JPH07233246A - ポリエステルの製造方法 - Google Patents

ポリエステルの製造方法

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JPH07233246A
JPH07233246A JP6084651A JP8465194A JPH07233246A JP H07233246 A JPH07233246 A JP H07233246A JP 6084651 A JP6084651 A JP 6084651A JP 8465194 A JP8465194 A JP 8465194A JP H07233246 A JPH07233246 A JP H07233246A
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Shigeru Iimuro
茂 飯室
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 環状エステル化合物の開環重合によるポリエ
ステルの製造方法であって、ポリエステルの分子量を所
望の範囲に精度良く制御し得るポリエステルの製造方法
を提供する。 【構成】 反応系に分子量調節剤として水酸基化合物を
添加し、環状エステル化合物を開環重合させてポリエス
テルを製造する際に、原料環状エステル化合物中に含ま
れる遊離カルボン酸の量を予め定量し、その定量値に基
づいて反応系に添加する水酸基化合物の量を定めること
を特徴とするポリエステルの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、環状エステル化合物の
開環重合によるポリエステルの製造方法に関する。詳し
くは、環状エステル化合物を開環重合して、ポリグリコ
ール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリプロピオ
ラクトン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン等
のポリヒドロキシカルボン酸及びこれらの共重合体等の
ポリエステルを所望の分子量に再現性よく安定して製造
し得るポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプ
ロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリブチロラクト
ン、ポリバレロラクトン等のポリヒドロキシカルボン酸
及びこれらの共重合体等のポリエステルは、ラクチド、
グリコリド、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合
物の開環重合により得られる。これらのポリエステル
は、水分、酵素等により容易に分解されるため、生分解
性ポリマーとして注目されている。
【0003】特に、ラクチド、グリコリドまたはこれら
の混合物の開環重合によって作られるポリ乳酸、ポリグ
リコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体等は、生体内
で極めて容易に分解・吸収されるため生体吸収性ポリマ
ーとも呼ばれ、外科用縫合糸、徐放性マイクロスフィア
薬剤のマトリックス樹脂、接骨用吸収性プレート等の医
療用素材として使用されている。また、医療用以外の素
材としても、例えば、フィルム、シート等の各種成形材
料への応用が試みられている。
【0004】いずれの場合においても、その用途に応じ
た機械的強度、加水分解性等を有するものが望まれ、所
定の期間は一定の機械的強度等を保持し、その後は速や
かに分解することが必要である。これらの特性を満足す
るためには、ポリマーの共重合組成等が重要であるばか
りでなく、ポリマーの分子量が所望の値に制御されてい
ることが重要である。
【0005】環状エステル化合物の合成方法として種々
の方法が公知である。一般的には目的とする環状エステ
ル化合物に対応するヒドロキシカルボン酸を脱水閉環す
る方法が用いられる。すなわち、例えば、ラクチドは乳
酸を、グリコリドはグリコール酸をそれぞれ減圧下に加
熱して脱水縮合させ、乳酸オリゴマーまたはグリコール
酸オリゴマーとした後、さらに加熱して閉環させて環状
二量体とする。得られた環状エステル化合物は、通常、
酢酸エチルなどの溶媒を用いて再結晶することにより精
製され、精グリコリドまたは精ラクチド等の精環状エス
テル化合物とされる。
【0006】これらの環状エステル化合物を開環重合し
て、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸−乳酸
共重合体等のポリエステルを製造する方法は、例えば、
特開昭63−017929号公報、米国特許4,85
9,763号公報或いは米国特許5,041,529号
公報に開示されている。該方法は、オクタン酸第一錫等
の触媒及びラウリルアルコール等の高級脂肪族アルコー
ルや乳酸等のヒドロキシカルボン酸等の存在下、グリコ
リド及び/またはラクチドを加熱し、開環重合する方法
である。
【0007】また、米国特許3,442,871号公報
には、触媒として所定量の塩化第1スズと、開始剤(あ
るいは別名重合調節剤)として非ベンゾノイド不飽和が
なく、アルコール性水酸基以外の反応基をもたないアル
コール類との存在下でグリコリドを重合させてポリグリ
コール酸を製造する方法が開示されている。
【0008】環状エステル化合物を開環重合してポリエ
ステルを得ようとする場合、生成するポリエステルの分
子量を所望の値に制御することは従来から非常に困難で
あるとされてきた。上記米国特許3,442,871号
公報には、開始剤の量を調節することで、生成ポリマー
の粘度、すなわち分子量を調節する旨の記載がある。し
かし、該公報でいう分子量(粘度)の調節とは、実施例
からもわかるように、開始剤を多く用いれば分子量の低
いポリマーが生成し、開始剤を少なく用いれば分子量の
高いポリマーが生成するという程度のものであって、所
望の分子量を有するポリマーを常に安定して得ることが
できるわけではない。
【0009】すなわち、本発明者らが注意深く追試した
ところ、同一の触媒量、同一の開始剤量を用い、同一の
反応温度、反応時間において数バッチの重合反応を試み
たが、得られたポリマーの分子量は有意にばらつき、中
には紡糸等の加工に供するのには支障があるものもいく
つか生成した。得られるポリマーの分子量が一定でない
ということは、本分野のポリマー製造において最も重要
な要件である、「狙った分子量のポリマーを製造する」
という、いわゆるターゲッティングが不可能であること
を意味している。触媒量、開始剤量、反応温度、反応時
間、転化率等を一定の条件に制御にしても、一定の分子
量のポリマーが得られないのは、この重合反応がモノマ
ーである環状エステル中の不純物に大きく影響されるか
らである。
【0010】重合反応に影響を及ぼす不純物として、水
分、遊離カルボン酸類、金属類、アルデヒド類等が挙げ
られる。これらの内、金属類、アルデヒド類等の不純物
が重合反応に及ぼす影響は比較的小さい上に、近年の精
製技術の進歩により重合反応に影響しない程度の量まで
除去することが容易になってきた。また、モノマー中の
水分も、重合直前の精製・乾燥工程において除去するこ
とが容易となってきた。一方、モノマー中に含有される
遊離カルボン酸が重合反応に与える影響は大きい。環状
エステル化合物中に含まれる遊離カルボン酸として、環
状エステル化合物を製造する際に用いたヒドロキシカル
ボン酸(例えば、ラクチドの場合には乳酸、グリコリド
の場合にはグリコール酸)、環状エステル化合物の中間
生成物である直鎖状のヒドロキシカルボン酸オリゴマ
ー、および、環状エステル化合物が何らかの原因により
加水分解されて生成するヒドロキシカルボン酸等の遊離
カルボン酸が挙げられる。
【0011】本発明者らの知見によれば、例えば数万〜
数十万程度の分子量のポリエステルを製造する場合、わ
ずか数十〜100ppm前後の遊離カルボン酸の存在に
より生成ポリエステルの分子量が大きく変わることがわ
かっている。しかしながら、モノマー中の遊離カルボン
酸類を完全に除去することは現在のところ不可能である
といえる。
【0012】環状エステル化合物の精製には従来から種
々の工夫がなされてきた。例えば、特開昭59−148
777号公報には、粗グリコリドを加熱融解させて攪拌
