JPH07278175A - ホスホリルコリン含有グリセロ糖脂質化合物 - Google Patents

ホスホリルコリン含有グリセロ糖脂質化合物

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JPH07278175A
JPH07278175A JP7059617A JP5961795A JPH07278175A JP H07278175 A JPH07278175 A JP H07278175A JP 7059617 A JP7059617 A JP 7059617A JP 5961795 A JP5961795 A JP 5961795A JP H07278175 A JPH07278175 A JP H07278175A
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mycoplasma
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直樹 山本
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】構造式Iで示される1′−(2,3−ビス(ヘ
キサデカノイルオキシ)プロピル〕−α−D−グルコピ
ラノス−6′−イル−2″−(トリメチルアンモニウ
ム)エチルフォスフェート。 【効果】構造式Iで示される化合物は、マイコプラズマ
・フェルメンタンスの脂質画分から分離精製によって得
られた新規なホスホリルコリン含有グリセロ糖脂質化合
物であり、マイコプラズマ・フェルメンタンスの感染に
ついての診断薬又は医薬、或いは、それらの薬品の中間
体として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイコプラズマ・フェ
ルメンタンス(Mycoplasma ferment
ans)GGPL株の脂質画分から見出された新規な
『ホスホリルコリン含有α−グルコース(糖)脂質化合
物』に関するものである。
【0002】
【従来技術の説明】ヒトレトロウイルスであるHTLV
−I、およびHIV(human immunodef
iciency virus)はいずれもリンパ球のな
かでもとくにヘルパーT細胞に感染しやすく、HTLV
−Iではこれをモノクローナルに腫瘍化し、HIVでは
これを破壊することにより発症する。また、マイコプラ
ズマ・フェルメンタンスは、HIVによるAIDSの発
症やリウマチの病態に深く係わっているという報告があ
るが、そのメカニズムについては全くわかっていない。
【0003】
【本発明が解決しようとする問題点】本発明の発明者ら
は、このメカニズムを解明するために、マイコプラズマ
・フェルメンタンスの脂質における主要な抗原性を持つ
種特異的抗原であるところの糖リン脂質を分離、精製し
て構造解析を試み、生理活性を有する可能性のある新規
な構造の物質を見出すべく、鋭意研究した。
【0004】
【問題点を解決する手段】発明者らは、前述の目的で研
究を行った結果、新規な糖リン脂質を分離、精製するこ
とに成功し、さらに、その物質を構造解析すること〔例
えば、赤外吸収分析(FTIR)、質量分析、13Cお
よびH−NMRなどにより構造解析すること〕によ
り、その絶対構造を確定した。
【0005】即ち、本発明のホスホリルコリン含有グリ
セロ糖脂質化合物は、1’−〔2,3−ビス(ヘキサデ
カノイルオキシ)プロピル〕−α−D−グルコピラノス
−6’−イル−2”−(トリメチルアンモニウム)エチ
ルフォスフェートに関する。
【0006】本発明のホスホリルコリン含有グリセロ糖
脂質化合物は、次に示す構造式Iを有している。
【0007】
【化1】
【0008】マイコプラズマ・フェルメンタンス(My
coplasma fermentans)は、最近、
ヒトレトロウイルス感染患者及び細胞から高率に分離さ
れウイルス感染による病態の重要な増悪因子(co−f
actor)となっている可能性が示唆されてきてい
る。今回、構造決定した物質は、このマイコプラズマ・
フェルメンタンスを分離、クローニングしてその脂質成
分を解析したところその生物の成分であることがわかっ
た。この物質はマイコプラズマ・フェルメンタンスに特
徴的に見出された新規化合物である。
【0009】この物質はAIDSの病態、RAの病態解
明の可能性をもつ有望な新規化合物である。また、この
化合物とその中間体は、ヒトレトロウイルス疾患などに
対する医薬またはそのような医薬の中間体としても有望
