JPH07190961A - 分析データ解析方法及び装置 - Google Patents

分析データ解析方法及び装置

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JPH07190961A
JPH07190961A JP5330955A JP33095593A JPH07190961A JP H07190961 A JPH07190961 A JP H07190961A JP 5330955 A JP5330955 A JP 5330955A JP 33095593 A JP33095593 A JP 33095593A JP H07190961 A JPH07190961 A JP H07190961A
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JP
Japan
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spectrum
pixe
rbs
sample
analysis
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JP5330955A
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English (en)
Inventor
Kenichi Inoue
憲一 井上
Kojin Furukawa
行人 古川
Kazuji Yokoyama
和司 横山
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 RBS及びPIXEの測定を同一の試料に対
して同時に実行し,両データを比較分析することによっ
て,より精度及び信頼性の高い結果を得る分析データの
解析方法及びその装置を提供する。 【構成】 同一の試料に対して同時にRBS及びPIX
Eによるエネルギースペクトルの測定を行い,それぞれ
測定されたエネルギースペクトルを比較解析する。PI
XEスペクトルにより表面近傍の組成元素を割り出し
て,主要元素を用いてRBS及びPIXEのスペクトル
モデルを構築する。PIXEデータから得られた微量元
素の情報で再びモデルを修正し,反復手続きにより,よ
り精度よく観測データを再現するモデルへと導かれ,最
終モデルはRBSとPIXEの長所が反映され,より信
頼性の高い分析結果となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,イオンビームを試料に
照射して,試料中の成分原子によって散乱されたイオン
や励起された特性X線のエネルギースペクトルを測定
し,このスペクトルを解析することにより試料元素の同
定や試料表面の深さ方向の組成分析を行う分析データ解
析方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】高エネルギーに加速されたイオンビーム
を試料に照射すると,試料表面から散乱イオン,特性X
線,二次電子,反跳粒子等の二次発生信号が発生する。
いずれかの二次発生信号を検出する分析手法により試料
の元素同定,組成分析等を行うことができる。ここで
は,上記二次発生信号の中から,散乱イオンを検出する
RBS(ラザフォード後方散乱分析:Rutherford Backs
cattering Spectroscopy)による分析手法と,上記特性
X線を検出するPIXE(粒子励起X線放出分析:Part
icle Induced X-ray Emission )による分析手法とに注
目する。上記RBS分析では,イオンビームに照射され
た試料から発生する散乱イオンを検出して,散乱イオン
のエネルギースペクトルから元素同定,組成分析を行う
ことができる。とりわけイオンビームの入射方向に対し
て後方に散乱されるイオンを利用するときが最も分解能
が高く,RBSではこの後方散乱イオンを検出する。
又,試料表面からΔxだけ深いところで散乱されるイオ
ンは,入射/出射のとき固体中の軌道電子とのノックオ
ン散乱によりエネルギーを失うため,散乱イオンのエネ
ルギーは入射イオンのエネルギーE1 より更にΔEだけ
低くなる(阻止能)。固体中ではΔEは深さΔxにほぼ
線形に比例するため,このシフト量からイオンが衝突し
た原子核の深さを知ることができる。
【0003】ところが,軽元素基板上の極薄い重元素の
膜のような場合を除けば,一般のRBSスペクトルは原
理的にエネルギー軸上に運動因子Kで決まる質量情報
と,媒質の阻止能に依存した深さ情報を重畳したもので
