JP2603899B2 - 電磁式燃料噴射弁 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関に用いられる
電磁式燃料噴射弁に関するものであり、そのうち特に電
磁式燃料噴射弁（以下燃料噴射弁という）より噴射され
る燃料の噴霧形状の改善に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、燃料噴射弁より噴射される燃料
を、機関の吸気弁の弁軸を回避させて噴射し、ＨＣの排
出量の低減化及び燃費の向上を図った燃料噴射弁は実開
平３−１２９７７２号公報に示される。

【０００３】かかる燃料噴射弁は、噴孔から噴射される
燃料噴霧に対し、一側から空気を噴射する空気噴孔を形
成し、この空気噴孔より燃料噴霧に対して空気を噴射し
たものであり、一側からの空気噴射圧力によって燃料噴
霧を略馬蹄形状としたものである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】かかる従来の燃料噴射
弁によると、馬蹄形状の燃料噴霧は、第１方向（下流方
向）に噴射される燃料噴霧と、第２方向（下流方向に対
する側方の方向）に噴射される空気流と、の相対関係に
よって形成される。従って、噴孔から噴射される燃料噴
霧状態の変化、（これは燃料噴霧形状の変化あるいは燃
料噴霧速度の変化であって、主に燃料噴孔の微小な形状
変化、燃料噴射圧力の変化、等によって生ずる）あるい
は、空気噴孔から噴射される噴射空気圧の変化、によっ
てその馬蹄形状の燃料噴霧状態が変化するものでＨＣの
排出量低減及び燃費の改善を均一に達成できないもので
あった。又、空気流によって燃料噴霧を偏寄させて馬蹄
形状の燃料噴霧を形成したことは、空気流を必ず必要と
するもので、空気流を有しない燃料噴射弁への採用がで
きないものであった。

【０００５】本発明は、かかる問題点に鑑み成されたも
ので、常に安定した馬蹄形状の燃料噴霧状態を得ること
によってＨＣの排出量の低減及び燃費の改善を効果的に
行なうとともに空気流（空気噴射）に依存することなく
馬蹄形状の燃料噴霧状態を得ることのできる燃料噴射弁
を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決する為の手段】前記、課題を解決する為
に、本発明は、ハウジングの内部に配置された電磁コイ
ルへの通電によって可動コアが駆動され、可動コアと一
体的に駆動するニードル弁の弁部によってハウジングの
端部に配置されるバルブシートに形成された弁座を開閉
制御し、弁座の下流側にあってバルブシートの端部に開
口する噴孔より燃料を噴射する電磁式燃料噴射弁におい
て、バルブシートの端部に、噴孔より噴射される燃料が
流入する噴射室と、一端が噴射室に開口し、他端が端部
に開口する複数の分配路が隔別に設けられたアダプター
を配置し、前記アダプターの各分配路には、その横断面
形状が欠円形状をなす馬蹄形状溝を設けた点に第１の特
徴がある。

【０００７】又、本発明は、馬蹄形状溝が形成される分
配路の底部を、分配路の中心から馬蹄形状溝に向けて傘
型の傾斜面としたことを第２の特徴とする。

【０００８】又、本発明は、アダプターに穿設された噴
射室に、空気流路を開口したことを第３の特徴とする。

【０００９】

【作用】燃料噴射弁内に加圧供給された燃料は、弁座よ
り噴孔を介して噴射室内に噴射され、噴射室内の燃料
は、分配路によって複数に分流される。そして、分配路
内を流れる噴霧状態の燃料は、横断面形状が欠円状をな
す馬蹄形状溝によって強制的に馬蹄形状に規制され、バ
ルブシートの端部より馬蹄形状の燃料噴霧を噴射する。

【００１０】又、分配路内を流れる噴霧状態の燃料は分
配路内に滞溜することなく即座に馬蹄形状の燃料噴霧を
バルブシートの端部より噴射できるもので、これは第２
の特徴によって達成される。

