JPH07170971A - 組織切片培養用基盤 - Google Patents

組織切片培養用基盤

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JPH07170971A
JPH07170971A JP32153593A JP32153593A JPH07170971A JP H07170971 A JPH07170971 A JP H07170971A JP 32153593 A JP32153593 A JP 32153593A JP 32153593 A JP32153593 A JP 32153593A JP H07170971 A JPH07170971 A JP H07170971A
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tissue
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slice
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JP32153593A
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English (en)
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Akihito Kamei
明仁 亀井
Hirokazu Sugihara
宏和 杉原
Yasushi Kobayashi
康 小林
Tadayasu Mitsumata
忠泰 光亦
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 組織切片の接着性が高く、組織切片を液相と
気相の界面に容易におくことが可能な組織切片培養用基
盤を得る。 【構成】 石英ガラスに1μm厚のネガティブフォトセ
ンシティブポリイミド(NPI)をスピンコートした絶
縁基盤と、その上に設けられた厚さ10μm以上300
μm以下のコラーゲンゲル層からなる。組織切片をより
生体内の環境に近い状態で培養することができ、組織切
片の基盤上への定着性に優れた組織培養用基盤となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基礎医学の分野で用い
られる生体組織切片の培養用基盤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】生体組織切片の培養(以下、組織切片培
養と略す。)は、細胞を解離し、分散させて培養する解
離細胞培養法と異なり、生体における構造を保持したま
ま組織を切片状にして取り出し、培養する方法である。
組織切片培養は、解離細胞培養法に比べ、生体内におけ
る各細胞の働き、細胞間の相互作用および細胞集団とし
ての機能等をより忠実に再現できる。そのため、組織切
片培養は基礎医学の分野で重要な方法である。
【0003】組織切片の培養において鍵となる点は、組
織切片への酸素の供給であり、従来の方法もこの点に工
夫を持っている。従来の組織切片培養の代表的な方法に
は、ゲブラーらによる回転培養法(ジャーナル オブ
ニューロサイエンス メソッズ 4(1981年)第3
29頁から第342頁、J. Neurosci. Methods, 4(198
1), pp.329-342)および山本らによる手法(サイエンス
245(1989年)第192頁から第194頁、Scie
nce 245(1989), pp.192-194)がある。
【0004】前記回転培養法は、基盤上に定着させた組
織切片を、蓋付の試験管中に入れ、組織切片が浸る程度
に培養液を加え、試験管を回転させ、培養液を組織切片
の表面に循環させる。この培養液の循環には、組織切片
を間欠的に外気と接触させ、組織への酸素の供給を助け
る効果、および壊死した細胞を洗い流す効果がある。そ
の結果、組織切片中の細胞への酸素の供給および培養液
中の栄養素の供給が容易となり、組織切片の最高3週間
程度におよぶ長期培養が可能であった。
【0005】山本らによる手法は、培養液を入れた容器
