JPH07253367A - 路面摩擦係数検出装置 - Google Patents

路面摩擦係数検出装置

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JPH07253367A
JPH07253367A JP4382694A JP4382694A JPH07253367A JP H07253367 A JPH07253367 A JP H07253367A JP 4382694 A JP4382694 A JP 4382694A JP 4382694 A JP4382694 A JP 4382694A JP H07253367 A JPH07253367 A JP H07253367A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】車輪の復元モーメントSAMとコーナリングフ
ォースCFと路面摩擦係数μとの間に成立する関係を利
用して路面μを検出する装置において、その検出値の信
頼度を考慮して路面μの最終的な検出値を決定すること
により、路面μの検出精度を向上させる。 【構成】SAMとCFとの関係に基づいて路面μの今回
の暫定値μ0を決定し(S1 〜3,8)、舵角速度θ’に基づ
いてその暫定値μ0の信頼度Sを推定し(S4,5)、少なく
ともその暫定値μ0と予め設定された路面μS とに基づ
いて路面μの今回の最終値μ1を、信頼度Sが上昇する
につれて暫定値μ0に近づき、低下するにつれて路面μ
S に近づくように決定する(S7,9) 。路面μS は路面μ
1の利用対象の要求に応じて設定されるため、当該路面
摩擦係数検出装置とその利用対象とのマッチング性が向
上し、両者の信頼性が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は路面の摩擦係数を間接に
検出する装置およびそれを用いたスロットル制御装置に
関するものであり、特に、検出精度および制御精度の向
上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】路面の摩擦係数(以下、路面μともい
う)を間接に検出する技術が既に提案されている。それ
は例えば、車両制動時に車輪がロックすることを防止す
るアンチロック制御中における車両減速度の大きさが路
面μに対応するという事実に基づき、その車両減速度か
ら路面μを検出する技術である。また、車両旋回中に車
輪の横スリップ角がある程度大きくなるとその車輪に作
用するコーナリングフォースが飽和し、そのときの値が
路面μに対応するという事実(図1参照)に基づき、コ
ーナリングフォースの飽和値から路面μを検出する技術
も既に提案されている。この技術の一例が特開昭60−
148769号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、それら従来の
路面μ検出技術はいずれも、車輪グリップ状態が限界に
近い状態になって初めて路面μを検出し得るものであ
り、車輪グリップ状態が限界に近くなる以前に路面μを
検出することは困難である。
【0004】このような事情を背景とし、本出願人は、
車輪グリップ状態が限界に近い状態にあるか否かを問わ
ず路面μを検出し得る技術について研究を行い、その結
果、次のような事実を見い出した。すなわち、車輪に作
用する復元モーメントおよびコーナリングフォースと路
面μとの間に一定の関係が成立することを見い出したの
である。その関係とは具体的に、図2にグラフで表すよ
うに、ステアリングホイールの操舵角を増加させると、
コーナリングフォースが増加するにつれて復元モーメン
トも増加するが、その増加勾配が路面μが増加するにつ
れて増加するという関係である。さらに、コーナリング
フォースがある程度大きくなると、コーナリングフォー
スが増加し続けても復元モーメントが減少の方向に転
じ、そのときの復元モーメントの値が路面μが大きいほ
ど大きいという関係も成立する。
【0005】これに対し、前記従来の路面μ検出技術に
おいては、図1に示すように、路面μが大きいほどコー
ナリングフォースの増加勾配が増加するという傾向はあ
るものの、復元モーメントとコーナリングフォースとの
関係におけるほどには顕著ではなく、車輪の横スリップ
角が0に近く、コーナリングフォースも0に近い領域で
は、コーナリングフォースの増加勾配は路面μによって
ほとんど変化しない。
【0006】要するに、復元モーメントとコーナリング
フォースとの関係を用いれば、車輪の横スリップ角とコ
ーナリングフォースとの関係を用いるより、コーナリン
グフォースが小さい領域から路面μを検出し得るのであ
る。
【0007】そこで、このような知見に基づき、本出願
人は先に、(a) 車輪にそれの横スリップ角を減らす方向
に作用する復元モーメントを検出する復元モーメント検
出手段と、(b) その車輪に作用するコーナリングフォー
スを検出するコーナリングフォース検出手段と、(c) 復
元モーメント検出手段による検出復元モーメントとコー
ナリングフォース検出手段による検出コーナリングフォ
ースとの関係に基づき、前記車輪が接触している路面の
摩擦係数を検出する路面摩擦係数検出手段とを含む路面
摩擦係数検出装置を開発した。
【0008】しかしながら、さらに研究を続けた結果、
この開発装置にも改良の余地があることが判明した。す
なわち、検出された路面μの精度が常に高いとは限ら
ず、路面μの検出状態のいかんを問わず常に路面μの検
出精度が高いと判断してその路面μを車両制御に用いた
のでは、正常な車両制御が確保されないおそれがあると
いう問題があることが判明したのである。以下、この問
題が発生する理由をいくつかの例に基づいて具体的に説
明する。
【0009】図2のグラフから明らかなように、車両が
完全に直進状態にある状態では、当然に復元モーメント
とコーナリングフォースとの関係に基づいて路面μを検
出することは不可能であるが、直進状態に十分に近い状
態では、路面μの検出が可能である。しかし、復元モー
メントとコーナリングフォースとの関係は直進状態に近
いほど路面μによって顕著に変化しなくなる。そのた
め、車両が現在、直進状態に十分に近い状態にあるか否
かを問わず、検出された路面μの精度が高いと判断して
その路面μを車両制御に用いたのでは、正常な車両制御
が確保されないおそれがある。
【0010】また、図3にグラフで表すように、本出願
人の研究により、同一の路面μにおける復元モーメント
とコーナリングフォースとの関係は常に1対1の関係に
あるわけではなく、同一のコーナリングフォースに対応
する復元モーメントがステアリングホイールの切込み行
程と切戻し行程とで同一にならず、いわゆるヒステリシ
スを有することが判明し、しかも、そのヒステリシスは
運転者がステアリングホイールを回動操作する速度すな
わち舵角速度が速いほど顕著になるという事実も判明し
た。そのため、ヒステリシスの大小を問わず、検出され
た路面μの精度が高いと判断してその路面μを車両制御
に用いたのでは、正常な車両制御が確保されないおそれ
がある。
【0011】そこで、この問題を解決するために本出願
人は上記開発装置を次のように改良することを提案し
た。すなわち、路面μの検出精度を向上させるために、
開発装置において路面摩擦係数検出手段を、操舵系の状
態を表す操舵状態信号に基づいて路面摩擦係数の検出精
度を推定し、推定した検出精度と路面摩擦係数検出手段
による検出値(生の検出値)とを総合的に用いて最終的
な検出値を決定するものとすることを提案したのであ
る。
【0012】そして、本出願人は「路面摩擦係数検出手
段」の望ましい一態様として次のものを開発した。それ
は、今回の検出復元モーメントと検出コーナリングフォ
ースとの関係に基づいて路面摩擦係数の今回の暫定値で
ある暫定路面摩擦係数を決定し、その今回の暫定路面摩
擦係数の検出精度を推定し、その今回の暫定摩擦係数と
路面摩擦係数の前回の最終値である最終路面摩擦係数と
に基づいて今回の最終路面摩擦係数を、推定した検出精
度が上昇するにつれて今回の暫定路面摩擦係数に近づ
き、低下するにつれて前回の最終路面摩擦係数に近づく
ように決定する路面摩擦係数検出手段である。
【0013】しかしながら、その後の研究により、この
改良装置にも改良の余地があることが判明した。この改
良装置では、検出精度低下状態にあると推定し続けられ
る場合には、各回の最終路面摩擦係数が前回の最終摩擦
路面係数に一致し続けられ、結局、各回の最終路面摩擦
係数が、その検出精度低下状態に先行する検出精度良好
状態における最後の最終路面摩擦係数に固定される傾向
が強くなる。すなわち、具体例を用いて説明すれば、車
両が旋回状態から直進状態に移行した場合には、直進状
態では検出精度低下状態と推定されるから、直進中、各
回の最終路面摩擦係数が先行する旋回状態における最後
の最終路面摩擦係数に固定される傾向が強くなるのであ
る。しかし、先の旋回状態における実際の路面μと後の
直進状態における実際の路面μとが常に一致するとは限
らないから、直進中に、摩擦係数の高い高μ路上で摩擦
係数が低いと誤って検出されてしまったり、摩擦係数の
低い低μ路上で摩擦係数が高いと誤って検出されてしま
うことがある。このことは直進走行の時間が短い場合に
はそれほど大きな問題にはならないが、長い場合には路
面μの誤検出状態が継続し、大きな問題となるおそれが
ある。
【0014】一方、検出された路面μは種々の車両制御
装置に用いられる。路面μを用いる車両制御装置には例
えば、車両制動時に車輪がロックすることを防止するア
ンチロック制御装置,車両発進・加速時に駆動輪がスピ
ンしたり、旋回加速時に車両が横滑りすることを防止す
るトラクション制御装置,前後輪への駆動力配分を制御
する駆動力配分制御装置,前後輪への制動力配分を制御
する制動力配分制御装置,車両の後輪舵角を制御する後
輪舵角制御装置などがある。
【0015】それら車両制御装置は一定の方針に従って
設計されるのが一般的である。例えば、アンチロック制
御装置を例にとって説明すれば、低μ路上での車体しり
振り防止を優先させることを方針として設計される場合
や、高μ路上での制動距離短縮を優先させることを方針
として設計される場合があるのである。
【0016】したがって、車両制御装置のこのような事
情を考慮すれば、それに路面μを供給する路面摩擦係数
検出装置は、検出精度低下状態で先の検出精度良好状態
での最後の路面摩擦係数を供給することが常に適当であ
るとは限らず、検出精度低下状態で供給する路面μは車
両制御装置の設計方針との関係において決定されるべき
であり、このようにすれば路面摩擦係数検出装置とそれ
の利用対象である車両制御装置とのマッチング性が向上
し、ひいては路面摩擦係数検出装置および車両制御装置
の信頼性が向上する。
【0017】それらの知見に基づき、請求項1の発明
は、検出精度低下状態では路面μの各回の値を前回値で
はなく予め設定された値に近づくように決定することに
より、検出精度低下状態でも適正な路面μを出力可能と
することを課題としてなされたものである。
【0018】請求項2の発明は、その請求項1の発明に
おいて路面μの検出精度の推定精度を向上させることを
課題としてなされたものである。
【0019】請求項3の発明は、それら請求項1または
2の発明を車両制御装置の一例であるスロットル制御装
置に適用する場合に好適な一実施態様であって、低μ路
上での加速操作を簡単なものにすることを課題としてな
されたものである。
【0020】請求項4の発明は、その請求項3の発明に
おいて路面μの検出精度低下状態でも適正なスロットル
制御を実行可能とすることを課題としてなされたもので
ある。
【0021】請求項5の発明は、それら請求項3または
4の発明において、エンジンにより駆動される駆動輪の
実駆動トルクが路面μとの関係において過大とならない
ようにスロットル開度をフィードフォワード式で制御可
能とすることを課題としてなされたものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】それぞれの課題を解決す
るために、請求項1の発明は、図4にブロック図で概念
的に示すように、(a) 前記復元モーメント検出手段1
と、(b) 前記コーナリングフォース検出手段2と、(c)
前記路面摩擦係数検出手段3とを含む路面摩擦係数検出
装置において、路面摩擦係数検出手段3を、今回の検出
復元モーメントと検出コーナリングフォースとの関係に
基づいて路面摩擦係数の今回の暫定値である暫定路面摩
擦係数を決定し、操舵系の状態を表す操舵状態信号に基
づいてその今回の暫定路面摩擦係数の検出精度を推定
し、少なくともその今回の暫定路面摩擦係数と予め設定
された設定路面摩擦係数とに基づいて路面摩擦係数の今
回の最終値である最終路面摩擦係数を、推定した検出精
度が上昇するにつれて今回の暫定路面摩擦係数に近づ
き、低下するにつれて設定路面摩擦係数に近づくように
決定するものとしたことを特徴とする。
【0023】なお、ここに「復元モーメント」は例え
ば、車輪のキングピン回りに作用するモーメントとした
り、セルフアライニングトルクSATとすることができ
る。
【0024】また、「復元モーメント検出手段1」は例
えば、パワーステアリング装置を備えた車両において
は、それのパワーシリンダの圧力と運転者によりステア
リングホイールに加えられる操舵トルクとに基づいて復
元モーメントを検出する態様とすることができる。
【0025】また、「コーナリングフォース検出手段
2」は例えば、車両の2自由度モデルを想定し、車体の
ヨーレートの時間微分値と車両重心点における横加速度
