JPH07170117A - アレーアンテナの制御方法及び制御装置 - Google Patents

アレーアンテナの制御方法及び制御装置

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JPH07170117A
JPH07170117A JP20325894A JP20325894A JPH07170117A JP H07170117 A JPH07170117 A JP H07170117A JP 20325894 A JP20325894 A JP 20325894A JP 20325894 A JP20325894 A JP 20325894A JP H07170117 A JPH07170117 A JP H07170117A
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龍 三浦
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勇 千葉
Toyohisa Tanaka
豊久 田中
Yoshio Karasawa
好男 唐沢
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 各アンテナ素子毎の受信信号対雑音電力比が
比較的低い状態でも高速でかつ安定に、機械的な駆動を
行わずに、またセンサを用いず到来ビームの捕捉追尾を
行うことのできるアレーアンテナの制御方法及び制御装
置を提供する。 【構成】 複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナ
の各アンテナ素子で受信された複数の受信信号を直交す
る各2つの直交ベースバンド信号に変換し、各2つのア
ンテナ素子間の受信信号の位相差の正弦値と各振幅値の
積に比例する第2の軸上の第2のデータとそれらの位相
差の余弦値と各振幅値の積に比例する第2の軸と直交す
る第1の軸上の第1のデータとを用いて同相化のための
変換行列を表し、計算された第1のデータと第2のデー
タを所定の伝達関数を有する雑音抑圧用フィルタに通過
させてろ波させた後、計算された変換行列を用いて各2
つのアンテナ素子間の受信信号を同相化したて複数の受
信信号を同相合成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アレーアンテナの制御
方法及び制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、車両等に搭載し静止衛星の方向を
自動的に追尾する衛星通信用のフェーズドアレーアンテ
ナ(以下、第1の従来例という。)が郵政省通信総合研
究所によって試作されている。この第1の従来例のアン
テナは、19個のマイクロストリップアンテナ素子で構
成され、1素子を除く各素子毎に1個ずつ計18個のマ
イクロ波移相器を備え、機械駆動せずに電気的にビーム
の方向を走査する。ここで、アンテナの指向性を制御
し、到来ビームの方向を追尾するためのセンサーとし
て、地磁気の方向を検出し予め既知である車両から見た
静止衛星の方向を計算するための磁気センサー、並びに
車両の回転角速度を検出して精度よくビームの方向を一
定に保つための光ファイバジャイロを備えている。これ
ら2つのセンサーを組み合せることにより、到来ビーム
の有無に関わらず、ある一定の方向にアンテナ指向性を
向け、車両が移動しても常に同じ方向にその指向性を保
持するように構成されている。
【0003】また、ディジタル位相変調を用いた衛星通
信用のディジタルビームフォーミングアンテナ用とし
て、到来ビーム捕捉追尾のための位相検出方法(以下、
第2の従来例という。)が本出願人によって提案されて
いる。この第2の従来例の方法は、アレーアンテナの各
アンテナ素子毎にコスタスループを用いた搬送波再生回
路を備え、全ての素子で同相となるように電圧制御発振
器(VCO)の位相を制御し、同相合成してアレー出力
を得る方法である。この方法はまた、各素子毎に搬送波
再生回路で位相不確定を生じそのまま合成すると大きな
電力損失が発生するため、各素子毎のベースバンド出力
から引き込み位相の検出を行い、これをもとに位相補正
量を計算し、上記同相合成に先立ち移相器により位相不
確定の補正を行っている。この第2の従来例の方法では
受信される信号が位相変調波であればアンテナの指向性
は自動的に到来ビームの方向へ向くことになり、到来ビ
ームの方向を知るための特別なセンサは必要としていな
い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記第1の従来例のフ
ェーズドアレーアンテナの場合、衛星方向にアンテナの
指向性を向けるために絶対方位の検出ができる磁気セン
サを用いているが、車両などの場合車体が金属でできて
いるため多くの場合帯磁しており、これがアンテナの指
向方向の誤差の原因となる。これを回避するためには磁
気を帯びた構造物などのない広い場所で360度回転し
て得られる磁気データにより較正を行う必要がある。ま
たうまく較正できて衛星方向を捕捉し、追尾ができたと
しても、地磁気は周囲の建物や他の車両等により乱され
ることが多く、磁気センサのみで到来ビーム方向を追尾
することは困難である。このため、衛星方向の捕捉後は
主として光ファイバジャイロのデータをもとにして追尾
を行うが、光ファイバジャイロは磁気センサのように絶
対方位を検出するのではなく角速度のみを検出するた
め、方位角の誤差が蓄積される。これを防止するため、
ある周期で磁気センサの情報をもとに光ファイバジャイ
ロを較正する方法を採用しているが、制御アルゴリズム
は複雑となり精度のよい制御アルゴリズムはまだ開発さ
れていないのが現状である。
【0005】上記第1の従来例のフェーズドアレーアン
テナはまた、到来ビームの有無にかかわらず信号源の方
向が既知であればその方向にビームを向けることができ
るが、信号源の方向が未知の場合又は低軌道周回衛星な
ど信号源自体が移動してしまう場合にはその動きが全て
予測可能な場合を除き、追尾不可能である。以上のよう
に方位センサを使う捕捉追尾方法は構成が複雑になると
ともに性能が限定されるという問題点があった。
【0006】また、上記第2の従来例の位相検出方法の
場合、各アンテナ素子毎に搬送波再生を行うことにより
指向性を形成するため、上記第1の従来例のフェーズド
アレーアンテナに設けられる方位センサは必要とせず、
複雑な制御アルゴリズムも不要であるという特徴を有す
るが、搬送波再生回路に閉ループにより位相の同期追尾
を行うコスタスループ回路を用いているため、到来ビー
ムの初期捕捉は収束にある程度の時間がかかるという問
題点があった。特に、アンテナを車両等の移動体に搭載
して衛星通信を行う場合、木や建物等による信号の瞬断
が頻繁に発生するため、受信データの数シンボル程度で
高速に初期捕捉を行う必要がある。
【0007】上記第2の従来例の位相検出方法はまた、
アレーアンテナのアンテナ素子数が多い場合、1素子当
りの受信信号対雑音電力比は低くなるため、各素子毎に
位相のサイクルスリップが生じて搬送波再生は困難とな
りアレーアンテナの利得が生かされないという問題点が
あった。
【0008】本発明の目的は以上の問題点を解決し、各
アンテナ素子毎の受信信号対雑音電力比が比較的低い状
態でも高速でかつ安定に、機械的な駆動を行わずに、ま
た方位センサ等のセンサを用いず到来ビームの捕捉追尾
を行うことのできるアレーアンテナの制御方法及び制御
装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る請求項1記
載のアレーアンテナの制御方法は、所定の配置形状で近
接して並置された複数のアンテナ素子からなるアレーア
ンテナを制御するためのアレーアンテナの制御方法にお
いて、上記アレーアンテナの各アンテナ素子でそれぞれ
受信された複数の受信信号をそれぞれ共通の局部発振信
号を用いて互いに直交する各2つの直交ベースバンド信
号に変換し、上記複数のアンテナ素子のうち各2つのア
ンテナ素子間の受信信号の同相化のための変換行列をそ
れぞれ、互いに直交する所定の第1の軸と第2の軸とを
用いて、上記各2つのアンテナ素子間の受信信号の位相
差の正弦値と各振幅値の積に比例する上記第2の軸上の
第2のデータと上記各2つのアンテナ素子間の受信信号
の位相差の余弦値と各振幅値の積に比例する上記第1の
軸上の第1のデータとを用いた2×2の変換行列で表
し、上記変換された各2つの直交ベースバンド信号に基
づいて上記第1のデータと上記第2のデータとを計算
し、上記計算された第1のデータと第2のデータとをそ
れぞれ所定の伝達関数を有する雑音抑圧用フィルタに通
過させてろ波させた後、上記ろ波された第1のデータと
上記ろ波された第2のデータとに基づいて上記変換行列
の要素を計算し、上記計算された変換行列の要素を含む
変換行列を用いて、上記各2つのアンテナ素子間の受信
信号を同相化し、上記同相化された複数の受信信号を同
相合成して受信信号を出力することを特徴とする。
【0010】また、請求項2記載のアレーアンテナの制
御方法は、請求項1記載のアレーアンテナの制御方法に
おいて、上記複数の受信信号を同相合成して受信信号を
出力するときに、上記ろ波された第1のデータと上記ろ
波された第2のデータとに基づいて上記複数の受信信号
が同相となるような各補正位相量を計算し、上記計算さ
れた各補正位相量に基づいて上記複数の受信信号を上記
各補正位相量だけ移相し、上記移相された複数の受信信
号を同相合成して受信信号を出力することを特徴とす
る。さらに、請求項3記載のアレーアンテナの制御方法
は、請求項2記載のアレーアンテナの制御方法におい
て、上記アレーアンテナの配置形状に基づいて、上記計
算された補正位相量を上記配置形状の面に回帰させるよ
うに上記計算された補正位相量を回帰補正し、上記回帰
補正された各補正位相量に基づいて上記複数の受信信号
を上記各補正位相量だけ移相することを特徴とする。
【0011】また、請求項4記載のアレーアンテナの制
御方法は、請求項1記載のアレーアンテナの制御方法に
おいて、上記複数の受信信号を同相合成して受信信号を
出力するときに、上記計算された変換行列の要素を含む
変換行列を用いて上記複数の信号のうちの各2つの受信
信号のうちの1つの受信信号を他方の受信信号に同相と
なるように変換し、上記変換しない受信信号と上記変換
した受信信号との組である各2つの受信信号を同相合成
し、上記計算、変換及び同相合成の処理を上記同相合成
後の受信信号が1つになるまで繰り返すことにより、同
相合成された1つの受信信号を出力することを特徴とす
る。
【0012】さらに、請求項5記載のアレーアンテナの
制御方法は、請求項1記載のアレーアンテナの制御方法
において、上記変換された各2つの直交ベースバンド信
号に基づいて上記第1のデータと上記第2のデータとを
計算する直前に、上記アレーアンテナの各アンテナ素子
でそれぞれ受信された複数の受信信号と、希望波を所定
の放射角度の範囲で受信できるように予め決められた形
成すべき所定の複数個のビームの各主ビームの方向と、
上記受信信号の受信周波数とに基づいて、上記複数個の
ビーム電界値を演算して上記各ビーム電界値をそれぞれ
有する複数のビーム信号を出力し、上記出力した複数の
ビーム信号の中で最大のビーム電界値を有するビーム信
号を含むより大きなビーム電界値を有する所定数のビー
ム信号を選択し、上記最大のビーム電界値を有するビー
ム信号を基準の受信信号とし、上記計算された変換行列
の要素を含む変換行列を用いて上記基準の受信信号に他
の選択された複数の受信信号を同相化し、上記複数の受
信信号を同相合成して受信信号を出力することを特徴と
する。
【0013】さらに、請求項6記載のアレーアンテナの
制御方法は、請求項1乃至5のうちの1つに記載のアレ
ーアンテナの制御方法において、上記同相合成する直前
に、上記複数の受信信号の信号レベルにそれぞれ比例す
る複数の利得でそれぞれ上記複数の受信信号を増幅する
ことによって振幅補正することを特徴とする。
【0014】さらに、請求項7記載のアレーアンテナの
制御方法は、請求項1に記載のアレーアンテナの制御方
法において、上記第1のデータと上記第2のデータを直
接に上記変換行列の要素として表して上記変換行列の要
素を計算し、上記計算した変換行列の要素を含む変換行
列を用いて上記複数の受信信号のうちの所定の1つの受
信信号を除く他の複数の受信信号を上記所定の1つの受
信信号に同相化し、上記所定の1つの受信信号と上記同
相化された複数の受信信号とを同相合成して受信信号を
出力することを特徴とする。
【0015】また、請求項8記載のアレーアンテナの制
御方法は、請求項4又は5記載のアレーアンテナの制御
方法において、上記第1のデータと上記第2のデータを
直接に上記変換行列の要素として表して上記変換行列の
要素を計算し、上記計算した変換行列の要素を含む変換
行列を用いて、各2つの受信信号を同相化することを特
徴とする。
【0016】さらに、請求項9記載のアレーアンテナの
制御方法は、請求項1乃至8のうちの1つに記載のアレ
ーアンテナの制御方法において、送信信号を複数の送信
信号に同相分配し、上記複数の送信信号を、上記計算さ
れた各補正位相量又は上記回帰補正された各補正位相量
だけ移相してそれぞれ上記複数のアンテナ素子から送信
することを特徴とする。
【0017】本発明に係る請求項10記載のアレーアン
テナの制御装置は、所定の配置形状で近接して並置され
た複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナを制御す
るためのアレーアンテナの制御装置において、上記アレ
ーアンテナの各アンテナ素子でそれぞれ受信された複数
の受信信号をそれぞれ共通の局部発振信号を用いて互い
に直交する各2つの直交ベースバンド信号に変換する変
換手段と、所定の伝達関数を有する雑音抑圧用フィルタ
を備え、上記複数のアンテナ素子のうち各2つのアンテ
ナ素子間の受信信号の同相化のための変換行列をそれぞ
れ、互いに直交する所定の第1の軸と第2の軸とを用い
て、上記各2つのアンテナ素子間の受信信号の位相差の
正弦値と各振幅値の積に比例する上記第2の軸上の第2
のデータと上記各2つのアンテナ素子間の受信信号の位
相差の余弦値と各振幅値の積に比例する上記第1の軸上
の第1のデータとを用いた2×2の変換行列で表し、上
記変換された各2つの直交ベースバンド信号に基づいて
上記第1のデータと上記第2のデータとを計算し、上記
計算された第1のデータと第2のデータとをそれぞれ所
定の伝達関数を有する雑音抑圧用フィルタに通過させて
ろ波させた後、上記ろ波された第1のデータと上記ろ波
された第2のデータとに基づいて上記変換行列の要素を
計算し、上記計算された変換行列の要素を含む変換行列
を用いて、上記各2つのアンテナ素子間の受信信号を同
相化する同相化手段と、上記同相化手段によって同相化
された複数の受信信号を同相合成して受信信号を出力す
る合成手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】また、請求項11記載のアレーアンテナの
制御装置は、請求項10記載のアレーアンテナの制御装
置において、上記合成手段は、上記同相化手段によって
それぞれろ波された第1のデータと第2のデータとに基
づいて上記複数の受信信号が同相となるような各補正位
相量を計算する第1の計算手段と、上記第1の計算手段
によって計算された各補正位相量に基づいて上記複数の
