JPH07204799A - 広幅急冷凝固薄帯製造方法 - Google Patents

広幅急冷凝固薄帯製造方法

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JPH07204799A
JPH07204799A JP271294A JP271294A JPH07204799A JP H07204799 A JPH07204799 A JP H07204799A JP 271294 A JP271294 A JP 271294A JP 271294 A JP271294 A JP 271294A JP H07204799 A JPH07204799 A JP H07204799A
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JP271294A
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Yuichi Sato
藤 有 一 佐
Hiroshi Senba
場 寛 筌
Satoru Shida
田 悟 志
Katsumi Honda
多 勝 美 本
Kunihiro Yunokizono
邦 裕 柚木園
Kenji Araki
木 謙 二 荒
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 広幅薄帯の製造において障害となっていた試
料溶解時のノズル割れを抑制し、良好な広幅薄帯を製造
する方法を提供すること。 【構成】 所定の金属を加熱、溶解する際、溶融金属を
噴出するための開口を有するノズルを断熱材で覆い、金
属が溶解した後、ノズル開口から溶融金属を噴出する前
に、断熱材を外し、冷却基板に溶融試料を噴出して急冷
凝固させることを特徴とする広幅薄帯製造方法。 【効果】 広幅薄帯を製造する際に発生していた熱応力
起因の割れを完全に防ぐことが可能になったことから、
このノズルの割れが原因となって発生していた鋳造時の
トラブルを解消し、さらに、板厚変動の小さい薄帯を安
定して製造することが可能となることから製造歩留も向
上できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融した金属又は合金
(以下、「金属」という)を移動する冷却基板の表面で
急冷凝固させ、連続的に非晶質金属あるいは結晶質金属
の広幅薄帯の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】溶融金属から連続的に薄帯を製造する方
法(連続液体急冷法)は、従来より種々の手段が開示さ
れているが、いずれも溶解した金属を所定の形状の開口
を有するノズルから、所定の圧力でノズル開口に面した
移動冷却基板の上に噴出し、凝固させて連続薄帯とする
ものである。このとき、重要な製造因子は、ノズル開口
の形状、ノズルと冷却基板との相対的配置、溶融金属の
ノズルからの噴出圧、冷却基板の移動速度などである。
これらの製造因子に対する条件は、一般に薄帯の幅が広
くなるとともに狭く、厳しくなる傾向があった。
【0003】広幅薄帯を製造する方法として従来開示さ
れている代表的なものとしては、例えば、特開昭53−
53525号公報に記載の「金属ストリップの連続的鋳
造法およびそれに使用する装置」がある。この方法の概
要は、矩形状の開口を持つスロットノズルを冷却基板に
対して0.03〜1mmの間隔で対向させ、この矩形状の
開口は冷却基板の表面の移動方向に対してほぼ垂直に配
置された状態で、100〜2000m/分の予め定めら
れた表面速度で移動する冷却基板上に、スロットノズル
から溶融金属を送り出し、熱的に接触させ急冷凝固する
ことにより連続的なストリップを製造するものである。
この方法において、原理的には薄帯の幅に対する制限は
ない。つまり、ノズルの矩形状開口の長さ(冷却基板を
移動方向に直角な方向に測った開口の長さ)を大きくす
れば、薄帯の幅を広くすることが出来る。
【0004】しかしながら、実際には矩形状開口部の長
さを大きくするに従い、開口の平衡度を鋳造中保持する
ことが難しくなり、薄帯の板厚は、特にその幅方向で一
様でなくなる。因みに25mm幅の薄帯において、板厚偏
差を5〜10%程度に抑えることは現在可能であるが、
150mm幅になると10%以下に抑えることは困難であ
る。板厚偏差の大きい薄帯は、例えば磁性材料として、
