JPH07170887A - 呈味および食感の向上した甲殻類、その加熱処理物、それらの冷凍品、ならびに呈味および食感の向上した甲殻類の製造方法 - Google Patents

呈味および食感の向上した甲殻類、その加熱処理物、それらの冷凍品、ならびに呈味および食感の向上した甲殻類の製造方法

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JPH07170887A
JPH07170887A JP6176236A JP17623694A JPH07170887A JP H07170887 A JPH07170887 A JP H07170887A JP 6176236 A JP6176236 A JP 6176236A JP 17623694 A JP17623694 A JP 17623694A JP H07170887 A JPH07170887 A JP H07170887A
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seawater
salt concentration
water
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JP6176236A
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Shinichi Ota
信一 太田
Akira Takeshita
朗 竹下
Toru Mori
徹 森
Masaaki Sugimoto
昌明 杉本
Hiroki Abe
宏喜 阿部
Emiko Okuma
恵美子 大熊
Itaru Shiotani
格 塩谷
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Nissui Corp
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Nippon Suisan Kaisha Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 カニ類、エビ類およびロブスター類よりなる
群から選ばれる、可食部のエキス成分中のうちグリシ
ン、アラニン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、
セリンのいずれか一種以上が向上し、可食部のエキス成
分量が天然種よりも高い、かつ、可食部の食感が向上し
た海産または淡水産蓄養殖の甲殻類、その冷凍品、その
加熱処理物およびその冷凍品。ブラックタイガー、クル
マエビ、アメリカンロブスター、ヨーロッパロブスタ
ー、アメリカザリガニ、ニホンザリガニ、カンバルス、
ヨーロッパザリガニを対象とする。製造方法は、甲殻類
をそれまでの棲息環境より高塩濃度の環境水で飼育する
工程を通過させることを特徴とする。高塩濃度の環境水
で飼育する前に、それまでの棲息環境よりも低塩濃度の
環境水で飼育することができる。高塩濃度の環境水はそ
れまでの棲息環境より高水温であることができる。環境
水での飼育を活魚輸送中に行うことができる。 【効果】 甲殻類の食材としての利用範囲を著しく広め
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、呈味と食感の向上した
カニ類、エビ類、ロブスター類、ザリガニ類などの海産
または淡水産蓄養殖の甲殻類、その加熱処理物およびそ
れらの冷凍品、ならびに、海産または淡水産の甲殻類の
呈味と食感の向上方法に関する。この発明の方法は甲殻
類の活魚輸送中の呈味と食感の向上方法を包含する。
【0002】本発明においては、以下の用語は次のよう
な意味で使用する。「蓄養殖」とは、一定の水域で水産
生物の繁殖と成長を図り、生産者に利益がもたらされる
段階まで育成したり、あるいは出荷段階の水産生物を短
期間生かした状態で一定の水域に収容することを意味す
る。したがって、蓄養殖の甲殻類は、天然産甲殻類であ
っても収穫後任意の段階で短期間生かした状態で一定の
水域に収容したものを包含する。天然物としては、産地
季節および生理条件によりその呈味成分量に大きな変化
がある。従って、本発明において、「天然」とは、10
0%海水に順応した際の含量を意味する。また、淡水産
の場合は、0%海水塩濃度で飼育したものを天然とす
る。
【0003】
【従来の技術】わが国は四方を海に囲まれ、豊富な水産
物に恵まれているため、古くから水産物は食文化の重要
な部分を占め、欠かすことのできないものとなってい
る。この水産物は、それぞれが特有な風味とテクスチャ
ーを持ち、また、季節によって異なった味覚を示すのが
特徴であるが、われわれ日本人は、個々の水産物の
「旬」の味をもっとも美味であるとするほどに、水産物
の味に対して鋭敏な感覚を持ち、また、その味覚を楽し
んできた。
【0004】甲殻類は、特有の風味、テクスチャーを持
つため和食のみならず洋食、中華などの食材として広く
用いられている。例えば、生鮮(刺身)、煮物、焼も
の、揚げ物、蒸しものなどで食されており、エビでは練
製品原料としても利用されている。一般に、クルマエ
ビ、タイショウエビ、ボタンエビ、イセエビ等は程よい
風味とテクスチャーを持ち、高級種として知られている
が、近年これら高級種に加えて、本格化されたエビ養殖
の急速な発展により、ブラックタイガー、アメリカンロ
ブスター等の輪入種が市場に流通するようになり一般消
費者にも安価にエビを入手することが可能となった。
【0005】台湾から始まったブラックタイガー養殖
は、今日では東南アジア各国に普及し、養殖ブラックタ
イガーは東南アジアから多くの水産会社、商社により大
量に輸入販売されるようになり、日本国内の量販店で
「ブラックタイガー」と表示されるほど馴染み深いエビ
に成長している。輸入された東南アジア産ブラックタイ
ガーは、クルマエビと同じくクルマエビ属(Penae
us)であり、ほとんどが養殖により生産されている。
養殖形態は国によって若干の違いはあるものの、素掘り
の養殖池を利用して集約的に行われている。これらは通
常20g〜40gの大きさまで育成された後出荷され、
現地の加工場で注水凍結品(1.8kg/1パック)に
加工され商品となる。養殖ブラックタイガーは加熱する
ことにより国産または外国産のクルマエビとほとんど見
分けがつかなくなるため、クルマエビの代替品としてエ
ビ天ぷら、エビフライ等の和食加工食品材料として使わ
れるほか、中華料理、西洋料理等の食材としてもよく用
いられている。
【0006】他の甲殻類と同様、エビ類の呈味成分は、
グリシン、アラニン、グルタミン酸等の遊離アミノ酸
や、5’−イノシン酸のようなヌクレオチド(核酸関連
物質)、乳酸、コハク酸の様な有機酸およびベタインか
らなっている。これら呈味を決定づけるエキス成分は、
養殖種の場合、天然種に比較して一般に少なく、その味
は淡泊である。そこで、加工に際してはグリシン、アラ
ニン等を配した調味液に浸漬するなどの工夫がされてい
るのが現状である。クルマエビ属のエビについては高張
液中で飼育して、肉質へどのような影響があるかの研究
報告(J.Agric.Food Chem.,33
1174−1177(1985),Nipopn Su
isan Gakkaishi,58,(6)1095
−1102(1992)等)が多数あるが,その中に、
クルマエビは塩濃度が高くなると体の細胞の中に海水を
取り込み順応する性質があり、塩濃度の決定には注意を
要すると報告されており、クルマエビの呈味をそれ以下
にしない飼育方法に目が向けられている。
【0007】現在輪入されているエビ類は、旨味、風味
を補うために寿司種として使用する場合、例えばブラッ
クタイガーの場合、調味液へ浸漬し風味を添加する方法
がしばしばとられているが、この方法で得られたエビは
人工的な旨味、風味であり本来ブラックタイガーが有し
ている味とは異なってしまう。また、ボイルされたブラ
ックタイガーでは煮汁中に呈味成分が溶出してしまい味
が薄くなってしまう。このようなことから、水産業界あ
るいは食品業界では以前から呈味がよく、また、味の濃
いブラックタイガーを強く望む声があった。しかしなが
ら、ブラックタイガーの可食部の呈味改善は前述した漬
け込み法以外になく、コスト高になってまい、低コスト
の呈味改良法の確立が待たれていた。
【0008】比較的安価なアメリカンロブスター等の輸
入ロブスター類は、大西洋のアメリカンロブスター、ヨ