な化合物である。
【0010】以下、本発明の構造式Iで示されるホスホ
リルコリン含有グリセロ糖脂質を精製、分離・取得し、
その構造解析を行った実施例を示す。 実施例1 i)培養;マイコプラズマ・フェルメンタンスGGPL
株をPPLO培地で増殖培養し、これをPBS(pho
sphate−buffered saline)で2
回洗浄したものを−80℃に保存した。
【0011】ii)脂質の抽出;脂質は、60ml(湿
潤状態の容量)の細胞に対しそれぞれ400mlのクロ
ロホルムとメタノールとの混合溶媒(クロロホルム:メ
タノール=2:1、1:1および1:2である3種の混
合溶媒)を用いて抽出し993mgの総脂質を得た。
【0012】iii)分画A(非結合部分の取得);総
脂質はカラム(DEAE Sephadex A−25
カラム)により非結合部分と結合部分とに分け、非結合
部分775mgが得られた。
【0013】iv)分画B(ホスホリルコリン含有グリ
セロ糖脂質の単離);クロロホルムとメタノールと水と
の混合溶媒の3回濃度勾配を変え(例えば、1回目の容
量比、クロロホルム:メタノール:水=83:16:
0.5〜20:80:8)イアトロビーズにかけて分画
A(非結合部分)をさらに分画し、最後に1−プロパノ
ールとアンモニアと水との溶液(容量比、1−プロパノ
ール:アンモニア:水=80:5:15〜75:5:2
0)による濃度勾配を用いて各成分を単離した。収量
は、ホスホリルコリン含有グリセロ糖脂質(以下、GG
PL−1と言う)が3mgであった。
【0014】v)質量分析;質量分析装置〔フィネガン
・MAT社製、機種名:TSQ70triple−st
age guadrupole mass spect
rometer〕を用いて、前記のGGPL−1につい
て、LSIMS(Liquid secondary
ion mass spectorometry)及び
MS/MS分析を行った。
【0015】vi)NMR分析;前記のGGPL−1に
ついて、(CHSO−d/DO(98:2)
0.5mlに溶解し、NMR測定装置(日本電子(株)
製;FX−400)を用いて、60℃でHおよび13
C−NMRを行った。
【0016】〔詳細な分析試験の結果〕 (a)マイコプラズマ・フェルメンタンスのホスホリル
コリン含有グリセロ糖脂質;マイコプラズマ・フェルメ
ンタンスGGPL株から抽出した脂質の中性脂質画分に
oricinol−HSO(糖の検出)、及びDi
ttmer(リンの検出)試薬に反応する数種の脂質
(リン糖脂質)を検出し、このうち1種(以下、GGP
L−1と言う)についてシリカビーズカラムへの吸着を
行ってその溶出分離を行った。
【0017】前記のGGPL−1は、クロロホルム/メ
タノール/水による濃度勾配法において、lysoph
osphatidylcholine(以下、lyso
PCとも言う)と分離不可能であったが、1−プロパノ
ール/アンモニア/水による濃度勾配法(この場合、カ
ラムから溶出した各フラクションを酢酸で速やかに中和
してアルカリによるエステルの分解を抑えた)によって
分離することができた。
【0018】前記GGPL−1は、oricinol−
SO、Dittmer試薬及びDragendo
rff試薬(コリンの検出)に陽性を示し、しかも、緩
和なアルカリ処理で分解するものであった。
【0019】(b)FTIR分析;GGPL−1をIR
分析した結果、960cm−1にコリンに由来する強い
吸収が認められ、又、エステル結合に由来する1740
cm−1及び1170cm−1の吸収が認められた。
【0020】(c)LSIMS(Liquid sec
ondary ion massspectorome
try)及びMS/MS分析;GGPL−1の陽イオン
−LSIMSの結果を図1に示す。その図1によれば、
分子イオンに相当するシグナルm//z896および9
24が確認された。そこで、GGPL−1における主な
分子イオンm/z896について、MS/MS分析を行
った。そのGGPL−1の分析において、主要シグナル
の帰属を概略示す結果を、図2に示す。その図2の結果
によれば、M−C16:0(palmitic aci
d)、Gro−Hex−P−choline(glyc
erol hexos phosphorylchol
ine)、Hex−P−choline(hexosp
hosphoryl−choline)、P−chol
ine(phosphorylcholine)、ch
