JPH07197871A - 電磁式燃料噴射弁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 常に安定した馬蹄形状の霧状燃料を得ること
のできる燃料噴射弁を提供する。 【構成】 バルブシート６の端部に、アダプター１０を
配置する。アダプター１０には、バルブシート６の噴孔
６Ｃに臨む噴射室１０Ｃが形成され、この噴射室１０Ｃ
には、隔別された複数の分流路１１が開口する。各分流
路１１の噴射室１０Ｃへの開口端に、分流路１１の内周
壁１１Ａの一部より中心方向に向かう仕切片１２を突出
して形成する。分流路１１には、仕切片１２と同一縦断
面上の仕切片１２の基部１２Ａ側にあって、一側方がア
ダプター１０の外周に開口し、他側方が分流路１１内に
開口し、前記分流路の長手方向に沿う空気スリット溝１
３を、仕切片１２に沿って穿設する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関に用いられる
電磁式燃料噴射弁に関するものであり、そのうち特に電
磁式燃料噴射弁（以下燃料噴射弁という）より噴射され
る燃料の噴霧形状の改善に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、燃料噴射弁より噴射される燃料
を、機関の吸気弁の弁軸を回避させて噴射し、ＨＣの排
出量の低減化及び燃費の向上を図った燃料噴射弁は実開
平３−１２９７７２号公報に示される。

【０００３】かかる燃料噴射弁は、噴孔から噴射される
燃料噴霧に対し、一側から空気を噴射する空気噴孔を形
成し、この空気噴孔より燃料噴霧に対して空気を噴射し
たものであり、一側からの空気噴射圧力によって燃料噴
霧を略馬蹄形状としたものである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】かかる従来の燃料噴射
弁によると、馬蹄形状の燃料噴霧は、第１方向（下流方
向）に噴射される燃料噴霧と、第２方向（下流方向に対
する側方の方向）に噴射される加圧された空気流との相
対関係によって形成される。従って、噴孔から噴射され
る燃料噴霧状態の変化（これは、燃料噴霧形状の変化あ
るいは燃料噴霧速度の変化であって、主に燃料噴孔の微
小な形状変化、燃料噴射圧力の変化、等によって生ず
る。）あるいは、空気噴孔から噴射される噴射空気圧の
変化によってその馬蹄形状の燃料噴霧状態が変化するも
のでＨＣの排出量低減及び燃費の改善を均一に達成でき
ないものであった。又、加圧された空気流によって燃料
噴霧を偏穿させて馬蹄形状の燃料噴霧を形成したこと
は、加圧された空気流を必ず必要とするもので、加圧さ
れた空気流を有しない燃料噴射弁への採用ができないも
のであった。

【０００５】本発明は、かかる問題点に鑑み成されたも
ので、常に安定した馬蹄形状の燃料噴霧状態を得ること
によってＨＣの排出量の低減及び燃費の改善を効果的に
行なうとともに特に加圧された空気流（空気噴射）に依
存することなく馬蹄形状の燃料噴霧状態を得ることので
きる燃料噴射弁を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決する為
に、本発明は ハウジングの内部に配置された電磁コイ
ルへの通電によって可動コアが駆動され、可動コアと一
体的に駆動するニードル弁の弁部によってハウジングの
端部に配置されるバルブシートに形成された弁座を開閉
制御し、弁座の下流側にあってバルブシートの端部に開
口する噴孔より燃料を噴射する電磁式燃料噴射弁におい
て、バルブシートの端部に、噴孔より噴射される燃料が
流入する噴射室と一端が噴射室の底部に開口し、他端が
端部に向かって開口する隔別された複数の分流路とを備
えるアダプターを配置し、前記アダプターの各分流路の
噴射室への開口端に分流路の内周壁の一部より中心方向
に向かう仕切片を突出して形成し、更に、分流路には、
仕切片と同一縦断面上の仕切片の基部側にあって、一側
方がアダプターの外周に開口し、他側方が分流路内に開
口し、前記分流路の長手方向に沿う空気スリット溝を、
仕切片に沿って穿設した点に第１の特徴がある。