積層したり巻加工したりする場合、占積率が低下するの
で好ましくない。このことから、工業材料として急冷凝
固薄帯を提供するための従来法において実質的には薄帯
の板幅には技術的限界があった。
【0005】本発明者らは、上述した従来法における急
冷凝固薄帯の板幅の制限を取り除くために、例えば、特
願昭62−145706号により新しい鋳造方法を提案
した。この方法は、移動する冷却基板に、その移動方向
に対しほぼ直角に配置され、かつ、それぞれが前記移動
方向に対して10〜80°の角度を持つ複数の開口から
溶融金属を噴出させ、急冷凝固させることを特徴とする
金属薄帯の製造方法である。この方法により、薄帯の幅
が、例えば150mm以上でも板厚偏差が10%以下の薄
帯の製造が可能になった。つまり、従来あった薄帯の板
幅における制限を取り除くことが出来たのである。
【0006】一方、急冷凝固薄帯の製造装置としては、
基本的には移動冷却体として銅などの熱伝動率の高い金
属からなるロール、試料を保持するためのルツボおよび
試料溶解のための溶解設備からなるのが主である。また
一般的に、ルツボはその底部に試料溶解後溶融金属をロ
ール上に噴出するためのノズルを有している。溶解方式
としては、主に高周波誘導に依っている。使用されるル
ツボの形状は、概して円筒状のものであり、溶解用に用
いられる高周波誘導溶解用ワークコイルも円筒状のもの
である。例えば、前記特開昭53−53525号公報に
は、使用する溶解用ルツボおよびワークコイルとして、
どちらも深さ方向に対する横断面が円形である円筒状の
ものが開示されている。
【0007】本発明者らは、本発明者らが提案した前述
の鋳造方法により、150mm以上の幅の薄帯の製造につ
いて検討し、実際に製造実験を試みた。そして、薄帯の
幅を広げていくと、従来の円筒状のルツボでは広幅薄帯
の製造が困難になるという新たな問題点を見い出した。
すなわち、薄帯幅を大きくするためには、溶融金属を噴
出するための開口の数を多くしていく必要があり、当然
のことながらルツボ底部の面積を大きくしなければなら
ない。つまり、円筒状のルツボの径を大きくしなければ
ならない。
【0008】しかしながら、ルツボの径があまり大きく
なると、溶解後溶融金属を保持している間にルツボ底部
がたわみ、ルツボ底部が高速回転しているロール上に噴
出する際、ロールに衝突し、薄帯は得られなくなる。た
とえ、衝突しなくてもロールとノズル間の距離が薄帯幅
方向で不均一になると、板厚偏差の小さい良好な形状の
薄帯を得るのは困難になる。板厚偏差が小さい薄帯を得
るためには、ロールとノズル間の距離を板幅方向で出来
るだけ一定にする必要がある。
【0009】さらに、ルツボの径があまり大きくなる
と、高周波誘導の効率が悪くなる。すなわち、試料溶解
が困難になり、溶解時間がかなり長くなる。例えば、径
が300mm程度の円柱状のルツボの場合、鉄系の合金数
kgを溶解するのに溶解時間として1時間近くになり、
薄帯製造に要する時間が長くなる。特に、薄帯製造時間
の延長は、生産性の点から問題となる。
【0010】ルツボのたわみおよび溶解効率における問
題を解決する方法として、例えば、複数のルツボを薄帯
幅方向に並べる方法がある(Proc. of 5th Int.Conf. o
n Rapidly Quenched Metals (1985)p.1591) 。しかしな
がら、この方法により広幅薄帯を製造するには、それぞ
れのルツボの配置に充分な制御が必要であると思われ
る。なぜなら、それぞれのルツボのノズル開口の位置
が、例えば、薄帯幅方向で離れてしまうと薄帯が板幅方
向でつながらなくなったり(つまり、広幅薄帯とならず
に分割してしまう)、逆に重なるとそこで板厚が大きく
なってしまう(板幅方向での板厚変動が大きくなる)。
したがって、この方法は商業的に量産することを考える
と安定的生産に適した方法とは考えにくい。
【0011】そこで、本発明者らは、このような問題を
解決するために、例えば、特開平04−28996号公
報において200mm以上の幅の広幅薄帯を製造するため
の新しいルツボを提案した。このルツボは、深さ方向に
対する横断面が楕円状もしくは長方形の形状で、底部に
溶融金属を噴出するためのノズル開口を有するルツボで
ある。このようなルツボの開発により、試料溶解時のル
ツボの重力方向でのたわみの発生を防止し、さらに、横
断面が楕円状もしくは長方形の形状のワークコイルの使
