JPH0717841A - 義歯洗浄剤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 活性酸素発生物質とデキストラナーゼとを併
用し、かつ活性酸素によるデキストラナーゼの活性低下
を防止して、優れたデンチャープラーク除去力を有する
義歯洗浄剤を得る。 【構成】 ケトミウム属由来のデキストラナーゼを用い
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、活性酸素発生物質とデ
キストラナーゼとを配合した義歯洗浄剤に関し、更に詳
述すると、特定のデキストラナーゼを用いたことによ
り、活性酸素によるデキストラナーゼの活性低下が防止
され、優れたデンチャープラーク除去力を発揮する義歯
洗浄剤に関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、
高齢化社会の到来にともない義歯の使用者は年々増加す
る傾向にある。義歯の使用にあたっては、義歯と口腔粘
膜との間に食べかすが溜りやすく、健常人に比べて口腔
内が不潔になりやすい。特に、義歯使用者のデンチャー
プラーク中には、健常人のデンタルプラークと比べてカ
ンジダ菌が多く見られ、これらが義歯性口内炎の原因に
なっていると考えられる。また、デンチャープラークの
存在は細菌の住処となり、不快な義歯臭発生の原因とな
ると共に、歯石発生の根本原因ともなり、頑固な汚れを
形成する。

【０００３】従来、義歯の洗浄剤としては、漂白剤とし
て活性酸素発生剤を配合した発泡タイプのものが一般的
であるが、従来の発泡タイプの義歯洗浄剤では、上記デ
ンチャープラークによる汚れに対する洗浄効果が不十分
である。

【０００４】ここで、義歯に発生するデンチャープラー
クも自然歯に発生するデンタルプラークも、その生成メ
カニズムは同じと考えられており、基本的にはプラーク
として同様のものと考えられる。この場合、プラークは
酵素によって分解することが可能であり、このような酵
素としてデキストラナーゼが知られている。実際、歯磨
や洗口剤では、従来より歯垢（プラーク）分解酵素とし
てデキストラナーゼを配合したものが知られている。

【０００５】しかしながら、デキストラナーゼを活性酸
素発生剤を含有する義歯洗浄剤に配合すると、活性酸素
によってデキストラナーゼの活性が低下してしまうとい
う問題がある。即ち、デキストラナーゼなどの酵素類は
蛋白質で構成されているが、活性酸素には強い酸化力が
あり、蛋白質を変性させて酵素の活性を低下させてしま
うことになる。

【０００６】本発明は、上記事情に鑑みなされたもの
で、活性酸素発生物質とデキストラナーゼとを併用し、
かつ活性酸素によるデキストラナーゼの活性低下を防止
して、優れたデンチャープラーク除去力を発揮する義歯
洗浄剤を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段及び作用】本発明者は、上
記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ケトミウ
ム属（chaetomium sp）由来のデキストラナーゼが活性
酸素に対する良好な耐性を有し、活性酸素の存在下でも
活性低下を生じることなく、効果的に義歯のデンチャー
プラーク除去効果を発揮することを知見した。

【０００８】即ち、後述する実施例，比較例に示すよう
に、由来の異なる数種類のデキストラナーゼを活性酸素
発生物質を含有する義歯洗浄剤に配合し、その保存安定
性及びデンチャープラーク除去力を評価したところ、ケ
トミウム属由来のデキストラナーゼが特異的に活性酸素
の存在下でも優れた保存安定性を示すと共に、優れたデ
ンチャープラーク除去力を発揮し、特に縮合リン酸塩
（ここではトリポリリン酸ナトリウムを用いている）と
併用することにより卓越したデンチャープラーク除去効
果が得られることを見出し、本発明を完成したものであ
る。

【０００９】従って、本発明は、活性酸素発生物質と、
ケトミウム属由来のデキストラナーゼとを含有してなる
ことを特徴とする義歯洗浄剤を提供する。また、好適な
実施態様として更に縮合リン酸塩を配合した義歯洗浄剤
を提供する。