【０００７】又、本発明は、アダプターに形成された噴
射室に空気流路を開口した点を第２の特徴とする。

【０００８】

【作用】燃料噴射弁内に加圧供給された燃料は、弁座よ
り噴孔を介して噴射室内へ噴射される。噴射室内の燃料
は分流路を介して流下するが、噴射室から分流路内への
燃料の流入時、燃料は仕切片によってその横断面が欠円
形状の馬蹄形状に変形される。そして、各分流路を流下
する馬蹄形状の燃料噴霧の欠円部に対し、空気スリット
溝より連続して空気が導入されるので馬蹄形状の燃料噴
霧は確実にその馬蹄形状を保持し、各分流路の開口端よ
り馬蹄形状の燃料噴霧を噴射することができる。

【０００９】又、噴射室内に空気を導入したことによる
と、噴射室内における燃料の霧化が向上し、各分流路か
ら噴射される馬蹄形状の燃料噴霧の微粒化を向上するに
一層効果的であり、これは第２の特徴によって達成され
る。

【００１０】

【実施例】以下、本発明になる燃料噴射弁の一実施例を
図１、図２、図３、図４によって説明する。１は上下方
向が開口した円筒状のハウジングであり、該ハウジング
の上端からコイルボビン２に巻回された電磁コイル３
と、固定コア４が挿入され、固定コア４の拡大鍔部４Ａ
がハウジング１の係止段部１Ａに配置された状態でハウ
ジング１の上端が拡大鍔部４Ａの上端に向けて内方へカ
シメられる。電磁コイル３は端子５を介して外方に引出
され、固定コア４の中心には上端から下端に向けて流路
４Ｂが穿設され、流路４Ｂの上方の開口は図示せぬ燃料
ポンプの吐出孔に連絡される。電磁コイル３には端子５
を介して電気信号が入力される。

【００１１】ハウジング１の下端開口よりバルブシート
６が挿入配置され、バルブシート６には、弁座６Ａと、
弁座６Ａより上方に向かって開口するニードル弁案内孔
６Ｂと、弁座６Ａより下方に向かって開口する噴孔６Ｃ
とが形成される。このニードル弁案内孔６Ｂ内には、ニ
ードル弁７が移動自在に配置されるもので、ニードル弁
７の下方には、噴孔６Ｃ内に挿入されるピントル部７Ａ
と、弁座６Ａを開閉する弁部７Ｂが連設して形成され、
ニードル弁７の上方には固定コア４の下端に対向する可
動コア８が一体的に配置され、さらに可動コア８と固定
コア４との間にはスプリング９が縮設される。すなわ
ち、電磁コイル３に通電されないとき、ニードル弁７は
下方に押圧され、ニードル弁７の弁部７Ｂはバルブシー
ト６の弁座６Ａを閉塞する。以上は従来公知の燃料噴射
弁である。

【００１２】本発明になる燃料噴射弁は前記目的達成の
為に、以下の構成を付加した。１０は、内筒１０Ａを有
するアダプターであり、内筒１０Ａの底部１０Ｂには、
バルブシート６の下端に開口する噴孔６Ｃに対向する噴
射室１０Ｃが凹設される。

【００１３】そして、噴射室１０Ｃの底部１０Ｄには分
流路１１が開口する。この分流路１１は複数が隔別に設
けられるもので各分流路１１の一端は噴射室１０Ｃの底
部１０Ｄに開口し、他端はアダプター１０の下端に開口
する。本実施例において分流路１１は２個用意された。
すなわち、噴孔６Ｃより噴射された燃料は噴射室１０Ｃ
内に噴射され、各分流路１１を流下してアダプター１０
の下端より噴射される。

【００１４】アダプター１０には更に次の構造が付加さ
れる。１２は各分流路１１の噴射室１０Ｃ内への開口端
又は開口端近傍に形成された仕切片であり、以下の構造
をなす。すなわち、仕切片１２は、分流路１１の上流側
の内周壁１１Ａの一部から中心方向に向かって突出す
る。この仕切片１２は分流路１１の横断面を閉塞するも
のであってはならないもので、分流路１１の横断面を欠
円状態とするもので、分流路１１の内周壁１１Ａ側の仕
切片１２の基部１２Ａより中心方向に向かう仕切片１２
の先端は対向する内周壁に接することなく間隙を有す
る。本実施例において、分流路１１が２個用意されたの
で、仕切片１２もまたそれぞれの分流路１１に配置され
た。仕切片１２の構造は、図２、図３、図４によってよ
く理解できる。更に又、アダプター１０には空気スリッ
ト溝１３が穿設される。この空気スリット溝１３は以下
の要件を備える。一端がアダプター１０の外周１０Ｅ
に開口し、他端が分流路１１内に開口する。仕切片１
２を含む縦断面上で、仕切片１２の基部１２Ａ側にあっ
て、分流路１１の長手方向に延びて穿設される。従って
本実施例にあって、仕切片１２は２個あるので空気スリ
ット溝１３も２個あってそれぞれの分流路１１にあり且
つこの空気スリット溝１３は対向して穿設された。

