JPH07189066A - ポリビニルアルコール系カーカス用タイヤコードの製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系カーカス用タイヤコードの製造方法

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JPH07189066A
JPH07189066A JP5326879A JP32687993A JPH07189066A JP H07189066 A JPH07189066 A JP H07189066A JP 5326879 A JP5326879 A JP 5326879A JP 32687993 A JP32687993 A JP 32687993A JP H07189066 A JPH07189066 A JP H07189066A
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俊平 楢村
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駛視 吉持
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昭夫 大森
Hirofumi Sano
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Abstract

(57)【要約】 【目的】優れた強度と優れた耐疲労性を兼備したポリビ
ニルアルコ−ル系カ−カス用タイヤコ−ドの製造方法を
提供する。 【構成】引張強度(Xg/d )と破断伸度(Y%)が、X
≧10、Y≧6、55≦2X+5Y≦80を満足し、か
つ繊維表面に一次の凹凸状溝とこの凹凸状溝の表面に形
成された微細な二次の凹凸状溝を有しているポリビニル
アルコ−ル系繊維からなるヤ−ンに撚りを付与したの
ち、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液を付
与、乾燥、熱処理して、デイップコ−ドの破断伸度を8
%以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高強度でゴム接着性およ
び高歪耐疲労性に優れたタイヤコードカーカス部補強材
として利用するのに適したポリビニルアルコール(以下
PVAと略記する)系繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来PVA系繊維は強度、弾性率が高く
寸法安定性に優れることから産業資材用繊維はもとよ
り、近年ではセメント、ゴム、プラスチックなどの各種
補強材に利用されてきている。各種補強用途の中でもゴ
ム補強用としては高圧ホース、Vベルト・コンベアベル
ト等に利用されているが、乗用車用タイヤコードは巨大
なマーケットが背景にあるにもかかわらずPVA系繊維
は耐ゴム疲労性に劣るため使用されていない状況にあ
り、特に厳しい耐疲労性が要求されるカーカス部の補強
用としては全く見込みのない状況であった。
【0003】近年、自動車の性能向上、高速道路網の整
備と相まって高速での操縦安定性に優れたタイヤコード
素材が求められている。一方では、地球温暖化の原因で
ある炭酸ガスの低減の為に省燃費が要求されており自動
車車体やタイヤの軽量化が求められている。これら2つ
の特性を満たすものとしてタイヤコードのベルト、カー
カス部各々の有機繊維化は最適でそのための研究開発が
盛んに行われている。
【0004】現在、有機繊維のカーカス素材としてポリ
エステル、ナイロン、レーヨン、アラミド繊維等が使用
されているが、ポリエステルは寸法安定性は改良されつ
つあるものの低強度であることより軽量化に求められる
コード層の1ply化や高荷重タイヤには適さずまたゴ
ム接着性が劣るためポストキュアーインフレーションの
ような特別な設備を必要とする。ナイロンは耐ゴム疲労
性に優れるものの弾性率が低く寸法安定性に劣り、レー
ヨンは二硫化炭素の環境問題で今後の見通しは厳しく、
アラミドはコスト的に量的拡大は望めない状況にある。
【0005】PVA系繊維が優れた寸法安定性および高
弾性率を有していることに着目して、PVA系繊維をカ
ーカスコードとして使用することが特開昭62−961
05号公報、特開昭63−162303号公報などで提
案されており、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテッ
クス液(以下RFLと略す)付与後の乾燥および熱処理
時の温度、時間、張力等の条件、最適なコード硬さの設