ーロピアンロブスター、太平洋のイセエビ類等があり、
ほぼ年間を通じて世界各地で漁獲され、生きたまま、あ
るいは凍結して日本へ輸入されている。これらは現在、
養殖の研究もなされているが、未だ技術は確立されてお
らず、主に天然物が流通している。通常ロブスター類
は、生きたまま輸入、流通させる場合は漁獲後1〜2日
間絶食させ、棲息水温以下の温度で、湿らした新聞紙、
おがくず等と共に箱詰して空輸し、棲息水温の蓄養水槽
に移される。主な調理法は、ボイルあるいはスチームで
あるが、フランス料理、イタリア料理、中華料理、日本
料理等の食品素材としてもよく利用される。また、この
輸入ロブスター類は日本産イセエビよりも安価である
が、大きさ、形状がイセエビに比較的似ているため日本
産イセエビの代替品として利用される場合もある。
【0009】このように食品素材として利用されている
ロブスター類の呈味成分は、他の水産物と同様にグリシ
ン、アラニン、グルタミン酸等の遊離アミノ酸や、5’
−イノシン酸のようなヌクレオチド(核酸関連物質)、
乳酸、コハク酸の様な有機酸及びベタインからなってい
る。これら呈味を決定づけるエキス成分は、全て水溶性
であるため、ボイル加工などの煮熟時にその多くが溶出
しやすいこともあり、製品の味、ロブスター類の風味が
失われないよう、加熱加工をスチームで行う等、加工に
際しては種々の工夫がなされている。比較的安価な輸入
ロブスター類であるが、日本産イセエビに比較すると、
旨味、風味に劣り、加熱した場合のテクスチャーもゴム
の様で好ましくない。この欠点を補うために強い味のソ
ース等を使用するが、やはりイセエビに比較すると旨
味、風味、テクスチャーに劣った食品素材であることは
否めない。単純な処理で、かつ低コストで輪入ロブスタ
ー類の呈味を向上する技術の開発、すなわち呈味の向上
したロブスター類の出現が強く望まれている。
【0010】一方、ザリガニはヨーロッパや北アメリカ
では幅広く利用され食されている甲殻類であるが、わが
国においては1930年に輸入されはしたものの食用化
されなかった。輸入アメリカザリガニがわが国において
幅広く食されなかったのは、ニホンザリガニが清流のみ
に生息するという清潔な印象を有するのに対して、アメ
リカザリガニは沼や田あるいは池のような比較的汚濁し
た水中でも繁殖してしまうというあまり好ましくない印
象を持つことや日本人好みの深みのある味わいがないこ
となどに由来していると考えられる。しかし、フランス
料理にはザリガニ料理があり、最近わが国においてもザ
リガニを用いた料理が珍重されるようになってきてい
る。アメリカザリガニは、和食、フランス料理の食材と
して十分使用できるが、味が良くない、すなわち呈味成
分量が少ないという問題のため廉価な食材として取り扱
われている。単純な処理で、かつ低コストでアメリカザ
リガニの呈味を向上する技術の開発、すなわち呈味の向
上したザリガニ類の出現が強く望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は高鮮度維持を
行い、かつ外観のよい甲殻類を生産、流通させるために
なされたものである。本発明は、呈味と食感の向上した
カニ類、エビ類、ロブスター類、ザリガニ類などの海産
または淡水産蓄養殖の甲殻類、その加熱処理物およびそ
れらの冷凍品の提供を目的とする。また、本発明は、海
産または淡水産の甲殻類の呈味と食感の向上方法の提供
を目的とする。さらにまた、本発明はカニ類、エビ類、
ロブスター類、ザリガニ類などの海産または淡水産甲殻
類を活魚輸送中に呈味と食感の向上処理を行う方法の提
供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】価格を大きく変えること
なく呈味成分が著しく高い甲殻類を製造すれば、加工品
原料として良質の甲殻類を安価に供給できることにな
る。海産または淡水産甲殻類の低コストの呈味改良に関
し前述のとおり要望も強い。そこで、本発明者らはエ
ビ、カニ等の甲殻類が、本来有している独特な味を強く
発現すべく研究を重ね、出荷直前の甲殻類に一定の処理
を施すことにより甲殻類の可食部の呈味に係わる特定の
エキス成分のみの増加を、簡便、かつ、低コストで行う
ことに成功し、可食部の呈味の向上した甲殻類を得るこ
とができた。本発明は、かかる知見に基づくものであ
る。
【0013】エビの鮮度判定には多くの方法がとられて
いるが、大別すれば、五感判定、物理判定、微生物学的
判定、そして化学的判定である。具体的には形態、色
沢、香味、肉質、選別、グレーズの各項が一定以上の基
準を満たしていることが必要である。特に使用する水は
清浄なもので、かつエビの乾燥を防ぐためグレーズが十
分均一にされていることが望ましい。また、中心温度が
零下10度以下であること、内容重量が表示された重量
と一致していること、包装資材が衛生的なもので内容物
に損傷を与えない程度の強度を有していること、サイズ
その他の表示したものについては、内容物と合致してい
ること、異物の混入がないこと、腐敗程度の判定として
は、揮発性塩基窒素が検体100g中30mg以下であ
ること、その他アンモニア臭、トリメチルアミン臭、硫
化水素臭がないこと、細菌数(生菌数)が検体1g当た
り10万以下、大腸菌は100g当たり陰性であること
などが要求される。
【0014】水産物の市場価格は一般に鮮度に大きく左
右され、鮮度の良いものほど高価格で取り引きされる。
鮮度は経験的な判断に基づくものであるため、現在は鮮
度の客観的指標としてK値というものが導入されてお
り、簡易的に測定するキットも販売されている。K値は
経時的に変化していくATP関連化合物の組成比を測定
し、分解の程度、すなわち鮮度低下の程度を判定してい
る。 ただし、上記式中、ATPはアデノシン三燐酸、ADP
はアデノシン二燐酸、AMPはアデノシン二燐酸、IM
Pはイノシン酸、HxRヒポキサンチンリボース、Hx
はヒポキサンチンである。しかしながら鮮度判定の一つ
としてK値が化学的に定義されても、流通業者や消費者
はこれを利用することができないのが現状である。
【0015】鮮度の善し悪しは、漁獲後の経過時間やそ
の取扱方、あるいは流通形態に強く影響され、その差は
しばしば外観や筋肉の硬直度などに現れる。そこで、消
費者は水産物を購入する際に、肉眼で判断できる外観や
あるいは実際に指で触れ触感に頼って鮮度を確認してい
る。特に、肉眼による外観判別は、水産物購入の際には
重要で、例えば魚類であれば目に雲がかかっていないか
(一般に鮮度低下するほど白濁して来る)、エラが変色
していないか、鱗が脱落していないかなどを観察し、よ
り完壁な商品が高価格で流通している。
【0016】ブラックタイガーなどの甲殻類でもやはり
同様で、鮮度が外観に現れ、鮮度の良いものほど筋肉に
透明感があり、甲殻に存在する色素帯が鮮明である。従
って、鮮度的にはまったく同等であっても外観の良いも
の、即ち甲殻にみられる色素帯が鮮明であるものほど鮮
度がよいように考えられ、消費者の購買意欲が強くなる
傾向にある。従って、いかにして高鮮度を維持し、か
つ、いかに色素帯を鮮明に保って流通するかが現在ブラ
ックタイガーを含む水産物に科せられた課題であるとい
える。また、エビ類の背部にあるいわゆる背腸は外観上
好まれないばかりか、異味を有する内容物を含んでおり
可能な限り除去しておきたいものである。しかし、すべ
てのエビ類の背腸を加工前に除去するのは困難であるた
め低コストで消化管内容物除去ができれば廉価な美しい
むき身が販売できる。
【0017】本発明は食用にすることができるいかなる
種類の海産または淡水産蓄養殖の甲殻類も対象とする。
本発明が対象とする海産の蓄養殖甲殻類は、カニ類、エ
ビ類およびロブスター類よりなる群から選ばれる。淡水
産の蓄養殖甲殻類は、ザリガニ類が例示される。
【0018】上記カニ類はいずれのカニでもよいが、好
ましくは、ケガニ(Erimacrus isenbe
ckii)、ズワイガニ(Chionoecetes
opilio)、タラバガニ(Paralithode
s camtschaticus)、タカアシガニ(M
acrocheria kaempferi)およびワ
タリガニ(Portunus tritubercul
atus)よりなる群から選ばれるカニである。上記エ
ビ類はいずれのエビでもよいが、好ましくはブラックタ
イガー(Penaeus monodon)およびクル
マエビ(Penaeus japonicus)よりな
る群から選ばれるクルマエビ属(Penaeus属)に