あるから,そのスペクトルは複雑でスペクトルの幾何特
徴だけから表面近傍の構造を一意に決定することはでき
ない。そこで,スペクトルシュミレーションを用いたモ
デル最適化による定量解析が近年行われるようになっ
た。図3に上記シュミレータを用いたモデル最適化によ
る分析データの解析方法の概念図を示す。本方法では,
入射イオンの飛程深さの表面近傍を多層近似させた離散
化モデルで表現し(モデルテキスト),各層の元素組成
を仮定した元素別密度テーブルから,RBSの散乱公式
及び阻止能を与える表(又は近似関数)を用いて散乱イ
オンのエネルギースペクトルを理論計算で生成する(ス
ペクトルシュミレーション)。この予測結果と実測され
た測定スペクトルとを比較評価して,その差異が小さく
なるように各層の元素密度を修正する。これらの手順を
反復させることによって,最終的に観測スペクトルを再
現し,かなり良い精度で組成比,膜厚,深さ分布を推定
することができる。
【0004】一方,上記PIXE分析は,イオンビーム
により照射された試料から放出される特性X線を検出す
るもので,この特性X線のエネルギーは原子に固有の値
を有し,且つ非常にエネルギー幅が狭いので,元素の同
定/検出に適している。PIXEによる分析は,図4に
示すように特性X線のスペクトルを測定し,特性X線の
ピークからエネルギー元素種類を同定し,信号強度(ピ
ーク高又は面積)から存在量を推定する。しかしなが
ら,観測される特性X線の強度は,入射イオンのエネル
ギーの関数で与えられる励起確率のみならず,入射イオ
ンの飛程,試料媒質中でのX線吸収,二次励起などの現
象に大きく影響されるため,1本のX線強度から分析元
素の絶対定量を行うことは非常に困難である。そこで,
試料と似かよった基板組成をもつ標準サンプルのスペク
トルを予めデータベースとして用意しておき,図5に示
すように,それと比較することによって定量分析が行わ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記RBS及びPIX
Eは,分析原理から特性に違いがあり,それぞれ以下に
示すような問題点があった。 (1)RBSでは,複数の元素が深さ方向に分布した複
雑な表面構造をもつ試料に対しては,含有元素の質量と
その深さ分布情報が同じエネルギー軸に写像されるた
め,モデル最適化の処理を行ったとしても,解を一意に
決定することができない。このため,従来のRBSでは
予め組成又は構造がある程度わかっている試料について
しか,その信頼性を主張できず,任意の構造/組成をも
つ試料の分析においては一歩退いた立場を取らざるを得
ない。 (2)又,RBSでは,重元素を主成分とした基板中の
含有軽元素の分析においては,軽元素の信号が基板元素
のそれと重なる上に,軽元素ほど散乱断面積が小さくな
るため,統計誤差に隠されてしまい,その定量精度が十
数%にも悪化してしまう。 (3)PIXEでは,観測される特性X線の強度は,入
射イオンのエネルギーの関数で与えられる励起確率のみ
ならず,入射イオンの飛程,試料媒質中でのX線吸収,
二次励起などの現象に大きく影響され,1本のX線強度
から分析元素の絶対定量を行うことは非常に困難であ
る。 (4)又,PIXEでは,特定X線のスペクトルは本質
的に深さ方向の情報をもっていないため,深さ方向に均
質な試料以外,即ち深さ方向に構造のある多層,埋め込
み,注入試料の定量分析は困難である。 (5)更に,PIXEでは,重元素ほど励起確率が小さ
いため,特性X線の信号が小さく感度が悪くなる。 上記RBS及びPIXEの特徴を比較してみると,表1
に示すようになる。
【表1】 上記表1を見ると,RBSとPIXEとで,それぞれの
長所短所が相補的な関係にあることに気付く。本発明
は,このRBSとPIXEとの相補的な関係に着目し
て,両者の測定を同一の試料に対して同時に実行し,且
つ両者の情報を比較分析することによって,より精度及
び信頼性の高い結果を得る分析データの解析方法及びそ
の装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明が採用する第1の手段は,イオンビームにより
照射された試料から発生する二次発生信号を検出し,該
二次発生信号のエネルギースペクトルを解析することに
より,上記試料の分析データを得る分析データ解析方法
において,上記二次発生信号の1つである後方散乱イオ
ンを検出して散乱イオンのエネルギースペクトルを測定
するRBS(ラザフォード後方散乱分析)と,上記二次
発生信号の1つである特性X線を検出して特性X線のエ
ネルギースペクトルを測定するPIXE(粒子励起X線