受信信号を上記各補正位相量だけ移相する第1の移相手
段と、上記第1の移相手段によって移相された複数の受
信信号を同相合成して受信信号を出力する第1の同相合
成手段とを備えたことを特徴とする。さらに、請求項1
2記載のアレーアンテナの制御装置は、請求項11記載
のアレーアンテナの制御装置において、上記合成手段
は、上記アレーアンテナの配置形状に基づいて、上記計
算手段によって計算された補正位相量を上記配置形状の
面に回帰させるように上記計算された補正位相量を回帰
補正する補正手段をさらに備え、上記第1の移相手段
は、上記補正手段によって回帰補正された各補正位相量
に基づいて上記複数の受信信号を上記各補正位相量だけ
移相することを特徴とする。
【0019】また、請求項13記載のアレーアンテナの
制御装置は、請求項10記載のアレーアンテナの制御装
置において、上記合成手段は、上記同相化手段によって
計算された変換行列の要素を含む変換行列を用いて上記
複数の信号のうちの各2つの受信信号のうちの1つの受
信信号を他方の受信信号に同相となるように変換する同
相変換手段と、上記同相変換手段によって上記変換しな
い受信信号と上記変換した受信信号との組である各2つ
の受信信号を同相合成する第2の同相合成手段と、上記
同相変換手段と上記第2の同相合成手段との処理を上記
同相合成後の受信信号が1つになるまで繰り返すことに
より、同相合成された1つの受信信号を出力する制御手
段とを備えたことを特徴とする。
【0020】さらに、請求項14記載のアレーアンテナ
の制御装置は、請求項10記載のアレーアンテナの制御
装置において、上記変換手段と上記同相化手段との間に
設けられ、上記アレーアンテナの各アンテナ素子でそれ
ぞれ受信された複数の受信信号と、希望波を所定の放射
角度の範囲で受信できるように予め決められた形成すべ
き所定の複数個のビームの各主ビームの方向と、上記受
信信号の受信周波数とに基づいて、上記複数個のビーム
電界値を演算して上記各ビーム電界値をそれぞれ有する
複数のビーム信号を出力するマルチビーム形成手段と、
上記変換手段と上記同相化手段との間に設けられ、上記
マルチビーム形成手段によって出力された複数のビーム
信号の中で最大のビーム電界値を有するビーム信号を含
むより大きなビーム電界値を有する所定数のビーム信号
を選択し、上記最大のビーム電界値を有するビーム信号
を基準の受信信号とするビーム選択手段とを備え、上記
同相化手段は、上記計算された変換行列の要素を含む変
換行列を用いて上記基準の受信信号に他の選択された複
数の受信信号を同相化することを特徴とする。
【0021】また、請求項15記載のアレーアンテナの
制御装置は、請求項10乃至14のうちの1つに記載の
アレーアンテナの制御装置において、上記合成手段の直
前の段に設けられ、上記複数の受信信号の信号レベルに
それぞれ比例する複数の利得でそれぞれ上記複数の受信
信号を増幅することによって振幅補正する振幅補正手段
をさらに備えたことを特徴とする。
【0022】また、請求項16記載のアレーアンテナの
制御装置は、請求項10に記載のアレーアンテナの制御
装置において、上記同相化手段は、上記第1のデータと
上記第2のデータを直接に上記変換行列の要素として表
して上記変換行列の要素を計算し、上記計算した変換行
列の要素を含む変換行列を用いて上記複数の受信信号の
うちの所定の1つの受信信号を除く他の複数の受信信号
を上記所定の1つの受信信号に同相化することを特徴と
する。
【0023】また、請求項17記載のアレーアンテナの
制御装置は、請求項13又は14記載のアレーアンテナ
の制御装置において、上記同相化手段は、上記第1のデ
ータと上記第2のデータを直接に上記変換行列の要素と
して表して上記変換行列の要素を計算し、上記計算した
変換行列の要素を含む変換行列を用いて、各2つの受信
信号を同相化することを特徴とする。
【0024】さらに、請求項18記載のアレーアンテナ
の制御装置は、請求項10乃至17のうちの1つに記載
のアレーアンテナの制御装置において、送信信号を複数
の送信信号に同相分配する分配手段と、上記複数の送信
信号を、上記計算手段によって計算された各補正位相量
又は上記補正手段によって回帰補正された各補正位相量
だけ移相する送信移相手段と、上記送信移相手段によっ
て移相された複数の送信信号をそれぞれ上記複数のアン
テナ素子から送信する送信手段とをさらに備えたことを
特徴とする。
【0025】
【作用】請求項1記載のアレーアンテナの制御方法にお
いては、上記アレーアンテナの各アンテナ素子でそれぞ
れ受信された複数の受信信号をそれぞれ共通の局部発振
信号を用いて互いに直交する各2つの直交ベースバンド
信号に変換する。次いで、上記複数のアンテナ素子のう
ち各2つのアンテナ素子間の受信信号の同相化のための
変換行列をそれぞれ、互いに直交する所定の第1の軸と
第2の軸とを用いて、上記各2つのアンテナ素子間の受
信信号の位相差の正弦値と各振幅値の積に比例する上記
第2の軸上の第2のデータと上記各2つのアンテナ素子
間の受信信号の位相差の余弦値と各振幅値の積に比例す
る上記第1の軸上の第1のデータとを用いた2×2の変
換行列で表し、上記変換された各2つの直交ベースバン
ド信号に基づいて上記第1のデータと上記第2のデータ
とを計算し、上記計算された第1のデータと第2のデー
タとをそれぞれ所定の伝達関数を有する雑音抑圧用フィ
ルタに通過させてろ波させた後、上記ろ波された第1の
データと上記ろ波された第2のデータとに基づいて上記
変換行列の要素を計算し、上記計算された変換行列の要
素を含む変換行列を用いて、上記各2つのアンテナ素子
間の受信信号を同相化する。さらに、上記同相化された
複数の受信信号を同相合成して受信信号を出力する。
【0026】また、請求項2記載のアレーアンテナの制
御方法においては、上記複数の受信信号を同相合成して
受信信号を出力するときに、上記ろ波された第1のデー
タと上記ろ波された第2のデータとに基づいて上記複数
の受信信号が同相となるような各補正位相量を計算し、
上記計算された各補正位相量に基づいて上記複数の受信
信号を上記各補正位相量だけ移相し、上記移相された複
数の受信信号を同相合成して受信信号を出力する。さら
に、請求項3記載のアレーアンテナの制御方法において
は、上記アレーアンテナの配置形状に基づいて、上記計
算された補正位相量を上記配置形状の面に回帰させるよ
うに上記計算された補正位相量を回帰補正し、上記回帰
補正された各補正位相量に基づいて上記複数の受信信号
を上記各補正位相量だけ移相する。
【0027】また、請求項4記載のアレーアンテナの制
御方法においては、上記複数の受信信号を同相合成して
受信信号を出力するときに、上記計算された変換行列の
要素を含む変換行列を用いて上記複数の信号のうちの各
2つの受信信号のうちの1つの受信信号を他方の受信信
号に同相となるように変換し、上記変換しない受信信号
と上記変換した受信信号との組である各2つの受信信号
を同相合成し、上記計算、変換及び同相合成の処理を上
記同相合成後の受信信号が1つになるまで繰り返すこと
により、同相合成された1つの受信信号を出力する。
【0028】さらに、請求項5記載のアレーアンテナの
制御方法においては、上記変換された各2つの直交ベー
スバンド信号に基づいて上記第1のデータと上記第2の
データとを計算する直前に、上記アレーアンテナの各ア
ンテナ素子でそれぞれ受信された複数の受信信号と、希
望波を所定の放射角度の範囲で受信できるように予め決
められた形成すべき所定の複数個のビームの各主ビーム
の方向と、上記受信信号の受信周波数とに基づいて、上
記複数個のビーム電界値を演算して上記各ビーム電界値
をそれぞれ有する複数のビーム信号を出力し、上記出力
した複数のビーム信号の中で最大のビーム電界値を有す
るビーム信号を含むより大きなビーム電界値を有する所
定数のビーム信号を選択し、上記最大のビーム電界値を
有するビーム信号を基準の受信信号とし、上記計算され
た変換行列の要素を含む変換行列を用いて上記基準の受
信信号に他の選択された複数の受信信号を同相化し、上
記複数の受信信号を同相合成して受信信号を出力する。
【0029】また、請求項6記載のアレーアンテナの制
御方法においては、上記同相合成する直前に、上記複数
の受信信号の信号レベルにそれぞれ比例する複数の利得
でそれぞれ上記複数の受信信号を増幅することによって
振幅補正する。
【0030】さらに、請求項7記載のアレーアンテナの
制御方法においては、上記第1のデータと上記第2のデ
ータを直接に上記変換行列の要素として表して上記変換
行列の要素を計算し、上記計算した変換行列の要素を含
む変換行列を用いて上記複数の受信信号のうちの所定の
1つの受信信号を除く他の複数の受信信号を上記所定の
1つの受信信号に同相化し、上記所定の1つの受信信号
と上記同相化された複数の受信信号とを同相合成して受
信信号を出力する。
【0031】また、請求項8記載のアレーアンテナの制
御方法においては、上記第1のデータと上記第2のデー
タを直接に上記変換行列の要素として表して上記変換行
列の要素を計算し、上記計算した変換行列の要素を含む
変換行列を用いて、各2つの受信信号を同相化する。
【0032】さらに、請求項9記載のアレーアンテナの
制御方法においては、送信信号を複数の送信信号に同相
分配し、上記複数の送信信号を、上記計算された各補正
位相量又は上記回帰補正された各補正位相量だけ移相し
てそれぞれ上記複数のアンテナ素子から送信する。
【0033】請求項10記載のアレーアンテナの制御装
置においては、上記変換手段は、上記アレーアンテナの
各アンテナ素子でそれぞれ受信された複数の受信信号を
それぞれ共通の局部発振信号を用いて互いに直交する各
2つの直交ベースバンド信号に変換する。次いで、上記
同相化手段は、上記複数のアンテナ素子のうち各2つの
アンテナ素子間の受信信号の同相化のための変換行列を
それぞれ、互いに直交する所定の第1の軸と第2の軸と
を用いて、上記各2つのアンテナ素子間の受信信号の位
相差の正弦値と各振幅値の積に比例する上記第2の軸上
の第2のデータと上記各2つのアンテナ素子間の受信信
号の位相差の余弦値と各振幅値の積に比例する上記第1
の軸上の第1のデータとを用いた2×2の変換行列で表
し、上記変換された各2つの直交ベースバンド信号に基
づいて上記第1のデータと上記第2のデータとを計算
し、上記計算された第1のデータと第2のデータとをそ
れぞれ所定の伝達関数を有する雑音抑圧用フィルタに通
過させてろ波させた後、上記ろ波された第1のデータと
上記ろ波された第2のデータとに基づいて上記変換行列
の要素を計算し、上記計算された変換行列の要素を含む
変換行列を用いて、上記各2つのアンテナ素子間の受信
信号を同相化する。さらに、合成手段は、上記同相化手
段によって同相化された複数の受信信号を同相合成して
受信信号を出力する。
【0034】また、請求項11記載のアレーアンテナの
制御装置においては、上記第1の計算手段は、上記同相
化手段によってそれぞれろ波された第1のデータと第2
のデータとに基づいて上記複数の受信信号が同相となる
ような各補正位相量を計算する。次いで、上記第1の移
相手段は、上記第1の計算手段によって計算された各補
正位相量に基づいて上記複数の受信信号を上記各補正位
相量だけ移相する。さらに、上記第1の同相合成手段
は、上記第1の移相手段によって移相された複数の受信
信号を同相合成して受信信号を出力する。さらに、請求
項12記載のアレーアンテナの制御装置においては、上
記補正手段は、上記アレーアンテナの配置形状に基づい
て、上記計算手段によって計算された補正位相量を上記
配置形状の面に回帰させるように上記計算された補正位
相量を回帰補正する。そして、上記第1の移相手段は、
上記補正手段によって回帰補正された各補正位相量に基
づいて上記複数の受信信号を上記各補正位相量だけ移相
する。
【0035】また、請求項13記載のアレーアンテナの
制御装置においては、上記同相変換手段は、上記同相化
手段によって計算された変換行列の要素を含む変換行列
を用いて上記複数の信号のうちの各2つの受信信号のう
ちの1つの受信信号を他方の受信信号に同相となるよう
に変換する。次いで、上記同相合成手段は、上記同相変
換手段によって上記変換しない受信信号と上記変換した
受信信号との組である各2つの受信信号を同相合成す
る。さらに、上記制御手段は、上記同相変換手段と上記
第2の同相合成手段との処理を上記同相合成後の受信信
号が1つになるまで繰り返すことにより、同相合成され
た1つの受信信号を出力する。
【0036】さらに、請求項14記載のアレーアンテナ
の制御装置においては、上記マルチビーム形成手段は、
上記アレーアンテナの各アンテナ素子でそれぞれ受信さ
れた複数の受信信号と、希望波を所定の放射角度の範囲
で受信できるように予め決められた形成すべき所定の複
数個のビームの各主ビームの方向と、上記受信信号の受
信周波数とに基づいて、上記複数個のビーム電界値を演
算して上記各ビーム電界値をそれぞれ有する複数のビー
ム信号を出力する。次いで、上記ビーム選択手段は、上
記マルチビーム形成手段によって出力された複数のビー
ム信号の中で最大のビーム電界値を有するビーム信号を
含むより大きなビーム電界値を有する所定数のビーム信
号を選択し、上記最大のビーム電界値を有するビーム信
号を基準の受信信号とする。そして、上記同相化手段
は、上記計算された変換行列の要素を含む変換行列を用
いて上記基準の受信信号に他の選択された複数の受信信
号を同相化する。
【0037】また、請求項15記載のアレーアンテナの
制御装置においては、上記振幅補正手段は、上記複数の
受信信号の信号レベルにそれぞれ比例する複数の利得で
それぞれ上記複数の受信信号を増幅することによって振
幅補正する。
【0038】さらに、請求項16記載のアレーアンテナ
の制御装置においては、上記同相化手段は、上記第1の
データと上記第2のデータを直接に上記変換行列の要素
として表して上記変換行列の要素を計算し、上記計算し
た変換行列の要素を含む変換行列を用いて上記複数の受
信信号のうちの所定の1つの受信信号を除く他の複数の
受信信号を上記所定の1つの受信信号に同相化する。
【0039】また、請求項17記載のアレーアンテナの
制御装置においては、上記同相化手段は、上記第1のデ
ータと上記第2のデータを直接に上記変換行列の要素と
して表して上記変換行列の要素を計算し、上記計算した
変換行列の要素を含む変換行列を用いて、各2つの受信
信号を同相化する。
【0040】さらに、請求項18記載のアレーアンテナ
の制御装置においては、上記分配手段は、送信信号を複
数の送信信号に同相分配する。次いで、上記送信移相手
段は、上記複数の送信信号を、上記計算手段によって計
算された各補正位相量又は上記補正手段によって回帰補
正された各補正位相量だけ移相する。さらに、上記送信
手段は、上記送信移相手段によって移相された複数の送
信信号をそれぞれ上記複数のアンテナ素子から送信す
る。
【0041】
【実施例】以下、図面を参照して本発明に係る実施例に
ついて説明する。 <第1の実施例>図1は本発明に係る第1の実施例であ
る通信用アレーアンテナの自動ビーム捕捉追尾装置の受
信部のブロック図である。本実施例の通信用アレーアン
テナの自動ビーム捕捉追尾装置は、所定の間隔で近接し
て任意の平面又は曲面上に並置された複数N個のアンテ
ナ素子A1,A2,…,Ai,…,ANからなるアレー
アンテナ1の指向性を、ディジタル位相変調波又は無変
調波などの無線信号波の到来ビームの方向へ高速で向
