JPH07238442A - 有杼織における杼の交換の自動組立法 - Google Patents

有杼織における杼の交換の自動組立法

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JPH07238442A
JPH07238442A JP3059539A JP5953991A JPH07238442A JP H07238442 A JPH07238442 A JP H07238442A JP 3059539 A JP3059539 A JP 3059539A JP 5953991 A JP5953991 A JP 5953991A JP H07238442 A JPH07238442 A JP H07238442A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 西陣織のような色数が多い有杼織に対し、糸
量が少なく、且つ、織りの出来映えが良好な杼の交換を
自動的に組む。 【構成】 デザインされた図案を1越、1口を基本単位
としてコンピューターに表示させ、表示された図案に対
して、予め杼の基本的な動作関係を経験に基づき指示す
る。コンピューターでは、指示された杼の基本的な動作
関係や、横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を用い
て、杼の具体的な交換を組む。更に、組まれた杼の具体
的な交換に対して、杼と柄、杼箱の位置関係に基づく横
糸干渉の発生条件を用いて、横糸の干渉によって生じる
余分の糸量を定量的に検査し、検査データが許容範囲内
に収まるように、杼の具体的な交換を変更する。これを
全ての越に対して行うことにより、杼の交換が自動的に
組み立てられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、西陣織のような色数の
多い有杼織の製造に用いられる杼の交換の自動組立法に
関する。
【0002】
【従来の技術】杼を使用する有杼織では、図1に示すよ
うに、縦糸を上下に分けて形成された杼道に杼を通し、
杼に巻かれた横糸を縦糸に立体的に交差させることによ
り、織物が織り上げられて行く。織り上げられる織物は
通常、表を下にしているので、色糸は、柄の表れる部分
では縦糸の下をくぐり、横打ちにより地糸に被さって柄
を形成し、柄のない地の部分では縦糸の上を通過する。
横糸を巻いた杼は、図2に示すように、織物の両側に重
ねられた杼箱の間を行き帰りする。図2では、地糸を巻
いた杼が左側の最下段の杼箱に収容されており、A色、
B色の各横糸を巻いた杼a、bが2段目、3段目の杼箱
にそれぞれ収容されている。
【0003】なお、本明細書では、便宜上、図2のよう
に、柄を織物の上側に図示しているが、実際は、先に述
べたように織裏なので、柄は織物の下側に表れる。そし
て、杼が織物の横から出るように、杼箱が上下される。
また、左右については、織機側では逆になり、同様に、
柄の遠いとか手前側、杼箱の近くなどの表現も、織機側
では逆になる。
【0004】最高級の有杼織として知られる西陣織で
は、横糸が並ぶ方向、即ち織りの方向の基本単位を越と
呼び、縦糸が並ぶ方向の基本単位を口と呼んでいる。横
糸の数は、他の有杼織に比べて非常に多く、1越を織る
のに数10本の横糸が使用されることも少なくない。こ
れに対し、杼箱は、最大でも片側で12丁しかなく、使
用する横糸の数に比べて少ない。そのため、杼には複雑
な動きが要求される。連続する越を織るために、両側の
杼箱の間を杼が行き帰りする動作は「交換」と呼ばれ、
その動作順序、動作方向を予め決めることを「交換を組
む」と呼んでいる。杼の行きは奇数越に対応し、帰りは
偶数越に対応する。
【0005】このような西陣織では、その図案が出来上
がると、織りに先立って意匠図が作成される。意匠図
は、図3に示すように、図案を1越、1口を基本単位と
して図示したものであり、意匠図の側方には、意匠図に
使用された色、即ち横糸の越方向の使用範囲等が色分け
されて線状に記入される。これはメートルと呼ばれ、そ
の配列は、基本的には、杼が収容される杼箱を表してい
る。即ち、図3では、地糸を巻いた杼が最下段の杼箱に
収容され、A色、B色の各横糸を巻いた杼a、bが2段
目、3段目の杼箱にそれぞれ収容される(図2参照)。
そして、作成された意匠図に対しては、杼の交換が組ま
れ、杼を収容する杼箱と、杼の動作順序、動作方向と
が、適宜数の越づつ所定の用紙に記入される。
【0006】多くの横糸を使用する西陣織では、杼の数
と杼箱の数との不釣り合いが、杼の交換を複雑にするこ
とは、先に述べた。しかし、杼の交換を複雑にする要因
は、杼の数と杼箱の数との不釣り合いだけではない。
「引っ掛かり」や「押さえ」と呼ばれる杼の交換に伴う
横糸の干渉も、杼の交換を著しく複雑にしている。
【0007】「引っ掛かり」とは、図4(A)に示すよ
うに、先に走った杼aに巻かれたA色の横糸に、後から
走る杼bに巻かれたB色の横糸が引っ掛かる現象であ
る。また、「押さえ」とは、図4(B)に示すように、
先に走った杼bに巻かれたB色の横糸を、後から走る杼
aに巻かれたA色の横糸が押さえ込む現象である。
は杼の動作順序を表している。これらの現象が生じる
と、横糸が必要以上に消費され、糸コストが嵩むと共
に、織物が重くなる。従って、「引っ掛かり」や「押さ
え」と呼ばれる横糸の干渉は、極力避けなければならな
い。しかし、単純に「引っ掛かり」や「押さえ」を回避
すればよいというものではない。意図的あるいは不可避
的にこれら横糸の干渉を発生させなければならないこと
もあり、このことが杼の交換を著しく複雑にしているの
である。これを以下に説明する。
【0008】「引っ掛かり」や「押さえ」と呼ばれる横
糸の干渉には、杼の基本的な動作関係が、「追い掛け」
であるか「戻し」であるかということに深く関わり合っ
ている。「追い掛け」とは、連続する二つの越を織る場
合に、特定の杼が行きと帰りとを同じ順番で走ることを
いい、「戻し」とは、その場合に、特定の杼が行きと帰
りとを逆の順番で走ることをいう。即ち、A色、B色、
C色の各横糸を巻いた杼a、b、cが行きをこの順番で
走った場合、帰りもa、b、cの順番のとき、これを
「追い掛け」と呼び、帰りがc、b、aの順番のとき
は、これを「戻し」と呼ぶのである。そして、横糸の干
渉という観点からみれば、「追い掛け」は不利であり、
「戻し」のほうが有利となる。例えば、図2に示すよう
に、全ての杼が一方の側の杼箱から他方の側の杼箱へ移
動するときは、横糸を干渉させることなくスムーズに杼
を移動させることができる。従って、糸量を節約するた
めには、全面的に「戻し」を採用すればよいことにな
る。
【0009】しかし、西陣織のような最高級の有杼織に
なると、「戻し」にのみ依存することはできない。とい
うのは、「戻し」では、図5(A)に示すように、色糸
A、Bを巻いた杼a、bが、行きをa、b、帰りをb、
aの順番で走るため、柄が越方向に割れ、見栄えの悪
化、商品価値の低下を伴うからである。これに対し、
「追い掛け」では、図5(B)に示すように、色糸A、
Bを巻いた杼a、bが、行きをa、b、帰りをa、bの
順番で走るため、色糸が越方向に均等な間隔で並び、柄
に割れは生じない。そのため、品質を重要視するなら
ば、柄のある越では、望むと望まざるとにかかわらず、
「追い掛け」を採用せざるを得ないことになる。その結
果、横糸が複雑に絡み合い、その干渉に伴う糸量の浪費
が生じ、そのために織物のコストおよび重量が増加する
ことになる。これが西陣織の大きな欠点であることは、
周知のとおりである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上のようなことか
ら、西陣織のような最高級の有杼織で、糸量と仕上がり
とを両立させようとすると、極めて複雑な杼の交換が要
求されることになる。このことは、意匠図におけるメー
トルの記入および杼の交換の組立が、極めて複雑な作業
となることを意味する。そして、西陣では、この作業
は、今もなお勘と経験によって人手で行われている。そ
のため、柄が複雑になると、熟練者でも相当の日数を必
要とし、西陣織の製造工程のなかでも特に手間暇のかか
る工程とされている。また、たとえ多くの手間暇をかけ
たとしても、引かれたメートルや組まれた交換が完全で
あるとは到底言い難く、糸量の浪費や柄の割れを避け得
ないのが実情である。
【0011】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であり、杼の交換の組立に要する負担を大幅に軽減し、
しかも、少ない横糸で見栄えのよい高品質な織物の製造
を可能とする有杼織における杼の交換の自動組立法を提
供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる杼の交換
の自動組立法は、1越、1口を基本単位として表示した
意匠図に対して、予め杼の基本的な動作関係を指示した
後、所定数の越に対して、指示された杼の基本的な動作
関係を基に、横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を
用いて、杼の具体的な交換を組み、更に、組まれた杼の
具体的な交換に対して、杼と柄、杼箱の位置関係に基づ
く横糸干渉の発生条件を用いて、横糸の干渉に伴って生
じる余分の糸量を定量的に検査し、検査データが許容範
囲内に収まるように、杼の具体的な交換を変更しつつ、
全ての越における杼の交換を組み立てて行くことを特徴
としている。
【0013】更に具体的には、1越、1口を基本単位と
して表示した意匠図に対して、予め杼の基本的な動作関
係を指示した後、所定数の越に対して、指示された杼の
基本的な動作関係を基に、意匠図の情報、杼の数、杼箱
の数、杼箱の許容移動段数および横糸の干渉を避ける杼
の動作の基本条件を用いて、杼の具体的な交換を組み、
更に、組まれた杼の具体的な交換に対して、杼と柄、杼
箱の位置関係に基づく横糸干渉の発生条件を用いて、横
糸の口方向における干渉位置を特定すると共に、特定さ
れた干渉位置より、横糸の干渉に伴って生じる余分の糸
量を計算し、計算された糸量が許容範囲内のときは、次
の所定数の越に対して杼箱の決定と杼の具体的な交換の
組立とを行い、計算された糸量が許容範囲外のときは、
その糸量が許容範囲内に収まるように、杼の具体的な交
換を変更し、その変更によっても、計算された糸量が許
容範囲内に収まらないときは、当初に決めた杼の基本的
な動作関係を変更する構成とすることができる。
【0014】
【作用】本発明にかかる杼の交換の自動組立法におい