分析)とを,同一試料に対して同時又は順次に実行し,
上記RBS及びPIXEにより測定されたエネルギース
ペクトルを比較解析することを特徴とする分析データ解
析方法である。又,第2の手段は,イオンビームにより
照射された試料から発生する二次発生信号を検出し,該
二次発生信号のエネルギースペクトルを解析することに
より,上記試料の分析データを得る分析データ解析方法
において,上記二次発生信号の1つである後方散乱イオ
ンを検出して散乱イオンのエネルギースペクトルを測定
するRBS(ラザフォード後方散乱分析)と,上記二次
発生信号の1つである特性X線を検出して特性X線のエ
ネルギースペクトルを測定するPIXE(粒子励起X線
分析)とを,同一試料に対して同時又は順次に実行し,
上記PIXEスペクトルから入射イオンが上記試料中に
進入し得る深さの元素同定を行い,同定された元素別に
深さ方向の密度分布テーブルを作成し,上記元素別密度
分布テーブルを用いてRBS予測スペクトルとPIXE
予測スペクトルとをシュミレーションにより作成し,上
記RBS予測スペクトルとPIXE予測スペクトルと
を,測定された上記RBSスペクトルとPIXEスペク
トルとの間でそれぞれ比較して,RBS及びPIXEそ
れぞれの予測スペクトルと測定スペクトルとの差異から
各予測スペクトルを修正し,その差異が小さくなるよう
に上記RBS及びPIXEの各予測スペクトルを最適化
することを特徴とする分析データ解析方法である。
【0007】更に,第3の手段は,イオンビームにより
照射された試料から発生する二次発生信号を検出し,該
二次発生信号のエネルギースペクトルを解析することに
より,上記試料の分析データを得る分析データ解析装置
において,上記二次発生信号の1つである後方散乱イオ
ンを検出して散乱イオンのエネルギースペクトルを測定
するRBS(ラザフォード後方散乱分析)と,上記二次
発生信号の1つである特性X線を検出して特性X線のエ
ネルギースペクトルを測定するPIXE(粒子励起X線
分析)とを同一試料に対して同時又は順次に実行し,上
記RBS及びPIXEにより測定されたエネルギースペ
クトルを比較解析することを特徴とする分析データ解析
装置として構成される。更に,第4の手段は,イオンビ
ームにより照射された試料から発生する二次発生信号を
検出し,該二次発生信号のエネルギースペクトルを解析
することにより,上記試料の分析データを得る分析デー
タ解析装置において,上記二次発生信号の1つである後
方散乱イオンを検出して散乱イオンのエネルギースペク
トルを測定するRBS(ラザフォード後方散乱分析)
と,上記二次発生信号の1つである特性X線を検出して
特性X線のエネルギースペクトルを測定するPIXE
(粒子励起X線分析)とを同一試料に対して同時又は順
次に実行するイオンビーム分析装置と,上記PIXEス
ペクトルから入射イオンが上記試料中に進入し得る深さ
の元素同定を行い,同定された元素別に深さ方向の元素
別密度分布テーブルを作成する元素別密度分布テーブル
作成手段と,上記元素別密度分布テーブルを用いてRB
S予測スペクトルとPIXE予測スペクトルとをシュミ
レーションにより作成する予測スペクトル作成手段と,
上記RBS予測スペクトルとPIXE予測スペクトルと
を,測定された上記RBSスペクトルとPIXEスペク
トルとの間でそれぞれ比較して,RBS及びPIXEそ
れぞれの予測スペクトルと,それぞれの測定スペクトル
との差異が小さくなるように上記各予測スペクトルを反
復修正する最適化手段とを具備してなることを特徴とす
る分析データ解析装置として構成される。
【0008】
【作用】本発明による分析データ解析方法によれば,同
一の試料に対して同時又は順次にRBS及びPIXEに
よるエネルギースペクトルの測定を行い,それぞれ測定
されたエネルギースペクトルを比較解析するので,それ
ぞれの長所短所が相補的な関係にある両分析方法を互い
に補いあうことになる。RBSでは重元素に感度が高
く,主要元素の定量性に優れ,深さ情報も得られる。一
方,PIXEでは軽元素に感度が高く,元素同定の信頼
性が高い。従って,両者の測定を同一の試料に対して同
時に行い,両者の情報を比較分析すると,より精度及び
信頼性の高い結果が得られる。請求項1がこれに該当す
る。分析データの比較解析は,同一試料に対して同時又
は順次に実行されたRBS及びPIXEそれぞれのエネ
ルギースペクトルから,上記PIXEスペクトルにより
表面近傍の組成元素のほとんどを割り出すことができ,
その主要元素を用いてRBSスペクトルを満足させるよ
うなモデル(RBS予測スペクトル)を構築できる。こ