用により、短時間で試料の溶解も可能となった。つま
り、板幅が200mm以上でも板厚変動が10%以下の薄
帯の製造が可能になったのである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開平04−28996号公報に記載のルツボを用いて安
定して広幅薄帯を製造するには、以下の点をさらに改善
する必要があった。すなわち、板幅が200mm未満の薄
帯を製造する際にはほとんど問題にならなかったが、板
幅200mm以上の薄帯を製造する場合、試料溶解時に時
々ルツボ先端のノズル部で割れが発生してノズル先端が
欠損したり、欠損まで至らなくても割れが発生すると、
溶融試料を噴出する際に溶融試料が漏れるなどのトラブ
ルが起こることがあった。この割れを良く観察してみる
と、割れはノズルの両最端の開口を起点として発生して
おり、製造する薄帯の板幅が広くなるほど起こり易かっ
た。この種のトラブルは良好な薄帯を製造することを困
難とすることから問題である。
【0013】本発明は、このような広幅薄帯の製造に障
害となっていた試料溶解時のノズル先端部における割れ
を抑制し、良好な広幅薄帯を製造する方法を提供するこ
とを目的としたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段および作用】本発明者ら
は、薄帯の板幅が広くなると、つまりノズルの長手方向
長さが長くなると、試料溶解時のノズル内での温度差が
大きくなり、この温度差に起因した熱応力がノズル開口
の両最端に集中することによって割れに至ると考えた。
そして、各種の実験を行い、試料溶解時に割れのもとも
との原因であるノズル内での温度差を無くすようにすれ
ば、ノズル割れの発生を抑制することが可能であること
を見い出し、良好な広幅薄帯を安定して製造する方法を
発明するに至った。
【0015】本発明は、上記目的を達成するためのもの
であって、下記の特徴を有するものである。(1) 移
動する冷却基板上に、溶融金属をノズルを介して噴出さ
せて金属薄帯を得る方法において、所定の金属を加熱、
溶解する際、溶融金属を噴出するための開口を有するノ
ズルの前記開口を含む先端部を断熱材または発熱材で覆
い、前記金属が溶解した後、前記断熱材または発熱材を
外し、所定の速度で移動する冷却基板上に前記金属の溶
融試料をノズルの開口から噴出し、急冷凝固させること
を特徴とする広幅急冷凝固薄帯製造方法、(2) 製造
される金属の板幅が200mm以上であることを特徴とす
る上記(1)に記載の広幅急冷凝固薄帯製造方法、であ
【0016】以下に、本発明を詳細に説明する。本発明
の方法を説明する模式図を、図1に示す。図1中、1は
断熱材であり、これを支持用冶具2上に固定し、試料溶
解のための加熱開始時にルツボ先端に位置しているノズ
ル4をこの断熱材で覆う。このとき、断熱材はノズル開
口全体を覆うようにする。また、ノズルの保温効果を高
めるために、断熱材とノズルの間隔は出来るだけ無くす
ようにすることが望ましい。試料溶解時は、ノズル開口
5から溶融試料8が漏れないよに、一般的にはストッパ
ー6を用いる。また、溶解には概ね高周波誘導方式を採
用し、7は誘導用のワークコイルである。断熱材支持用
冶具はその取り外しを容易にするために、冷却基板9か
らある程度距離をおいて固定する。
【0017】試料溶解後、溶融試料を移動している冷却
基板上に噴出するが、この際噴出前に断熱材を支持用冶
具ごと外し、ノズルの最下端には何も無いようにする。
そして、ルツボを冷却基板の方へ降ろし、冷却基板とノ
ズル最下端とを所定の距離とし、溶融試料をノズル開口
より噴出する。この際の様子を、図2に模式的に示す。
図2を用いて本発明における鋳造方法について説明する
と、ノズル開口を介して噴出された溶融試料は高速に移
動している冷却基板上で急冷凝固され、薄帯10が得ら
れる。
【0018】本発明において、断熱材を外すタイミング
にそれほどきびしい制限はない。つまり、試料昇温時は
試料内に温度分布が存在し、これがノズルの温度分布を
決めるから、昇温時はノズルを保熱し、ノズル内の温度
分布が出来るだけ無くなるようにする。しかし、試料が
溶解したら試料内にはそれほど大きな温度差は存在しな
いのて、ノズルが割れるに至ることはない。したがっ
て、試料溶解後であれば、噴出前に多少早いタイミング
で断熱材を外しても、ノズルが割れるようなことはな
い。
【0019】本発明によれば、従来試料溶解中発生して