け、その追尾を行う。ここで、特に、本実施例の捕捉追
尾装置は、準同期検波回路QD−1乃至QD−Nと、振
幅位相差補正回路PC−1乃至PC−Nとを備えたこと
を特徴としている。
【0042】図1に示すように、アレーアンテナ1は、
N個のアンテナ素子A1乃至ANと、送受分離器である
サーキュレータCI−1乃至CI−Nとを備える。ま
た、受信モジュールRM−1乃至RM−Nはそれぞれ、
低雑音増幅器2と、第1局発振器11から出力される共
通の第1局部発振信号を用いて、受信された無線周波数
を有する無線信号を所定の中間周波数を有する中間周波
信号に周波数変換するダウンコンバータ(D/C)3と
を備える。
【0043】当該捕捉追尾装置の受信部はさらに、N個
のA/D変換器AD−1乃至AD−Nと、第2局部発振
器12から出力される共通の第2局部発振信号を用い
て、A/D変換後の中間周波信号を準同期検波して、互
いに直交する2つのベースバンド信号(以下、これら2
つのベースバンド信号を直交ベースバンド信号とい
う。)に変換するN個の準同期検波回路QD−1乃至Q
D−Nと、上記変換された直交ベースバンド信号を用い
て隣接アンテナ素子間の位相差推定値と各アンテナ素子
A1乃至ANにおける受信信号強度を計算し、各アンテ
ナ素子A1乃至AN毎に振幅位相補正処理を実行しすべ
てのベースバンド信号に重み付けを行って同相にするN
個の振幅位相差補正回路PC−1乃至PC−Nと、振幅
位相差補正回路PC−1乃至PC−Nからの出力信号を
同相合成する同相合成器4と、同相合成器4から出力さ
れるベースバンド信号から所定のベースバンド復調処理
により同期検波又は遅延検波を行い、所望のディジタル
データを抽出して受信データとして出力する復調器5と
を備える。
【0044】当該受信部において、アレーアンテナ1内
の各アンテナ素子A1乃至ANから振幅位相差補正回路
PC−1乃至PC−Nまでは、各アンテナ素子の系統毎
に、縦続接続されている。当該受信部における各アンテ
ナ素子の系統毎の信号処理は同様に実行されるので、ア
ンテナ素子Aiで受信された無線信号波についての処理
について述べる。
【0045】アンテナ素子Aiで受信された無線信号波
は、サーキュレータCI−iと、受信モジュールRM−
i内の低雑音増幅器2とを介してダウンコンバータ3に
入力される。受信モジュールRM−i内のダウンコンバ
ータ3は、第1局発振器11から出力される共通の第1
局部発振信号を用いて、入力された無線信号を所定の中
間周波数を有する中間周波信号に周波数変換して、A/
D変換器AD−iを介して準同期検波回路QD−iに出
力する。準同期検波回路QD−iは、第2局部発振器1
2から出力される共通の第2局部発振信号を用いて、入
力されたA/D変換後の中間周波信号を準同期検波して
2つの直交ベースバンド信号Ii,Qiに変換して振幅位
相差補正回路PC−i及び隣接する振幅位相差補正回路
PC−(i+1)に出力する。振幅位相差補正回路PC
−iは、入力された直交ベースバンド信号Ii,Qi及び
隣接するアンテナ素子A−(i−1)に関する直交ベー
スバンド信号Ii-1,Qi-1を用いて隣接アンテナ素子間
の位相差推定値δci-1iと各アンテナ素子A1乃至A
Nにおける受信信号強度を計算し、上記計算された位相
差推定値に基づいてすべてのベースバンド信号が同相に
なるように位相差補正(移相)し、かつ上記計算した受
信信号強度に比例した増幅利得で重み付けを行うことに
よってアンテナ素子Aiに関する振幅位相補正処理を実
行する。当該処理後のベースバンド信号は同相合成器4
に入力される。なお、振幅位相差補正回路PC−iの回
路処理については詳細後述する。
【0046】同相合成器4は各振幅位相差補正回路PC
−1乃至PC−Nから入力された各ベースバンド信号を
各チャンネル毎に同相合成した後、復調器5に出力す
る。復調器5は、入力されたベースバンド信号から所定
のベースバンド復調処理により同期検波又は遅延検波を
行い、所望のディジタルデータを抽出して受信データと
して出力する。
【0047】図2は、当該捕捉追尾装置の送信部のブロ
ック図である。当該送信部は、図2に示すように、N個
の送信モジュールTM−1乃至TM−Nと、N個の直交
変調回路QM−1乃至QM−Nと、同相分配器9とを備
える。ここで、各直交変調回路QM1乃至QM−Nはそ
れぞれ、直交変調器6と、送信局部発振器10とを備
え、各送信モジュールTM−1乃至TM−Nはそれぞ
れ、入力された中間周波信号を所定の送信無線周波数を
有する送信信号に周波数変換するアップコンバータ(U
/C)7と、送信電力増幅器8とを備える。ここで、直
交変調回路QM−1乃至QM−N内の各送信局部発振器
10は例えば、同一のクロックで駆動されたDDS(Di
rect Digital Synthesizer)を用いた発振器であって、
最小2乗回帰補正部42から入力される位相補正量Δφ
c1乃至ΔφcNに基づいて各位相補正量に対応した位相を
有する送信局部発振信号を発生する。
【0048】送信データであるベースバンド信号は同相
分配器9に入力された後、同相分配されて各直交変調回
路QM−1乃至QM−Nの各直交変調器6に入力され
る。例えば直交変調回路QM−1内の直交変調器6は、
送信局部発振信号を同相分配器9から入力された送信ベ
ースバンド信号に従って、例えばQPSKなどの直交変
調した後、直交変調後の中間周波信号を、送信モジュー
ルTM−1内のアップコンバータ7と送信電力増幅器8
とを介して、送信無線信号として、アレーアンテナ1内
のサーキュレータCI−1に入力される。そして、当該
送信無線信号がアンテナ素子A1から送信放射される。
さらに、アンテナ素子A2乃至ANに接続される送信部
の各系統において同様の信号処理が実行される。
【0049】図3に、図1における振幅位相差補正回路
PC−1乃至PC−Nのi番目のアンテナ素子Ai(i
=1,2,3,…,N)に対応した1系統分のブロック
図を示す。当該振幅位相差補正回路PC−iは、ディジ
タル位相変調波又は無変調波などからなる受信無線信号
の隣接アンテナ素子間の位相差δci-1,iを推定して決
定し、当該位相差を0とする、すなわち同相とするよう
に各アンテナ素子毎に位相補正するとともに、これらN
個のベースバンド信号を同相合成したときに受信信号対
雑音電力比の改善を図るために、受信無線信号の信号強
度に比例した利得で各系統毎に増幅を行う回路である。
振幅位相差補正回路PC−iは、図3に示すように、位
相差推定部40と、加算器41と、最小2乗回帰補正部
42と、遅延バッファ43と、位相差補正部44と、振
幅補正部45とを備える。なお、振幅位相差補正回路P
C−1においては、位相差推定部40と加算器41とを
設けず、Δφ1=0とおく。
【0050】準同期検波回路QD−iから入力される受
信信号である直交ベースバンド信号Ii,Qi(以下、I
iをIチャンネルのベースバンド信号といい、QiをQチ
ャンネルのベースバンド信号という。)は位相差推定部
40と遅延バッファ43とに入力される。位相差推定部
40は、隣接する2つのアンテナ素子Ai,Ai−1に
関する準同期検波回路QD−i,QD−(i−1)から
それぞれ出力される直交ベースバンド信号(標本値)I
i,Qi及びIi-1,Qi-1に基づいて、各標本タイミング
における2つの隣接アンテナ素子Ai,Ai−1系統間
の位相差δci-1,iを推定して加算器41に出力する。
加算器41は、上記位相差推定部40から入力される推
定された位相差δci-1,iと、振幅位相差補正回路PC
−(i−1)内の加算器41から出力される累積補正位
相量Δφi-1とを加算して、加算結果の累積補正位相量
Δφiを最小2乗回帰補正部42に出力するとともに、
次の振幅位相差補正回路PC−(i−1)内の加算器4
1に出力する。
【0051】最小2乗回帰補正部42は、推定された位
相差δci-1,iを加算器41によって各アンテナ素子系
統毎に順次累積加算して得られた各アンテナ素子毎の累
積補正位相量Δφ1乃至ΔφNに基づいて、アレーアンテ
ナの空間的な性質を利用して雑音を抑圧するための各ア
ンテナ素子A1乃至ANに関する受信位相差の位相補正
量Δφc1乃至ΔφcNを、振幅位相差補正回路PC−1乃
至PC−N内の各位相差補正部44に出力するととも
に、直交変調回路QM−1乃至QM−N内の送信局部発
振器10に出力する。なお、最小2乗回帰補正部42
は、当該受信部において1つだけ設けられ、例えばDS
P(Digital Signal Processor)で構成される。
【0052】一方、遅延バッファ43は、直交ベースバ
ンド信号Ii,Qiを、位相差推定部40と加算器41と
最小2乗回帰補正部42とにおける演算時間に対応する
位相差推定の遅延時間分だけ遅延させて、位相差補正部
44に出力する。次いで、位相差補正部44は、最小2
乗回帰補正部42から出力される受信位相差の補正量Δ
φciに基づいて、遅延バッファ43から出力される直交
ベースバンド信号を、当該補正量Δφciに対応した移相
量だけ位相回転させることによって位相補正して振幅補
正部45に出力する。さらに、振幅補正部45は、位相
差補正部44から出力される直交ベースバンド信号を、
その直交ベースバンド信号の信号強度に比例した利得で
増幅して直交ベースバンド信号Ici,Qciとして同相
合成器4に出力する。
【0053】いま、隣接する2つのアンテナ素子Ai−
1,Aiの準同期検波後の直交ベースバンド信号のある
時点での標本値をそれぞれ、Ii-1,Qi-1,Ii,Qi
すると、位相差推定部40で計算される瞬時位相差δ
i-1,iは位相平面上の2つのベクトル(Ii-1
i-1),(Ii,Qi)のなす角度で表わされる。これ
らのIi-1,Qi-1,Ii,Qiは、ディジタル位相変調の
場合、次の数1乃至数4で表される。
【0054】
【数1】Ii-1=ai-1cos(θ)
【数2】Qi-1=ai-1sin(θ)
【数3】Ii=aicos(θ+δi-1,i
【数4】Qi=aisin(θ+δi-1,i
【0055】ここで、ai-1,aiは各ベースバンド信号
の振幅であって、θは変調された位相データに従って変
動する各ベースバンド信号の任意の位相角度を意味す
る。従って、次の数5及び数6に示すベースバンド処理
を行えば、位相差δi-1,iの正弦と余弦に比例し、かつ
変調された位相データに全く依存しない値を得ることが
できる。
【0056】
【数5】 Ii-1・Ii+Qi-1・Qi=ai-1icosδi-1,i
【数6】 Ii-1・Qi−Ii・Qi-1=ai-1isinδi-1,i
【0057】これより、隣接する2つのアンテナ素子A
i−1,Aiの瞬時位相差δi-1,iは次の数7で表され
て計算される。
【0058】
【数7】
【0059】これは各信号の変調された位相データだけ
でなく振幅ai-1、aiにも依存していない。従って、変
調に関係なく位相差δi-1,iを計算することができる。
ここで、上記数1乃至数4から数7への変換は、互いに
直交するI軸,Q軸から、位相差δi-1,iを規定する互
いに直交する2つの軸への変換であって、軸中心を中心
としての座標の回転を意味する。上記数7において、右
辺の分数の分母のデータは数5の左辺であり、数5に示
すように位相差δi-1,iの余弦に比例している。一方、
数7において、右辺の分数の分子のデータは数6の左辺
であり、数6に示すように位相差δi-1,iの正弦に比例
している。
【0060】そして、受信無線信号に含まれる雑音(主
として受信機の熱雑音である。)を抑圧してより正確な
位相差を得るために、数5及び数6で求められた2つの
データをそれぞれ位相差推定部40に含まれる所定のデ
ィジタルフィルタに通過させてろ波する。ここで、割り
算やtan-1の演算の前にろ波するのは、演算による誤
差の増大を防ぐためである。ろ波後の位相差δci-1,i
は次の数8を用いて推定される。
【0061】
【数8】
【0062】ここで、F(・)は当該ディジタルフィル
タの伝達関数を表す。このディジタルフィルタとして
は、単純な巡回加算器から適応タップ係数付のトランス
バーサルフィルタまで種々のフィルタが適用できる。位
相差推定部40は、数8を用いて上記ろ波後の位相差δ
i-1,iを計算して加算器41に出力する。
【0063】図4に、位相差推定部40に含まれる固定
タップ係数付きFIR(Finite Impulse Response)フ
ィルタの構成例を示し、図4の例ではバッファの大きさ
Buff=7の場合である。図4に示すように、入力信
号xは、タップ係数乗算器60を介して加算器70に入
力されるとともに、縦続接続された6個の遅延回路51
乃至56の入力端に入力される。各遅延回路51乃至5
6から出力される信号はそれぞれ各タップ係数乗算器6
1乃至66を介して加算器70に入力される。ここで、
乗算器60乃至66はそれぞれ、乗算係数であるタップ
係数k0乃至k6を有し、入力された信号を当該タップ
係数で乗算して加算器70に出力する。加算器70は入
力されたすべての信号を加算して出力信号F(x)とし
て出力する。ここで、各タップ係数k0乃至k6をすべ
て1とすれば、このフィルタは単純な巡回加算器とな
る。このフィルタのバッファの大きさを、以下では単に
バッファサイズBuffと呼ぶことにする。
【0064】上記数8で計算された推定位相差δci-1,
iに基づいて、各アンテナ素子の系統において補正すべ
き位相量(以下、補正位相量という。)△φi(i=
1,2,…,i,…,N)は次の数9で表されて加算器
41によって計算される。
【0065】
【数9】 Δφ1=0 Δφ2=Δφ1+δc1,2 Δφ3=Δφ2+δc2,3 −−−−−−−−−− Δφi=Δφi-1+δci-1,i −−−−−−−−−− ΔφN=ΔφN-1+δcN-1,N
【0066】上記数9においては、アンテナ素子A1を
位相基準(位相ゼロ)とし、全てのアンテナ素子A1乃
至ANの位相をアンテナ素子A1に等しくすることを仮
定している。この補正位相量計算の順番の方法として、
以下に示すようにいくつか選択することができる。
【0067】アンテナ素子A1乃至ANが1次元配列の
場合は、一例として図5(a)に示すようにどちらか一
方の端にあるアンテナ素子A1を位相基準とし、そこか
ら順番に計算して行く第1の方法と、図5(b)に示す
ように、ある1<i<Nなるアンテナ素子Aiを位相基
準としその両側へ並列計算して行く第2の方法がある。
後者の方は2つの枝に分岐して並列処理を行うため計算
速度が速いが、位相基準となる素子には出力が2つ必要
である。
【0068】また、アンテナ素子A1乃至ANが2次元
正方配列の場合は、一例として1素子の入出力ポート数
を合わせて3つまでと仮定すれば、図6に示すように、
対角線の一方の端にあるアンテナ素子A1を位相基準と
し、そこから枝状に分岐しながら位相差を加算していく
方法などが考えられる。この方法では各枝の累積加算回
数は全て3回となる。さらに他の任意のアンテナ配列の
場合もこれらの例に準じて並列計算し計算を速めること
ができる。
【0069】上記計算された補正位相量Δφiは各アン
テナ素子系統毎に位相推定部40内のディジタルフィル
タを用いて雑音成分の抑圧がなされているが、当該フィ
ルタの遮断特性をあまり急峻にしすぎると応答遅延が増
大するためフィルタによる雑音抑圧には限度がある。こ
のため、最小2乗回帰補正部42において、以下に示す
ように、最小2乗法を用いたアレー空間信号処理による
補正位相量の直線又は平曲面回帰補正を行うことによ
り、受信機側における雑音特性の改善を図る。
