JPH07263275A - フィルムコンデンサの製造方法およびフィルムコンデンサ - Google Patents

フィルムコンデンサの製造方法およびフィルムコンデンサ

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JPH07263275A
JPH07263275A JP6056121A JP5612194A JPH07263275A JP H07263275 A JPH07263275 A JP H07263275A JP 6056121 A JP6056121 A JP 6056121A JP 5612194 A JP5612194 A JP 5612194A JP H07263275 A JPH07263275 A JP H07263275A
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film
wound
capacitor
temperature
heat treatment
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JP6056121A
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Toyoichi Katagiri
豊一 片桐
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RUBIKON DENSHI KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ポリエステルフィルムを用いた巻回型のフィ
ルムコンデンサの製造工程の簡素化を図り、所望の電気
性能を得る製造方法を提供すること。 【構成】 誘電体層を形成する2枚のフィルムと、電極
層を形成する2枚の金属箔とを工程S1において交互に
重ね合わせて、巻き取る。その後、工程S2へ移行し、
巻取る途中、各電極箔にそれぞれリード線をスポット溶
接する。さらに工程S3で巻き取りを行い、素子本体を
得、捺印工程(S4)終了後、加熱エージング工程(S
5)で加熱を行い、コンデンサを形成する。誘電体層に
は、時間15分、温度150℃での加熱収縮率が15%
以上かつ80℃での収縮応力が20g/10mm以上の
ポリエステルフィルムを使用し、加熱により、渦巻状の
層を形成してなるフィルムの半径方向の収縮を得、電極
層と誘電体層との強固な密着力を得て巻回型のフィルム
コンデンサを生成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、巻回型のフィルムコン
デンサを製造する製造方法に係り、特にポリエステルフ
ィルムを用いた巻回型のフィルムコンデンサの製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】コンデンサ用誘電体として使用されるプ
ラスチックフィルムは、ポリスチレンフィルムあるいは
ポリエステルフィルムなどが代表として挙げられ、ポリ
エステルフィルムの中では、特にポリエチレンテレフタ
レートフィルムがその代表として挙げられる。これらの
フィルムは、引っ張り強度などの機械強度、誘電特性な
どの電気特性、加熱収縮率などの熱的特性などが要求さ
れる。コンデンサ用の電気用フィルム材料としては、価
格の面や使用温度が限定されるポリスチレンフィルムよ
り汎用性に富むポリエチレンテレフタレートフィルムが
主に用いられている。
【0003】図6に、従来のポリエステルフィルムを用
いた巻回型のコンデンサの構成を示す。ここでは、フィ
ルムを展開した状態を示してある。また、図7には、図
6の巻回型のコンデンサを製造する方法を説明するため
の製造工程図を示す。製造工程図には、工程に対応する
符号を順次S11〜S19まで付してある。図6におい
て、巻回型のフィルムコンデンサは、周知のように、フ
ィルム31a,31bと、金属箔32a,32bと、リ
ード線40a,40bとを備え、これらフィルム31
a,31bと金属箔32a,32bとを重ね合わせて巻
き込み、リード線40a,40bを挿入することにより
構成される。
【0004】巻き取りにより、フィルム31a,31b
と金属箔32a,32bは、それぞれ渦巻状に層を形成
し、フィルム31a,31bは、電極層を形成する一対
の金属箔32a,32b間に誘電体層を形成している。
ここで、これらのフィルム31a,31bは、ポリエス
テルフィルム、たとえばポリエチレンテレフタレートフ