定等により耐ゴム疲労性の向上方法が記載されている。
しかし、これら公報に記載された方法はいずれも紡糸法
が有機溶剤を用いる乾湿式であり、本発明者らが試した
ところ、乾湿式法によって得られた繊維は湿式法に比べ
て繊維表面に後述するような第一次凹凸がなくディップ
コードの耐ゴム疲労性に問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、強度、弾性
率、疲労性に優れたPVA系繊維の耐疲労性を如何にし
たらカーカス素材に使用し得るレベルまで向上できるか
を追及したものである。本発明者らは、前記公知の方法
でディップコードを作製したところ、確かに従来の水系
PVA繊維と比較して優れたコード強度、ゴム中耐疲労
性を有するものの耐疲労性はカーカスコード用としては
今一歩のレベルであった。本発明者らは強度、弾性率、
寸法安定性等の物性に優れるPVA系繊維をタイヤコー
ドのカーカス素材として使用するために従来までのPV
A系繊維の最大の欠点であった耐疲労性の大幅アップを
目指して鋭意検討を重ねた結果、該物性に於いて他素材
との差別化を保持したままで耐疲労性向上を達成できる
ことを見出した。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
追及し、後述するようにPVA溶液を湿式紡糸し比較的
低倍率延伸して得られるPVA系繊維が強度・弾性率が
高いレベルを保持したまま、その繊維表面の形態を所以
とする繊維軸と垂直方向の磨耗に強くかつゴムとの補強
効果が高く、破断伸度が高いが故にゴム中での圧縮・伸
長の応力をバランスよく均一に分散することができ耐ゴ
ム疲労性に優れるということを見出だした。一般にPV
A系繊維の場合、繊維を製造する際の延伸倍率と得られ
る繊維の引張強度との間にほぼ比例の関係があり、延伸
倍率を高めるとそれに伴って引張強度の高い繊維が得ら
れることとなる。また延伸倍率と破断伸度との間には逆
の相関関係があり、延伸倍率を高めるとそれに伴って破
断伸度が低下することとなる。したがってより高強度の
繊維を得るためには延伸倍率を極力高めることが好まし
く、高強度の繊維は破断伸度が低いということになる。
本発明はカーカス用タイヤコードとして、使用するPV
A系繊維の延伸倍率を適度に抑え、その結果破断伸度を
高く保ったものを用いることに大きな特徴を有するもの
である。
【0008】即ち本発明は、ヤーンの引張り強度をXg/
d 、破断伸度をY%としたとき10≦Xかつ6≦Yかつ
55≦2X+5Y≦80の範囲にあり、該繊維表面には
繊維軸方向に連続した比較的大きい第一次の凹部と凸部
からなる溝と第一次の凹凸中にある微細な第二次の凹凸
の溝が存在することを特徴とするポリビニルアルコール
系繊維を用いるものであり、さらにこのような繊維に撚
係数6.5〜11t/mの下撚および上撚を施し、次い
でRFL液で処理したディップコードの破断伸度が8%
以上である高歪ベルト屈曲疲労性に優れたポリビニルア
ルコール系繊維からなるカーカス用タイヤコードの製造
方法である。
【0009】本発明に用いるPVAは30℃の水溶液で
粘度法により求めた平均重合度が1500以上のもので
なければならない。1500より低くなると高強度、高
弾性率のPVA繊維が得られない。粘度平均重合度が2
000以上、好ましくは3000以上であると高強力P
VA繊維が得られ易い。重合度が5000以上である
と、欠陥になり易い分子末端の数が減少するので高強力
が得られ易い。
【0010】用いるPVAの鹸化度に特別な限定はない
が98.5モル%以上が好ましく、99.9モル%以上
であると特に耐熱性が向上し、苛酷な条件で使用される
タイヤコード素材としてさらに好ましい。また用いるP
VAは、他のビニル基を有するモノマー、例えばエチレ
ン、イタコン酸、ビニルピロリドンなどのモノマーを1
0モル%以下、好ましくは2モル%以下の比率で共重合
したポリビニルアルコール系ポリマーであってもよい。
【0011】繊維の製造に用いる溶媒としてはPVAを
溶解する有機溶媒であるならば特に限定はなく、ジメチ
ルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、
ジメチルイミダゾリジンなどの極性溶媒やグリセリン、
エチレングリコールなどの多価アルコールなどがあげら
れる。またこれら2種以上の混合物やこれらと水の混合
物なども使用し得る。数多い溶媒の中でもDMSOは比
較的低温でPVAを溶解することができPVA溶液の熱
劣化、着色を防ぐことができ好ましい溶媒である。
【0012】紡糸原液のPVA濃度はPVAの重合度や
溶媒の種類によって異なるが、通常2〜30重量%、好