て、杼の基本的な動作関係とは、使用する横糸に対応す
る杼のいずれが「戻し」の関係で動き、いずれが「追い
掛け」の関係で動くかということ意味する。また、杼の
具体的な交換とは、特定数の越を織るのに使用される全
ての杼の、動作方向等をも含めた総括的かつ具体的な交
換を意味する。
【0015】本発明にかかる杼の交換の自動組立法にお
いては、作成された意匠図全体に対し、杼の基本的な動
作関係を一応指示した後、特定数の越に対し、指示され
た杼の基本的な動作関係を基に、杼の具体的な交換が組
まれる。この交換の組立においては、横糸の干渉を避け
る杼の動作の基本条件が用いられる。横糸の干渉を避け
る杼の動作の基本条件の使用により、杼の組立が自動化
されると共に、組まれた交換は、「引っ掛かけ」や「押
さえ」といった横糸の干渉を一応回避するようになる。
しかし、横糸の干渉の実体までは分からない。そのた
め、このままでは糸量は予測できない。そこで、組まれ
た交換に対し、横糸の干渉に伴って生じる余分の糸量を
定量的に検査する。この検査においては、杼と柄、杼箱
の位置関係に基づく横糸干渉の発生条件が用いられる。
【0016】横糸干渉の発生条件については、従来は熟
練者の間でも感覚的にしか把握されてなかったが、実際
は、存外簡単な杼と柄、杼箱の位置関係で表されること
が、本発明者らの解析から判明した。これを用いれば、
横糸の干渉位置が口方向ついて自動的に特定され、更に
は、横糸の干渉に伴って生じる余分の糸量が定量的に自
動検査される。そして、組まれた交換に対して、この検
査を実施し、検査の結果、計算された糸量が許容範囲内
に収まるように、杼の具体的な交換を変更することによ
り、横糸が定量的に管理された交換が自動的に組み立て
られ、且つ、必要とする糸量が定量的に把握される。
【0017】特定数の越に対して順次実行される杼の具
体的な交換の組立、および組み立てられた交換に対する
糸量の定量的検査は、コンピューターを用いて簡単かつ
迅速に行うことができる。
【0018】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。図6は本発明を実施した有杼織における杼の交換
の自動組立法の具体的手順を例示するフローチャートで
ある。
【0019】ここで説明する杼の交換の自動組立法は、
西陣織における杼の交換組立に本発明を適用したもの
で、意匠図の入力、初期条件の入力、杼の基本的な動作
関係の指示、処理開始の指示、口メートルの作成、柄の
相互関係の認識、杼箱の決定、杼の具体的な交換の組
立、横糸干渉の定量的検査の9工程よりなり、グラフィ
ック機能を備えた汎用のコンピューターを用いて実施さ
れる。
【0020】第1工程の図案入力では、作成された西陣
織の意匠図をコンピューターに入力する。意匠図を入力
されたコンピューターは、その色を1越、1口を基本単
位として記憶する。
【0021】第2工程の初期条件入力では、使用する横
糸の総数、即ち杼の数、杼箱の数、杼箱の許容移動段
数、横糸の干渉によって余分に生じる糸量の許容範囲
(1越または特定数の越における許容範囲)等を、初期
条件としてコンピューターに入力する。
【0022】第3工程の杼の基本的な動作関係の指示で
は、コンピューターに入力された意匠図を画面に表示
し、その意匠図を見ながら、使用する横糸の杼を「追い
掛け」にするか「戻し」にするかを画面で指示する。全
ての越および横糸についてこの操作を行うのは大変であ
るので、コンピューターでは「追い掛け」、「戻し」の
いずれかを基本形態として予め決める。基本形態を「追
い掛け」とした場合、作業者は、意匠図、特にその柄を
見て、この横糸と横糸とは、この範囲を「戻し」とする
のが好都合であるというように、「追い掛け」と「戻
し」の得失を判断しながら、「戻し」とする横糸の種類
を、その越方向の範囲と合わせて指示することになる。
これにより、杼の基本的な動作関係が意匠図全体に対し
て一応決定される。
【0023】第3工程における作業は、柄の割れ、横糸
の干渉、糸量等を考慮しながら厳密に行おうとすると、
極めて困難なものになる。また、手間暇をかけても完全
な作業は不可能である。しかし、ここでは、後で横糸の
干渉を避けるように交換が自動的に組まれ、且つ、組ま
れた交換に対し、横糸の干渉およびそれに伴う糸量が検
査される。そのため、横糸の干渉および糸量について
は、それほど厳密に考える必要がなく、柄の割れといっ
た織物の出来映えを優先させて作業を行えばよい。従っ
て、ここにおける作業が著しく簡素化され、なおかつ、
優れた出来映えが保証されることになる。
【0024】第3工程で杼の基本的な動作関係が図柄全
体に対して一応決定されると、第4工程として、スター
ト越、越の処理数といった処理開始の指示をコンピュー
ターに与えて、第5工程の口メートルの作成に移行す
る。第4工程におけるスタート越は、コンピューターの
処理能率を考えて、通常は柄の比較的複雑なところに選
択される。また、越の処理数は、通常は2越、即ち杼の
1往復に相当する数とされる。第4工程までは、作業の
主体が人手にあったが、第5工程以降の作業は、コンピ
ューターが主体となる。
【0025】第5工程の口メートルの作成では、コンピ
ューターに記憶された意匠図についての情報を用いて、
指示された所定数の越に対し、口メートルが作成され
る。これは次のようにして行われる。まず、図7に示す
ように、特定の越にA色が使用されている場合、その口
方向の使用範囲を、コンピューターに記憶されている意
匠図情報から読み取り、その延べ範囲から、A色の横糸
の口方向における使用範囲を求める。他の色の横糸につ
いても、同様に口方向の使用範囲を求める。これを、指
示された所定数の越に対して行うことにより、口方向に
引かれたメートル、即ち口メートルが作成される。
【0026】作成された口メートルからは、指示された
所定数の越について、使用される横糸の種類および各横
糸の使用範囲がわかり、従って、最低必要な横糸の使用
量が計算される。また、「引っ掛かり」とか「押さえ」
といった横糸の口方向における干渉位置が分かれば、こ
れらの干渉によって生じる余分の糸量も計算される。更
に、口メートルの作成途中のデータを使用すれば、複数
の柄の口方向における位置関係も判断される。複数の柄
の口方向における位置関係についての情報は、第6工程
の柄の相互関係の認識に使用される。
【0027】第6工程の柄の相互関係の認識では、第5
工程で得た複数の柄の口方向における位置関係について
の情報から、口方向で接触する複数の柄が、図8(A)
に示すような同心状に組み合わされたものか、あるい
は、図8(B)に示すような口方向に並列するものかを
判断する。後者の並列関係にある柄の組み合わせは、し
みこみ、2重上などと呼ばれている。ここで得られた柄
の相互関係についての情報は、第8工程の杼の具体的な
交換の組立に使用される。
【0028】第7工程の杼箱の決定では、使用する横糸
が巻かれた杼を、どの杼箱に収容するかを決める。これ
には、第2工程で初期条件として入力された使用する横
糸の総数、杼箱の数、第5工程の口メートルの作成で得
られた横糸の種類および各横糸の口方向の使用範囲等に
ついての情報が使用される。
【0029】杼箱の決定についての最も基本的な考え方
は、越方向、口方向の使用範囲の広い横糸ほど下段の杼
箱に収容するというものである。使用する横糸の数が片
側の杼箱の数以下であれば、ほぼこの基本的な考え方で
杼箱が決定される。使用する横糸の数が片側の杼箱の数
を超える場合、所謂、平行丁数に収まらない場合は、両
側の杼箱が使用される。
【0030】平行丁数に収まらない場合の考え方として
は、図9に示すように、一方の側の杼箱を下段から順に
使用した後、他方の側の杼箱を上段から順に使用する場
合、最上段に向けて両側の杼箱を交互に使用する場合な
どがある。いずれを採用するにしても、他方の側の杼箱
では下段を空けることが比較的多い。また、第8工程の
杼の具体的な交換の組立での便宜を図るために、並列関
係にある柄と出来るだけ無関係な杼を、他方の側の杼箱
に持ってくるというような配慮も適宜行う。他にも条件
はあるが、それは第8工程の説明で明らかにする。つま
り、杼箱の決定は、杼の具体的な交換の組立と関連して
総合的に決められる。杼箱が決定されると、指示された
所定数の越についてメートルが引かれる。ここでいうメ
ートルとは、図2に示す本来のメートルである。
【0031】第8工程の杼の具体的な交換の組立では、
指示された所定数の越に対して、使用される全ての杼
の、動作方向等をも含めた総括的かつ具体的な交換が組
み立てられる。これには、第3工程で決められた杼の基
本的な動作関係、即ち、杼の動作を「戻し」にするか
「追い掛け」にするかということ、第7工程で決められ
た杼箱、更に、初期条件として入力された杼箱の許容移
動段数、横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件が考慮
される。
【0032】杼箱の許容移動段数とは、杼の交換に際
し、杼箱が一気に動くことのできる最大段数のことであ
る。西陣織等の有杼織では、杼の送り出しや受け入れを
行うために、杼箱が上下運動をする。その落差は、比較
的小さく制限され、12段分も一度に杼箱が上下するよ
うなことは、到底出来ないのである。そのため、杼の具
体的な交換の組立では、杼箱の許容移動段数が考慮され
る。
【0033】横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件に
ついては、杼の動作関係が「戻し」の場合と「追い掛
け」の場合とに大別して考える。「戻し」の場合の基本
条件は、ここでは、使用される複数の杼が全て同じ方向
に走る場合と、異方向に走る杼が混じる場合とに分け、
異方向に走る杼が混じる場合は、更に、それらの杼が上
下関係を変えずに動く場合と、上下関係を変えて動く場
合とに細分して考えることとする。
【0034】「戻し」で杼が全て同じ方向に走る場合
は、図10(A)に示すように、杼の動く方向には一切
関係なく、杼の動く順番を柄の遠い順とすることによ
り、「引っ掛かり」とか「押さえ」といった横糸の干渉
を生じることなく杼がスムーズに抜ける。図10(A)
では、杼の収容されている杼箱の側から順にA色、C
色、D色、B色の柄が並んでいる。杼は、行きではB
色、D色、C色、A色が巻かれたb、d、c、aの順で
走り、戻りでは逆にa、c、d、bの順で走る。そうす
れば、横糸の干渉は生じない。この杼の動作は、杼の交
換における最も基本なものである。
【0035】「戻し」で異方向に走る杼が混じり、且
つ、それらの杼が上下関係を変えずに動く場合は、中継
杼が重要になる。中継杼とは、交換を組むにあたって、