【0070】いま仮に簡単化のために4つのアンテナ素
子A1乃至A4が任意の間隔で直線上に配列されてお
り、ある方向から無線信号波の1本の到来ビームを受信
しているものとした場合の各アンテナ素子A1乃至A4
における受信位相を図7に示す。ただし、到来ビームに
もともと含まれる雑音はないものと仮定している。この
場合、もし受信機雑音がなければ各受信位相は正確に求
められるので、図7の71に示すように、位置xにおけ
るi番目のアンテナ素子の受信相対位相量△φi(x)
はアンテナの位置xに対して一次関数となる。しかしな
がら、実際は各アンテナ素子A1乃至ANの系統毎に独
立な受信機雑音(主として熱雑音である。)があるので
計算される位相量(推定値)Δφi(x)は図7の72
のようになる。ここで、図7の73に示すように各受信
相対位相量(推定値)Δφi(x)からの2乗誤差の和
を最小とするような回帰直線△φci(x)を求めて補正
すれば、受信機雑音を抑圧することができる。
【0071】上記位相量の回帰補正処理は、アンテナ配
列が2次元の場合も同様に扱うことができ、アンテナ配
列面が平面である場合だけでなく任意の曲面である場合
にも適用可能である。その場合、回帰曲面はアンテナ配
列面の形状から求められる。なお、当該回帰補正処理に
おいて、最小2乗法を用いているが、本発明はこれに限
らず、1つの直線又は曲面に回帰させて近似的な直線又
は曲面を求める数値計算法を用いてもよい。
【0072】以下にアンテナ素子配列面が一次平面であ
る場合の計算例を示す。任意の自然数i番目(1≦i≦
N)のアンテナ素子の位置をx−y平面上の(x、y)
で表すものとし、次式で与えられる評価関数Jを最小と
するような補正位相量の回帰平面△φci(x,y)を次
の数10を用いて計算される。
【0073】
【数10】
【0074】ここで、△φi(x,y)は最小2乗回帰
する前の補正位相量の推定値(図7の72に対応す
る。)である。ここではアンテナ素子配列がxmax×y
maxの等間隔正方配列であると仮定し、自然数N(=x
max×ymax)個のアンテナ素子はx=1,2,…,x
max及びy=1,2,…,ymaxの各軸の交点に配置され
ているものとする。アンテナ面が平面のため、補正位相
量の最小2乗回帰平面である位相面も平面となり、補正
位相量の回帰平面△φci(x,y)は次の数11を用い
て表わすことができる。
【0075】
【数11】 Δφci(x,y)=ax+by+c, x=1,2,…,xmax;y=1,2,…,ymax
【0076】ただし、a、b、cは平面の位置を決める
パラメータである。このとき、上記評価関数Jが最小と
なる条件となる正規化方程式は次の数12で表される。
【0077】
【数12】 ∂J/∂a=0 ∂J/∂b=0 ∂J/∂c=0
【0078】これを変形すると次の数13が導かれる。
【0079】
【数13】
【0080】上記数13から次の数14が得られる。
【0081】
【数14】
【0082】ここで、行列Aと行列Φは次の数15で表
される。
【0083】
【数15】
【0084】ここで、Aはアンテナ素子A1乃至ANの
位置座標のみから決定される係数行列であるため、その
逆行列A-1は予め計算しておくことができ、リアルタイ
ムで計算する必要はない。例えば、xmax=ymax=4の
場合においては、逆行列A-1は次の数16で表される。
【0085】
【数16】
【0086】従って、平面の位置を決定するパラメータ
a、b、cは次の数17となる。
【0087】
【数17】
【0088】従って、上記補正位相量の推定値Δφ
i(x,y)を用いて回帰平面△φci(x,y)が決定
され、各アンテナ素子A1乃至ANの系統毎に回帰補正
された補正位相量△φc1(=Δφc1(1,1))乃至△
φcN(=△φcN(xmax,ymax))を最小2乗回帰補正
部42によって計算することができる。以上は、アンテ
ナ面が一次平面であることを仮定した計算例であるが、
同様に、2次曲面などの場合にも適用が可能である。
【0089】以上の最小2乗法による処理は演算速度に
余裕がない場合は補正位相量△φci(x,y)=△φi
(x,y)としてスキップすることができる。このよう
にして求めた補正位相量△φci(=△φci(x,y))
を用いて、次の数18によりすべてのアンテナ素子の系
統において直交ベースバンド信号の位相補正を行う。な
お、以下、△φci=△φci(x,y)とおく。
【0090】
【数18】
【0091】ただし、数18の左辺は位相補正後のi番
目のアンテナ素子の受信ベースバンド信号のベクトルを
表わす行列であり、数18の右辺の第1項はすべての受
信ベースバンド信号を同相化するために位相補正するた
めの位相回転変換行列、すなわち、同相化のための変換
行列であり、その右辺の第2項は位相補正前の受信ベー
スバンド信号のベクトルを表わす行列である。
【0092】次に、マルチパスフェージングや遮断など
により一部のアンテナ素子での受信電力が低くなること
がある場合、すべてのアンテナ素子の受信信号を等しい
重み付けで合成する等利得同相合成では品質の良い信号
も悪い信号も同じ重み付けで加算されるため、当該同相
合成後の信号対雑音電力比が劣化する。これを抑圧する
ために、振幅補正部45において、次の数19で示すよ
うに各アンテナ素子A1乃至ANの系統における受信ベ
ースバンド信号をその受信強度に比例する利得Gで増幅
し振幅補正を行う。これは品質の良い信号の寄与を増
し、品質の悪い信号の寄与を減ずることを意味する。
【0093】
【数19】
【0094】ここで、kは比例定数であり、Ave
( )は時間平均の値を示す。上記振幅補正後の信号を
すべてのアンテナ素子A1乃至ANの系統で同相合成す
れば、直交ベースバンド信号の相対同相合成出力は次の
数20で表される。
【0095】
【数20】
【0096】振幅補正部45における振幅補正処理は、
アンテナ素子A1乃至AN間で受信電力の差があまり問
題にならない場合はG=1とし、これをスキップするこ
とができる。また、この同相合成出力を同期検波又は遅
延検波を行う任意のベースバンド処理型復調器5に入力
すれば所望のディジタルデータを得ることができる。
【0097】一方、送信用アレーアンテナの指向性制御
のためのウェイトは振幅成分を含まず、位相成分のみで
よいため、最小2乗回帰補正部42において計算された
位相補正量△φciはそのまま送信用アレーアンテナの指
向性制御のためのウェイトとして用いることができ、自
動的に到来ビームの方向に送信ビームを向けることが可
能である。ただし、場合によっては、以下のように必要
に応じて簡単な換算を行う必要がある。
【0098】例えば、送信と受信で電波の波長が異なる
場合でアレーアンテナ1を送信と受信で共用している場
合などにおいては、各送信用アンテナ素子系統における
移相量△φTi(x,y)は次の数21で表される。
【0099】
【数21】
【0100】ただし、λT、λRはそれぞれ送信と受信の
自由空間波長である。送信用と受信用のアンテナ素子が
別々で素子間隔が波長換算で等しい場合やアンテナ素子
が送信と受信で共用していても両者の周波数が等しい場
合にはこの換算は不要である。
【0101】以上のように構成された本実施例のアレー
アンテナの自動ビーム捕捉追尾装置を用いて到来ビーム
を受信したときの効果を確認するために行ったシミュレ
ーションの計算結果について説明する。ここで、シュミ
レーションのための条件を表1に示す。
【0102】
【表1】 ────────────────────────────────── 変調方式 QPSK ────────────────────────────────── ビットレート 16kbps ────────────────────────────────── 変調周波数 32kHz ────────────────────────────────── サンプリングレート 128kHz ────────────────────────────────── 付加雑音 ガウス雑音 ────────────────────────────────── アレーアンテナ 点放射源,4素子直線配列 ────────────────────────────────── アンテナ素子間隔 1/2波長 ────────────────────────────────── 送信低域フィルタ 10タップFIRフィルタ,遮断周波数=8kHz ────────────────────────────────── 送信帯域フィルタ 51タップFIRフィルタ,遮断周波数=16kHz ────────────────────────────────── 受信帯域フィルタ 51タップFIRフィルタ,遮断周波数=16kHz ────────────────────────────────── 受信低域フィルタ 10タップFIRフィルタ,遮断周波数=8kHz ────────────────────────────────── 備考 干渉波、周波数変動ともになし ──────────────────────────────────
【0103】補正位相量を推定する際のディジタルフィ
ルタは単純な巡回加算器(全タップ係数=1のFIRフ
ィルタ)とし、フィルタのタップ数に相当する加算バッ
ファサイズBuffを変更してその効果を調べた。ただ
し、各アンテナ素子で受信される電力は等しいものと
し、振幅補正は行っていない。また、最小2乗回帰は行
っていない。また、シミュレーションでは、位相差補正
を毎サンプル行わず、9サンプルに1回の演算頻度に落
としている。これにより、DSP(ディジタル信号処理
プロセッサ)の演算負荷が減るだけでなく、演算サンプ
ル間の雑音信号の相関が減少するため、ディジタルフィ
ルタによるより効果的な雑音抑圧が可能となる。
【0104】図8に、位相差推定演算をサンプリング毎
(サンプリング周波数=128kHz)に行った場合の
信号ビーム到来方向のアンテナ相対利得の時間変化を、
Iチャネルの復調ベースバンド信号(復調データ)とと
もに示している。ここで、図8の(a)が1つのアンテ
ナ素子当りの受信C/N=4dBの場合であり、図8の
(b)がC/N=−2dBの場合である。ここで、C/
Nは、搬送波電力と雑音電力との比(以下、搬送波電力
対雑音電力比という。)を表す。図8に示すように、送
信信号の出力発生を通算サンプリング回数=0で開始
し、次いで、受信信号の入力と演算は通算サンプリング
回数=100で開始し、次いで、通算サンプリング回数
=700〜1000でシャドウイング(受信信号の遮
断)を受け、かつ到来信号ビーム方向が90度/秒で変
化することを想定した。ここで、演算開始からアンテナ
相対利得が−3dBを上回るまでの動作を「粗捕捉」と
呼び、アンテナ相対利得が−0.5dBを上回るまでの
動作を「精捕捉」と呼ぶことにすると、精捕捉に要する
通算サンプリング回数は図8の(a)の場合で約80で
あり、図8の(b)の場合で約300である。従って、
精捕捉に要する通算サンプリング回数は、搬送波電力対
雑音電力比C/Nに依存している。一方、粗捕捉に要す
る通算サンプリング回数は、搬送波電力対雑音電力比C
/Nに大きく依存することはなく、通算サンプリング回
数が30乃至50程度で到来信号ビームを捕捉してい
る。捕捉後は図8の(b)のように搬送波電力対雑音電
力比C/Nが低い場合はアンテナ相対利得の変動も増大
してくる。すなわち、図8の(a)と(b)の場合の両
者ともに、到来信号ビームを安定に追尾していることが
わかる。このように、受信搬送波電力対雑音電力比C/
Nが低い場合でも高速に捕捉し、安定に追尾することが
できるのは、各アンテナ素子A1乃至ANの系統の位相
制御をフィードフォワード方法で行っているためであ
る。
【0105】図9の(a)及び(b)に、図8と同一の
条件のもとでの信号ビーム捕捉時におけるアンテナパタ
ーンの時間変化を示す。図9において、点線は通算サン
プリング回数が8のときであり、次いで、1点鎖線は通
算サンプリング回数が26のときであり、さらに、実線
は通算サンプリング回数が35(図9の(a))又は1
25(図9の(b))のときである。図9から明らかな
ように、アンテナパターンがランダムな状態(通算サン
プリング回数=8のとき)から−45度の信号ビームを
捕捉した状態(通算サンプリング回数=35(図9の
(a))又は125(図9の(b)のとき)に、速やか
にアンテナパターンを収束させていることがわかる。
【0106】図10の(a)及び(b)に、同じく図8
と同一の条件のもとで、通常の陸上移動体などで想定さ
れる最大回転速度として毎秒90度を仮定し、この速さ
で到来信号ビーム方向が変化する場合のアンテナパター
ンの変化を示す。図10において、一点鎖線のアンテナ
パターンは点線のそれから1/3秒後のものであり、実
線のアンテナパターンは一点鎖線のそれから1/3秒後
のものである。図10から明らかなように、到来信号ビ
ーム方向が変化する場合であっても、アレーアンテナの
主ビームは、ほぼ正確に到来信号ビームを追尾している
ことがわかる。
【0107】図11は、バッファサイズBuffをパラ
メータとしたときの搬送波電力対雑音電力比C/Nに対
する、到来信号ビームの粗捕捉及び精捕捉のときの追尾
特性を示したものである。ここで、演算周期Toprは
1に固定している。図11から明らかなように、粗捕捉
は搬送波電力対雑音電力比C/N及びバッファサイズB
uffにほとんど依存しておらず、常に安定な捕捉特性
が得られることがわかる。一方、精捕捉に関しては、搬
送波電力対雑音電力比C/Nの劣化とともに捕捉するま
での通算サンプリング回数が多くなり、すなわち、捕捉
するまでの時間が長くなって、捕捉が鈍くなっており、
搬送波電力対雑音電力比C/Nに大きく依存している。
この場合、バッファサイズBuffは小さいほうが捕捉
は速いが、詳細後述するように、追尾が不安定となるた
め、バッファサイズBuffの選択にあたっては実際の
無線通信回線条件を考慮した捕捉と追尾のトレードオフ
(同時に満足しえない幾つかの条件の取捨についての考
察)が必要になる。
【0108】図12は、バッファサイズBuffをパラ
メータにしたときの搬送波電力対雑音電力比C/Nに対
する追尾特性を示したもので、縦軸は通算サンプリング
回数=8000までにアレーアンテナの相対利得が−
0.5dBを下回るサンプリング回数であり、形成され
た主ビームが目標とする方向からはずれる回数を表して
いる。ここで、演算周期Toprは1に固定している。
図12から明らかなように、バッファサイズBuffを
増大させることにより比較的低い搬送波電力対雑音電力
比C/Nにおける追尾の安定性が著しく改善されること
がわかる。
【0109】図13は、演算周期Toprをパラメータ
にしたときの搬送波電力対雑音電力比C/Nに対する粗
捕捉及び精捕捉のときの追尾特性を示したものである。
ここで、バッファサイズBuffは30に固定してい
る。図13から明らかなように、粗捕捉の追尾特性は演
算周期Toprにほとんど依存していないが、一方、精
捕捉の追尾に関しては、演算周期Toprが小さいほう
が捕捉は速いということがわかる。しかしながら、この
場合、詳細後述するように、追尾が不安定になるため、
演算周期Toprの選択にあたっては実際の無線通信回
線条件を考慮した捕捉と追尾のトレードオフが必要にな
る。
【0110】図14は、演算周期Toprをパラメータ
にしたときの搬送波電力対雑音電力比C/Nに対する追
尾特性を示したものであり、縦軸は通算サンプリング回
数=8000までにアレーアンテナの相対利得が−0.