ィルムで構成されている。このようなコンデンサに使用
されるポリエステルフィルムは、JIS規格により加熱
収縮率が3%以下に規制されている。
【0005】また、金属箔32a,32bは、アルミニ
ウム箔などで構成され、また、リード線40a,40b
は,それぞれ錫メッキ軟銅線などで構成される。
【0006】さらに、一方のリード線40aは、リード
線端子41aと電極片42aとから成り、他方のリード
線40bは、リード線端子41bと電極片42bとから
成る。
【0007】以下、図6および図7を参照して製造方法
を説明する。巻取工程(S11)で金属箔32a,32
bとフィルム31a,31bとをそれぞれ交互に重ね合
わせ、巻き取る。
【0008】巻回の途中、リード線40a,40bが適
当な位置に挿入され、電極片42a,42bがたとえば
スポット溶接などでそれぞれ金属箔32a,32bに溶
着される。このように、溶着することにより、金属箔3
2a,32bとリード線端子41a,41bとの電気的
および機械的な強固な接続を得る(S12)。
【0009】金属箔32a,32bは、電極を構成して
おり、各々の電極とリード線40a,40bがそれぞれ
接続されることにより、リード型のコンデンサの形態を
得る。さらに、誘電体層を形成するフィルム31a,3
1bと金属箔32a,32bとを重ねて巻き付けること
により巻回型のフィルムコンデンサが形成される(S1
3)。
【0010】このようにして得た素子本体を後工程(S
14)の熱プレス用の治具(図示せず)へ固定する。熱
プレス工程(S14)で、フィルム31a,31b、金
属箔32a,32bを加熱しながら加圧し、金属箔とフ
ィルムを密着させる。
【0011】さらに後工程の脱気処理を行う樹脂含浸、
樹脂硬化工程(S16,S17)へ移行する前に、金属
リード端子41a,41bへ樹脂が付着しないように剥
離剤を塗布する(S15)。
【0012】剥離剤の塗布後、樹脂含浸、樹脂硬化を繰
り返し行い(S16、S17)、検査工程(S18)へ
移行する。そして、検査工程(S18)では、外観検査
を行い、検査終了後、容量値、複素誘電率の測定などを
行い、定格などの部品特性を印刷する捺印工程(S1
9)へ移行する。この工程(S19)終了後、巻回型の
コンデンサを治具およびテープから取り外し、最終製品
としている。
【0013】ここで、脱気処理の含浸工程(S16,S
17)を繰り返す理由として、以下の2点が挙げられて
いる。熱プレスの工程(S14)で、フィルム31a,
31b層にエアーギャップが残留してしまい、その残留
部分に吸湿しやすく、しかも加熱したときにはエアーギ
ャップ内の空気の膨張等により外装樹脂が割れやすい。
また、エアーギャップにより、コロナ放電が生じ易く、
かつ交流電圧を印加したときに振動音の発生源となる。
【0014】以上の理由により、樹脂含浸,樹脂硬化工
程(S16,S17)は、省略することが不可能となっ
ており、製造工程の効率化に大きな障害となっていた。
また、加熱収縮率の大きなフィルム、たとえばポリスチ
レンを使用することにより、樹脂含浸工程を設けず、加
熱エージングのみを用いて、フィルムと金属箔の密着力
を得、工程を簡素化することができるが、加熱収縮率の
小さなポリエステルフィルムを用いた場合、上述の理由
により、樹脂含浸工程を省略することが不可能となって
いる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、この
種のコンデンサにあっては、フィルムと電極箔との密着
力を(特に加熱収縮率の小さなポリエステルフィルムの
場合)、加熱、加圧処理による熱プレスにより得なけれ
ばならず、さらにエアーギャップの除去のため樹脂含浸
工程が必要となり、製造工程の簡素化が図れないという
問題があった。
【0016】本発明は、上記問題を鑑み、ポリエステル
フィルムを用いたフィルムコンデンサの製造工程の簡素
化を図り、所望の電気性能を得るフィルムコンデンサの
製造方法およびフィルムコンデンサを提供することを目
的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明に係る請求項1記
載のフィルムコンデンサの製造方法は、電極層と、加熱
することにより収縮し、この収縮力により巻回されたフ
ィルム同士を圧着することが可能なポリエステルフィル
ムにより形成された誘電体層とを重ね合わせて巻回し、
この巻回完了後、加熱処理のみを施し、この加熱処理に
よる前記フィルムの半径方向への収縮力を用いて、前記
