JPH07244277A - 窒化保護膜、それを用いた液晶ディスプレイおよび窒化保護膜の形成方法 - Google Patents

窒化保護膜、それを用いた液晶ディスプレイおよび窒化保護膜の形成方法

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JPH07244277A
JPH07244277A JP3561494A JP3561494A JPH07244277A JP H07244277 A JPH07244277 A JP H07244277A JP 3561494 A JP3561494 A JP 3561494A JP 3561494 A JP3561494 A JP 3561494A JP H07244277 A JPH07244277 A JP H07244277A
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protective film
film
electrode
sin
substrate
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JP3561494A
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Masaharu Nobori
正治 登
Hiroshi Hamano
広 濱野
Tamahiko Nishiki
玲彦 西木
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Oki Electric Industry Co Ltd
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Oki Electric Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 フリッカーが小さく、かつ、透明なSiNX
保護膜の提供。 【構成】 液晶ディスプレイの画素電極上の電極保護膜
が、主たる原料ガスであるNH3 とSiH4 とのガス流
量比NH3 /SiH4 が0.7〜1.4の範囲でグロー
放電により成膜されたSiNX 保護膜からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、半導体素子に形成す
る窒化保護膜(以下、SiNX 保護膜とも表記する)、
特に液晶ディスプレイの電極保護膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の液晶ディスプレイの一例として、
文献1:「電子技術、1993−8、pp.73−8
0」に、TFT−LCD(薄膜トランジスタ−液晶ディ
スプレイ)が記載されている。通常のLCDでは、画素
電極基板と対向基板との間に液晶を封入してある。文献
1中の75頁の図5では、画素電極基板のみを示してい
る。この画素電極基板では、ガラス基板の上に画素電極
とこの画素電極に電圧を印加するための活性素子である
TFTとを具えている。そして、この従来例では、画素
電極上のみ保護膜を除去し、TFT上に保護膜を残して
いる。
【0003】保護膜としてSiNX 膜(窒化膜)をグロ
ー放電(例えばプラズマCVD法)により形成する場合
は、主たる原料ガスであるNH3 とSiH4 とのガス流
量比NH3 /SiH4 を10以上にすると、膜構造がS
i−N結合の多い良好な絶縁膜が得られることが、文献
2「電子通信情報学会、SDM90−151、pp.4
9−53(1990)」に記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、画素電
極上のみ保護膜を除去すると、保護膜の膜厚に起因する
段差が画素電極の周囲に形成される。この段差のため、
液晶の配向が乱れ、その結果、画素電極の周囲で光漏れ
が発生して表示特性の劣化の原因となる。
【0005】また、通常、画素電極上には配向膜が設け
てあり、この配向膜を回転するローラー押し当てること
により、液晶を配向させるための機能を配向膜に与える
配向処理を行なっている。この際、配向膜に保護膜の段
差に起因する段差があると、画素電極の周囲の段差の直
下の角(下角)の部分の配向処理ができないだけでな
く、配向処理で発生した微小な屑がこの下角の部分に溜
ってしまう。その結果、配向処理できなかった部分から
の光漏れの発生や、微小な屑から液晶中に溶け出す不純
物イオンにより液晶が汚染され表示特性の劣化の原因と
なる。
【0006】このような画素電極の周囲の光漏を防ぐた
め、通常対向基板に設けられている、画素電極と対向す
る部分に開口部を有するブラックマスク(遮光マスク)
の開口率を小さくして、画素電極周囲を覆うようにする
対策が一般的に行なわれている。しかし、ブラックマス
クの開口率を小さくすると表示画像が暗くなる。特に、
画素密度の大きい高精細なLCDパネルでは開口率の低
下の影響が顕著である。
【0007】一方、画素電極上のSiNX 保護膜を除去
しない場合は、表示特性としてちらつき(フリッカー)
が発生するため表示品質が大幅に劣化してしまう。
【0008】また、従来のSiNX 保護膜は、帯電する
と静電気がなかなか放電しないため、半導体素子の不
良、特に液晶ディスプレイの表示品質が劣化する原因と
なっていた。SiNX 保護膜は、例えば前述した配向処
理やTFT基板と対向基板との間への液晶を注入する工
程で帯電し易く、静電気の放電に長時間を要する。この
ため、液晶ディスプレイの製造後に予備駆動やアニール
等の後処理が必要となり、液晶ディスプレイの生産性の
低下の原因となっていた。
【0009】このため、帯電による静電気が放電し易
く、フリッカーの小さい、透明なSiNX 保護膜の実現
が望まれていた。また、画素電極上に設けてもフリッカ
ーが小さく、表示品質の劣化のない電極保護膜であっ
て、さらに、TFT−LCDの場合には、トランジスタ
上に電極保護膜を形成してもトランジスタの閾値電圧の
変動がない電極保護膜膜を具えた液晶ディスプレイの実
現が望まれていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明のSiNX 保護
膜およびその形成方法によれば、半導体素子に形成され
るSiNX 保護膜が、成膜時の主たる原料ガスであるN
3 とSiH4 とのガス流量比NH3 /SiH4 が0.