5dBを下回るサンプリング回数であり、形成された主
ビームが目標とする方向からはずれる回数を表してい
る。ここで、バッファサイズBuffは30に固定して
いる。図14から明らかなように、演算周期Toprを
増大させることにより、バッファサイズBuffを増し
た場合(図12参照。)と同様に、比較的低い搬送波電
力対雑音電力比C/Nにおける追尾の安定性が著しく改
善されることがわかる。ただし、演算周期Toprをあ
まり長くしすぎると到来信号ビーム方向の変化への応答
が遅くなるため追尾誤差が増える原因となる。
【0111】以上のシミュレーション結果から、本実施
例の自動ビーム捕捉追尾装置においては、搬送波電力対
雑音電力比C/Nが比較的高い無線通信回線条件のもと
では、バッファサイズBuffと、演算周期Toprと
をともに比較的小さめに設定して捕捉を高速化する一
方、搬送波電力対雑音電力比C/Nが比較的低い無線通
信回線条件のもとでは、バッファサイズBuffと、演
算周期Toprとをともに比較的大きめに設定すること
により安定した追尾特性を得ることができることがわか
る。
【0112】以上説明したように、本実施例に示した自
動ビーム追尾捕捉装置は以下の特有の効果を有する。 (1)各アンテナ素子A1乃至ANでの受信信号間の位
相差をフィードフォワードで補正することにより到来ビ
ームを捕捉し、第2の従来例のようにフィードバックル
ープを含まないため、比較的低い搬送波電力対雑音電力
比C/Nにおいてもディジタル位相変調波又は無変調波
などからなる無線信号の到来ビームを自動的かつ高速に
捕捉することができ、第2の従来例の方法に見られるよ
うな収束のための遅延時間が大幅に縮小されるととも
に、位相制御を行うためのトレーニング信号や参照信号
が必要ない。従って、システム構成が簡単になる。 (2)各アンテナ素子A1乃至ANでの受信信号間の位
相差をフィードフォワードで補正することにより到来ビ
ームを追尾し、第2の従来例のようにフィードバックル
ープを含まないため、比較的低い搬送波電力対雑音電力
比C/Nでしかも到来信号ビーム方向が高速に変化する
場合においても、ディジタル位相変調波又は無変調波な
どからなる無線信号の到来ビームを高精度かつ安定に追
尾することができる。従って、従来例の方法に見られる
ような位相スリップや周囲の電磁環境による外乱の影
響、追尾誤差の蓄積がほとんどない。 (3)各アンテナ素子系統における補正位相量からさら
に最小2乗回帰補正を行うことによりアレーアンテナの
空間的な情報を有効に利用することができるため、アン
テナ素子数が多い場合に問題となる1つのアンテナ素子
当たりの搬送波電力対雑音電力比C/Nの低下の影響を
抑えることができる。 (4)以上の捕捉追尾はすべて受信信号に対して、例え
ばディジタル信号処理などの信号処理によって行うた
め、第1の従来例のフェーズドアレーアンテナに見られ
るようなマイクロ波移相器や捕捉追尾のためのセンサ類
又は機械駆動のためのモーター等を一切必要としない。
【0113】第1の実施例において最小2乗法による回
帰補正を行わない場合について、以下に第1の実施例の
変形例として説明する。この場合は、数8において隣接
アンテナ素子間位相差を求める代わりに、ある所定の基
準アンテナ素子との間で数8の分子と分母を計算し、数
8の分子を数18におけるsinΔφciに代入するとと
もに、数8の分母を同じく数18におけるcosΔφci
に代入して処理すれば、受信側においては数8における
tan-1の計算をすることなく、数18の左辺が求まる
ことになり、演算量を減らすことができるとともに、位
相補正のみならず最大比合成のための振幅補正を自動的
に行うことができる。この場合において、直交ベースバ
ンド信号の位相補正を行う式は次の数22で表される。
【0114】
【数22】
【0115】ここで、数22の左辺は位相補正後のi番
目のアンテナ素子の受信ベースバンド信号のベクトルを
表わす行列であり、その右辺の第1項は位相補正のため
の位相回転変換行列、すなわち同相化のための変換行列
であり、その右辺の第2項は位相補正前の受信ベースバ
ンド信号のベクトルを表わす行列である。ただし、当該
変形例においては、隣接する2つのアンテナ素子におけ
る受信信号間で演算を行うのではなく、位相基準となる
アンテナ素子を例えばA1とし、このアンテナ素子A1
による受信信号と、その他のアンテナ素子A2乃至AN
による各受信信号との間で演算を行って、その間で同相
化の処理を実行する。この変形例では、基準のアンテナ
素子をA1としているが、本発明はこれに限らず、他の
1つのアンテナ素子であってもよい。この処理を実行す
る場合の利点は、数22の演算は位相を変換するだけで
なく、同時に振幅も最大比合成を実行するように振幅を
変換することができることである。すなわち、数5及び
数6から、数24の近似式を用いて次の数23のように
近似することができる。
【0116】
【数23】
【0117】数23から明らかなように、数23の右辺
の第3項及び第4項の2つの行列の積に対してろ波され
た振幅係数の積F(a1)・F(ai)がかかっている。
ここで、振幅係数a1、振幅係数ai及び位相差の余弦c
osδ1,iは短期的に見ると熱雑音によりある平均値を
中心にランダムに時間的に変動する互いに独立な変数で
あるとみなすことができる場合には、次の数24を得る
ことができる。
【0118】
【数24】 F(a1icosδ1,i)≒F(a1)・F(ai)・F(cosδ1,i) F(a1isinδ1,i)≒F(a1)・F(ai)・F(sinδ1,i)
【0119】数24が成立するのは以下の理由による。
いま、変数u及びvをそれぞれランダムに時間変動する
独立変数とし、それぞれの平均値をavr(u),av
r(v)とおくと、次の数25のように表わすことがで
きる。
【0120】
【数25】 u=avr(u)+eu v=avr(v)+ev
【0121】ここで、eu,evはそれぞれランダム成
分であり、平均値を0としてランダムに時間変動する成
分を表わす。上記ディジタルフィルタが例えば所定の低
域通過フィルタである場合には、F(・)は当該低域通
過フィルタの伝達関数であるから、数25より、次の数
26が成立する。
【0122】
【数26】 F(u)≒avr(u) F(v)≒avr(v) F(eu)≒0 F(ev)≒0
【0123】これらの変数u,vの間で、次の数27が
成立すれば、数24が成り立つことになる。
【0124】
【数27】F(u・v)≒F(u)・F(v)
【0125】数25を数27の左辺に代入して、数27
を数26を用いて変形すると、次の数28を得ることが
できる。
【0126】
【数28】 F(u・v) =F((avr(u)+eu)・(avr(V)+ev)) =F(avr(u)・avr(v)+ev・avr(u)+eu・avr(v)+eu・ev) =F(avr(u)・avr(v))+F(ev・avr(u))+F(eu・avr(v))+F(eu・ev) =avr(u)・avr(v)+avr(u)・F(ev)+avr(v)・F(eu)+F(eu・ev) ≒F(u)・F(v)+F(eu・ev)
【0127】ここで、ランダム成分euとevは互いに
独立で相関がないと仮定でき、それらの間の相互相関関
数R(τ)は常に0であるので、τ=0とおくことによ
り次の数29が成り立つ。
【0128】
【数29】
【0129】これは(eu・ev)の時間平均がほぼ0
であることを示している。従って、F(eu・ev)≒
0となり、これと数28より数27が成立し、数24が
成立する。ただし、数24がより高い精度で成立するの
は、特に、包絡線が一定である定包絡線変調方式の場合
であり、包絡線が情報シンボルによって変動する場合は
近似の精度が劣化する。
【0130】一方、数22の演算を基準のアンテナ素子
A1の系統においても自分自身との間で行うこととする
と、受信信号対雑音電力比S/Nが十分高い場合には次
の数30が成り立つ。
【0131】
【数30】
【0132】数23と数30より、各アンテナ素子にお
ける受信信号の振幅変換係数はそれぞれの受信信号の振
幅のフィルタ出力F(ai)(i=1,2,…,N)に
比例していることがわかる。数22と数30の演算結果
を数20に従って合成することは、結果的に最大比合成
を行っていることと同じであり、複数の受信信号を合成
した後の受信信号対雑音電力比を大幅に改善することが
できる。この場合、数19で示した演算は不要となり、
図3における位相差補正部44と振幅補正部45は一体
化することができる。ただし、振幅係数a1のランダム
成分をea1とおいて、フィルタ出力F(a1 2)の計算
を数28と同様に行うと、次の数31を得る。
【0133】
【数31】F(a1 2)=F2(a1)+F(ea1 2
【0134】すなわち、数31から明らかなように、受
信信号電力対雑音電力比S/Nが低い場合には、数31
の右辺の第2項が無視できず、従って、数30の近似誤
差は増大するというという問題がある。なお、マルチパ
スが存在せず、また最小2乗法による回帰補正を行わな
い場合は、数8及び数18を用いる場合と数22及び数
30を用いる場合では結果は同じである。
【0135】<第2の実施例>図15は、本発明に係る
第2の実施例である通信用アレーアンテナの自動ビーム
捕捉追尾装置の受信部の一部を示すブロック図である。
この第2の実施例の装置においては、隣り合う2つのア
ンテナ素子系統でペアを組み、それらの間の直交ベース
バンド信号で互いに同相となるように振幅位相差補正を
行った後、それぞれ2つのアンテナ素子系統間での同相
合成(すなわち、最大比合成)を行い、その出力の間で
再びそれぞれペアを組んで振幅位相差補正と同相合成
(最大比合成)を行う。これを繰り返すことにより、最
終的に全てのアンテナ素子で受信される信号を最大比同
相合成したアレーアンテナの出力が1つだけ得られ、そ
の結果、アレーアンテナは、到来信号ビームに対する捕
捉追尾を行う。振幅位相差補正及び同相合成に要する演
算量は、実質的に第1の実施例のそれと同じである。こ
こで、最大比合成又は最大比同相合成とは、得られる受
信信号対雑音電力比が最大となるように同相合成するこ
とである。
【0136】図15の構成は、当該装置が9個の準同期
検波回路QD−1乃至QD−9を備えるときの構成であ
って、これら準同期検波回路QD−1乃至QD−9より
後段でありかつ復調器5よりも前段の部分を示してい
る。
【0137】図15に示すように、準同期検波回路QD
−1から出力されたアンテナ素子A1に関する直交ベー
スバンド信号I1,Q1は同相合成器81及び振幅位相差
補正回路PCA−1に入力され、準同期検波回路QD−
2から出力されたアンテナ素子A2に関する直交ベース
バンド信号I2,Q2は振幅位相差補正回路PCA−1に
入力される。同様にして、準同期検波回路QD−3から
出力されたアンテナ素子A3に関する直交ベースバンド
信号I3,Q3は同相合成器82及び振幅位相差補正回路
PCA−2に入力され、準同期検波回路QD−4から出
力されたアンテナ素子A4に関する直交ベースバンド信
号I4,Q4は振幅位相差補正回路PCA−2に入力され
る。また、準同期検波回路QD−5から出力されたアン
テナ素子A5に関する直交ベースバンド信号I5,Q5
同相合成器83及び振幅位相差補正回路PCA−3に入
力され、準同期検波回路QD−6から出力されたアンテ
ナ素子A6に関する直交ベースバンド信号I6,Q6は振
幅位相差補正回路PCA−3に入力される。さらに、準
同期検波回路QD−7から出力されたアンテナ素子A7
に関する直交ベースバンド信号I7,Q7は同相合成器8
4及び振幅位相差補正回路PCA−4に入力され、準同
期検波回路QD−8から出力されたアンテナ素子A8に
関する直交ベースバンド信号I8,Q8は振幅位相差補正
回路PCA−4に入力される。またさらに、準同期検波
回路QD−9から出力されたアンテナ素子A9に関する
直交ベースバンド信号I9,Q9は振幅位相差補正回路P
CA−5に入力される。
【0138】振幅位相差補正回路PCA−1は、準同期
検波回路QD−1から入力されたアンテナ素子A1に関
する直交ベースバンド信号I1,Q1及び隣接するアンテ
ナ素子A2に関する直交ベースバンド信号I2,Q2及び
雑音除去のための所定のフィルタを用いて隣接アンテナ
素子間の2つの受信信号の同相化のための変換行列要素
(数22の変換行列の要素)を計算し、計算された変換
行列要素を含む変換行列(数22)に基づいて、アンテ
ナ素子A1,A2のベースバンド信号が同相になるよう
に位相差補正(移相)し、かつ第1の実施例の振幅補正
部45と同様に、上記計算した受信信号強度に比例した
増幅利得で重み付けを行うことによって振幅位相補正処
理を実行し、当該処理後のベースバンド信号を同相合成
器81に出力する。同相合成器81は、アンテナ素子A
1に関する直交ベースバンド信号I1,Q1と、振幅位相
差補正回路PCA−1から出力される直交ベースバンド
信号とを各チャンネル毎に同相合成して同相合成器86
及び振幅位相差補正回路PCA−6に出力する。なお、
同相合成器81乃至88はすべて、入力される2対のベ
ースバンド信号を各チャンネル毎に同相合成する。
【0139】振幅位相差補正回路PCA−2は、準同期
検波回路QD−3から入力されたアンテナ素子A3に関
する直交ベースバンド信号I3,Q3及び隣接するアンテ
ナ素子A4に関する直交ベースバンド信号I4,Q4を用
いて、振幅位相差補正回路PCA−1と同様に振幅位相
補正処理を実行し、当該処理後のベースバンド信号を同
相合成器82に出力する。同相合成器82は、アンテナ
素子A3に関する直交ベースバンド信号I3,Q3と、振
幅位相差補正回路PCA−2から出力される直交ベース
バンド信号とを同相合成して振幅位相差補正回路PCA
−6に出力する。
【0140】振幅位相差補正回路PCA−3は、準同期
検波回路QD−5から入力されたアンテナ素子A5に関
する直交ベースバンド信号I5,Q5及び隣接するアンテ
ナ素子A6に関する直交ベースバンド信号I6,Q6を用
いて、振幅位相差補正回路PCA−1と同様に振幅位相
補正処理を実行し、当該処理後のベースバンド信号を同
相合成器83に出力する。同相合成器83は、アンテナ
素子A5に関する直交ベースバンド信号I5,Q5と、振
幅位相差補正回路PCA−3から出力される直交ベース
バンド信号とを同相合成して同相合成器87及び振幅位
相差補正回路PCA−7に出力する。