属するエビである。また、イセエビ属(Panulir
us属)に属するエビも対象となる。イセエビ属に属す
るエビはイセエビ(Panulirus japoni
cus)、カノコイセエビ(Panulirus lo
ngipes)、シマイセエビ(Panulirus
penlicillatus)、ゴシキエビ(Panu
lirus versicor)、シークローフィッシ
ュ(Panulirus argus)、カリフォルニ
アイセエビ(Panulirus interrupt
us)、ナンヨウイセエビ(Jasus laland
i)、ハコエビ(Linuparus trigonu
s)、ウチワエビ(Ibacus ciliatu
s)、ゾウリエビ(Parribacusantarc
ticus)、セミエビ(Scyllarides s
queamosus)およびコブセミエビ(Scyll
arides haani)が例示される。上記ロブス
ター類は、アメリカンロブスター(Homarus a
mericanus)、ヨーロッパロブスター(Hom
arus gummarus)が例示される。上記ザリ
ガニ類は、アメリカザリガニ(Procambarus
clarcki)、ニホンザリガニ(Cambroi
des japonicus)、カンバルス(Camb
arus bartoni)、ヨーロッパザリガニ(A
stacus fluviatilis,Astacu
s pallipes,Astacus leptod
actylus,Actacus torrentiu
m)、ムライリバーロブスター(Astacopsis
serratus)が例示される。本発明はこのアメ
リカザリガニの他、テナガエビ(カワエビ)、サワガニ
等の淡水産の甲殻類にも適応できる。
【0019】本発明の呈味と食感の向上した甲殻類は、
それまでの棲息環境より高塩濃度の環境水で飼育する工
程を通過させることを特徴とする処理を施すことにより
得られる。例えば、一般の養殖池から速やかに高塩濃度
下の甲殻類の棲息条件として比較的苛酷な条件の飼育水
に移行して飼育し、数時間の後速やかに氷蔵じめして凍
結することにより得られる。ただし氷蔵じめ後、4時間
以内に凍結工程を終了することが好ましく、それを越え
ると改善効果が低減することがある。
【0020】養殖ブラックタイガーは、一般に成長を早
めるために低濃度海水での養殖が採用されている。これ
らは天然のブラックタイガーに比べると格段に成長が早
いためである。しかし、天然のブラックタイガーに比べ
ると呈味でやや劣るとの評価があり、最近では成長が遅
く、生産性が劣る事に目をつぶっても100%海水で養
殖されるものが出てきた。本発明によれば、養殖そのも
のは成長の早い低濃度海水で行い、水揚直後に高塩濃度
海水で飼育することにより、成長は早く、かつ、呈味、
食感、色彩の面でも100%海水、又は天然種のものよ
り優れた品種のものを作ることができる。
【0021】甲殻類の棲息条件として比較的苛酷な条件
の飼育水は、それまでの棲息環境より高塩濃度且つ高水
温の飼育水とすることもできる。すなわち、本発明の呈
味と食感の向上した甲殼類は、それまでの棲息環境より
高塩濃度、かつ、高水温の環境水で飼育する工程を通過
させることを特徴とする処理を施すことにより得られ
る。
【0022】甲殻類の棲息条件として比較的苛酷な条件
の飼育水は、段階的に塩分濃度を高めた飼育水とするこ
ともできる。すなわち、本発明の呈味と食感の向上した
甲殻類は、それまでの棲息環境より段階的に塩分濃度を
高めた飼育水に移行飼育する工程を通過させることを特
徴とする処理を施すことにより得られる。
【0023】甲殻類の棲息条件として比較的苛酷な条件
の飼育水で飼育する前に、それまでの棲息環境よりも低
塩濃度の環境水で飼育することで、甲殻類の呈味と食感
を効果的に向上することができる。すなわち、本発明の
呈味と食感の向上した甲殻類は、甲殻類をそれまでの棲
息環境よりも低塩濃度の環境水で飼育し、その後で、元
の棲息環境よりも高塩濃度の環境水で飼育する工程を通
過させることを特徴とする処理を施すことにより得られ
る。
【0024】上記の「それまでの棲息環境より高塩濃度
の環境水で飼育する工程」は活魚輸送中に行うことがで
きる。したがって、本発明の呈味と食感の向上した甲殻
類は、それまでの棲息環境より高塩濃度の環境水を積載
した活魚輸送車中で飼育しながら輸送すること特徴とす
る処理を施すことにより得られる。
【0025】上記方法は甲殻類の種類、目的の製品、畜
養殖の立地条件などにより最適な方法ならびに条件が選
択される。
【0026】例えばエビ、カニ等の海産甲殻類の場合、
本発明の呈味と食感の向上したエビ、カニ等の海産甲殻
類は、海産甲殻類をそれまでの棲息環境より高塩濃度の
環境水で、または高塩濃度、かつ、高水温の環境水で飼
育する工程を通過させることにより得られる。アメリカ
ンロブスターの場合、高塩濃度環境水中での飼育とはア
メリカンロブスターの棲息条件として比較的苛酷な条件
を示し、工程としては、空輸されてきたアメリカンロブ
スターを棲息水温(6〜10℃)の環境水(通常海水)
に人工海水あるいはそれに準ずるもので100%海水塩
濃度以上に調整した環境水のなかで、数時間飼育するこ
とを意味する。
【0027】例えばブラックタイガーの場合、本発明の
呈味と食感の向上したブラックタイガーは、出荷前に、
85%〜150%海水塩濃度中、好ましくは105%〜
135%海水塩濃度の環境水中で、または85%〜15
0%海水塩濃度中、好ましくは105%〜135%海水
塩濃度中、かつ、水温の20℃〜45℃、好ましくは2
5℃〜38℃の環境水中で、2時間〜24時間、好まし
くは3時間〜8時間飼育することにより得られる。この
工程を通過させるだけで、ブラックタイガーの可食部の
塩分とエキス成分中の少なくとも一つの、或いは二つ以
上の呈味成分の含有量を速やかに増加させる。可食部
は、そのエキス成分の中のうち少なくともグリシン、ア
ラニン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、セリン
のいずれかが向上し、かつ、食感が向上する。この工程
により筋肉に塩味が適度に付与されるため、相乗効果に
より味が向上する。
【0028】例えばロブスター類の場合、空輸されてき
たアメリカンロブスターを棲息水温(6〜10℃)の環
境水(通常海水)に人工海水あるいはそれに準ずるもの
で100%海水塩濃度以上に調整した環境水のなかで、
数時間飼育するだけで、即ち高塩濃度下のロブスター類
の棲息条件として比較的苛酷な条件で飼育するだけで、
ロブスター類は可食部のエキス成分中のいくつかの呈味
成分の含有量を増加させることができる。100%海水
塩濃度以上の高塩濃度環境水中で飼育すると呈味成分で
あるグリシン、アラニンを著しく増加でき、更に食感も
柔らかくなる。
【0029】淡水産畜養甲殻類の場合も、淡水で養殖さ
れている、例えばアメリカザリガニを段階的に塩分濃度
を高めた飼育水に移行飼育することによりクルマエビと
同等の味を呈するアメリカザリガニを得ることができ
る。
【0030】ザリガニは一般に淡水中で繁殖、成長し、
網で漁獲された後は、生きたままで市場に流通されてい
る。ザリガニの可食部は尾肉であるが、その筋肉の呈味
は、例えばクルマエビなどと比べ著しく劣りテクスチャ
ーを楽しむだけといっても過言ではない。表1[クルマ
エビとアメリカザリガニの核酸関連化合物と遊離アミノ
酸量(μmol/g water)]に示した養殖クル
マエビとアメリカザリガニ(淡水)の筋肉部の核酸関連
化合物含量とその組成、および、アミノ酸含量とその組
成から明らかなように、アメリカザリガニの全アミノ酸
含量はクルマエビに劣っているだけではなく、旨味成分
に関与している核酸関連化合物、あるいはグリシン、ア
ラニンなど甘味成分のアミノ酸量もはるかに劣ってい
る。
【0031】
【表1】
【0032】上記数値は、アメリカザリガニがクルマエ
ビなどに比べ著しく呈味の劣る食材であることを示すも
のである。またアメリカザリガニが価格の低い魚介類と
いえること、ザリガニ料理では素材の良さを生かす単純
な料理よりもソースを用いて味付けを施す料理に適して
いることを教示するものである。上記表1のデータか
ら、クルマエビに劣っているアメリカザリガニの全アミ
ノ酸含量、旨味成分に関与している核酸関連化合物、あ
るいははるかに劣っているグリシン、アラニンなど甘味
成分のアミノ酸量を向上することによりクルマエビと同