ましくは3〜20重量%である。
【0013】本発明における紡糸原液にはPVAと溶媒
以外にも目的に応じて種々の添加剤、例えば界面活性
剤、酸化防止剤、酸などのPH調整剤、硼酸などのゲル
化促進剤などを所定量添加してもよい。さらにDMSO
のように比較的高い凍結温度を有する溶媒については、
メタノールのような凝固作用を有するものでもPVAが
凝固しない範囲で添加すると、凝固浴を溶媒の凍結温度
以下にしても凝固点降下の作用で紡糸原液が凍結しなく
なるので好ましい。
【0014】凝固浴としてはPVAに対して凝固能を有
する有機溶媒を用いる。例えばメタノール、エタノール
などのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンな
どのケトン類などPVAに対して凝固能を有するものな
らば特に限定はないが、中でも低コストで凝固能が比較
的緩やかで均一な微結晶構造をつくりやすい点でメタノ
ールが好ましい。またこれら有機溶媒と塩化カルシウ
ム、ロダンソーダなどの無機塩の混合物を使用してもよ
い。高強力繊維を得るために本発明においては凝固浴中
に原液溶媒を含有してもよい。原液溶媒の含有量は凝固
能を有する有機溶媒の種類によって変化するが5〜70
重量%がよく、マイルドな凝固による均一ゲルが得られ
易くなる。凝固浴中の原液溶媒含有量が10〜50重量
%であると好ましく、15〜45重量%であるとさらに
好ましい。
【0015】凝固浴温度は20℃以下がよく、20℃を
越えると凝固糸は相分離が進行し不透明化し不均一凝固
になり高強度繊維が得られない。凝固浴温度が15℃以
下であると好ましく、10℃以下であると均一凝固糸を
得る点でさらに好ましい。ただし、凝固浴温度があまり
に低いとノズルから吐出される紡糸原液が凍結してしま
うのでよくない。
【0016】本発明の紡糸方式はノズルが凝固浴と直接
接触している湿式紡糸法でなければならない。ノズルと
凝固浴の間にエアーギャップ層を介する乾湿式紡糸やゲ
ル紡糸などでは後述する繊維表面の凹凸構造ができな
い。すなわち第二次の凹凸は形成されるものの、より大
きい構造である第一次凹凸は形成されない。このため優
れたゴムとの接着性を得ることができなくなり、ひいて
は耐ゴム疲労性を向上させることができなくなる。何故
に紡糸方式により繊維表面の形態が異なるのかは、これ
は湿式紡糸ではノズルより吐出された瞬間より凝固が開
始され、凝固糸が受ける張力は直接ノズル吐出孔にかか
って固化するためノズル吐出直前に原液が受けている粘
弾性的状態が凝固糸表面に記憶され、その後緩和が起こ
るのに対し、乾湿式紡糸やゲル紡糸ではノズル吐出直後
エアーギャップ層に押し出されるため固化速度が小さ
く、原液が固化する前に粘弾性的状態が緩和され、表面
も緩和後に固化することが要因と推測される。湿式紡糸
と乾湿式紡糸(或いはゲル紡糸)の繊維表面形態の大き
な違いは、特にノズル吐出直後のポリマー流表面の固化
速度が圧倒的に湿式紡糸の方が大きく、表面固化後緩和
するのに対し乾湿式紡糸では緩和後固化するためと思わ
れる。
【0017】バスドラフト(原液の吐出線速度に対する
第一ゴデットローラー速度の比)はノズルと第一ゴデッ
トローラー間で凝固糸に収縮を与えることにより湿延伸
後の乾熱延伸倍率を大きくすることができる点で0.1
〜0.5が好ましい。ノズルの孔径はバスドラフトがこ
の範囲となるように適宜選択する。より好ましいバスド
ラフトは0.15〜0.30である。
【0018】凝固浴中あるいは凝固浴上の第一ローラー
に引き取られた凝固糸篠は以下の工程にしたがって繊維
化される。すなわち、凝固能を有する有機溶媒などより
なる抽出浴により、凝固糸篠中の原液溶媒などを抽出洗
浄除去し乾燥する。第一ローラー直後から乾燥前に至る
いずれかの工程において一段あるいはより好ましくは二
段以上の湿延伸を施しておくと乾燥時の糸篠の膠着を防
止することができ好ましい。より好ましい湿延伸倍率は
2.5〜5.5倍である。次いで紡糸油剤を付与し乾燥
を行い紡糸原糸を得る。
【0019】次いで得られた紡糸原糸を高温下で熱延伸
し、配向結晶化させ高強度、高弾性率繊維とするが、本
発明のポイントは採取延伸倍率を最大倍率に対して低め
に設定し延伸糸の引張り強度を抑える代わりに、破断伸
度を6〜12%と高くし延伸糸の色相をミクロボイドの
ない透明感と光沢のある白色にすることにある。引張り
強度が10g/dより低くてもカーカス素材として使え
なくはないが他素材との差別化すなわち、PVA繊維の
高強度の特徴がなくなるので好ましくない。破断伸度が
該範囲にあれば耐疲労性試験であるベルト屈曲試験にお