【００１１】又、噴射室内に空気を導入したことによる
と、分配路内における燃料の霧化が向上し、馬蹄形状溝
から噴射される馬蹄形状の燃料噴霧の微粒化を向上する
に一層効果的であって、これは第３の特徴によって達成
される。

【００１２】

【実施例】以下、本発明になる燃料噴射弁の一実施例を
図１、図２、図３によって説明する。１は上下方向が開
口した円筒状のハウジングであり、該ハウジングの上端
からコイルボビン２に巻回わされた電磁コイル３と、固
定コア４が挿入され、固定コア４の拡大鍔部４Ａがハウ
ジング１の係止段部１Ａに配置された状態でハウジング
１の上端が拡大鍔部４Ａの上端に向けて内方へカシメら
れる。電磁コイル３は端子５を介して外方に引出され、
固定コア４の中心には上端から下端に向けて流路４Ｂが
穿設され、流路４Ｂの上方の開口は図示せぬ燃料ポンプ
の吐出孔に連絡される電磁コイル３には端子５を介して
電気信号が入力される。

【００１３】ハウジング１の下端開口よりバルブシート
６が挿入配置され、バルブシート６には、弁座６Ａと、
弁座６Ａより上方に向かって開口するニードル弁案内孔
６Ｂと、弁座６Ａより下方に向かって開口する噴孔６Ｃ
と、が形成される。このニードル弁案内孔６Ｂ内には、
ニードル弁７が移動自在に配置されるもので、ニードル
弁７の下方には、噴孔６Ｃ内に挿入されるピントル部７
Ａと、弁座６Ａを開閉する弁部７Ｂが連設して形成さ
れ、ニードル弁７の上方には固定コア４の下端に対向す
る可動コア８が一体的に配置され、さらに可動コア８と
固定コア４との間にはスプリング９が縮設される。すな
わち、電磁コイル３に通電されないとき、ニードル弁７
は下方に押圧され、ニードル弁７の弁部７Ｂはバルブシ
ート６の弁座６Ａを閉塞する。以上は従来公知の燃料噴
射弁である。

【００１４】本発明になる燃料噴射弁は前記目的達成の
為に、以下の構成を付加した。１０は、内筒１０Ａを有
するアダプターであり、内筒１０Ａの底部１０Ｂにはバ
ルブシート６の下端に開口する噴孔６Ｃに対向する噴射
室１０Ｃが凹設される。そして噴射室１０Ｃの底部１０
Ｄには、アダプター１０の下端に向かって開口する複数
の分配路１１が隔別に穿設される。すなわち、各分配路
１１の一端は、噴射室１０Ｃに開口し、他端はアダプタ
ー１０の下端に開口する。本実施例において分配路１１
は２個用意された。更に又、前記各分配路１１には馬蹄
形状溝１１Ａが形成される。本実施例において馬蹄形状
溝１１Ａは分配路１１の下流側に形成されたもので、こ
こで馬蹄形状溝１１Ａとは分配路１１の長手軸心方向に
略直交する横断面において、その横断面形状が欠円形状
の溝（いいかえるとＣ型形状溝）を成すもので、図３に
よく示される。そして、前記バルブシート６、アダプタ
ー１０は以下の如くハウジング１に取着される。すなわ
ち、ハウジング１の下方に形成された係止段部１Ｂ上
に、ストッパー１２、ニードル弁７を備えたバルブシー
ト６、アダプター１０を順次配置し、しかる後にハウジ
ング１の下方の開口端をアダプター１０の鍔部１０Ｅ上
に向けて内方へカシメる。

【００１５】以上によれば、アダプター１０はバルブシ
ート６に取着され、アダプター１０の底部１０Ｂはバル
ブシート６の下端に対接し、噴射室１０Ｃは噴孔６Ｃに
対向して配置され、噴射室１０Ｃに開口する分配路１１
の他端はアダプター１０の下端に開口する。