のモデルは表面近傍の主要元素の深さ分布を表し,各層
の阻止能から試料中の各層における入射イオンのエネル
ギーが予測できる。このRBS予測スペクトルから得ら
れた各層における入射イオンのエネルギーから,その経
路に沿ったX線の励起確率が推定できる。又,その発生
X線が試料表面に達するまでの吸収は,同じく主要元素
の深さ分布により決定できる。このように,RBS分析
の情報によってPIXEスペクトルを素過程からシュミ
レートすることが可能となる。これは標準サンプルなし
に微量元素を精度よく定量することができることにな
り,2本以上の特性線(例えば,K線とL線)が観測さ
れる元素については,その強度比から平均深さも推定で
きることになる。これらPIXEデータから得られた微
量元素の情報で再びモデルを修正し,反復手続きによ
り,より精度よく観測スペクトルを再現するモデルへと
導かれ,最終モデルはRBSとPIXEの長所が反映さ
れ,より信頼性の高い分析結果となる。請求項2がこれ
に該当する。
【0009】上記分析データ解析方法を実行するための
装置は,同一の試料に対して同時又は順次にRBS及び
PIXEの分析データが得られるよう構成され,得られ
た両者のエネルギースペクトルを比較解析することがな
される。請求項3がこれに該当する。本発明による分析
データの解析装置では,同一の試料に対して同時又は順
次にRBS及びPIXEの分析データが得られるよう構
成されたイオンビーム分析装置により測定されたPIX
Eスペクトルから元素同定を行い,同定された元素別の
深さ方向の密度分布テーブルを作成して,これをもとに
RBS予測スペクトルとPIXE予測スペクトルとがシ
ュミレーションにより作成される。この各予測スペクト
ルと測定された各スペクトルとを比較して,その間の差
異が小さくなるように反復修正すると,各予測スペクト
ルはより精度の高い分析データに最適化される。
【0010】
【実施例】以下,添付図面を参照して,本発明を具体化
した実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,
以下の実施例は本発明を具体化した一例であって,本発
明の技術的範囲を限定するものではない。ここに,図1
は本発明に係る分析データの解析方法の手順を示す概念
図,図2は本発明に係る分析データ解析装置の構成を記
す模式図である。図2において,分析データ解析装置1
は,イオンビーム照射によりRBSとPIXEとが同一
の試料に対して同時に,あるいは順次に実施できるよう
構成されたイオンビーム分析装置2と,得られた分析デ
ータを解析処理するデータ解析装置3とを具備して構成
されている。上記イオンビーム分析装置2は,イオン源
12を内蔵する加速器11から投射されるイオンビーム
7により,測定室6内に配設された試料8を照射し,試
料8から発生する散乱イオン4を散乱イオン検出器9で
検出すると同時に,同じく試料8から発生する特性X線
5を特性X線検出器10で検出できるよう構成される。
又,このイオンビーム分析装置2では,試料8の種類等
からRBS分析に適したイオン種によるイオンビーム,
あるいは,PIXE分析に適したイオン種のイオンビー
ムを選択区分して,試料8を照射するイオンビーム7を
変更することもできるよう構成される。このときは,試
料8に対するイオンビーム照射は同時でなく,RBS分
析とPIXE分析とが順次実行されることになる。イオ
ンビーム7に照射された試料8から発生する散乱イオン
4の検出出力と特性X線5の検出出力とは,それぞれの
増幅器15,16で増幅された後,マルチチャンネルア
ナライザ13に入力される。ここで作成される散乱イオ
ンによるRBSスペクトルと,特性X線によるPIXE
スペクトルとをもとに分析データの解析がデータ解析装
置3により実行される。
【0011】上記データ解析装置3による解析の手順を
図1に基づいて説明する。本解析は薄膜が多層形成され
た半導体基板を試料8として,その構造を解析する例に
ついて説明するものである。尚,図1に示す番号(1)
(2)…は,処理手順を示すステップ番号で,本文の番
号に一致する。 (1)元素の同定:マルチチャンネルアナライザ13に
よって作成されたPIXEスペクトルの各ピーク位置か
ら,解析用計算機14の自動元素同定機能により試料8
の含有元素を割り出す。 (2)モデルの編集:上記PIXEにより同定された試
料表面の含有元素中から強度の大きい主要元素を用いて
積層構造モデルを構築する。試料8の表面近傍を深さ方
向に成分の異なる多層薄膜構造であると捉え,深い方か
ら基板各層の密度,成分元素,組成比を指定していく。
