JPH0723954U - 電動機の固定子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 コアスロットの絶縁性を損なわずにスロット
内のコイルの高占積率を可能にする。 【構成】 固定子鉄心27の少なくとも打抜き返り30のあ
る側に積層したコア21の数枚におけるスロット20の形状
を、他のコア23と異ならしめ、他のコア23のスロット22
よりも大きくすることにより、スロット絶縁物25を損な
わずに優れた絶縁性能を保持しながら、コイル26の高占
積率を可能にする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、電動機の固定子に係り、特にそのスロット部における絶縁特性を改 良したものに関する。

【０００２】

【従来の技術】

近年、電動機は使用環境の多様化，過酷化に伴い、電動機の絶縁性能を改善す ることが、各メーカの大きな課題をなっている。

【０００３】 以下に従来の電動機の固定子について説明する。

【０００４】 一般に、電動機は図６の一部断面図に示す構造をなす。図６において、電磁鋼 板を打抜いて製作されたコア１を積層して固定子鉄心２が形成され、この固定子 鉄心２のスロット３内には、スロット絶縁物４を介してコイル５が巻回されて固 定子６が構成されており、この固定子６をフレーム７により支持している。

【０００５】 さらに回転軸８に圧入された回転子９の回転子羽根10によって前記コイル５は 冷却される。組立ての際、回転子９を固定子６の内部に挿入する都合上、コイル ５が固定子鉄心２から突出した渡り部、すなわち両側のコイルエンド５Ａ，５Ｂ は外方に広げられている。

【０００６】 ところで、固定子鉄心２の両端部のコア１のうち、片側のスロット３周辺には 、コア１は金型にて一方向から打抜き後、積層されるため、製作上必ず、図７の 固定子６のスロット３部を円周方向で切断した一部縦断面図に示すように打抜き 返り11が発生する。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、従来ではスロット３内へのコイル５の巻回数が少なく、打抜き 返り11の方向を考慮する必要はなかったが、近年小型化する必要性からスロット ３内のコイル５の占積率を高めた設計をするようになってきた。コイル５を高占 積率にすることによりコイル５は硬くなり、コイル整形の際、整形機の荷重を増 大する必要があるため、スロット３の内周エッジとコイル５間に存在するスロッ ト絶縁物４に局部的に加わる力が増大し、スロット絶縁物４に図８の斜視図に示 すようなスロット３の内周エッジによる亀裂，傷12が発生し、絶縁劣化を発生す る例がみられるようになった。この絶縁劣化は、コイルエンド５Ａ，５Ｂの整形 前には約４kVあった絶縁耐圧が約２kV程度に著しく低下し、製品の信頼性を悪化 させるとともに、製品歩留まりを低下させて製造コストを上昇させるという問題 がある。

【０００８】 前記問題をなくすため、最近では図９の固定子縦断面図に示すように、固定子 鉄心２の打抜き返り11のある側のコイルエンド５Ｃを、ほぼ直線状に短く渡るよ うにして、外方への押広げを止める方法が採用されたりするが、この方法では固 定子６内部への前記回転子９の挿入が困難となるばかりでなく、前記回転子羽根 10の長さを短くしなければならないため、コイル５の温度上昇が異常に高くなる という問題がある。

【０００９】 本考案の目的は、前記従来の問題点を解決し、コアスロットの絶縁性を損なわ ずに、スロット内のコイル高占積率を実現できる電動機の固定子を提供すること にある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

前記目的を達成するため、本考案の電動機の固定子は、固定子鉄心の少なくと も打抜き返りのある側に積層したコアのスロットのコイル占積部の形状を、他の コアのスロットよりも大きくしたことを特徴とする。

【００１１】

【作用】

前記構成の電動機の固定子では、打抜き返りのある側に積層したコアのスロッ トが他のコアのスロットより大きく、スロットの内周エッジとコイル間に存在す るスロット絶縁物に局部的な力は全く加わらないようになるため、スロット絶縁 物に亀裂，傷が発生してスロット絶縁を損なうことはなく、コイルの高占積率が 実現する。

【００１２】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

【００１３】 図１は本考案の電動機の固定子の一実施例の縦断面図、図２(a)，(b)は図１の 固定子を構成する異なるコアの正面図、図３は図１の固定子の一部を示す正面図 、図４は固定子のスロット部を固定子の円周方向に切断した一部縦断面図、図５ は固定子のスロット部を固定子の径方向に切断した一部縦断面図である。

【００１４】 図１，図２(a)，図２(b)において、まずスロット20を有するコア21を積厚Ｄだ け数枚積層した後、さらにその上に前記スロット20より小さいスロット22を有す るコア23を積厚Ｅだけ数枚積層し、さらにその上に前記コア21を積厚Ｆだけ数枚 積層して(図３参照)、固定子鉄心27を形成する。次に、スロット絶縁物25を固定 子鉄心27のスロット20，22内に挿入し、次にコイル26をスロット絶縁物25の内部 に挿入し、その後、スロット絶縁ウェッジ(図示せず)にてコイル26をスロット20 ，22の内部に固定し、最後にコイルエンド26a，26bを整形することで固定子24を 組立てる。

【００１５】 図４，図５において、コイル26の整形の際、コイルエンド26a，26bおよび固定 子鉄心27からのコイル26の立上り部28およびスロット絶縁物25の端部付近には大 きな曲げ荷重が加わるが、コア21のスロット20とスロット絶縁物25との間にはギ ャップＨ，Ｉがあるため、スロット絶縁物25がスロット20に接触することはなく 、スロット絶縁物25を傷付けて絶縁劣化を招くこともなくなる。

【００１６】 ところで、前記実施例において、積層されたコア23を積層されたコア21で挟み 込む構造としたが、必ずしも挟み込む必要はなく、打抜き返り30のある側のみコ ア21を使用してもよい。また、前記コア積厚Ｄ，Ｆは必ずしも同じである必要は なく、ギャップＨ，Ｉも必ずしも同じである必要はない。

【００１７】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案は、少なくとも打抜き返りのある側に積層したコ アのスロットのコイル占積部の形状を、他の積層されたコアのスロットよりも大 きくしたことにより、スロット絶縁を損なうことなく、スロット内のコイル占積 率を向上することができる優れた電動機の固定子を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の電動機の固定子の一実施例の縦断面図
である。

【図２】図１の固定子を構成することなるコアの正面図
である。

【図３】図１の固定子の一部を示す正面図である。

【図４】固定子のスロット部を固定子の円周方向に切断
した一部縦断面図である。

【図５】固定子のスロット部を固定子の径方向に切断し
た一部縦断面図である。

【図６】従来の固定子を示す電動機の一部縦断面図であ
る。

【図７】従来の固定子のスロット部を固定子の円周方向
に切断した一部縦断面図である。

【図８】コイルエンドの整形により傷の発生したスロッ
ト絶縁物の斜視図である。

【図９】従来の固定子の縦断面図である。

【符号の説明】

20，22…スロット、 21，23…コア、 24…固定子、
25…スロット絶縁物、26…コイル、 27…固定子鉄心、
28…コイルの立上り、 30…打抜き返り、Ｄ，Ｅ，Ｆ
…コア積厚、 Ｈ，Ｉ…ギャップ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 電磁鋼板を打抜いて形成したコアを積層
   してなる固定子鉄心のスロットに、スロット絶縁物を介
   してコイルを巻回することで構成された電動機の固定子
   において、前記固定子鉄心の少なくとも打抜き返りのあ
   る側に積層したコアのスロットのコイル占積部の形状
   を、他のコアのスロットよりも大きくしたことを特徴と
   する電動機の固定子。