下100℃以上、沸点以下に保持された有機溶媒中に滴
下してグリコリド懸濁液とし、次いでこの懸濁液を0〜
20℃に冷却して、分離、乾燥することを特徴とするグ
リコリドの精製方法が開示されている。また、例えば、
特開昭62−270574号公報には、グリコリドを有
機溶剤に溶かして得られた溶液に、アルミナを加えてス
ラリーを形成して1〜60分間攪拌し、次いで、濾過し
てアルミナを除去した後、溶媒を蒸発させて除去するこ
とを特徴とするグリコリドの精製方法が開示されてい
る。
【0013】しかしながら、これらの公知の方法に従っ
てグリコリド等の精製を数回繰り返しても、重合に影響
を与えない程度までカルボン酸等の不純物を完全に除去
することは困難である。しかも当然のことながら、精製
の程度により、バッチごとに精環状エステル化合物に含
まれる不純物の量にばらつきが生じる。さらに、特にラ
クチド、グリコリド等の易加水分解性の環状エステル化
合物の場合、たとえ高純度に精製されたものでものであ
っても、保管中に環境中の水分(湿気)により加水分解
されてヒドロキシカルボン酸等の遊離カルボン酸を生成
するので純度が低下するのが通常である。しかもその保
管中のヒドロキシカルボン酸の生成量は全く予想できな
い。
【0014】従って、環状エステル化合物を開環重合さ
せて高分子量のポリエステルを合成しようとする場合、
生成ポリエステルの分子量に予想できないばらつきが生
じることとなり、工業的レベルでは大きな問題となって
いた。所望の分子量を有するポリエステルを製造するた
めには、モノマーである環状エステル化合物を使用する
直前に原料環状エステル化合物中に含まれるヒドロキシ
カルボン酸等のカルボン酸量を知ることが重要である。
しかしながら、特に易加水分解性の環状エステル化合物
中の遊離カルボン酸を正確にかつ簡便に定量する方法は
未だ知られていない。
【0015】日本工業規格(JIS)K−0070に規
定される化学製品の酸価または水酸基価の試験方法を適
用して、環状エステル化合物に含まれるカルボン酸量を
定量することができる。すなわち、酸価の試験方法を適
用する場合は、指示薬としてフェノールフタレインが加
えられたエチルエーテル/エチルアルコール混合液10
0cm3に試料を完全に溶解した後、0.1N水酸化カ
リウム/エタノール溶液で滴定する方法である。また、
水酸基価の試験方法を適用する場合は、試料を無水酢酸
でアセチル化した後、フェノールフタレインを指示薬と
して0.5N水酸化カリウム/エタノール溶液で滴定す
る方法である。
【0016】しかしながら、これらの方法はいずれも、
加水分解し易い環状エステル化合物中の極微量の遊離カ
ルボン酸の定量には適さない。すなわち、酸価の測定の
場合、測定溶媒中に含まれる水分により環状エステル
化合物が加水分解して、カルボン酸が経時的に増加する
ため滴定値が一定とならない。環状エステル化合物中
の微量(数百ppm程度)の遊離カルボン酸を定量する
ためには、試料10〜20gを溶媒に溶解する必要があ
り、溶解度が小さいため溶解操作が困難である、等の問
題点がある。また、水酸基価測定の場合も同様に測定中
に環状エステル化合物が加水分解し易いこと、無水酢酸
とエステル交換反応を起こすこと、等の問題があり精度
のよい定量は望めない。
【0017】特開平1−146924号公報には、1m
g当量/kgジラクチドより小さい遊離酸含有率を持っ
たメソラクチドモノマーを、それ自体公知の方法で、所
望により1ミリ当量/kgより小さい遊離酸含有率を持
った他のモノマー又はジラクチドと共に重合することを
特徴とするポリマーラクチドの製造方法が開示されてい
る。そして、該公報には、ラクチド中の不純物を定量す
る方法として次の方法が記載されている。
【0018】該定量方法は、ラクチドを無水メタノール
に溶解し、フェノールレッドを指示薬として0.01規
定のカリウムメトキシド/無水メタノールで滴定する方
法である。しかしながら、この方法は、0.01規定
以上の高濃度の滴定液(カリウムメトキシド/無水メタ
ノール)を使うと、滴定液一滴未満の滴定精度がでない
(例えば、遊離カルボン酸100ppmと50ppmと
の差が検出できない)、逆に低濃度の滴定液では指示
薬の呈色が薄く、液色が微妙に変化するため滴定終点の
判定が困難である、溶媒中あるいは雰囲気中に僅かに
含まれる水分により環状エステル化合物が加水分解され
て酸を生じるため、滴定中に経時的に測定値が変動する
等の理由により、極微量の遊離カルボン酸を再現性良く
定量することが困難であった。
【0019】また、特開昭60−144325号公報に
は、融点が81℃以上であり、かつ、200℃で3分間
加熱溶融した溶融液のAPHA値が150以下であるグ
リコリドを原料として選択するポリグリコール酸の製造
方法が記載されている。しかし、該方法では、使用しよ
うとするグリコリドが、それを重合することより少なく
とも0.9以上の固有粘度を有するポリグリコール酸を
得るのに適するか否かを判定することはできるが、グリ
コリドの融点とAPHA値のみでポリグリコール酸の分
子量を所望の値にコントロールすることは到底不可能で
あった。
【0020】因に、本発明者らは、遊離酸の含有量が1
mg当量/kg未満であるラクチド、または、融点が8
1℃以上であり、且つ、APHA値が150以下である
グリコリドを開環重合してポリ乳酸またはポリグリコー
ル酸の製造を試みたが、依然として得られたポリエステ
ルの分子量はバッチごとにかなりのバラツキを示し、所
定の範囲に制御された分子量を有するポリエステルは得
難く、必ずしも満足できる方法ではなかった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、精製さ
れ密封して貯蔵された場合であっても、環状エステル化
合物は微量の水分等により開環して新たな遊離カルボン
酸等の遊離酸を生成し易い性質を有する。そして、微量
であっても、環状エステル化合物中に遊離酸等が不純物
として含まれると所望の分子量を有するポリエステルを
安定して製造することが困難である。本発明の目的は、
かかる問題を解決することであり、環状エステル化合物
の開環重合によるポリエステルの製造方法であって、ポ
リエステルの分子量を所望の範囲に精度良く制御し得る
ポリエステルの製造方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
を解決すべく鋭意検討した結果、環状エステル化合物中
に不純物として含まれる遊離カルボン酸の量を特定の方
法により測定して、その測定値に基づいて反応系に添加
する水酸基化合物の量を定めることにより、上記目的が
達成し得ることを見いだし、本発明を完成するに至っ
た。
【0023】すなわち、本発明は、反応系に水酸基化合
物を添加し、環状エステル化合物を開環重合させてポリ
エステルを製造する方法であって、環状エステル化合物
中に含まれる遊離カルボン酸の量に基づいて反応系に添
加する水酸基化合物の量を定めることを特徴とするポリ
エステルの製造方法である。
【0024】本発明の特徴は、予め、原料である環状エ
ステル化合物中に不純物として含まれる遊離カルボン酸
の量を定量し、その定量値に基づいて反応系に添加する
水酸基化合物の量を定める点にある。そして、環状エス
テル化合物中に不純物として含有される遊離カルボン酸
の量を定量する好ましい方法として、環状エステル化合
物を親水性有機溶媒と水との混合溶媒に溶解した溶液の
電気伝導度を測定する方法を提供するものである。
【0025】かかる特徴を有する方法に従って環状エス
テル化合物を開環重合することにより、原料である環状
エステル化合物に含まれる遊離カルボン酸量がバッチ毎
に変動していても、所望の範囲内に精度よく制御された
分子量を有するポリエステルを安定して製造することが
できるものである。
【0026】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明に原料として用いる環状エステル化合物として、グ
リコリド、ラクチド、β−プロピオラクトン、γ−ブチ
ロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクト
ン、3−メチル−1,4−ジオキサ−2,5−ジオン、
p−ジオキサノン、モリホリンジオン、モリホリン等、
およびこれらの混合物が挙げられる。これらの環状エス
テル化合物のうち、グリコリドおよびラクチドは、グリ