いて従来のPVA繊維に対して極めて高い耐疲労性を有
する。破断伸度が6%より低いと高い耐疲労性が得られ
ずせっかくの高強度のPVA繊維の特長を生かしきれな
い。破断伸度が12%より高いと高い耐疲労性は確保で
きるが破断強度が低下してしまうのでよくない。破断伸
度が7〜11%であるとさらに好ましく、破断強度と耐
疲労性のバランスのとれたカーカス素材として最適のP
VA繊維を得ることができる。なお上記の10≦Xかつ
6≦Yかつ55≦2X+5Y≦80のヤーン強度Xと破
断伸度Yの最適範囲の関係式は本発明者らがカーカス用
タイヤコード素材として最適なヤーン物性を鋭意検討し
た結果得られた経験式で、従来の高強度、高弾性率を追
及したものとは一線を画するものである。2X+5Yの
値が上記範囲を外れる場合には、耐疲労性と破断強度の
バランス性に欠けることになる。
【0020】何故にPVA繊維の破断伸度が耐疲労性に
大きな影響を与えるかは未だ明らかでないが、破断伸度
が高くなると屈曲疲労において圧縮、伸長の応力をうま
く分散させることができ耐疲労性向上につながると考え
られる。また熱延伸時に採取延伸倍率を最大倍率に近付
け過ぎると配向結晶化がさらに進み場合によるとミクロ
ボイドが発生し延伸糸色相がくすんだ白色になるが、こ
の延伸糸は脆性的でありコードにして圧縮、伸長の繰り
返し応力を与え続けると歪み、部分切断等が発生し耐疲
労性が低下すると考えられる。
【0021】本発明の熱延伸方式は非接触あるいは接触
式のヒーター、熱風炉、オイル浴、高温蒸気など特に限
定はない。また温度を多段に制御することにより二段以
上で熱延伸してもよい。延伸温度は好ましくは210℃
以上、さらに好ましくは220〜250℃で全延伸倍率
が8〜16倍、より好ましくは10〜14倍となるよう
熱延伸を実施する。本発明では全延伸倍率は破断延伸倍
率の50〜75%であり、通常の高強度と高弾性率を追
及した場合には80〜95%の延伸が行われていること
を考えると、極めて低延伸であることがわかる。熱延伸
後、必要に応じて油剤を付与し、さらに必要に応じてヤ
ーン強度と破断伸度およびディップコードの破断伸度が
前記範囲を超えない範囲で、熱処理や熱収縮、水酸基の
架橋化などの処理を施しても構わない。
【0022】該延伸糸を後述のレプリカ法を用い電顕に
よる表面観察を行うと、繊維軸方向に連続して伸びる比
較的大きな第一次凹凸とそれより明確に小さい第二次凹
凸よりなるミクロなダブル凹凸の表面を持つことが観察
できる。第一次凹凸の幅は0.1〜2μmである。この
第一次凹凸の幅は0.2〜1μmであるとさらに好まし
い。第一次凹凸の深さあるいは高さは0.05〜0.4
μmである。この第一次凹凸の深さあるいは高さが0.
4μmを越えると繊維強度が低くなったり、または繊維
軸と垂直方向の磨耗性が悪化する傾向にある。第一次凹
凸の深さあるいは高さが0.07〜0.2μmであると
さらに好ましい。第二次凹凸は超微細でその幅および凹
凸の大きさ(深さおよび高さ)は0.01〜0.05μ
mである。このように繊維表面に微細な凹凸構造を与え
ることによってゴムとのコードの接着力が優れかつ磨耗
にも強いPVA系繊維タイヤコードを作り得たのであ
る。
【0023】次いで用途に合った撚数で上撚と下撚を施
し生コードを作製する。本発明はカーカスコードに適し
たものであり撚係数としては6.5〜11でなければな
らない。さらに好ましくは7.5〜10であるとカーカ
ス用タイヤコードとして最も一般的な撚数になる。カー
カス用タイヤコードのヤーンの繊度としては1000〜
1800drが好ましく、さらに好ましくは1100〜
1700drである。この繊度のヤーンを目的に応じて
2本撚または3本撚で上記の撚係数で上撚と下撚を施し
生コードを得る。標準的なコード構成としては1500
d/1×2、40×40t/10cmや1200d/1
×3、50×50t/10cm等が具体的に挙げること
ができる。
【0024】次いでゴムとの接着性を向上させるために
RFL液を付着させ、乾燥・熱処理を施す。RFL付着
率は該コードに対して7〜20重量%、好ましくは9〜
15重量%である。付着率が20重量%を超えるとレゾ
ルシンとホルマリンの縮合反応を促進させるために入れ
てあるアルカリが多量に付着し、熱処理時PVA系繊維
の分解を引き起こし強度低下を来す。また付着率が7重
量%未満の場合にはゴムとの接着力が不十分になり優れ
た耐疲労性を発揮できなくなる。RFL付着時の張力は
0.05〜0.15g/dの低張力下で行うのが良い。
張力が0.05g/d未満では撚斑や撚縮みを減少させ
ることが困難で強度や弾性率が向上しない。一方、0.