7〜1.4の範囲でグロー放電により成膜されることを
特徴とする。
【0011】また、この発明の液晶ディスプレイによれ
ば、画素電極基板と対向基板との間に液晶を封入してあ
り、画素電極は、第1の透明基板の対向電極側の面上に
透明な画素電極とこの画素電極に電圧を印加するための
活性素子とを具え、かつ、この画素電極上に電極保護膜
および第1の配向膜を順次に積層して具えており、対向
電極は、第2の透明基板の画素電極基板側の面上に透明
な共通電極および第2の配向膜を順次に積層して具えて
なる液晶ディスプレイにおいて、電極保護膜が、上述の
発明のSiNX 保護膜からなることを特徴とする。
【0012】
【作用】この発明のSiNX 保護膜およびその形成方法
によれば、SiNX 保護膜が、主たる原料ガスであるN
3 とSiH4 とのガス流量比NH3 /SiH4 を0.
7〜1.4という特定の比の範囲にして成膜してある。
このため、後述の実施例で説明するように、SiNX
護膜が帯電しても静電気が従来の保護膜よりも放電し易
く、また、SiNX 保護膜が着色して見える程光学的バ
ンドギャップが小さくない。このため、フリッカーが小
さく、かつ、透明なSiNX 保護膜を得ることができ
る。
【0013】また、流量比が0.7〜1.4のSiNX
保護膜を具えた液晶ディスプレイでは、SiNX 保護膜
の帯電による表示不良がなく、フリッカーが小さいた
め、画素電極上のSiNX 保護膜を除去する必要がな
い。このため、画素電極上のSiNX 保護膜を除去した
場合に生ずる段差による画素電極周辺での光漏れや段差
に溜った屑による表示品質の劣化が生じることがない。
さらに、画素電極周辺での光漏れがないので、ブラック
マスクの開口部を狭くする必要がない。このため、開口
部を狭くすることによって表示画面が暗くなることがな
い。従って、表示品質の良い液晶ディスプレイを提供す
ることができる。また、TFT上に、この発明の窒化保
護膜を形成しても、トランジスタの閾値電圧の変動等の
悪影響は生じない。
【0014】
【実施例】以下、図面を参照して、この発明のSiNX
保護膜、それを用いた液晶ディスプレイおよびSiNX
保護膜の形成方法の実施例について併せて説明する。
尚、以下に参照する図は、この発明が理解できる程度に
各構成成分の大きさ、形状および配置関係を概略的に示
してあるに過ぎない。従って、この発明は、図示例にの
み限定されるものでない。
【0015】図1は、この発明のSiNX 保護膜を用い
た液晶ディスプレイの実施例の説明に供する1画素分の
断面構造図である。尚、図1では、断面を表すハッチン
グを一部省略して示してある。
【0016】この実施例の液晶ディスプレイ(LCD)
は、活性素子としてアモルファスシリコン薄膜トランジ
スタ(α−SiTFT)を具えており、画素電極基板で
あるTFT基板10と対向基板であるフィルタ基板12
との間に液晶14を封入してある。TFT基板10は、
第1の透明な絶縁性基板であるガラス基板16のフィル
タ基板側の面上に透明な画素電極18とこの画素電極1
8に電圧を印加するための活性素子としてα−SiTF
T20を具えている。尚、この実施例では、画素電極1
8はガラス基板16上に設けられた第2ゲート絶縁膜4
2上に設けてある。また、この画素電極18上には、電
極保護膜22および第1の配向膜24を順次に積層して
具えてある。一方、フィルタ基板12には、第2の透明
な絶縁性基板であるガラス基板26のTFT基板10側
の面上に、画素電極18と対向する部分に開口部28を
有するブラックマスク層30を具え、この開口部にフィ
ルタ層32を設けてある。そして、このブラックマスク
層30およびフィルタ層32上に、透明な共通電極34
および第2の配向膜36を順次に積層してある。
【0017】そしてこの発明では、電極保護膜22が、
主たる原料ガスであるNH3 とSiH4 とのガス流量比
NH3 /SiH4 が0.7〜1.4の範囲でグロー放電
により成膜されたSiNX 保護膜22からなる。
【0018】次に、この実施例のTFT基板10に設け
られたα−SiTFT20について説明する。図1に
は、α−SiTFTアレイの1画素分に対応する部分が
示されている。 この実施例では、ガラス基板16上
