本発明の水素化処理用触媒の適用
例である本発明の重質油の水素化処理方法について説明
する。
【0064】B.重質油の水素化処理方法 本発明の重質油の水素化処理方法は、重質油の水素化処
理、例えば水素化脱硫、水素化脱金属、水素化分解、水
素化脱窒素、単純水素化(水添)等を、少なくとも前記
本発明の水素化処理用触媒を用いて行うことを特徴とし
ている。
【0065】ところで、本発明の水素化処理用触媒に
は、前記したように触媒の組成や調製条件の違い等によ
って多種多様なものがあるが、これらのうちどのような
触媒が好ましいかは、担体(炭素質物質)の種類、活性
金属の種類や組み合わせ、担持率、担持の際に用いる水
溶性有機化合物[I]の種類や添加量などそれぞれの点
からすでに説明した。もちろん、実際にどの触媒を用い
るかは、場合に応じて適宜最良なものを選定して用いれ
ばよい。どの触媒が最良となるかは、原料として用いる
重質油の性状、特に硫黄含有量、沸点範囲若しくは重質
度等、反応方式、反応条件、プロセスの目的、例えば、
硫黄分をどこまで低減させるか、水素化分解をどの程度
進行させ中間留分としてどのような沸点範囲のものを目
標とするかなどの諸条件によって異なる。こうした条件
を考慮し、必要に応じて、予備テストを行うなどして適
宜最良のもの選定すればよい。
【0066】すなわち、本発明の方法においては、前記
各種の本発明の水素化処理用触媒中から選定された少な
くとも1種の触媒の存在下で、重質油を適当な条件で水
素ガスと接触させて水素化処理を行う。
【0067】その際、本発明の触媒は、単独で用いてよ
いし、2種以上を併用してもよいし、場合に応じて例え
ば耐火性酸化物、例えば、アルミナ、シリカアルミナ等
の不活性な物質で希釈して使用してもよいし、また、必
要に応じて他の触媒と組み合わせ用いてもよい。
【0068】原料油として用いる重質油としては、例え
ば、各種の原油の常圧蒸留や減圧蒸留によって得られる
常圧残油、減圧残油等、あるいは、オイルサンド油、石
炭液化油等を挙げることができるが、必ずしもこれらに
限定されるものではない。なお、場合に応じて、2種以
上の性状の異なる重質油を混合したり、あるいは重質油
により軽質な炭化水素留分を混合して原料油として用い
てもよい。
【0069】前記水素化処理の反応温度は、通常、30
0〜550℃、好ましくは、350〜500℃の範囲に
選定するのが好適である。水素圧力は、通常、20〜2
00kg/cm2G、好ましくは、50〜150kg/
cm2Gの範囲に選定するのが好適である。
【0070】反応型式としては、特に制限はなく、例え
ば、固定床、移動床、懸濁床(スラリー床)、沸騰床な
どいずれも適用可能であるが、熱効率、運転性等の点か
ら懸濁床が特に好適に採用される。なお、懸濁床の場
合、回分法や半回分法によってもよいが、通常は、生産
性等の点から流通法が好ましい。
【0071】こうした流通法の場合には、供給液空間速
度(LHSV)を、通常、0.05〜5h-1、好ましく
は、0.2〜2h-1の範囲に選定するのがよい。
【0072】水素ガスと原料重質油の供給割合(H2
原料重質油)は、通常、50〜1000Nm3/kl、
好ましくは、100〜800Nm3/klの範囲に選定
するのが好適である。
【0073】以上のようにして、常圧残油、減圧残油、
オイルサンド油、石炭液化油等の各種の重質油の水素化
処理を好適に行うことができ、それらを、硫黄分、窒素
分、重金属分等の不純物含量が十分に少なく、有用中間
留分に富んだ性状のよい炭化水素油に効率よく転化する
ことができる。また、この方法によると、固形分の副生
が少ない、生成油中への灰分の混入がないなど、前記し
たような、本発明の水素化処理用触媒(可燃性の炭素質
物質を担体する高性能触媒)を用いる種々の利点が発揮
される。
【0074】すなわち、こうして得た生成油(反応混合
物)は、触媒を分離しないでも、燃料油等として好適に
利用することができる。もちろん、従来法のように触媒
を分離して利用してもよい。そのように触媒を分離する
場合にも、分離しにくい微細な触媒が残留しても支障な