とに基づいてコーナリングフォースを間接に検出する態
様としたり、例えば6分力計等を用いてコーナリングフ
ォースを直接に検出する態様とすることができる。
【0026】また、「路面摩擦係数検出手段3」は、例
えば、コーナリングフォースがある値(基準値)をとる
ときの復元モーメントと路面μとの関係を予め記憶し、
その関係に従い、検出復元モーメントに対応する路面μ
を決定する態様としたり、復元モーメントとコーナリン
グフォースと路面μとの間に成立する関係を例えば関
数,テーブル,マップ等として予め記憶し、その関係に
従い、検出復元モーメントと検出コーナリングフォース
との双方に対応する路面μを決定する態様とすることが
できる。また、検出復元モーメントのピーク値を検出
し、その値によって路面μを検出する態様とすることも
できる。
【0027】この「路面摩擦係数検出手段3」は、さら
に、検出コーナリングフォースに対する検出復元モーメ
ントの増加勾配によって路面μを検出する態様とするこ
とができる。検出復元モーメントの増加勾配は、検出復
元モーメントの一定微小時間当たりの増加量を検出コー
ナリングフォースの一定微小時間当たりの増加量で割り
算することによって、すなわち、検出復元モーメントの
検出コーナリングフォースに関する微分値として検出し
たり、単に、検出復元モーメントを検出コーナリングフ
ォースで割った値として検出することができる。
【0028】なお、以上「路面摩擦係数検出手段3」に
ついて例示したいくつかの態様は横軸にコーナリングフ
ォース、縦軸に復元モーメントが取られたグラフが想定
されている場合の態様であったが、この「路面摩擦係数
検出手段3」は、横軸に復元モーメント、縦軸にコーナ
リングフォースが取られたグラフが想定されている場合
の態様として実施することもできる。例えば、検出復元
モーメントがある値(基準値)をとるときの検出コーナ
リングフォースの値によって路面μを検出する態様とす
ることもできるのである。
【0029】また、「路面摩擦係数検出手段3」におけ
る「操舵状態信号」には例えば、検出復元モーメント,
検出コーナリングフォース,ステアリングホイールの操
作速度等、操舵系自体の状態を表す信号はもちろん、操
舵系に対する外乱、すなわち路面の凹凸度を表す信号も
含まれる。そして、「路面摩擦係数検出手段3」は例え
ば、検出復元モーメントと検出コーナリングフォースと
の少なくとも一方が0に近い設定値以下である場合には
検出精度が低いと推定し、それ以外の場合には、その設
定値から外れるにつれて検出精度が上昇するように推定
する態様とすることができる。また、ステアリングホイ
ールの操作速度の絶対値に基づき、それが大きいほど検
出精度が低いと推定する態様とすることもできる。
【0030】また、この請求項1の発明に係る路面摩擦
係数検出装置は、前記のアンチロック制御装置,トラク
ション制御装置,駆動力配分制御装置,制動力配分制御
装置および後輪舵角制御装置を始めとする各種車両制御
装置において利用可能である。
【0031】請求項2の発明は、請求項1に記載の路面
摩擦係数検出装置において、路面摩擦係数検出手段3
を、操舵状態信号に基づいて暫定路面摩擦係数の検出精
度の暫定値である暫定検出精度を逐次決定し、決定した
複数の暫定検出精度を平滑化することによって検出精度
の最終値である最終検出精度を逐次決定する平滑化型検
出精度推定手段を含むものとしたことを特徴とする。
【0032】請求項3の発明は、図5にブロック図で概
念的に示すように、請求項1または2に記載の復元モー
メント検出手段1,コーナリングフォース検出手段2お
よび路面摩擦係数検出手段3を含む路面摩擦係数検出装
置を備え、それによって検出された路面摩擦係数に基づ
いてエンジンのスロットルバルブ5の開度であるスロッ
トル開度を制御するスロットル制御装置であって、(a)
運転者による加速操作部材の操作量を検出する加速操作
量検出手段6と、(b) スロットルバルブ5を電気的に駆
動するスロットルバルブ駆動装置7と、(c) 検出された
加速操作量に基づいて目標スロットル開度をそれの加速
操作量に対する増加勾配が前記路面摩擦係数検出装置に
より検出された路面摩擦係数が低い場合において高い場
合におけるより緩やかとなるように決定し、決定した目
標スロットル開度が実現されるようにスロットルバルブ
駆動装置7を制御するコントローラ8とを含むスロット
ル制御装置を提供することを特徴とする。
【0033】請求項4の発明は、その請求項3の発明に
おいて、前記コントローラ8を、目標スロットル開度を
それの前記増加勾配が前記路面摩擦係数検出装置により
推定された検出精度が低い場合と高い場合とで異なるよ
うに決定する検出精度応答型目標スロットル開度決定手
段を含むものとしたことを特徴とする。
【0034】請求項5の発明は、それら請求項3または
4の発明において、前記コントローラ8を、前記路面摩
擦係数検出装置により検出された路面摩擦係数に基づ
き、前記エンジンにより駆動される駆動輪のスリップ状
態量が設定値を超えるときにおける駆動系の駆動トルク
を基準駆動トルクとして推定し、目標スロットル開度を
それの前記増加勾配が実駆動トルクがその基準駆動トル
クを超えた後において超える前におけるより緩やかとな
るように決定する駆動トルク応答型目標スロットル開度
決定手段を含むものとしたことを特徴とする。
【0035】なお、ここに「駆動輪のスリップ状態量」
は例えば、駆動輪の車輪速と車両の走行速度との差であ
るスリップ量を意味する場合や、そのスリップ量を車両
の走行速度で割り算した値であるスリップ率(スリップ
比ともいう)を意味する場合や、駆動輪の車輪速の時間
微分値である車輪加速度を意味する場合や、スリップ量
またはスリップ率の時間微分値を意味する場合などがあ
る。
【0036】
【作用】前記のように、路面摩擦係数検出装置が検出精
度低下状態にあるときに必ず先の検出精度良好状態にお
ける最後の路面摩擦係数を出力することは適当ではな
く、検出精度低下状態において出力する路面μはその利
用対象の要求、すなわち、例えば、車両制御装置の要求
との関係において決定されるべきである。
【0037】このような知見に基づき、請求項1の発明
に係る路面摩擦係数検出装置においては、路面摩擦係数
検出手段3が、今回の検出復元モーメントと検出コーナ
リングフォースとの関係に基づいて今回の暫定的な路面
摩擦係数を決定し、操舵状態信号に基づいてその暫定路
面摩擦係数の検出精度を推定し、少なくともその今回の
暫定路面摩擦係数と予め設定された設定路面摩擦係数と
に基づいて今回の最終的な路面摩擦係数を、推定した検
出精度が上昇するにつれて今回の暫定路面摩擦係数に近
づき、低下するにつれて設定路面摩擦係数に近づくよう
に決定する。
【0038】ここに「設定路面摩擦係数」は路面μの利
用対象の要求に応じて定められる。例えば、路面μの利
用対象がアンチロック制御装置である場合には、低μ路
上での車体しり振り防止を優先させるアンチロック制御
装置については、設定路面摩擦係数が例えば低μ路また
は極低μ路に対応する値とされ、一方、高μ路上での制
動距離短縮を優先させるアンチロック制御装置について
は、設定路面摩擦係数が例えば高μ路に対応する値とさ
れることになる。
【0039】また、路面μの利用対象が、路面μに基づ
いてエンジンのスロットルバルブの開度を制御可能なス
ロットル制御装置である場合には、車両の加速性を優先
させるスロットル制御装置については、設定路面摩擦係
数が例えば高μ路に対応する値とされ、一方、駆動輪の
スピン防止を優先させるスロットル制御装置について
は、設定路面摩擦係数が例えば低μ路に対応する値とさ
れることになる。
【0040】暫定路面摩擦係数の検出精度の推定値は、
電気的・機械的ノイズ等の原因で瞬間的に変化すること
があるが、検出精度の真の値は連続性を有しており、急
増も急減もほとんどしないのが普通である。
【0041】そこで、請求項2の発明に係る路面摩擦係
数検出装置においては、平滑化型検出精度推定手段が、
操舵状態信号に基づいて暫定検出精度を逐次決定し、今
回までに決定した複数の暫定検出精度を平滑化すること
によって今回の最終検出精度を決定する。したがって、
最終検出精度が予定外に急増したり急減したりすること
が防止され、最終検出精度の推定精度が向上する。
【0042】請求項3の発明に係るスロットル制御装置
においては、コントローラ8が、目標スロットル開度を
それの増加勾配が路面摩擦係数検出装置により検出され
た路面摩擦係数が低い場合において高い場合におけるよ
り緩やかとなるように決定する。したがって、加速操作
量が同じ速度で増加させられた場合に、低μ路において
高μ路におけるより実スロットル開度すなわち駆動系の
実駆動トルクが緩やかに上昇し、運転者は低μ路におけ
る車両の発進・加速をスムーズに行うことが容易とな
る。
【0043】前記のように、請求項1の発明において
は、路面μの検出低下状態でも路面μの利用対象が正常
な動作を確保するための対応が路面摩擦係数検出装置側
で行われる。しかし、そのような対応は利用対象側で行
うことも可能である。
【0044】このような知見に基づき、請求項4の発明
に係るスロットル制御装置においては、検出精度応答型
目標スロットル開度決定手段が、目標スロットル開度を
それの増加勾配が路面摩擦係数検出装置により推定され
た検出精度が低い場合と高い場合とで異なるように決定
する。
【0045】ここに「検出精度応答型目標スロットル開
度決定手段」は例えば、スロットル制御装置が車両の加
速性を優先させることを方針として設計される場合に
は、検出精度低下状態で目標スロットル開度の増加勾配
を通常より急にするものとされ、一方、駆動輪のスピン
防止を優先させることを方針として設計される場合に
は、検出精度低下状態で目標スロットル開度の増加勾配
を通常より緩やかにするものとされる。
【0046】請求項5の発明に係るスロットル制御装置
においては、駆動トルク応答型目標スロットル開度決定
手段が、路面摩擦係数検出装置により検出された路面摩
擦係数に基づき、駆動輪のスリップ状態量が設定値を超
えるときにおける駆動系の駆動トルクを基準駆動トルク
として推定し、目標スロットル開度をそれの増加勾配が
実駆動トルクがその基準駆動トルクを超えた後において
超える前におけるより緩やかとなるように決定する。
【0047】すなわち、この請求項5の発明において
は、加速操作量に本来対応する目標スロットル開度をそ
のまま実現したのでは駆動輪にスピン傾向が生ずると予
想される場合に、実スロットル開度の本来の増加勾配よ
り緩やかな増加勾配で実目標スロットル開度が変化させ
られ、これにより、加速操作量が路面μとの関係におい
て過大となっても実駆動トルクが適正に低減させられて
駆動輪のスピンが抑制されるのであり、路面μをフィー
ドフォワードすることによって駆動輪がスピンしないよ
うに実スロットル開度が制御されるのである。
【0048】なお、駆動輪のスピンを抑制する形式に
は、請求項5の発明のフィードフォワード制御によって
行う形式の他に、フィードバック制御によって行う形式
が既に存在する。後者については実施例において具体的
に説明する。そして、請求項3または4のスロットル制
御装置は、駆動輪のスピン抑制をフィードフォワード制
御によって行うこともフィードバック制御によって行う
ことも可能である。また、請求項5の発明は、それのフ
ィードフォワード制御と併せてフィードバック制御をも
行うものとすることができ、このようにすれば、フィー
ドフォワード制御によって避けることができずに発生し
てしまったスピンを迅速に消滅させることが可能とな
る。
【0049】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、各請求
項の発明によれば、路面摩擦係数検出装置が路面μを精
度よく検出することが困難であって暫定路面摩擦係数の
検出精度が低下する状態でも、その路面μを利用する対
象との関係において適正な路面μを出力可能となり、路
面摩擦係数検出装置と利用対象とのマッチング性が向上
するという効果が得られる。
【0050】特に請求項2の発明によれば、路面μの検
出精度の推定精度が向上するから、その推定値の影響を
受ける路面μの検出精度も向上するという効果も得られ
る。
【0051】また、特に請求項3の発明によれば、低μ
路において高μ路におけるより実スロットル開度の加速
操作量に対する増加勾配が緩やかとされるから、低μ路
でも運転者が車両の発進・加速を簡単に行うことができ
るという効果も得られる。
【0052】また、特に請求項4の発明によれば、路面
μの検出精度低下状態でも適正な目標スロットル開度を
決定可能となり、常に適正なスロットル制御が確保され
るという効果も得られる。
【0053】また、特に請求項5の発明によれば、路面
μをフィードフォワードすることによって駆動輪がスピ
ンしないように実スロットル開度が制御されるから、駆
動輪のスピン発生を予測しながら実スロットル開度を制
御可能となり、駆動輪スピンの未然防止を容易に図り得
るという効果も得られる。
【0054】
【実施例】以下、各請求項の発明を図示の実施例に基づ
いて具体的に説明する。図示の実施例は、路面摩擦係数
検出装置とスロットル制御装置とを含む車両制御装置で
ある。この車両制御装置は図6に示すように、操舵車輪
である左右前輪10と左右後輪12とを備えた4輪車両
に設けられている。左右前輪10には、運転者によりス
テアリングホイール20に加えられた操舵トルクTH
パワーシリンダ22を有するパワーステアリング装置に