【0141】振幅位相差補正回路PCA−4は、準同期
検波回路QD−7から入力されたアンテナ素子A7に関
する直交ベースバンド信号I7,Q7及び隣接するアンテ
ナ素子A8に関する直交ベースバンド信号I8,Q8を用
いて、振幅位相差補正回路PCA−1と同様に振幅位相
補正処理を実行し、当該処理後のベースバンド信号を同
相合成器84に出力する。同相合成器84は、アンテナ
素子A7に関する直交ベースバンド信号I7,Q7と、振
幅位相差補正回路PCA−4から出力される直交ベース
バンド信号とを同相合成して同相合成器85及び振幅位
相差補正回路PCA−5に出力する。
【0142】振幅位相差補正回路PCA−5は、同相合
成器84から出力される直交ベースバンド信号と、準同
期検波回路QD−9から入力されたアンテナ素子A9に
関する直交ベースバンド信号I9,Q9とを用いて、振幅
位相差補正回路PCA−1と同様に振幅位相補正処理を
実行し、当該処理後のベースバンド信号を同相合成器8
5に出力する。同相合成器85は、同相合成器84から
出力される直交ベースバンド信号と、振幅位相差補正回
路PCA−5から出力される直交ベースバンド信号とを
同相合成して振幅位相差補正回路PCA−7に出力す
る。
【0143】振幅位相差補正回路PCA−6は、同相合
成器81から出力される直交ベースバンド信号と、同相
合成器82から出力される直交ベースバンド信号とを用
いて、振幅位相差補正回路PCA−1と同様に振幅位相
補正処理を実行し、当該処理後のベースバンド信号を同
相合成器86に出力する。同相合成器86は、同相合成
器81から出力される直交ベースバンド信号と、振幅位
相差補正回路PCA−6から出力される直交ベースバン
ド信号とを同相合成して同相合成器88及び振幅位相差
補正回路PCA−8に出力する。
【0144】振幅位相差補正回路PCA−7は、同相合
成器83から出力される直交ベースバンド信号と、同相
合成器85から出力される直交ベースバンド信号とを用
いて、振幅位相差補正回路PCA−1と同様に振幅位相
補正処理を実行し、当該処理後のベースバンド信号を同
相合成器87に出力する。同相合成器87は、同相合成
器83から出力される直交ベースバンド信号と、振幅位
相差補正回路PCA−7から出力される直交ベースバン
ド信号とを同相合成して振幅位相差補正回路PCA−8
に出力する。
【0145】振幅位相差補正回路PCA−8は、同相合
成器86から出力される直交ベースバンド信号と、同相
合成器87から出力される直交ベースバンド信号とを用
いて、振幅位相差補正回路PCA−1と同様に振幅位相
補正処理を実行し、当該処理後のベースバンド信号を同
相合成器88に出力する。同相合成器88は、同相合成
器86から出力される直交ベースバンド信号と、振幅位
相差補正回路PCA−8から出力される直交ベースバン
ド信号とを同相合成して復調器5に出力する。ここで、
上記同相合成器88から出力される直交ベースバンド信
号は、図1の第1の実施例における同相合成器4から出
力される直交ベースバンド信号に対応し、すべてのアン
テナ素子に関するすべての直交ベースバンド信号に基づ
いて振幅位相差補正処理が実行されて得られた直交ベー
スバンド信号である。
【0146】図16は、図15の振幅位相差補正回路P
CA−s(s=1,2,…,8)のブロック図である。
この第2の実施例の図16の振幅位相差補正回路PCA
−sは、第1の実施例の図3の振幅位相差補正回路PC
−iに比較して以下の点が異なる。 (1)位相差推定部40aは、2つのアンテナ素子i及
びjに関する直交ベースバンド信号Ii,Qi及びIj
jに基づいて2つのアンテナ素子i,jで受信された
受信信号を同相化するための雑音除去された変換行列要
素(数22の変換行列の要素)を計算し、計算した変換
行列要素を含む変換行列を位相差補正部44aに出力す
る。 (2)位相差補正部44aは、位相差補正部40aから
入力される変換行列に基づいて遅延バッファ43から入
力される直交ベースバンド信号を移相することによって
位相差を補正して振幅補正部45に出力する。 (3)加算器41及び最小2乗回帰補正部42を設けな
い。なお、遅延バッファ43と振幅補正部45とは第1
の実施例と同様に動作する。
【0147】従って、図15の振幅位相差補正回路PC
A−sは、準同期検波回路QD−iから入力されたアン
テナ素子Aiに関する直交ベースバンド信号Ii,Qi
び隣接するアンテナ素子Ajに関する直交ベースバンド
信号Ij,Qj及び雑音除去のための所定のフィルタを用
いて隣接アンテナ素子間の2つの受信信号の同相化のた
めの変換行列要素(数22の変換行列の要素)を計算
し、計算した変換行列要素を含む変換行列に基づいてア
ンテナ素子Ai,Ajの2つのベースバンド信号が同相
になるように位相差補正し、すなわち移相し、かつ第1
の実施例の振幅補正部45と同様に、上記計算した受信
信号強度に比例した増幅利得で重み付けを行うことによ
って振幅位相補正処理を実行し、当該処理後のベースバ
ンド信号Ici,Qciを同相合成器(81乃至88の1
つ)に出力する。
【0148】以上の第2の実施例の振幅位相差補正回路
PCA−sにおいて、図15の振幅位相差補正回路PC
A−1乃至PCA−8において、同相化のための変換行
列を用いる変換演算を数22及び数30を用いて行うよ
うに構成した場合、図16の位相差補正部44aと振幅
補正部45とを一体化することができる。この一体化さ
れた構成では、同相化のための位相差補正と振幅補正を
同時に行うことができ、これによって、アレーアンテナ
1によって受信された複数の受信信号を最大比合成しか
つ振幅補正して、合成された1つの受信信号を出力する
ことができる。また、第2の実施例の変形例として、第
1の実施例の処理と同様に、以下のように構成してもよ
い。位相差推定部40aは、2つのアンテナ素子i及び
jに関する直交ベースバンド信号Ii,Qi及びIj,Qj
に基づいて2つのアンテナ素子i,jで受信された受信
信号の瞬時位相差δi,jを数7を用いて推定し、かつ雑
音除去して、雑音除去後の推定位相差δci,j(数8参
照)を位相差補正部44aに出力する。次いで、位相差
補正部44aは、位相差補正部40aから入力されるδ
i,jに基づいて遅延バッファ43から入力される直交
ベースバンド信号を当該推定位相差δci,jだけ移相す
ることによって位相差を補正して振幅補正部45に出力
する。
【0149】第2の実施例の利点は、第1の実施例に比
較して以下の通りである。第1の実施例においては、全
ての隣接アンテナ素子系統間における位相差を積算する
ことにより、ある基準アンテナに対する各アンテナ素子
系統における位相を計算し、最後にまとめて最大比同相
合成するため、一部受信レベルの低いまたは不具合のあ
るアンテナ素子があった場合にそのアンテナ素子に係わ
る位相推定ができなくなるだけでなく、他のアンテナ素
子系統における位相推定にも影響を及ぼしてしまう場合
がある。これに対して、第2の実施例では、隣接アンテ
ナ素子間の位相差を積算することなく先にその2素子系
統間で最大比同相合成を行ってしまうため、仮に一部受
信レベルの低いまたは不具合のあるアンテナ素子があっ
たとしても、このことが他のアンテナ素子系統における
同相合成に影響を及ぼすことを防止することができる。
このため、第2の実施例は第1の実施例に比較してアン
テナ素子及びそれに接続される回路装置の故障等に強い
といえる。ただし、第1の実施例においては、位相差補
正が全てのアンテナ素子系統で並列処理できるのに対
し、第2の実施例では、ほぼlog2(アンテナ素子
数)程度の回数だけ直列処理する必要があり、結果とし
て演算時間が長くなる。
【0150】<実施例3>図16は本発明に係る第3の
実施例の自動ビーム捕捉追尾装置の受信部の一部を示す
ブロック図である。この第3の実施例においては、各ア
ンテナ素子の受信信号を2次元の高速フーリエ変換(F
FT)又は離散フーリエ変換(DFT)によるマルチビ
ーム形成回路90に入力し、得られた複数M個のビーム
信号BE−1乃至BE−Mの中から、ビーム選択回路9
1により信号強度すなわちビーム電界値の二乗和の最も
大きいビーム信号から信号強度が大きい順番に、所定の
複数L個のビーム信号BES−1乃至BES−Lを選択
した後、それら複数のビーム信号BES−1乃至BES
−Lの間で振幅位相差補正回路PCA−1乃至PCA−
(L−1)によって振幅位相差補正処理を行い、そして
同相合成器92によって同相合成(最大比合成)を行
う。その結果として、アレーアンテナは到来ビームに対
する捕捉追尾を行うことを特徴としている。
【0151】図16において、マルチビーム形成回路9
0は、各準同期検波回路QD−1乃至QD−Nからの受
信直交ベースバンド信号Ii,Qi(i=1,2,…,
N)と、希望波を所定の放射角度の範囲で受信できるよ
うに予め決められた形成すべき所定の複数M個のビーム
信号の各主ビームの方向を表わす方向ベクトルdmと、
受信信号の受信周波数frとに基づいて、複数M個のビ
ームからなるマルチビームの各ビーム電界値EIm及び
EQm(m=1,2,…,M)を演算して、ビーム電界
値EIm及びEQmを有するビーム信号をビーム選択回路
91に出力する。すなわち、希望波の到来方向に対応
し、形成すべきマルチビームの各ビームの複数M個の方
向が予め決められ、これらの方向は所定の原点から見た
ときの方向ベクトルd1,d2,…,dM(以下、代表し
て符号dmを付す。)で表される。ここで、Mは、アレ
ーアンテナ1を用いて希望波を受信することができるよ
うに設定される方向ベクトルdmの数であって、好まし
くは4以上であってかつアンテナ素子A1乃至ANの数
N以下の数である。また、アレーアンテナ1の各アンテ
ナ素子A1乃至Anの位置ベクトルr1,r2,…,rN
(以下、代表して符号rnを付す。)が上記所定の原点
から見たときの方向ベクトルとして予め決められる。そ
して、マルチビーム形成回路90は次の数32及び数3
3を用いて、それぞれ合成電界で表された上記各方向ベ
クトルdnに対応する複数2N個のビーム電界値EIn
びEQnを演算して、ビーム電界値EIn及びEQnを有
するビーム信号をビーム選択回路91に出力する。
【0152】
【数32】
【数33】 ここで、
【数34】amn=−(2π・fr/c)・(dm・rn
【0153】ここで、cは光速であり、(dm・rn)は
方向ベクトルdmと位置ベクトルrnとの内積である。従
って、位相amnはスカラー量である。
【0154】次いで、ビーム選択回路91は、マルチビ
ーム形成回路90から出力されるビーム信号BE−1乃
至BE−Mの各複数M個のビーム電界値EIm及びEQm
の二乗和EIm 2+EQm 2(m=1,2,…,M)を計算
して、当該ビーム電界値の二乗和の最も大きいビーム信
号から大きい順番に、より大きなビーム電界値の二乗和
を有する所定の複数L個のビーム信号BES−1乃至B
ES−Lを選択した後、それら複数のビーム信号BES
−1乃至BES−Lを同相合成器92及び(L−1)個
の振幅位相差補正回路PCA−1乃至PCA−(L−
1)に出力する。ここで、Lは上記複数M以下の自然数
であって予め決められる。なお、ビーム選択回路91
は、受信信号のレベルが極めて低くS/Nの劣悪な受信
信号を除去するために設けられる。また、上記の演算に
おいては、ビーム電界値の二乗和を計算しているが、本
発明はこれに限らず、ビーム電界値の絶対値に対応する
ビーム電界値の二乗和の平方根を計算するようにしても
よい。
【0155】基準のビーム信号となる最大のビーム電界
値の二乗和を有するビーム信号BES−1の直交ベース
バンド信号は同相合成器92及び振幅位相差補正回路P
CA−1に入力され、2番目に大きなビーム電界値の二
乗和を有するビーム信号BES−2の直交ベースバンド
信号は振幅位相差補正回路PCA−1に入力され、3番
目に大きなビーム電界値の二乗和を有するビーム信号B
ES−3の直交ベースバンド信号は振幅位相差補正回路
PCA−2に入力され、以下同様にして、L番目に大き
なビーム電界値の二乗和を有するビーム信号BES−L
の直交ベースバンド信号は振幅位相差補正回路PCA−
(L−1)に入力される。ここで、振幅位相差補正回路
PCA−s(s=1,2,…,L−1)は第2の実施例
における図16の振幅位相差補正回路PCA−sと同様
に構成される。
【0156】第3の実施例において、振幅位相差補正回
路PCA−1は、基準の最大ビーム信号BES−1の直
交ベースバンド信号及び雑音除去のための所定のフィル
タを用いてこれら2つのビーム信号を同相化するための
変換行列要素を計算し、計算した変換行列要素を含む変
換行列に基づいてこれら2つのビーム信号のベースバン
ド信号が同相となるように位相差補正し、すなわち移相
し、かつ第1の実施例の振幅補正部45と同様に、上記
計算した受信信号強度に比例した増幅利得で重み付けを
行うことによって振幅位相補正処理を実行し、当該処理
後のベースバンド信号を同相合成器92に出力する。ま
た、振幅位相差補正回路PCA−2は、基準の最大ビー
ム信号BES−1の直交ベースバンド信号とビーム信号
BES−3の直交ベースバンド信号とを用いて、振幅位
相差補正回路PCA−1と同様に、振幅位相差補正処理
を実行して、当該処理後のベースバンド信号を同相合成
器92に出力する。以下、同様にして、振幅位相差補正
回路PCA−(L−1)は、基準の最大ビーム信号BE
S−1の直交ベースバンド信号とビーム信号BES−L
の直交ベースバンド信号とを用いて、振幅位相差補正回
路PCA−1と同様に、振幅位相差補正処理を実行し
て、当該処理後のベースバンド信号を同相合成器92に
出力する。同相合成器92は、入力される複数L個のベ
ースバンド信号を各チャンネル毎に同相合成して、復調
器5に出力する。
【0157】第3の実施例においては、最も信号強度の
大きいビーム信号の位相に他の全ての選択されたビーム
信号の位相を合わせる構成となっている。すなわち、最
も信号強度の大きいビーム信号を基準の受信信号として
用いて、これを基準として他の選択されたビーム信号の
位相を補正している。この第3の実施例では、振幅位相
差補正及び同相合成の演算はそれぞれ、「(選択したビ
ーム数L)−1」回ずつで済むが、マルチビーム形成回
路90及びビーム選択回路91を追加する必要がある。
【0158】以上の第3の実施例の振幅位相差補正回路
PCA−sにおいて、図17の振幅位相差補正回路PC
A−1乃至PCA−(L−1)において、同相化のため