コール酸または乳酸を脱水重縮合し、次いで熱分解する
ことにより調製される当該ヒドロキシカルボン酸の環状
二量体である。ラクチドには、D−乳酸の環状二量体で
あるD−ラクチド、L−乳酸の環状二量体であるL−ラ
クチド、D−乳酸とL−乳酸が環状二量化したメソラク
チド、及びD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合
物であるDL−ラクチドがある。本発明においてはこれ
らいずれのラクチドも原料として使用できる。
【0027】本発明に用いる環状エステル化合物は、酢
酸エチルなどの溶媒を用いて再結晶することにより精製
された精環状エステル化合物であることが好ましい。
【0028】また、本発明に用いる環状エステル化合物
は、重合反応に供される前に可能な限り水分を除去され
ていることが好ましい。水分の含有量が多いとポリエス
テルの分子量の制御が困難となる傾向を示す。そのた
め、環状エステル化合物中の水分は0.5重量%以下で
あることが好ましい。さらに好ましくは1000ppm
(重量)以下である。特に、分子量が10万以上である
ような高分子量を有するポリエステルの分子量を精度良
く制御するためには、環状エステル化合物中の水分は1
00ppm(重量)以下であることが好ましい。環状エ
ステル化合物中の水分を除去する方法は、脱気乾燥、加
熱乾燥等の公知の方法を用いることができる。
【0029】本発明において、触媒を用いることが好ま
しい。触媒として、塩化錫、酸化錫、弗化錫、テトラフ
ェニル錫、オクタン酸第一錫、酢酸錫、ステアリン酸錫
及びその類似物の錫塩、さらには、酸化亜鉛、三酸化ア
ンチモン、三弗化アンチモン、硝酸ビスマス、酸化鉛、
ステアリン酸鉛、三弗化ホウ素、テトラエチルアンモニ
ウム臭化物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ト
リブチルスチビン、トリブチルアルシン、トリブチルホ
スフィン及びその類似物等が挙げられる。これらの中
で、無毒性安定剤として米国FDAで承認されているオ
クタン酸第一錫を用いることが好ましい。触媒の使用量
は、環状エステル化合物の種類、開環重合の温度、所望
する反応時間、転化率等により変わるが、通常、環状エ
ステル化合物を80〜280℃の温度範囲で開環重合さ
せる場合には、環状エステル化合物に対し0.001〜
0.5重量%である。
【0030】本発明において、水酸基化合物とは、分子
構造中に水酸基を有する化合物のことであり、例えば、
アルコール類、ヒドロキシカルボン酸類、糖類等が挙げ
られる。アルコール類としては、メタノール、エタノー
ル、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、アミル
アルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、
デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルア
ルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコー
ル、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプ
タデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシ
ルアルコール等の脂肪族飽和アルコール、シクロペンタ
ノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シ
クロオクタノール等の脂環式アルコール類、不飽和アル
コール、ジオール、トリオール等のポリオール類等が挙
げられる。これらのアルコール類の内、炭素数12〜1
8を有する一価の直鎖状飽和脂肪族アルコールが好まし
く使用される。具体的には、ラウリルアルコール、ミリ
スチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアル
コール等が例示され、最も好ましくはラウリルアルコー
ルである。
【0031】ヒドロキシカルボン酸として、グリコール
酸、乳酸、ヒドロキシプロパン酸、ヒドロキシカプロン
酸、及びこれらの線状オリゴマーが例示される。線状オ
リゴマーは通常2〜10量体が用いられる。ヒドロキシ
カルボン酸の内、グリコール酸または乳酸が好ましい。
【0032】また、糖類等として、グルコース、マンノ
ース、アロース、アルトロース、タロース、アラビノー
ス、リボース、キシロース、エリトロース、フルクトー
ス、グリセロース等の単糖類、シュクロース、セルビオ
ース、デキストリン、シクロデキストリン、ラフィノー
ス等のオリゴ糖類、アミロース、デキストラン、デンプ
ン、プルラン、セルロース、ガラクタン等の多糖類、及
びデオキシリボース等のデオキシ糖類、グルコサミン等
のアミノ糖類、チオグルコース等のイオウ糖類、ストレ
プトース等の分岐糖類、ウロン酸等の酸性糖類、ポリウ
ロン酸類、りん酸化多糖類、ムコ多糖類、ヘテロ多糖
類、メチルグルコシド、ジキタリス、ヌクレオチド、ヌ
クレオシド等の配糖体等が挙げられる。これら糖類の
内、多糖類、配糖体が好ましい。
【0033】本発明は、原料である環状エステル化合物
中に不純物として含まれる遊離カルボン酸の量を後述す
る方法により定量し、その定量値に基づいて反応系に添
加する水酸基化合物の量を定めることにより、得られる
ポリエステルの分子量を所望の範囲に制御するものであ
る。
【0034】上記制御方法の一例を示すと次の方法が例
示できる。すなわち、分子量がMaであるポリエステル
を製造することを目標として、他の重合条件を一定条件
に保ち、Ha(モル)の水酸基化合物を反応系に添加し
て、遊離カルボン酸の含有量がKa(モル)である環状
エステル化合物を開環重合した場合には、分子量がMb
(Ma>Mb)であるポリエステルが得られる。得られ
るポリエステルの分子量Mbは、目標とする分子量Ma
よりも(Ma−Mb)だけ低いものとなる。この分子量
差(Ma−Mb)は、原料である環状エステル化合物中
に含まれる遊離カルボン酸の含有量Ka(モル)の影響
である。
【0035】従って、本発明においては、原料である環
状エステル化合物中に含まれる遊離カルボン酸の量Ka
(モル)を予め後述する特定の方法により定量し、得ら
れた遊離カルボン酸の含有量Ka(モル)を水酸基化合
物の量Hb(モル)に換算し、反応系に添加すべき水酸
基化合物の量を(Ha−Hb)(モル)に定める。該調
節により、目標どおりの分子量Maを有するポリエステ
ルを安定して製造することが可能となる。
【0036】本発明は上記のように、反応系に添加すべ
き水酸基化合物の量を原料である環状エステル化合物中
に含まれる遊離カルボン酸の含有量に基づいて定める方
法であるから、上記HaおよびHbがHa≧Hbの関係
にあることが好ましい。かかる点を考慮すると本発明に
用いる環状エステル化合物の純度は高ければ高い程好ま
しい。すなわち、遊離カルボン酸の含有量が少なければ
少ない程好ましい。
【0037】具体的には、目標とするポリエステルの分
子量が10万未満の場合は、遊離カルボン酸の含有量が
100ミリ当量/kg以下(以下、meq/kgとい
う)である環状エステル化合物を原料として用いること
が好ましい。目標とするポリエステルの分子量が10万
〜20万の場合は、遊離カルボン酸の含有量が50me
q/kg以下である環状エステル化合物を原料として用
いることが好ましい。また、目標とするポリエステルの
分子量が20万を超える場合は、遊離カルボン酸の含有
量が30ミリmeq/kg以下である環状エステル化合
物を原料として用いることが好ましい。
【0038】上記のように、原料である環状エステル化
合物中に含まれる遊離カルボン酸の量に基づいて、反応
系に添加する水酸基化合物の量を定めることにより、得
られるポリエステルの分子量を精度よく制御することが
できる。ポリエステルの分子量の制御の精度はポリエス
テルの種類、モノマーの乾燥度、重合条件によっても変
わるが、例えば、所望のポリエステルの分子量が3万程
度なら±1000程度、所望の分子量が10万程度なら
±2500程度の範囲に制御することが可能である。さ
らに具体的には、ポリエステルがポリグリコール酸やポ
リ乳酸の場合では、その分子量を固有粘度で表した場
合、目標固有粘度に対し、±0.02以内に制御するこ
とが可能である。
【0039】本発明において、反応系に添加する水酸基