olineに相当する各シグナルが明確に認められた。
【0021】このことから、GGPL−1における
([M+H]896)は、グリセロール−ヘキソース
−ホスホコリンに脂肪酸C16:0が2分子結合したグ
リセロ糖リン脂質であることが示唆された。
【0022】(d)NMR分析(H−NMR);GG
PL−1のNMR(H−NMR)分析の結果を、図3
に示す。図3の結果によれば、GGPL−1の構造とし
ては、DHQ−COSY spectramにより、セ
ラミドを含まず、ジアシルグリセロール構造(以下、G
roとも言う)を含むことが確認された。また、核に
は、α−グルコースでその6位にホスホリルコリン基が
結合し、1位がグリセロール基と結合していることがわ
かった。H−NMR分析の各ピークの帰属をさらに詳
細に明らかにした結果を、図8および表1に示す。
【0023】(e)NMR分析(13C−NMR);す
べてのピークが前述の各構造であることが説明された。
また、ホスホリルコリン基がα−グルコースの6位に結
合していることも再確認された。
【0024】さらに、GGPL−1は、グリセロール構
造のC−3(3位の炭素)において酸素を介してグリセ
ロール基がグルコース構造と結合していることを示して
いる約6ppmの低磁場シフトが見られた。また、GG
PL−1において、コリン構造のリン酸エステル側、N
側およびメチル基炭素は、それぞれの標準品のPCとほ
ぼ等しい化学シフトと結合定数を示した。
【0025】従って、前述のようにして得られたGGP
L−1は、グリセロール構造:1モル、脂肪酸構造:2
モル、α−グルコース構造(糖構造):1モル、ホスホ
リルコリン:1モルを有しており、しかもα−グルコー
スの6’位の炭素にホスホリルコリンが結合している新
規なタイプの糖リン脂質化合物であることが明らかにな
った。
【0026】本発明の化合物は、マイコプラズマ・フェ
ルメンタンスGGPL株の培養によって得られその構造
が正確に確認されたものであり、その化学的な構造が前
述の構造式Iで示される化学構造を有している新規なホ
スホリルコリン含有グリセロ糖脂質化合物である。 即
ち、前記の化合物(GGPL−1)は、1’−〔2,3
−ビス(ヘキサデカノイルオキシ)プロピル〕−α−D
−グルコピラノス−6’−イル−2”−(トリメチルア
ンモニウム)エチルフォスフェートである。
【0027】グリセロ糖脂質化合物類は、植物バクテリ
アで数多く見つかっているが、ホスホリルコリンを含有
したこのタイプのものは今まで報告がない。また、α−
グルコースにホスホリルコリン基が結合した構造も今ま
で報告がない。哺乳動物では脳と精巣からグリセロ糖脂
質が分離され構造が決定されているが、これは、α−グ
ルコース核、ホスホリルコリン構造を有していない。以
上のことにより、このGGPL−1は極めてユニークで
グリセロ糖脂質である。
【0028】参考例1 i)培養;マイコプラズマ(マイコプラズマ・フェルメ
ンタンスGGPL株を含む)の培養はPPLO液体基礎
培地(Difco社製)に10%(容量/容量)牛血
清、ペニシリン、0.0002%(重量/容量)フェノ
ールレッドおよび1%グルコースを加えた液体培地10
0mlにて37℃で培養する。培地のpHの変化によ
り、マイコプラズマの増殖を確認した後、16,000
xgで1時間遠心分離する。この洗浄操作をもう一度繰
り返す。このようにして得られた菌体を脂質抽出用の試
料とする。
【0029】ii)脂質の抽出;菌体試料をメタノール
10mlに浮遊させて4時間なじませる。クロロホルム
20mlを加え、メタノールとの割合が2:1(クロロ
ホルム:メタノール)と成るようにする。超音波で菌体
を破砕し、さらに4時間放置する。3000rpmで遠
心し、その上清を回収しエバポレーションし、目的の脂
質を得る。
【0030】iii)分画(TLC);展開溶媒は、ク
ロロホルム:メタノール:0.2%塩化カルシウム水溶
液(55:45:1)の混合溶媒を用いた。 iv)検出;分画後のリン脂質の検出はデットマー(D
ittmer’s)の試薬により、糖脂質の検出はオル
シノール(orcinol)の試薬を用い、それぞれ染
色により行った。
【0031】図4は、各種のマイコプラズマ株の脂質画
分をTLCで展開したものをリン脂質染色する方法で染
色した。図4の各番号は次に示すマイコプラズマ株であ
る。 番号1:MT−4(GGPL+)細胞 番号2:マイコプラズマ・フェルメンタンスGGPL
(M.fermentans GGPL)株 番号3:マイコプラズマ・アルギニニG230
