JPH0724308Y2 - 動力舵取装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はラックピニオン型の動力舵取装置に関し、特に
ラックおよびこれに一体的に連設されてパワーシリンダ
部を構成するピストンを有するラックシャフトを軸線方
向に移動可能でかつ油密性をもって保持するためにステ
アリングボディ内に配設されるオイルシール取付構造に
関する。

〔従来の技術〕 ラックピニオン型の動力舵取装置（パワーステアリン
グ）１として、概略第４図に例示したような構成装置が
知られている。

これを簡単に説明すると、符号２は図示せぬ舵取ハンド
ルから延設されたステアリングシャフトで、符号３で示
すステアリングボディの本体部3a内に嵌入されるととも
に内方端側のピニオンが操舵輪を転舵させる舵取リング
機構４を構成するラックシャフト５におけるラック5aの
ラック歯に噛合している。

また、６はラック5aの軸線方向に一体に延設したラック
シャフト５の延設部分5b途中に設けられた大径なピスト
ンで、このピストン６は前記ボディ３の筒状本体部3aに
軽量化や径方向での小型化等を目的として一体的に連設
された鉄材等による金属製パイプ体７内のシリンダ孔7a
により摺動動作可能に保持され、これにより操舵補助力
を生じさせるパワーシリンダ８が形成されている。すな
わち、このパワーシリンダ８内でピストン６両側に形成
される左、右室8a,8bには、周知の通り、ステアリング
シャフト２が内設されたボディ３内に出力側としてのピ
ニオンとの間に介在されてなる回転型コントロールバル
ブ（図示せず）により切換えられる油圧回路で油圧が導
かれる。ここで、9a,9bは左、右室8a,8bを油圧回路に接
続するための接続部材、10はパイプ体７外方端に圧入し
て固定されラックシャフト延設部分5bを摺動自在に支持
するとともにシリンダ左室8aを液封するオイルシール10
aを有するスリーブ状ホルダである。

さらに、11はパイプ体７によるシリンダ孔7a内方端側で
ボディ筒状本体部3a内のラック保持孔12外方端部分の段
差部13に介在されてシリンダ右室8bを液封するオイルシ
ールで、このオイルシール11のラック5a側でラック保持
孔12内壁部の環状溝12a内には、第５図からも明らかな
ように、ラック5aを摺動可能に保持するとともにラック
5aに大荷重が加えられたときにラック5aをラジアル方向
に支えてオイルシール11の過度な変形を防止するスリー
ブ状のバックアップリング14が設けられている。

なお、第４図中15はリンク機構４両端側で操舵輪側に連
結されるタイロッドで、これら左、右タイロッド15,15
間にラックシャフト５を構成するラック5aおよび延設部
分5bがボールジョイント15aを介して一連に設けられ
る。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、上述した従来装置１にあっては、ステアリン
グボディ３内でラック保持孔12とその一端側に連通して
形成されるシリンダ孔7aとの段差部13部分に介在して配
置されシリンダ右室8bをシールするオイルシール11を、
動力舵取装置１各部のメンテナンス時においてボディ３
内からラックシャフト５等と共に抜き出す際に、このオ
イルシール11が変形したり、作業がやり難い等といった
問題を生じていた。

すなわち、上述した従来構造では、オイルシール11を嵌
挿部分から外して抜き出すために、ラック5a外周部と筒
状本体3a内のラック保持孔12との間の隙間に、ラック5a
外方端側からパイプ状のシール抜き出し治具（第５図中
符号17で示す）を差込んで前記バックアップリング14を
外方端側から押圧し、このバックアップリング14を介し
てオイルシール11をシリンダ孔7a側に押出すことにより
抜き出すようにしている。

しかしながら、この種のオイルシール11は、本来外周側
がシリンダ孔7aの段差部13に近接する部分に圧入して固
定されており、バックアップリング14が当接する内周側
からは抜け難いものとする必要があり、このためにその
抜き出し作業時にはオイルシール11が変形して抜け難く
なり、さらに作業がやり難くなる等というマイナス要因
をもつものであった。

すなわち、動力舵取装置１において特にラック5a部分
は、舵取リンク機構４の一部を構成するとともにピニオ
ンと噛合するラック歯を有するために、所要の剛性が得
られるある程度の太さが必要とされ、これはボディ３側
においても同様で、特にラック保持孔12部分には充分な
剛性が必要とされる。一方、このようなラック5aを有す
るラックシャフト５の延設部分5b上に設けられる大径な
ピストン６が摺動自在に保持されるシリンダ孔7aは、装
置全体の大型化を招くことなく、可能な限り大径孔とす
ることが必要で、このためこのシリンダ孔7a部分は、ボ
ディ３に一体的に設けた金属製パイプ体７で構成するこ
とが一般に行なわれる。