等の味を呈するアメリカザリガニを得ることが可能にな
ることがわかる。
【0033】本発明は淡水で養殖されているアメリカザ
リガニを段階的に塩分濃度を高めた飼育水に移行飼育す
ることにより、可食部に含まれるエキス成分中のグリシ
ン、アラニン、プロリン、トレオニン及びセリンから選
ばれた少なくとも1種類の呈味成分が向上しかつ食感が
向上したザリガニ類を製造することができる。好ましく
は可食部に含まれるエキス成分中のグリシン、アラニ
ン、プロリン、トレオニン及びセリンから選ばれた少な
くとも1種類の呈味成分が向上しかつ食感が向上しさら
に可食部に含まれる核酸関連化合物のうち少なくともA
TPの含量が向上したザリガニ類を製造することができ
る。
【0034】さらに、アメリカザリガニの場合について
説明する。淡水で養殖されているアメリカザリガニを段
階的に塩分濃度を高めた飼育水に移行飼育することは次
のようにして行う。すなわち、本発明は淡水養殖された
アメリカザリガニをまず、10〜25%濃度の海水に移
行し0〜7日間飼育した後、25〜50%濃度の海水に
移行して0〜10日間飼育する。この際、海水は天然海
水でも人工海水でも構わない。次いで、50〜75%濃
度の海水に移行した後3日以上畜養してから75〜10
0%濃度の海水に移行し、さらに2日以上畜養し、流
通、あるいは加工する。この際、75%濃度海水での畜
養が3日未満で100%濃度海水に移行すると、アメリ
カザリガニの生存率は著しく劣るので注意を要する。ま
た、この飼育工程の後でザリガニ類の棲息条件に適した
条件に戻して飼育したりすると、上記効果が元に戻る現
象にも注意を要する。
【0035】本発明の呈味と食感の向上した甲殼類は、
冷凍品として市場に出すことができる。上記向上処理工
程が加工する前にあらかじめなされていると、呈味と食
感を向上した甲殻類はそのまま普通に使用するだけで、
可食部の呈味と食感の向上した海産または淡水産甲殻類
をいわゆる食品素材として使用することができる。した
がって、呈味と食感の向上した海産または淡水産甲殻類
を直ちに茹でたり、揚げたり、焼いたりなどの加熱処理
をすると、もとにもどることがない。茹物、揚げ物、焼
き物などの加熱処理物を冷凍して保存すると、解凍によ
り呈味と食感を向上した海産または淡水産甲殻類にもど
すことができる。
【0036】加熱処理は通常の加熱処理手段が採用され
る。例えば茹でる手段としてはスチーム調理が好まし
い。可食部の呈味と食感の向上した甲殻類は、茹でた
後、殻と身の間に発生する白い凝結物が減少し、表面の
きれいな茹で身が得られる。例えば揚げ物は通常の油で
揚げる手段を採用する。揚げる条件などは目的とする製
品に応じて適宜選択される。可食部の呈味と食感の向上
した海産甲殻類は、揚げた後、殻と身の間に発生する白
い凝結物が減少し、表面のきれいな茹で物が得られる。
【0037】本発明は、呈味と食感の向上した甲殻類の
製造方法に係わる。本発明は高鮮度維持を行い、かつ外
観のよい甲殻類を生産、流通させるためになされたもの
であって、その課題を解決するための手段は、出荷時ま
たは加工時、速やかにそれまでの棲息環境より高塩濃度
の飼育水に移行して飼育し、数時間の後速やかに氷蔵じ
めして、またはただちに凍結するあるいは加工すること
にある。
【0038】本発明の呈味と食感の向上した甲殻類の製
造方法は、甲殻類をそれまでの棲息環境より高塩濃度の
環境水で飼育する工程を通過させることを特徴とする。
具体的には本発明の方法は、例えば、甲殻類を、一般の
養殖池から速やかに高塩濃度下の甲殻類の棲息条件とし
て比較的苛酷な条件の飼育水に移行して飼育し、数時間
の後速やかに氷蔵じめして凍結することからなる。
【0039】甲殻類の棲息条件として比較的苛酷な条件
の飼育水は、それまでの棲息環境より高塩濃度巨つ高水
温の飼育水とすることもできる。すなわち、本発明の呈
味と食感の向上した甲殻類の製造方法は、甲殻類をそれ
までの棲息環境より高塩濃度、かつ、高水温の環境水で
飼育する工程を通過させることを特徴とする。
【0040】甲殻類の棲息条件として比較的苛酷な条件
の飼育水は、段階的に塩分濃度を高めた飼育水とするこ
ともできる。すなわち、本発明の呈味と食感の向上した
甲殻類の製造方法は、甲殻類を、それまでの棲息環境よ
り段階的に塩分濃度を高めた飼育水に移行飼育する工程
を通過させることを特徴とする。
【0041】甲殻類の棲息条件として比較的苛酷な条件
の飼育水で飼育する前に、それまでの棲息環境よりも低
塩濃度の環境水で飼育することで、甲殻類の呈味と食感
を効果的に向上することができる。すなわち、本発明の
呈味と食感の向上した甲殻類の製造方法は、甲殻類をそ
れまでの棲息環境よりも低塩濃度の環境水で飼育し、そ
の後で、元の棲息環境よりも高塩濃度の環境水で飼育す
る工程を通過させることを特徴とする。
【0042】上記の「それまでの棲息環境より高塩濃度
の環境水で飼育する工程」を含むいずれかの工程を活魚
輸送中に行うことができる。すなわち高塩濃度などの環
境水を積載した活魚輸送車中で飼育しながら輸送するこ
とである。したがって、本発明の呈味と食感の向上した
甲殻類の製造方法は、それまでの棲息環境より高塩濃度
の環境水を積載した活魚輸送車中で飼育しながら輸送す
ること特徴とする。
【0043】近年甲殻類のほとんどが養殖により生産さ
れている。例えば、ブラックタイガーの場合、養殖形態
は国によって若干の違いはあるものの、素掘りの養殖池
を利用して集約的に行われている。これらは通常20g
〜40gの大きさまで育成された後出荷され、現地の加
工場で凍結品(1.8kg/1パック)に加工され商品
となる。そこで、本発明は養殖池から加工場に養殖甲殻
類を生きたまま輸送する時間を利用して、呈味と食感の
向上処理を行うものである。養殖池または畜養池は各地
に点在するし、対象とする甲殻類の種類、生育状況、最
終製品の形態等により大きなバッチ処理よりもキメ細か
な処理をしなくてはならない。そこで、本発明は加工場
へ生きたまま甲殻類を輸送する活魚輸送の時間を呈味と
食感の向上処理工程に有効に利用するものである。
【0044】活魚輸送車に投入される収穫直後の生きた
海産または淡水産甲殻類は、処理を受けながら生きた状
態で目的の加工場に届けられなければならない。限られ
た空間の中でできるだけ大量の甲殻類を処理することが
望ましいが、限度がある。環境水重量の50%以下投入
して飼育することが望ましい。すなわち、本発明は活魚
輸送車に高塩濃度、または高塩濃度かつ高水温の環境水
を積載し、海産甲殻類を環境水重量の50%以下、好ま
しくは6〜12%投入して飼育する工程を通過させるこ
とを特徴とする呈味と食感の向上方法である。
【0045】本発明の方法で使用する活魚輸送車は、換
水手段、曝気手段、輸送中の甲殻類の動揺、振動防止手
段を設備する通常の活魚輸送車である。上記換水手段は
アンモニアの除去手段であり、初期ストレスによる汚染
水の除去のために設けた。吸排水用ポンプを搭載し、換
水後予め作っておいた塩水を輸送する。曝気手段は、水
流が循環する程度、過剰にならないように運転される。
必要に応じ酸素ボンベを搭載する。
【0046】上記製造方法は甲殻類の種類、目的の製
品、畜養殖の立地条件などにより最適な方法ならびに条
件が選択される。
【0047】また本発明の製造方法により呈味と食感の
向上した甲殻類を得た後で、当該甲殻類を通常の環境水
の条件に戻して飼育したりすると、上記効果が元に戻る
現象には注意を要する。そのため、呈味と食感の向上し
た甲殻類を生きたまま包装する際、無機塩類も一緒に包
装することにより、飼育工程の後で甲殻類の棲息条件に
適した条件に戻して飼育したりすることがないようにす
る。上記無機塩類は、高張液をつくることができる無機
塩類であれば何でもよいが、海水の成分である無機塩類
であることが好ましい。例えば、塩化マグネシウム、塩
化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナ
トリウム、硫酸マグネシウムを主成分とする無機塩類が
用いられる。
【0048】排水用ポンプを搭載し、換水後予め作って
おいた塩水を輸送する。曝気手段は、水流が循環する程
度、過剰にならないように運転される。必要に応じ酸素
ボンベを搭載する。
【0046】上記製造方法は甲殻類の種類、目的の製
品、畜養殖の立地条件などにより最適な方法ならびに条
件が選択される。
【0047】また本発明の製造方法により呈味と食感の
向上した甲殻類を得た後で、当該甲殻類を通常の環境水