【００１０】なお、活性酸素発生物質を含有した義歯洗
浄剤に歯垢分解除去成分としてデキストラナーゼを配合
することは既に公知であるが、従来のデキストラナーゼ
配合義歯洗浄剤は、活性酸素によるデキストラナーゼの
失活を防止するため、酵素層（デキストラナーゼ等）と
酸素層とに分けた錠剤とし、酵素層を先に溶解させて酵
素と活性酸素との接触機会を減少させることにより酵素
の有効活用を図ったり（特開昭５１−３８４１５号公
報）、酵素を特定の保護剤と混合した粉末状酵素とし、
保護剤を酵素の溶解遅延剤として作用させ、活性酸素の
作用が低下又は消失した後に酵素が有効に作用するよう
に図ったもの（特開昭５７−１４２９１０号公報）など
であり、ケトミウム属由来の特定デキストラナーゼが活
性酸素に対して良好な耐性を有し、故に活性酸素発生物
質と併用しても、特別な工夫を施す必要なくデキストラ
ナーゼの活性を維持することができ、良好なデンチャー
プラーク除去効果を発揮すること、更に縮合リン酸塩と
併用することによりデンチャープラーク除去効果が更に
向上することは、本発明者の新知見にかかるものであ
り、本発明はこのような新知見に基づいてなされたもの
である。

【００１１】以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の義歯洗浄剤は、上述したように、活性酸素発生
物質を含有する義歯洗浄剤にケトミウム属由来のデキス
トラナーゼを配合したものであり、好ましくは更に縮合
リン酸塩を配合したものである。

【００１２】上記活性酸素発生物質としては、通常の義
歯洗浄剤に漂白剤として配合されているものと同様のも
のを用いることができ、具体的にはモノ過硫酸水素カリ
ウム（オキソン）、過硼酸ナトリウム（ペルボン）、過
炭酸ナトリウム等が挙げられ、これらを単独で又は２種
以上を混合して用いることができる。これら活性酸素発
生物質の配合量は、特に制限されるものではないが、通
常１０〜８０重量％、好ましくは２０〜７０重量％とさ
れる。活性酸素発生物質の配合量が１０重量％未満であ
ると満足な漂白効果が得られない場合があり、一方８０
重量％を超えると気泡力の低下など、義歯洗浄剤として
のトータルバランスで品質低下をもたらす場合がある。

【００１３】次に、本発明義歯洗浄剤にデンチャープラ
ークの分解除去成分として配合されるデキストラナーゼ
は、ケトミウム属（chaetomium sp）由来のものであ
り、この場合デキストラナーゼを産生するケトミウム属
の細菌としてはケトミウム グラシーレ（Chaetomium g
racile）、ケトミウム スピラーレ（Chaetomium spira
le）、ケトミウム インジカム（Chaetomium indicu
m）、ケトミウム オリバセラム（Chaetomium olivaceu
m）等が挙げられ、これらの中ではケトミウム グラシ
ーレから得られたデキストラナーゼが特に優れたデンチ
ャープラーク除去力を有することから好ましく用いられ
る。

【００１４】このケトミウム属由来デキストラナーゼの
配合量は、特に制限されるものではないが、洗浄剤全体
の０．１〜３０重量％、特に０．５〜２０重量％とする
ことが好ましく、配合量が０．１重量％未満であると、
デンチャープラークの十分な除去効果が得られない場合
があり、一方３０重量％を超えてもさしたる効果の向上
は見られず経済性の点で不利となる。

【００１５】更に、本発明の義歯洗浄剤は縮合リン酸塩
を配合することにより、デンチャープラークの除去効果
を更に向上させることができる。縮合リン酸塩として
は、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウ
ム、酸性ポリリン酸ナトリウムなどが挙げられ、これら
の１種又は２種以上を配合することができる。これら縮
合リン酸塩の配合量は、特に制限されるものではない
が、１〜３０重量％、特に３〜２０重量％とすることが
好ましく、１重量％未満では上記デキストラナーゼとの
併用による効果が得られない場合があり、一方３０重量
％を超えて配合しても併用効果が飽和に達し、効果の向
上は見られない。

【００１６】本発明にかかる義歯洗浄剤は、上記活性酸
素発生物質、ケトミウム属由来のデキストラナーゼ及び
任意成分として縮合リン酸塩を含有し、通常粉末，顆
粒，錠剤などの形態に調製され、水に溶解して使用され
るが、この場合本発明義歯洗浄剤には、上記成分と共に
公知の成分を配合することができる。

【００１７】例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリ
ウム、炭酸カリウム等の炭酸塩と無水クエン酸、コハク
酸、リンゴ酸等の酸剤とを配合することにより、溶解時
に発泡させ、洗浄剤の溶解，分散を促進させるようにす
ることができる。また、洗浄力の向上と適度な起泡を保
証するために界面活性剤を添加することができ、界面活
性剤として具体的には直鎖アルキルベンゼンスルホン酸
ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
更に、ｐＨ調整剤、顔料、及び錠剤を形成する場合の付
形剤としてポリビニルピロリドン、乳糖などを添加する
ことができる。なお、本発明の義歯洗浄剤は、使用時の
液のｐＨが５〜１１の範囲になるように調整することが
好ましく、これにより優れたデンチャープラーク除去効
果を示す。