したがって、このような構造においてシリンダ右室8bを
シールするオイルシール11は、大径孔であるシリンダ孔
7a中に圧入して設けられる一方、大荷重時のラック5aの
ラジアル方向の動きのストッパとしてのバックアップリ
ング14は、シリンダ孔7aよりも小径なラック保持孔12の
内周側に配設され、ラック軸のラジアル方向および軸線
方向の寸法をできるだけ抑える必要があるために、治具
等でシール抜き出す際にオイルシール11の内周側部分に
のみバックアップリング14の端部が小さな面積で当接し
て押出し力を作用させる結果となるもので、このような
点を考慮し上述した問題点を一掃し得る何らかの対策を
講じることが望まれている。

〔課題を解決するための手段〕

このような要請に応えるために本考案に係る動力舵取装
置は、ステアリングボディ内でラックを貫通して保持す
る小径なラック保持孔の一端側に連通して形成されかつ
ラックの同一軸線上に連設されるラックシャフト延設部
分上の大径ピストンを摺動自在に保持する大径なシリン
ダ孔の前記ラック保持孔との段差部に介在して配置され
るオイルシールと、このオイルシールのラック保持孔側
の側面に一端側が接するとともに他端が前記ラック保持
孔のシリンダ孔側に臨む内壁部に形成した環状溝内に延
設して配設されるスリーブ状のバックアップリングを備
え、このバックアップリングを、そのオイルシール側の
端部に少なくともオイルシールの側面部での内周側から
外周側にかけて接する金属材からなる鍔部を一体的に設
けることにより、鍔付きスリーブとして形成したもので
ある。

〔作用〕

本考案によれば、ステアリングボディ内で小径なラック
保持孔とこれに同一軸線上で連通して形成されるパワー
シリンダ側の大径なシリンダ孔との間の段差部に介装さ
れるオイルシールを、メンテナンス時などにおいて取外
すために、オイルシールの側面部に当接する部分が少な
くとも金属材とされた鍔付きスリーブであるバックアッ
プリングに、ラック保持孔の外方端側から押出し力を与
えたときに、金属材からなる鍔部を介してオイルシール
側面部全体に略々均等な軸線方向への荷重として押出し
力を作用させることができ、これによりオイルシールを
変形等が生じない状態で押圧してシリンダ孔の外部に抜
き出すことが可能となるものである。

〔実施例〕

以下、本考案を図面に示した実施例を用いて詳細に説明
する。

第１図は本考案に係る動力舵取装置の一実施例を示すも
のであり、同図において前述した第４図および第５図と
同一部分に同一番号を付してその説明は省略する。

さて、本考案によれば、ラック5a用としての小径なラッ
ク保持孔12とこれに同一軸線上で連通して形成されかつ
前記ラック5aの同一軸線上に連設されたラックシャフト
延設部分5b上のピストン６用としての大径なシリンダ孔
7aとを有するステアリングボディ３と、このボディ３内
でシリンダ孔7aのラック保持孔12側との段差部13に介在
して配置されシリンダ孔7a側からの圧油の流出を阻止す
るオイルシール11と、このオイルシール11のラック保持
孔12側の側面部に一端側が接するとともに他端がラック
保持孔12のシリンダ孔7a側に臨む内壁部に形成した環状
溝12a内に延設して配設されるスリーブ状のバックアッ
プリング14を備え、このバックアップリング14を、前記
オイルシール11側の端部に少なくともオイルシール11の
側面部での内周側から外周側にかけて接する金属材から
なる鍔部として例示する環状の金属プレート体20を一体
的に設けることにより、少なくともオイルシール11の側
面部に接する部分を金属材によって構成した鍔付きスリ
ーブとして形成したところに特徴を有している。

ここで、この実施例において、金属プレート20は、スリ
ーブ状のバックアップリング14のオイルシール11側の端
部外周に形成した小径部分に嵌合して組付けられ、一体
の鍔付きスリーブとしてボディ３内に組込むことができ
るように構成しており、組立性の面で有利である。

そして、このような構成によれば、ボディ３内で小径な
ラック保持孔12とこれに同一軸線上で連通するパワーシ
リンダ８側の大径なシリンダ孔7aとの間の段差部13に介
装されるオイルシール11を、メンテナンス時などにおい
て取外すために、オイルシール11の側面部に当接する部
分が少なくとも金属材とされた鍔付きスリーブであるバ
ックアップリング14に、ラック5a側から押出し力（第５
図中17で示す治具等で）を与えたときに、金属材からな
る鍔部である金属プレート体20が、オイルシール11の内
周側から外周側にかけての側面部全体に略々均等に接触
し、従来に比べて接触面を大きくでき、しかも軸線方向
への荷重をオイルシール11の側面部に略々均等に与えて
押出し力を作用させることができ、これによりオイルシ
ール11をより容易に外部に押圧して抜き出すことが可能
となる。

特に、このようなオイルシール11の側面部に接する部分
が金属プレート体20という金属材からなる鍔部であるこ
とから、その内周側部分へのバックアップリング14の押
出し力を、オイルシール11の側面部全面にわたって均一
に作用させることができ、しかもその変形等といった強
度上での問題もない。