よりアシストされて伝達され、これにより、前輪舵角δ
F がステアリングホイール20の操舵角θに応じて機械
的に変化させられる。
【0055】左右後輪12は、駆動源としてのエンジン
および自動変速機を主体とする駆動系によって駆動され
る駆動車輪である。具体的には、図7に示すように、エ
ンジン(図において「ENG」で表す)23がトルクコ
ンバータ(図において「T/C」で表す)24,自動変
速機(図において「A/T」で表す)25および最終減
速機(図において「F/D」で表す)26を順に経て左
右後輪12に接続されている。エンジン23の出力回転
数Ne (すなわちトルクコンバータ24の入力回転数)
はエンジン回転数センサ27により、トルクコンバータ
24の出力回転数Nt (すなわち自動変速機25の入力
回転数)はトルクコンバータ回転数センサ28によりそ
れぞれ検出される。
【0056】エンジン23には、図8に示すように、そ
れの吸気マニホールド29においてメインスロットルバ
ルブ30とサブスロットルバルブ32とが互いに直列に
配設されている。メインスロットルバルブ30は加速操
作部材としてのアクセルペダル34によって機械的に駆
動される。メインスロットルバルブ30の回転位置はア
クセルペダル34の操作位置に応じて一義的に決まる。
これに対し、サブスロットルバルブ32はサブスロット
ルアクチュエータ36によって駆動され、サブスロット
ルバルブ32の回転位置が自動的に制御される。サブス
ロットルアクチュエータ36は例えば、電動モータを駆
動源としてそれの回転を制御することによってサブスロ
ットルバルブ32の回転位置を制御するモータ式とした
り、エンジンの負圧源を駆動源としてその圧力を電磁弁
で制御することによってサブスロットルバルブ32の回
転位置を制御する負圧式とすることができる。
【0057】なお、以下の説明においては、メインスロ
ットルバルブ30およびサブスロットルバルブ32の回
転位置をともに、開度(%)で表す。各スロットルバル
ブ30,32の開度は、各スロットルバルブ30,32
が最も閉じた位置で0%、最も開いた回転位置で100
%となるように各スロットルバルブ30,32の回転位
置を表す。また、それに準じてアクセルペダル34の操
作位置も開度で表す。アクセルペダル34の開度は、ア
クセルペダル34がメインスロットルバルブ30を最も
閉じさせる位置で0%、最も開かせる位置で100%と
なるようにアクセルペダル34の操作位置を表す。
【0058】アクセルペダル34およびサブスロットル
バルブ32のそれぞれの開度は、アクセル開度センサ3
8およびサブスロットル開度センサ40によって検出さ
れる。各開度センサ38,40は例えば、アクセルペダ
ル34の操作系における回転軸およびサブスロットルバ
ルブ32の回転軸の回転位置をポテンショメータの原理
等を利用して電気的に検出し、その回転位置に応じた電
気信号を出力する形式とされる。
【0059】すなわち、本実施例においては、スロット
ル制御装置がアクセル開度センサ38を請求項3〜5の
各発明における「加速操作量検出手段」、サブスロット
ルバルブ32を「スロットルバルブ」、サブスロットル
アクチュエータ36を「スロットルバルブ駆動装置」と
してそれぞれ備えているのである。
【0060】車両制御装置はさらに、図9に示す車両制
御コンピュータ50を備えている。車両制御コンピュー
タ50は同図に示すように、処理手段としてのCPU5
2,第一記憶手段としてのROM54および第二記憶手
段としてのRAM56を備えている。
【0061】車両制御コンピュータ50の入力側には各
種センサが接続されている。前記エンジン回転数センサ
27,トルクコンバータ回転数センサ28,アクセル開
度センサ38およびサブスロットル開度センサ40に加
えて、前輪舵角センサ60,ヨーレートセンサ62,車
速センサ64,操舵トルクセンサ66,圧力センサ6
8,70および横加速度センサ72が接続されているの
である。一方、車両制御コンピュータ50の出力側には
前記サブスロットルアクチュエータ36が接続されてい
る。
【0062】前記ROM54には、図10にフローチャ
ートで表されている路面μ検出ルーチン,図11にフロ
ーチャートで表されているスロットル制御ルーチンを始
めとする各種プログラムが予め記憶されている。CPU
52はそれら各種プログラムをRAM56を利用しつつ
実行することにより、路面μを考慮したスロットル制御
を実行する。
【0063】以下、それら路面μ検出ルーチンおよびス
ロットル制御ルーチンの内容を説明する。まず、路面μ
検出ルーチンについて説明する。まず、概略的に説明す
る。路面μは、左右前輪10にそれのキングピン回りに
作用する復元モーメントSAM(図6参照)と左右前輪
10に作用するコーナリングフォースCFとの関係に基
づいて検出される。
【0064】復元モーメントSAMは、左右前輪10か
ら前輪操舵系に入力される力に基づいて検出される。具
体的には、操舵トルクTH とパワーシリンダ22の左右
圧P L ,PR とに基づき、 SAM=N・TH +k・(PR −PL ) なる式を用いて検出される。ただし、 N:ステアリングギヤ比(固定値) k:パワーシリンダ22の受圧面積とナックルアーム長
との積(固定値) PR :パワーシリンダ22の右室の液圧 PL :パワーシリンダ22の左室の液圧
【0065】なお、操舵トルクTH は前記操舵トルクセ
ンサ66により、シリンダ右室圧P R は圧力センサ68
により、シリンダ左室圧PL は圧力センサ70によりそ
れぞれ検出される。
【0066】すなわち、本実施例においては、左右前輪
10のキングピン回りの復元モーメントSAMが各請求
項の発明における「復元モーメント」の一例なのであ
る。
【0067】一方、コーナリングフォースCFは、車両
の2自由度平面モデルを想定し、車体のヨーレートγの
時間微分値であるヨーレート微分γ′と車両重心点にお
ける横加速度GY とに基づき、 CF=(b・m・GY +I・γ′)/L なる式を用いて検出される。ただし、 b:重心−後輪車軸間距離(固定値) m:車両質量(固定値) I:車両のヨー慣性モーメント(固定値) L:ホイールベース(固定値)
【0068】なお、横加速度GY は前記横加速度センサ
72により、ヨーレートγはヨーレートセンサ62によ
りそれぞれ検出される。
【0069】ところで、本出願人は、復元モーメントS
AMとコーナリングフォースCFとの関係についてさら
に研究した結果、次のような事実を発見した。すなわ
ち、図3にグラフで表すように、復元モーメントSAM
とコーナリングフォースCFとの間にヒステリシスが存
在し、同じコーナリングフォースCFの値に対応する復
元モーメントSAMが運転者によるステアリングホイー
ル20の切込み中と切戻し中とで同じ値にならないので
ある。そして、このヒステリシスは、運転者がステアリ
ングホイール20を回動操作する速度すなわち舵角速度
が速いほど顕著になるのである。そのため、このような
ヒステリシスの存在を考慮することなく復元モーメント
SAMの検出値とコーナリングフォースCFの検出値相
互の関係から直ちに路面μを検出する場合には、路面μ
を十分には正しく検出できない場合がある。例えば、同
図のグラフから明らかなように、同じ検出コーナリング
フォースCFに対応する検出復元モーメントSAMの値
が高μ路において低μ路におけるより大きいという関係
が常に成立するわけではなく、逆転する場合があるので
ある。
【0070】このような事情を背景にして、本出願人
は、検出復元モーメントSAMと検出コーナリングフォ
ースCFとの間にヒステリシスが発生しないようにし、
同じ検出コーナリングフォースCFに対応する検出復元
モーメントSAMの値が高μ路において低μ路における
より大きいという関係が常に成立するようにすれば、常
に精度よく路面μを検出できることに気付き、そのヒス
テリシスを抑制する技術の一例として、それら検出値の
少なくとも一方を補正する技術を提案した。
【0071】そして、その検出値補正技術の一例として
本出願人は復元モーメント補正技術を採用した。すなわ
ち、検出復元モーメントSAM(以下、後述の補正復元
モーメントSAMと区別するために「SAM0」で表
し、一方、その補正復元モーメントSAMを「SAM
1」で表す)を、ステアリングホイール20の切込み中
においては小さく、切戻し中においては大きくし、その
結果、切込み中であると切戻し中であるとを問わず、路
面μが同じである限り、検出コーナリングフォースCF
が同じであれば必ず同じ補正復元モーメントSAM1が
得られるようにするのである。
【0072】本実施例においては、補正復元モーメント
SAM1の値が、車両の定速(特定の車速下)かつ定常
旋回状態で復元モーメントSAMとコーナリングフォー
スCFとをそれぞれ各路面μごとに取得した結果得られ
る関係に従う値とされている。この関係は、補正復元モ
ーメントSAM1と検出コーナリングフォースCFとの
間の、ヒステリシスが存在しない場合の関係の一例であ
り、そして、この関係を表すグラフは例えば次の式(以
下、「定常時復元モーメント算出式」という)で記述す
ることができる。
【0073】SAM* =μm ・CF/α・(1−(β・
CF/μ)2n) ただし、 SAM* :定速かつ定常旋回状態での復元モーメント
(以下、「定常時復元モーメント」という) α:定数(例えば、3528〔m-1〕) β:定数(例えば、0.000093〔N-1〕) m:定数(例えば、0.5) n:定数(例えば、2)
【0074】なお、定常時復元モーメント算出式として
例えば、 SAM* =(μ/0.8)0.5 ・CF/α・(1−(β
・CF/μ)5 ) なる式を選ぶこともできる。
【0075】そして、本実施例においては、上記の復元
モーメント補正技術の具体的手法として次のものが採用
されている。すなわち、前輪舵角δF の絶対値(以下、
|θ|で表す)の増加につれて上記ヒステリシスの程度
も増加するという事実や、車速Vが遅いほど復元モーメ
ントSAMが大きいという事実などを考慮し、次の式
(以下、「補正復元モーメント算出式」という)を用い
ることによって検出復元モーメントSAM0を補正する
手法が採用されているのである。
【0076】 SAM1=SAM0/K−Δ1−Δ2−Δ3 ただし、 K:補正係数 K=(1+exp(−V/ξ))/ν V :車速〔km/h〕 ξ :定数(例えば、15〔km/h〕) ν :定数(例えば、1.1)
【0077】Δ1:第1補正値 Δ1=γ・tanh(θ’/(V・δ・μ))・(1−(β
・CF/μ)2n) θ’:舵角速度〔rad/s 〕 CF:コーナリングフォース〔N〕 μ :路面摩擦係数の前回検出値 γ :定数(例えば、2.94〔Nm〕) δ :定数(例えば、0.01〔rad ・h/km/s〕) β :定数(例えば、0.000093〔N-1〕) n :定数(例えば、2)
【0078】Δ2:第2補正値 Δ2=ε・tanh(θ’/ζ) ε :定数(例えば、6.86〔Nm〕) ζ :定数(例えば、1〔rad/s 〕)
【0079】Δ3:第3補正値 Δ3=κ・tanh(|θ|・θ’/λ) κ :定数(例えば、4.90〔Nm〕) λ :定数(例えば、1〔rad2/s〕)
【0080】この復元モーメント補正技術を、圧雪路等
の低μ路とドライアスファルト路等の高μ路とについて
それぞれ検出され、かつ図12にグラフで表されている
検出復元モーメントSAM0と検出コーナリングフォー
スCFとの関係に対して実施すれば、図13にグラフで
表すように、補正復元モーメントSAM1と検出コーナ
リングフォースCFとの間にヒステリシスが存在しなく
なる。この図13のグラフは、検出復元モーメントSA
M0の補正が理想的に行われた場合に得られるグラフで
あって、結局、前記の定常時復元モーメントSAM*
コーナリングフォースCFとの関係を高μ路と低μ路と
についてそれぞれ示すグラフなのである。
【0081】本実施例においては、以上のようにして求
められた復元モーメントSAMとコーナリングフォース
CFとの関係に基づいて現在の路面μが検出される。具
体的には、復元モーメントSAMとコーナリングフォー
スCFと路面μとの関係がROM54に予め記憶されて
おり、その関係に従って路面μが検出される。それら三
者間の関係を表すためにROM54に記憶させるべきデ
ータの形式は例えば、図14に示すように、復元モーメ
ントSAMとコーナリングフォースCFと路面μとをそ
れぞれ離散化した複数の離散値の組み合わせからなるテ
ーブルとして表現されるものとすることができる。
【0082】なお、このテーブルにおいて各数字はRO
M54の各データを10進法で表すものであり、また、
各四角形の枠内の数字は、路面μの値(0以上1以下)
を15倍したものである。すなわち、各四角形の枠内に
おいて「15」は路面μが1であることを表しているの
である。また、このテーブルにおいては、コーナリング
フォースCFと復元モーメントSAMと路面μとの間に
成立する関係を3次元座標系で表現した場合における一
座標面であるCF−SAM座標面が路面μが1であると
きに成立するCF−SAM曲線によって2つの領域に仕
切られており、それら領域のうちそのCF−SAM曲線
に対してCFが増加する側のものに対応する路面μにつ
いてはすべて1(図では「15」)が対応するようにさ
れている。
【0083】このテーブルを用いて決定された路面μを
そのまま用いてもよいが、この場合には、本来連続値で
ある路面μを複数の離散値に変換する際の近似誤差が路
面μの検出値に発生することを避け得ない。そこで、こ