【００１８】

【実施例】以下、実施例，比較例を示して本発明を具体
的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるもの
ではない。 ［実施例１，２，比較例１〜５］表１に示した由来細菌
から得た７種類のデキストラナーゼを用いて表２に示し
た組成の義歯洗浄剤を製造した。得られた義歯洗浄剤中
のデキストラナーゼの保存安定性及びデンチャープラー
ク除去力を下記方法により評価した。結果を表１に示
す。

【００１９】

【表１】

【００２０】

【表２】

【００２１】保存安定性評価方法 義歯洗浄剤５０ｇを１００ｍＬのポリプロピレン製の密
閉容器に入れ、口部に約１ｍｍ程度の穴を開けた後、４
０℃，７５％湿度の条件で保存し、１ヶ月保存後のデキ
ストラナーゼ活性をソモジ−ネルソン法（Somogyi-Nels
on法）により測定し、その残存率から次の基準により安
定性を評価した。 デンチャープラーク除去力評価方法 試験管にカンジダ アルビカンス（Candida albicans）
とストレプトコッカスソブリナス（Streptococcus sobr
inus）の前培養菌液（濁度ＯＤ＝５５０ｎｍで０．１の
濃度のもの）を５０μｌと１％シュークロース溶液を含
むＢＨＩ培地（３７ｇＢＨＩ＋１０ｇシュークロース／
Ｌの濃度のもの）３ｍｌとを添加し、この試験管を３０
°傾斜に保ち、３７℃，２０時間嫌気培養を行って人工
プラークを調製した。次いで、蒸留水で２回洗浄して試
験管の壁面に付着が不完全な人工プラークを除去し、こ
の試験管内に蒸留水４ｍｌを添加した後、上記義歯洗浄
剤１００ｍｇを加え、３７℃で６時間作用させた。６時
間経過後、試験管内を蒸留水で２回洗浄し、次いで残存
するプラークを超音波で分散させ、濁度（ＯＤ＝５５０
ｎｍ）を測定すると共に、酵素を配合しない義歯洗浄剤
を別途製造して同様に濁度（ＯＤコントロール）を測定
し、下記の式に従ってデンチャープラークの除去率を算
出した。そして、下記の基準によりデンチャープラーク
除去力を評価した。 除去率(％)＝{(ＯＤコントロール−ＯＤサンプル)／Ｏ
Ｄコントロール}×１００

【００２２】表１に示した結果から、ケトミウム属由来
のデキストラナーゼは活性酸素の存在下でも優れた保存
安定性を示し、このケトミウム属由来デキストラナーゼ
を配合した本発明の義歯洗浄剤は、活性酸素発生物質と
併用しているにもかかわらず優れたデンチャープラーク
除去効果を有することが確認された。

【００２３】［実施例３，４、比較例６］トリポリリン
酸ナトリウムを配合しない以外は、上記実施例１、２及
び比較例３と同様の組成の義歯洗浄剤を調製した。これ
らの義歯洗浄剤につき上記と同様にデンチャープラーク
除去力を評価した。結果を表３に示す。

【００２４】

【表３】

【００２５】表３の結果と上記表１の結果とを比べるこ
とにより、ケトミウム属由来のデキストラナーゼとトリ
ポリリン酸ナトリウム（縮合リン酸塩）とを併用するこ
とによりデンチャープーラーク除去効果が向上すること
が確認された。

【００２６】［実施例５〜８］本発明義歯洗浄剤のその
他の処方例を表４に示す。なお、表４中各成分の配合量
は重量％である。

【００２７】

【表４】

【００２８】

【発明の効果】本発明の義歯洗浄剤は、活性酸素発生物
質とデキストラナーゼとを併用し、かつ活性酸素による
デキストラナーゼの活性低下を防止して、優れたデンチ
ャープラーク除去力を有するものである。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 活性酸素発生物質と、ケトミウム属由来
   のデキストラナーゼとを含有してなることを特徴とする
   義歯洗浄剤。
2. 【請求項２】 縮合リン酸塩を配合した請求項１記載の
   義歯洗浄剤。