巻回されたフィルムと電極層とを密に圧着してコンデン
サを形成することを特徴とするものである。
【0018】請求項2記載の本発明によるフィルムコン
デンサの製造方法は、電極層と、150℃、時間15分
での加熱収縮率が15%以上かつ温度80℃での収縮応
力が20g/10mm以上の加熱収縮特性を有するポリ
エステルフィルムとを重ね合わせて巻回し、この巻回完
了後、加熱処理のみを施し、この加熱処理による前記フ
ィルムの半径方向の収縮を用いて密に前記巻回されたフ
ィルムと電極層とを圧着してコンデンサを形成すること
を特徴とするものである。
【0019】請求項3記載の本発明によるフィルムコン
デンサの製造方法は、請求項2記載のフィルムコンデン
サの製造方法において、前記加熱処理を温度125℃以
上で時間2時間以上としたことを特徴とするものであ
る。
【0020】請求項4記載の本発明によるフィルムコン
デンサは、電極層と、加熱により収縮し、巻回されたフ
ィルム同士を圧着することが可能なポリエステルフィル
ムにより形成された誘電体層とを重ね合わせて巻回し、
この巻回完了後、加熱処理のみを施し、この加熱処理に
よる前記フィルムの半径方向への収縮力を用いて形成さ
れることを特徴とするものである。
【0021】請求項5記載の本発明によるフィルムコン
デンサは、電極層と、温度150℃、時間15分での加
熱収縮率が15%以上かつ温度80℃での収縮応力が2
0g/10mm以上の加熱収縮特性を有するポリエステ
ルフィルムにより形成された誘電体層とを重ね合わせて
巻回し、この巻回完了後、加熱処理のみを施し、この加
熱処理による前記フィルムの半径方向への収縮力を用い
て形成されることを特徴とするものである。
【0022】請求項6記載の本発明によるフィルムコン
デンサは、請求項5記載のフィルムコンデンサにおい
て、前記加熱処理を温度125℃以上で時間2時間以上
としたことを特徴とするものである。
【0023】
【作用】本発明では、加熱収縮率が従来のJIS規格を
越える大きな値のポリエステルフィルムを用い、フィル
ムを巻取る工程後、加熱エージングを行うだけで、容易
に巻回型のフィルムコンデンサを得、製造工程の簡素化
が図れる。
【0024】
【実施例】以下、本発明について図示の実施例を参照し
て説明する。図1は、本発明に係る巻回型のフィルムコ
ンデンサの製造方法を説明する製造工程図である。図
中、製造工程図には、各工程に対応する符号を順次S1
〜S6まで付してある。また、図2に本発明に係るフィ
ルムコンデンサの構成を示す展開図を示す。
【0025】図2に示すように、本発明に係る巻回型の
フィルムコンデンサは、フィルム1a,1bと、金属箔
2a,2bと、リード線10a,10bとを備える。ま
た、金属箔2a,2bは、アルミニウム箔などで構成さ
れ、また、リード線10a,10bは,それぞれ錫メッ
キ軟銅線などで構成される。さらに、一方のリード線1
0aは、リード線端子11aと電極片12aとから成
り、他方のリード線10bは、リード線端子11bと電
極片12bとから成る。
【0026】ここで、誘電体層を形成するフィルム1
a,1bは、ポリエステルフィルムたとえばポリエチレ
ンテレフタレートフィルムが用いられ、これらのフィル
ムは、温度150℃、時間15分での加熱収縮率が15
%以上かつ温度80℃での収縮応力が20g/10mm
以上の加熱収縮特性を有する。
【0027】まず、図1の工程(S1)に示す巻き取り
工程において、フィルム1a,1bと金属箔2a,2b
を交互に重ねて巻回するが、その工程の途中、図1の工
程(S2)においてリード線10a,10bを適当な位
置に挿入し、その電極片12a、12bをそれぞれ金属
箔2a,2bに溶着し、金属箔2a,2bとリード線端
子11a,11bの電気的および機械的な強固な接続を
得る。ここで、溶着方法としては、たとえば、スポット
溶接などが挙げられる。
【0028】そして、金属箔2a、2bは電極を構成
し、各々の電極とリード線10a,10bがそれぞれ接
続されることにより、リード型のコンデンサの形態を得
る。
【0029】さらに、図1の工程(S3)において、フ
ィルム1a,1bと金属箔2a,2bを重ねて巻き付け
ることにより巻回型のコンデンサを形成する。
【0030】巻き取り工程(S3)後、捺印工程(S
4)において、インク等を用いてコンデンサの外装へ定
格値などを捺印し、その後、加熱エージング工程(S
5)へ移行する。この工程(S5)で、たとえば温度1
25℃で時間2時間の加熱エージングを行う。この加熱
エージングは、たとえば恒温槽を用い、温度条件などを