の誤差をできる限り縮減することが必要である場合に
は、上記のようにして決定された離散的な路面μおよび
これに隣接する少なくとも1個の離散的な路面μに対し
て線形補完を行うことにより、路面μの検出値を連続値
として決定することが可能である。この場合の復元モー
メントSAMとコーナリングフォースCFと路面μとの
関係を図15に3次元のグラフで概念的に表す。
【0084】なお付言すれば、本出願人は本発明に先立
ち、復元モーメントSAMとコーナリングフォースCF
との関係から路面μを決定する技術として次のようなも
のをも案出した。それは概念的に説明すれば、復元モー
メントSAMとコーナリングフォースCFと路面μの三
者間の関係を記述する関数をそれら3つの変数のいずれ
かについて離散化し、その離散化による誤差の縮減のた
めにファジー理論的な要素である確からしさ関数を導入
することによって路面μを決定する技術である。以下、
その一具体例について説明する。
【0085】この具体例においては、復元モーメントS
AMとコーナリングフォースCFと路面μの三者間の関
係を記述する関数が3個の代表的な路面μについて個々
に離散化されている。すなわち、図16の(a) にグラフ
で表すように、路面μが0.1である場合と0.5であ
る場合と1.0である場合とについてそれぞれ成立する
復元モーメントSAMとコーナリングフォースCFとの
関係を表す関数f0.1,f0.5 およびf1.0 が設定され
ているのである。さらに、それぞれの代表路面μごと
に、その代表路面μに真に対応する復元モーメントSA
Mからの検出復元モーメントSAMの外れ量を変数と
し、検出復元モーメントSAMが、各代表路面μに真に
対応する復元モーメントSAMに一致する確からしさ度
(0以上1以下)を表す確からしさ度関数g0.1 ,g
0.5 およびg1.0 も設定されている。それら確からしさ
関数g0.1 ,g0.5 およびg1.0 は例えば、同図の(b)
にグラフで表すような特性を有するものとされる。そし
て、検出復元モーメントSAMに基づき、各代表路面μ
ごとに確からしさ度が求められ、同図の(c) に式で表す
ように、それら複数の確からしさ度が各代表路面μごと
の重みを考慮された上で平均化され、その値が路面μの
検出値に決定される。
【0086】この路面μ決定技術には、ROM54に予
め記憶させておくべきデータの量が少なくて済むという
利点がある。しかし、路面μ決定のために浮動小数点の
演算が多くなるため、演算時間が長くなる場合がある。
これに対し、図14のテーブルを用いて路面μを決定す
る場合には、路面μ決定のための演算が比較的簡単とな
って演算時間が短縮されるという効果が得られる。
【0087】以上、復元モーメントSAMとコーナリン
グフォースCFとの関係から路面μを決定する技術につ
いて説明したが、この技術によって求められた路面μの
精度が常に高いとは限らない。したがって、検出された
路面μを使用する際にはそれの検出精度を考慮すること
が望ましく、そのためには路面μの検出精度を推定する
技術が不可欠である。
【0088】そして、本実施例においては、路面μの検
出精度が次のようにして推定される。本実施例において
は、路面μの検出精度が復元モーメントSAMを前記の
ようにして補正する際の誤差にのみ依存すると仮定し、
各コーナリングフォースCFの下に成立する路面μと復
元モーメントSAMとの関係を表すグラフの勾配を考慮
して推定される。すなわち、路面μの検出精度Δμを例
えば次の式(以下、「検出精度算出式」という)を用い
て推定するのである。 Δμ=(Δμ/ΔSAM)・ΔSAM =(ΔSAM/Δμ)-1・ΔSAM ≒(∂SAM* /∂μ)-1・ΔSAM
【0089】ここに「∂SAM* /∂μ」は、復元モー
メント変化勾配Gを表しており、本実施例においては、
復元モーメント変化勾配GがコーナリングフォースCF
と路面μとの双方に関連付けて予めROM54に記憶さ
れている。また、「ΔSAM」は、検出復元モーメント
SAM0の補正誤差である。この補正誤差ΔSAMは例
えば次の式(以下、「補正誤差算出式」という)で推定
することができる。 ΔSAM=C+D・|θ’| ただし、 C :定数(例えば、6.86〔Nm〕) D :定数(例えば、14.7〔Nm・s/rad 〕) θ’:舵角速度〔rad/s 〕
【0090】したがって、路面μの検出精度Δμは、 Δμ=(1/G)・ΔSAM =(1/G)・(C+D・|θ’|) なる式で記述されることになる。
【0091】さらに、本実施例においては、路面μの検
出精度Δμが信頼度S(0以上1以下)として表現され
る。この信頼度Sは次の式(以下、「信頼度算出式」と
いう)で記述される。 S=A/Δμ−B ただし、 A:定数(例えば、0.125) B:定数(例えば、0.25) したがって、信頼度Sは、結局、 S=A/((1/G)・(C+D・|θ’|))−B なる式で記述されることになる。
【0092】すなわち、本実施例においては、補正復元
モーメントSAM1を用いて検出された路面μが各請求
項の発明における「暫定路面摩擦係数」の一例であり、
また、復元モーメント変化勾配Gおよび舵角速度θ’が
「操舵状態信号」の一例であり、また、路面μの検出誤
差Δμが信頼度Sとして表現されており、その信頼度S
が「検出精度」の一例なのである。
【0093】なお、本実施例においては、路面μの検出
誤差Δμが、復元モーメントSAMの補正誤差にのみ依
存すると仮定して推定されるようになっている。しか
し、例えば、復元モーメントSAMの補正なしで路面μ
を検出した場合の検出誤差を例えば、舵角速度θ’,車
速V,ヨーレートγ,横加速度GY 等の車両状態量が大
きいほど検出誤差が増加するのが一般的であるという事
実に着目し、それらの車両状態量(「操舵状態信号」の
一例)に基づいて推定することもできる。
【0094】また、本実施例においては、路面μの検出
誤差Δμがそのままの形ではなく信頼度Sとして表現さ
れ、検出誤差Δμの程度が0から1までの値で数値化し
て表現されるようになっている。したがって、検出誤差
Δμを正確に反映させるための処理(例えば、コンピュ
ータプログラム等による処理)が容易になるという効果
が得られる。ただし、路面μの検出精度Δμをそのまま
の形で用いて検出精度Δμを考慮した処理を行うように
して各請求項の発明を実施可能である。
【0095】以上、信頼度Sの基本的な算出手法につい
て説明したが、この手法によって算出された信頼度Sが
常に精度が高いとは限らない。例えば、車両旋回中に車
両が路面のやや大きな凹凸(段差など)を通過したこと
などに起因して車両の挙動が異常となった状態において
は信頼度Sの精度が低い。また、本実施例における路面
μの検出原理では、車両が完全に直進状態にあってコー
ナリングフォースCFも復元モーメントSAMも0であ
る場合には路面μの検出が不可能であるが、図14に示
すように、この場合には、路面μとして1が検出される
こととなる。しかし、この場合の検出値は信頼度Sが0
であると考えるべきである。また、図17の(a) にグラ
フで表すように、電気的なノイズ等(例えば、圧力変動
によるノイズ,車体振動によるノイズ等も存在する)が
瞬間的に発生することによって信頼度Sが瞬間的に増加
する場合もある。
【0096】そこで、本実施例においては、車両異常挙
動時には信頼度Sの生の値(特別な処理を施す前の値で
あり、以下、後述の「最終値S1」と区別するために
「暫定値S0」という)が0でなくても強制的に0とさ
れる。また、本実施例においては、定常円旋回状態にお
いて車両に発生すると予想されるヨーレートと車両重心
点の横加速度とがそれぞれ基準ヨーレートγ* および基
準横加速度GY * として求められ、基準ヨーレートγ*
と実ヨーレートγとの偏差Δγがしきい値Δγthを超え
たか、または基準横加速度GY * と実横加速度GY との
偏差ΔGY がしきい値ΔGY thを超えたか否かが判定さ
れ、それら判定の少なくとも一方が肯定である場合に、
車両の挙動が異常であると判定される。
【0097】また、本実施例においては、前輪舵角δF
の絶対値が0に近い設定値以下であるか否かが判定さ
れ、設定値以下である場合には、車両が直進状態にある
と判定され、信頼度Sの暫定値S0が強制的に0とされ
る。
【0098】さらに、本実施例においては、信頼度Sの
今回の暫定値S0i が前回の最終値S1i-1 を用いて平
滑化される。具体的には、 S1i =(1−RR1)・S1i-1 +RR1・S0i なる指数平滑式のフィルタ処理が行われるのである。こ
こに「RR1」はフィルタ係数であり、次のような値を
とる。すなわち、今回の暫定値S0i が前回の最終値S
i-1 より大きい場合には、Δt/TT1(<1)なる
値をとり、そうでない場合には、1なる値をとるのであ
る。ここに「Δt」は、信頼度Sのサンプリングタイム
である。また、「TT1」は、フィルタの平滑化度を表
す変数であり、具体的には、例えば暫定値S0i が瞬間
的に遷移したと仮定した場合にその遷移が最終値S1i
に現れるまでにかかる時間を表す。すなわち、TT1が
大きいほど減衰度が強いフィルタを表し、小さいほど減
衰度が弱いフィルタを表すのである。
【0099】したがって、暫定値S0i に対して上記の
フィルタ処理が行われれば、今回の暫定値Si が前回の
最終値S1i-1 より大きい場合、すなわち、今回値が前
回値より増加した場合には、フィルタ係数RR1がΔt
/TT1なる1より小さい値となり、暫定値S0i が平
滑化されて最終値S1i とされるため、暫定値S0i
増加が抑制されて最終値S1i に現れることとなる。し
たがって、図17の(b) にグラフで表すように、電気的
なノイズが瞬間的に発生することによって暫定値S0i
が瞬間的に増加しても、同図の(b) にグラフで表すよう
に、最終値S1 i にはその影響が抑制されて現れること
になる。一方、今回の暫定値S0i が前回の最終値S1
i-1 以下である場合には、フィルタ係数RR1が1とな
り、フィルタ機能が実質的に無効化され、今回の暫定値
S0i がそのまま今回の最終値S1i とされることにな
る。すなわち、このフィルタは、外乱に基づく信頼度S
の予定外の急増を防止する機能を有するのである。
【0100】すなわち、本実施例においては、このよう
にして算出された最終値S1が、路面μの暫定値μ0の
検出精度を表しており、各請求項の発明における「検出
精度」の一例なのである。
【0101】しかし、このような急増防止用フィルタ処
理を信頼度Sに対して行ってもなお次のような問題があ
る。すなわち、上記のフィルタを用いても、車両が旋回
状態から直進状態に移行するなどして、路面μの検出精
度良好状態から検出精度低下状態に移行した場合には、
同図の(a) にグラフで表すように、信頼度Sの暫定値S
0が直ちに0とされる。一方、この場合には、路面μの
各回の最終的な検出値は後に詳述するように、信頼度S
が0とされた当初においては路面μの前回の最終値μ1
とほぼ等しい値に維持される。また、検出精度低下状態
への移行当初における実際の路面μは、先の検出精度良
好状態で最後に検出された路面μから大きく外れないの
が普通である。そのため、検出精度低下状態への移行当
初において、そのような実情を無視して信頼度Sを推定
したのでは、信頼度Sの推定値が路面μの最終値μ1に
対応する真の信頼度Sとの関係において低すぎてしま
い、信頼度Sの精度が大きく低下する傾向がある。
【0102】そこで、本実施例においては、上記の急増
防止用フィルタ処理を施された信頼度Sに対して急減防
止用フィルタ処理が加重的に実現される。それら両フィ
ルタの関係を図18に機能ブロック図で表せば、急増防
止用フィルタ80は、入力された暫定値S0を平滑化し
て最終値S1を出力し、一方、急減防止用フィルタ82
は、入力された最終値S1を暫定値S1とし、それを平
滑化して最終値S2を出力する関係にあるのである。
【0103】そして、本実施例においては、急減防止用
フィルタ82が、具体的には、 S2i =(1−RR2)・S2i-1 +RR2・S1i なる指数平滑式とされるのである。ここに「RR2」は
フィルタ係数であり、次のような値をとる。すなわち、
今回の暫定値S1i が前回の最終値S2i-1 より小さい
場合には、Δt/TT2(<1)なる値をとり、そうで
ない場合には、1なる値をとるのである。ここに「TT
2」は、前記の「TT1」と同じ機能を有する。
【0104】したがって、上記の急減防止用フィルタ処
理が行われれば、今回の暫定値S1 i が前回の最終値S
i-1 より小さい場合、すなわち、今回値が前回値より
減少した場合には、フィルタ係数RR2がΔt/TT2
なる1より小さい値となり、暫定値S1i が平滑化され
て最終値S2i とされるため、暫定値S1i の減少が抑
制されて最終値S2i に現れることとなる。したがっ
て、図17の(c) に示すように、路面μの検出精度良好
状態から検出精度低下状態への移行当初において信頼度
Sが直ちに減少することが抑制される。一方、今回の暫
定値S1i が前回の最終値S2i-1 以上である場合に
は、フィルタ係数RR2が1となり、フィルタ機能が実
質的に無効化され、今回の暫定値S1i がそのまま今回
の最終値S2 i とされることになる。
【0105】さらに、本実施例においては、そのように
して求められた最終値S2i がそのまま用いられるので
はなく、その最終値S2i と先の急増防止用フィルタ8
0からの最終値S1i との合成値S3i が真の信頼度S
として用いられる。すなわち、図18の機能ブロック図
を用いて説明すれば、急増防止用フィルタ80の出力信