の上面に、気相と液相の界面に位置するように、細胞が
通らない程度の大きさの孔を有する膜を配置し、この膜
上に組織切片を静置し、培養する方法である。この培養
法でも、回転培養法と同様、培養が進むにつれて組織切
片は偏平に伸び、組織切片中の細胞の酸素の取り込み、
および培養液中の栄養素の取り込みが更に容易になり、
最高3週間程度の長期培養が可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】生体の組織切片を培養
する目的において、上記2方法は優れた方法であるが、
培養に際してそれぞれ通常の培養用用具以外に、試験管
を回転させる装置、微小孔膜を用意しなければならない
という課題があった。
【0007】また、培養組織切片を用いて、生体内にお
ける各細胞の働き、細胞間の相互作用および細胞集団と
しての機能等を調べるためには、組織切片を観察し、切
片中の細胞の働きを記録する必要がある。例えば、神経
系の組織切片では、細胞間の神経結合を観察し、細胞の
電気活動を記録する必要がある。細胞および細胞集団の
活動には、偶発的、非可逆的な要素も含まれているた
め、観察および記録は、連続的に行うことが望ましい。
しかしながら回転培養法においては、組織切片は常に、
回転させられているため、培養初期から、培養中に連続
的な記録観察を行うことは、困難であるという課題があ
った。一方、山本らによる手法は、培養される組織切片
は静置されているため、組織切片の観察は容易であり、
組織切片の連続的観察に適したものであった。
【0008】近年、神経系の細胞のように、電気的活動
を行う細胞の活動連続的に測定、記録することを可能と
する一体化複合電極(特願平4−236998、特願平
5−90291)が杉原らにより提案された。これら
は、絶縁基盤上に金属電極を配置した構造を持ち、この
電極を細胞に接触させ、細胞の電気活動に付随する細胞
外近傍のイオン流によって生じる電位変化を記録する。
この一体化複合電極を用いた細胞の電気活動の測定、記
録法は、非浸襲的に行われるため、長期にわたる細胞の
電気活動の測定、記録が可能である。
【0009】この一体化複合電極と、山本らによる手法
を組み合わせれば、電気的活動を行う細胞の連続観察お
よびその電気活動の連続記録が可能となるが、上記のよ
うに、一体化複合電極は、細胞の電気活動に付随する細
胞外近傍のイオンの流れによって生じる電位差を記録す
るため、細胞の電気活動を記録するためには、細胞によ
り密接に位置する必要がある。このためには、組織切片
を絶縁基盤上に直接接着させて培養できることが望まし
いが、山本らによる組織切片の培養手法では、組織切片
を膜によって、液相と気相の界面に位置させるために、
組織下部に液相を必要とする。そのため、絶縁基盤上へ
の密着性を保つことが困難であるという課題があった。
また、膜自体も絶縁基盤に対して接着性を持っていない
ために、組織切片の電極に対する密着性を保つことが困
難であった。本発明は前記課題を解決するため、培養液
の調整が容易で、組織切片を基盤上へ容易に定着でき、
組織をより生体内の環境に近い状態、すなわち最適な環
境で培養できる組織培養用基盤を提供することを目的と
する。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の組織切片培養用基盤は、絶縁基盤とその上
に設けられたコラーゲンゲル層からなるものである。
【0011】前記組織切片培養用基盤の構成において
は、コラーゲンゲル層の厚さが10μm以上300μm
以下の範囲であることが好ましい。
【0012】
【作用】前記本発明の構成によれば、絶縁基盤とその上
に設けられたコラーゲンゲル層からなる組織培養用基盤
であることにより、組織切片の培養に最適な環境を提供
できる組織培養用基盤を達成できる。すなわち、コラー
ゲンゲル層はコラーゲン線維が網目状に入り組んだ構造
を持ち、その網目の内部に、培養液は蓄えられる。ま
た、構成される網目構造は微細であるため、毛細管現象
により、コラーゲンゲルの乾燥部分に絶えず培養液が供
給される。従って、組織切片を培養した際の組織の乾燥