この指定は,ディスプレイ18に表示されるモデル編集
のためのコマンド,あるいは元素の周期律表を用いた多
層薄膜の層別表に従って,試料について得られる範囲で
のデータに従って入力する。又,計算条件として計算領
域及び分割厚さも指定する。 (3)元素別密度分布テーブルの作成:上記積層構造モ
デルから元素別密度分布テーブルを生成する。まず,上
記モデルの層を更に指定分割厚さに細かく分割して,表
面から番号を付与する。基板については,指定の計算領
域の深さまでを層に分割する。層厚みは正確に指定厚さ
になるのではなく,それより薄い薄膜についてはモデル
に記された厚みをもつ1層で表現し,厚い場合には指定
厚みに近い値で割り切れるような分割厚が選ばれる。即
ち,層毎にその厚みが異なり,層番号に付随する変数と
して取り扱う。このように層厚みを可変にすると,分割
数をかなり大きくしても薄膜に対する精度が確保され,
計算効率も向上される。
【0012】次いで,生成された層毎,元素毎に元素密
度が計算される。イオン注入された元素については,ガ
ウス分布が仮定できるなら,平均深さと深さ分散とを与
えて各層に分配する。 (4)RBSスペクトルのシュミレーション:上記元素
別密度分布テーブル及び測定条件(入射イオン種,エネ
ルギー,照射量,検出器の位置・角度等)と,予めデー
タベースに内蔵された各元素に対する阻止能の近似多項
式によりRBS予測スペクトルを計算する。試料に入射
された入射イオンがi番層に透過してきたときのエネル
ギーは,各層の含有元素の阻止能を組成比和として得ら
れる合成阻止能によるエネルギー損失からi番層への入
射エネルギーEとして求めることができる。この入射エ
ネルギーEより,i番層の中間位置までのエネルギー損
失を求め,そこでのエネルギーEinを得る。この値をこ
の層内での粒子の平均エネルギーとして,i番層全体の
入射エネルギー損失を求め,i番層から出射するときの
エネルギーEnextとし,これを次の層の入射エネルギー
とする。次に,i番層を構成する1つの元素に着目し
て,入射イオンがi番層への入射位置で散乱され,検出
器方向に向かう場合のイオンエネルギーE1 を入射エネ
ルギーEと運動因子Kを使って求める。 K=〔{√(m2 2−m1 2 sin2 θ)+m1cosθ}/(m
1 +m2 )〕2 ここで,m1 は入射イオンの質量,m2 は標的原子核の
質量,θは散乱角である。一方,i番層を出射するとき
に散乱された場合のエネルギーE2 は,上記Ene xtに運
動因子Kを掛けて求める。E2 はi番層内を通過すると
きのエネルギー損失を上記と同様に中間地点のエネルギ
ーEout を定義する近似を使って補正し,再びE2 と置
きなおしておく。このE1 ,E2 のエネルギーをもつ2
つの散乱イオンが検出器にたどりつくまでに通過する層
におけるエネルギー損失を同様の方法で補正して,最終
的に観測エネルギーE1 ,E2 を得るものとする。この
2つのエネルギーに対応するスペクトルのチャンネル番
号k1 ,k2 を求め,この間のチャンネルに両端の散乱
確率を用いて比例配分する。上記散乱確率は,クーロン
散乱の公式から元素密度,平均エネルギーEin,層厚
み,検出器の角度及び立体角などから算出される。
【0013】これらの計算を全層,全元素について行う
ことによって,元素毎の散乱確率スペクトルが得られ,
それらの和に入射イオンの数を掛けたものが観測される
RBSスペクトルに対応する。 (5)PIXEスペクトルのシュミレーション:上記R
BS予測スペクトルは表面近傍の主要元素の深さ分布を
表し,上記RBSシュミレーションの計算過程の中で各
層における入射イオンの平均エネルギー〔Ein〕が得ら
れている。この値と元素密度とから,入射イオンの経路
に沿った各層における各含有元素の特性X線の励起確率
が理論式から算出される。更に,各特性X線について,
検出器に向かう途中のX線が試料表面に達するまでの間
に通過する各層における吸収による減衰も上記各層の元
素別分布密度テーブルと,予めデータベースとして内蔵
された元素毎のX線吸収計数の近似関数とから容易に算
出される。この各層の各含有元素の発生する特性X線の
総和がPIXE予測スペクトルを与える。この形式の中
で,入射イオンの発生する制動放射連続X線や検出器直
前に置かれたフィルタの影響も容易に扱うことができ
る。このように,RBSシュミレーションから得られる
情報によって,PIXEスペクトルを素過程からシュミ
レートすることができる。これは標準サンプルなしに微
量元素を精度よく定量できることになり,又,2本以上
の特性線が観測される元素については,その強度比から