の条件に戻して飼育したりすると、上記効果が元に戻る
現象には注意を要する。そのため、呈味と食感の向上し
た甲殻類を生きたまま包装する際、無機塩類も一緒に包
装することにより、飼育工程の後で甲殻類の棲息条件に
適した条件に戻して飼育したりすることがないようにす
る。上記無機塩類は、高張液をつくることができる無機
塩類であれば何でもよいが、海水の成分である無機塩類
であることが好ましい。例えば、塩化マグネシウム、塩
化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムを主成分
とする無機塩類が用いられる。
【0048】
【実施例】以下、実施例を示して発明の詳細を説明する
が、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0049】実施例1 125%海水、温度38℃処理による呈味成分及び食感
への影響を飼育試験で調べた。塩濃度85%海水塩濃
度、水温28℃の養殖場において出荷サイズ(体重25
g〜35g)となったブラックタイガーを水温38℃で
125%海水で24時間飼育し経時的に、生可食部筋肉
のエキス成分(遊離アミノ酸含量)の測定を行った。エ
キス成分は1%ピクリン酸にて抽出したものをアミノ酸
分析計で分析した。すなわち飼育後2h、4h、6h、
12h、24hに取り上げ、直ちに凍結した。ただし、
飼育水はヒーターで加温して38℃に設定し、天然塩を
加えて125%海水塩濃度に調節した。この飼育環境は
ブラックタイガーにとって比較的苛酷な条件であるが、
注意深くエビを取り扱えば減耗はかなり抑えることがで
きる。遊離アミノ酸含量の変化を図1〜図7に示した。
トータル量を図1に、グリシンを図2に、アラニンを図
3に、グルタミン酸を図4に、プロリンを図5に、セリ
ンを図6に、トレオニンを図7に示した。これらの結果
から、高温、高塩濃度飼育を4〜6hかけることにより
呈味の向上したブラックタイガーの得られることが分か
る。これらの結果から、海水飼育ブラックタイガーより
も遊離アミノ酸総量の高いブラックタイガーの得られる
ことが分かる。得られたブラックタイガーのスチーム加
熱可食部筋肉を、良く訓練されたパネラー10名により
官能試験をしたところ、甘み、旨み、塩味、テクスチャ
ーについて全員が良好であると判定した。
【0050】実施例2 125%海水、温度35℃処理による呈味成分及び食感
への影響を飼育試験で調べた。塩濃度28‰(85%海
水塩濃度)、水温28℃の養殖場にて出荷サイズ(体重
25g〜35g)となったブラックタイガーを水温35
℃で125%海水で24時間飼育した後、生可食部筋肉
のエキス成分(遊離アミノ酸含量)の測定を行った。た
だし飼育水はヒーターで加温して35℃に設定し、天然
塩を加えて125%海水塩濃度に調節した。この飼育環
境はブラックタイガーにとって比較的苛酷な条件である
が、注意深くエビを収り扱えば減耗はかなり抑えること
ができる。呈味に関わるアミノ酸分析の結果を表2に示
した。比較のため無処理のブラックタイガーの分析結果
も併記した。
【0051】
【表2】
【0052】この結果から分かるように125%海水、
35℃による処理で総アミノ酸量,グルタミン酸,グリ
シン,アラニン,旨み,塩味,テクスチァが増加するこ
とが明らかとなった。得られたブラックタイガーのスチ
ーム加熱可食部筋肉を、良く訓練されたパネラー10名
により官能試験をした。即ち実施例2の方法で飼育した
ブラックタイガーと、比較のため無処理のブラックタイ
ガーをスチーム加熱し、可食部筋肉の呈味、旨み、及び
テクスチャーを比較した。実施例2の方法で飼育したブ
ラックタイガーについて、甘み、旨み、テクスチャーに
ついて全員が無処理のものよりも良好であると判定し
た。
【0053】実施例3 塩濃度28‰(85%海水)、水温28℃の養殖場にお
いて出荷サイズ(体重25g〜35g)となったブラッ
クタイガーを棲息水温下で85%海水、100%海水、
125%海水、150%海水、175%海水、200%
海水でそれぞれ24時間(h)飼育した後、生可食部筋
肉のエキス成分(遊離アミノ酸含量)を測定した。ただ
し、ここで言う85%海水とは、ブラックタイガーのそ
れまでの棲息環境を指す。また、125%海水、150
%海水、175%海水、200%海水とはブラックタイ
ガーの棲息条件として比較的苛酷な条件を指し、ここで
は通常の海水(塩濃度33‰)に天然塩を加え、塩濃度
調節した海水を用いた。採肉後、エキス成分の分析を行
った。図8〜図10に上記飼育試験における生可食部筋
肉中の遊離アミノ酸含量の変動(μmol/g)を示
す。トータル量を図8に、グリシンを図9に、アラニン
を図10に示した。これらの図から明らかなように12
5%海水、150%海水、175%海水、200%海水
で24時間飼育したブラックタイガーの総アミノ酸量は
増加していた。しかし、実施例2で得られたブラックタ
イガー(125%海水、35℃)の総アミノ酸量、グリ
シン量、アラニン量に比べると低い。高塩濃度飼育と同
時に高温度処理をかけることにより著しく呈味の改善さ
れたブラックタイガーが得られることが分かる。
【0054】実施例4 塩濃度を二段階に変えて飼育することによる呈味成分及
び食感への影響(28℃)を実験した。塩濃度85%海
水、水温28℃の養殖場において出荷サイズ(体重25
g〜35g)となったブラックタイガーを棲息水温下で
飼育水を85%海水から66%海水に移して24時間飼
育した後飼育水を66%海水から125%海水に濃度を
上げ更に24時間飼育してとりあげ凍結した後、生可食
部筋肉のエキス成分(遊離アミノ酸含量)の測定を行っ
た。その結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】表3から明らかなように、同一温度下では
一段階高塩濃度飼育よりも二段階高塩濃度飼育の方が総
アミノ酸量、グルタミン酸量、グリシン量、アラニン量
の点で呈味向上効果があったことが分かる。得られたブ
ラックタイガーのスチーム加熱可食部筋肉を、良く訓練
されたパネラー10名により官能試験をしたところ、甘
み、旨み、塩味、テクスチャーについて全員が良好であ
ると判定した。
【0057】実施例5 塩濃度が10‰(30%海水塩濃度)の養殖池から、ブ
ラックタイガー100kgを投網で漁獲し、50kgを
同塩濃度の飼育水に、残る50kgを41‰(125%
海水塩濃度)の飼育水に速やかに移行した。以下、前者
を無処理品、後者を処理品とする。6時間後、飼育水中
のブラックタイガーを砕氷中に速やかに移行し、3時間
以内に全てを注水凍結、あるいはIQFした。また、同
養殖池から漁獲したブラックタイガーを通常の方法で製
品にした物を対照とした。K値を測定して鮮度変化を調
べた。その結果を図11に示した。この結果から、処理
品は無処理品に比べK値の上昇が遅く、鮮度低下が進み
にくいことが分かる。すなわち、この処理で高鮮度を維
持するブラックタイガーを流通できることが分かる。次
に、甲殻に存在する色素帯について、ミノルタ色彩色差
計を用いてLabを測定した。その結果を表4に示し
た。ただし、数値はそれぞれ(青地−色素帯)を表して
おり、その差が大きいほど色素帯が鮮明であることを意
味する。
【0058】
【表4】
【0059】この結果から明らかなように、処理品がΔ
L、Δa、Δbいずれも最も大きく、色素帯と青地との
差が明確であることが分かる。即ち外観が最も鮮明であ
るといえる。次に、むき身製品で背腸が確認されたもの
の数を表5に示した。
【0060】
【表5】
【0061】この結果から分かるように、処理品は背腸
の内容物が除去され、外観の美しいブラックタイガーが
得られる。さらに、処理品は無処理品や通常品の場合と
異なり、顎脚、胸脚、腹肢、甲殻、触角のうち少なくと
も一カ所、あるいは任意の2カ所以上が赤くなり、鮮や
かな色を有するエビとなる。このことは、低鮮度のエビ
でみられる黒変と異なり、天然のクルマエビなどで認め
られる色調であることから美味を連想し、好ましい変化
と言える。以上のように、本発明のブラックタイガー
は、甲殻に存在する色素帯が鮮明でなおかつ顎脚、胸
脚、腹肢、甲殻、触角のうち少なくとも一カ所、あるい
は任意の2カ所以上が赤くなり、高鮮度を維持している
ことが容易に判別でき、また、消化管内容物が存在しな
いため商品価値の高い製品として流通できる。
【0062】実施例6 市販の生きたアメリカンロブスター(平均体重539.
