JPH07148251A - 血液浄化用透析器の滅菌方法及び滅菌済み血液浄化用透析器 - Google Patents

血液浄化用透析器の滅菌方法及び滅菌済み血液浄化用透析器

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JPH07148251A
JPH07148251A JP29987593A JP29987593A JPH07148251A JP H07148251 A JPH07148251 A JP H07148251A JP 29987593 A JP29987593 A JP 29987593A JP 29987593 A JP29987593 A JP 29987593A JP H07148251 A JPH07148251 A JP H07148251A
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JP
Japan
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dialyzer
membrane
blood purification
blood
aqueous solution
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JP29987593A
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English (en)
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Kazutake Okamoto
かずたけ 岡本
Hitoshi Ono
仁 大野
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Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 膜を用いた血液浄化用透析器の透析・濾過性
能を低下させずに高圧蒸気滅菌処理を行う方法、並び
に、プライミング処理が容易な滅菌済みの膜を用いた血
液浄化用透析器を提供すること。 【構成】 膜を用いた血液浄化用透析器の滅菌方法であ
って、脱気した、水または人体に無害な物質の水溶液に
よって、前記膜を湿潤状態にする前処理工程と、前記湿
潤状態を保持した状態で高圧蒸気滅菌を行う滅菌工程と
からなることを特徴とする血液浄化用透析器の滅菌方
法、並びに、膜を用いた血液浄化用透析器であって、脱
気した、水または人体に無害な物質の水溶液によって、
前記膜が湿潤状態となっていることを特徴とする滅菌処
理済みの血液浄化用透析器。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は膜を用いた血液浄化用透
析器の滅菌処理方法、詳しくは血液浄化用透析器の内部
の膜の劣化を極力抑えることにより、透析器の性能を低
下させずに高圧蒸気滅菌処理を行う方法、並びに、使用
前のプライミング処理を極めて容易に行うことができ
る、滅菌処理済みの膜を用いた血液浄化用透析器に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように、血液の浄化処理を人工的
に行う医療器具として、いわゆる人工腎臓等の血液浄化
用透析器が知られている。すなわち、ここで言う血液浄
化用透析器とは、半透膜を介して血液と透析液を接触さ
せて、その濃度の差を利用して血液中の老廃物を透析液
に移行させたり、圧力勾配によって血液中の水分を除去
することを目的とする医療用具である。
【0003】一般的に血液浄化用透析器は製造段階では
菌による汚染の恐れがあるために、滅菌して使用者に供
され、使用者は必要な前処理(プライミングなど)を施
して使用する。現在、これらの血液浄化用透析器の滅菌
法として、ホルマリン滅菌法、エチレンオキサイドガス
等を用いたガス滅菌法、ガンマ線等の放射線滅菌法、高
圧蒸気滅菌法等が用いられている。しかし、ホルマリン
滅菌法及びガス滅菌法は、使用時に血液浄化用透析器内
に残存するガスや薬液等を完全に洗い流すことは困難
で、これらガスや薬液等が残留し、毒化して体内に注入
される危険性がある。また、放射線滅菌法は設備的、法
的な制約を伴うと共に、容器や膜素材を変性、分解さ
せ、その分解物等が血液中へ溶出される危険性がある。
【0004】上記のような事情から、クリーンで残留毒
性の心配のない、高圧蒸気による滅菌法が提案されてい
る。しかし、高圧蒸気滅菌法においても、容器や膜等が
高温、高圧の蒸気に暴露されることなどにより、容器の
変形・破損や、膜の種類によっては膜素材の劣化等を生
じることとなる。特に膜の劣化は、透析器の濾過性能の
低下と直接関係するため、それらを防止するための方策
が講じられている。
【0005】例えば、特公昭60−9818には生理食
塩水等の水溶液を充満した透析器本体に、水溶液の熱膨
張分を定量的に吸収する非膨張性液圧緩和管体を接続し
た人工臓器が記載され、当該人工臓器を蒸気滅菌した場
合、容器のひび割れ、破壊を生じず、滅菌後の後処理の
手間を省き、使用時に血液回路等との接続が容易に行え
る旨記載され、特公昭60−20016には蒸気滅菌時
の昇温及び降温速度を60℃〜滅菌温度の範囲では0.