が防がれる。また、組織切片培養の際の、組織切片を気
相と液相の界面に位置させるという培養条件実現のため
の培養液の調整が容易である。さらに、コラーゲンゲル
層の厚みを調節すれば、組織切片を絶縁基盤上に密接に
位置させることが可能となる。また、コラーゲンは生体
内の細胞外基質の構成要素であり、多くの組織の細胞に
対して、培養時の基質への定着および細胞の伸展を促進
する効果を有するので、本発明の組織培養用基盤上で組
織切片を培養した場合、組織切片を基盤上へ容易に定着
させることができる。また、組織切片をより生体内の環
境に近い状態で培養することができる。
【0013】また、コラーゲンゲル層の厚さが10μm
以上300μm以下の範囲であるという本発明の好まし
い構成によれば、良好な電気記録が可能な組織培養用基
盤を達成できる。
【0014】
【実施例】本実施例の組織培養用基盤のコラーゲンゲル
層の作製には、ブタの皮膚または、より一般的には、ラ
ットの尾腱を酢酸等の弱酸で処理することにより得られ
る酸性コラーゲン溶液を用いる。同様の方法を用いて製
造された市販品を用いても良い。コラーゲンゲル層の厚
さは、10〜300μmが好ましく、さらに好ましくは
30〜150μmである。300μmより厚いと、組織
切片が電極から離れ過ぎるので、良好な電気記録ができ
ない。
【0015】絶縁基盤材料としては、組織切片培養後に
顕微鏡観察出来ることが好ましいため透明な基盤が好ま
しく、石英ガラス、鉛ガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラ
ス、もしくは石英等の無機物質、または、ポリメタクリ
ル酸メチルまたはその共重合体、ポリスチレン、ポリ塩
化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、尿素樹脂、
メラミン樹脂などの透明性を有する有機物質等が挙げら
れるが、機械的強度と透明性を加味すると無機物質が好
ましい。
【0016】以下、実施例を用いて本発明を具体的に説
明する。(実施例1) (中性コラーゲン溶液の調製) 1.切断したラットの尾を、70%エタノール中に5分
程度漬けた。
【0017】以下の操作は、低温(4℃)、滅菌環境下
で行い、試料中に粉塵等が混入しないように注意した。 2.滅菌したラットの尾から尾腱を取り出した。 3.約1匹分のラットの尾腱に対して、10mlの0.
5M酢酸、0.14M塩化ナトリウム溶液を加え、静か
に撹拌し、コラーゲンを抽出した。 4.不要成分をろ過および超遠心(50,000gで2
時間)で除いた。 5.調製したコラーゲン溶液を濃縮し、濃度を3mg/
ml程度にした(4℃で使用時まで静置)。 6.上記調製した酸性コラーゲン溶液に、0.1Nの水
酸化ナトリウム溶液にフェノールレッドを加えた溶液
(4℃)を徐々に加え、フェノールレッドの色変化を指
標とし、コラーゲン溶液のpHを7.4にし、0.14
M塩化ナトリウム溶液(pH7.4,4℃)でタンパク
濃度が2.4mg/mlになるように希釈した(4℃で
使用時まで静置)。
【0018】上記のように調製した中性コラーゲン溶液
は、室温下で5分から10分程度でゲル化する。以下に
この中性コラーゲン溶液を用いて、絶縁基盤上に、コラ
ーゲンゲル層を作製する方法を記載する。基盤材料とし
ては、機械的強度の強い透明な絶縁素材として、50×
50×1mmの硬質ガラス(“IWAKI CODE
7740GLASS”[岩城硝子(株)製]以下同じ)
表面に、絶縁層としてネガティブフォトセンシティブポ
リイミド(NPI)を、乾燥後の厚みが1μmとなるよ
うにスピンコートしたものを用いた。絶縁層の厚みは、
絶縁性が付与できる程度であればよく、特に限定するも
のではないが、通常0.1〜10μmが好ましく、1〜
5μmが特に好ましい。 (コラーゲンゲル層の構成) 1.まず、用意した絶縁基盤の表面を、杉原らにより記
載されたプラズマ処理法(特願平5−90292)で7
分程度処理した。この処理により、絶縁基盤表面に親水
性をもたせ、コラーゲンゲル層の絶縁基盤上への定着を
よくする。 2.続いて、絶縁基盤を滅菌した蒸留水で洗浄し、室温
で乾燥させた。 3.乾燥した絶縁基盤を、4℃で冷却した。本操作は、