75±22.16g、n=6)を8℃の通常海水あるい
は124〜126%海水塩濃度の海水で24時間飼育し
た後、生可食部筋肉のエキス成分(遊離アミノ酸含量、
核酸関連化合物含量)を測定した。ただし、ここで言う
124〜126%海水塩濃度の海水とは、アメリカンロ
ブスターの棲息条件として比較的苛酷な条件を指し、こ
こでは通常の海水(塩濃度33‰)に人工海水を加え、
塩濃度を124〜126%海水にした飼育水を用いた。
エキス成分の定量法として、まず遊離アミノ酸の定量は
品川の方法(東京大学大学院博士課程博士論文)に従
い、核酸関連物質の定量は江平らの方法に従った。表6
に上記飼育試験における生可食部筋肉中の遊離アミノ酸
(FAA)含量の変動(μmol/g)、及びヌクレオ
チドの変動(μmol/g)を示す。表6に示すよう
に、124〜126%海水塩濃度の飼育水で24時間飼
育したアメリカンロブスターの遊離アミノ酸量は通常海
水で飼育したものに比較して、グリシンは21.6%、
アラニンは15.8%も増加することができる。
【0063】
【表6】
【0064】実施例7 実施例6で得られたアメリカンロブスターのスチーム加
熱可食部筋肉を、良く訓練されたパネラー5名により官
能試験をした。即ち8℃の通常海水と124〜126%
海水塩濃度の飼育水で24時間飼育したアメリカンロブ
スターをスチーム加熱し、可食部筋肉の呈味及びテクス
チャーを比較したものである。比較結果を表7〔官能検
査(パネラー:5人)〕にを示す。試験の結果124〜
126%海水塩濃度の飼育水で飼育したアメリカンロブ
スターの呈味とテクスチャーを好むパネラーが5人中4
人であった。
【0065】
【表7】
【0066】実施例8 市販の生きたアメリカンロブスター(平均体重537.
70±39.57、n=6)を8℃の通常海水あるいは
146〜152%海水塩濃度の飼育水で6時間飼育した
後、生可食部筋肉のエキス成分(遊離アミノ酸含量、核
酸関連化合物含量)を測定した。ただし、ここで言う通
常海水とは、アメリカンロブスターの棲息環境に適した
条件を指す。また、146〜152%海水塩濃度の飼育
水とはアメリカンロブスターの棲息条件として比較的苛
酷な条件を指し、ここでは通常の海水(塩濃度33‰)
に人工海水を加え、146〜152%海水塩濃度の飼育
水を用いた。エキス成分の調整は実施例6と同様に行っ
た。表8に上記飼育試験における生可食部筋肉中の遊離
アミノ酸の変動(μmol/g)及び核酸関連化合物の
変動(μmol/g)を示す。表8に示すように、14
6〜152%海水塩濃度の飼育水で6時間飼育したアメ
リカンロブスターの遊離アミノ酸量は通常海水で飼育し
たものに比較して、グリシンは13.84%、アラニン
は61.45%、グルタミン酸は66.99%も増加す
ることが出来る。
【0067】
【表8】
【0068】実施例9 実施例8で得られたアメリカンロブスターのスチーム加
熱可食部筋肉を、良く訓練したパネラー6名により官能
試験をした。即ち8℃の通常海水と146〜152%海
水塩濃度の飼育水で6時間飼育したアメリカンロブスタ
ーをスチーム加熱し、可食部筋肉の呈味及びテクスチャ
ーを比較したものである。比較結果を表9〔官能検査
(パネラー:6人)〕に示す。試験の結果146〜15
2%海水塩濃度の飼育水で飼育したアメリカンロブスタ
ーの呈味を好むパネラーが6人中5人で、テクスチャー
を好むパネラーが6人中5人であった。
【0069】
【表9】
【0070】比較例1 市販の生きたアメリカンロブスター(平均体重507.