05〜5℃/分とし、熱膨張速度を制御して蒸気滅菌す
ることにより、人工臓器の変形・破損を防止する方法が
記載されている。しかし、これらは内部の気体や液体の
熱膨張による容器の破損等に対する方策であり、膜の劣
化による透析器の濾過性能の低下を防止する方策につい
ては何等記載がない。
【0006】また、特公昭55−36340には透析器
内部を生理食塩水などにより密に満たし、各出入り口を
密封した後に蒸気滅菌することにより、使用時における
液体の流入叉は空気抜きの面倒や洗浄の手間をなくす方
法が記載され、特公昭59−46612には透析器の血
液口または透析液口に導管等により水溶液を接続した後
に蒸気滅菌し、次いで冷却し滅菌された水溶液を吸引充
填することにより、使用時における中空糸内の気泡の完
全除去と水溶液充填の手間をなくす方法が記載され、特
開平4−96760には血液の流入及び流出ポートに適
切な空間を設けることにより、中空糸膜を固定接着して
いる樹脂中のイソシアネートが、充填液である水と反応
した結果、生成する二酸化炭素の気泡が中空糸中に入る
ことにより、プライミング性の低下を抑制する方法が記
載されている。しかし、これらも主に使用時における水
溶液の充填や空気抜きの省略または簡略化に関する方策
であり、上記と同様に膜の劣化による透析器の濾過性能
の低下を防止する方策については何等記載がない。
【0007】高圧蒸気滅菌時の膜の劣化を防止する方策
としては、従来は膜にグリセリンを付着させ、膜構造を
保持する方法が採られていたが、滅菌済みの膜にグリセ
リンが残存し付着しているため、プライミングに大変手
間が掛かり、装置の準備処理に時間を要していた。その
ため、特開平2−218374では透析器内の中空糸膜
の全表面にグリセリンの代わりに食塩等の塩を付着させ
た後に蒸気滅菌することにより、滅菌時の膜の劣化を防
止する方法が記載されている。この方法によれば、膜の
劣化を充分に防止できる上に、膜への付着物が塩である
が故にプライミングが大変容易である旨記載されてい
る。しかし、膜に塩を付着させる方法によっても、プラ
イミングの際に、塩の除去洗浄は当然のこととして、気
泡の完全除去及び水溶液の充填等の作業はなお必要とさ
れる。
【0008】このように、高圧蒸気滅菌時に膜そのもの
の劣化を防止することにより透析器の性能を維持する方
法、並びに、使用時にプライミングを行う際に気泡の除
去等が容易に行える血液浄化用透析器で、満足できるも
のは未だ得られていないのが実状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、高圧蒸
気滅菌時に膜そのものの劣化を防止する方法及び使用時
にプライミングが容易に行える血液浄化用透析器を得る
ために鋭意検討した結果、透析容器内に充填した水溶液
中に残存する気泡や溶存する気体を極力少なくすると同
時に当該水溶液により膜を充分な湿潤状態とした後に、
蒸気滅菌を行うことにより、高温・高圧蒸気による膜の
配列の局所的な乱れや膜の素材の部分的な劣化が抑えら
れ、血液浄化用透析器の透析効率等が維持されることを
見い出した。また、上記方法により滅菌された血液浄化
用透析器は、膜が気泡や溶存気体を含まない水溶液によ
り湿潤されているため、使用時のプライミングが非常に
容易実施できることを見い出した。
【0010】本発明者らは、かかる知見に基づき更に重
ねて検討した結果、本発明を完成するに至ったものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、膜
を用いた血液浄化用透析器の滅菌方法であって、脱気し
た、水または人体に無害な物質の水溶液によって、前記
膜を湿潤状態にする前処理工程と、前記湿潤状態を保持
した状態で高圧蒸気滅菌を行う滅菌工程とからなること
を特徴とする血液浄化用透析器の滅菌方法、並びに、膜
を用いた血液浄化用透析器であって、脱気した、水また
は人体に無害な物質の水溶液によって、前記膜が湿潤状
態となっていることを特徴とする滅菌処理済みの血液浄
化用透析器を提供するものである。
【0012】本発明における膜を用いた血液浄化用透析
器とは、半透膜を介して血液と透析液を接触させて、そ
の濃度の差を利用して血液中の老廃物を透析液に移行さ
せたり、圧力勾配によって血液中の水分を除去すること
を目的とする医療用具をいい、いわゆる人工腎臓に限定
されるものではなく、人工肺臓、人工肝臓、人工膵臓等
を含む。
【0013】本発明において用いられる膜としては、セ
ルロース、セルロースエステル、ポリアクリロニトリ
ル、ポリビニルアルコール、芳香族系ポリアミド、ポリ
カーボネイト、ポリスルホン叉はポリエステル等からな
る中空糸膜叉は平膜等が挙げれるが、上記に何等限定さ
れるものではない。
【0014】本発明において脱気した水叉は水溶液は、
例えば減圧法、超音波法、沸騰法叉はこれらを組み合わ
せた方法等により得られるが、その方法は何等上記に限
定されるものではない。なお、本発明における脱気した
水溶液の脱気の程度は、例えば通常の空気雰囲気下にお