コラーゲンの急速なゲル化を防ぐ目的を持っており、一
様で薄いコラーゲンゲル層を作るためには重要な操作で
ある。 4.冷却した絶縁基盤上に、上記中性コラーゲン溶液を
滴下し、絶縁基盤を傾けて溶液をコラーゲンゲル層を形
成させる目的の範囲に行き渡らせた。 5.絶縁基盤を45度傾けても液だれが起きない程度ま
で、余分な溶液を除いた。 6.絶縁基盤のコラーゲン溶液塗布面を上にして、室温
で10分程度静置し、溶液をゲル化させた。 7.静置後、絶縁基盤のコラーゲンゲル層(約50μm
厚)を形成させた部分を滅菌した蒸留水で洗浄し、塩お
よびフェノールレッドを除いた。
【0019】以上の方法により、組織培養用基盤を得
た。なお、絶縁基盤をより確実にコートするために3か
ら7の操作を、同じ絶縁基盤に対して再度繰り返しても
よい。 (実施例2)次に、絶縁基盤上にコラーゲンゲル層を形
成させた組織培養用基盤上での組織切片の培養について
述べる。以下の操作は、滅菌条件下で行った。実施例1
で作製した組織培養用基盤上で、組織切片としてラット
の大脳皮質切片を培養した。
【0020】まず、実際に培養を始める前に、以下に示
す準備を行う。 (イ)組織培養用基盤の中心部に、直径25mm、高さ
6mmのプラスティック製円筒を接着し、細胞培養用ウ
ェルを作製した。 (ロ)上記培養用ウェルを作製した組織培養用基盤を、
直径10cmの滅菌シャーレに入れた。 (ハ)上記のように準備した後、培養用ウェルに培養用
培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)とハム
F−12培地を1対1の体積比で混合したDMEM/F
−12混合培地中にトランスフェリンを100μg/m
l、インスリンを5μg/ml、D−グルコースを6m
g/ml、プロジェステロンを20nM、ハイドロコル
チゾンを20nM、プトレシンを100μM、亜セレン
酸ナトリウムを5.2ng/mlの濃度になるように加
えた培地。以下、単に培地と略す。)を500μlを加
え、CO2 インキュベータ内(O2 濃度95%、CO2
濃度5%、湿度97%、温度37℃)で暖めた。この操
作により、乾燥したコラーゲンゲル中に培地を浸潤させ
た。
【0021】以下、ラット大脳皮質切片の培養法につい
て述べる。 (1)生後2日目のSDラットから、脳を取り出し、氷
冷した0.25%D−グルコース入りハンクス平衡塩液
(以下、HBSSと略す)に浸した。 (2)氷冷した0.25%D−グルコース入りHBSS
中で、脳に付着している脳膜を、大脳皮質を傷つけない
ように注意しながら、先の鋭利なピンセットを用いて除
いた。 (3)脳膜を除いた大脳皮質の片側の脳梁から500μ
m程度のところを、眼科手術用の微小ハサミを用いて、
脳梁にそって後頭葉側から前頭葉側に向かって切断し
た。 (4)続いて、先の切断面に垂直に眼科手術用微小ハサ
ミを入れ、200μmから300μm程度の厚さで大脳
皮質を切断し、切片を作った。 (5)次に、切片の皮質につながっているもう一端を、
眼科手術用微小ハサミを用いて切断し、切片を大脳皮質
から切り離した。 (6)切り離した切片の幅を、眼科手術用の微小ハサミ
を用いて1.5mm程度に調整した。 (7)調整時に切断した組織片が混入しないように注意
し、調整した大脳皮質切片を、口の大きなピペットで、
傷つけないように静かにとり、培地の入った滅菌シャー
レ中に移した。 (8)上記(ハ)の様に用意しておいた組織培養用基盤
を、CO2 インキュベータから取り出し、組織培養用基
盤の培養用ウェル中に、上記(7)の大脳皮質切片を口
の大きなピペットで、傷つけないように静かに移した。 (9)バーナーであぶり先端をなめらかにしたパスツー
ルピペットの先端を利用したり、ピペットからの培地の
噴射を利用して、大脳皮質切片を皮質の層構造が上面を
向くように基盤上に導いた。切片を傷つけないように注
意する。 (10)皮質切片を基盤上にのせた後、培地の量を調整
し、皮質切片の底面が培地に触れ、上面が外気に触れた
状態にした。 (11)調整後、組織培養用基盤を入れた滅菌シャーレ
に、培地の乾燥を防ぐために、あらかじめ37℃に暖め