杼箱の上下運動の落差を少なくするために考える杼のこ
とであり、通常、行きで、その杼が入っていた杼箱から
見て、上方の杼箱に入っている杼よりも後で走る場合、
その杼は手前側の柄を取る。これを図10(B)で説明
する。図10(B)では、左側の下段の杼箱に杼aが、
上段の杼箱に杼cが収容され、右側の中段の杼箱に杼b
が収容されている。柄は片側からA色、B色、C色の順
となっている。この場合、杼の行きの順番をb、c、
a、帰りを逆のa、c、bとすれば、杼aが中継杼とな
る。即ち、杼aは、行きでは杼cより下に位置してお
り、且つ、杼cより後で動く。中継杼aに対応するA色
の柄は、先に走る杼cに対応するC色の柄より杼箱に近
くになければならない。中継杼が複数ある場合は、それ
らを同一方向に走らせ、異方向から走る場合は、上の中
継杼が下の中継杼より、行きで先に走らせるなどの考慮
をする。そうでないと、横糸の干渉が生じる。但し、杼
が斜めに横切って走る「戻し」の交換の場合は、例えば
図13のようになる。
【0036】「戻し」で異方向に走る杼が混じり、且
つ、それらの杼が上下関係を変える場合は、図10
(C)(D)に示すように、柄の位置によって、横糸が
下から上へ交差する状況と、上から下へ交差する状況と
が考えられるが、杼と柄の位置関係を図のようにしてお
けば、横糸の交差の状況に関係なく、杼の動作順序を考
える必要はない。即ち、図10(C)(D)とも、行き
a、b、帰りb、aまたは行きb、a、帰りa、b、の
2通りを採用することができるのである。
【0037】「追い掛け」の場合は、「戻し」と異な
り、横糸の干渉は避け得ない。但し、横糸の干渉に伴う
横糸の消費という観点からは、柄が口方向で接触してい
る場合と、離れている場合とで、状況が若干異なる。
【0038】「追い掛け」で柄が口方向で接触している
場合は、柄間の距離が実質的に0であるため、柄間での
横糸の「引っ掛け」や「押さえ」は、基本的に横糸の消
費につながらない。従って、横糸の干渉による消費を柄
間に集中させれば、その消費は問題のない程度に抑えら
れる。但し、口方向で接触する複数の柄が、図8(A)
に示すように同心状に組み合わされたものである場合
と、図8(B)に示すように口方向に並列するものであ
る場合とでは、若干状況が異なる。
【0039】「追い掛け」で、口方向で接触する複数の
柄が同心状に組み合わされたものである場合は、図11
(A)(B)に示すように、外周側の柄に対応する杼ほ
ど、下段の杼箱に収容するようにすれば、杼の走る順番
および方向に無関係に横糸の消費は抑えられる。
【0040】「追い掛け」で、口方向で接触する複数の
柄が口方向に並列するものである場合は、図11(C)
に示すように、左側の杼箱では、左側の柄に対応する杼
ほど、下の杼箱に入れ、右側の杼箱では、右側に柄があ
るほど下の杼箱に行くように杼を動かし、且つ、他の杼
を間に存在させないように杼を杼箱に収容する。図11
(C)では、左側から右側へC色、B色、A色の順で柄
が並んでいる。左側の杼箱では、下段にC色の杼c、中
段にB色の杼b、上段にA色の杼aが収容され、これ
を、右側の杼箱では、下段にA色の杼a、中段にB色の
杼b、上段にC色の杼cが収容されるように動かす。動
作順序は、中間の柄に対応する杼を先に動かし、次に、
遠い柄に対応する杼を動かす。従って、行きではb、
a、cの順となり、帰りではb、c、aの順となる。ち
なみに、杼のaとcは「戻し」の関係にある。
【0041】「追い掛け」で柄が口方向に離れている場
合は、柄間を中心に相当量の浪費が発生するのを避け得
ない。但し、図12(A)に示すように、杼が上下関係
を変えずに移動する場合のほうが、図12(B)に示す
ように、杼の上下関係が変わる場合よりも、横糸の浪費
が多くなる。即ち、横糸の干渉に伴う糸量の浪費は、図
12(A)で、行きがa、bの順、帰りがa、bの順の
ときは、A色の横糸が2(X+Z)となり、行きがb、
aの順、帰りがb、aの順のときも、A色の横糸が2
(X+Z)となる。これに対し、図12(B)で、行き
がa、bの順、帰りがa、bの順のときは、A色の横糸
のみ2Xとなり、行きがb、aの順、帰りがb、aの順
のときは、B色の横糸のみ2Xとなる。従って、杼の上
下関係を変えたほうが、横糸の浪費の点からは有利とな
る。柄は、杼の収容されている左側の杼箱の側から順に
A色、B色と並んでいる。XはA色の柄とB色の柄との
間隔、YはA色の柄の口方向の長さ、ZはB色の柄の口
方向の長さである。
【0042】最後に丸越、半越併用の場合の交換につい
て少し説明する。この場合の交換の原則は、幅の広いも
のは半越、丸越によらずに下へもってくれば抜けるとい
うこと、丸越が端にある場合は、丸越を下へもってくれ
ば抜けるということの2つである。例外としては、例え
ば2つ以上の半越で丸越が囲まれた場合ある。この場合
は、杼はどおしても抜けず、距離の短い方へ引っ掛け
る。そこで、丸越は並行にして短い方へ逃がす。自由交
換で走らせると、逆方向のものが距離の長い方で引っ掛
かる。杼の走行順についての原則は、丸越と半越は「追
い掛け」にする、丸越同士、半越同士は「戻し」にする
(但し、しみこみに関与する杼は並行で「追い掛け」と
す)の2つである。
【0043】以上が横糸の干渉を避ける杼の動作の基本
条件であり、第8工程では、これを用いて杼の具体的な
交換が自動的に組み立てられる。杼の具体的な交換の組
立の途中では、杼箱が適宜変更されるが、杼箱が変更さ
れた場合、織機では杼の入れ換えのために動作が一時的
に停止される。そのため、杼の具体的な交換の組立で
は、織機の停止回数が少なくなるような考慮も必要と言
える。また、織機の停止回数を少なくすることに関連し
て、メートルを意図的に延ばして、弛んだ横糸を止める
ようなことを考慮したり、杼の方向を先に決めてしま
い、その条件内で好ましい杼の交換を模索するようなこ
とも可能である。
【0044】第9工程の横糸干渉の定量的検査では、第
8工程で組まれた杼の具体的な交換に対し、横糸の干渉
に伴って生じる余分の糸量が定量的に検査される。この
検査では、杼と柄、杼箱の位置関係に基づく横糸干渉の
発生条件により、横糸の干渉位置が口方向ついて特定さ
れる。横糸干渉の発生条件は、従来は解析困難とされて
いたが、本発明者らの検討結果では、杼と柄、杼箱の位
置関係のみの簡潔明瞭な形で表されることが明らかとな
った。この横糸干渉の発生条件を具体化して以下に説明
する。
【0045】杼の交換とは、連続した越を織るときに両
側の杼箱の間を杼が往復するときの行きと帰りの動作と
いうことができる。横糸の干渉が発生する危険性がある
ケースとしては、次の6つがある。以前に走った杼が、
これから走ろうとする杼の上に収容されている場合(第
1のケース)、これから走ろうとする杼の下に、以前に
走った杼がある場合(第3のケース)、以前に走った杼
が、これから走ろうとする杼とは反対の側の杼箱に収容
されている場合(第5のケース)の3つ、逆方向でも、
以前に走った杼が、これから走ろうとする杼の上に収容
されている場合(第2のケース)、これから走ろうとす
る杼の下に、以前に走った杼がある場合(第4のケー
ス)、以前に走った杼が、これから走ろうとする杼とは
反対の側の杼箱に収容されている場合(第6のケース)
の3つを考えることができる。
【0046】第1のケース、即ち、以前に走った杼が、
これから走ろうとする杼の上に収容されている場合は、
図14(A)に示すような状況になると、「引っ掛か
り」が発生する。即ち、図14(A)では、杼の収容さ
れている左側の杼箱の側から順にB色、A色の柄が並ん
でいる。杼の動作は、先ず、杼箱から離れたA色の柄に
対応する杼aが下段の杼箱に入り、次いで、杼箱に近い
B色の柄に対応する杼bが上段の杼箱に入るという順で
行われている。この状態で、杼aが杼箱から右側へ出る
と、杼aに巻かれたA色の横糸がB色の横糸を巻き込む
ことになる。その結果、B色の柄の左端、即ち、杼箱に
近い側の端縁にA色の横糸の「引っ掛かり」が発生す
る。この「引っ掛かり」によって生じる余分の糸量は2
(X+Z)となり、杼bが杼箱から出た後も、「引っ掛
け」に伴う横糸の浪費はそのまま残る。XはA色の柄と
B色の柄との間隔、ZはB色の柄の口方向の長さであ
る。このように、行きで、且つ、以前に走った杼が、こ
れから走ろうとする杼の上に収容されている場合は、こ
れから走ろうとする杼に対応する柄の、杼箱に近い側の
端縁が、以前に走った杼に対応する柄の、杼箱に近い側
の端縁よりも遠くに有る状況のときに、「引っ掛かり」
が発生する。
【0047】第2のケース、即ち、逆方向で、以前に走
った杼が、これから走ろうとする杼の上に収容されてい
る場合は、図14(B)に示すように、左右は逆転する
ものの、第1のケースと同様に、これから走ろうとする
杼に対応する柄の、杼箱に近い側の端縁が、以前に走っ
た杼に対応する柄の、杼箱に近い側の端縁よりも遠くに
有る状況のときに、「引っ掛かり」が発生する。「引っ
掛かり」によって生じる余分の糸量は2(X+Z)とな
る。XはA色の柄とB色の柄との間隔、ZはB色の柄の
口方向の長さである。A色の柄の右端は、右側の杼箱に
対して、B色の柄の右端よりも遠くに位置している。
【0048】第3のケース、即ち、これから走ろうとす
る杼の下に、以前に走った杼がある場合は、図14
(C)に示すような状況になると、「押さえ」が発生す
る。即ち、図14(C)では、杼の収容されている左側
の杼箱の側から順にA色、B色の柄が並んでいる。杼の
動作は、先ず、杼箱に近いA色の柄に対応する杼aが上
段の杼箱に入り、次いで、杼箱から離れたB色の柄に対
応する杼bが下段の杼箱に入るという順で行われてい
る。この状態で、杼aが杼箱から右側へ出ると、杼aに
巻かれたA色の横糸が、その柄の左端でB色の横糸を押
さえ込むことになる。即ち、A色の柄の左端、即ち、杼
箱に近い側の端縁において、A色の横糸による「押さ
え」が発生する。そうなると、杼bが走ったとき、杼b
に巻かれたB色の横糸に2(X+Y)の浪費が生じる。
XはA色の柄とB色の柄との間隔、YはA色の柄の口方
向の長さである。このように、行きで、且つ、これから
走ろうとする杼の下に、以前に走った杼がある場合は、
これから走ろうとする杼に対応する柄の、杼箱に近い側
の端縁が、以前に走った杼に対応する柄の、杼箱に近い
側の端縁よりも近くに有る状況のときに、「押さえ」が
発生する。
【0049】第4のケース、即ち、逆方向で、これから
走ろうとする杼の下に、以前に走った杼がある場合は、
図14(D)に示すように、左右は逆転するものの、第
3のケースと同様に、これから走ろうとする杼に対応す
る柄の、杼箱に近い側の端縁が、以前に走った杼に対応