【００１６】次にその作用について説明する。図示され
ない燃料ポンプによって加圧された燃料は、流路４Ｂを
介して燃料噴射弁内に供給され、バルブシート６の弁座
６Ａに達する。電磁コイル３に通電されていない状態に
おいて、ニードル弁７はスプリング９によって押圧さ
れ、弁部７Ｂが弁座６Ａを閉塞するので、噴孔６Ｃから
燃料が噴射されることはない。

【００１７】そして、電磁コイル３に所定のデューティ
比の電流が供給されると、電磁コイル３の周囲に磁力が
発生し、ニードル弁７はスプリング９のバネ力に抗して
上動し、弁部７Ｂが弁座６Ａを開放する。以上による
と、燃料噴射弁内に貯溜されていた加圧燃料は弁座６Ａ
を介して噴孔６Ｃ内へ流れこみ、噴孔６Ｃとピントル部
７Ａによってその量が計量されてアダプター１０の噴射
室１０Ｃ内に向けて噴射される。

【００１８】そして噴射室１０Ｃ内に噴射された燃料は
隔別に設けられたアダプター１０の各分配路１１内へと
噴射される。

【００１９】そして分配路１１内に噴射された燃料は分
配路１１の上流から下流に向かって流下し、分配路１１
の下端（アダプター１０の下端）から噴射されるが、分
配路１１内を流下する燃料は馬蹄形状溝１１Ａによって
その流れが強制的に抑制されるので、分配路１１内の下
流端（アダプター１０の下端）から噴射される燃料は馬
蹄形状溝１１Ａにならった馬蹄形状の霧状燃料が噴射さ
れる。

【００２０】而して、馬蹄形状の切欠かれた部分により
吸気弁の弁軸に対する霧状燃料の衝突が回避されたこと
によって、ＨＣの排出量の低減及び燃費の向上を大きく
改善できたものである。尚、馬蹄形状の切欠き位置（Ｃ
型形状の欠円部の位置）は本実施例に限定されるもので
なく適宜選定される。

【００２１】又、馬蹄形状溝１１Ａが穿設される分配路
１１の底部１１Ｂ（馬蹄形状溝１１Ａの起点部に相当）
を、分配路１１の中心から馬蹄形状溝１１Ａに向けて傘
型の傾斜面１１Ｃとしたことによると、分配路１１内を
流下する霧状燃料は馬蹄形状溝１１Ａ内へ流入し易くな
るもので、分配路１１内を流れる霧状燃料が分配路１１
内に滞溜することがなく燃料供給の時間的遅れが解消さ
れ、且つ、電磁コイル３への通電が断たれた際におい
て、燃料供給の停止を即座に行なうことができるもの
で、分配路１１からの燃料の後ダレを完全に防止できた
ものである。

【００２２】又、アダプター１０の内筒１０Ａ内に、一
端がアダプター１０の外周に開口し、他端が噴射室１０
Ｃに開口する空気溝１２を穿設し、該空気溝１２が穿設
されたアダプター１０をバルブシート６の外周に挿入し
たことによって、一端がアダプター１０の外周に開口
し、他端が噴射室１０Ｃに開口する空気流路１３を設け
たことによると、噴孔６Ｃより速い速度をもって噴射さ
れる噴射室１０Ｃ内の燃料に直接的に空気を混入できる
ので、分配路１１内を流れる霧状燃料の霧化性を一層向
上できるもので、馬蹄形状溝１１Ａから良好に霧化され
た馬蹄形状の霧化燃料を供給でき、ＨＣの排出量の低
減、燃費の向上、を一層効果的に行なうことができたも
のである。この空気は馬蹄形状の噴霧を得る為に用いら
れるものでない。又、かかる空気を混合する手段を用い
る際において、単にアダプターを交換すればよいので、
その選択の自由度は著しく容易に行なわれるものであ
る。空気流路１３を備えたアダプター１１は図４に示さ
れる。尚、図４に示されたニードル弁７にはピントル部
７Ａを有しないもので、燃料の計量は噴孔６Ｃによって
行なわれる。このニードル弁７の形状に限定を受けるも
のでない。