【００１５】そして、前記バルブシート６、アダプター
１０は以下の如くハウジング１に取着される。すなわ
ち、ハウジング１の下方に形成された係止段部１Ｂ上
に、ストッパー１４、ニードル弁７を備えたバルブシー
ト６、アダプター１０を順次配置し、しかる後にハウジ
ング１の下方の開口端をアダプター１０の鍔部１０Ｆ上
に向けて内方へカシメる。以上によれば、アダプター１
０はバルブシート６に取着され、アダプター１０の噴射
室１０Ｃはバルブシート６の噴孔６Ｃに臨み、アダプタ
ー１０の複数の分流路１１はアダプター１０の下端より
開口する。

【００１６】次にその作用について説明する。図示され
ない燃料ポンプによって加圧された燃料は、流路４Ｂを
介して燃料噴射弁内に供給され、バルブシート６の弁座
６Ａに達する。電磁コイル３に通電されていない状態に
おいて、ニードル弁７はスプリング９によって押圧さ
れ、弁部７Ｂが弁座６Ａを閉塞するので、噴孔６Ｃから
燃料が噴射されることはない。

【００１７】そして、電磁コイル３に所定のデューティ
比の電流が供給されると、電磁コイル３の周囲に磁力が
発生し、ニードル弁７はスプリング９のバネ力に抗して
上動し、弁部７Ｂが弁座６Ａを開放する。以上による
と、燃料噴射弁内に貯溜されていた加圧燃料は弁座６Ａ
を介して噴孔６Ｃ内へ流れこみ、噴孔６Ｃとピントル部
７Ａによってその量が計量されて噴射室１０Ｃ内に向け
て噴射される。

【００１８】そして噴射室１０Ｃ内の燃料は各仕切片１
２を通過しつつ各分流路１１内へ流下するが、この通過
の際において、燃料は各仕切片１２によってその部の通
過を阻止されるので、この仕切片１２に相当する部位の
燃料が遮断される。本実施例の分流路１１の形状におい
て、仕切片１２が設けられなかった場合、分流路１１を
流れる燃料の横断面形状は略円形状あるいは環状を成す
が、仕切片１２が前述の如く分流路１１内に配置された
ので、分流路１１を流れる燃料の横断面形状は円形が欠
円された欠円状態の馬蹄形状（いいかえるとＣ型形状）
をなす。そして、かかる横断面形状が馬蹄形状をなす燃
料が分流路１１内を流下する際、仕切片１２と同一位置
に燃料の流れ方向にほぼ連続的に穿設された空気スリッ
ト溝１３を介して分流路１１内へ空気が吸入され、（こ
れは流速をもった燃料が流下することによって空気が引
きこまれる）かかる空気が燃料の欠円部分に流入するの
で分流路１１内を流下する燃料の横断面形状は依然とし
て仕切片１２に相当する部位に燃料のない欠円状態の馬
蹄形状の燃料が良好に保持される。（分流路１１に空気
スリット溝１３が穿設されない場合、分流路１１内を流
下する燃料の横断面形状は欠円状態から円状態に復帰す
るか、若しくは、欠円部分に燃料が入りこみ正確な欠円
状態の馬蹄形状を得ることが困難である。）

【００１９】そして、アダプター１０の端部に開口する
各分流路１１の開口より馬蹄形状の霧状燃料が噴射され
る。

【００２０】而して、馬蹄形状の切欠かれた部分により
吸気弁の弁軸に対する霧状燃料の衝突が回避されたこと
によって、ＨＣの排出量の低減及び燃費の向上を大きく
改善できたものである。

【００２１】尚、馬蹄形状の霧状燃料の欠円部の位置を
決定する仕切片１２の突出する分流路１１に対する位
置、あるいは仕切片１２の形状、分流路１１内への突出
寸法、更には分流路１１の形状等は本実施例に限定され
るものでなく適宜選定される。