する柄の、杼箱に近い側の端縁よりも近くに有る状況の
ときに、「押さえ」が発生する。「押さえ」によって生
じる余分の糸量は2(X+Y)となる。XはA色の柄と
B色の柄との間隔、YはA色の柄の口方向の長さであ
る。A色の柄の左端は、左側の杼箱に対して、B色の柄
の左端よりも近くにある。
【0050】第5のケース、即ち、以前に走った杼が、
これから走ろうとする杼とは反対の側の杼箱に収容され
ている場合は、図14(E)に示すような状況になる
と、「押さえ」が発生する。即ち、図14(E)では、
これから走ろうとする杼aが左側の杼箱に収容されてお
り、以前に走った杼bは右側の杼箱に収容されている。
柄は左から右へB色、A色の順で間隔を空けて並んでい
る。この状態で、杼aが杼箱から出ると、A色の横糸が
A色の柄の左端でB糸の横糸を押さえ込む。このよう
に、行きで、且つ、以前に走った杼が、これから走ろう
とする杼とは反対の側の杼箱に収容されている場合は、
これから走ろうとする杼が収容されている杼箱に対し、
その杼に対応する柄が、以前に走った杼に対応する柄よ
りも遠方にある状況のときに、「押さえ」が発生する。
「押さえ」によって生じる余分の糸量は2Xとなる。X
はA色の柄とB色の柄との間隔である。
【0051】第6のケース、即ち、逆方向で、以前に走
った杼が、これから走ろうとする杼とは反対の側の杼箱
に収容されている場合は、図14(F)に示すように、
左右は逆転するものの、第5のケースと同様に、これか
ら走ろうとする杼が収容されている杼箱に対し、その杼
に対応する柄が、以前に走った杼に対応する柄よりも遠
方に離れて位置する状況のときに、「押さえ」が発生す
る。「押さえ」によって生じる余分の糸量は、この場合
も2Xとなる。
【0052】以上が横糸干渉の発生条件であるが、「引
っ掛かり」については、今一つ考慮すべきことがある。
それは、「引っ掛かり」の発生位置が、必ずしも一義的
には決まらないということである。換言すれば、「引っ
掛かり」が生じる第1および第2のケースの場合、前記
説明では、以前に走った杼の横糸は、これを引っ掛けた
横糸には引っ張られないと仮定したが、現実問題として
は、以前に走った杼の横糸が、これを引っ掛けた横糸に
引っ張られる可能性もあるのである。即ち、図14
(A)(B)では、A色の横糸がB色の横糸に引っ掛か
ったとき、B色の横糸がA色の横糸によって引っ張られ
る場合も考えられるわけである。その場合は、「引っ掛
かり」の位置が変わり、これに伴って、「引っ掛かり」
による横糸の消費量が変わってくる。これは、「引っ掛
かり」が生じた横糸の力関係、即ち、横糸の太さ、「引
っ掛かり」に関係する横糸の本数等や、更には、柄の間
隔等によって決まる。例えば、太い横糸ほど他の横糸に
影響を及ぼし、また、金糸、銀糸は比較的力が強く、他
の糸に影響され難い。更に、柄の間隔が広い場合は、図
15に示すように、横糸が互いに引き合う傾向が強い。
「追い掛け」で柄が口方向に離れ、且つ、杼の上下関係
が変わる場合の浪費は、図12(B)では、A色あるい
はB色の横糸のみ2Xとしたが、これは柄の間隔が狭い
ときで、柄の間隔が広いときは、A色の横糸が2×X/
2、B色の横糸が2×X/2となる場合もある。「押さ
え」についても、図16に示すように、押さえた横糸が
輪になって完全には押さえきれない場合があり、この場
合も横糸の干渉位置が変わる。このようなことから、横
糸の干渉位置を厳密に特定する場合は、干渉位置の偏位
を更に考慮する必要がある。
【0053】第9工程の横糸干渉の定量的検査では、第
1段階として、第8工程で組まれた杼の具体的な交換に
対し、以上のような横糸干渉の発生条件から、横糸の干
渉の有無が判定される。横糸の干渉がないと判定された
ときは、次の所定数の越に対して、第5工程以降が実行
される。
【0054】横糸の干渉があると判定されたときは、第
2段階として、その干渉位置が口方向について特定され
る。特定された干渉位置は、第5工程で得た口メートル
に照合され、「引っ掛かり」とか「押さえ」といった横
糸の干渉によって生じる余分の糸量の計算に使用され
る。計算された余分の糸量は、合計されて、第2工程で
入力された初期条件から得た許容範囲と比較される。横
糸の干渉によって生じる余分の糸量が、その許容範囲内
であれば、次の所定数の越に対して、第5工程以降が実
行される。
【0055】横糸の干渉によって生じる余分の糸量が、
その許容範囲外のときは、第3段階に移行する。ここで
は、第8工程で組み立てられた杼の具体的な交換が変更
されると共に、必要に応じて、第7工程で決定された杼
箱が変更される。杼箱が変更された場合は、メートルが
引き直される。変更された条件に対しては、第9工程の
横糸干渉の定量的検査が実行される。そして、横糸の干
渉によって生じる余分の糸量が、その許容範囲内に収ま
るように、変更および検査が繰り返され、許容範囲内に
収まった時点で、次の所定数の越に対して、第5工程以
降が実行される。
【0056】横糸の干渉によって生じる余分の糸量を、
その許容範囲内に集束させるのが不可能と判定されたと
きは、第4段階として、第3工程で入力された杼の交換
の基本的形態の変更が、コンピューターの画面に表示さ
れる。この表示に従って、作業者は、杼の基本的な動作
関係を、現在処理中の越に係わる部分について変更す
る。杼の基本的な動作関係が変更されたときは、それに
対して、第4工程以降が再度実行される。
【0057】以上のようにして、指示された所定数の越
に対して、横糸の干渉を避ける方向で、杼の交換が自動
的に組み立てられると共に、組み立てられた交換に対し
て、横糸の干渉の定量的検査が自動実施され、横糸の干
渉に伴う糸損失が許容範囲内に収められる。そして、こ
れが全ての越に対して行われることにより、横糸が定量
的に管理され、その損失が少ない交換が完成される。し
かも、完成した交換は、織りの優れた出来映えを保証す
るものとなる。というのは、複雑な交換がコンピュータ
ーで自動的に組まれ、作業者の負担が軽減されることに
加え、横糸が定量的に管理されるので、杼の基本的な動
作関係を決める工程で、糸量にそれほど気をつかう必要
がなくなり、織りの出来映えに専念できるようになるか
らである。
【0058】なお、本発明は、上記実施例に限定される
ものではない。例えば、杼箱の決定条件、横糸の干渉を
避ける杼の動作の基本条件、横糸干渉の発生条件等の各
種条件は、より合理的なもの、より精密なものなどに適
宜変更することができる。工程については、図17に示
すように、特定数の越に対して読み込まれたデータが、
1回目のものか2回目以降のものかを判断する工程を介
在させ、2回目以降のものの場合は、先に組み立てられ
た交換を利用し、これを一部変更する程度の処理に止め
るようなこともできる。これは、杼の抜き差し回数を出
来るだけ少なくして、製織を簡単にする上で有効であ
る。また、コンピューターの負担を軽減する意味合い
で、最も複雑な柄の部分について、作業者が最初のメー
トルを作成するようなこともできる。
【0059】また、本発明にかかる杼の交換の自動組立
法では、工程途中で横糸の損失が定量的に検出されるの
で、その損失量と、意匠図の情報から得られる正規の横
糸量と組み合わせることにより、横糸の総使用量を計算
することが可能となる。更に、作成されたメートルに対
して、織機を停止することなく杼の入れ換えを行うよう
な交換を組むことも可能となる。
【0060】
【発明の効果】以上、本発明にかかる有杼織における杼
の交換の自動組立法による場合には、杼の交換が自動的
に組み立てられるので、その組立に要する労力が著しく
軽減される。その上、交換の自動組立に、横糸の干渉を
避ける基本条件が用いられ、且つ、組み立てられた交換
に対して、横糸の干渉に伴う消費が定量的に検査される
ので、横糸の節約された交換が出来上がる。従って、出
来上がった交換から、糸量の少ない低価格で軽量な織物
が製造される。また、交換の組立に使用されるデータか
ら、必要な糸量が正確に予測できる。更に、横糸の節約
された交換が自動的に組み立てられるので、杼の交換の
基本的な形態の指示では、糸量による制約が軽減され、
織物の仕上がりを優先させた作業ができるようになるた
めに、織物の品質も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有杼織の基本を示す模式図である。
【図2】杼箱の模式図である。
【図3】意匠図の模式図である。
【図4】横糸の干渉を示す模式図で、(A)は「引っ掛
かり」、(B)は「押さえ」を示している。
【図5】杼の基本的な動作関係の相違による織りの違い
を示す模式図で、(A)は「戻し」の場合、(B)は
「追い掛け」の場合を示している。
【図6】本発明にかかる杼の交換の自動組立法の具体的
手順を示すフローチャートである。
【図7】横糸の使用範囲の求め方を示す模式図である。
【図8】柄の相互関係を示す模式図である。
【図9】杼箱の決め方を示す模式図である。
【図10】横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を示
す模式図である。
【図11】横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を
「戻し」について示す模式図である。
【図12】横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を
「追い掛け」について示す模式図である。
【図13】杼の交換の組立法を説明するための模式図で
ある。
【図14】杼と柄、杼箱の位置関係に基づく横糸干渉の
発生条件を示す模式図である。
【図15】「引っ掛かり」を生じた横糸が相互に引き合
う状況を示す模式図である。
【図16】「押さえ」が不完全な状況を示す模式図であ
る。
【図17】本発明にかかる杼の交換の自動組立法の他の
具体的手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
A〜J 色 a〜u 杼 〜 杼の動作順序
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成3年7月31日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 有杼織における杼の交換の自動組立法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、西陣織のような色数の多い有杼
織の製造に用いられる杼の交換の自動組立法に関する。
【0002】
【従来の技術】杼を使用する有杼織では、図1に示すよ
うに、縦糸を上下に分けて形成された杼道に杼を通し、