制御パネルで設定して行われる。また、捺印工程(S
4)で捺印されたインクは、たとえば蒸発型などのイン
ク剤を用い、加熱エージング工程(S5)で、フィルム
1a,1bの収縮と同時にインクの乾燥が行えることが
望ましい。
【0031】そして、加熱エージング工程(S5)後、
生成されたコンデンサを常温へ取り出し、次の検査工程
(S6)へ移行する。検査工程(S6)において、目視
による外観検査および、誘電率、誘電正接、絶縁抵抗な
どの電気特性、強度などの機械特性などの検査が行われ
る。この工程(S6)終了後、最終製品となる。
【0032】次に図1の作用を説明する。本発明の巻回
型のフィルムコンデンサに使用するポリエステルフィル
ム1aまたは1bの材料特性を表1に示す。No.1は、従
来のポリエステルフィルムであり、JIS規格(JIS C
ー2318)の材料特性を有している。No.2は、本発明で用い
るポリエステルフィルムであり、点線枠にて示す加熱収
縮率の値のみ、JIS規格外の特性を有している。加熱
収縮率については、No.1,No.2のフィルムとも、複数枚
の試験片について、時間15分、温度150℃で測定し
た値(%)を示している。表中には、対比用にJIS規
格(JIS Cー2318)の内、関連事項(誘電正接、誘電率、体
積抵抗率)の抜粋も掲げてある。なお、JIS C-2318は、
電気用ポリエステルフィルムの材料特性であり、試験片
に対応する各規格値が掲記されている。
【0033】
【表1】
【0034】表1に示すように、従来のポリエステルフ
ィルムNo.1では、時間15分、温度150℃で3%以下
であった加熱収縮率が本発明で用いるポリエステルフィ
ルムNo.2では、15%以上としてあり、かなり大きな加
熱収縮率となっている。
【0035】このように大きな加熱収縮率を持ったポリ
エステルフィルムをコンデンサの誘電体層として用いれ
ば、従来のポリエステルフィルムを使用した場合に比
べ、加熱エージングによる収縮のみが大きくなる。その
他の電気特性には、従来の電気特性と同様である。
【0036】従来のポリエステルフィルムと、本発明に
使用されるポリエステルフィルムとの材料特性に関し、
図3,図4を参照してさらに詳細に説明する。図3はポ
リエステルフィルムの加熱収縮率特性を示す。横軸に温
度、縦軸に加熱収縮率を示す。また、図4は、ポリエス
テルフィルムの収縮応力特性を示す。横軸に温度、縦軸
に収縮応力を示す。
【0037】図3,図4に示す値は、図5に示すよう
に、温度の調節ができる恒温槽100内に試験片(フィ
ルム)200を入れ、固定端300(斜線を付す)から
この試験片200を鉛直にぶら下げ、その下端へ荷重P
を下向きに加えることにより測定される。
【0038】図5は、この模様を正面から見た図であ
り、下端は、自由端であり、接続用の治具400を介し
て図示しない測定機器に接続されている。なお、試験片
200は、従来のポリエステルフィルムと本発明に使用
されるポリエステルフィルムの2種類のフィルムから、
試験片を取るに充分な面積を持つ原材から縦方向と横方
向にそれぞれ切り抜かれたものがそれぞれ用意され、寸
法形状は、幅10mm、長さ150mm、厚さ5μmの
長方形状を有する。
【0039】図3および図4中、本発明に使用されるポ
リエステルフィルムから縦方向に切り抜かれた試験片に
対応する実験結果には、符号MD1を、また横方向に切
り抜かれた試験片に対応する実験結果には、符号TD1
を付してある。同様に従来品(規格品)のポリエステル
フィルムから縦方向に切り抜かれた試験片に対応する実
験結果に符号MD2,横方向に切り抜かれた試験片に対
応する試験片に符号TD2を付してある。
【0040】加熱収縮率は、荷重Pを所定の値に固定
し、温度を4℃毎上昇させ、フィルムの長さの鉛直方向
の変化量を前記測定機器により測定する。この測定値の
基準の長さ(150mm)に対する割合を100分率で
表した値を図3に示している。また、収縮応力は、温度
上昇に依らず、試験片の長さを一定に保つような鉛直下
向きの荷重Pを掛け、このときの荷重Pを測定する。す
なわち、長さを一定(150mm)に保つ為、試験片が
収縮する鉛直上向きの収縮力に対し、この長さを一定に
保つような引っ張り力を試験片の鉛直下向きへ加え、こ
のときの荷重の変化量を測定して、収縮応力としてい
る。なお、所定の温度毎に測定される荷重Pの変化量を
単位幅当たり(10mm)で換算したものを図4に示し
ている。収縮応力も、加熱収縮率と同様に毎分4℃毎、
温度を上昇させ、測定機器により測定される。