【００２８】

【発明の効果】以上のように、本発明になる燃料噴射弁
によると以下の効果を達成しうる。 馬蹄形状をなす燃料の噴霧形状は、分配路内を流れる
燃料が馬蹄形状溝内を通過するときに形成されるもの
で、この形成は溝形状によって強制的に行なわれるので
安定した馬蹄形状の燃料噴霧形状を得ることができ、Ｈ
Ｃの排出量の低減と燃費の改善を効果的に行なうことが
できる。 馬蹄型の噴霧形状は機関の吸気弁の配置、燃料噴射弁
の配置等によって決定されるものであるが、それらに適
合させる際において、単にアダプターを交換すればよい
ので、各種機関に対して最適なる馬蹄形状の霧状燃料を
極めて経済的に且つ容易に得ることができる。 馬蹄形状溝は分配路内に形成されることから馬蹄形状
溝の溝面積を分配路の面積に比較して小とすることがで
き、馬蹄形状溝内を流下する燃料速度の低下を抑止でき
たことにより霧化の良好なる馬蹄形状の霧状燃料を噴射
供給できるものである。 分配路の底部を、分配路の中心から馬蹄形状溝に向か
う傘型の傾斜面としたことによると、分配路内における
燃料の滞溜がなくなるもので、電磁コイルへの通電時の
噴射時における燃料の応答性と、電磁コイルへの遮電時
における燃料の後ダレを抑止できたものである。 噴孔より燃料が直接的に噴射される噴射室内に空気流
路を開口したことによると、分配路内に流入する燃料の
霧化状態を良好にすることができるもので、馬蹄形の噴
霧燃料の霧化を一層向上できたものであり、かかる空気
流路を設ける際、単にアダプターを、空気流路を備えた
アダプターに交換すればよい。 従来構造の燃料噴射弁に対してアダプターを用意し、
それらを従来のバルブシートの先端部に取着すればよい
のでその実施は極めて容易に行なうことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明になる燃料噴射弁の一実施例を示す縦断
面図。

【図２】図１のバルブシート、アダプターの要部拡大縦
断面図。

【図３】図２のアダプターを下方よりみた平面図。

【図４】アダプターの他の実施例を示す要部拡大縦断面
図。

【符号の説明】

１ ハウジング ３ 電磁コイル ６ バルブシート ６Ａ 弁座 ６Ｃ 噴孔 ７ ニードル弁 ７Ｂ 弁部 １０ アダプター １０Ｂ 底部 １０Ｃ 噴射室 １１ 分配路 １１Ａ 馬蹄形状溝 １１Ｂ 底部 １３ 空気流路

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジング１の内部に配置された電磁コ
   イル３への通電によって可動コア８が駆動され、可動コ
   ア８と一体的に駆動するニードル弁７の弁部７Ｂによっ
   てハウジング１の端部に配置されるバルブシート６に形
   成された弁座６Ａを開閉制御し、弁座６Ａの下流側にあ
   ってバルブシート６の端部に開口する噴孔６Ｃより燃料
   を噴射する電磁式燃料噴射弁において、バルブシート６
   の端部に、噴孔６Ｃより噴射される燃料が流入する噴射
   室１０Ｃと、一端が噴射室１０Ｃに開口し、他端が端部
   に開口する複数の分配路１１が隔別に設けられたアダプ
   ター１０を配置し、前記アダプター１０の各分配路１１
   には、その横断面形状が欠円形状をなす馬蹄形状溝１１
   Ａを設けてなる電磁式燃料噴射弁。
2. 【請求項２】 前記、馬蹄形状溝が形成される分配路１
   １の底部１１Ｂを、分配路１１の中心から馬蹄形状溝１
   １Ａに向けて傘型の傾斜面１１Ｃとしたことを特徴とす
   る請求項１記載の電磁式燃料噴射弁。
3. 【請求項３】 前記、アダプターに形成された噴射室
   に、空気流路１３を開口してなる請求項１記載の電磁式
   燃料噴射弁。