杼に巻かれた横糸を縦糸に立体的に交差させることによ
り、織物が織り上げられて行く。織り上げられる織物は
通常、表を下にしているので、色糸は、柄の表れる部分
では縦糸の下をくぐり、横打ちにより地糸に被さって柄
を形成し、柄のない地の部分では縦糸の上を通過する。
横糸を巻いた杼は、図2に示すように、織物の両側に重
ねられた杼箱の間を行き帰りする。図2では、地糸を巻
いた杼が左側の最下段の杼箱に収容されており、A色、
B色の各横糸を巻いた杼a、bが2段目、3段目の杼箱
にそれぞれ収容されている。
【0003】なお、本明細書では、便宜上、図2のよう
に、柄を織物の上側に図示しているが、実際は、先に述
べたように織裏なので、柄は織物の下側に表れる。そし
て、杼が織物の横から出るように、杼箱が上下される。
また、左右については、織機側では逆になり、同様に、
柄の遠いとか手前側、杼箱の近くなどの表現も、織機側
では逆になる。
【0004】最高級の有杼織として知られる西陣織で
は、横糸が並ぶ方向、即ち織りの方向の基本単位を越と
呼び、縦糸が並ぶ方向の基本単位を口と呼んでいる。横
糸の数は、他の有杼織に比べて非常に多く、1越を織る
のに数10本の横糸が使用されることも少なくない。こ
れに対し、杼箱は、最大でも片側で12丁しかなく、使
用する横糸の数に比べて少ない。そのため、杼には複雑
な動きが要求される。連続する越を織るために、両側の
杼箱の間を杼が行き帰りする動作は「交換」と呼ばれ、
その動作順序、動作方向を予め決めることを「交換を組
む」と呼んでいる。
【0005】このような西陣織では、その図案が出来上
がると、織りに先立って意匠図が作成される。意匠図
は、図3に示すように、図案を1越、1口を基本単位と
して図示したものであり、意匠図の側方には、意匠図に
使用された色、即ち横糸の越方向の使用範囲等が色分け
されて線状に記入される。これはメートルと呼ばれ、そ
の配列は、基本的には、杼が収容される杼箱を表してい
る。即ち、図3では、地糸を巻いた杼が最下段の杼箱に
収容され、A色、B色の各横糸を巻いた杼a、bが2段
目、3段目の杼箱にそれぞれ収容される(図2参照)。
そして、作成された意匠図に対しては、杼の交換が組ま
れ、杼を収容する杼箱と、杼の動作順序、動作方向と
が、適宜数の越づつ所定の用紙に記入される。
【0006】多くの横糸を使用する西陣織では、杼の数
と杼箱の数との不釣り合いが、杼の交換を複雑にするこ
とは、先に述べた。しかし、杼の交換を複雑にする要因
は、杼の数と杼箱の数との不釣り合いだけではない。
「引っ掛かり」や「押さえ」と呼ばれる杼の交換に伴う
横糸の干渉も、杼の交換を著しく複雑にしている。
【0007】「引っ掛かり」とは、図4(A)に示すよ
うに、先に走った杼aに巻かれたA色の横糸に、後から
走る杼bに巻かれたB色の横糸が引っ掛かる現象であ
る。また、「押さえ」とは、図4(B)に示すように、
先に走った杼bに巻かれたB色の横糸を、後から走る杼
aに巻かれたA色の横糸が押さえ込む現象である。
は杼の動作順序を表している。これらの現象が生じる
と、横糸が必要以上に消費され、糸コストが嵩むと共
に、織物が重くなる。従って、「引っ掛かり」や「押さ
え」と呼ばれる横糸の干渉は、極力避けなければならな
い。しかし、単純に「引っ掛かり」や「押さえ」を回避
すればよいというものではない。意図的あるいは不可避
的にこれら横糸の干渉を発生させなければならないこと
もあり、このことが杼の交換を著しく複雑にしているの
である。これを以下に説明する。
【0008】「引っ掛かり」や「押さえ」と呼ばれる横
糸の干渉には、杼の基本的な動作関係が、「追い掛け」
であるか「戻し」であるかということに深く関わり合っ
ている。「追い掛け」とは、連続する越を織る場合に、
特定の杼が行きと帰りとを同じ順番で走ることをいい、
「戻し」とは、その場合に、特定の杼が行きと帰りとを
逆の順番で走ることをいう。即ち、A色、B色、C色の
各横糸を巻いた杼a、b、cが行きをこの順番で走った
場合、帰りもa、b、cの順番のとき、これを「追い掛
け」と呼び、帰りがc、b、aの順番のときは、これを
「戻し」と呼ぶのである。そして、横糸の干渉という観
点からみれば、「追い掛け」は不利であり、「戻し」の
ほうが有利となる。例えば、図2に示すように、全ての
杼が一方の側の杼箱から他方の側の杼箱へ移動するとき
は、横糸を干渉させることなくスムーズに杼を移動させ
ることができる。従って、糸量を節約するためには、全
面的に「戻し」を採用すればよいことになる。
【0009】しかし、西陣織のような最高級の有杼織に
なると、「戻し」にのみ依存することはできない。とい
うのは、「戻し」では、図5(A)に示すように、色糸
A、Bを巻いた杼a、bが、行きをa、b、帰りをb、
aの順番で走るため、柄が越方向に割れ、見栄えの悪
化、商品価値の低下を伴うからである。これに対し、
「追い掛け」では、図5(B)に示すように、色糸A、
Bを巻いた杼a、bが、行きをa、b、帰りをa、bの
順番で走るため、色糸が越方向に均等な間隔で並び、柄
に割れは生じない。そのため、品質を重要視するなら
ば、口方向で接触する柄のある越では、望むと望まざる
とにかかわらず、「追い掛け」を採用せざるを得ないこ
とになる。その結果、横糸が複雑に絡み合い、その干渉
に伴う糸量の浪費が生じ、そのために織物のコストおよ
び重量が増加することになる。これが西陣織の大きな欠
点であることは、周知のとおりである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上のようなことか
ら、西陣織のような最高級の有杼織で、糸量と仕上がり
とを両立させようとすると、極めて複雑な杼の交換が要
求されることになる。このことは、意匠図におけるメー
トルの記入および杼の交換の組立が、極めて複雑な作業
となることを意味する。そして、西陣では、この作業
は、今もなお勘と経験によって人手で行われている。そ
のため、柄が複雑になると、熟練者でも相当の時間を必
要とし、西陣織の製造工程のなかでも特に手間暇のかか
る工程とされている。また、たとえ多くの手間暇をかけ
たとしても、引かれたメートルや組まれた交換が完全で
あるとは到底言い難く、糸量の浪費や柄の割れを避け得
ないのが実情である。
【0011】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であり、杼の交換の組立に要する負担を大幅に軽減し、
しかも、少ない横糸で見栄えのよい高品質な織物の製造
を可能とする有杼織における杼の交換の自動組立法を提
供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる杼の交換
の自動組立法は、1越、1口を基本単位として表示した
意匠図に対して、予め杼の基本的な動作関係を指示した
後、所定数の越に対して、指示された杼の基本的な動作
関係を基に、横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を
用いて、杼の具体的な交換を組み、更に、組まれた杼の
具体的な交換に対して、杼の動作順序と杼、柄、杼箱の
位置関係とに基づく横糸干渉の発生条件を用いて、横糸
の干渉に伴って生じる余分の糸量を定量的に検査し、検
査データが許容範囲内に収まるように、杼の具体的な交
換を変更しつつ、全ての越における杼の交換を組み立て
て行くことを特徴としている。
【0013】更に具体的には、1越、1口を基本単位と
して表示した意匠図に対して、予め杼の基本的な動作関
係を指示した後、所定数の越に対して、指示された杼の
基本的な動作関係を基に、意匠図の情報、杼の数、杼箱
の数、杼箱の許容移動段数および横糸の干渉を避ける杼
の動作の基本条件を用いて、杼の具体的な交換を組み、
更に、組まれた杼の具体的な交換に対して、杼の動作順
序と杼、柄、杼箱の位置関係とに基づく横糸干渉の発生
条件を用いて、横糸の口方向における干渉位置を特定す
ると共に、特定された干渉位置より、横糸の干渉に伴っ
て生じる余分の糸量を計算し、計算された糸量が許容範
囲内のときは、次の所定数の越に対して杼箱の決定と杼
の具体的な交換の組立とを行い、計算された糸量が許容
範囲外のときは、その糸量が許容範囲内に収まるよう
に、杼の具体的な交換を変更し、その変更によっても、
計算された糸量が許容範囲内に収まらないときは、当初
に決めた杼の基本的な動作関係を変更する構成とするこ
とができる。
【0014】
【作用】本発明にかかる杼の交換の自動組立法におい
て、杼の基本的な動作関係とは、使用する横糸に対応す
る杼のいずれが「戻し」の関係で動き、いずれが「追い
掛け」の関係で動くかということ意味する。また、杼の
具体的な交換とは、特定数の越を織るのに使用される全
ての杼の、動作方向等をも含めた総括的かつ具体的な交
換を意味する。
【0015】本発明にかかる杼の交換の自動組立法にお
いては、作成された意匠図全体に対し、杼の基本的な動
作関係を一応指示した後、特定数の越に対し、指示され
た杼の基本的な動作関係を基に、杼の具体的な交換が組
まれる。この交換の組立においては、横糸の干渉を避け
る杼の動作の基本条件が用いられる。横糸の干渉を避け
る杼の動作の基本条件の使用により、杼の組立が自動化
されると共に、組まれた交換は、一応「引っ掛かり」や
「押さえ」といった横糸の干渉を許容範囲内に回避する
ようになる。しかし、横糸の干渉の実体までは分からな
い。そのため、このままでは糸量は予測できない。そこ
で、組まれた交換に対し、横糸の干渉に伴って生じる余
分の糸量を定量的に検査する。この検査においては、杼
の動作順序と杼、柄、杼箱の位置関係とに基づく横糸干
渉の発生条件が用いられる。
【0016】横糸干渉の発生条件については、従来は熟
練者の間でも感覚的にしか把握されてなかったが、実際
は、存外簡単な法則、即ち、杼の動作順序と杼、柄、杼
箱の位置関係とで表されることが、本発明者の解析から
判明した。これを用いれば、横糸の干渉位置が口方向に
ついて自動的に特定され、更には、横糸の干渉に伴って
生じる余分の糸量が定量的に自動検査される。そして、
組まれた交換に対して、この検査を実施し、検査の結
果、計算された糸量が許容範囲内に収まるように、杼の
具体的な交換を変更することにより、横糸が定量的に管
理された交換が自動的に組み立てられ、且つ、必要とす
る糸量が定量的に把握される。
【0017】特定数の越に対して順次実行される杼の具
体的な交換の組立、および組み立てられた交換に対する
糸量の定量的検査は、コンピューターを用いて簡単かつ
迅速に行うことができる。