化合物の量は、環状エステル化合物中の遊離カルボン酸
量に基づいて、環状エステル化合物に対して0.01〜
10モル%の範囲において適宜選択される。例えば、ポ
リエステルの所望分子量が5万〜30万である場合は、
反応系に添加する水酸基化合物の量は環状エステル化合
物に対して0.01〜0.5モル%の範囲において選択
される。
【0040】本発明を適用することにより製造されるポ
リエステルの分子量範囲には特に制限はなく、1万〜1
00万程度の広範囲の分子量を有するポリエステルの製
造方法として適用し得る。好ましくは、3万〜50万程
度の範囲の分子量を有するポリエステルの製造方法とし
て適用し得る。さらに好ましくは、5万〜30万程度で
ある。
【0041】次いで、環状エステル化合物中に不純物と
して含まれる遊離カルボン酸の定量方法について説明す
る。本発明において、遊離カルボン酸の定量方法として
好ましく使用される方法は、環状エステル化合物を親水
性有機溶媒と水との混合溶媒に溶解した溶液(以下、環
状エステル化合物溶液という)の電気伝導度を測定し、
その測定値から遊離カルボン酸を定量する方法である。
【0042】上記遊離カルボン酸の定量方法において、
親水性有機溶媒とは、水を1重量%以上溶解し得る有機
溶媒のことであり、例えば、メタノール、エタノール、
1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノー
ル、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレン
グリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のア
ルコール類、ジオール類、ポリオール類、アセトン、メ
チルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステ
ル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテ
ル類等、およびこれらの混合液が挙げられる。また、ポ
リプロピレングリコールやポリエチレングリコール等の
常温〜80℃の温度で液体状となり得る水溶性オリゴマ
ーや水溶性ポリマーも挙げられる。
【0043】本発明で用いる親水性有機溶媒は必ずしも
対象とする環状エステル化合物を良好に溶解し得るもの
である必要はないが、好ましくは環状エステル化合物を
容易に溶解するものである。本発明で好ましく用いられ
る親水性有機溶媒は、メタノール、エタノール、ジオキ
サン、アセトン、メチルエチルケトンである。定量の対
象となる環状エステル化合物がグリコリドまたはラクチ
ドである場合、該環状エステル化合物の溶解性、電気伝
導度の測定の容易さの点で、メタノールまたはエタノー
ルが好ましい。
【0044】親水性有機溶媒に混合する水の量は、親水
性有機溶媒100重量部に対して、1〜50重量部であ
ることが好ましい。水の量が多いと環状エステル化合物
が加水分解されてヒドロキシカルボン酸に変わる速度が
大きくなり、もともと環状エステル化合物が含有してい
た遊離カルボン酸の量を正確に知ることは困難となる。
また、水の量が少ないと溶媒の電気伝導が十分でないた
め遊離カルボン酸の定量感度が低くなり好ましくない。
これらの関係を考慮すると親水性有機溶媒と水との混合
割合が上記範囲が好ましい。
【0045】混合溶媒の組成は、環状エステル化合物の
種類により変えることが好ましい。例えば、環状エステ
ル化合物がグリコリドである場合、親水性有機溶媒10
0重量部に対して、水1〜25重量部であることが好ま
しく、さらに好ましくは水3〜15重量部である。環状
エステル化合物がラクチドである場合、親水性有機溶媒
100重量部に対して、水1〜40重量部であることが
好ましく、さらに好ましくは水3〜30重量部である。
また、環状エステル化合物がε−カプロラクトンである
場合、水1〜50重量部であることが好ましい。
【0046】親水性有機溶媒と水とぼ混合溶媒の電気伝
導度が高いと、極微量の遊離カルボン酸量を精度良く定
量する事が困難になる。そのため、環状エステル化合物
を溶解する前の親水性有機溶媒と水との混合溶媒の電気
伝導度値は、50μS/cm未満であることが好まし
い。特に好ましくは10μS/cm未満である。電気伝
導度が10μS/cm未満の親水性有機溶媒と水との混
合溶媒を調製するには、使用する親水性有機溶媒および
水はいずれもできる限り純粋のものを使用することが好
ましい。特に酸やアルカリ等の不純物は電気伝導度を増
加させるので蒸留やイオン交換等の公知の方法により除
去しておくことが好ましい。
【0047】親水性有機溶媒と水との混合溶媒に溶解す
る環状エステル化合物の量が少ないと純度の高い試料、
すなわち、含有する遊離カルボン酸量が少ない試料にお
いて電気伝導度の検出下限を超えたり、測定精度が低下
する傾向を示し、逆に多いと混合溶媒に溶け難くなり、
精度よく遊離カルボン酸を定量することが困難となる。
かかる点を考慮すると、親水性有機溶媒と水との混合溶
媒に溶解する環状エステル化合物の量は、混合溶媒10
0重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲が好まし
い。特に環状エステル化合物がグリコリドまたはラクチ
ドである場合は0.5〜10重量部であることが好まし
い。さらに好ましくは1〜8重量部である。
【0048】環状エステル化合物溶液の電気伝導度を測
定する間は該溶液を適度に攪拌しておくことが好まし
い。攪拌により環状エステル化合物中の遊離カルボン酸
が効果的に溶液中に拡散し、精度よい定量が可能とな
る。
【0049】電気伝導度を測定する際の溶液温度は、測
定精度に関係する。すなわち、溶液温度が低いと環状エ
ステル化合物が親水性有機溶媒−水混合溶媒中に溶解し
難くかったり、電気伝導値そのものが小さ過ぎたりして
測定精度が低下する。一方、溶液温度が高いと環状エス
テル化合物の加水分解が起こったり、溶媒が揮発または
沸騰し、有機溶媒と水との混合比が経時的に変化する。
これらのことを考慮すると、電気伝導度を測定する際の
溶液温度は、一般的には0〜80℃である。好ましい測
定温度は10〜40℃であり、さらに好ましくは室温
(25℃)である。測定温度は上記温度範囲において適
宜選択し得るが、測定に当たっては一定の温度において
測定することが好ましい。
【0050】用いる電気伝導度計の形式、形態には特に
制限はなく、公知の電気伝導度計を使用することができ
る。例えば、電気伝導度計((株)HIRATA製、形
式:DS−15型)が例示できる。
【0051】環状エステル化合物を親水性有機溶媒−水
混合溶媒中に投入すると、環状エステル化合物中に含ま
れる遊離カルボン酸が溶媒中に溶解、拡散するため、環
状エステル化合物の電気伝導度が瞬時に変化する。従っ
て、環状エステル化合物を投入する前後の電気伝導度の
変化量から、予め調べておいた遊離カルボン酸量と電気
伝導度との関係を示す検量線を用いることにより、環状
エステル化合物中に含まれる遊離カルボン酸量を知るこ
とができる。
【0052】しかしながら、検定する環状エステル化合
物がグリコリドやラクチドのように易加水分解性を有す
る場合、親水性有機溶媒に含有される水分により、環状
エステル化合物そのものが加水分解されていくため、電
気伝導度測定中に次第に電気伝導度が増大していく。
【0053】従って、易加水分解性環状エステル化合物
中の遊離カルボン酸量を定量する場合、水を含有する親
水性有機溶媒に環状エステル化合物を投入した直後か
ら、溶液の電気伝導度を所定時間ごとに(好ましくは3
0秒ごとに)少なくとも1分間以上、好ましくは3分間
以上、測定、記録する。環状エステル化合物を投入した
直後からの時間を横軸に、各測定時刻ごとの電気伝導度
を縦軸にとったグラフを作成すると、投入後1分ないし
数分以降の電気伝導度はほぼ直線的に増加する。この直
線部分の測定値を結んだ直線を横軸方向へ延長し、時間
ゼロに外挿した値(時間ゼロにおける縦軸との交点)を
求める。この値から、環状エステル化合物投入直前の電
気伝導度値を差し引いた値(以下、ΔECという)が試
料の電気伝導度である。得られた電気伝導度から、予め
作成しておいた検量線を用いて遊離カルボン酸の含有量
を求める。
【0054】遊離カルボン酸を定量する場合、上記のよ
うに検量線を用いて遊離カルボン酸の絶対量を知ること