号である最終値S1i と急減防止用フィルタ82の出力
信号である最終値S2 i とがそれぞれ合成器84に入力
され、それら最終値S1i とS2i とが合成されて合成
値S3i が出力されるのである。
【0106】この合成器84は、具体的には、 S3i =(α・S1i +β・S2i )/(α+β) なる式を用いて合成値S3i を出力する。
【0107】この合成器84によれば、例えば、最終値
S1が図17の(b) 、最終値S2が同図の(c) にグラフ
でそれぞれ表されるように変化する場合には、合成値S
3は同図の(d) にグラフで表されるように変化すること
となる。
【0108】ただし、最終値S1とS2とを合成するこ
とは不可欠ではなく、最終値S2を路面μの最終値μ1
の真の信頼度Sとして用いることは可能である。
【0109】そして、本出願人は先に、以上のようにし
て求められた信頼度Sと、路面μの検出値(特別な処理
が施されていない生の検出値を意味し、以下、後述の
「最終値μ1」と区別するために「暫定値μ0」とい
う)とを総合的に用いることにより、路面μを精度よく
検出する技術として次のようなものを案出した。すなわ
ち、今回の暫定値μ0i の信頼度Sが高いほど今回の暫
定値μ0i に接近し、信頼度Sが低いほど前回の最終値
μ1i-1 に接近するように今回の最終値μ1i を決定す
る技術である。これは、図18の機能ブロック図を用い
て説明すれば、暫定値μ0i を入力信号とし、それを平
滑化して最終値μ1i を出力する路面μ用フィルタ90
を設ける技術である。具体的には、 μ1i =(1−R1)・μ1i-1 +R1・μ0i なる指数平滑式のフィルタ処理を行う技術である。ここ
に「R1」はフィルタ係数であり、常に、Δt/Tなる
値をとる。ここに「Δt」は、路面μのサンプリングタ
イムであり、信頼度Sのサンプリングタイムと等しい。
また、「T」は、フィルタの平滑化度を表す変数であ
り、先の「TT1」および「TT2」と同じ機能を有す
る。
【0110】ただし、平滑化度Tは固定値ではなく、信
頼度Sに応じて変化する。信頼度Sが低いほどフィルタ
の平滑化度Tを高めて減衰度を高め、一方、信頼度Sが
高いほどフィルタの平滑化度Tを低くして減衰度を低め
ることが、路面μの検出精度向上に適しているからであ
る。そして、それら平滑化度Tと信頼度Sとの関係は例
えば、図19にグラフで表すように、信頼度Sが上限値
である1に近づくにつれて急激に減少してフィルタの基
本的な設定平滑化度TS に接近し、下限値である0に近
づくにつれて急激に増加するものとすることが望まし
い。そして、両者の関係は例えば、 T=TS /S なる式で記述することができる。
【0111】したがって、暫定値μi に対して上記のフ
ィルタ処理が行われれば、今回の暫定値μ0i の信頼度
Sが高く、例えば1である場合には、フィルタ係数R1
がΔt/TS となり、フィルタ処理が本来の特性で実現
される。一方、信頼度Sが低く、例えば0である場合に
は、フィルタ係数R1が0となり、前回の最終値μ1
i-1 がそのまま今回の最終値μ1i とされることとな
る。路面μの今回値が前回値に維持されるのであり、信
頼度Sが0である状態では、信頼度Sが0になる直前に
取得された最終値μ1に維持し続けられることとなる。
【0112】なお、本実施例においては、図18に示す
ように、路面μ用フィルタ90においては、急増防止用
フィルタからの最終値S1i が路面μの今回の暫定値μ
iの検出精度を表すものとして使用され、また、合成
器84からの合成値S3i が路面μの今回の最終値μ1
i の検出精度、すなわち真の信頼度Sを表すものとして
使用されるようになっている。
【0113】しかしながら、信頼度Sが低下するにつれ
て路面μの今回値が前回値に一致する傾向が強くなるこ
とが適当でない場合がある。例えば、前記スロットル制
御装置が車両の加速性を優先させることを方針として設
計される場合には、路面μの検出精度が低い場合には、
実際の路面が低μ路であっても高μ路であるとみなして
スロットル制御を行うことが望ましい。
【0114】そこで、本実施例においては、信頼度Sが
低下するにつれて路面μの今回値が、その路面μの用途
に適した設定値μS に接近するように決定される。ま
た、本実施例においては、路面μの用途がスロットル制
御であり、かつ、そのスロットル制御の設計方針が車両
の加速性を優先させることにあるため、結局、本実施例
においては、その設定値μS が高μ路用の値(例えば、
0.8〜1.0)とされている。
【0115】すなわち、本実施例においては、路面μ用
フィルタ90が、信頼度Sが上昇するにつれて路面μの
今回の最終値μ1i を今回の暫定値μ0i に接近させる
第一のフィルタ特性と、信頼度Sが低下するにつれて路
面μの今回の最終値μ1i を設定値μS に接近させる第
二のフィルタ特性とを有するものとされているのであ
る。そして、結局、路面μ用フィルタ90のフィルタ特
性は、 μ1i =(1−R1−R2)・μ1i-1 +R1・μ0i
+R2・μS なる式で記述することができる。
【0116】ここに「R1」および「R2」はともにフ
ィルタ係数であり、「R1」は、 R1=Δt/T1 なる式で、「R2」は、 R2=Δt/T2 なる式でそれぞれ表される。また、ここに「T1」およ
び「T2」はともに平滑化度であり、「T1」は、 T1=T1S /S なる式で、「T2」は、 T2=T2S /(1−S) なる式でそれぞれ表される。また、ここに「T1S 」お
よび「T2S 」はともに各フィルタの基本的な設定平滑
化度である。
【0117】したがって、フィルタ係数R1は、図20
にグラフで表すように、信頼度Sが1に向かって上昇す
るにつれてT1S に向かって減少し、信頼度Sが0に向
かって低下するにつれて非常に大きな値に向かって増加
する。これに対し、フィルタ係数R2は、同図にグラフ
で表すように、信頼度Sが1に向かって上昇するにつれ
て非常に大きな値に向かって増加し、信頼度Sが0に向
かって低下するにつれてT2S に向かって減少する。
【0118】したがって、今回の信頼度Si が高く、例
えば1である場合には、フィルタ係数R1がΔt/T1
S 、フィルタ係数R2が0となり、結局、路面μ用フィ
ルタ90の特性が、 μ1i =(1−R1)・μ1i-1 +R1・μ0i なる式で表されることとなり、路面μの今回の最終値μ
i が、前回の最終値μ1i-1 の影響より今回の暫定値
μ0i の影響を強く受けた値として算出されることにな
る。
【0119】これに対し、今回の信頼度Si が低く、例
えば0である場合には、フィルタ係数R1が0、フィル
タ係数R2がΔt/T2S となり、結局、路面μ用フィ
ルタ90の特性が、 μ1i =(1−R2)・μ1i-1 +R2・μS なる式で表されることとなり、路面μの今回の最終値μ
i が、前回の最終値μ1i-1 の影響より設定路面μS
の影響を強く受けた値として算出されることになる。し
かし、信頼度Sが1から0に変化した当初においては、
路面μの各回の最終値μi が前回の最終値μ1i-1 の影
響を設定路面μS の影響より強く受ける傾向がある結
果、信頼度Sが0に維持される状態では、路面μの各回
の最終値μiはその当初において前回の最終値μ1i-1
にほぼ等しい値に維持され、やがて設定路面μS にほぼ
等しい値に緩やかに変化することとなる。すなわち、本
実施例においては、信頼度Sが1から0に急に低下した
場合でも、路面μの最終値μ1が前回値から設定値に向
かって緩やかに変化するように設計されているのであ
る。ただし、信頼度Sが1から0に急に低下すれば、路
面μの最終値μ1が急に設定値に変化するようにして各
請求項の発明を実施可能である。信頼度Sが低い状態に
おけるスロットル制御の適正化という効果を一応得るこ
とは可能だからである。
【0120】以上説明した路面μの検出は図10の路面
μ検出ルーチンの実行によって実現される。以下にこの
ルーチンを具体的に説明する。
【0121】本ルーチンは前記サンプリングタイムΔt
ごとに実行される。各回の実行時には、まず、ステップ
S1(以下、単にS1で表す。他のステップについても
同じ)において、各種センサから実横加速度GY ,実ヨ
ーレートγ,車速V,シリンダ左室圧PL ,シリンダ右
室圧PR ,操舵トルクTH および前輪舵角δF がそれぞ
れ入力され、RAM56に記憶される。
【0122】その後、S2において、前輪10の復元モ
ーメントSAMが算出される。このS2の詳細が復元モ
ーメント算出ルーチンとして図21にフローチャートで
表されている。まず、S101において、前述のよう
に、検出されたシリンダ左室圧PL ,シリンダ右室圧P
R および操舵トルクTH に基づいて前輪10の復元モー
メントSAMが算出され、これが検出復元モーメントS
AM0とされる。次に、S102において、前輪舵角δ
F の今回値から前回値を引くことによって舵角速度θ’
が算出される。続いて、S103において、補正係数K
が前記の式を用いて算出され、さらに、S104〜10
6においてそれぞれ、各補正値Δ1,Δ2,Δ3が前記
の各式を用いて算出される。その後、S107におい
て、算出された補正係数Kおよび各補正値Δ1〜Δ3を
前記の補正復元モーメント算出式に代入することによ
り、補正復元モーメントSAM1が算出される。算出さ
れた補正復元モーメントSAM1はRAM56に記憶さ
れる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0123】このS2の実行が終了したならば、図10
のS3において、前輪10のコーナリングフォースCF
が算出される。前述のように、実横加速度GY および実
ヨーレートγの時間微分値であるヨーレート微分γ’に
基づいて前輪10のコーナリングフォースCFが算出さ
れるのであり、これもRAM56に記憶される。
【0124】その後、S4において、信頼度Sの今回の
暫定値S0i が算出される。このS4の詳細が暫定信頼
度算出ルーチンとして図22にフローチャートで表され
ている。まず、S201において、補正復元モーメント
SAM1と検出コーナリングフォースCFとの関係に応
じ、ROM54に記憶されている前記の関係に従って路
面μの今回の暫定値μ0i が決定される。決定された暫
定値μ0i はRAM56に記憶される。なお、車両が直
進状態にあって補正復元モーメントSAM1も検出コー
ナリングフォースCFも0である場合には、図14およ
び15から明らかなように、今回の暫定値μ0i が1と
される。
【0125】S201の実行が終了すれば、S202に
おいて、前輪舵角δF の今回値から前回値を引くことに
よって舵角速度θ’の今回値が算出され、それの絶対値
を前記の補正誤差算出式に代入することにより、検出復
元モーメントSAM0の補正誤差ΔSAMが算出され
る。続いて、S203において、復元モーメント変化勾
配Gが決定される。上記S201で決定された今回の暫
定値μ0i と前記コーナリングフォースCFの今回値と
の双方に対応する復元モーメント変化勾配Gが決定され
るのである。
【0126】その後、S204において、路面μの検出
誤差Δμが、上記復元モーメント変化勾配Gの逆数と前
記補正誤差ΔSAMとの積として推定される。その後、
S205において、推定された検出誤差Δμを前記の信
頼度算出式に代入することにより、路面μの今回の暫定
値μ0i の信頼度Sの今回の暫定値S0i が算出され
る。ただし、検出誤差Δμを信頼度算出式に代入した結
果、その式の値が0より小さくなった場合には0、1よ
り大きくなった場合には1にそれぞれ強制的に決定され
るようになっている。信頼度Sの値が必ず0以上1以下
となることが保証されているのである。また、本ステッ
プにおいては、前輪舵角δF の絶対値が設定値以下であ
るか否かを判定し、設定値以下であれば車両が直進状態
にあるから、今回の暫定値S0i が強制的に0とされ
る。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0127】このようにしてS4が実行されて信頼度S
の今回の暫定値S0i が算出されたならば、図10のS
5において、信頼度Sの今回の最終値S1i が算出され
る。このS5の詳細が最終信頼度算出ルーチンとして図
23にフローチャートで表されている。まず、S401
において、車両に異常挙動が発生しているか否かが判定
される。このS401の詳細が異常挙動判定ルーチンと
して図24にフローチャートで表されている。
【0128】まず、S501において、センサから実ヨ
ーレートγおよび実横加速度GY が入力され、続いて、
S502において、基準ヨーレートγ* が算出される。
基準ヨーレートγ* は、車両が定常円旋回状態にあると
仮定した場合に車両に発生すると予想されるヨーレート
として算出される。具体的には、 γ* =(1/(1−A・V2 ))・V・δF /L なる式を用いて算出される。ここに「A」は車両のスタ
ビリティファクタを表し、固定値として予めROM54
に記憶されている。
【0129】その後、S503において、基準横加速度
Y * が算出される。基準横加速度GY * も基準ヨーレ
ートγ* の場合と同様に、車両が定常円旋回状態にある
と仮定した場合に車両重心点に作用すると予想される横
加速度として算出される。具体的には、 GY * =V・γ* なる式を用いて算出される。
【0130】続いて、S504において、実ヨーレート
γと基準ヨーレートγ* との差の絶対値であるヨーレー
ト偏差Δγがしきい値Δγthを超えたか否かが判定され