ておいた滅菌水を15ml程度加え、CO2 インキュベ
ータ内に静置した。 (12)以降、培地の量に注意し、毎日、1日1回の培
地の交換を行った。培地の量に関しては上記(10)に
記載したようにする。
【0022】これら一連の操作により、組織培養用基盤
上で、ラットの大脳皮質切片を培養することができた。
本実施例における組織培養用基盤の効果をみるため、絶
縁基盤を、(a)ポリリジン、(b)プラズマ処理、
(c)ラミニン、で処理し、実施例2の方法でラット大
脳皮質切片を培養し、本実施例の組織培養用基盤上で培
養した場合と、培養の簡便さ、および基盤の組織切片の
培養に対する適合性を比較した。基盤に対する大脳皮質
切片の適合性の指標として、大脳皮質切片の定性的な様
子および、組織切片からの神経繊維の伸長度合、伸長し
た繊維の長さを比較した。各々について10枚の標品を
用意し、培養後1週間の時点での比較を行った。
【0023】ポリリジンにより表面処理した絶縁基盤
は、100μg/mlの濃度のポリリジン中に絶縁基盤
を1時間浸漬し、滅菌した蒸留水でポリリジンによる細
胞毒性がなくなるまで洗浄して得た。一体化複合電極の
プラズマによる表面処理は、10分間行った。処理後、
滅菌した蒸留水で数回洗浄して培養に備えた。ラミニン
により表面処理した一体化複合電極は、上記のようにポ
リリジンで処理した一体化複合電極を、1mg/mlの
ラミニン水溶液中に1時間浸漬し、滅菌した蒸留水で数
回洗浄して得た。
【0024】ポリリジンで処理した絶縁基盤、プラズマ
処理した絶縁基盤とも、大脳皮質切片は萎縮して隆起し
た形態をとり、安定に基盤上に定着せず、基盤から剥が
れてしまうものもあった。また、液量調整も困難であ
り、ポリリジン、プラズマ処理した基盤には保水効果が
少ないため、培養液の液量調整が困難であり、組織切片
を乾燥させてしまう恐れがあった。
【0025】残った切片で培養を続けたところ、培養3
日目程度で切片全体が黒く変色してしまった。これは、
切片が上記形態をとったため、切片の内部にまで充分な
酸素供給ができず、切片の内部の細胞が死滅してしまっ
たためであると考えられる。結果として、1週間培養で
きた標品は、ポリリジン、プラズマ処理とも0枚であっ
た。
【0026】ラミニンで処理した絶縁基盤の結果につい
て述べる。ラミニンは神経細胞に対して、接着および神
経繊維の伸長活性を持つ細胞外マトリックス構成タンパ
ク質として広く知られており、神経細胞の培養環境には
適したものであるが、組織切片に対しては、培養初期に
おいて接着性が不安定である点は上記と同様であり、7
枚の切片が剥がれてしまった。また、基盤が保水性に富
んでいないために上記と同様の問題があった。残った標
品で観察を続けたところ、その内の2枚については、ポ
リリジン、プラズマ処理と同じことが観察された。しか
しながら、残りの1枚では培養4日目頃から、グリア細
胞と思われる細胞が、切片周辺にみられ底面を覆い出す
と同時に、切片の接着性も増し、衝撃等の影響により、
切片が剥がれることはなくなった。しかしながら、顕微
鏡下でより詳細に観察したところ、切片の中心部は良く
底面に定着していたが、周辺部の定着は不安定であり、
定着と剥離を繰り返しており、組織切片からの神経繊維
伸長に対して損傷を与える原因となっていた。また、切
片の中心部は、黒ずんでおり中心部の細胞には既に死滅
しているものも多いようであった。1週間培養できた標
品は1枚であった。神経繊維の伸長は、大脳皮質切片の
白質側からまばらに起こっており、観察できた神経繊維
の最長のものは、約150μm程度のものであり、この
標品で最もよく観察された神経繊維の長さは、80μm
から120μm程度のものであった。
【0027】次に、本実施例の組織培養用基盤の場合の
結果について述べる。まず、今までに述べた基盤に比べ
ての大きな違いは、切片の形態で、コラーゲンゲル上で
切片が薄く広がり、接着性が良いことを示していた。し
かしながら、培養初期においては、完全に接着している
わけではなく、切片の周辺部は定着と剥離を繰り返して
いた。3日目以降から、切片周辺に偏平な形態をしたグ
リア細胞が観察されるようになり、切片の周辺部も完全