に、導電性材料(例えばタンタル)からなる膜厚100
〜300nm程度のゲート電極38が形成されている。
ゲート電極38形成にあたっては、例えば、スパッタリ
ング法によりタンタル膜(図示せず)を成膜後、ホトリ
ソグラフィおよびエッチング技術によってパターニング
を施してゲート電極38を形成する。このゲート電極3
8は、陽極酸化法によってゲート電極38の表面を酸化
して形成された第1ゲート絶縁膜40で覆われている。
ゲート電極38の表面の酸化に際しては、ゲート電極3
8の端子取り出し部分(図示せず)はホトレジスト等で
保護しておく。さらに、この第1ゲート絶縁膜40およ
びガラス基板16上は第2ゲート絶縁膜42で覆われて
いる。第2ゲート絶縁膜42は、アンモニア(NH3
およびシラン(SiH4 )を主成分とする反応ガスを用
いたグロー放電により形成する。第2ゲート絶縁膜42
上には、アモルファスシリコン(α−Si)からなる膜
厚20〜200nm程度の活性層44が、SiH4 を用
いたグロー放電によって形成されている。また、この活
性層44の両端部上には、ソース電極46およびドレイ
ン電極48がそれぞれ電気的な接続性を良好にするため
のオーミック層49を介して形成されている。オーミッ
ク層49はSiH4 およびPH3 を主成分とする反応ガ
スを用いたグロー放電により形成する。また、ソース電
極46およびドレイン電極48の形成にあたっては、例
えばスパッタリング法を用いて導電性膜をTFT基板上
全面に披着させ、その後、ホトリソグラフィおよびエッ
チング技術を用いてパターニングを行ない、ソース電極
46およびドレイン電極48を形成する。このとき、ソ
ース電極46は画素電極18と電気的に接続される。ま
た、ソース電極46とドレイン電極48との間に残った
不要なオーミック層(図示せず)は、ソース電極46お
よびドレイン電極48をエッチングマスクとしてドライ
エッチング等の方法により除去する。そして、α−Si
TFT20および画素電極18を含むTFT基板10上
全面には、上述したSiNX 保護膜22が上述のガス流
量比で形成されている。さらに、SiNX 膜上22全面
には配向膜24が形成されている。
【0019】以下、図2〜図9を参照して、SiNX
の保護膜を特定のガス流量比で成膜したものとする理由
を説明する。
【0020】図2は、SiNX 保護膜の特性のNH3
SiH4 ガス流量比依存性の測定結果である。図2の上
段の左側の縦軸は、赤外分光測定により求めたSi−H
結合量およびN−H結合量を任意目盛りで表しており、
上段の右側の縦軸はSi−H/N−H比を表してる。ま
た、中段の縦軸は、可視紫外分光測定より求めた光学的
バンドギャップEgopt(eV)を表している。ま
た、下段の縦軸は、電子スピン共鳴(ESR:Electron
Spin Resonance )より求めたESRスピン密度(×1
18cm-3)を表している。各段の横軸は共通で、Si
X 保護膜を成膜する際のNH3 /SiH4 ガス流量比
(以下、単に流量比とも称する)を表している。
【0021】上段の曲線Iは、各流量比におけるSi−
H結合量の測定値のプロットを結んだものである。ま
た、曲線IIは、各流量比におけるN−H結合量の測定値
のプロットを結んだものである。また、曲線III は、各
流量比におけるSi−H/N−H比のプロットを結んだ
ものである。曲線I〜III に示すように、流量比が小さ
いと、Si−H結合が増加し、N−H結合が減少し、S
i−H/N−H比は増加する。
【0022】中段の曲線IVは、各流量比における光学的
バンドギャップ(Egopt)の測定値を結んだもので
ある。曲線IVに示すように、流量比を4から1まで変化
させるとEgoptは緩やかに減少し、流量比が1より
も小さくなるとEgoptは急激に小さくなる。流量比
が0.7よりも小さくなるとEgoptは3程度よりも
小さくなる。Egoptが3程度よりも小さい膜では可
視光領域でも光学吸収が発生するため膜が着色して見え
る。このため、Egoptが3程度よりも小さい膜は、
例えば液晶ディスプレイの画素電極上の積層する膜とし
ては不適当である。
【0023】下段の曲線Vは、各流量比におけるESR
スピン密度の測定値のプロットを結んだものである。曲