の変換行列を用いる変換演算を数22及び数30を用い
て行うように構成した場合、図16の位相差補正部44
aと振幅補正部45とを一体化することができる。この
一体化された構成では、同相化のための位相差補正と振
幅補正を同時に行うことができ、これによって、アレー
アンテナ1によって受信された複数の受信信号を最大比
合成しかつ振幅補正して、合成された1つの受信信号を
出力することができる。また、第3の実施例の変形例と
して、第1の実施例の処理と同様に、以下のように構成
してもよい。位相差推定部40aは、2つのアンテナ素
子i及びjに関する直交ベースバンド信号Ii,Qi及び
j,Qjに基づいて2つのアンテナ素子i,jで受信さ
れた受信信号の瞬時位相差δi,jを数7を用いて推定
し、かつ雑音除去して、雑音除去後の推定位相差δci,
j(数8参照)を位相差補正部44aに出力する。次い
で、位相差補正部44aは、位相差補正部40aから入
力されるδci,jに基づいて遅延バッファ43から入力
される直交ベースバンド信号を当該推定位相差δci,j
だけ移相することによって位相差を補正して振幅補正部
45に出力する。
【0159】第3の実施例の利点は、第1及び第2の実
施例に比較して以下の通りである。第1及び第2の実施
例ではアレーアンテナを構成するアンテナ素子の数が増
えるほど1素子当りの受信信号対雑音電力比が小さくな
り、位相差補正の精度が劣化するためアンテナ素子数に
は上限があるのに対し、第3の実施例ではマルチビーム
形成回路90及びビーム選択回路91により受信信号対
雑音電力比の高いビームを形成しておいてから振幅位相
差補正を行うため、各アンテナ素子毎の受信信号対雑音
電力比が低くても位相差補正の精度への影響はなく、原
理的にアンテナ素子数の上限がないことである。また、
強い干渉波等が別の方向から到来した場合、第1及び第
2の実施例ではそれらも全て合成しようとするため、合
成受信信号が歪みを受けたり指向性が乱されたりする
が、第3の実施例ではビーム選択によりこれらをある程
度空間的に分離するため、これら干渉波の影響を受けに
くい。ただし、第1及び第2の実施例では全てのアンテ
ナ素子から入力される受信信号を有効に使って、常に到
来ビームの方向が最大利得になるようにビーム形成を行
うため、到来信号ビーム方向が変化する場合でも最大利
得を保持したままで追尾動作を行うのに対し、第3の実
施例では選択するビーム数が少ないとビーム選択を行う
時点で電力の損失があり、到来信号ビームの方向が変化
するとその方向によって利得に起伏が生じるという問題
がある。
【0160】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、所
定の配置形状で近接して並置された複数のアンテナ素子
からなるアレーアンテナを制御するためのアレーアンテ
ナの制御方法において、上記アレーアンテナの各アンテ
ナ素子でそれぞれ受信された複数の受信信号をそれぞれ
共通の局部発振信号を用いて互いに直交する各2つの直
交ベースバンド信号に変換し、上記複数のアンテナ素子
のうち各2つのアンテナ素子間の受信信号の同相化のた
めの変換行列をそれぞれ、互いに直交する所定の第1の
軸と第2の軸とを用いて、上記各2つのアンテナ素子間
の受信信号の位相差の正弦値と各振幅値の積に比例する
上記第2の軸上の第2のデータと上記各2つのアンテナ
素子間の受信信号の位相差の余弦値と各振幅値の積に比
例する上記第1の軸上の第1のデータとを用いた2×2
の変換行列で表し、上記変換された各2つの直交ベース
バンド信号に基づいて上記第1のデータと上記第2のデ
ータとを計算し、上記計算された第1のデータと第2の
データとをそれぞれ所定の伝達関数を有する雑音抑圧用
フィルタに通過させてろ波させた後、上記ろ波された第
1のデータと上記ろ波された第2のデータとに基づいて
上記変換行列の要素を計算し、上記計算された変換行列
の要素を含む変換行列を用いて、上記各2つのアンテナ
素子間の受信信号を同相化し、上記同相化された複数の
受信信号を同相合成して受信信号を出力する。
【0161】従って、本発明は、以下の特有の効果を有
する。 (1)第2の従来例のようにフィードバックループを含
まないため、1つのアンテナ素子当りの受信搬送波電力
対雑音電力比C/Nが比較的低い場合においても、特別
な方向センサや相手局の位置情報等を用いることなく無
線信号の到来信号ビームを自動的かつ高速に捕捉するこ
とができ、障害物等による信号ビームの瞬断が発生して
も失うデータを最小限に抑えることができる。また、パ
ケット通信などバーストモードの通信方式においてもプ
リアンブル長を短くすることができる。さらに、例えば
通信データで変調された受信信号を直接利用することが
できるため、位相制御を行うための特別なトレーニング
信号や参照信号を必要とせず、システム構成を簡単化す
ることができる。 (2)第2の従来例のようにフィードバックループを含
まないため、1つのアンテナ素子当りの搬送波電力対雑
音電力比C/Nが比較的低い場合でしかも到来信号ビー
ム方向が高速に変化する場合においても位相スリップを
発生することがなく、また第1の従来例のように方位セ
ンサを持たないため周囲の磁力線の乱れなどによる外乱
の影響や追尾誤差の蓄積などもなく、無線信号の到来信
号ビームを高精度かつ安定に追尾することができ、例え
ば移動中における通信品質を高めることができる。ま
た、自局が移動する場合のみでなく、相手局が移動する
場合でも相手局の位置に関する特別な情報なしに追尾す
ることができる。さらに、パケット通信などバーストモ
ードの通信方式の場合、トレーニング信号(プリアンブ
ル)を利用する追尾方式ではバースト途中での到来ビー
ム方向の変化には追従することができないが、本制御装
置では例えば通信データで変調された受信信号を直接利
用することができるため、バースト途中においてもリア
ルタイムで追従可能である。
【0162】また、上記アレーアンテナの配置形状に基
づいて、上記計算された補正位相量を上記配置形状の面
に回帰させるように上記計算された補正位相量を回帰補
正し、上記回帰補正された各補正位相量に基づいて上記
複数の受信信号を上記各補正位相量だけ移相したので、
アレーアンテナの空間的な情報を有効に利用することが
できるため、アンテナ素子数が多い場合に問題となる1
つのアンテナ素子当たりの搬送波電力対雑音電力比C/
Nの低下の影響を抑えることができ、追尾特性及び通信
品質の劣化を防ぐことができる。
【0163】さらに、上記複数の受信信号を同相合成し
て受信信号を出力するときに、上記計算された変換行列
の要素を含む変換行列を用いて上記複数の信号のうちの
各2つの受信信号のうちの1つの受信信号を他方の受信
信号に同相となるように変換し、上記変換しない受信信
号と上記変換した受信信号との組である各2つの受信信
号を同相合成し、上記計算、変換及び同相合成の処理を
上記同相合成後の受信信号が1つになるまで繰り返すこ
とにより、同相合成された1つの受信信号を出力する。
すなわち、隣接アンテナ素子間の位相差を積算すること
なく先にその2素子系統間で同相合成を行ってしまうた
め、仮に一部受信レベルの低いまたは不具合のあるアン
テナ素子があったとしても、このことが他のアンテナ素
子系統における同相合成に影響を及ぼすことを防止する
ことができる。このため、アンテナ素子及びそれに接続
される回路装置の故障等に強いといえる。
【0164】また、上記変換された各2つの直交ベース
バンド信号に基づいて上記第1のデータと上記第2のデ
ータとを計算する直前に、上記アレーアンテナの各アン
テナ素子でそれぞれ受信された複数の受信信号と、希望
波を所定の放射角度の範囲で受信できるように予め決め
られた形成すべき所定の複数個のビームの各主ビームの
方向と、上記受信信号の受信周波数とに基づいて、上記
複数個のビーム電界値を演算して上記各ビーム電界値を
それぞれ有する複数のビーム信号を出力し、上記出力し
た複数のビーム信号の中で最大のビーム電界値を有する
ビーム信号を含むより大きなビーム電界値を有する所定
数のビーム信号を選択し、上記最大のビーム電界値を有
するビーム信号を基準の受信信号とし、上記計算された
変換行列の要素を含む変換行列を用いて上記基準の受信
信号に他の選択された複数の受信信号を同相化し、上記
複数の受信信号を同相合成して受信信号を出力する。す
なわち、マルチビーム形成及びビーム選択により受信信
号対雑音電力比の高いビーム信号を形成しておいてから
位相差の補正を行うため、各アンテナ素子毎の受信信号
対雑音電力比が低くても位相差の補正の精度への影響は
なく、原理的にアンテナ素子数の上限がないことであ
る。また、強い干渉波等が別の方向から到来した場合、
ビーム選択によりこれらをある程度空間的に分離するた
め、これら干渉波の影響を受けにくいという利点があ
る。
【0165】さらに、上記同相合成する直前に、上記複
数の受信信号の信号レベルにそれぞれ比例する複数の利
得でそれぞれ上記複数の受信信号を増幅することによっ
て振幅補正又は自動的な振幅補正がなされるので、信号
品質の劣化した受信信号の同相合成における寄与率が下
がるため、障害物等によるシャドウイングや建物等から
の反射によるフェージングなどにより各アンテナ素子間
で受信信号強度に差が生じても、同相合成後の信号対雑
音電力比の低下を抑えることができ、通信品質の劣化を
防ぐことができる。
【0166】また、上記第1のデータと上記第2のデー
タを直接に上記変換行列の要素として表して上記変換行
列の要素を計算する。もしくは、さらに、上記計算した
変換行列の要素を含む変換行列を用いて上記複数の受信
信号のうちの所定の1つの受信信号を除く他の複数の受
信信号を上記所定の1つの受信信号に同相化し、上記所
定の1つの受信信号と上記同相化された複数の受信信号
とを同相合成して受信信号を出力する。これによって、
同相化するときの用いる変換行列の要素の計算が極めて
簡単となって、回路構成が簡単となり、当該制御装置を
小型・軽量化することができる。
【0167】さらに、送信信号を複数の送信信号に同相
分配し、上記複数の送信信号を、上記計算された各補正
位相量又は上記回帰補正された各補正位相量だけ移相し
てそれぞれ上記複数のアンテナ素子から送信するので、
自動的に送信ビームを到来ビームの方向に向けることが
可能であるため、送信アンテナ用ビーム形成装置を簡単
に構成できる。
【0168】さらには、本発明は以下の特有の効果を有
する。 (1)アンテナ素子の配列間隔が等間隔か非等間隔か、
又はアンテナ面が平面か曲面かに関わらず上記動作が可
能であるため、アンテナ素子の配置の自由度が大きく移
動体の形状に合わせたアレーアンテナの構成が可能であ
る。 (2)以上の捕捉追尾はすべて受信信号のディジタル信
号処理などの信号処理によって行うため、アンテナ素子
数分のマイクロ波移相器や捕捉追尾のためのセンサ類も
しくは機械駆動のためのモーター等が不要となり、当該
制御装置を小型化かつ低価格化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1の実施例である通信用アレ
ーアンテナの自動ビーム捕捉追尾装置の受信部を示すブ
ロック図である。
【図2】 図1の自動ビーム捕捉追尾装置の送信部のブ
ロック図である。
【図3】 図1の振幅位相差補正回路のブロック図であ
る。
【図4】 図3の位相差推定部に含まれるトランスバー
サルフィルタのブロック図である。
【図5】 (a)はアレーアンテナの各アンテナ素子の
ための第1の方法における補正位相量の計算の順番を示
す各アンテナ素子の正面図であり、(b)はアレーアン
テナの各アンテナ素子のための第2の方法における補正
位相量の計算の順番を示す各アンテナ素子の正面図であ
る。
【図6】 アレーアンテナの各アンテナ素子のための第
3の方法における補正位相量の計算の順番を示す各アン
テナ素子の正面図である。
【図7】 到来ビームと各アンテナ素子との関係を示す
概要図及び各アンテナ素子の位置と位相量との関係を示
すグラフである。
【図8】 図1の自動ビーム捕捉追尾装置において到来
信号ビーム方向を90度/秒のビーム回転速度で回転し
たときの信号到来方向のアンテナ相対利得の時間変化
を、Iチャンネルの復調ベースバンド信号とともに示す
グラフである。
【図9】 図8と同一の条件のもとでのビーム捕捉時に
おけるアンテナパターンの時間変化を示すグラフであ
る。
【図10】 図8と同一の条件のもとで、到来信号ビー
ム方向を90度/秒のビーム回転速度で回転したときの
アンテナパターンの変化を示すグラフである。
【図11】 図1の自動ビーム捕捉追尾装置においてバ
ッファサイズBuffをパラメータとしたときの搬送波
電力対雑音電力比C/Nに対するビーム捕捉時間に対応
する捕捉までの通算サンプリング回数を示すグラフであ
る。
【図12】 図1の自動ビーム捕捉追尾装置においてバ
ッファサイズBuffをパラメータとしたときの搬送波
電力対雑音電力比C/Nに対する追尾特性を示すグラフ
である。
【図13】 図1の自動ビーム捕捉追尾装置において演
算周期Toprをパラメータにしたときの搬送波電力対
雑音電力比C/Nに対する精捕捉と粗捕捉のときの追尾
特性を示すグラフである。
【図14】 図1の自動ビーム捕捉追尾装置において演
算周期Toprをパラメータにしたときの搬送波電力対
雑音電力比C/Nに対する追尾特性を示すグラフであ
る。
【図15】 本発明に係る第2の実施例である通信用ア
レーアンテナの自動ビーム捕捉追尾装置の受信部の一部
を示すブロック図である。
【図16】 図15の振幅位相差補正回路のブロック図
である。
【図17】 本発明に係る第3の実施例である通信用ア
レーアンテナの自動ビーム捕捉追尾装置の受信部の一部
を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…アレーアンテナ、 2…低雑音増幅器、 3…ダウンコンバータ、 4…同相合成器、 5…復調器、 6…直交変調器、 7…アップコンータ、 8…送信電力増幅器、 9…同相分配器、 10…送信局部発振器、 11…第1局部発振器、 12…第2局部発振器、 40,40a…位相差推定部、 41…加算器、 42…最小2乗回帰補正部、 43…遅延バッファメモリ、 44,44a…位相差補正部、 45…振幅補正部、 51乃至56…遅延回路、 60乃至66…タップ係数乗算器、 70…加算器、 81乃至88…同相合成器、 90…マルチビーム形成回路、 91…ビーム選択回路、 92…同相合成器、 A1乃至AN…アンテナ素子、 CI−1乃至CI−N…サーキュレータ、 RM−1乃至RM−N…受信モジュール、 AD−1乃至AD−N…A/D変換器、 QD−1乃至QD−N…準同期検波回路、 PC−1乃至PC−N,PCA−1乃至PCA−8…振