平均深さも推定できることになる。 (6)予測スペクトルと測定スペクトルとの比較評価:
上記シュミレーションで予測されたRBS予測スペクト
ル及びPIXE予測スペクトルをそれぞれ実測されたス
ペクトルと重ねて,その差異を強調して表示することに
より,モデル修正の指針とする。モデル修正には物理的
知識を要し,人的判断を必要とするが,積層構造モデル
のパラメータを制限すれば,ある程度の自動化は可能で
ある。 (7)モデル修正及び反復手続き:上記PIXEデータ
から得られる微量元素の情報により,先に積層構造モデ
ルを仮作成した構造を修正する。即ち,予測スペクトル
と測定スペクトルとの比較評価から,モデル編集(2)
に再び戻り,積層構造モデルを修正して上記過程を反復
することによって,RBS及びPIXEの予測スペクト
ルを正しい構造モデルに到達させることができる。
【0014】
【発明の効果】以上の説明の通り本発明によれば,同一
の試料に対して同時にRBS及びPIXEによるエネル
ギースペクトルの測定を行い,それぞれ測定されたエネ
ルギースペクトルを比較解析するので,それぞれの長所
短所が相補的な関係にある両分析方法を互いに補いあう
ことになる。従って,両者の測定を同一の試料に対して
同時に行い,両者の情報を比較分析すると,より精度及
び信頼性の高い分析結果が得られる。(請求項1及び
3) 分析データの比較解析は,同一試料に対して同時に実行
されたRBS及びPIXEそれぞれのエネルギースペク
トルから,上記PIXEスペクトルにより表面近傍の組
成元素のほとんどを割り出すことができ,その主要元素
を用いてRBSスペクトルを満足させるようなモデルを
構築できる。このモデルは表面近傍の主要元素の深さ分
布を表し,各層の阻止能から試料中の各層における入射
イオンのエネルギーが予測される。そこから,その経路
に沿ったX線の励起確率が推定できる。又,その発生X
線が試料表面に達するまでの吸収は,同じく主要元素の
深さ分布により決定できる。このように,RBS分析の
情報によってPIXEスペクトルを素過程からシュミレ
ートすることが可能となる。これは標準サンプルなしに
微量元素を精度よく定量することができることになり,
2本以上の特性線が観測される元素については,その強
度比から平均深さも推定できることになる。これらPI
XEデータから得られた微量元素の情報で再びモデルを
修正し,反復手続きにより,より精度よく観測データを
再現するモデルへと導かれ,最終モデルはRBSとPI
XEの長所が反映され,より信頼性の高い分析結果とな
る。(請求項2及び4)
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る分析データの解析方法
の手順を示す概念図。
【図2】 実施例に係る分析データ解析装置の構成を示
す模式図。
【図3】 従来例に係るRBSシュミレーションの手順
を示す概念図。
【図4】 従来例に係るPIXEにより測定されたスペ
クトルグラフ。
【図5】 従来例に係るPIXEのデータ照合の例を示
すグラフ。
【符号の説明】
1…分析データ解析装置 2…イオンビーム分析装置 3…データ解析装置 4…散乱イオン 5…特性X線 7…イオンビーム 9…散乱イオン検出器 10…特性X線検出器 13…マルチチャンネルアナライザ 14…解析用計算機

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオンビームにより照射された試料から
    発生する二次発生信号を検出し,該二次発生信号のエネ
    ルギースペクトルを解析することにより,上記試料の分
    析データを得る分析データ解析方法において,上記二次
    発生信号の1つである後方散乱イオンを検出して散乱イ
    オンのエネルギースペクトルを測定するRBS(ラザフ
    ォード後方散乱分析)と,上記二次発生信号の1つであ
    る特性X線を検出して特性X線のエネルギースペクトル
    を測定するPIXE(粒子励起X線分析)とを,同一試
    料に対して同時又は順次に実行し,上記RBS及びPI
    XEにより測定されたエネルギースペクトルを比較解析
    することを特徴とする分析データ解析方法。
  2. 【請求項2】 イオンビームにより照射された試料から
    発生する二次発生信号を検出し,該二次発生信号のエネ
    ルギースペクトルを解析することにより,上記試料の分
    析データを得る分析データ解析方法において,上記二次
    発生信号の1つである後方散乱イオンを検出して散乱イ