なお、上述した実施例では、バックアップリング14の内
周部をラック5aに対しクリアランスを設けて対向させる
とともに、このリング14の外周側や金属プレート体20の
外周部も、ボディ３側に対してクリアランスを設けて対
向させることで、ラック5aの偏心時において金属部材同
士の直接的な接触を防止できるように構成している。

また、上述した実施例では、別体構成の金属プレート体
20を、スリーブ状のバックアップリング14のオイルシー
ル11側の端部に嵌合させて一体化することにより鍔付き
スリーブであるバックアップリング14を得ている構成を
説明したが、本考案はこれに限定されず、適宜の変形例
が考えられる。

たとえば第２図に示すように、スリーブ状バックアップ
リング14のオイルシール11側の端部に、焼結等で鍔部21
を一体に形成したり、あるいは第３図に示すように、プ
レス加工等でスリーブ状のバックアップリング14の端部
に鍔部22を一体に連続した状態で形成する等といった種
々の変形例が考えられる。

ここで、これらの図において符号23は焼結またはプレス
加工によって鍔部21,22と一体に形成されるバックアッ
プリング14の内周部分にコーティング等で形成した樹脂
層で、このような樹脂層23を設けると、ラック5aとの摺
動性を高め、これにより操舵性をも向上させ、またラッ
ク5aの外周面を傷つけることもなく、信頼性をも向上さ
せることができる等の利点を奏する。

なお、本考案は、上述した実施例構造に限定されず、動
力舵取装置１各部の形状、構造等を必要に応じて適宜変
形、変更することは自由で、種々の変形例が考えられよ
う。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案に係る動力舵取装置によれ
ば、小径なラック保持孔と大径ピストンを保持する大径
なシリンダ孔とを一連に有するステアリングボディ内で
シリンダ孔のラック保持孔側との段差部に介在して配置
されるオイルシールと、このオイルシールのラック保持
孔側の側面部に一端側が接するとともに他端がラック保
持孔のシリンダ孔側に臨む内壁部に形成した環状溝内に
延設して配設されるスリーブ状のバックアップリングを
備え、このバックアップリングを、そのオイルシール側
の端部に少なくともオイルシール側面部の内周側から外
周側にかけて接する金属材からなる鍔部を一体的に設け
ることにより、鍔付きスリーブとして形成したので、簡
単かつ安価な構成にもかかわらず、以下に列挙する種々
優れた効果を奏する。

すなわち、本考案によれば、治具等でバックアップリン
グに押出し力を加えることにより、オイルシールの内周
側から外周側にかけての側面部全体に略々均等な軸線方
向への荷重を押出し力として作用させることができ、こ
れにより形状的にコンパクトで、オイルシールの抜き出
し作業を、きわめて簡単にしかもより確実に行なえると
いう優れた効果がある。

特に、本考案によれば、このようなオイルシールの側面
部に接する部分が金属材からなる鍔部であることから、
その内周側部分へのバックアップリングのスリーブ状部
分を介しての押出し力を、オイルシールの側面部全面に
わたって均一に作用させることができ、しかもその変形
等といった強度上での問題もなく、簡単にオイルシール
の抜き出しを行なうことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る動力舵取装置の一実施例を示す要
部拡大断面図、第２図および第３図は本考案の別の実施
例を示す要部拡大断面図、第４図は従来のラックピニオ
ン型動力舵取装置におけるステアリングボディ部分の概
略構成を示す要部断面図、第５図はその要部拡大断面図
である。 １……ラックピニオン型動力舵取装置、３……ステアリ
ングボディ、3a……筒状本体部、４……舵取リンク機
構、５……ラックシャフト、5a……ラック、5b……ラッ
クシャフト延設部分、６……ピストン、７……金属製パ
イプ体、7a……シリンダ孔、８……パワーシリンダ、11
……オイルシール、12……ラック保持孔、13……段差
部、14……バックアップリング、20……環状の金属プレ
ート体（鍔部）、21,22……鍔部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】舵取操作により摺動動作されるラックを貫
   通して保持するラック保持孔と、この保持孔の一端側に
   連通した状態で同一軸線上に形成されるとともに前記ラ
   ックの同一軸線上に連設されているラックシャフト延設
   部分上に設けられる大径ピストンを摺動自在に保持する
   大径なシリンダ孔とを有するステアリングボディと、 このボディ内で前記シリンダ孔のラック保持孔側との段
   差部に介在して配置されシリンダ孔側からラック保持孔
   側への圧油の流出を阻止するオイルシールと、 このオイルシールのラック保持孔側の側面部に一端側が
   接するとともに他端がラック保持孔のシリンダ孔側に臨
   む内壁部に形成した環状溝内に延設して配設されるスリ
   ーブ状のバックアップリングを備えている動力舵取装置
   において、 前記バックアップリングを、前記オイルシール側の端部
   に少なくともオイルシールの側面部での内周側から外周
   側にかけて接する金属材からなる鍔部を一体的に設ける
   ことにより、少なくとも前記オイルシールに接する部分
   を金属材とした鍔付きスリーブとして形成したことを特
   徴とする動力舵取装置。