いたノズルの割れは一切起こらず、これによって、鋳造
時のトラブルは抑制出来るようになったことから、安定
して良好な広幅薄帯が得られるようになった。
【0020】本発明に用いられる断熱材として、例えば
カオウールなどのように耐熱性に優れ、軽量なものが望
ましい。また、本発明の目的を達成するためには、ノズ
ル先端を断熱材で保熱するに留まらず、断熱材の代わり
に発熱体や発熱体と断熱材を併用してノズル先端を加熱
する方法も有効である。なお、発熱体を用いてノズル先
端を加熱する際、この発熱体によるノズル先端の加熱開
始のタイミングは試料加熱開始前後のどちらでも構わな
いが、試料が溶解し始める前に開始することが望まし
い。また、この発熱体による加熱によって、ノズル先端
に大きな温度分布ができないようにする必要がある。発
熱体としては、電気抵抗体を用い、通電加熱することが
できる。電気抵抗体を断熱材と併用してもよい。
【0021】本発明に用いられるノズル開口形状は、例
えば、図3に示すような個々の開口を平行四辺形とした
多孔ノズルが好ましいが、このようなものだけに限定さ
れるものではない。図3に示すノズル開口は、特に20
0mm以上の板幅の薄帯を製造する際有効である。なお、
このようなノズルを用いる際の最適な開口形状について
は実施例において具体的に述べる。
【0022】本発明において採用される基本的な製造装
置は、既に述べたように溶融金属をノズル4を介して冷
却基板9の上に噴出し、熱的接触によって急冷凝固させ
る液体急冷装置のうち、いわゆる単一ロール装置であ
る。勿論、ドラムの内壁を使う遠心急冷装置、エンドレ
スタイプのベルトを使う装置、これらの改良型、例えば
補助ロール、ロール表面温度制御装置を付属させたも
の、あるいは減圧下ないし真空中または不活性ガス中で
の鋳造も含まれる。
【0023】次に、本発明において採用される鋳造条件
および具体的な鋳造の作業について説明する。ノズルと
ロールとの間隔は、0.05〜3mmの範囲であり、ノズ
ルの構造やその他の製造因子に合わせて最適な値を選
ぶ。溶融金属の噴出圧力は、0.01〜3kg/cm2 、ロ
ールの回転速度(表面速度)は、5〜60m/秒の範囲
である。これらの条件もノズルの構造やその他の製造因
子に合わせて最適な値を選択する。
【0024】鋳造作業として、溶解開始前に予め鋳造時
を想定してノズルとロールとの最適な間隔位置を記憶さ
せ、その後一旦、ワークコイル内にルツボを移動させて
から試料を溶解する。そして、溶解後ロール回転、噴出
圧力を設定した後、再び予め記憶させておいたロールと
の最適間隔位置にルツボを戻し、鋳造を開始する。この
ため、ワークコイルの位置は、ロール表面から少し離れ
た位置とするのが好ましい。
【0025】本発明により製造できる薄帯の成分として
は、非晶質になり易い金属や圧延などの加工が困難な金
属の場合に利点が大きいが、これらに限定されるもので
はない。勿論、溶解する金属の種類によっては、特に、
その反応性からルツボおよびノズルの材質として制限を
受ける場合もある。例えば、鉄と半金属(B、Si、C
など)からなる非晶質合金の場合、ルツボ材質として石
英が使用できるが、AlやTiなどの活性金属を含む場
合は石英の使用は難しく、例えば、窒化珪素、サイアロ
ンなどが好ましい。また、ルツボおよびノズルは、同種
の物質から一体化されたものでもよいし、同種の物質、
あるいは異種の物質でそれぞれ別々に作製して、目地材
等で連結したものでもよい。
【0026】これまで述べたように、本発明によって、
ルツボにより広幅薄帯、特に板幅が200mm以上の場
合でも板厚変動10%以下と板厚変動の小さい薄帯が、
安定して製造できるようになった。
【0027】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいてさらに説明
する。実施例1 底部に開口を有する窒化珪素からなる寸法が長辺側33
0mm、短辺側35mm、高さ450mmの深さ方向に
対する横断面が長方形であるルツボを用いて、板幅30
0mmの非晶質薄帯の製造を行った。つまり、用いたル
ツボとノズルは同質で一体化したものである。
【0028】ノズル開口の形状を、図3を用いて説明す
ると、a=1.5mm、w=1mm、d=0.7mm、
α=41°である。また、ノズル開口の個数は、175
個とした。用いた装置は長辺側380mm、短辺側70