15g/dを超えるとヤーンの破断伸度を高くしてもデ
ィップコードの破断伸度が低くなってしまい好ましくな
い。さらにRFL液がコード内部まで浸透しずらく、コ
ードが硬くなり、キンクバンドや磨耗が多発して耐ゴム
疲労性を低下させる。
【0025】RFL付着後の乾燥は、上記RFL付着時
の張力条件と同じ理由により0.07〜0.2g/dの
低張力下でおこなわれ、好ましくは0.08〜0.15
g/dである。乾燥温度は80〜150℃が好ましく、
150℃以上ではRFL中のアルカリや水によるPVA
の分解や繊維の硬着を引き起こし機械的性能低下を招き
やすい。また80℃未満では乾燥に長時間を要し装置が
大きくなるのでコスト的に好ましくない。
【0026】次いで、RFLの反応を完了させ繊維に固
着させるために高温で熱処理するが、この場合0.5〜
1.5g/dの高張力が好適であり、より好ましくは
0.8〜1.2g/dである。0.05g/d未満の張
力では、撚斑や撚縮みの修正が不十分で強度や弾性率が
十分なレベルにならない。また1.5g/dを超えると
ディップコードの破断伸度が低くなったり、単糸切れや
繊維断面の変形が起こってコードが硬くなり、高歪み下
の耐ゴム疲労性が悪化する。熱処理温度は150〜22
0℃が好ましく、低温ではゴムとの接着性が減少し、高
温すぎるとPVAの分解やコード硬化により耐ゴム疲労
性が低下する。熱処理時間は20〜50秒が好ましく、
短時間ではRFLの反応が完了せずゴムとの接着性が減
少し、時間が長すぎるとPVAの分解やコード硬化によ
る耐ゴム疲労性の低下が起こる。
【0027】次に本明細書中におけるPVAの重合度、
ヤ−ンの引張強度、破断伸度、電顕を用いた表面観察お
よびその写真より求めた第一次凹凸の幅、深さ、長さと
第2次凹凸の大きさ等の測定方法、撚係数の定義を以下
に示す。
【0028】PVAの重合度 JIS K6726に準拠し、30℃の水溶液の極限粘
度[η]の測定値より次の数式1によって算出した。な
お、PはPVAの平均重合度である。
【0029】
【数1】
【0030】ヤ−ン、デイップコ−ドの引張強度、破
断伸度 JIS L1013に準拠し、予め調湿された繊維を試
長20cm,変形速度50%/分、初期荷重0.1g/dr の条件で
引張破断強度を求め、n=10以上の平均値を求めた。破
断時の伸度を破断伸度とした。なおデニ−ルは重量法に
より求めた。
【0031】繊維表面の第1次凹凸の幅、深さ、長さ
及び第2次凹凸の大きさ ポリエチルメタクリレ−トのシ−トフィルムを用い、12
0 ℃/0.8kg/cm 2 の条件で繊維表面のモ−ルデイング一
段レプリカを作成した。これに真空蒸着法でtanθ=
0.7 の角度で繊維軸と直行方向から白金、バラジウム合
金をシャドウイングし、さらにその上にカ−ボンを真空
蒸着法により該レプリカ上方から蒸着させ該カ−ボンを
補強した。さらにこれからポリエチルメタクリレ−トの
シ−トフィルムを溶解剥離して2段レプリカを作成し、
これをシ−トメッシュに支持し、透過電顕観察5000倍で
写真撮影した。微細凹凸の測定は30000 倍に拡大した反
転焼付写真上でおこない深さは上記のシャドウイング角
度から算出した。 撚係数 Dr=ヤ−ンデニ−ル×本数、T/in=1インチあたり
の撚数とすると、撚係数K=T/in×√Dr/√5314と定
義することができる。
【0032】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明は実施例のみに限定されるものではない。 実施例1 粘度平均重合度3500、鹸化度99.9モル%のPV
Aを9重量%となるようにDMSOに添加し、80℃に
て窒素雰囲気下8時間溶解し、孔径0.1mm、孔数5
00のノズルより、5℃のメタノール/DMSOの重量
比が75/25よりなる凝固浴中にバスドラフト0.2
4、紡糸速度5m/分で湿式紡糸した。得られた凝固糸
篠をメタノール浴に浸漬しDMSOを抽出すると共に
4.0倍の湿延伸を施し、100℃の熱風で乾燥した。
次いで第1炉170℃、第2炉235℃の熱風炉内で全