    オンのエネルギースペクトルを測定するRBS(ラザフ
    ォード後方散乱分析)と,上記二次発生信号の1つであ
    る特性X線を検出して特性X線のエネルギースペクトル
    を測定するPIXE(粒子励起X線分析)とを,同一試
    料に対して同時又は順次に実行し,上記PIXEスペク
    トルから入射イオンが上記試料中に進入し得る深さの元
    素同定を行い,同定された元素別に深さ方向の元素別密
    度分布テーブルを作成し,上記元素別密度分布テーブル
    を用いてRBS予測スペクトルとPIXE予測スペクト
    ルとをシュミレーションにより作成し,上記RBS予測
    スペクトルとPIXE予測スペクトルとを,測定された
    上記RBSスペクトルとPIXEスペクトルとの間でそ
    れぞれ比較して,RBS及びPIXEそれぞれの予測ス
    ペクトルと測定スペクトルとの差異から各予測スペクト
    ルを修正し,その差異が小さくなるように上記RBS及
    びPIXEの各予測スペクトルを最適化することを特徴
    とする分析データ解析方法。
  3. 【請求項3】 イオンビームにより照射された試料から
    発生する二次発生信号を検出し,該二次発生信号のエネ
    ルギースペクトルを解析することにより,上記試料の分
    析データを得る分析データ解析装置において,上記二次
    発生信号の1つである後方散乱イオンを検出して散乱イ
    オンのエネルギースペクトルを測定するRBS(ラザフ
    ォード後方散乱分析)と,上記二次発生信号の1つであ
    る特性X線を検出して特性X線のエネルギースペクトル
    を測定するPIXE(粒子励起X線分析)とを同一試料
    に対して同時又は順次に実行し,上記RBS及びPIX
    Eにより測定されたエネルギースペクトルを比較解析す
    ることを特徴とする分析データ解析装置。
  4. 【請求項4】 イオンビームにより照射された試料から
    発生する二次発生信号を検出し,該二次発生信号のエネ
    ルギースペクトルを解析することにより,上記試料の分
    析データを得る分析データ解析装置において,上記二次
    発生信号の1つである後方散乱イオンを検出して散乱イ
    オンのエネルギースペクトルを測定するRBS(ラザフ
    ォード後方散乱分析)と,上記二次発生信号の1つであ
    る特性X線を検出して特性X線のエネルギースペクトル
    を測定するPIXE(粒子励起X線分析)とを同一試料
    に対して同時又は順次に実行するイオンビーム分析装置
    と,上記PIXEスペクトルから入射イオンが上記試料
    中に進入し得る深さの元素同定を行い,同定された元素
    別に深さ方向の元素別密度分布テーブルを作成する元素
    別密度分布テーブル作成手段と,上記元素別密度分布テ
    ーブルを用いてRBS予測スペクトルとPIXE予測ス
    ペクトルとをシュミレーションにより作成する予測スペ
    クトル作成手段と,上記RBS予測スペクトルとPIX
    E予測スペクトルとを,測定された上記RBSスペクト
    ルとPIXEスペクトルとの間でそれぞれ比較して,R
    BS及びPIXEそれぞれの予測スペクトルと,それぞ
    れの測定スペクトルとの差異が小さくなるように上記各
    予測スペクトルを反復修正する最適化手段とを具備して
    なることを特徴とする分析データ解析装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1391722A1 (en) * 2002-08-09 2004-02-25 University of Liege Portable detection device and method for determining an element in a sample using Rutherford backscattering (RBS) and particle induced X-ray emission (PIXE)
JP2015118077A (ja) * 2013-11-14 2015-06-25 凸版印刷株式会社 薄膜評価用構造体及び薄膜評価方法
US11953455B1 (en) * 2023-01-17 2024-04-09 Shandong University Ore component analysis device and method

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