【００２２】又、アダプター１０の内筒１０Ａ内に、一
端がアダプター１０の外周１０Ｅに開口し、他端が噴射
室１０Ｃに開口する空気溝２０を穿設し、該空気溝２０
が穿設されたアダプター１０をバルブシート６の外周に
挿入したことによって、一端がアダプター１０の外周１
０Ｅに開口し、他端が噴射室１０Ｃに開口する空気流路
２１を設けたことによると、噴射室１０Ｃ内を流れる流
速の速い霧状燃料に対して空気を混合できたので霧状燃
料の霧化性を向上できるもので、分流路１１から良好に
霧化された馬蹄形状の霧化燃料を供給できるので、ＨＣ
の排出量の低減、燃費の向上を一層効果的に行なうこと
ができたものである。この空気は馬蹄形状を得る為に用
いるものでない。又、かかる空気を混合する手段を用い
る際において、単にアダプターを交換すればよいので、
その選択の自由度は著しく容易に行なわれるものであ
る。空気流路２１を備えたアダプター１０は図５に示さ
れる。

【００２３】

【発明の効果】以上のように、本発明になる燃料噴射弁
によると以下の効果を達成しうる。馬蹄形状をなす燃
料の噴霧形状は、噴射室内に噴射された燃料が仕切片に
よって強制的に欠円状態に形成されて分流路内へ噴射さ
れること、及び分流路内を流れる燃料の欠円部に向けて
空気スリット溝より連続的に空気が吸入されることによ
り形成されるもので、安定した馬蹄形状の燃料噴霧形状
を確実に得ることができ、ＨＣの排出量の低減と燃費の
改善を効果的に行なうことができる。馬蹄型の噴霧形
状は機関の吸気弁の配置、燃料噴射弁の配置等によって
決定されるものであるが、それらに適合させる際におい
て、単にアダプターを交換すればよいので、各種機関に
対して最適なる馬蹄形状の霧状燃料を極めて経済的に且
つ容易に得ることができる。噴射室内に空気流路を開
口し、該空気流路より噴射室内へ空気を供給したことに
よると、もっとも燃料の噴射速度の速い部分において燃
料と空気との混合を行なうことができ、これを分流路に
向けて噴射できるので分流路より噴射される馬蹄形の噴
霧燃料の霧化を一層向上できたものであり、かかる空気
流路を設ける際、単にアダプターを空気流路を備えたア
ダプターに交換すればよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明になる燃料噴射弁の一実施例を示す縦断
面図。

【図２】図１のバルブシート、アダプターの要部拡大縦
断面図。

【図３】図２のアダプターを下方よりみた平面図。

【図４】図２の燃料噴射弁のＢ−Ｂ線における横断面
図。

【図５】アダプターの他の実施例を示す要部拡大縦断面
図。

【符号の説明】

１ ハウジング ３ 電磁コイル ６ バルブシート ６Ａ 弁座 ６Ｃ 噴孔 ７ ニードル弁 ７Ｂ 弁部 １０ アダプター １０Ｃ 噴射室 １１ 分流路 １２ 仕切片 １３ 空気スリット溝 ２１ 空気流路

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジング１の内部に配置された電磁コ
   イル３への通電によって可動コア８が駆動され、可動コ
   ア８と一体的に駆動するニードル弁７の弁部７Ｂによっ
   てハウジング１の端部に配置されるバルブシート６に形
   成された弁座６Ａを開閉制御し、弁座６Ａの下流側にあ
   ってバルブシート６の端部に開口する噴孔６Ｃより燃料
   を噴射する電磁式燃料噴射弁において、バルブシート６
   の端部に、噴孔６Ｃより噴射される燃料が流入する噴射
   室１０Ｃと一端が噴射室１０Ｃの底部１０Ｄに開口し、
   他端が端部に向かって開口する隔別された複数の分流路
   １１とを備えるアダプター１０を配置し、前記アダプタ
   ーの各分流路１１の噴射室１０Ｃへの開口端に分流路１
   １の内周壁１１Ａの一部より中心方向に向かう仕切片１
   ２を突出して形成し、更に、分流路１１には、仕切片１
   ２と同一縦断面上の仕切片１２の基部１２Ａ側にあっ
   て、一側方がアダプター１０の外周１０Ｅに開口し、他
   側方が分流路１１内に開口し、前記分流路の長手方向に
   沿う空気スリット溝１３を、仕切片１２に沿って穿設し
   たことを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
2. 【請求項２】 前記、アダプターに形成された噴射室１
   ０Ｃに空気流路２１を開口したことを特徴とする請求項
   １記載の電磁式燃料噴射弁。