いので簡単な分離操作でも十分であるなどの利点があ
る。
【0075】また、通常は、得られた生成油は、蒸留等
の常法に従って所望の各種の留分に分離してそれぞれの
目的に利用されるが、この場合にも、あえて触媒を分離
しないでもよい。例えば、中間留分等の比較的軽質な留
分を蒸留等によって分離した際の残油(未分解回収油)
中には、触媒と若干のコーク、スラッジ等の残留固形分
が含まれているが、この未分解回収油は、そのままでも
ボイラー用の燃料として好適に使用することができる。
もちろん、この場合にも、いずれかの段階で適宜触媒あ
るいは触媒と残留固形分を除去してもよい。
【0076】一方、こうして分留された中間留分は広く
はナフサ〜軽油程度の留分、通常は灯油、軽油留分が主
成分となるが、これらは例えばFCCプロセス等のプロ
セス用の原料油として、あるいは、性状のよい燃料油等
として有効に利用することができる。
【0077】
【実施例】以下に、本発明の実施例及びその比較例を示
し、これらによって本発明を更に具体的には説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0078】実施例1 モリブデン酸アンモニウム[(NH46Mo724・4
2O]2.63g、硝酸ニッケル[Ni(NO33
2.64g、ポリエチレングリコール400[(CH2
CH2O)n:分子量400]2.63g、リンゴ酸[H
OOCCH(OH)CH2COOH]1.5gをイオン
交換水に溶解し、全量を45mlに調整し、含浸液を調
製した。
【0079】振動ボールミルで粉砕した瀝青炭15gに
前記含浸液を加え、200℃に熱したサンドバス上で攪
拌した。120℃で12時間乾燥後、遊星ボールミルを
用いて1時間粉砕した。こうして得られた触媒の平均粒
径は約1μmであり、乾燥重量あたり金属としてニッケ
ル3重量%、モリブデン8重量%を含んでいた。この触
媒0.81gを表1に示す性状の原料油(アラビアンヘ
ビー減圧残油)80gと共に容量300mlのオートク
レーブに仕込み、450℃、130kg/cm2Gの条
件で1時間反応評価を行った。この反応評価の結果は他
の実施例、比較例と共に表2に示す。
【0080】実施例2 実施例1において瀝青炭15gの代わりに褐炭17.9
gを用いた他は同様にして触媒を調製し、評価した。
【0081】実施例3 実施例1において瀝青炭15gの代わりに紙(トイレッ
トペーパー)16.9gを用いたこと以外は同様にして
触媒を調製し、評価した。
【0082】比較例1 実施例1においてポリエチレングリコールを使用しなか
ったこと以外は同様にして触媒を調製し、評価した。
【0083】比較例2 実施例2においてポリエチレングリコールを使用しなか
ったこと以外は同様にして触媒を調製し、評価した。
【0084】比較例3 実施例3においてポリエチレングリコールを使用しなか
ったこと以外は同様にして触媒を調製し、評価した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】<考察の結果>ポリエチレングリコールそ
の他の水溶性有機化合物[I]を含浸時に使用した触媒
を用いると、中間留分収率が同等で固形分(コーク、ス
ラッジ等)の副生が大きく低下していることがわかる。
なお、全体としての活性も若干増加している。固形分の
副生率が同程度の条件で比較したところ、活性及び中間
留分の収率を増加させることができることも確認してい
る。
【0088】
【発明の効果】本発明の水素化処理用触媒は、石炭やセ
ルロース系有機物質等の可燃性で柔軟性のある炭素質物
質を担体として用い、しかも、これらに前記特定の水溶
性有機化合物の存在下で所定の活性金属成分を担持する
ことによってその触媒性能を改善しているので、該触媒
を重質油の水素化処理に用いた時、例えば、 (i)有用中間留分の収率及び全体としての水素化処理
活性が十分である上に、従来の無機酸化物担体系の水素
化処理用触媒の場合に問題となっていた、触媒や装置の
摩耗等の問題が解決され、特に、触媒がたとえ微粒子化
されても灰分の混入がなくなるので、あえて触媒を分離