【0018】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。図6は本発明を実施した有杼織における杼の交換
の自動組立法の具体的手順を例示するフローチャートで
ある。
【0019】ここで説明する杼の交換の自動組立法は、
西陣織における杼の交換組立に本発明を適用したもの
で、意匠図の入力、初期条件の入力、杼の基本的な動作
関係の指示、処理開始の指示、口メートルの作成、柄の
相互関係の認識、杼箱の決定、杼の具体的な交換の組
立、横糸干渉の定量的検査の9工程よりなり、グラフィ
ック機能を備えた汎用のコンピューターを用いて実施さ
れる。
【0020】第1工程の意匠図入力では、作成された西
陣織の意匠図をコンピューターに入力する。意匠図を入
力されたコンピューターは、その色を1越、1口を基本
単位として記憶する。
【0021】第2工程の初期条件入力では、使用する横
糸の総数、即ち杼の数、杼箱の数、杼箱の許容移動段
数、横糸の干渉によって余分に生じる糸量の許容範囲
(1越または特定数の越における許容範囲)、オサ幅、
各メートルに対しての彫る色・彫り方、両サイドの糸量
の許容範囲(例えば両サイド20ドットは許容量0)、
杼の基本形(右か左か)、各メートルの杼走(例えば奇
数半越)等を、初期条件としてコンピューターに入力す
る。
【0022】第3工程の杼の基本的な動作関係の指示で
は、コンピューターに入力された意匠図を画面に表示
し、その意匠図を見ながら、使用する横糸の杼を「追い
掛け」にするか「戻し」にするかを画面で指示する。全
ての越および横糸についてこの操作を行うのは大変であ
るので、コンピューターでは「追い掛け」、「戻し」の
いずれかを基本形態として予め決める。基本形態を「追
い掛け」とした場合、作業者は、意匠図、特にその柄を
見て、この横糸と横糸とは、この範囲を「戻し」とする
のが好都合であるというように、「追い掛け」と「戻
し」の得失を判断しながら、「戻し」とする横糸の種類
を、その越方向の範囲と合わせて指示することになる。
これにより、杼の基本的な動作関係が意匠図全体に対し
て一応決定される。
【0023】第3工程における作業は、柄の割れ、横糸
の干渉、糸量等を考慮しながら厳密に行おうとすると、
極めて困難なものになる。また、手間暇をかけても完全
な作業は不可能である。しかし、ここでは、後で横糸の
干渉を避けるように交換が自動的に組まれ、且つ、組ま
れた交換に対し、横糸の干渉およびそれに伴う糸量が検
査される。そのため、横糸の干渉および糸量について
は、それほど厳密に考える必要がなく、柄の割れといっ
た織物の出来映えを優先させて作業を行えばよい。従っ
て、ここにおける作業が著しく簡素化され、なおかつ、
優れた出来映えが保証されることになる。
【0024】第3工程で杼の基本的な動作関係が図柄全
体に対して一応決定されると、第4工程として、スター
ト越、越の処理数といった処理開始の指示をコンピュー
ターに与えて、第5工程の口メートルの作成に移行す
る。第4工程におけるスタート越は、コンピューターの
処理能率を考えて、通常は柄の比較的複雑なところに選
択される。また、越の処理数は、通常は2越、即ち杼の
1往復に相当する数とされる。第4工程までは、作業の
主体が人手にあったが、第5工程以降の作業は、コンピ
ューターが主体となる。
【0025】第5工程の口メートルの作成では、コンピ
ューターに記憶された意匠図についての情報を用いて、
指示された所定数の越に対し、口メートルが作成され
る。これは次のようにして行われる。まず、図7に示す
ように、特定の越にA色が使用されている場合、その口
方向の使用範囲を、コンピューターに記憶されている意
匠図情報から読み取り、その延べ範囲から、A色の横糸
の口方向における使用範囲を求める。他の色の横糸につ
いても、同様に口方向の使用範囲を求める。これを、指
示された所定数の越に対して行うことにより、口方向に
引かれたメートル、即ち口メートルが作成される。
【0026】作成された口メートルからは、指示された
所定数の越について、使用される横糸の使用範囲がわか
り、従って、最低必要な横糸の使用量が計算される。ま
た、「引っ掛かり」とか「押さえ」といった横糸の口方
向における干渉位置が分かれば、これらの干渉によって
生じる余分の糸量も計算される。更に、口メートルの作
成途中のデータを使用すれば、複数の柄の口方向におけ
る位置関係も判断される。複数の柄の口方向における位
置関係についての情報は、第6工程の柄の相互関係の認
識に使用される。
【0027】第6工程の柄の相互関係の認識では、第5
工程で得た複数の柄の口方向における位置関係について
の情報から、口方向で接触する複数の柄が、図8(A)
に示すような同心状に組み合わされたものか、あるい
は、図8(B)に示すような口方向に並列するものかを
判断する。並列関係にある柄は、丸に限らず、角形等、
種々の形状となることは言うまでもない。更に、その数
も様々である。得られた柄の相互関係についての情報
は、第3工程を加味して第7工程の杼箱の決定および第
8工程の杼の具体的な交換の組立に使用される。
【0028】第7工程の杼箱の決定では、使用する横糸
が巻かれた杼を、どの杼箱に収容するかを決める。これ
には、第2工程で初期条件として入力された使用する横
糸の総数、杼箱の数、第5工程の口メートルの作成で得
られた横糸の種類および各横糸の口方向の使用範囲、第
3工程を加味して第6工程で得られた柄の相互関係等に
ついての情報が使用される。
【0029】杼箱の決定についての最も基本的な考え方
は、越方向、口方向の使用範囲の広い横糸ほど下段の杼
箱に収容するというものである。使用する横糸の数が片
側の杼箱の数以下であれば、ほぼこの基本的な考え方で
杼箱が決定される。使用する横糸の数が片側の杼箱の数
を超える場合、所謂、平行丁数に収まらない場合は、両
側の杼箱が使用される。
【0030】平行丁数に収まらない場合の考え方として
は、図9に示すように、一方の側の杼箱を下段から順に
使用した後、他方の側の杼箱を上段から順に使用する場
合、最上段に向けて両側の杼箱を交互に使用する場合な
どがある。いずれを採用するにしても、他方の側の杼箱
では下段を空けることが比較的多い。また、第8工程の
杼の具体的な交換の組立での便宜を図るために、並列か
つ追い掛け関係にある柄と出来るだけ無関係な杼を、他
方の側の杼箱に持ってくるというような配慮も適宜行
う。他にも条件はあるが、それは第8工程の説明で明ら
かにする。つまり、杼箱の決定は、杼の具体的な交換の
組立と関連して総合的に決められる。杼箱が決定される
と、指示された所定数の越についてメートルが引かれ
る。ここでいうメートルとは、図2に示す本来のメート
ルである。
【0031】第8工程の杼の具体的な交換の組立では、
指示された所定数の越に対して、使用される全ての杼
の、動作方向等をも含めた総括的かつ具体的な交換が組
み立てられる。これには、第3工程で決められた杼の基
本的な動作関係、即ち、杼の動作を「戻し」にするか
「追い掛け」にするかということ、第6工程で認識され
た柄の相互関係、第7工程で決められた杼箱、更に、初
期条件として入力された杼箱の許容移動段数、横糸の干
渉を避ける杼の動作の基本条件等が考慮される。
【0032】杼箱の許容移動段数とは、杼の交換に際
し、杼箱が一気に動くことのできる最大段数のことであ
る。西陣織等の有杼織では、杼の送り出しや受け入れを
行うために、杼箱が上下運動をする。その落差は、比較
的小さく制限され、12段分も一度に杼箱が上下するよ
うなことは、到底出来ないのである。そのため、杼の具
体的な交換の組立では、杼箱の許容移動段数が考慮され
る。
【0033】横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件に
ついては、杼の動作関係が「戻し」の場合と「追い掛
け」の場合とに大別して考える。「戻し」の場合の基本
条件は、ここでは、使用される複数の杼が全て同じ方向
に走る場合と、異方向に走る杼が混じる場合とに分け、
異方向に走る杼が混じる場合は、更に、それらの杼が上
下関係を変えずに動く場合と、上下関係を変えて動く場
合とに細分して考えることとする。
【0034】「戻し」で杼が全て同じ方向に走る場合
は、図10(A)に示すように、杼の動く方向には一切
関係なく、杼の動く順番を柄の遠い順とすることによ
り、「引っ掛かり」とか「押さえ」といった横糸の干渉
を生じることなく杼がスムーズに抜ける。図10(A)
では、杼の収容されている杼箱の側から順にA色、C
色、D色、B色の柄が並んでいる。杼は、行きではB
色、D色、C色、A色が巻かれたb、d、c、aの順で
走り、戻りでは逆にa、c、d、bの順で走る。そうす
れば、横糸の干渉は生じない。この杼の動作は、杼の交
換における最も基本なものである。
【0035】「戻し」で異方向に走る杼が混じり、且
つ、それらの杼が上下関係を変えずに動く場合は、中継
杼が重要になる。中継杼とは、交換を組むにあたって、
杼箱の上下運動の落差を少なくするために考える杼のこ
とであり、通常、行きで、その杼が入っていた杼箱から
見て、上方の杼箱に入っている杼よりも後で走る場合、
その杼は手前側の柄を取る。これを図10(B)で説明
する。図10(B)では、左側の下段の杼箱に杼aが、
上段の杼箱に杼cが収容され、右側の中段の杼箱に杼b
が収容されている。柄は片側からA色、B色、c色の順
となっている。この場合、杼の行きの順番をb、c、
a、帰りを逆のa、c、bとすれば、杼aが中継杼とな
る。即ち、杼aは、行きでは杼bおよびcより下に位置
しており、且つ、杼bおよびcより後で動く。中継杼a
に対応するA色の柄は、先に走る杼bに対応するB色お
よび杼cに対応するC色の柄よりa側の杼箱に近くなけ
ればならない。中継杼が複数ある場合は、それらを同一
方向に走らせた方が交換を組みやすい。しかし、、異方
向から走る他の中継杼がある場合は、上の中継杼が下の
中継杼より、行きで先に走らせるなどの考慮をする。そ
うでないと、横糸の干渉が生じやすい。但し、杼が斜め
に横切って走る「戻し」の交換の場合は、例えば図13
のようになる。ここでの柄は、DFNHJLPRTUS
QOMKIGECの順であり、aは地、bはハクであ
る。
【0036】「戻し」で異方向に走る杼が混じり、且
つ、それらの杼が上下関係を変える場合は、図10
(C)(D)に示すように、柄の位置によって、横糸が
下から上へ交差する状況と、上から下へ交差する状況と
が考えられるが、杼と柄の位置関係を図のようにしてお
けば、横糸の交差の状況に関係なく、杼の動作順序を考
える必要はない。即ち、図10(C)(D)とも、行き
a、b、帰りb、aまたは行きb、a、帰りa、b、の
2通りを採用することができるのである。