を必ずしも必要としない。すなわち、基準となる環状エ
ステル化合物(基準試料)について本発明の方法にした
がって電気伝導度の変化を調べておき、同様にして遊離
カルボン酸の含有量が未知の環状エステル化合物の電気
伝導度変化を調べ、これら両者を比較することにより相
対的に定量することもできる。
【0055】
【実施例】以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説
明する。また、実施例に示した各測定方法は下記方法に
よった。尚、実施例において目標の分子量が170,0
00、185,000、123,000、及び75,0
00であるポリエステルを調製した例を示すが、本発明
はかかる実施例に限定されるものではない。
【0056】(1)ポリエステルの分子量 ポリエステルの重量平均分子量(以下、Mwという)
は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プ
ロパノール(HFPという)を溶媒に用いるゲルパーミ
エーションクロマトグラフィー(GPC)により測定す
る。Mwの標準物質にはポリメチルメタクリレート(P
MMA)を用いる。
【0057】(2)重合反応の転化率(重合率) 得られたポリマーをHFPに溶解し、ガスクロマトグラ
フィー(GC)により残存モノマー量を定量することに
より求める。
【0058】(3)電気伝導度の測定方法および遊離カ
ルボン酸の定量方法 メタノール(試薬特級)100重量部に対し、脱イオン
水(電気伝導度0.5μS/cm以下)5〜20重量部
を混合し、メタノール−水混合溶媒を調製する。混合溶
媒100重量部を採取し液温を25℃に調節する。撹拌
下、25℃に調節された上記混合溶媒に環状エステル化
合物2〜10重量部を投入、溶解して環状エステル化合
物の水−メタノール溶液を調製する。電気伝導度計(H
IRATA CONDUCTIVITY METER、
形式:DS−15)を用いて、環状エステル化合物の投
入直後から、30秒ごとに環状エステル化合物の水−メ
タノール溶液の電気伝導度を25℃において測定し、こ
の値から環状エステル化合物投入直前の電気伝導度値を
差し引いた値(ΔΕC)を求める。測定時間を横軸に、
ΔΕCを縦軸にプロットし、得られたグラフの直線部分
を時間ゼロに外挿したΔΕC0値を求める。得られた値
から別途作成された検量線に基づいて、環状エステル化
合物に含まれる遊離カルボン酸量を算出する。得られた
遊離カルボン酸量より反応系に添加する水酸基化合物の
量を決定する。
【0059】(4)検量線Aの作成 試薬特級の70重量%グリコール酸水溶液2cm3をメ
タノール79.6重量部、水8重量部とからなる混合溶
媒により希釈して25cm3とし、グリコール酸の標準
溶液を調製する。次いで、200cm3のトールビーカ
ーに、メタノール79.6gおよび蒸留水8gを加え混
合溶媒とする。この混合溶媒に上記のようにして調製し
たグリコール酸の標準溶液2mm3(グリコール酸量:
0.14mg)を添加して、グリコール酸の希釈溶液を
調製する。上記電気伝導度計を用いて希釈溶液の電気伝
導度及び混合溶媒の電気伝導度を測定し、前者から後者
を差し引いた値(以下、ΔEC1という)を求める。さ
らにこの希釈液にグリコール酸の標準溶液を2mm3
つ添加することを繰り返し、それぞれのΔEC1を求め
る。グリコール酸添加量とΔEC1との関係をグラフに
プロットすることにより検量線Aを作成する。得られた
検量線Aを〔図1〕に示す。
【0060】(5)検量線Bの作成 特級試薬の90重量%L−乳酸水溶液2cm3をメタノ
ール80g、水15gとからなる混合溶媒により希釈し
て25cm3とし、乳酸の標準溶液を調製する。次い
で、200cm3のトールビーカーにメタノール80g
及び蒸留水15gを加え混合溶媒とする。この混合溶媒
に上記のようにして調製した乳酸の標準溶液2mm
3(乳酸量:0.16mg)を添加して、乳酸の希釈溶
液を調製する。上記電気伝導度計を用いて希釈溶液の電
気伝導度及び混合溶媒の電気伝導度を測定し、前者から
後者を差し引いた値(以下、ΔEC2という)を求め
る。さらにこの希釈溶液に乳酸の標準溶液を2mm3
つ添加することを繰り返し、それぞれのΔEC2を求め
る。乳酸添加量とΔEC2との関係をグラフにプロット
することにより検量線Bを作成する。得られた検量線B
を〔図1〕に示す。
【0061】実施例1 メタノール(試薬特級)79.6gに対し、脱イオン水
(電気伝導度0.5μS/cm以下)8.0gを混合し
てメタノール−水混合溶媒を調製し、液温を25℃に調
節した。これに市販のグリコリド(G−1)3.0gを
投入し、25℃におけるグリコリドのメタノール−水混
合溶液の電気伝導度(ΔEC)を上記方法により測定
し、〔図2〕に示すグラフを得た。グラフの直線部を、
時間ゼロに外挿した値を求めたところ0.50μS/c
mであった。さらに、同一ロットのグリコリド(G−
1)3.0gを用いて、前述と同様の条件で電気伝導度
の測定をさらに2回行った結果、ΔECの時間変化はい
ずれも1回目とほとんど同じであり、測定時間−ΔEC
のグラフは〔図2〕に示すグラフとほば重なっており、
きわめて良い再現性を示した。また、それぞれの直線を
時間ゼロに外挿した値(ΔEC0)を求めたところいず
れも0.50μS/cmであった。このΔEC0値か
ら、〔図1〕に示す検量線Aに基づいてグリコリド中に
含まれる遊離カルボン酸の量を求めた結果、グリコール
酸換算にして683ppmであり、8.98meq/k
gであった。分子量17万のポリグリコール酸を製造す
ることを目的として、反応系に添加すべき水酸基化合物
(ラウリルアルコール)の量を下記数式(1)〔数1〕
【0062】
【数1】 (式中、fは電気伝導度測定により定量された遊離カル
ボン酸量(meq/kg)、Lは反応系に添加すべきラ
ウリルアルコールの量(meq/kg)、AおよびBは
反応条件および目標とするポリエステルの分子量によっ
て決定される定数である。)に従って算出し、18.2
meq/kg、すなわち、グリコリドに対して0.33
9重量%と決定した。上記(数式1)は、環状エステル
化合物をある一定条件の下で重合させて目標とする分子
量を有するポリエステルを製造する際の、環状エステル
化合物中の遊離カルボン酸量と添加すべき水酸基化合物
(分子量調節剤)の量との関係式であり、本発明者らが
数十バッチの重合を行うことにより見出した経験式であ
る。AおよびBは、環状エステル化合物の種類、目標と
するポリエステルの分子量および反応条件(触媒および
分子量調節剤の種類、量、モノマーの含水率、反応温
度、反応時間、転化率、反応機スケール等)によって決
まる。実施例1に示す反応条件において目標の分子量が
17万のポリグリコール酸の製造を行う場合には、Aは
0.386、Bは21.7である。
【0063】攪拌機、温度調節装置を備えた5,000
cm3のステンレス製反応容器にグリコリド(G−1)
3,000g及びオクタン酸第一錫のトルエン溶液
(0.30g/10cm3)10cm3を入れ、減圧(1
〜5mmHg)下、100℃において1時間脱気した。
脱気後、反応容器内を窒素で置換し、ラウリルアルコー
ルをグリコリドに対して0.339重量%加え、窒素気
流下で100℃から235℃に昇温し、235℃におい
て1時間開環重合を行い、ポリグリコール酸を得た。転
化率(重合率)は98%であった。上記方法により測定
したポリグリコール酸のMwは172,000であり、
ほぼ目的通りの分子量のポリグリコール酸が得られた。
使用したグリコリドの融点、特公平3−44566号公
報に開示される方法に従ってグリコリドを200℃に加
熱溶融した際のAPHA値(色相)、グリコリド溶液の
電気伝導度、グリコリド中の遊離カルボン酸量、ラウリ
ルアルコールの添加量、目標とする分子量及び得られた
ポリグリコール酸の分子量(Mw)を〔表1〕に示す。
【0064】実施例2 実施例1で使用したロット(G−1)と同一のグリコリ
ドの残りをアルミニウムラミネートフィルム製のパック
に密封して1ヶ月間、室温にて保存しておいたものを開
封し、実施例1と同様にしてメタノール−水(重量比7
9.6:8.0)混合溶媒を用いる方法によりΔEC0
値を求めたところ1.10μS/cmであった。このΔ
EC0値から、〔図1〕に示す検量線Aに基づいてグリ
コリド中に含まれる遊離カルボン酸の量を求めた結果、
グリコール酸換算にして1610ppmであり、20.