【0041】加熱収縮率は、図3に示すように、温度8
0℃近傍までは、従来品との差異がなく温度80℃以上
の特性で変化が現れている。また、図4の収縮応力は、
図3の加熱収縮率と対応しており、温度80℃〜90℃
で最大の値が得られる。すなわち、収縮応力の大きさの
変化に対応して、試験片の長手方向の寸法が収縮してお
り、収縮応力の変化の著しい温度80℃〜100℃で加
熱収縮率も急激に変動している。
【0042】本発明に使用されるポリエステルフィルム
は、このような材料特性を有しており、収縮応力の変化
が大きくなる80℃近傍から急激に加熱収縮率が大きく
なり、温度150℃で15%以上の加熱収縮率が得られ
る。言い替えれば、温度150℃で15%以上の加熱収
縮率を得るため、温度80℃での収縮応力として、20
g/10mm以上の値が必要となる。
【0043】このようなフィルムを用い、金属箔2a,
2bに、厚さ5.5 μmのアルミニウム箔を、リード線端
子11a,11bに、直径0.5mm のリード線を使用し、
巻回型のフィルムコンデンサを図1に示す製造工程(S
1〜S6)にて生成する。
【0044】従来、密着力を得るための熱プレス工程
(S14)と剥離剤塗布工程(S15)と脱気処理を行
う樹脂含浸工程および樹脂硬化工程(S16〜S17)
が上述のポリエステルフィルムを用いることにより省略
され、加熱エージング工程(S5)のみでコンデンサを
生成することが可能となる。
【0045】ここで、加熱エージングは、図3に示すよ
うに、加熱収縮特性が顕著に現れる温度で行うことが望
ましく、好ましくは、脱気処理などに要する熱量を充分
に与えるとともに加熱収縮が安定して行われる温度12
5℃以上かつ時間2時間以上の加熱条件を有することが
望ましい。
【0046】すなわち、図3に示す加熱収縮率の大きな
温度範囲で加熱エージングを行うことにより、巻回され
たフィルム1a,1bの半径方向への大きな収縮を得、
巻回型のコンデンサを得ることができる。これらのフィ
ルム1a,1bの半径方向への収縮による寸法変化を利
用し、電極層とフィルム層の強固な密着力を得、エアギ
ャップの発生を防止する。
【0047】この製造工程(S1〜S6)で製造された
コンデンサ(No.1〜No.5)の電気性能の試験を行った結
果を表2に示す。表2中、対比の為、JIS 規格(JIS C-5
113)の内、関連事項の抜粋を掲げる。JIS Cー5131は、巻
回型のフィルムコンデンサの規格であり、電気性能その
他が掲記されている。
【0048】
【表2】
【0049】No.1〜No.5に示す5つのサンプルについ
て、ばらつきもなく良好な電気特性が得られており、J
ISのコンデンサ規格を充分に満足する結果が得られて
いる。すなわち、図3に示すように温度125℃でも加
熱収縮率は15%以上得られており、このようなフィル
ムを使用し、温度125℃以上で時間2時間以上の加熱
エージング(S5)を行うことによって従来の加熱収縮
率3%以下では得られなかった半径方向への収縮力が充
分に得られることがコンデンサの電気特性(表2)から
も明らかとなっている。
【0050】従来通りに加熱収縮率3%以下のフィルム
を使用した場合には、所望の電気特性を得るために図7
のS14〜S17の工程が必要となっていた訳である。
【0051】このように、フィルムの薄膜成形での配向
特性により決定される加熱収縮率の大きなポリエチレン
テレフタレートを使用することにより、加熱エージング
のみで安定した密着力が得られ、エアギャップが発生す
ることもなく、従来の熱プレス、剥離剤塗布、樹脂含浸
工程および樹脂硬化工程(S14〜S17)を省略する
ことができる。
【0052】すなわち、従来、温度150℃で加熱収縮
率が3%以下の規格値の電気用ポリエステルフィルムを
用いたフィルムでは、達成できなかった加熱収縮による
密着強度の向上を図ることが可能となる。
【0053】なお、捺印工程のインク硬化も加熱エージ
ング工程(S5)で一括して処理できるため製造工程を
合理化できる。
【0054】また、リード線端子の機械強度をさらに増
強する場合も、加熱エージング工程後、簡単な樹脂コー
ティング工程を設け、複雑な工程を経ずに信頼性の高い
コンデンサを製造することができる。
【0055】なお、本実施例では、巻回途次にリード線
を溶着しているが、本発明はこれに限定されず、1対の
電極箔を誘電体幅の左右方向にそれぞれ相反してはみ出
す様巻き、巻回完了後、加熱処理を施し、形成されたコ
ンデンサの両端に金属溶着後、リード線を接続するよう