幅位相差補正回路、 QM−1乃至QM−N…直交変調回路、 TM−1乃至TM−N…送信モジュール。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千葉 勇 京都府相楽郡精華町大字乾谷小字三平谷5 番地 株式会社エイ・ティ・アール光電波 通信研究所内 (72)発明者 田中 豊久 京都府相楽郡精華町大字乾谷小字三平谷5 番地 株式会社エイ・ティ・アール光電波 通信研究所内 (72)発明者 唐沢 好男 京都府相楽郡精華町大字乾谷小字三平谷5 番地 株式会社エイ・ティ・アール光電波 通信研究所内

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の配置形状で近接して並置された複
    数のアンテナ素子からなるアレーアンテナを制御するた
    めのアレーアンテナの制御方法において、上記アレーア
    ンテナの各アンテナ素子でそれぞれ受信された複数の受
    信信号をそれぞれ共通の局部発振信号を用いて互いに直
    交する各2つの直交ベースバンド信号に変換し、上記複
    数のアンテナ素子のうち各2つのアンテナ素子間の受信
    信号の同相化のための変換行列をそれぞれ、互いに直交
    する所定の第1の軸と第2の軸とを用いて、上記各2つ
    のアンテナ素子間の受信信号の位相差の正弦値と各振幅
    値の積に比例する上記第2の軸上の第2のデータと上記
    各2つのアンテナ素子間の受信信号の位相差の余弦値と
    各振幅値の積に比例する上記第1の軸上の第1のデータ
    とを用いた2×2の変換行列で表し、上記変換された各
    2つの直交ベースバンド信号に基づいて上記第1のデー
    タと上記第2のデータとを計算し、上記計算された第1
    のデータと第2のデータとをそれぞれ所定の伝達関数を
    有する雑音抑圧用フィルタに通過させてろ波させた後、
    上記ろ波された第1のデータと上記ろ波された第2のデ
    ータとに基づいて上記変換行列の要素を計算し、上記計
    算された変換行列の要素を含む変換行列を用いて、上記
    各2つのアンテナ素子間の受信信号を同相化し、上記同
    相化された複数の受信信号を同相合成して受信信号を出
    力することを特徴とするアレーアンテナの制御方法。
  2. 【請求項2】 上記複数の受信信号を同相合成して受信
    信号を出力するときに、上記ろ波された第1のデータと
    上記ろ波された第2のデータとに基づいて上記複数の受
    信信号が同相となるような各補正位相量を計算し、上記
    計算された各補正位相量に基づいて上記複数の受信信号
    を上記各補正位相量だけ移相し、上記移相された複数の
    受信信号を同相合成して受信信号を出力することを特徴
    とする請求項1記載のアレーアンテナの制御方法。
  3. 【請求項3】 上記アレーアンテナの配置形状に基づい
    て、上記計算された補正位相量を上記配置形状の面に回
    帰させるように上記計算された補正位相量を回帰補正
    し、上記回帰補正された各補正位相量に基づいて上記複
    数の受信信号を上記各補正位相量だけ移相することを特
    徴とする請求項2記載のアレーアンテナの制御方法。
  4. 【請求項4】 上記複数の受信信号を同相合成して受信
    信号を出力するときに、上記計算された変換行列の要素
    を含む変換行列を用いて上記複数の信号のうちの各2つ
    の受信信号のうちの1つの受信信号を他方の受信信号に
    同相となるように変換し、上記変換しない受信信号と上
    記変換した受信信号との組である各2つの受信信号を同
    相合成し、上記計算、変換及び同相合成の処理を上記同
    相合成後の受信信号が1つになるまで繰り返すことによ
    り、同相合成された1つの受信信号を出力することを特
    徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御方法。
  5. 【請求項5】 上記変換された各2つの直交ベースバン
    ド信号に基づいて上記第1のデータと上記第2のデータ
    とを計算する直前に、上記アレーアンテナの各アンテナ
    素子でそれぞれ受信された複数の受信信号と、希望波を
    所定の放射角度の範囲で受信できるように予め決められ
    た形成すべき所定の複数個のビームの各主ビームの方向
    と、上記受信信号の受信周波数とに基づいて、上記複数
    個のビーム電界値を演算して上記各ビーム電界値をそれ
    ぞれ有する複数のビーム信号を出力し、上記出力した複
    数のビーム信号の中で最大のビーム電界値を有するビー
    ム信号を含むより大きなビーム電界値を有する所定数の
    ビーム信号を選択し、上記最大のビーム電界値を有する
    ビーム信号を基準の受信信号とし、上記計算された変換
    行列の要素を含む変換行列を用いて上記基準の受信信号
    に他の選択された複数の受信信号を同相化し、上記複数
    の受信信号を同相合成して受信信号を出力することを特
    徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御方法。
  6. 【請求項6】 上記同相合成する直前に、上記複数の受
    信信号の信号レベルにそれぞれ比例する複数の利得でそ
    れぞれ上記複数の受信信号を増幅することによって振幅
    補正することを特徴とする請求項1乃至5のうちの1つ
    に記載のアレーアンテナの制御方法。
  7. 【請求項7】 上記第1のデータと上記第2のデータを
    直接に上記変換行列の要素として表して上記変換行列の
    要素を計算し、上記計算した変換行列の要素を含む変換
    行列を用いて上記複数の受信信号のうちの所定の1つの
    受信信号を除く他の複数の受信信号を上記所定の1つの
    受信信号に同相化し、上記所定の1つの受信信号と上記
    同相化された複数の受信信号とを同相合成して受信信号
    を出力することを特徴とする請求項1に記載のアレーア
    ンテナの制御方法。
  8. 【請求項8】 上記第1のデータと上記第2のデータを
    直接に上記変換行列の要素として表して上記変換行列の
    要素を計算し、上記計算した変換行列の要素を含む変換
    行列を用いて、各2つの受信信号を同相化することを特
    徴とする請求項4又は5に記載のアレーアンテナの制御
    方法。
  9. 【請求項9】 送信信号を複数の送信信号に同相分配
    し、上記複数の送信信号を、上記計算された各補正位相
    量又は上記回帰補正された各補正位相量だけ移相してそ
    れぞれ上記複数のアンテナ素子から送信することを特徴
    とする請求項1乃至8のうちの1つに記載のアレーアン
    テナの制御方法。
  10. 【請求項10】 所定の配置形状で近接して並置された
    複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナを制御する
    ためのアレーアンテナの制御装置において、 上記アレーアンテナの各アンテナ素子でそれぞれ受信さ
    れた複数の受信信号をそれぞれ共通の局部発振信号を用
    いて互いに直交する各2つの直交ベースバンド信号に変
    換する変換手段と、 所定の伝達関数を有する雑音抑圧用フィルタを備え、上
    記複数のアンテナ素子のうち各2つのアンテナ素子間の
    受信信号の同相化のための変換行列をそれぞれ、互いに
    直交する所定の第1の軸と第2の軸とを用いて、上記各
    2つのアンテナ素子間の受信信号の位相差の正弦値と各
    振幅値の積に比例する上記第2の軸上の第2のデータと
    上記各2つのアンテナ素子間の受信信号の位相差の余弦
    値と各振幅値の積に比例する上記第1の軸上の第1のデ
    ータとを用いた2×2の変換行列で表し、上記変換され
    た各2つの直交ベースバンド信号に基づいて上記第1の
    データと上記第2のデータとを計算し、上記計算された
    第1のデータと第2のデータとをそれぞれ所定の伝達関
    数を有する雑音抑圧用フィルタに通過させてろ波させた
    後、上記ろ波された第1のデータと上記ろ波された第2
    のデータとに基づいて上記変換行列の要素を計算し、上
    記計算された変換行列の要素を含む変換行列を用いて、
    上記各2つのアンテナ素子間の受信信号を同相化する同
    相化手段と、 上記同相化手段によって同相化された複数の受信信号を
    同相合成して受信信号を出力する合成手段とを備えたこ
    とを特徴とするアレーアンテナの制御装置。
  11. 【請求項11】 上記合成手段は、 上記同相化手段によってそれぞれろ波された第1のデー
    タと第2のデータとに基づいて上記複数の受信信号が同
    相となるような各補正位相量を計算する第1の計算手段
    と、 上記第1の計算手段によって計算された各補正位相量に
    基づいて上記複数の受信信号を上記各補正位相量だけ移
    相する第1の移相手段と、 上記第1の移相手段によって移相された複数の受信信号
    を同相合成して受信信号を出力する第1の同相合成手段
    とを備えたことを特徴とする請求項10記載のアレーア
    ンテナの制御装置。
  12. 【請求項12】 上記合成手段は、 上記アレーアンテナの配置形状に基づいて、上記計算手
    段によって計算された補正位相量を上記配置形状の面に
    回帰させるように上記計算された補正位相量を回帰補正
    する補正手段をさらに備え、 上記第1の移相手段は、上記補正手段によって回帰補正
    された各補正位相量に基づいて上記複数の受信信号を上
    記各補正位相量だけ移相することを特徴とする請求項1
    1記載のアレーアンテナの制御装置。
  13. 【請求項13】 上記合成手段は、 上記同相化手段によって計算された変換行列の要素を含
    む変換行列を用いて上記複数の信号のうちの各2つの受
    信信号のうちの1つの受信信号を他方の受信信号に同相
    となるように変換する同相変換手段と、 上記同相変換手段によって上記変換しない受信信号と上
    記変換した受信信号との組である各2つの受信信号を同
    相合成する第2の同相合成手段と、 上記同相変換手段と上記第2の同相合成手段との処理を
    上記同相合成後の受信信号が1つになるまで繰り返すこ
    とにより、同相合成された1つの受信信号を出力する制
    御手段とを備えたことを特徴とする請求項10記載のア
    レーアンテナの制御装置。
  14. 【請求項14】 上記アレーアンテナの制御装置は、 上記変換手段と上記同相化手段との間に設けられ、上記
    アレーアンテナの各アンテナ素子でそれぞれ受信された
    複数の受信信号と、希望波を所定の放射角度の範囲で受
    信できるように予め決められた形成すべき所定の複数個
    のビームの各主ビームの方向と、上記受信信号の受信周
    波数とに基づいて、上記複数個のビーム電界値を演算し
    て上記各ビーム電界値をそれぞれ有する複数のビーム信
    号を出力するマルチビーム形成手段と、 上記変換手段と上記同相化手段との間に設けられ、上記
    マルチビーム形成手段によって出力された複数のビーム
    信号の中で最大のビーム電界値を有するビーム信号を含
    むより大きなビーム電界値を有する所定数のビーム信号
    を選択し、上記最大のビーム電界値を有するビーム信号
    を基準の受信信号とするビーム選択手段とを備え、 上記同相化手段は、上記計算された変換行列の要素を含
    む変換行列を用いて上記基準の受信信号に他の選択され
    た複数の受信信号を同相化することを特徴とする請求項
    10記載のアレーアンテナの制御装置。
  15. 【請求項15】 上記アレーアンテナの制御装置は、 上記合成手段の直前の段に設けられ、上記複数の受信信
    号の信号レベルにそれぞれ比例する複数の利得でそれぞ
    れ上記複数の受信信号を増幅することによって振幅補正
    する振幅補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求
    項10乃至14のうちの1つに記載のアレーアンテナの
    制御装置。
  16. 【請求項16】 上記同相化手段は、上記第1のデータ
    と上記第2のデータを直接に上記変換行列の要素として
    表して上記変換行列の要素を計算し、上記計算した変換
    行列の要素を含む変換行列を用いて上記複数の受信信号
    のうちの所定の1つの受信信号を除く他の複数の受信信
    号を上記所定の1つの受信信号に同相化することを特徴
    とする請求項10に記載のアレーアンテナの制御装置。
  17. 【請求項17】 上記同相化手段は、上記第1のデータ
    と上記第2のデータを直接に上記変換行列の要素として
    表して上記変換行列の要素を計算し、上記計算した変換
    行列の要素を含む変換行列を用いて、各2つの受信信号
    を同相化することを特徴とする請求項13又は14に記
    載のアレーアンテナの制御装置。
  18. 【請求項18】 上記アレーアンテナの制御装置は、 送信信号を複数の送信信号に同相分配する分配手段と、 上記複数の送信信号を、上記計算手段によって計算され
    た各補正位相量又は上記補正手段によって回帰補正され
    た各補正位相量だけ移相する送信移相手段と、 上記送信移相手段によって移相された複数の送信信号を
    それぞれ上記複数のアンテナ素子から送信する送信手段
    とをさらに備えたことを特徴とする請求項10乃至17
    のうちの1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
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