61meq/kgであった。保管中にグリコリドがわず
かな水分により加水分解され、遊離カルボン酸量が増加
したものと考えられる。分子量17万のポリグリコール
酸を製造するために反応系に添加すべきラウリルアルコ
ールの量を、上記数式(1)〔数1〕に従って算出し、
13.7meq/kg、すなわち、グリコリドに対して
0.255重量%と決定した。グリコリドに対してラウ
リルアルコールを0.255重量%加えた以外は、実施
例1と同様の条件でグリコリドの開環重合を行い、ポリ
グリコール酸を得た。転化率(重合率)は98%であっ
た。上記方法により測定したポリグリコール酸のMwは
171,000であり、ほぼ目的通りの分子量を有する
ポリグリコール酸が得られた。使用したグリコリドの融
点、特公平3−44566号公報に開示さる方法に従っ
てグリコリドを200℃に加熱溶融した際のAPHA
値、グリコリド溶液の電気伝導度、グリコリド中の遊離
カルボン酸量、ラウリルアルコールの添加量、目標とす
る分子量及び得られたポリグリコール酸のMwを〔表
1〕に示す。 比較例1 実施例1で使用したロット(G−1)と同一のグリコリ
ドの残りをアルミニウムラミネートフィルム製のパック
に密封して1ヶ月間、室温にて保存しておいたものを開
封し、電気伝導度法によりグリコリド中の遊離カルボン
酸量を測定することなしに、実施例1と同じ量のラウリ
ルアルコール(0.339重量%)を反応系に添加して
実施例1と同様にして開環重合を行い、ポリグリコール
酸を得た。転化率(重合率)は99%であった。上記方
法により測定したポリグリコール酸のMwは143,0
00であり、目的よりかなり低い分子量であった。使用
したグリコリドの融点、特公平3−44566号公報に
開示されている方法に従ってグリコリドを200℃に加
熱溶融した際のAPHA値、ラウリルアルコールの添加
量、目標分子量及び得られたポリグリコール酸のMwを
〔表1〕に示す。 実施例3 実施例1で使用したものとは異なるロットのグリコリド
(G−2)について、実施例1と同様にしてメタノール
−水(重量比:79.6耐8.0)混合溶媒に溶解して
電気伝導度を測定し、ΔEC0値を求めたところ0.1
2μS/cmであった。このΔEC0値から、〔図1〕
に示す検量線Aに基づいてグリコリド中に含まれる遊離
カルボン酸の量を求めた結果、グリコール酸換算にして
150ppmであり、1.97meq/kgであった。
分子量17万のポリグリコール酸を製造するため、上記
数式(1)〔数1〕に従って反応系に添加すべきラウリ
ルアルコールの量を算出し、20.9meq/kg、す
なわち、グリコリドに対して0.389重量%と決定し
た。グリコリドに対してラウリルアルコールを0.38
9重量%加えた以外は、実施例1と同様の条件でグリコ
リドの開環重合を行い、ポリグリコール酸を得た。転化
率(重合率)は98%であった。上記方法により測定し
たポリグリコール酸のMwは169,000であり、ほ
ぼ目的とする分子量のポリマーが得られた。使用したグ
リコリドの融点、特公平3−44566号公報に開示さ
れている方法に従ってグリコリドを200℃に加熱溶融
した際のAPHA値、グリコリド溶液の電気伝導度、グ
リコリド中の遊離カルボン酸量、ラウリルアルコールの
添加量、目標分子量及び得られたポリグリコール酸のM
wを〔表1〕に示す。
【0065】比較例2 実施例3で使用したロット(G−2)と同一のグリコリ
ドを、電気伝導度法により遊離カルボン酸量を定量する
ことなしに、実施例1と同量のラウリルアルコール量
(0.339重量%)を反応系に添加して実施例1と同
様に開環重合を行い、ポリグリコール酸を得た。転化率
(重合率)は98%であった。上記方法により測定した
ポリグリコール酸のMwは196,000であり、目的
よりも高い分子量を有するポリグリコール酸ポリマーが
得られた。使用したグリコリドの融点、特公平3−44
566号公報に開示されている方法に従ってグリコリド
を200℃に加熱溶融した際のAPHA値、ラウリルア
ルコールの添加量及び得られたポリグリコール酸のMw
を〔表1〕に示す。
【0066】
【表1】
【0067】実施例4 メタノール(試薬特級)80.0gに対し、脱イオン水
(電気伝導度0.5μS/cm以下)15.0gを混合
してメタノール−水混合溶媒を調製し、該混合溶媒に市
販のL−ラクチド(L−1)4.0gを投入し、実施例
1と同様にして、ラクチドをメタノール−水混合溶媒に
溶解した溶液の25℃における電気伝導度(ΔEC)を
上記方法により測定し、〔図3〕に示すグラフを得た。
グラフの直線部を、時間ゼロに外挿した値を求めたとこ
ろ0.22μS/cmであった。〔図1〕の検量線Bよ
り、ラクチド中の遊離カルボン酸量を求めたところ、乳
酸換算にして120ppm(重量)であり、1.33m
eq/kgであった。得られた遊離カルボン酸量に基づ
いて、上記数式(1)〔数1〕と同様な経験式に従って
分子量18.5万のポリ乳酸を製造する場合に、反応系
に添加すべきラウリルアルコールの量を算出したところ
29.7meq/kgであった。すなわち、ラクチドに
対して0.553重量%と決定した。攪拌機、温度調節
装置を備えた1000cm3のステンレス製反応容器に
L−ラクチド200g及びオクタン酸第一錫のトルエン
溶液(0.15g/10cm 3)2cm3を入れ、減圧
(1〜5mmHg)下、110℃において1時間脱気し
た。脱気後、反応容器内を窒素で置換し、ラウリルアル
コールをL−ラクチドに対して0.553重量%加え、
窒素気流下、180℃で2時間加熱し、ポリ乳酸を得
た。重合率は97%であった。得られたポリ乳酸のMw
は185,000であり、目標とする分子量を有するポ
リ乳酸を得ることができた。ポリマーをクロロホルムに
溶解して0.5g/100cm3の濃度とし、ウベロー
デ型粘度計にて25℃における溶液固有粘度ηを測定し
たところ、1.32dl/g(132cm3/g)であ
った。ラクチド溶液のΔEC0値、ラウリルアルコール
の添加量、目標Mw及び得られたポリ乳酸のMwを〔表
2〕に示す。
【0068】実施例5 実施例4とは異なる製造ロットのL−ラクチド(L−
2)を実施例4と同様にしてメタノール−水(重量比:
80対15)混合溶媒中に投入して電気伝導度を測定
し、時間ゼロにおけるΔEC0値を求めたところ、1.