【0037】「追い掛け」の場合は、「戻し」と異な
り、横糸の干渉は避け得ない。但し、横糸の干渉に伴う
横糸の消簀という観点からは、柄が口方向で接触してい
る場合と、離れている場合とで、状況が若干異なり、柄
が口方向で接触していなければ「戻し」を使用したほう
が良い。
【0038】「追い掛け」で柄が口方向で接触している
場合は、柄間の距離が実質的に0であるため、柄間での
横糸の「引っ掛け」や「押さえ」は、基本的に横糸の消
費につながらない。従って、横糸の干渉による消費を柄
間に集中させれば、その消費は問題のない程度に抑えら
れる。但し、口方向で接触する複数の柄が、図8(A)
に示すように同心状に組み合わされたものである場合
と、図8(B)に示すように口方向に並列するものであ
る場合とでは、若干状況が異なる。
【0039】「追い掛け」で、口方向で接触する複数の
柄が同心状に組み合わされたものである場合は、図11
(A)(B)に示すように、外周側の柄に対応する杼ほ
ど、下段の杼箱に収容するようにすれば、杼の走る順番
および方向に無関係に横糸の消費は抑えられる。ただ
し、各杼の方向は交差してはならない。
【0040】「追い掛け」で、口方向で接触する複数の
柄が口方向に並列するものである場合は、図11(C)
に示すように、左側の杼箱では、左側の柄に対応する杼
ほど、下の杼箱に入れ、右側の杼箱では、右側に柄があ
るほど下の杼箱に行くように杼を動かし、且つ、他の杼
を間に存在させないように杼を杼箱に収容する。例とし
て図11(C)では、左側から右側へC色、B色、A色
の順で柄が並んでいる。左側の杼箱では、下段にC色の
杼c、中段にB色の杼b、上段にA色の杼aが収容さ
れ、これを、右側の杼箱では、下段にA色の杼a、中段
にB色の杼b、上段にC色の杼cが収容されるように動
かす。動作順序は、中間の柄に対応する杼を先に動か
し、次に、遠い柄に対応する杼を動かす。従って、行き
ではb、a、cの順となり、帰りではb、c、aの順と
なる。ちなみに、杼のaとcは「戻し」の関係にある。
【0041】「追い掛け」で柄が口方向に離れている場
合(実際は「戻し」を使用したほうが良い)は、柄間を
中心に相当量の浪費が発生するのを避け得ない。但し、
図12(A)に示すように、杼が上下関係を変えずに移
動する場合のほうが、図12(B)に示すように、杼の
上下関係が変わる場合よりも、横糸の浪費が多くなる。
即ち、横糸の干渉に伴う糸量の浪費は、図12(A)
で、行きがa、bの順、帰りがa、bの順のときは、A
色の横糸が2(X+Z)となり、行きがb、aの順、帰
りがb、aの順のときも、A色の横糸が2(X+Z)と
なる。これに対し、図12(B)で、行きがa、bの
順、帰りがa、bの順のときは、A色の横糸のみ2Xと
なり、行きがb、aの順、帰りがb、aの順のときは、
B色の横糸のみ2Xとなる。従って、杼の上下関係を変
えたほうが、横糸の浪費の点からは有利となる。柄は、
杼の収容されている左側の杼箱の側から順にA色、B色
と並んでいる。XはA色の柄とB色の柄との間隔、Yは
A色の柄の口方向の長さ、ZはB色の柄の口方向の長さ
である。
【0042】最後に丸越、半越併用の場合の交換につい
て少し説明する。この場合の交換の原則は、幅の広いも
のは半越、丸越によらずに下へもってくれば抜けるとい
うこと、丸越が端にある場合は、丸越を下へもってくれ
ば抜けるということの2つである。例外としては、例え
ば2つ以上の半越で丸越が囲まれた場合ある。この場合
は、杼はどおしても抜けず、距離の短い方へ引っ掛け
る。杼の走行順についての原則は、丸越と半越は「追い
掛け」にする、丸越同士、半越同士は「戻し」にするの
2つである。
【0043】以上が横糸の干渉を避ける杼の動作の基本
条件であり、第8工程では、これを用いて杼の具体的な
交換が自動的に組み立てられる。杼の具体的な交換の組
立の途中では、杼箱が適宜変更されるが、杼箱が変更さ
れた場合、織機では杼の入れ換えのために動作が一時的
に停止される。そのため、杼の具体的な交換の組立で
は、織機の停止回数が少なくなるような考慮も必要と言
える。また、織機の停止回数を少なくすることに関連し
て、メートルを意図的に延ばして、弛んだ横糸を止める
ようなことを考慮したり、初期条件の設定の所で杼の方
向を先に決めてしまい、その条件内で好ましい杼の交換
を模索するようなことも可能である。
【0044】第9工程の横糸干渉の定量的検査では、第
8工程で組まれた杼の具体的な交換に対し、横糸の干渉
に伴って生じる余分の糸量が定量的に検査される。この
検査では、杼の動作順序と杼、柄、杼箱の位置関係とに
基づく横糸干渉の発生条件により、横糸の干渉位置が口
方向ついて特定される。横糸干渉の発生条件は、従来は
解析困難とされていたが、本発明者の検討結果では、杼
の動作順序と杼、柄、杼箱の位置関係との簡潔明瞭な形
で表されることが明らかとなった。この横糸干渉の発生
条件を具体化して以下に説明する。
【0045】杼の交換とは、連続した越を織るときに両
側の杼箱の間を杼が往復するときの行きと帰りの動作と
いうことができる。横糸の干渉が発生する危険性がある
ケースとしては、次の6つがある。以前に走った杼が、
これから走ろうとする杼の上に収容されている場合(第
1のケース)、これから走ろうとする杼の下に、以前に
走った杼がある場合(第3のケース)、以前に走った杼
が、これから走ろうとする杼とは反対の側の杼箱に収容
されている場合(第5のケース)の3つ、逆方向でも、
以前に走った杼が、これから走ろうとする杼の上に収容
されている場合(第2のケース)、これから走ろうとす
る杼の下に、以前に走った杼がある場合(第4のケー
ス)、以前に走った杼が、これから走ろうとする杼とは
反対の側の杼箱に収容されている場合(第6のケース)
の3つを考えることができる。
【0046】第1のケース、即ち、以前に走った杼が、
これから走ろうとする杼の上に収容されている場合は、
図14(A)に示すような状況になると、「引っ掛か
り」が発生する。即ち、図14(A)では、杼の収容さ
れている左側の杼箱の側から順にB色、A色の柄が並ん
でいる。杼の動作は、先ず、杼箱から離れたA色の柄に
対応する杼aが下段の杼箱に入り、次いで、杼箱に近い
B色の柄に対応する杼bが上段の杼箱に入るという順で
行われている。この状態で、杼aが杼箱から右側へ出る
と、杼aに巻かれたA色の横糸がB色の横糸を巻き込む
ことになる。その結果、B色の柄の左端、即ち、杼箱に
近い側の端縁にA色の横糸の「引っ掛かり」が発生す
る。この「引っ掛かり」によって生じる余分の糸量は2
(X+Z)となり、杼bが杼箱から出た後も、「引っ掛
け」に伴う横糸の浪費はそのまま残る。XはA色の柄と
B色の柄との間隔、ZはB色の柄の口方向の長さであ
る。このように、以前に走った杼が、これから走ろうと
する杼の上に収容されている場合は、これから走ろうと
する杼に対応する柄の、杼箱に近い側の端縁が、以前に
走った杼に対応する柄の、杼箱に近い側の端縁よりも遠
くに有る状況のときに、「引っ掛かり」が発生する。
【0047】第2のケース、即ち、逆方向で、以前に走
った杼が、これから走ろうとする杼の上に収容されてい
る場合は、図14(B)に示すように、左右は逆転する
ものの、第1のケースと同様に、これから走ろうとする
杼に対応する柄の、杼箱に近い側の端縁が、以前に走っ
た杼に対応する柄の、杼箱に近い側の端縁よりも遠くに
有る状況のときに、「引っ掛かり」が発生する。「引っ
掛かり」によって生じる余分の糸量は2(X+Z)とな
る。XはA色の柄とB色の柄との間隔、ZはB色の柄の
口方向の長さである。A色の柄の右端は、右側の杼箱に
対して、B色の柄の右端よりも遠くに位置している。
【0048】第3のケース、即ち、これから走ろうとす
る杼の下に、以前に走った杼がある場合は、図14
(C)に示すような状況になると、「押さえ」が発生す
る。即ち、図14(C)では、杼の収容されている左側
の杼箱の側から順にA色、B色の柄が並んでいる。杼の
動作は、先ず、杼箱に近いA色の柄に対応する杼aが上
段の杼箱に入り、次いで、杼箱から離れたB色の柄に対
応する杼bが下段の杼箱に入るという順で行われてい
る。この状態で、杼aが杼箱から右側へ出ると、杼aに
巻かれたA色の横糸が、その柄の左端でB色の横糸を押
さえ込むことになる。即ち、A色の柄の左端、即ち、杼
箱に近い側の端縁において、A色の横糸による「押さ
え」が発生する。そうなると、杼bが走ったとき、杼b
に巻かれたB色の横糸に2(X+Y)の浪費が生じる。
XはA色の柄とB色の柄との間隔、YはA色の柄の口方
向の長さである。このように、これから走ろうとする杼
の下に、以前に走った杼がある場合は、これから走ろう
とする杼に対応する柄の、杼箱に近い側の端縁が、以前
に走った杼に対応する柄の、杼箱に近い側の端縁よりも
近くに有る状況のときに、「押さえ」が発生する。
【0049】第4のケース、即ち、逆方向で、これから
走ろうとする杼の下に、以前に走った杼がある場合は、
図14(D)に示すように、左右は逆転するものの、第
3のケースと同様に、これから走ろうとする杼に対応す
る柄の、杼箱に近い側の端縁が、以前に走った杼に対応
する柄の、杼箱に近い側の端縁よりも近くに有る状況の
ときに、「押さえ」が発生する。「押さえ」によって生
じる余分の糸量は2(X+Y)となる。XはA色の柄と
B色の柄との間隔、YはA色の柄の口方向の長さであ
る。A色の柄の右端は、右側の杼箱に対して、B色の柄
の右端よりも近くにある。
【0050】第5のケース、即ち、以前に走った杼が、
これから走ろうとする杼とは反対の側の杼箱に収容され
ている場合は、図14(E)に示すような状況になる
と、「押さえ」が発生する。即ち、図14(E)では、
これから走ろうとする杼aが左側の杼箱に収容されてお
り、以前に走った杼bは右側の杼箱に収容されている。
柄は左から右へB色、A色の順で間隔を空けて並んでい
る。この状態で、杼aが杼箱から出ると、A色の横糸が
A色の柄の左端でB糸の横糸を押さえ込む。このよう
に、以前に走った杼が、これから走ろうとする杼とは反
対の側の杼箱に収容されている場合は、これから走ろう
とする杼が収容されている杼箱に対し、その杼に対応す
る柄の左端が、以前に走った杼に対応する柄の右端より
も遠方にある状況のときに、「押さえ」が発生する。
「押さえ」によって生じる余分の糸量は2Xとなる。X
はA色の柄とB色の柄との間隔である。
【0051】第6のケース、即ち、逆方向で、以前に走
った杼が、これから走ろうとする杼とは反対の側の杼箱
に収容されている場合は、図14(F)に示すように、
左右は逆転するものの、第5のケースと同様に、これか
ら走ろうとする杼が収容されている杼箱に対し、その杼