除去しないでも未分解回収油をそのままボイラー用の燃
料として好適に利用することができ、触媒を分離する場
合にも操作が簡単でよい; (ii)従来提案されている炭素質物質(石炭)担体系
水素化処理用触媒の場合として比べて、同様の条件で比
較して、中間留分の収率についてはほとんど同様といっ
てもよいが、全体としての活性が増加する場合が多く、
特に、残留固形分の副生が大幅に減少する;など優れた
効果を発揮する。
【0089】また、本発明の重質油の水素化処理は、上
記本発明の高性能水素化処理用触媒を用いているので、
従来の水素化処理用触媒を用いる場合と比較して、少な
くとも上記(i)、(ii)の点で有利となるので、そ
の工業的価値は極めて大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10G 47/10 2115−4H

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素質物質に少なくとも周期表VIA族
    金属の化合物及び/又は周期表VIII族の鉄族金属の
    化合物を、水酸基及び/又はエーテル結合を有する水溶
    性有機化合物(但し、酸は除く。)の存在下で担持して
    なることを特徴とする重質油の水素化処理用触媒。
  2. 【請求項2】 前記水溶性有機化合物がポリエチレング
    リコール及び/又はポリエチレングリコール系界面活性
    剤である請求項1に記載の水素化処理用触媒。
  3. 【請求項3】 前記ポリエチレングリコール及び/又は
    ポリエチレングリコール系界面活性剤が、ポリオキシエ
    チレン鎖の平均分子量が300〜6000の範囲にある
    ものである請求項2に記載の水素化処理用触媒。
  4. 【請求項4】 前記炭素質物質が、石炭である請求項1
    〜3いずれかに記載の水素化処理用触媒。
  5. 【請求項5】 前記石炭が、無煙炭、半無煙炭、瀝青
    炭、亜瀝青炭、褐炭、泥炭又は草炭あるいはこれらの混
    合物である請求項4に記載の水素化処理用触媒。
  6. 【請求項6】 前記石炭が、瀝青炭、亜瀝青炭又は褐炭
    あるいはこれらの混合物である請求項5に記載の水素化
    処理用触媒。
  7. 【請求項7】 前記炭素質物質が、セルロース系有機物
    質である請求項1〜3いずれかに記載の水素化処理用触
    媒。
  8. 【請求項8】 前記セルロース系有機物質が、木材、
    紙、パルプ、チップ、木質繊維又は植物繊維あるいはこ
    れらの混合物である請求項7に記載の水素化処理用触
    媒。
  9. 【請求項9】 前記セルロース系有機物質が、チップ又
    は紙あるいはこれらの混合物である請求項7に記載の水
    素化処理用触媒。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれかに記載の水素
    化処理用触媒の存在下で重質油を水素化処理することを
    特徴とする重質油の水素化処理方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009505830A (ja) * 2005-08-31 2009-02-12 インステイチユート メキシカノ デル ペトロレオ 石油留分の水素化転化のための触媒組成物を調製する方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009505830A (ja) * 2005-08-31 2009-02-12 インステイチユート メキシカノ デル ペトロレオ 石油留分の水素化転化のための触媒組成物を調製する方法
JP2013018001A (ja) * 2005-08-31 2013-01-31 Inst Mexicano Del Petroleo 石油留分の水素化転化のための触媒組成物を調製する方法

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