61±34.58、n=6)を8℃の通常海水あるいは
196〜202%海水塩濃度の飼育水で2時間飼育した
後、生可食部筋肉のエキス成分(遊離アミノ酸含量、核
酸関連化合物含量)を測定した。ただし、ここで言う通
常海水とは、アメリカンロブスターの棲息環境に適した
条件を指す。また、196〜202%海水塩濃度の飼育
水とはアメリカンロブスターの棲息条件として苛酷な条
件を指し、ここでは通常の海水に人工海水を加え、19
6〜202%海水塩濃度の飼育水を用いた。エキス成分
の調整は実施例6と同様に行った。表10に上記飼育試
験における生可食部筋肉中の遊離アミノ酸の変動(μm
ol/g)及び核酸関連化合物の変動(μmol/g)
を示す。表10に示すように、196〜202%海水塩
濃度の飼育水で2時間飼育したアメリカンロブスターの
遊離アミノ酸量は通常海水で飼育したものに比較して、
グリシンは26.47%、アラニンは4.87%、グル
タミン酸は3.47%の減少が認められた。
【0071】
【表10】
【0072】比較例2 比較例1で得られたアメリカンロブスターのスチーム加
熱可食部筋肉を、良く訓練されたパネラー6名により官
能試験をした。即ち8℃の通常海水と196〜202%
海水塩濃度の飼育水で2時間飼育したアメリカンロブス
ターをスチーム加熱し、可食部筋肉の呈味及びテクスチ
ャーを比較したものである。試験の結果196〜202
%海水塩濃度の飼育水で飼育したアメリカンロブスター
の呈味を好むパネラーが6人中3人で、テクスチャーを
好むパネラーが6人中5人であった。このアメリカンロ
ブスターの味を好まないとした3人は塩辛いという理由
からであった。
【0073】実施例10 体重21〜57gの生きたアメリカザリガニを東京の小
売業者より購入し、一定の温度で酸素を補給しながら水
を循環させ、毎日、魚肉を餌として与えた。飼育水の海
水濃度は人工海水塩混合物を用いて徐々に上げた。5日
間で、25%海水に順応させ、塩濃度を38%海水に上
げ、3日後に63%海水に設定してから4日間飼育し
た。次いで、塩濃度を75%海水に上げて4日間飼育
し、これから後毎日塩を加えて5日間で海水に等しい塩
濃度の飼育水に調整し4日間海水に順応させた。この間
の生存率を表11[アメリカザリガニの生存率(%)]
に示す。比較のために、各海水濃度に3日間飼育したと
きの生存率を表11に比較例として示した。
【0074】
【表11】
【0075】実施例11 このようにして実施例10で得られたアメリカザリガニ
の尾肉を1g精秤し、氷冷下8%過塩素酸7gを加えて
ホモジナイズし、低温遠心分離して上清を得た。この上
清を島津LC・6A HPLCシステム(島津製作所
製)を用いて核酸関連化合物を分析した。分析結果を表
12[各種塩濃度で飼育したアメリカザリガニの筋肉中
の核酸関連化合物量(μmol/kg Water)]
に示す。
【0076】
【表12】
【0077】この結果から、飼育水の塩濃度を上昇させ
ると核酸関連化合物量が上昇し、呈味改善の可能性が示
された。また、遊離アミノ酸分析は生体系対象のリチウ
ム緩衝液を用いる協和K−606Sアミノ酸オートアナ
ライザー(協和精密製)で行った。分析結果を表13
[各種塩濃度で飼育したアメリカザリガニの筋肉中の遊
離アミノ酸量(μmol/g water)]に示す。
【0078】
【表13】
【0079】この結果から、飼育水の塩濃度を上げるこ
とにより旨味成分であるグルタミン酸(Glu)やその
アミド体であるグルタミン(Gln)が増加し、また甘
味成分であるグリシン(Gly)やアラニン(Ala)
が著しく増加することが分かる。従って、飼育水の塩濃
度を変化させることにより、アメリカザリガニ筋肉の呈
味を改善できることが明らかとなった。また、筋肉の水
は電子水分計(EB280 島津製作所製)を用いて測
定した結果を表14[各種飼育水で飼育したアメリカガ
リガニ筋肉の水分(%)]に示す。この結果から明らか
なように、塩濃度を上昇させた飼育水で飼育したアメリ
カザリガニの水分は減少し、歯応えのある肉質が得られ
る。
【0080】
【表14】
【0081】実施例12 体重21〜57gの生きたアメリカザリガニを東京の小
売業者より購入し、一定の温度で酸素を補給しながら水
を循環させ、毎日、魚肉を餌として与えた。飼育水の海
水濃度は人工海水塩混合物を用いて徐々に上げた。5日
間で25%海水に順応させ、塩濃度を38%海水に上
げ、3日後に50%海水に設定してから4日間飼育し
た。次いで、塩濃度を75%海水に上げて4日間海水に
順応させた。同一期間淡水で飼育したものを対照区とし
た。全試験区と対照区のアメリカザリガニを2%食塩水
で10分間煮沸して、良く訓練されたパネラー15名に
より官能評価した。その結果を表15に示した。ただ
し、表中の数字は各区を最も好ましいと答えたパネラー
の人数を示す。官能評価の結果から、香りには影響を及
ぼすことなく甘味、旨味が向上し、食感のよいアメリカ
ザリガニが得られることが分かる。
【0082】
【表15】
【0083】実施例13 活魚輸送車に125%海水を積載し、水温28℃に設定
して飼育し、呈味成分及び食感への影響を飼育試験で調
べた。飼育水の塩濃度が28‰(85%海水塩濃度)、
水温が25℃の養殖場にて出荷サイズ(体重25〜35
g)となったブラックタイガーを、塩濃度41‰、水温
28℃で6時間輸送しながら飼育した後、生可食部筋肉
のエキス成分(遊離アミノ酸含量)の測定を行った。ま
た、対照として養殖場の飼育水を環境水に用いて活きブ
ラックタイガーも輸送飼育した。但し、活魚輸送車に積
載した活きブラックタイガーの重量は、飼育水重量に対
して10%で、水槽への通気量は一般の魚類の場合に比
べ多くした。この飼育環境はブラックタイガーにとって
非常に苛酷な条件であり、減耗は10%程度となった。
呈味に関わるアミノ酸分析の結果を表16に示した。
【0084】
【表16】
【0085】この結果から分かるように125%海水、
28℃に設定した水槽を備えた活魚輸送車で6h輸送し
ながら高塩濃度飼育処理を行うことにより、総アミノ
酸、グルタミン酸、グリシン、アラニンが増加すること
が明らかとなった。得られたブラックタイガーのスチー
ム加熱可食部筋肉を、良く訓練されたパネラー10名に
より官能試験した。即ち、高塩濃度輸送したブラックタ
イガー、通常塩濃度輸送したブラックタイガー、養殖場
で即殺し氷冷輸送した未処理ブラックタイガーを5分間
スチーム加熱し、甘味、旨み、塩味、テクスチャーにつ
いて評価した。その結果、全員が高塩濃度輸送ブラック
タイガーが通常塩濃度品、未処理品に比べ良好であると
判定した。
【0086】実施例14 85%海水塩濃度(25℃)で飼育した平均体重32.
2gの養殖ブラックタイガーを投網を用いて漁獲し、1
25%海水塩濃度(25℃)に移行して6時間飼育し
た。その後、取り上げて氷殺し3時間以内に注水凍結し
た。凍結保存5カ月後に、注水凍結品を流水にて解凍
し、スチーム(100℃、5分)で加熱処理した。比較
品として浸透圧ショック処理をしない通常品を同様に注
水凍結,凍結保存,流水解凍,スチーム加熱処理したも
のを用意した。また、大分県富浦港にて漁獲された天然
クルマエビ(平均体重54.1g)を活魚で輸送した
後、−50℃で急速凍結した。保存1カ月後に室温で解
凍し、スチーム(100℃、5分)で加熱した。さら
に、量販店で販売されていた冷凍ブラックタイガー(1
QF品)も同様にスチーム加熱した。いずれも、加熱後
1時間放熱して室温(20℃)まで冷却した後、殻を取
り外して尾肉の破断強度を測定した。測定機器はRHE
ONER(山電(株)製)で、20kgfのロードセル
を用い、解析プログラムは破断強度解析プログラムVe
r.2(山電(株)製)を用いた。測定結果を図12〜
図15に示した。
【0087】浸透圧ショック処理したブラックタイガー
は天然クルマエビと同様の波形を描き、物性的には同等
であった。すなわち天然クルマエビおよび浸透圧ショッ
ク処理したブラックタイガーはいずれも破断強度1〜2
kgであった。また、両者とも官能的には適度な歯応え
を持ち、咀嚼しても繊維感を感じることはなく、また、
天ぷらやフライ、あるいは炒めものなどでも他の素材と
マッチした歯応えを示した。一方、対照の通常品および
市販ブラックタイガー(IQF品)の破断強度はいずれ
も、天然クルマエビを超え、かなり硬く身が引き締まっ
ていることを示した。すなわち、通常品は2〜3kgで
破断し、IQF品も2〜3kgで破断した。また、官能
的にも歯応えが強すぎ、天ぷらやフライなどに調理した
場合は、肉が衣よりもはるかに硬く奇異な食感となっ
た。これらの結果から、浸透圧処理したブラックタイガ
ーは食感が向上したことが分かった。
【0088】実施例15 おがくず中にて流通・市販されている活きケガニ(平均
体重378.5g)10匹を用いて、浸透圧ショックに
よる呈味改善効果を検討した。すなわち、活きケガニを
125%海水塩濃度(飼育水温5℃)で5匹を8時間飼
育した後、脚を切断してその筋肉をサンプルとした。一
方、100%海水塩濃度(飼育水温5℃)で8時間飼育
したものも同様に分析した。また、いわゆるカニミソ
(中腸腺)の分析も行った。その結果を表17に示し
た。この結果から、脚、カニミソいずれもグリシン、ア
ラニン、プロリン、グルタミン酸が増加した。また、飼
育試験で得られた筋肉をスチーム処理し官能検査したと
ころ、パネラー10名のうち8名が125%海水塩濃度
で飼育したケガニの脚肉を好ましいと評価し、2名が差
はないと評価した。
【0089】
【表17】