にコラーゲンゲル上に定着し、神経繊維の伸長が観察さ
れるようになった。切片が薄く広がった形態をとってい
るため、切片内部の細胞の酸素の取り込みも良好であ
り、全標品を1週間培養できた。神経繊維の伸長は、全
ての標品で、切片のほぼ全面から起こっていたが、特に
切片の白質側から活発に伸びていた。全標品中最長のも
ので、白質側から2mmにわたって伸びていた。全ての
標品で、最も良く観察された神経繊維の長さは、大脳皮
質切片の皮質表層側で100μmから200μm程度
で、白質側で800μmから1.2mm程度のものであ
った。この結果は、本実施例の組織培養用基盤が、組織
切片の培養に対して非常に良好な環境を与えるものであ
ることを示している。
【0028】また、他の培養基盤では、培養基盤が保水
性を持っていなかったため、組織切片を乾燥させてしま
う恐れが常にあり、そのため、組織切片を液相と気相の
界面に置くための培地の液量調整が困難であったが、本
実施例の組織培養用基盤では、培養基盤であるコラーゲ
ンゲル層が強い保水性を持っており、培地の量が少なく
ても、組織切片を乾燥から守る働きがある。その結果、
組織切片を液相と気相の界面に置くための培地の液量調
整が容易になった。
【0029】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、絶
縁基盤とその上に設けられたコラーゲンゲル層からなる
組織培養用基盤であるので、組織切片の培養に最適な環
境を提供できる組織培養用基盤を達成できる。すなわ
ち、コラーゲンゲル層はコラーゲン線維が網目状に入り
組んだ構造を持ち、その網目の内部に、培養液は蓄えら
れる。また、構成される網目構造は微細であるため、毛
細管現象により、コラーゲンゲルの乾燥部分に絶えず、
培養液が供給される。従って、組織切片を培養した際の
組織の乾燥が防がれる。また、組織切片培養の際の、組
織切片を気相と液相の界面に位置させるという培養条件
実現のための培養液の調整が容易である。さらに、コラ
ーゲンゲル層の厚みを調節すれば、組織切片を絶縁基盤
上に密接に位置させることが可能となる。また、コラー
ゲンは生体内の細胞外基質の構成要素であり、多くの組
織の細胞に対して、培養時の基質への定着および細胞の
伸展を促進する効果を有するので、本発明の組織培養用
基盤上で組織切片を培養した場合、組織切片を基盤上へ
容易に定着させることができる。また、組織切片をより
生体内の環境に近い状態で培養することができる。
【0030】また、コラーゲンゲル層の厚さが10μm
以上300μm以下の範囲であるので、良好な電気記録
が可能な組織培養用基盤を達成できる。したがって、本
発明の組織培養用基盤は、特に脳組織切片の培養に有効
であり、神経繊維の伸長に対しても良好な基盤を提供す
る。
フロントページの続き (72)発明者 光亦 忠泰 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁基盤とその上に設けられたコラーゲ
    ンゲル層からなる組織切片培養用基盤。
  2. 【請求項2】 コラーゲンゲル層の厚さが10μm以上
    300μm以下の範囲である請求項1に記載の組織切片
    培養用基盤。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002142752A (ja) * 2000-11-13 2002-05-21 Asahi Techno Glass Corp コラーゲンコート細胞培養容器及びその製造方法
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JP2002233361A (ja) * 2001-02-06 2002-08-20 Ueda Seni Kagaku Shinkokai トリミング型ゲルを用いた肝組織切片培養法
JPWO2004101736A1 (ja) * 2003-05-15 2006-07-13 ハイトカルチャ株式会社 生物培養装置および培養方法

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