線Vに示すように、流量比が1以上の領域ではスピン密
度は緩やかに変化する。一方、流量比が1よりも小さく
なるとスピン密度は増加し始め、流量比が0.7よりも
小さくなるとスピン密度との増加は急激となる。このこ
とより、流量比が0.7よりも小さい領域ではSiNX
保護膜中のダングリングボンドが増加するため、例えば
TFTのチャネル部分の保護膜としては適さないと考え
られる。
【0024】次に、図3に、SiNX 保護膜を抵抗と容
量の並列回路による等価回路で考えた場合の並列抵抗率
Rpの低周波での周波数依存性を示す。図3のグラフの
横軸はSiNX 保護膜に印加する周波数(Hz)を表
し、縦軸は抵抗率(Ωcm)を表している。図3のグラ
フ中の曲線r1 〜r5 はそれぞれ流量比4、2、1、
0.7、0.3で成膜したSiNX 保護膜の抵抗値の周
波数依存性を表している。(但し、この実施例で曲線と
は折れ線、破線、一点鎖線および二点鎖線を含む。)曲
線r1 〜r5 に示すように、例えば実際に液晶ディスプ
レイを駆動する際にSiNX 保護膜に印加される30H
zの周波数では、流量比が小さい程SiNX保護膜の抵
抗率が小さくなっている。また、SiNX 保護膜を上述
したいずれの流量比で成膜した場合も並列容量Cpは周
波数によらず一定の値であるので、SiNX 保護膜は分
極していない。
【0025】次に、図4に、SiNX 保護膜の誘電率の
NH3 /SiH4 ガス流量比依存性を示す。図4のグラ
フの横軸は、SiNX 保護膜を成膜する際のNH3 /S
iH4 ガス流量比を表している。縦軸は、SiNX 保護
膜の30Hzでの誘電率を表している。図4のグラフ中
の曲線VIは、各流量比での誘電率の測定値のプロットを
結んだものである。曲線VIに示すように、流量比が1よ
りも小さい領域で誘電率が増加している。
【0026】以上、図2〜図4に示した測定結果から、
SiNX 保護膜の成膜時のNH3 /SiH4 ガス流量比
は0.7以上であることが必要であることが分かる。
【0027】次に、SiNX 保護膜のフリッカー特性の
流量比依存性について説明する。先ず、図5に、フリッ
カー特性の測定に用いた単純マトリクスセルの断面図を
示す。この単純マトリクスセルは、下側のガラス基板5
0上に透明電極52、SiNX 保護膜54および配向膜
56を順次に積層してあり、一方上側のガラス基板58
上は、透明電極60および配向膜62が順次に積層して
ある。そして上側および下側のガラス基板50および5
8を、配向膜同士56および62が向かい合ようにして
対向させ、配向膜同士56および62の間に液晶64を
封入してある。また、SiNX 保護膜54を設けない単
純マトリクスセルも作製してSiNX 保護膜の有無によ
るフリッカー特性の差を後述するように調べた。
【0028】次に、図6に、フリッカー特性の測定に用
いたフリッカー測定装置の概略図を示す。ここでは、被
測定サンプルである単純マトリクスセル66をバックラ
イト68と光電子増倍管70との間に配置してある。単
純マトリクスセル66は、駆動回路72によって駆動電
圧を印加され、駆動回路72はコンピュータ74によっ
て制御される。また、光電子倍増管70から得られた信
号はFFTアナライザ76で処理してからコンピュータ
74に取り込まれる。
【0029】この実施例では、フリッカーの大きさの基
準として、単純マトリクスセル66の最適駆動条件でF
FTアナライザ76で処理して得られた信号の30Hz
成分をDC(直流)成分で割った値をm30値と呼んで
用いる。このm30値が0.02以下のときには人間に
目にはフリッカーは感じられない。
【0030】次に、図7に、m30値のNH3 /SiH
4 ガス流量比依存性を示す。図7のグラフの横軸は、S
iNX 保護膜を成膜する際のNH3 /SiH4 ガス流量
比を表している。縦軸はm30値を表している。図7の
グラフ中の曲線VII は、各流量比でのm30値のプロッ
トを結んだものである。曲線VII に示すように、流量比
が小さいほど、m30値は小さくなっている。従って、
流量比が小さいほど、フリッカーが小さくなる。また、
m30値が、人間の目にフリッカーが感じられなくなる
値である0.02以下となるのは、流量比が1.4以下
の場合であることが分かる。