に溶着してもよい。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、コ
ンデンサ素子本体を巻取り後、ポリエステルフィルムを
加熱するだけで、巻回型のコンデンサが形成でき、製造
工程の簡素化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による巻回型のフィルムコンデンサの製
造方法を説明する製造工程図である。
【図2】本発明による巻回型のフィルムコンデンサの構
成を示す展開図である。
【図3】本発明による巻回型のフィルムコンデンサに使
用されるポリエステルフィルムの加熱収縮率の特性を示
す図である。
【図4】本発明による巻回型のフィルムコンデンサに使
用されるポリエステルフィルムの収縮応力の特性を示す
図である。
【図5】加熱収縮率と収縮応力の測定方法を説明する図
である。
【図6】従来の巻回型のフィルムコンデンサの構成を示
す展開図である。
【図7】従来の巻回型のフィルムコンデンサの製造方法
を説明するための製造工程図である。
【符号の説明】
1a,1b …ポリエステルフィルム 2a,2b …金属箔 10a,10b…リード線

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電極層と、加熱することにより収縮し、こ
    の収縮力により巻回されたフィルム同士を圧着すること
    が可能なポリエステルフィルムにより形成された誘電体
    層とを重ね合わせて巻回し、この巻回完了後、加熱処理
    のみを施し、この加熱処理による前記フィルムの半径方
    向への収縮力を用いて、前記巻回されたフィルムと電極
    層とを密に圧着してコンデンサを形成することを特徴と
    するフィルムコンデンサの製造方法。
  2. 【請求項2】電極層と、温度150℃、時間15分での
    加熱収縮率が15%以上かつ温度80℃での収縮応力が
    20g/10mm以上の加熱収縮特性を有するポリエス
    テルフィルムとを重ね合わせて巻回し、この巻回完了
    後、加熱処理のみを施し、この加熱処理による前記フィ
    ルムの半径方向の収縮を用いて前記巻回されたフィルム
    と電極層とを密に圧着してコンデンサを形成することを
    特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
  3. 【請求項3】前記加熱処理は、温度125℃以上で時間
    2時間以上であることを特徴とする請求項2記載のフィ
    ルムコンデンサの製造方法。
  4. 【請求項4】電極層と、加熱により収縮し、巻回された
    フィルム同士を圧着することが可能なポリエステルフィ
    ルムにより形成された誘電体層とを重ね合わせて巻回
    し、巻回後、加熱処理のみを施し、この加熱処理による
    前記フィルムの半径方向への収縮力を用いて前記巻回さ
    れたフィルムと電極層とを密に圧着して形成されること
    を特徴とするフィルムコンデンサ。
  5. 【請求項5】電極層と、温度150℃、時間15分での
    加熱収縮率が15%以上、かつ温度80℃での収縮応力
    が20g/10mm以上の加熱収縮特性を有するポリエ
    ステルフィルムで形成された誘電体層とを重ね合わせて
    巻回し、この巻回完了後、加熱処理のみを施し、この加
    熱処理による前記フィルムの半径方向への収縮力を用い
    て前記巻回されたフィルムと電極層とを密に圧着して形
    成されることを特徴とするフィルムコンデンサ。
  6. 【請求項6】前記加熱処理は、温度125℃以上で時間
    2時間以上であることを特徴とする請求項5記載のフィ
    ルムコンデンサ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100458212B1 (ko) * 1995-12-22 2005-04-06 미쓰비시 가가꾸 폴리에스테르 필름 가부시키가이샤 폴리에스테르필름및그를사용한커패시터
KR100744614B1 (ko) * 2006-02-22 2007-08-01 성호전자(주) 필름 커패시터의 제조방법
KR100768429B1 (ko) * 2007-07-03 2007-10-18 성호전자(주) 개량된 필름 커패시터의 제조방법

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