38μS/cmであった。〔図1〕の検量線Bより、ラ
クチド中の遊離カルボン酸量を求めたところ、乳酸換算
にして1020ppm(重量)であり、11.32me
q/kgであった。分子量18.5万のポリ乳酸を製造
することを目標として、反応系に添加すべきラウリルア
ルコールの量を、実施例4と同様の経験式に従って算出
し、25.2meq/kg、すなわち、ラクチドに対し
て0.469重量%と決定した。ラクチドに対してラウ
リルアルコールを0.469重量%加えた以外は、実施
例4と同様の条件でラクチドの開環重合をおこなったと
ころ、転化率(重合率)は98%であった。得られたポ
リ乳酸のMwは183,000であり、ほぼ目標とする
分子量を有するポリ乳酸が得られた。ラクチド溶液の電
気伝導度、ラウリルアルコールの添加量、目標Mw及び
得られたポリ乳酸のMwを〔表2〕に示す。
【0069】比較例3 実施例5で使用したロット(L−2)と同一のL−ラク
チドについて、電気伝導度による遊離カルボン酸量を測
定することなしに、実施例4と同じ分子量18.5万の
ポリ乳酸を製造することを目標として、実施例4と同じ
ラウリルアルコール量(0.553重量%)を反応系に
添加して実施例4と同様に開環重合を行い、ポリ乳酸を
得た。転化率(重合率)は98%であった。上記方法に
より測定したポリマーのMwは164,000であり、
所望の分子量より低い分子量であった。ラクチド溶液の
電気伝導度、ラウリルアルコールの添加量、目標Mw及
び得られたポリ乳酸のMwを〔表2〕に示す。
【0070】比較例4 実施例4と異なる製造ロットのL−ラクチド(L−3)
を実施例4と同様にしてメタノール−水(80/15)
混合溶媒中に投入して電気伝導度を測定し、時間ゼロに
おけるΔEC0を求め、検量線に基づいて得られたΔE
0値からラクチド中の遊離カルボン酸量を求めたとこ
ろ、乳酸換算にして13.1重量%であり、1,450
meq/kgであった。このラクチドは遊離カルボン酸
量が多過ぎるため、ラウリルアルコールの添加によるポ
リ乳酸の分子量のコントロールが不可能であった。因
に、該ラクチドに、ラウリルアルコールを添加すること
なしに、実施例4と同様の反応条件で開環重合を行った
ところ、得られたポリ乳酸の分子量は極端に低く、Mw
は6,000であった。
【0071】
【表2】
【0072】実施例6 製造ロット、保管状態、精製度の異なる数種のグリコリ
ドおよびDL−ラクチドを選定し、各グリコリド1.1
6g(0.01モル)およびDL−ラクチド1.44g
(0.01モル)を混合し、それをメタノール−水(重
量比:79.6g対8.0g)混合溶媒に投入して電気
伝導度を測定した。30秒毎にΔEC値を測定し、測定
時間とΔEC値との関係をグラフにした後、直線部分を
外挿して測定時間ゼロにおけるΔEC0を求めた。これ
らのグリコリドおよびDL−ラクチドを等モルづつ混合
したものを使用して、水酸基化合物(分子量調節剤)と
してDL−乳酸を種々異なる量で添加した以外は、全く
同一の反応条件(オクタン酸錫0.015重量%、18
0℃、2時間:詳しくは後述)にて数十バッチの重合を
行い、いずれも98%以上の重合率でグリコール酸−乳
酸共重合体を得た。測定時間ゼロにおけるΔEC0値、
反応系に添加した乳酸量および得られたグリコール酸−
乳酸共重合体の分子量をデータベースに蓄積した。
【0073】データベース作成のために使用したものと
異なるロットのグリコリド(G−3)およびDL−ラク
チド(D−1)を、上記と同様に混合物としてメタノー
ル−水(重量比:79.6g対8.0g)混合溶媒に投
入して時間ゼロにおけるΔEC0を測定した結果、0.
49μS/cmであった。分子量123,000のポリ
マーを合成することを目的として、上記データベースか
ら分子量123,000±3,000のポリマーが生成
したデータを検索したところ、3件のデータが選択抽出
された。3件のデータにおいて、ΔEC0値と添加した
乳酸量との関係は、それぞれ、0.21μS/cmと
0.365重量%、0.62μS/cmと0.345重
量%、および、0.88μS/cmと0.335重量%
であった。この3件のデータについて、ΔEC0値と乳
酸添加量との関係を示すグラフを作成し、該グラフか
ら、ΔEC0値が0.49μS/cmであるときの最適
乳酸添加量を調べたところ0.350重量%であった。
【0074】攪拌機、温度調節装置を備えた5,000
cm3のステンレス製反応容器にグリコリド(D−1)
1,161g及びDL−ラクチド1,441g、さらに
オクタン酸第一錫のトルエン溶液(0.345g/10
cm3)をオクタン酸第一錫の量がグリコリドとラクチ
ドの総量に対して0.015重量%となるように添加
し、減圧(10mmHg)下、40℃において1時間脱
気した。脱気後、反応容器内を窒素で置換し、乳酸を
0.350重量%加え、窒素気流下で40℃から180
℃に昇温し、180℃においてさらに2時間重合を行
い、グリコール酸−乳酸共重合体を得た。共重合体のM
wは121,000であり、ほぼ目標とする分子量のポ
リマーが得られた。ΔEC0値、原料中の遊離カルボン
酸量、反応系に添加した水酸基化合物量、目標Mwおよ
び得られたポリエステルのMwを〔表3〕に示す。
【0075】実施例7 製造ロット、保管状態、精製度の異なる数種のグリコリ
ドおよびε−カプロラクトンを選定し、各グリコリド
1.16g(0.01モル)およびε−カプロラクトン
0.057g(0.0005モル)を混合し、メタノー
ル−水(重量比:79.6g対8.0g)混合溶媒に投
入して電気伝導度を測定した。30秒毎にΔEC値を測
定し、測定時間とΔEC値との関係をグラフにした後、
直線部分を外挿して測定時間ゼロにおけるΔEC0を求
めた。これらのグリコリドおよびε−カプロラクトン混
合物(モル比:100対5)を使用して、水酸基化合物
(分子量調節剤)としてラウリルアルコールを種々異な
る量で反応系に添加した以外は、全く同一の反応条件
(オクタン酸錫0.01重量%、220℃、2時間:詳
しくは後述)にて数十バッチの重合を行い、いずれも9
8%以上の重合率にてグリコール酸−ヒドロキシカプロ
ン酸共重合体を得た。時間ゼロにおけるΔEC0値、反
応系に添加したラウリルアルコール量、および得られた
ポリマーの分子量をデータベースに蓄積した。データベ
ース作成のために使用したものとは異なるロットのグリ
コリド(G−3)およびε−カプロラクトン(C−1)
を、上記と同様に混合物としてメタノール−水(重量
比:79.6g対8.0g)混合溶媒に投入して、時間
ゼロにおけるΔEC0を測定した結果、0.36μS/
cmであった。このΔEC0値から、〔図1〕に示す検
量線Aに基づいてグリコリドおよびε−カプロラクトン
混合物中に含まれる遊離カルボン酸の量を求めた結果、
グリコール酸換算にして815ppmであり、10.7
meq/kgであった。分子量75,000のグリコー
ル酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体を製造するため
に、上記数式(1)〔数1〕(但し、Aが0.4、Bが
49.8である)に従って反応系に添加すべきラウリル
アルコールの量を算出したところ45.5meq/k
g、すなわち、グリコリドに対して0.848重量%と
決定した。
【0076】攪拌機、温度調節装置を備えた5,000
cm3のステンレス製反応容器にグリコリド1,161
g及びε−カプロラクトン57g,さらに、オクタン酸
第一錫のトルエン溶液(0.230g/10cm3)を
オクタン酸第一錫の量がグリコリドとε−カプロラクト
ンの総量に対して0.01重量%となるように添加し、
減圧(10mmHg)下、40℃において1時間脱気し
た。脱気後、反応容器内を窒素で置換し、ラウリルアル
コールを0.848重量%加え、窒素気流下で40℃か
ら180℃に昇温し、220℃においてさらに1時間重
合を行い、グリコール酸−ヒドロキシカプロン酸共重合
体を得た。共重合体のMwは73,900であり、ほぼ
目標とする分子量のポリマーが得られた。ΔEC0値、
原料中の遊離カルボン酸量、反応系に添加した水酸基化
合物量、目標Mwおよび得られたポリエステルのMwを
〔表3〕に示す。
【0077】
【表3】
【0078】比較例5 下記方法により、カリウムメトキシド(以下、KOCH
3という)による遊離カルボン酸の滴定・定量により、
グリコリド中の遊離カルボン酸量を求めた。メスフラス
コに無水メタノール15cm3を加え、乾燥窒素を流し
続ける。フェノールレッド(0.05重量%)を5〜6
滴加え、0.01NのKOCH3−無水メタノール溶液
(予め、標準試料として安息香酸により規定度を決定し
た)をビュレットより滴下し、フェノールレッドの終点
まで加える(赤色)。これに、グリコリド約0.4〜
0.5gを正確に秤量し加え(黄色)、赤色になるまで
0.01NのKOCH3溶液を滴下する。KOCH3溶液
の規定度、KOCH3溶液の滴下量およびグリコリドの
試料量より、グリコリド中の遊離カルボン酸量を求め
る。上記方法によって、グリコリド(G−1)中の遊離
カルボン酸量を3回測定したところ、それぞれ1.9
4、2.83、3.31meq/kgとなり、再現性の
乏しい結果であった。このように、KOCH3による滴
定、定量では、得られる遊離カルボン酸の定量値にばら
つきがあり真の値が得難い。従って、反応系に添加すべ
き水酸基化合物の量が決定できず、ポリエステルの分子
量制御のための定量方法として採用するには問題があ
る。
【0079】比較例6 実施例1と同一ロット(G−1)のグリコリドについ
て、電気伝導度測定用溶媒としてメタノール−水(重量
比:79.6対8.0)混合溶媒の代わりに、メタノー
ル79.6gのみ(メタノール100%)を用いた以外
は、実施例1と同様にして電気伝導度の測定を試みた
が、グリコリド投入前後における電気伝導度にほとんど
変化がなく、グリコリド中の遊離カルボン酸の定量が不
可能であった。
【0080】比較例7 実施例1と同一ロット(G−1)のグリコリドについ
て、電気伝導度測定用溶媒としてメタノール−水(重量
比:79.6対8.0)混合溶媒の代わりに、水79.