【0031】ところで、単純マトリックスセルを初め液
晶ディスプレイのセルの作製においては、一般にラビン
グ処理と呼ばれる工程を含んでいる。ラビング処理で
は、例えばバフ材を巻いたローラー(ラビングローラ
ー)でTFT基板やフィルタ基板を擦る処理を行なうた
めに、静電気帯電が発生する。このとき、TFT基板は
SiNX 保護膜が存在するため、静電気が放電しにく
い。このため、セルを作製後、静電気帯電によるフリッ
カーが発生する。
【0032】次に、帯電したSiNX 保護膜の流量比の
違いによる放電のし易さの違いについて説明するため、
図8に、単純マトリクスセル製作後の経過時間とm30
値との関係を示す。図8のグラフの横軸は、単純マトリ
クスセル製作後の経過時間(日)を対数で表している。
縦軸はm30値を表している。図8のグラフ中の曲線s
1 〜s3 は流量比がそれぞれ4、2、1の場合のm30
値のプロットを結んだものであり、曲線s4 は、SiN
X 保護膜を設けない場合のm30値のプロットを結んだ
ものである。最初のフリッカーの測定はセル作製直後に
行なった。曲線s1 〜s4 に示すように、セル作製後の
時間が経過すると共にm30値は減少する。
【0033】また、流量比が1の場合は、曲線s3 に示
すように、最初の測定の時点でm30値が0.02より
も小さくなっており、人間の目ではフリッカーを感じな
い程度になっている。また、曲線s3 では5日目には、
SiNX 保護膜を設けていない場合の曲線s4 と同等の
m30値まで減少している。一方、流量比が4および2
の場合は、曲線s1 およびs2 に示すように、最初の測
定の時点ではm30値がいずれも0.04程度であり、
m30値が0.02以下になるまでに、曲線s1 の場合
は8日、曲線s2 の場合は5日かかっている。そして、
約30日後に曲線s1 およびs2 は漸く曲線s3 および
4 と同等のm30値まで減少している。
【0034】このように、流量比が小さい程、最初のm
30値が小さく、また、短時間でm30値が0.02よ
りも小さくなることが分かる。
【0035】従って、例えば文献2では流量比が10の
場合が記載されているように、従来の流量比が大きなS
iNX 保護膜を具えた液晶ディスプレイでは、セル組立
工程におけるラビング処理等により帯電したした静電気
が放電してフリッカーが人間の目に見えなくなるまでに
長時間かかることになる。また、流量比が2の場合も曲
線s2 に示すように、放電に時間がかかるため、画素電
極上に設けるSiNX保護膜として不適当である。一
方、流量比が1の場合は上述の曲線s3 に示すように、
静電気が放電してフリッカーが見えなくなるまでにかか
る時間が不要になる。その結果、液晶ディスプレイの画
素電極上に成膜時の流量比が1のSiNX保護膜を形成
すれば、液晶ディスプレイの製造に要する時間を大幅に
短縮することができる。
【0036】次に、図9に、単純マトリックスセルの電
圧保持率のバイアス電圧依存性の測定結果を示す。図9
のグラフの横軸は、単純マトリクスセルに印加するバイ
アス電圧を表している。縦軸は電圧保持率(%)を表し
ている。図9のグラフ中の曲線p1 〜p3 は、それぞれ
流量比が1、2、4のSiNX 保護膜の測定周波数30
ヘルツの場合の測定結果を示している。一般に、保持電
圧が低くなると、液晶ディスプレイの駆動電圧を高くす
る必要があるだけでなく、フリッカーが発生する。この
ため、保持電圧は高い方が良いことが知られている。曲
線p1 〜p3 に示すように、流量比が小さいSiNX
護膜の方が電圧保持率が高くなっている。
【0037】上述した図7〜図9に示す測定結果から、
SiNX 保護膜の成膜時の流量比は小さい方が良いこと
が分かる。特に、図7に示したようにフリッカーを人間
の目に見えなくなる程度にするには、流量比を1.4以
下とすることが必要である。
【0038】さらに、図2〜図4の測定結果から流量比
を0.7以上とすることを考え合わせれば、SiNX
護膜の成膜時の主たる原料ガスであるNH3 とSiH4
とのガス流量比NH3 /SiH4 を0.7〜1.4の範
囲とすれば、フリッカーが小さく、かつ、着色のない透
明なSiNX 保護膜が得られる。
【0039】そして、流量比が0.7〜1.4のSiN