る。車体がスピンしているか否かが判定されるのであ
る。今回は、ヨーレート偏差Δγがしきい値Δγthを超
えたと仮定すれば、判定がYESとなり、S507にお
いて、今回は車両の挙動が異常であると判定され、その
ことを表すデータ(例えば、フラグ)がRAM56に記
憶される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0131】これに対し、今回はヨーレート偏差Δγが
しきい値Δγthを超えてはないと仮定すれば、S504
の判定がNOとなり、S505に移行する。このS50
5においては、実横加速度GY と基準横加速度GY *
の差の絶対値である横加速度偏差ΔGY がしきい値ΔG
Y thを超えたか否かが判定される。今回は、超えたと仮
定すれば、判定がYESとなり、S507に移行する
が、今回は、超えてはないと仮定すれば、判定がNOと
なり、S506において、今回は車両の挙動が異常では
ないと判定され、そのことを表すデータ(例えば、フラ
グ)がRAM56に記憶される。以上で本ルーチンの一
回の実行が終了する。
【0132】なお、本ルーチンにおいては、実ヨーレー
トγと実横加速度GY との双方について個々に偏差が求
められ、それら偏差の少なくとも一方でも過大である場
合には車両の挙動が異常であると判定されるが、これ
は、ヨーレートγの偏差だけ監視したのでは車両の過大
な横滑りを検出することができないからである。したが
って、本実施例においては、車両の異常挙動判定が精度
よく行われることになる。ただし、それらヨーレートγ
の偏差と横加速度GY の偏差とのいずれかにのみ基づい
て車両の異常挙動判定をすることは可能である。
【0133】以上のようにして異常挙動判定が終了した
ならば、図23のS402において、RAM56のデー
タに基づき、車両の挙動が異常であるか否かが判定され
る。今回は異常であると仮定すれば、判定がYESとな
り、S403において、RAM56から信頼度Sの今回
の暫定値S0i が読み込まれ、それが0とされてRAM
56に戻される。図10のS4で算出された暫定値S0
i は車両の挙動が異常である状況下において算出された
ものであり、精度がかなり低いと考えられるからであ
る。これに対し、今回は車両の挙動が異常ではないと仮
定すれば、S402の判定がNOとなり、S403がス
キップされ、RAM56の今回の暫定値S0i がそのま
ま有効とされる。
【0134】いずれの場合にもその後、S404におい
て、今回の暫定値Si が前回の最終値S1i-1 より大き
いか否かが判定される。大きい場合には判定がYESと
なり、S405において前記急増防止用フィルタ80の
フィルタ係数RR1が Δt/TT1 なる値とされ、信頼度Sが平滑化される。これに対し、
今回の暫定値S0i が前回の最終値S1i-1 より大きく
はない場合には、S404の判定がNOとなり、S40
6において、フィルタ係数RR1が1とされ、フィルタ
の機能が実質的に無効化される。いずれの場合にもその
後、S407において、そのフィルタ係数RR1を用い
て信頼度Sの急増防止フィルタ処理が行われ、信頼度S
の今回の最終値S1i が求められる。
【0135】続いて、S408において、その最終値S
i が急減防止フィルタ82における入力信号とされる
ために暫定値S1i に置換され、その暫定値S1i が急
減防止用フィルタ82における前回の出力信号である最
終値S2i-1 より小さいか否かが判定される。小さい場
合には判定がYESとなり、S409において、前記急
減防止用フィルタ82のフィルタ係数RR2が Δt/TT2 なる値とされ、信頼度Sが平滑化される。これに対し、
今回の暫定値S1i が前回の最終値S2i-1 より小さく
はない場合には、判定がNOとなり、S410におい
て、フィルタ係数RR2が1とされ、フィルタの機能が
実質的に無効化される。いずれの場合にもその後、S4
11において、そのフィルタ係数RR2を用いて信頼度
Sの急減防止フィルタ処理が行われ、信頼度Sの今回の
最終値S2iが求められる。以上で本ルーチンの一回の
実行が終了する。
【0136】以上のようにして信頼度Sの今回の最終値
S1i とS2i とが算出されたならば、図10のS6に
おいて、それらの合成値が求められる。本実施例におい
ては、最終値S1i とS2i とのそれぞれの重みを考慮
して両者の平均値を求めることによって合成値S3i
算出される。この合成値S3i は、路面μの今回の最終
値μ1i の真の信頼度SとしてRAM56に記憶され
る。
【0137】その後、S7において、信頼度Sの今回の
最終値S1i に基づいて路面μ用フィルタ90のフィル
タ係数R1とR2がそれぞれ算出され、続いて、S8に
おいて、図22のS201で決定されてRAM56に記
憶されている路面μの今回の暫定値μ0i が読み込まれ
る。その後、S9において、路面μの今回の最終値μ1
i が算出される。今回の最終値μ1i は、前述のよう
に、フィルタ係数R1,R2と前回の最終値μ1i-1
今回の暫定値μ0i と設定値μS とに基づいて算出され
る。算出された今回の最終値μ1i は、真の路面μとし
てRAM56に記憶される。以上でこの路面μ検出ルー
チンの一回の実行が終了する。
【0138】なお、本実施例においては、車両が直進状
態にあることが原因で信頼度Si が低い場合には、前記
のように、S201において、路面μの今回の暫定値μ
iが1とされるため、路面μ用フィルタ90を2種類
のフィルタ特性を組み合わせたものとしなくても、路面
μの今回の最終値μ1i が1に近づき、スロットル制御
にとって望ましい値が得られる。しかし、それ以外の原
因で信頼度Si が低くなる場合があり、本実施例におい
ては、特にこのような場合において路面μ用フィルタ9
0を2種類のフィルタ特性を組み合わせたものとした意
味があるのである。
【0139】以上のようにして検出された真の路面μ1
および真の信頼度S3は、スロットル制御装置等、車両
制御装置や車両の運転情報表示装置に供給されて利用さ
れる。この際、それら複数の利用対象に路面μ1および
信頼度S3がそれぞれ同じ値として供給されるようにし
てもよいが、それぞれの利用対象の路面μ1および信頼
度S3に対する要求(例えば、各利用対象において許容
することができる応答遅れ時間の長さの長短)が互いに
異なる場合がある。この場合には、図25に機能ブロッ
ク図で概念的に示すように、各種フィルタ80,82,
90および合成器84の少なくとも一つの特性を、それ
ぞれの利用対象の要求に合致するように互いに異ならせ
ることが望ましい。
【0140】次に、図11のスロットル制御ルーチンに
ついて説明する。まず、概略的に説明する。このルーチ
ンは、実アクセル開度に応じて目標サブスロットル開度
を決定し、それが実現されるように前記サブスロットル
アクチュエータ36を制御する第一制御(フィードフォ
ワード制御)と、左右後輪12の各々にスピン傾向が発
生したか否かを判定し、発生した場合には左右後輪12
の駆動トルクが低減するようにサブスロットルアクチュ
エータ36を制御する第二制御(フィードバック制御)
とを択一的に実行する。第一制御用と第二制御用とにつ
いて個々に目標サブスロットル開度を決定し、それらの
うち小さい方が実現されるようにサブスロットルアクチ
ュエータ36を制御するのである。
【0141】第二制御は既によく知られている制御であ
るため、簡単に説明する。すなわち、この第二制御にお
いては、自動変速機25の出力回転数であって左右後輪
12の車輪速の平均値を検出するセンサ(図示しない)
によって後輪12の車輪速V W が検出され、その車輪速
W から前記車速センサ64により検出された車速Vを
引いた値である後輪12のスリップ量を車速Vで割り算
することによって後輪12のスリップ率が求められる。
さらに、そのスリップ率が設定値を超えたか否かが判定
され、超えた場合には後輪12にスピン傾向が発生した
と判定され、後輪12のスピン傾向が消滅するように実
サブスロットル開度を小さくすることによってエンジン
23の出力トルクが低減させられるのである。
【0142】これに対し、第一制御においては、実アク
セル開度に応じて目標サブスロットル開度が決定され、
かつ、実アクセル開度に対する目標サブスロットル開度
の増加勾配Dが路面μとの関係において適正となるよう
に決定される。すなわち、図26にグラフで概念的に表
すように、路面μが低いほど実サブスロットル開度ΘS
Bの増加勾配Dが緩やかとなり、低μ路上で車両をスム
ーズに発進・加速させるための加速操作が簡単になるよ
うに決定されるのである。
【0143】この第一制御においてはさらに、後輪12
をスピンさせてしまう加速操作に対して実サブスロット
ル開度ΘSBが小さくなる状態も実現されるように、目
標サブスロットル開度ΘSB* が決定される。すなわ
ち、路面μを有効に利用するための駆動トルクが基準駆
動トルクTREF として推定され、その基準駆動トルクT
REF を発生させるためのサブスロットル開度が基準サブ
スロットル開度ΘSBRE F として決定され、その基準サ
ブスロットル開度ΘSBREF に対応するアクセル開度が
基準アクセル開度ΘACREF として決定され、同図に概
念的に示すように、実アクセル開度ΘACが基準アクセ
ル開度ΘACREF を超えた後の実サブスロットル開度Θ
SBの増加勾配D2が超える前における増加勾配D1よ
り緩やかとなるように決定されるのである。また、本実
施例においては、基準アクセル開度ΘACREF が路面μ
の高低を問わずほぼ同じ大きさとなるように目標サブス
ロットル開度ΘSB* の増加勾配が決定される。
【0144】なお、以下の説明においては、各変数を次
のように略記して使用する。 実アクセル開度:実ΘAC 基準アクセル開度:基準ΘACREF 実サブスロットル開度:実ΘSB 基準サブスロットル開度:基準ΘSBREF 第一制御用の目標サブスロットル開度:目標ΘSB1* 第二制御用の目標サブスロットル開度:目標ΘSB2* 真の目標サブスロットル開度:目標ΘSB*
【0145】また、本実施例においては、サブスロット
ルバルブ32の駆動系が正常である限り、実ΘSBが実
メインスロットル開度より小さくなり、サブスロットル
バルブ32がエンジン23の吸気量を支配的に決定する
ように設計されている。
【0146】第一制御をさらに具体的に説明する。第一
制御においては、増加勾配D1およびD2がそれぞれ、 D1=d0 ・μ D2=d1 ・μ なる式を用いて算出される。ただし、 d0 :定数(予めROM54に記憶) d1 :d0 より小さい定数(予めROM54に記憶) したがって、本実施例によれば、実ΘACの増加速度が
同じでも、低μ路において高μ路におけるより実ΘSB
の増加勾配が緩やかとなり、低μ路上における加速操作
が簡単になるとともに、実ΘACが路面μとの関係にお
いて過大となっても、実ΘSBの増加すなわち実駆動ト
ルクの増加が自動的に抑制され、車両発進・加速時に駆
動車輪である左右後輪12がスピンする事態から回避さ
れる。
【0147】ただし、本実施例においては、増加勾配D
2が路面μから一義的に決定されるのではなく、増加勾
配D1と信頼度Sとを考慮して決定される。すなわち、
増加勾配D2が、 D2=(1−S)・D1+S・d1 ・μ なる式を用いて決定されるのである。したがって、本実
施例によれば、増加勾配D2が路面μの信頼度Sが低い
場合において増加勾配D1に近づくように決定され、信
頼度Sが低下したために車両の加速性が低下するという
事態から回避される。
【0148】この第一制御においてはさらに、前記路面
摩擦係数検出装置によって検出された路面μと信頼度S
との双方を用い、その信頼度Sが低いために車両の加速
性が低下する事態を回避するため、路面μの検出値と路
面μの設定値μS と信頼度Sとを総合的に用いることに
より、信頼度Sとの関係においてスロットル制御に適し
た路面μが決定され、それを用いて目標ΘSB* が決定
される。すなわち、 S・μ+(1−S)・μS で表される値がスロットル制御に適した路面μOPT とし
て決定されるのである。ここに設定値μS は高μ路用の
値(例えば、0.8〜1.0)とされるため、同図に概
念的に表すように、信頼度Sが低い場合において高い場
合におけるより、目標ΘSB* の増加勾配が大きくな
る。
【0149】したがって、本実施例によれば、信頼度S
が低い場合において高い場合におけるより目標ΘSB*
が大きくなり、実際の路面が高μ路であるにもかかわら
ず路面μの検出値の信頼度Sが低いために車両の加速性
が低下する事態から回避される。
【0150】ここで、路面μに基づき、後輪12が路面
μを有効に利用するための基準駆動トルクTREF を推定
する原理について説明する。まず、後輪12が路面μを
できる限り有効に利用するための後輪12の駆動力を基
準駆動力FREF として推定する。後輪12に関する摩擦
円なる概念を利用すれば、基準駆動力FREF は、 FREF =((μOPT ・FO 2 −CF2 1/2 なる式で表される。ここに「F0 」は、路面μOPT が1
である場合に後輪12に発生する最大駆動力であり、予
めROM54に記憶されている。また、「CF」は後輪
12のコーナリングフォースであり、前述のように、前
輪10についてコーナリングフォースを算出した方法に
準じて算出される。すなわち、 CF=(a・m・GY −I・γ’)/L なる式を用いて後輪12の等価コーナリングフォースC
Fが算出されるのである。ここに「a」は重心−前輪車
軸間距離(固定値)であり、予めROM54に記憶され