延伸倍率が14倍になるように熱延伸し、さらに235
℃で7.5%の熱収縮を施した。得られたヤーンは15
00d/500fで強度は12.6g/dr、破断伸度
は9.5%であった。またこのときの破断延伸倍率は1
9倍で、最高強度の延伸倍率は18.5倍で、そのとき
のヤーン強度18.7g/d、破断伸度は3.8%であ
った。繊維表面をレプリカ法にて電顕観察したところ第
一次凹凸の凸部の幅は0.2〜0.9μm、凹部の幅は
0.2〜0.8μm、深さは0.1〜0.2μmであ
り、第二次凹凸の大きさは0.02〜0.03μmであ
った。次いで該ヤーンに40t/10cmの下撚をかけ
該下撚糸3本を合わせてさらに40t/10cmの上撚
をかけ生コードにし、RFL液を付着時の張力0.08
g/dにして付与し、引き続き張力0.11g/d、1
00℃×1分間熱風乾燥した後、張力0.08g/d、
200℃×1分間熱風処理を施して、ディップコードを
作製した。得られたディップコードのRFL付着量は
9.5重量%で強度は8.1g/dr、伸度は10.5
%であった。次いで該コードを圧縮側に入れゴムベルト
を作製し20mm径のプーリーを用い100℃×1万回
ベルト屈曲後の強力保持率を調べたところ90%を示
し、タイヤのカーカス部材用コードに適した高強力、高
耐疲労性を有するものであった。
【0033】比較例1 実施例1と同じ紡糸原液をノズルと凝固浴の間に10m
mの空間層を設けて乾湿式紡糸しようとしたが、原液の
粘度が低く正常な紡糸ができなかった。そこで、PVA
濃度を12重量%とした紡糸原液を10mmの空間層を
設けて乾湿式紡糸する以外は実施例1と同様に紡糸、湿
延伸、抽出、乾燥し、次いで乾熱延伸を施した。破断延
伸倍率も実施例1とほぼ同一で、得られたヤーンの強度
は12.5g/dr、破断伸度は9.3%で実施例1と
ほぼ同様な性能のものが得られた。この繊維表面を実施
例1と同様に電顕観察したところ第二次凹凸に相当する
大きさ0.01μm〜0.02μmの凹凸は観察される
が、第一次凹凸に相当するものは見られず、繊維表面は
実施例1と明らかに異なっていた。得られたヤーンを実
施例1と同様にディップコードにし大歪ベルト屈曲後の
強力保持率を測定したところ81%で実施例1より低か
った。
【0034】比較例2 実施例1で得られた熱風乾燥後の紡糸原糸を実施例1と
同じ熱風炉温度で全延伸倍率17倍になるよう熱延伸し
た。得られたヤーンは1150d/500fで強度は1
7.8g/d、破断伸度4.3%であった。この繊維表
面をレプリカ法にて電顕観察したところ実施例1とほぼ
同様な第一次および第二次の凹凸が観察できた。次いで
該ヤーンを実施例1と同じ撚係数になるようにして生コ
ードとし、実施例1と同様にRFL液付着、乾燥、熱処
理を施してディップコードを作製した。得られたディッ
プコードの強度は9.2g/d、伸度は9.3%であっ
た。得られたヤーンを実施例1と同様にディップコード
にし大歪ベルト屈曲後の強力保持率を測定したところ7
8%で実施例1より低くなった。
【0035】実施例2 粘度平均重合度7500、鹸化度99.9モル%のPV
Aを5.5重量%となるようにDMSOに添加し、90
℃にて窒素雰囲気下8時間溶解し、孔径0.12mm、
孔数500のノズルより、5℃のメタノール/DMSO
の重量比が75/25よりなる凝固浴中にバスドラフト
0.21、紡糸速度5m/分で湿式紡糸した。得られた
凝固糸篠をメタノール浴に浸漬しDMSOを抽出すると
共に4.0倍の湿延伸を施し100℃の熱風で乾燥し
た。次いで第1炉170℃、第2炉245℃の熱風炉内
で全延伸倍率が12.5倍になるように熱延伸した。得
られたヤーンは1500d/500fで強度は15.4
g/dr、破断伸度は7.6%であった。またこのとき
の破断延伸倍率は19.5倍、最高強度は延伸倍率1
9.0倍でそのときの強度20.8g/d、破断伸度
4.0%であった。この繊維表面を実施例1と同様に電
顕観察したところ実施例1のような第一次および第二次
の繊維軸方向への溝からなる凹凸が観察され、第一次凹