【0090】実施例16 平均体重30gのブラックタイガーを85%,100
%,125%,150%,175%,200%海水塩濃
度,水温28℃の飼育水に各10匹ずつ畜養し、24時
間飼育した。この際の生物量は3%未満であった。畜養
後即殺し、その筋肉中の塩素イオンをモール法で測定
し、塩化ナトリウム量とした。また、同時に官能検査も
行った。その結果、図16に示したように、85%〜1
00%海水塩濃度の飼育水で飼育したブラックタイガー
は塩化ナトリウム量が0.6%程度であったが、125
%海水塩濃度の飼育水では塩化ナトリウム量が約1%,
150%海水塩濃度以上の飼育水では塩化ナトリウム量
が約2%となった。また、官能的には100%海水塩濃
度以下の飼育水で飼育したブラックタイガーは味が薄く
若干まずく感じられたのに対し、125%海水塩濃度の
飼育水で飼育したブラックタイガーは非常に美味に感じ
られた。一方、150%海水塩濃度以上の飼育水では塩
味が強く、塩辛く感じられた。別途行った塩味に対する
嗜好テストでは、好ましいと感じられる塩分は1.2%
〜1.5%で、これ以下では薄く、また、これ以上では
塩辛く感じられる傾向があった。
【0091】次に、平均体重30gのブラックタイガー
を125%海水塩濃度,水温28℃の飼育水で24時間
飼育し、経時的にサンプリングした。その塩分量を同様
に分析し、官能検査も行った。その結果を図17に示し
たが、塩分量は飼育水に畜養後も6時間まで増加、12
時間、24時間も比較的好ましかった。以上の結果か
ら、125%海水塩濃度で6時間の浸透圧ショック処理
することにより、最適な塩濃度を有するブラックタイガ
ーを生産できることが明らかとなった。
【0092】
【発明の効果】呈味と食感の向上したカニ類、エビ類、
ロブスター類、ザリガニ類などの海産または淡水産甲殻
類、その加熱処理物およびそれらの冷凍品を安価に提供
をすることができる。甲殻類の食材としての利用範囲を
著しく広めることができる。海産または淡水産の甲殻類
の呈味と食感の向上方法を提供することができる。さら
に、海産または淡水産甲殻類を活魚輸送中に呈味と食感
の向上処理を行う方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブラックタイガーについて125%海水塩度、
38℃処理の総アミノ酸産量の経時変化を示した図であ
る。
【図2】ブラックタイガーについて125%海水塩度、
38℃処理のグリシン量の経時変化を示した図である。
【図3】ブラックタイガーについて125%海水塩度、
38℃処理のアラニン量の経時変化を示した図面であ
る。
【図4】ブラックタイガーについて125%海水塩度、
38℃処理のグルタミン酸量の経時変化を示した図であ
る。
【図5】ブラックタイガーについて125%海水塩度、
38℃処理のプロリン量の経時変化を示した図である。
【図6】ブラックタイガーについて125%海水塩度、
38℃処理のセリン量の経時変化を示した図である。
【図7】ブラックタイガーについて125%海水塩度、
38℃処理のトレオニン量の経時変化を示した図であ
る。
【図8】ブラックタイガーについて28℃、各塩濃度に
おける筋肉の遊離アミノ酸総量の比較を示した図であ
る。
【図9】ブラックタイガーについて28℃、各塩濃度に
おける筋肉のグリシン量の比較を示した図である。
【図10】ブラックタイガーについて28℃、各塩濃度
における筋肉のアラニン量の比較を示した図である。
【図11】本発明のブラックタイガーと単なる氷蔵品の
K値の変化を比較した図である。
【図12】本発明の浸透圧ショック処理したブラックタ
イガーの尾肉の破断強度の測定結果を表す図である。
【図13】天然クルマエビの尾肉の破断強度の測定結果
を表す図である。
【図14】通常品(本発明品と同一加工場のブラックタ
イガー)の尾肉の破断強度の測定結果を表す図である。
【図15】市販のブラックタイガー(IQF品)の尾肉
の破断強度の測定結果を表す図である。
【図16】ブラックタイガーについて各塩濃度における
筋肉の塩分量の比較を示した図である。
【図17】ブラックタイガーについて125%海水塩度
処理の塩分量の経時変化を示した図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A23K 1/175 9123−2B A23L 1/33 A (31)優先権主張番号 特願平5−305720 (32)優先日 平5(1993)10月30日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 杉本 昌明 東京都八王子市北野町559−6 日本水産 株式会社中央研究所内 (72)発明者 阿部 宏喜 東京都八王子市元八王子町1−710 (72)発明者 大熊 恵美子 東京都八王子市元八王子町1−710 (72)発明者 塩谷 格 東京都八王子市北野町559−6 日本水産 株式会社中央研究所内

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可食部のエキス成分中のうちグリシン、
    アラニン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、セリ
    ンのいずれか一種以上が向上し、可食部のエキス成分量
    が天然種よりも高い、かつ、可食部の食感が向上した、
    海産または淡水産蓄養殖の甲殻類。
  2. 【請求項2】 海産蓄養殖の甲殻類が、カニ類、エビ類
    およびロブスター類よりなる群から選ばれる請求項1記
    載の甲殻類。
  3. 【請求項3】 カニ類が、ズワイガニ(Chionoe
    cetes opilio)、ケガニ(Erimacr
    us isenbeckii)、タラバガニ(Para
    lithodes camtschaticus)、タ
    カアシガニ(Macrocheria kaempfe
    ri)およびワタリガニ(Portunus trit
    uberculatus)よりなる群から選ばれるカニ
    である請求項2記載の甲殻類。
  4. 【請求項4】 エビ類が、クルマエビ属(Penaeu
    s属)またはイセエビ属(Palinura属)に属す
    るエヒである請求項2記載の甲殻類。
  5. 【請求項5】 クルマエビ属(Penaeus属)に属
    するエビが、ブラックタイガー(Penaeus mo
    nodon)およびクルマエビ(Penaeus ja
    ponicus)よりなる群から選ばれる請求項4記載
    の甲殻類。
  6. 【請求項6】 ロブスター類が、アメリカンロブスター
    (Homarusamericanus)およびヨーロ
    ッパロブスター(Homarus gummarus)
    からなる群より選ばれるロブスターである請求項2記載
    の甲殻類。
  7. 【請求項7】 可食部のエキス成分中の呈味成分である
    グリシン、アラニン及びグルタミン酸の含有量が向上
    し、かつ可食部の食感が向上したロブスターである請求
    項6記載の甲殻類。
  8. 【請求項8】 淡水産甲殻類が、アメリカザリガニ(P
    rocambarus clarcki)、ニホンザリ
    ガニ(Cambroides japonicus)、
    カンバルス(Cambarus bartoni)およ
    びヨーロッパザリガニ(Astacus fluvia
    tilis)からなる群より選ばれるザリガニである請
    求項1記載の甲殻類。
  9. 【請求項9】 さらに可食部に含まれる核酸関連化合物
    のうち少なくともアデノシン三燐酸の含量が向上した請
    求項8記載の甲殻類。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし請求項9記載のいずれ
    かの甲殻類の冷凍品。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし請求項9記載のいずれ
    かの甲殻類の加熱処理物。
  12. 【請求項12】 請求項11の甲殻類の加熱処理物の冷
    凍品。
  13. 【請求項13】 甲殻類をそれまでの棲息環境より高塩
    濃度の環境水で飼育する工程を通過させることを特徴と
    する請求項1ないし請求項9記載のいずれかの甲殻類の
    製造方法。
  14. 【請求項14】 高塩濃度の環境水で飼育する前に、そ
    れまでの棲息環境よりも低塩濃度の環境水で飼育する請
    求項13記載の甲殻類の製造方法。
  15. 【請求項15】 高塩濃度の環境水がそれまでの棲息環
    境より高水温である請求項13または請求項14記載の
    甲殻類の製造方法。
  16. 【請求項16】 環境水での飼育を活魚輸送中に行う請
    求項13、請求項14または請求項15記載の甲殻類の
    製造方法。
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Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1464228A1 (en) * 2003-03-31 2004-10-06 Kabushiki Kaisha Yousei Processed shrimp food and its manufacturing method
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