ている。
【0151】したがって、基準駆動トルクTREF とし
て、トルクコンバータ24の出力トルクTt (すなわち
自動変速機25の入力トルク)を選定すれば、基準駆動
トルクTREF は、 TREF =FREF ・i・r なる式で表される。ここに「i」は自動変速機25の減
速比と最終減速機26の減速比との合成値を表してお
り、図示しない自動変速機25のための自動変速装置か
ら入力される。また、「r」は左右後輪12の動半径で
あり、予めROM54に記憶されている。
【0152】すなわち、本実施例においては、基準駆動
トルクTREF が請求項5の発明における「基準駆動トル
ク」の一例なのである。また、その基準駆動トルクT
REF は、後輪12が路面μをほぼ最大限利用するときの
自動変速機25の入力トルクであり、換言すれば、後輪
12の実スリップ率SLIPが、後輪12に関するタイ
ヤ−路面間摩擦力と実スリップ率SLIPとの関係を表
す曲線グラフのピーク点に対応する適正スリップ率SL
IPOPT に一致するときの駆動トルクであるから、本実
施例においては、後輪12の実スリップ率SLIPが適
正スリップ率SLIPOPT に一致するときの駆動トルク
が、請求項5の発明における「駆動輪のスリップ状態量
が設定値を超えるときにおける駆動系の駆動トルク」の
一例なのである。
【0153】また、この第一制御においては、基準ΘS
REF が、 ΘSBREF =C0 ・TREF 2 なる式を用いて算出される。ここに「C0 」は定数であ
り、予めROM54に記憶されている。
【0154】なお、実駆動トルクTの大きさは本来、実
ΘSBのみならず実エンジン回転数Ne にも依存する。
したがって、上記基準駆動トルクTREF を精度よく推定
するためには、実駆動トルクTが将来その基準駆動トル
クTREF に一致するときの実エンジン回転数Ne を推定
しなければならない。しかし、本実施例においては、そ
のときの実エンジン回転数Ne を推定することはせず、
実エンジン回転数Neは常に平均的な値をとると仮定
し、その下に成立する実ΘSBと実駆動トルクTとの関
係を上記式で近似することとした。
【0155】次に、図11のフローチャートに基づいて
スロットル制御ルーチンの内容を具体的に説明する。こ
のスロットル制御ルーチンは運転者によりアクセルペダ
ル34が踏み込まれている間、一定時間おきに実行され
る。各回の実行時にはまず、S51において、目標ΘS
* の今回値が決定される。このステップの詳細が図2
7に目標サブスロットル開度決定ルーチンとして表され
ている。
【0156】まず、S601において、各種信号が入力
される。各種信号の中には、路面摩擦係数検出装置から
の路面μおよび信頼度Sや、アクセル開度センサ38か
らの実ΘACや、左右後輪12のコーナリングフォース
CFの算出に必要な実横加速度GY および実ヨーレート
γや、自動変速装置からの減速比iなどが含まれてい
る。
【0157】その後、S602において、入力された路
面μおよび信頼度Sと予め設定された路面μS とからス
ロットル制御に適した路面μOPT が算出される。続い
て、S603において、その路面μOPT に基づいて増加
勾配D1の今回値D1i が算出される。算出された増加
勾配D1i はRAM56に記憶される。続いて、S60
4において、増加勾配D1のフィルタ処理が行われる。
指数平滑型のフィルタ処理が行われるのであり、例え
ば、 D1i ←ε・D1i +(1−ε)・D1i-1 の如く、フィルタ処理が行われ、これにより増加勾配D
1の生の値が平滑化される。
【0158】その後、S605において、路面μOPT
信頼度Sと増加勾配D1とに基づいて増加勾配D2の今
回値D2i が算出される。算出された増加勾配D2i
RAM56に記憶される。続いて、S606において、
前記S604に準じて、増加勾配D2のフィルタ処理が
行われる。
【0159】その後、S607において、基準駆動トル
クTREF が算出される。具体的には、まず、実横加速度
Y と実ヨーレートγの時間微分値であるヨーレート微
分γ’とに基づいて左右後輪12のコーナリングフォー
スCFが算出され、次に、そのコーナリングフォースC
Fと、路面μOPT ,定数F0 ,減速比iおよび左右後輪
12の動半径rに基づいて基準駆動トルクTREF が算出
される。これもRAM56に記憶される。
【0160】続いて、S608において、基準駆動トル
クTREF に基づいて基準ΘSBREFが算出され、それも
RAM56に記憶される。さらに、その基準ΘSBREF
を増加勾配D1で割り算することにより、基準ΘAC
REF も算出され、これもRAM56に記憶される。
【0161】その後、S609において、実ΘACが基
準ΘACREF より大きいか否かが判定される。今回は大
きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S610
において、目標ΘSB1* (第一制御用)が増加勾配D
1と実ΘACとの積として算出される。これもRAM5
6に記憶される。
【0162】続いて、S612において、目標ΘSB2
* (第二制御用)が決定され、その後、S613におい
て、目標ΘSB1* がΘSB2* より小さいか否かが判
定される。今回は小さいと仮定すれば、判定がYESと
なり、S614において、目標ΘSB1* が今回の真の
目標ΘSB* に決定される。以上でこのルーチンの一回
の実行が終了する。
【0163】その後、図11のS52に移行し、サブス
ロットル開度センサ40により検出される実ΘSBが目
標ΘSB* に一致するように、サブスロットルアクチュ
エータ36を介してサブスロットルバルブ32が駆動さ
れる。以上でこのスロットル制御ルーチンの一回の実行
が終了する。
【0164】その後このスロットル制御ルーチンが何回
も実行され、その実行ごとに図27の目標サブスロット
ル開度決定ルーチンが実行される。以下、この目標サブ
スロットル開度決定ルーチンが続けて何回も実行される
とみなしてこのルーチンの内容を説明する。
【0165】目標サブスロットル開度ルーチンの実行が
何回も繰り返されるうちに、実ΘACが基準ΘACREF
より大きくなったと仮定すれば、S609の判定がYE
Sとなり、S611が実行される。まず、RAM56か
ら最新の基準ΘSBREF およびΘACREF が読み込ま
れ、次に、 ΘSBREF +D2・(ΘAC−ΘACREF ) なる値として目標ΘSB1* の今回値が決定される。こ
れもRAM56に記憶される。
【0166】続いて、S612において前記の場合と同
様に目標ΘSB2* が決定され、S613において、目
標ΘSB1* がΘSB2* より小さいか否かが判定され
る。今回も小さいと仮定すれば、判定がYESとなり、
S614において目標ΘSB1* が真の目標ΘSB*
決定される。したがって、今回もスロットル制御として
第一制御が実行されることになる。
【0167】これに対し、第一制御が実行されても左右
後輪12にスピン傾向が発生した場合には、目標ΘSB
* がΘSB2* より小さくはなくなるから、S613
の判定がNOとなり、S615において、目標ΘSB2
* が真の目標ΘSB* に決定される。以上でこのルーチ
ンの一回の実行が終了する。したがって、今回はスロッ
トル制御として第二制御が実行されることになる。
【0168】すなわち、本実施例においては、基準駆動
トルクTREF と実駆動トルクTとが直接に比較されるの
ではなく、基準駆動トルクTREF に対応する基準ΘAC
REFと実駆動トルクTに対応する実ΘACとの関係とし
て間接に比較され、実駆動トルクTが基準駆動トルクT
REF を超えた後において超える前におけるより、実ΘS
Bすなわち実駆動トルクTの増加勾配が緩やかにされて
いるのである。
【0169】また、本実施例においては、第一制御によ
って駆動輪のスピン発生を未然に防止するが、この第一
制御によってもスピン傾向が発生してしまった場合には
第二制御が行われ、スピン傾向の増加が確実に抑制され
るのであり、フィードフォワード制御とフィードバック
制御と共同によりスピン未然防止とスピン迅速解消との
双方が達成されるのである。また、フィードフォワード
制御のみの場合には、スピン発生を確実に回避するため
にサブスロットル開度ΘSBを小さめに設定せざるを得
ず、それが車両の加速性の低下につながるおそれがある
が、本実施例においては、フィードバック制御が存在す
る代償として、フィードフォワード制御においてサブス
ロットル開度ΘSBをやや大きめに設定することが可能
となり、車両の加速性の低下を防止することができる。
【0170】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、操舵トルクセンサ66,圧力センサ68お
よび70が、車両制御コンピュータ50の、図10のS
1および2を実行する部分と共同して、各請求項の発明
における「復元モーメント検出手段」の一態様を構成
し、横加速度センサ72およびヨーレートセンサ62が
車両制御コンピュータ50の、図10のS1および3を
実行する部分と共同して、各請求項の発明における「コ
ーナリングフォース検出手段」の一態様を構成し、車両
制御コンピュータ50の、図10の複数のステップのう
ちS1〜3を除くものを実行する部分が、各請求項の発
明における「路面摩擦係数検出手段」の一態様を構成し
ているのである。特に、車両制御コンピュータ50の、
図23の最終信頼度算出ルーチンを実行する部分が、請
求項2の発明における「平滑化型検出精度推定手段」の
一態様を構成している。
【0171】また、本実施例においては、車両制御コン
ピュータ50の、図11のスロットル制御ルーチンを実
行する部分が、請求項3〜5の各発明における「コント
ローラ」の一態様を構成している。特に、車両制御コン
ピュータ50の、図27のS602を実行する部分が、
請求項4の発明における「検出精度応答型目標スロット
ル開度決定手段」の一態様を構成し、同図のS607〜
611を実行する部分が、請求項5の発明における「駆
動トルク応答型目標スロットル開度決定手段」の一態様
を構成している。
【0172】次に、別の実施例について説明する。な
お、本実施例は先の実施例とスロットル制御に関する部
分が異なるのみで他の部分については共通であるから、
異なる部分についてのみ詳細に説明し、共通の部分につ
いては説明を省略する。
【0173】先の実施例においては、駆動輪である左右
後輪12にスピン傾向が生じると予想される基準ΘSB
REF を推定し、それと実ΘACとの関係から実ΘSBの
増加勾配が制御されるようになっていたが、本実施例に
おいては、トルクコンバータ24から現在出力されてい
る実トルクコンバータトルクTt を推定し、それと基準
駆動トルクTREF との関係から実ΘSBが制御される。
【0174】実トルクコンバータトルクTt は次のよう
にして推定される。すなわち、まず、エンジン回転数N
e とサブスロットル開度ΘSBとの関係であって予めR
OM54に記憶されているものに従い、実エンジン回転
数Ne と実サブスロットル開度ΘSBとの関係に対応す
る実エンジントルクTe が決定される。次に、実エンジ
ン回転数Ne と実トルクコンバータ回転数Nt との比が
実速度比eとして算出され、速度比eとトルク比tとの
関係であって予めROM54に記憶されているものに従
い、その実速度比eに対応する実トルク比tが決定さ
れ、その実トルク比tと実エンジントルクTe との積と
して実トルクコンバータトルクTt が算出されるのであ
る。
【0175】以上の内容は図28に示す目標サブスロッ
トル開度決定ルーチンにより実行される。なお、図27
のルーチンと共通する部分については簡単に説明する。
まず、S701において、各種信号が入力される。各種
信号の中には、路面摩擦係数検出装置からの路面μおよ
び信頼度Sや、エンジン回転数センサ27からの実エン
ジン回転数Ne や、トルクコンバータ回転数センサ28
からの実トルクコンバータ回転数Nt や、サブスロット
ル開度センサ40からの実ΘSBや、アクセル開度セン
サ38からの実ΘACや、左右後輪12のコーナリング
フォースCFの算出に必要な実横加速度GY および実ヨ
ーレートγや、自動変速装置からの減速比iなどが含ま
れている。
【0176】その後、S702において、ROM54に
予め記憶されているエンジン特性情報に従い、今回の実
ΘSBと実エンジン回転数Ne とに対応する実エンジン
トルクTe が推定される。続いて、S703において、
実トルクコンバータ回転数N t を実エンジン回転数Ne
で割り算することによってトルクコンバータ24の今回
の実速度比eが算出される。その後、S704におい
て、ROM54に予め記憶されているトルクコンバータ
特性情報に従い、今回の実速度比eに対応する実トルク
比tが算出される。続いて、S705において、その今
回の実トルク比tと実エンジントルクTe との積として
今回の実トルクコンバータトルクTt が推定される。
【0177】その後、S706において、S701で入
力された路面μおよび信頼度Sと設定された路面μS
に基づいてスロットル制御に適した路面μOPT の今回値
が算出される。続いて、S707において、前記S60
7と同様にして基準駆動トルクTREF が算出される。
【0178】続いて、S708において、実トルクコン
バータトルクTt が基準駆動トルクTREF との関係にお
いて十分に大きいか否かが判定される。具体的には、実
トルクコンバータトルクTt が基準駆動トルクTREF