(M.argininiG230)株 番号4:マイコプラズマ・フェルメンタンスPG18
(M.fermentans PG18)株 番号5:マイコプラズマ・ヒオルヒニスDBS1050
(M.hyorhinis DBS1050)株 番号6:マイコプラズマ・オラレCH19299
(M.orale CH19299)株 番号7:マイコプラズマ・ペネトランスGTU−54−
6Al(M.penetrans GTU−54−6A
l)株 番号8:マイコプラズマ・サリバリウムPG20
(M.salivariumPG20)株
【0032】この図から、GGPL−1に相当するバン
ドが示されているが、これはマイコプラズマ・フェルメ
ンタンスが感染したT細胞(レーン1)とマイコプラズ
マ・フェルメンタンスGGPL株(レーン2)及びマイ
コプラズマ・フェルメンタンスPG18株(レーン4)
にのみ認められ、その他のマイコプラズマ種では認めら
れなかった。
【0033】図5は、図4と同じ試料についてTLCで
展開後、糖脂質を発色させる試薬を用いて染色したもの
である。GGPL−1に相当するバンドが図4と同様に
染色された。図5における番号1〜8は、図4における
各試料の番号と同じ内容である。
【0034】図6は、図4と同じ試料についてTLCで
展開後、マイコプラズマ・フェルメンタンスをウサギに
免疫し作製したポリクロナール抗体で図4と同じ試料を
免疫染色したものである。図6よりGGPL−1のバン
ドがマイコプラズマ・フェルメンタンスの成分とのみ特
異的に強く反応していることがわかる。図6における番
号1〜8は、図4における各試料の番号と同じ内容であ
る。
【0035】図7は、マイコプラズマ・フェルメンタン
スの脂質をTLCで展開後、他の各種マイコプラズマを
ウサギに免疫し作製した抗血清との反応性を調べたもの
である。他のマイコプラズマ種に対して作製した抗血清
はマイコプラズマ・フェルメンタンスの脂質成分とは反
応せず、マイコプラズマ・フェルメンタンスに対し作製
した血清のみ(番号1,2)が反応していた。
【0036】図7の各番号は次に示す内容である。 番号1:抗M.fermentans 1 血清 番号2:抗M.fermentans 2 血清 (番
号1と異なるウサギに免疫したものである) 番号3:抗M.pneumoniae血清 番号4:抗M.arginini血清 番号5:抗M.hyorhinis血清 番号6:抗M.orale血清 番号7:抗M.hominis血清
【0037】各種マイコプラズマの同定は、血清反応が
今のところ最も重視されている。今回、構造決定した物
質は、マイコプラズマ・フェルメンタンス種に特異的に
存在し、しかも脂質画分において最も重要な抗原決定基
であることが示された。
【0038】
【表1】
【0039】
【本発明の作用効果】本発明の化合物は、マイコプラズ
マ・フェルメンタンスから精製分離された新規なホスホ
リルコリン含有グリセロ糖脂質化合物である。また、マ
イコプラズマ・フェルメンタンスは、ヒトレトロウイル
ス、あるいはリウマチなどで病原性が強く疑われている
微生物である。従って、このユニークなグリセロ糖脂質
やその中間体が診断薬及び医薬に有用である可能性は大
きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】GGPL−1の陽イオン−LSIMSの結果を
示すチャート図である。
【図2】GGPL−1のMS/MS分析の結果を示すチ
ャート図である。
【図3】GGPL−1のNMR(H−NMR)分析の
結果を示すチャート図である。
【図4】リン脂質染色
【図5】糖脂質の染色
【図6】脂質の免疫染色
【図7】各種抗血清との反応性
【図8】GGPL−1のNMR(H−NMR)分析の
結果を示すチャート図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 31/715

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1’−(2,3−ビス(ヘキサデカノイル
    オキシ)プロピル〕−α−D−グルコピラノス−6’−
    イル−2”−(トリメチルアンモニウム)エチルフォス
    フェート。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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