mmの深さ方向に対する横断面が長方形である試料溶解
用ワークコイル、冷却用ロールとして幅600mm、直
径600mmで銅製のものからなる単ロール装置であ
る。本ルツボ内部にストッパーを装着し、組成がFe
80.512 Si6.5(at%)の合金2
kgを挿入した。
【0029】試料溶解前に、予め準備していた銅製の支
持冶具内面に、断熱材として厚さ25mmで外寸46m
m×59mmの中溝状にくり抜いた(くり抜き部の寸
法:332mm×39mmで深さ10mm)カオウール
(商品名:ボード1500)を接着剤で固定し、ルツボ
下端のノズル部の下面からおよそ15mm高さまで分の
全体をこの断熱材で覆い、支持冶具を装置に固定した。
支持冶具には取っ手を取り付け、この取っ手の中央部を
装置の固定板に接触させ、てこの要領で取っ手の先端に
重しを取り付けることにより断熱材をノズルの下部から
押し付けるようにした。こうすることによって、断熱材
が全開口を含むノズル部を隙間無く覆うようにした。
【0030】その後、試料溶解を開始し、20分程度で
試料が溶解したのを熱電対で確認した。なお、試料溶解
時ノズル部には一切割れが発生しなかった。試料溶解
後、溶融試料を1350℃としてから、断熱材を支持冶
具ごと外し、ルツボを予め設定していた位置まで降ろ
し、ストッパーを開放して溶融金属をノズル開口からロ
ール上に噴出して薄帯を得た。なお、このときの鋳造条
件として、噴出圧を0.3kg/cm2 、ロール表面速
度を25m/秒とした。また、ノズルとロール表面との
間隔を0.3mmとした。
【0031】得られた薄帯は、板幅がおよそ300m
m、板厚36μm(マイクロメーター測定)であり、フ
リー面、ロール面との180°密着曲げで破壊しなかっ
た。また、X線回析、DSC分析の結果は非結晶質状態
を示していた。
【0032】得られた薄帯の板厚変動を調べるために、
薄帯長手方向2mごとに5mm長さのサンプルを採取
し、それぞれのサンプルについてマイクロメーターを用
いて板厚(最大厚)を測定した。さらにそれぞれのサン
プルについて重量と比重(7.26)から板厚を算出
し、この板厚のマイクロメーターから求めた板厚に対す
る比率を求めた。得られた比率の平均値は、96.7%
と高い値であった。マイクロメーターおよび薄帯重量か
ら算出した板厚の変動は、それぞれ5.3%、4.5%
といずれも10%以下の良好な値を示した。
【0033】試料溶解時にノズルの割れが一切発生しな
かったことから、良好な板厚精度を有する広幅薄帯が得
られたと考えられる。
【0034】実施例2 アルミナからなるルツボと、窒化珪素からなるノズルと
を目地材で結合させたものを用い、300mm幅薄帯の
鋳造実験をおこなった。なお、ルツボの寸法は、長辺側
330mm、短辺側35mm、高さ450mmであっ
た。一方、ノズルの寸法は、長辺側315mm、短辺側
28mm、高さ30mmとし、ルツボ底部からおよそ2
mmほどノズルがでる程度にノズルをルツボに固定し
た。
【0035】その他の製造条件は、ロール表面速度(2
0m/秒)以外、実施例1と同様にした。つまり、ルツ
ボ内にストッパーを装着して試料をルツボ内に挿入し、
試料溶解前に、実施例1で用いた断熱材をルツボの底部
に見えるノズル全体を隠すように覆った。断熱材の装着
は、実施例1と同様の要領で行った。断熱材には発熱体
として電気抵抗体(ニクロム線)を埋込み、通電加熱で
きるようにし、通電加熱しながら試料溶解を開始し、2
0分程度で試料を溶解した。試料溶解後、溶融試料を1
350℃にしてから、断熱材を支持冶具ごと外た。但
し、断熱材を外すのに僅かに時間を要してしまったこと
から、ルツボを予め設定していた位置まで下降を開始す
るまで約2分ほど要した。ノズルを設定と通りの位置に
到着させ、ストッパーを開放し、溶融試料を噴出して薄
帯を製造した。
【0036】本実験において、試料加熱中ノズルの割れ
は一切発生しなかった。また、断熱材を外すのに少々時
間を要したにもかかわらず、断熱材を外してから試料を
噴出し終えるまで、ノズルの割れは一切発生しなかっ
た。
【0037】得られた薄帯の板幅は、およそ300mm
で、板厚40μm(マイクロメーター測定)あった。得
られた薄帯の板厚変動を調べるために実施例1と同様の
要領で、マイクロメータで測定した板厚(最大厚)に対
する重量と比重から算出した板厚の比率を求めたとこ
ろ、得れらた値は96.3%であった。また、マイクロ
メーターおよび薄帯重量から算出した板厚の変動は、そ