6gのみ(水100%)を用いた以外は、実施例1と同
様にして電気伝導度の測定を試みたが、グリコリド投入
直後における電気伝導度は、急激かつ大幅に増大してし
まい、グリコリド中の遊離カルボン酸の定量が不可能で
あった。
【0081】比較例8 実施例1と同一ロット(G−1)のグリコリドについ
て、電気伝導度測定用溶媒としてメタノール−水(重量
比:79.6対8.0)混合溶媒の代わりに、メタノー
ル−水(重量比:100対60)混合溶媒を用いた以外
は、実施例1と同様にして電気伝導度の測定を試みた
が、グリコリド投入直後から電気伝導度が急激かつ大幅
に増大した。電気伝導度測定時間−ΔECのグラフを作
成し、測定開始後1分〜3分の間のグラフの直線部分を
時間ゼロに外挿してそのΔEC0値を読み取ったとこ
ろ、0.42μS/cmであった。同一ロットのグリコ
リドについて、同様にして電気伝導度を測定することを
さらに2回繰り返したが、ΔEC 0値はそれぞれ、0.
58、0.37μS/cmとなり、ばらつきが大きく精
度のよい定量ができなかった。
【0082】
【発明の効果】本発明によれば、たとえ原料である環状
エステル化合物中に不純物として含有される遊離カルボ
ン酸の量が変動しても得られるポリエステルの分子量を
目標の範囲内に精度よく制御することができる。そのた
め、分子量のばらつきの少ないポリエステルを用途に応
じて常に安定して製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、ΔECから遊離カルボン酸の含有量を求め
るための検量線を示す。
【図2】は、実施例1で用いたグリコリドをメタノール
と水の混合溶媒に溶解した溶液の電気伝導度の時間推移
を示す。
【図3】は、実施例4で用いたラクチドをメタノールと
水の混合溶媒に溶解した溶液の電気伝導度の時間推移を
示す。
【符号の説明】
A グリコール酸含有量を求める検量線を示す。 B 乳酸含有量を求める検量線を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年4月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正内容】
【0053】従って、易加水分解性環状エステル化合物
中の遊離カルボン酸量を定量する場合、水を含有する親
水性有機溶媒に環状エステル化合物を投入した直後か
ら、溶液の電気伝導度を所定時間ごとに(好ましくは3
0秒ごとに)少なくとも1分間以上、好ましくは3分間
以上、測定、記録する。環状エステル化合物を投入した
直後からの時間を横軸に、各測定時刻ごとの電気伝導度
を縦軸にとったグラフを作成すると、投入後1分ないし
数分以降の電気伝導度はほぼ直線的に増加する。この直
線部分の測定値を結んだ直線を横軸方向へ延長し、時間
ゼロに外挿した値(時間ゼロにおける縦軸との交点)を
求める。この値から、環状エステル化合物投入直前の電
気伝導度値を差し引いた値が試料の電気伝導度である。
得られた電気伝導度から、予め作成しておいた検量線を
用いて遊離カルボン酸の含有量を求める。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】は、実施例1で用いたグリコリドをメタノール
と水の混合溶媒に溶解した溶液と混合溶媒の電気伝導
度の差ΔECの時間推移を示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】は、実施例4で用いたラクチドをメタノールと
の混合溶媒に溶解した溶液と混合溶媒の電気伝導度
の差ΔECの時間推移を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯室 茂 愛知県名古屋市南区丹後通2丁目1番地 三井東圧化学株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反応系に水酸基化合物を添加し、環状エ
    ステル化合物を開環重合させてポリエステルを製造する
    方法であって、環状エステル化合物中に含まれる遊離カ
    ルボン酸の量に基づいて反応系に添加する水酸基化合物
    の量を定めることを特徴とするポリエステルの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 水酸基化合物がアルコール類、ヒドロキ
    シカルボン酸類及び糖類から選ばれた少なくとも1種の
    化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリエス
    テルの製造方法。
  3. 【請求項3】 アルコール類が、炭素数が12〜18で
    ある少なくとも1種の一価の直鎖状飽和脂肪族アルコー
    ルであることを特徴とする請求項2記載のポリエステル
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 ヒドロキシカルボン酸類が、グリコール
    酸および乳酸から選ばれた少なくとも1種のヒドロキシ
    カルボン酸であることを特徴とする請求項2記載のポリ
    エステルの製造方法。
  5. 【請求項5】 環状エステル化合物が、グリコリド、ラ
    クチド及びε−カプロラクトンから選ばれた少なくとも
    1種の環状エステル化合物であることを特徴とする請求
    項1記載のポリエステルの製造方法。
  6. 【請求項6】 遊離カルボン酸の含有量が100meq
    /kg以下である環状エステル化合物を原料として用
    い、分子量が10万未満であるポリエステルを製造する
    ことを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方
    法。
  7. 【請求項7】 遊離カルボン酸の含有量が50meq/
    kg以下である環状エステル化合物を原料として用い、
    分子量が10万〜20万であるポリエステルを製造する
    ことを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方
    法。
  8. 【請求項8】 遊離カルボン酸の含有量が30meq/
    kg以下である環状エステル化合物を原料として用い、
    分子量が20万を超えるポリエステルを製造することを
    特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
  9. 【請求項9】 環状エステル化合物中に含まれる遊離カ
    ルボン酸の量が、環状エステル化合物溶液の電気伝導度
    を測定することにより得られたものであることを特徴と
    する請求項1記載のポリエステルの製造方法。
  10. 【請求項10】 環状エステル化合物溶液が、親水性有
    機溶媒100重合部および水1〜50重合部を含む混合
    溶媒に環状エステル化合物を溶解した溶液であることを
    特徴とする請求項9記載のポリエステルの製造方法。
  11. 【請求項11】 親水性有機溶媒が、メタノールおよび
    エタノールから選ばれた少なくとも1種のアルコールで
    あることを特徴とする請求項10記載のポリエステルの
    製造方法。
  12. 【請求項12】 混合溶媒100重合部に環状エステル
    化合物0.1〜20重量部を溶解することを特徴とする
    請求項10記載のポリエステルの製造方法。
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