X 保護膜を具えた液晶ディスプレイでは、SiNX 保護
膜の帯電による表示不良がなく、フリッカーが小さいた
め、画素電極上のSiNX 保護膜を除去する必要がな
い。このため、画素電極上のSiNX 保護膜を除去した
場合に生ずる段差による画素電極周辺での光漏れや段差
に溜った屑による表示品質の劣化が生じることがない。
さらに、画素電極周辺での光漏れがないので、ブラック
マスクの開口部を狭くする必要がない。このため、開口
部を狭くすることによって表示画面が暗くなることがな
い。従って、表示品質の良い液晶ディスプレイを提供す
ることができる。
【0040】ところで、活性素子としてTFTを具えた
LCDでは、SiNX 保護膜はTFTのチャネル部分上
にも形成される。このため、SiNX 保護膜の膜質の経
時変化によりTFTの閾値電圧が経時変化することが考
えられる。この閾値電圧の経時変化が急激であるとLC
Dの寿命が短くなることになる。そこで、閾値電圧の経
時変化を予測するため、TFT上に流量比が1のSiN
X 保護膜を成膜してDC BTS評価を行なった。DC
BTS評価とは加速度試験の一種で、TFTに温度と
DCバイアスを加えて試験し、TFTの閾値電圧の経時
変化を予測するものである。その予測結果を図10に示
す。図10のグラフの横軸は、SiNX保護膜成膜後の
経過時間(秒)を対数で表している。縦軸は、SiNX
保護膜の成膜直後のTFTの閾値電圧を基準にした閾値
電圧の経時変化量(V)を表している。図10のグラフ
中の曲線qは、閾値電圧の予測結果を示している。曲線
qが示すように、閾値電圧が2V変化するのに30年以
上かかることが予測できる。この結果は従来のSiNX
保護膜と同等の良好な特性である。さらに、実際のLC
Dの駆動は、パルス電圧で行なわれるため、LCDの寿
命はさらに長くなると考えられる。
【0041】上述した実施例では、この発明を特定の材
料を使用し、特定の構成とした例について説明したが、
この発明は多くの偏光および変形を行なうことができ
る。例えば、上述した実施例では、液晶ディスプレイの
SiNX 保護膜の例について説明したが、この発明のS
iNX 保護膜は、液晶ディスプレイに限らず、イメージ
センサやほかの半導体素子の駆動回路や論理回路にも利
用することができる。また、この発明の液晶ディスプレ
イは、TFT駆動型のアクティブLCDだけではなく、
例えば、STN型のノンアクティブLCD、ダイオード
駆動型のLCDまたは単純マトリクス型のLCDであっ
ても良い。また、例えばα−SiTFTの場合では、チ
ャンネルエッチ型でもエッチングストッパ型であっても
良い。
【0042】また、LCDのみならず、例えば完全密着
型のセンサのように、半導体素子の製造の過程または製
造後に静電気が発生し易いプロセスを行なう半導体素子
にこの発明のSiNX 保護膜を用いれば、従来のSiN
X 保護膜を用いた場合よりも放電のための工程を短縮す
ることができる。このため、半導体素子の製造工程また
は製造後の後工程の短縮を図ることが可能となる。
【0043】
【発明の効果】この発明のSiNX 保護膜およびその形
成方法によれば、SiNX 保護膜が、主たる原料ガスで
あるNH3 とSiH4 とのガス流量比NH3 /SiH4
を0.7〜1.4という特定の比の範囲にして成膜して
ある。このため、後述の実施例で説明するように、Si
X 保護膜が帯電しても静電気が従来の保護膜よりも放
電し易く、また、SiNX 保護膜が着色して見える程光
学的バンドギャップが小さくない。このため、フリッカ
ーが小さく、かつ、透明なSiNX 保護膜を得ることが
できる。
【0044】また、流量比が0.7〜1.4のSiNX
保護膜を具えた液晶ディスプレイでは、SiNX 保護膜
の帯電による表示不良がなく、フリッカーが小さいた
め、画素電極上のSiNX 保護膜を除去する必要がな
い。このため、画素電極上のSiNX 保護膜を除去した
場合に生ずる段差に起因する表示品質の劣化が生じるこ
とがない。従って、表示品質の良い液晶ディスプレイを
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のSiNX 保護膜を用いた液晶ディス