り大きいか、または大きくはないが実トルクコンバータ
トルクTt と基準駆動トルクTREF との差が設定値以下
となったか否かが判定される。今回は十分に大きくはな
いと仮定すれば、判定がNOとなり、S709に移行す
る。このS709においては、路面μOPT に基づいて増
加勾配D1の今回値D1i が算出される。算出された増
加勾配D1i もRAM56に記憶される。さらに、その
増加勾配D1i と実ΘACとの積として目標ΘSB1*
が算出される。これもRAM56に記憶される。
【0179】その後、S711において、前記S612
におけると同様にして目標ΘSB2 * が算出される。続
いて、S712において、目標ΘSB1* がΘSB2*
より小さいか否かが判定される。今回は小さいと仮定す
れば、判定がYESとなり、S713において、目標Θ
SB1* が今回の真の目標ΘSB* とされる。これもR
AM56に記憶される。以上でこのルーチンの一回の実
行が終了する。
【0180】以上、実トルクコンバータトルクTt が基
準駆動トルクTREF との関係において十分に大きくはな
い場合について説明したが、十分に大きい場合には、S
708の判定がYESとなり、S710が実行される。
まず、RAM56から最新の基準ΘSBREF および基準
ΘACREF が読み込まれ、次に、 ΘSBREF +D2・(ΘAC−ΘACREF ) なる値として目標ΘSB1* の今回値が決定される。こ
れもRAM56に記憶される。
【0181】続いて、S711において前記の場合と同
様に目標ΘSB2* が決定され、S712において、目
標ΘSB1* がΘSB2* より小さいか否かが判定され
る。今回も小さいと仮定すれば、判定がYESとなり、
S713において目標ΘSB1* が真の目標ΘSB*
決定される。一方、今回は小さくはないと仮定すれば、
S712の判定がNOとなり、S714において、目標
ΘSB2* が真の目標ΘSB* に決定される。以上でこ
のルーチンの一回の実行が終了する。
【0182】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、操舵トルクセンサ66,圧力センサ68お
よび70が、車両制御コンピュータ50の、図10のS
1および2を実行する部分と共同して、各請求項の発明
における「復元モーメント検出手段」の一態様を構成
し、横加速度センサ72およびヨーレートセンサ62が
車両制御コンピュータ50の、図10のS1および3を
実行する部分と共同して、各請求項の発明における「コ
ーナリングフォース検出手段」の一態様を構成し、車両
制御コンピュータ50の、図10の複数のステップのう
ちS1〜3を除くものを実行する部分が、各請求項の発
明における「路面摩擦係数検出手段」の一態様を構成し
ているのである。特に、車両制御コンピュータ50の、
図23の最終信頼度算出ルーチンを実行する部分が、請
求項2の発明における「平滑化型検出精度推定手段」の
一態様を構成している。
【0183】また、本実施例においては、車両制御コン
ピュータ50の、図11のスロットル制御ルーチンを実
行する部分が、請求項3〜5の各発明における「コント
ローラ」の一態様を構成している。特に、車両制御コン
ピュータ50の、図28のS706を実行する部分が、
請求項4の発明における「検出精度応答型目標スロット
ル開度決定手段」の一態様を構成し、同図のS702〜
705および707〜710を実行する部分が、請求項
5の発明における「駆動トルク応答型目標スロットル開
度決定手段」の一態様を構成している。
【0184】なお付言すれば、以上詳記した実施例にお
いては、路面μに基づいて目標スロットル開度を、それ
の増加勾配が路面μが低い場合において高い場合におけ
るより緩やかになるように決定する路面μ応答型目標ス
ロットル開度決定技術や、路面μに基づいて基準駆動ト
ルクを推定し、その基準駆動トルクに基づいて目標スロ
ットル開度を、それの増加勾配が実駆動トルクがその基
準駆動トルクを超えた後において超える前におけるより
緩やかになるように決定する駆動トルク応答型目標スロ
ットル開度決定技術が、復元モーメントとコーナリング
フォースと路面μとの間に成立する関係を利用した路面
μ検出技術と共に使用されているが、それら路面μ応答
型目標スロットル開度決定技術および駆動トルク応答型
目標スロットル開度決定技術は、その路面μ検出技術と
は異なる路面μ検出技術と共に使用することが可能であ
り、この場合でも、低μ路上での加速操作の簡単化およ
び駆動輪スピンの未然防止という効果が得られる。
【0185】以上、各請求項の発明を図示の実施例に基
づいて具体的に説明したが、この他にも特許請求の範囲
を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変
更,改良を施した態様で各請求項の発明を実施すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車輪の横スリップ角とコーナリングフォースと
の関係が路面の摩擦係数によって異なる様子を説明する
ためのグラフである。
【図2】車輪のコーナリングフォースと復元モーメント
との関係が路面の摩擦係数によって異なる様子を説明す
るためのグラフである。
【図3】車輪のコーナリングフォースと復元モーメント
との関係がステアリングホイールの切込み中と切戻し中
とで異なる様子を説明するためのグラフである。
【図4】請求項1の発明の構成を概念的に示す図であ
る。
【図5】請求項3の発明の構成を概念的に示す図であ
る。
【図6】各請求項の発明に共通の一実施例である路面摩
擦係数検出装置とスロットル制御装置とを含む車両制御
装置が搭載されている車両の主要部を概念的に示す平面
図である。
【図7】その車両の駆動系の構成を概念的に示す図であ
る。
【図8】その車両のエンジンにおけるメインスロットル
バルブとサブスロットルバルブとの関係を説明するため
の正面断面図である。
【図9】上記車両制御装置の電気的な構成を示すシステ
ム図である。
【図10】図9における車両制御コンピュータのROM
に記憶されている路面μ検出ルーチンを示すフローチャ
ートである。
【図11】そのROMに記憶されているスロットル制御
ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】上記路面摩擦係数検出装置における検出復元
モーメントSAM0と検出コーナリングフォースCFと
の関係を説明するためのグラフである。
【図13】上記路面摩擦係数検出装置における補正復元
モーメントSAM1と検出コーナリングフォースCFと
の関係を説明するためのグラフである。
【図14】コーナリングフォースCFと復元モーメント
SAMと路面μとの関係が上記ROMに記憶されている
状態をテーブルとして概念的に表す図である。
【図15】コーナリングフォースCFと復元モーメント
SAMと路面μとの関係が上記ROMに記憶されている
状態を3次元座標系で概念的に表すグラフである。
【図16】コーナリングフォースCFと復元モーメント
SAMとの関係から路面μを求める別の手法を説明する
ためのグラフおよび式である。
【図17】上記路面摩擦係数検出装置において信頼度S
に対して行われる各種フィルタ処理の特性を概念的に説
明するためのグラフである。
【図18】摩擦係数μに対するフィルタ処理と信頼度S
に対するフィルタ処理とをそれぞれ示す機能ブロック図
である。
【図19】本出願人が本発明に先立って開発した信頼度
Sに対するフィルタ処理の特性を概念的に説明するため
のグラフである。
【図20】上記路面摩擦係数検出装置において信頼度S
に対して行われるフィルタ処理の特性を概念的に説明す
るためのグラフである。
【図21】上記ROMに記憶されている復元モーメント
算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図22】上記ROMに記憶されている暫定信頼度算出
ルーチンを示すフローチャートである。
【図23】上記ROMに記憶されている最終信頼度算出
ルーチンを示すフローチャートである。
【図24】上記ROMに記憶されている異常挙動判定ル
ーチンを示すフローチャートである。
【図25】摩擦係数μおよび信頼度Sの利用対象が複数
ある場合にそれぞれの利用対象の要求に合わせてフィル
タ特性を異ならせる望ましい態様を説明するための機能
ブロック図である。
【図26】図11のスロットル制御ルーチンによるスロ
ットル制御の内容を概念的に説明するためのグラフであ
る。
【図27】上記ROMに記憶されている目標サブスロッ
トル開度決定ルーチンを示すフローチャートである。
【図28】別の実施例における目標サブスロットル開度
決定ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 左右前輪 12 左右後輪 20 ステアリングホイール 22 パワーシリンダ 23 エンジン 24 トルクコンバータ 25 自動変速機 26 最終減速機 27 エンジン回転数センサ 28 トルクコンバータ回転数センサ 30 メインスロットルバルブ 32 サブスロットルバルブ 36 サブスロットルアクチュエータ 38 アクセル開度センサ 50 車両制御コンピュータ 62 ヨーレートセンサ 66 操舵トルクセンサ 68,70 圧力センサ 72 横加速度センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B62D 109:00 111:00 113:00 119:00 123:00 127:00 137:00

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車輪にそれの横スリップ角を減らす方向に
    作用する復元モーメントを検出する復元モーメント検出
    手段と、 その車輪に作用するコーナリングフォースを検出するコ
    ーナリングフォース検出手段と、 前記復元モーメント検出手段による検出復元モーメント
    と前記コーナリングフォース検出手段による検出コーナ
    リングフォースとの関係に基づき、前記車輪が接触して
    いる路面の摩擦係数を検出する路面摩擦係数検出手段で
    あって、今回の検出復元モーメントと検出コーナリング
    フォースとの関係に基づいて路面摩擦係数の今回の暫定
    値である暫定路面摩擦係数を決定し、操舵系の状態を表
    す操舵状態信号に基づいてその今回の暫定路面摩擦係数
    の検出精度を推定し、少なくともその今回の暫定路面摩
    擦係数と予め設定された設定路面摩擦係数とに基づいて
    路面摩擦係数の今回の最終値である最終路面摩擦係数
    を、推定した検出精度が上昇するにつれて今回の暫定路
    面摩擦係数に近づき、低下するにつれて設定路面摩擦係
    数に近づくように決定するものとを含むことを特徴とす
    る路面摩擦係数検出装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の路面摩擦係数検出装置で
    あって、前記路面摩擦係数検出手段が、前記操舵状態信
    号に基づいて前記暫定路面摩擦係数の検出精度の暫定値
    である暫定検出精度を逐次決定し、決定した複数の暫定
    検出精度を平滑化することによって検出精度の最終値で
    ある最終検出精度を逐次決定する平滑化型検出精度推定
    手段を含んでいる路面摩擦係数検出装置。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の路面摩擦係数検
    出装置を含み、エンジンのスロットルバルブの開度であ
    るスロットル開度を制御するスロットル制御装置であっ
    て、 運転者による加速操作部材の操作量を検出する加速操作
    量検出手段と、 前記スロットルバルブを電気的に駆動するスロットルバ
    ルブ駆動装置と、 検出された加速操作量に基づいて前記スロットルバルブ
    の目標スロットル開度を、それの加速操作量に対する増
    加勾配が前記路面摩擦係数検出装置により検出された路
    面摩擦係数が低い場合において高い場合におけるより緩
    やかとなるように決定し、決定した目標スロットル開度
    が実現されるように前記スロットルバルブ駆動装置を制
    御するコントローラとを含むことを特徴とするスロット
    ル制御装置。
  4. 【請求項4】請求項3に記載のスロットル制御装置であ
    って、前記コントローラが、目標スロットル開度をそれ
    の前記増加勾配が前記路面摩擦係数検出装置により推定
    された検出精度が低い場合と高い場合とで異なるように
    決定する検出精度応答型目標スロットル開度決定手段を
    含んでいるスロットル制御装置。
  5. 【請求項5】請求項3または4に記載のスロットル制御
    装置であって、前記コントローラが、前記路面摩擦係数
    検出装置により検出された路面摩擦係数に基づき、前記
    エンジンにより駆動される駆動輪のスリップ状態量が設
    定値を超えるときにおける駆動系の駆動トルクを基準駆
    動トルクとして推定し、目標スロットル開度をそれの前
    記増加勾配が実駆動トルクがその基準駆動トルクを超え
    た後において超える前におけるより緩やかとなるように
    決定する駆動トルク応答型目標スロットル開度決定手段
    を含んでいるスロットル制御装置。
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