れぞれ5.8%、4.9%といずれも10%以下の良好
な値を示した。試料溶解時および噴出前においてノズル
の割れが一切発生しなかったことから、良好な板厚精度
を有する広幅薄帯が得られたと考えられる。
【0038】比較例 底部に開口を有する窒化珪素からなる寸法が長辺側33
0mm、短辺側35mm、高さ450mmの深さ方向に
対する横断面が長方形であるルツボを用いて、板幅30
0mmの非晶質薄帯の製造を行った。ノズル開口の形状
を、図1を用いて説明すると、a=1.5mm、w=
1mm、d=0.7mm、α=41°とした。また、
ノズル開口の個数は、175個とした。なお、試料加熱
時、ノズル先端は、大気中に晒したままとした。
【0039】その他の製造条件は、実施例1と同様にし
た。試料溶解を開始後、試料が完全に溶解する直前に、
ノズルの両端に割れが発生し、ノズルの1部が破損し
た。その後、しばらくしてからノズルの破損部から溶融
試料が漏れ出したため、実験を中止した。以上のよう
に、試料溶解時にノズルの割れが発生したために、薄帯
の製造を中止せざるを得なかった。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、広幅薄帯を製造する際
に発生していた熱応力起因の割れを完全に防ぐことが可
能になった。これによって、ノズルの割れが原因となっ
て発生していた鋳造時のトラブルを解消し、製造コスト
の削減が可能となった。また、板厚変動の小さい薄帯を
安定して製造することが可能となることから、製造歩留
も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を説明する模式図。
【図2】本発明における鋳造方法を示す模式図。
【図3】本発明で用いるノズルおよびノズル開口形状の
一例を示す説明図。
【符号の説明】
1 断熱材 2 断熱材支持用冶具 3 ルツボ 4 ノズル 5 ノズル開口 6 ストッパー 7 ワークコイル 8 溶融試料 9 冷却基板 10 広幅薄帯
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本 多 勝 美 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 柚木園 邦 裕 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 荒 木 謙 二 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】移動する冷却基板上に、溶融金属又は合金
    をノズルを介して噴出させて金属薄帯を得る方法におい
    て、所定の金属又は合金を加熱、溶解する際、溶融金属
    又は合金を噴出するための開口を有するノズルの前記開
    口を含む先端部を断熱材で覆い、前記金属又は合金が溶
    解した後、前記断熱材を外し、所定の速度で移動する冷
    却基板上に前記金属又は合金の溶融試料をノズルの開口
    から噴出し、急冷凝固させることを特徴とする広幅急冷
    凝固薄帯製造方法。
  2. 【請求項2】製造される金属又は合金の板幅が200mm
    以上であることを特徴とする請求項1に記載の広幅急冷
    凝固薄帯製造方法。
  3. 【請求項3】移動する冷却基板上に、溶融金属又は合金
    をノズルを介して噴出させて金属薄帯を得る方法におい
    て、所定の金属又は合金を加熱、溶解する際、溶融金属
    又は合金を噴出するための開口を有するノズルの前記開
    口を含む先端部を発熱材で覆い、前記金属又は合金が溶
    解した後、前記発熱材を外し、所定の速度で移動する冷
    却基板上に前記金属又は合金の溶融試料をノズルの開口
    から噴出し、急冷凝固させることを特徴とする広幅急冷
    凝固薄帯製造方法。
  4. 【請求項4】製造される金属又は合金の板幅が200mm
    以上であることを特徴とする請求項3に記載の広幅急冷
    凝固薄帯製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021074750A (ja) * 2019-11-08 2021-05-20 大同特殊鋼株式会社 溶湯装置

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