に対応する柄の右端が、以前に走った杼に対応する柄の
左端よりも遠方に離れて位置する状況のときに、「押さ
え」が発生する。「押さえ」によって生じる余分の糸量
は、この場合も2Xとなる。
【0052】以上が横糸干渉の発生条件であるが、「引
っ掛かり」については、今一つ考慮すべきことがある。
それは、「引っ掛かり」の発生位置が、必ずしも一義的
には決まらないということである。換言すれば、「引っ
掛かり」が生じる第1および第2のケースの場合、前記
説明では、以前に走った杼の横糸は、これを引っ掛けた
横糸には引っ張られないと仮定したが、現実問題として
は、以前に走った杼の横糸が、これを引っ掛けた横糸に
引っ張られる可能性もあるのである。即ち、図14
(A)(B)では、A色の横糸がB色の横糸に引っ掛か
ったとき、B色の横糸がA色の横糸によって引っ張られ
る場合も考えられるわけである。その場合は、「引っ掛
かり」の位置が変わり、これに伴って、「引っ掛かり」
による横糸の消費量が変わってくる。これは、「引っ掛
かり」が生じた横糸の力関係、即ち、横糸の太さ、「引
っ掛かり」に関係する横糸の本数等や、更には、柄の間
隔、杼箱の高低差等によって決まる。例えば、太い横糸
ほど他の横糸に影響を及ぼし、また、金糸、銀糸は比較
的力が強く、他の糸に影響され難い。更に、柄の間隔が
広い場合は、図15に示すように、横糸が互いに引き合
う傾向が強い。よって柄の間隔が広いときは、A色の横
糸が2×X/2、B色の横糸が2×X/2となる場合も
ある。「押さえ」についても、図16に示すように、押
さえた横糸が輪になって完全には押さえきれない場合が
あり、この場合も横糸の干渉位置が変わる。このような
ことから、横糸の干渉位置を厳密に特定する場合は、干
渉位置の偏位を更に考慮する必要がある。
【0053】第9工程の横糸干渉の定量的検査では、第
1段階として、第8工程で組まれた杼の具体的な交換に
対し、以上のような横糸干渉の発生条件から、横糸の干
渉の有無が判定される。横糸の干渉がないと判定された
ときは、次の所定数の越に対して、第5工程以降が実行
される。
【0054】横糸の干渉があると判定されたときは、第
2段階として、その干渉位置が口方向について特定され
る。特定された干渉位置は、第5工程で得た口メートル
に照合され、「引っ掛かり」とか「押さえ」といった横
糸の干渉によって生じる余分の糸量の計算に使用され
る。計算された余分の糸量は、合計されて、第2工程で
入力された初期条件から得た許容範囲と比較される。横
糸の干渉によって生じる余分の糸量が、その許容範囲内
であれば、次の所定数の越に対して、第5工程以降が実
行される。
【0055】横糸の干渉によって生じる余分の糸量が、
その許容範囲外のときは、第3段階に移行する。ここで
は、第8工程で組み立てられた杼の具体的な交換が変更
されると共に、必要に応じて、第7工程で決定された杼
箱が変更される。杼箱が変更された場合は、メートルが
引き直される。変更された条件に対しては、第9工程の
横糸干渉の定量的検査が実行される。そして、横糸の干
渉によって生じる余分の糸量が、その許容範囲内に収ま
るように、変更および検査が繰り返され、許容範囲内に
収まった時点で、次の所定数の越に対して、第5工程以
降が実行される。
【0056】横糸の干渉によって生じる余分の糸量を、
その許容範囲内に集束させるのが不可能と判定されたと
きは、第4段階として、第3工程で入力された杼の交換
の基本的形態の変更が、コンピューターの画面に表示さ
れる。この表示に従って、作業者は、杼の基本的な動作
関係を、現在処理中の越に係わる部分について変更す
る。杼の基本的な動作関係が変更されたときは、それに
対して、第4工程以降が再度実行される。
【0057】以上のようにして、指示された所定数の越
に対して、横糸の干渉を避ける方向で、杼の交換が自動
的に組み立てられると共に、組み立てられた交換に対し
て、横糸の干渉の定量的検査が自動実施され、横糸の干
渉に伴う糸損失が許容範囲内に収められる。これが全て
の越に対して行われることにより、横糸が定量的に管理
され、その損失が少ない交換が完成される。しかも、完
成した交換は、織りの優れた出来映えを保証するものと
なる。というのは、複雑な交換がコンピューターで自動
的に組まれ、作業者の負担が軽減されることに加え、横
糸が定量的に管理されるので、杼の基本的な動作関係を
決める工程で、糸量にそれほど気をつかう必要がなくな
り、織りの出来映えに専念できるようになるからであ
る。
【0058】なお、本発明は、上記実施例に限定される
ものではない。例えば、杼箱の決定条件、横糸の干渉を
避ける杼の動作の基本条件、横糸干渉の発生条件等の各
種条件は、より合理的なもの、より精密なものなどに適
宜変更することができる。例えば、糸量の許容範囲は、
高価な金ハクの許容範囲を小さくするというように、横
糸の種類によって変えることができる。工程について
は、図17に示すように、特定数の越に対して読み込ま
れたデータが、1回目のものか2回目以降のものかを判
断する工程を介在させ、2回目以降のものの場合は、先
に組み立てられた交換を利用し、これを一部変更する程
度の処理に止めるようなこともできる。これは、杼の抜
き差し回数を出来るだけ少なくして、製織を簡単にする
上で有効である。また、コンピューターの負担を軽減す
る意味合いで、最も複雑な柄の部分について、作業者が
最初のメートルを作成するようなこともできる。
【発明の効果】以上、本発明にかかる有杼織における杼
の交換の自動組立法による場合には、杼の交換が自動的
に組み立てられるので、その組立に要する労力が著しく
軽減される。その上、交換の自動組立に、横糸の干渉を
避ける基本条件が用いられ、且つ、組み立てられた交換
に対して、横糸の干渉に伴う消費が定量的に検査される
ので、横糸の節約された交換が出来上がる。従って、出
来上がった交換から、糸量の少ない低価格で軽量な織物
が製造される。また、交換の組立に使用されるデータか
ら、必要な糸量が正確に予測できる。更に、横糸の節約
された交換が自動的に組み立てられるので、杼の交換の
基本的な形態の指示では、糸量による制約が軽減され、
織物の仕上がりを優先させた作業ができるようになるた
めに、織物の品質も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有杼織の基本を示す模式図である。
【図2】杼箱の模式図である。
【図3】意匠図の模式図である。
【図4】横糸の干渉を示す模式図で、(A)は「引っ掛
かり」、(B)は「押さえ」を示している。
【図5】杼の基本的な動作関係の相違による織りの違い
を示す模式図で、(A)は「戻し」の場合、(B)は
「追い掛け」の場合を示している。
【図6】本発明にかかる杼の交換の自動組立法の具体的
手順を示すフローチャートである。
【図7】横糸の使用範囲の求め方を示す模式図である。
【図8】柄の相互関係を示す模式図である。
【図9】杼箱の決め方を示す模式図である。
【図10】横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を示
す模式図である。
【図11】横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を
「戻し」について示す模式図である。
【図12】横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を
「追い掛け」について示す模式図である。
【図13】杼の交換の組立法を説明するための模式図で
ある。
【図14】杼と柄、杼箱の位置関係に基づく横糸干渉の
発生条件を示す模式図である。
【図15】「引っ掛かり」を生じた横糸が相互に引き合
う状況を示す模式図である。
【図16】「押さえ」が不完全な状況を示す模式図であ
る。
【図17】本発明にかかる杼の交換の自動組立法の他の
具体的手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】 A〜J 色 a〜u 杼 〜 杼の動作順序
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図17
【補正方法】変更
【補正内容】
【図17】 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年2月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図15】
【図16】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1越、1口を基本単位として表示した意
    匠図に対して、予め杼の基本的な動作関係を指示した
    後、所定数の越に対して、指示された杼の基本的な動作
    関係を基に、横糸の干渉を避ける杼の動作の基本条件を
    用いて、杼の具体的な交換を組み、更に、組まれた杼の
    具体的な交換に対して、杼と柄、杼箱の位置関係に基づ
    く横糸干渉の発生条件を用いて、横糸の干渉に伴って生
    じる余分の糸量を定量的に検査し、検査データが許容範
    囲内に収まるように、杼の具体的な交換を変更しつつ、
    全ての越における杼の交換を組み立てて行くことを特徴
    とする有杼織における杼の交換の自動組立法。
  2. 【請求項2】 1越、1口を基本単位として表示した意
    匠図に対して、予め杼の基本的な動作関係を指示した
    後、所定数の越に対して、指示された杼の基本的な動作
    関係を基に、意匠図の情報、杼の数、杼箱の数、杼箱の
    許容移動段数および横糸の干渉を避ける杼の動作の基本
    条件を用いて、杼の具体的な交換を組み、更に、組まれ
    た杼の具体的な交換に対して、杼と柄、杼箱の位置関係
    に基づく横糸干渉の発生条件を用いて、横糸の口方向に
    おける干渉位置を特定すると共に、特定された干渉位置
    より、横糸の干渉に伴って生じる余分の糸量を計算し、
    計算された糸量が許容範囲内のときは、次の所定数の越
    に対して杼箱の決定と杼の具体的な交換の組立とを行
    い、計算された糸量が許容範囲外のときは、その糸量が
    許容範囲内に収まるように、杼の具体的な交換を変更
    し、その変更によっても、計算された糸量が許容範囲内
    に収まらないときは、当初に決めた杼の基本的な動作関
    係を変更することを特徴とする有杼織における杼の交換
    の自動組立法。
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