凸の凸部の幅は0.2〜0.8μm、凹部の幅は0.2
〜0.8μm、深さは0.1〜0.25μmであり、第
二次凹凸の大きさは0.02〜0.03μmであった。
次いで該ヤーンに40t/10cmの下撚をかけ該下撚
糸2本を合わせてさらに40t/10cmの上撚をかけ
生コードにし、RFL液を付着時の張力0.08g/d
で付与し、引き続き張力0.11g/d、100℃×1
分間熱風乾燥した後、張力0.08g/d、200℃×
1分間熱風処理を施して、ディップコードを作製した。
このときのRFL付着量は9.3重量%で、得られたデ
ィップコードの強度は10.1g/dr、伸度は9.4
%であった。次いで該コードを圧縮側に入れゴムベルト
を作製し20mm径のプーリーを用い100℃×1万回
ベルト屈曲後の強力保持率を調べたところ91%を示
し、タイヤのカーカス部材用コードに適した高強力、高
耐疲労性を有しかつコードの使用量を押さえタイヤの軽
量化ができる高付加価値を与えるものであった。
【0036】
【発明の効果】本発明で用いるPVA系繊維は優れた強
度を有し、かつ繊維表面のミクロダブル凹凸構造および
高い破断伸度を与えることによりゴム中での補強効果が
高く、さらに大歪での圧縮および伸長に対して優れた耐
疲労性を有する。従って本発明の方法で得られるPVA
系繊維タイヤコ−ドはポリエステル、ナイロン、レーヨ
ン、アラミドなど他の有機繊維および従来のPVA系繊
維からなるものに比べてコストパフォーマンスに優れて
おり自動車タイヤ用カーカスコードとして極めて有用で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大森 昭夫 岡山県倉敷市酒津1621番地株式会社クラレ 内 (72)発明者 佐野 洋文 岡山県倉敷市酒津1621番地株式会社クラレ 内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリビニルアルコール系繊維からなるヤー
    ンに撚を付与した後、レゾルシン・ホルムアルデヒド・
    ラテックス液を付与してカーカス用タイヤコードを製造
    する方法において、該ポリビニルアルコール系繊維とし
    て、ヤーンの引張り強度をXg/d 、破断伸度をY%とし
    たとき10≦Xかつ6≦Yかつ55≦2X+5Y≦80
    の範囲にあり、該繊維表面には繊維軸方向に伸びた大き
    い第一次の凹部と凸部からなる溝と第一次の凹凸中にあ
    る微細な第二次の凹凸の溝を有する繊維を用いることを
    特徴とするポリビニルアルコール系カーカス用タイヤコ
    ードの製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のポリビニルアルコール系
    繊維に撚係数6.5〜11の下撚および上撚を施し、次
    いでレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液を付
    与、乾燥および熱処理してディップコードの破断伸度を
    8%以上とするカーカス用タイヤコードの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6319601B1 (en) 1999-07-16 2001-11-20 Kuraray Co., Ltd. Polyvinyl alcohol based fibers
CN111344162A (zh) * 2017-11-17 2020-06-26 株式会社可乐丽 自行车轮胎用的加强构件及自行车轮胎

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US6319601B1 (en) 1999-07-16 2001-11-20 Kuraray Co., Ltd. Polyvinyl alcohol based fibers
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