プレイの実施例の説明に供する1画素分の断面構造図で
ある。
【図2】SiNX 保護膜の特性のNH3 /SiH4 ガス
流量比依存性の測定結果を示すグラフである。
【図3】SiNX 保護膜を抵抗と容量の並列回路による
等価回路で考えた場合の並列抵抗率Rpの低周波での周
波数依存性の測定結果を示すグラフである。
【図4】SiNX 保護膜の誘電率のNH3 /SiH4
ス流量比依存性の測定結果を示すグラフである。
【図5】フリッカー特性の測定に用いた単純マトリクス
セルの断面図である。
【図6】フリッカー測定装置の該略図である。
【図7】m30値のNH3 /SiH4 ガス流量比依存性
を示すグラフである。
【図8】単純マトリクスセル製作後の経過時間とm30
値との関係を示すグラフである。
【図9】電圧保持率のバイアス電圧依存性の測定結果を
示すグラフである。
【図10】TFTの閾値電圧の経時変化を予測結果を示
すグラフである。
【符号の説明】
10:TFT基板 12:フィルタ基板 14:液晶 16:ガラス基板 18:画素電極 20:α−SiTFT 22:電極保護膜(SiNX 保護膜) 24:第1の配向膜 26:ガラス基板 28:開口部 30:ブラックマスク層 32:フィルタ層 34:共通電極 36:第2の配向膜 38:ゲート電極 40:第1ゲート酸化膜 42:第2ゲート酸化膜 44:活性層 46:ソース電極 48:ドレイン電極 49:オーミック層 50:ガラス基板 52:透明電極 54:SiNX 保護膜 56:配向膜 58:ガラス基板 60:透明電極 62:配向膜 64:液晶 66:単純マトリクスセル 68:バックライト 70:光電子倍増管 72:駆動回路 74:コンピュータ 76:FFTアナライザ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体素子に形成される窒化保護膜であ
    って、 前記窒化保護膜が、主たる原料ガスであるNH3 とSi
    4 とのガス流量比NH3 /SiH4 が0.7〜1.4
    の範囲でグロー放電により成膜されたSiNX保護膜か
    らなることを特徴とする窒化保護膜。
  2. 【請求項2】 画素電極基板と対向基板との間に液晶を
    封入してあり、前記画素電極基板は、第1の透明な絶縁
    性基板の前記対向基板側の面上に透明な画素電極、電極
    保護膜および第1の配向膜を順次に積層して具えてお
    り、前記対向基板は、第2の透明な絶縁性基板の前記画
    素電極基板側の面上に透明な共通電極および第2の配向
    膜を順次に積層して具えてなる液晶ディスプレイにおい
    て、 前記電極保護膜が、請求項1に記載の窒化保護膜からな
    ることを特徴とする液晶ディスプレイ。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の窒化保護膜を形成する
    にあたり、 下地上に、主たる原料ガスであるNH3 とSiH4 との
    ガス流量比NH3 /SiH4 が0.7〜1.4となる範
    囲でグロー放電によって成膜することを特徴とする窒化
    保護膜の形成方法。
JP3561494A 1994-03-07 1994-03-07 窒化保護膜、それを用いた液晶ディスプレイおよび窒化保護膜の形成方法 Withdrawn JPH07244277A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100356833B1 (ko) * 1999-05-06 2002-10-18 주식회사 현대 디스플레이 테크놀로지 에프에프에스 모드 액정표시장치의 보호막 형성방법
KR100398590B1 (ko) * 2001-05-17 2003-09-19 비오이 하이디스 테크놀로지 주식회사 박막트랜지스터 액정표시장치의 제조방법
USRE43123E1 (en) 1997-06-12 2012-01-24 Sharp Kabushiki Kaisha Vertically-aligned (VA) liquid crystal display device

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