いて脱気した場合、25℃における溶存酸素濃度が約1
mg/l以下となることをいうが、脱気の程度は何等こ
れに限定されるものではなく、水溶液中に残存する気泡
や溶存する気体は少ないほど好ましい。これは、高圧蒸
気滅菌時に残存する気泡や溶存する気体が少ないほど、
膜の劣化が抑制されるからである。
【0015】本発明における人体に無害な物質の水溶液
としては、例えばエタノール等のアルコール類、塩化ナ
トリウム等の無機塩、クエン酸、安息香酸等の有機化合
物等の適当量を水に混和叉は溶解したもの等が挙げられ
るが、これらは上記に何等限定されるものではない。ま
た、これらの物質は特に必要な場合を除いては、むしろ
添加する必要はなく、水溶液として無菌水または生理食
塩液を用いるのが好ましい。使用時にプライミングを行
う際に不要物質の除去が容易に行え、叉はその必要がな
くなるからである。
【0016】本発明における湿潤状態とは、少なくとも
膜の孔内に水溶液が完全に充填され、膜の孔内に気泡が
全く残存していない状態をいう。透析器内、特に膜の孔
内に気泡が存在した場合、これらの気泡により膜の劣化
が生じるためである。
【0017】本発明において使用する高圧蒸気滅菌法と
は、原則として日本薬局法に規定される高圧蒸気滅菌法
をいうが、いわゆる高圧蒸気を用いる滅菌法でこれらと
同様の効果が期待できるものを含む。なお、日本薬局法
には例えば115℃で30分間、121℃で20分間、
または126℃で15分間、飽和水蒸気中で加熱するこ
とにより微生物を殺菌する方法、80〜100℃の水中
または流通水蒸気中で24時間毎に30〜60分間、3
〜5回の加熱を行う間欠滅菌法等が規定されている。
【0018】
【実施例】以下実施例を挙げて、本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに何等限定されるものではな
い。なお、クリアランス、透水性能(以下、UFR)、
透析液側の圧力損失は、ダイアライザー性能評価基準
(日本人工臓器学会 昭和57.9.12発行)のシン
グルパス方式に従って測定した。また、透析液側の圧力
損失は、蒸気滅菌による、中空糸膜の透析器内での配列
の乱れ(均一性)を評価するために設けた。
【0019】[実施例1]内径200μm、膜厚25μ
m、長さ約20cmのセルローストリアセテート中空糸
膜7000本からなる人工腎臓モジュ−ル(膜面積約
0.9m2 )について、45℃で加温しながらアスピレ
−タ−を用いて30分間、減圧脱気して得られた脱気水
(溶存酸素濃度:0.5mg/l)をモジュ−ルの血液
側、透析液側から気泡の入らないように充填した。この
モジュールに121℃、20分間の高圧蒸気滅菌を行っ
た後、血液ポンプを用いて、150ml/分の流速で、
垂直に立てたモジュールの下部血液側から、上部血液側
に純水を流してプラスチックハンマー等で軽く叩きなが
ら、目視で気泡が出なくなるまで洗浄脱泡を行った。そ
の後、クリアランス、UFR、圧力損失を測定した。結
果を表1に示す。
【0020】[実施例2]実施例1と同型のモジュ−ル
について、室温で30分間、超音波にて脱気して得られ
た生理食塩脱気水(溶存酸素濃度:0.8mg/l)を
モジュ−ルの血液側、透析液側から気泡の入らないよう
に充填した。以下、実施例1と同様に処理し、測定し
た。結果を表1に示す。
【0021】[比較例1]実施例1と同型のモジュ−ル
について、特に脱気処理を施していない純水(溶存酸素
濃度:8.3mg/l)をモジュ−ルの血液側、透析液
側から気泡の入らないように充填した。以下、実施例1
と同様に処理し、測定した。結果を表1に示す。
【0022】[比較例2]実施例1と同型のモジュ−ル
について、特に脱気処理を施していない10重量%塩化
ナトリウム水溶液をモジュ−ルの血液側、透析液側から
気泡の入らないように充填した。以下、実施例1と同様
に処理し、測定した。結果を表1に示す。
【0023】[比較例3]実施例1と同型のモジュ−ル
について、特に脱気処理を施していない20重量%グリ
セリン水溶液をモジュ−ルの血液側、透析液側から気泡
の入らないように充填した。以下、実施例1と同様に処
理し、測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】上記で説明したように本発明は、膜を用
いた血液浄化用透析器の蒸気滅菌法において、膜の劣化
を極力抑えることにより、透析器の濾過性能等を維持す
る方法、並びにプライミングが極めて容易な滅菌済みの
血液浄化用透析器を提供するものである。すなわち、本
発明は高圧蒸気滅菌前に脱気した水溶液で膜を湿潤状態
とするため、蒸気滅菌時に透析器内に残存する気泡や溶
存する気体による膜の劣化を抑えることができ、滅菌前
と比較し殆ど濾過性能等を変化させずに、蒸気滅菌を行
うことができるという特徴を有する。さらに、上記方法
により滅菌された血液浄化用透析器は、膜が脱気された
水溶液により湿潤状態となっているため、特に水溶液と
して無菌水や生理食塩水を用いた場合には、使用時のプ
ライミングにおいて、不要物質の除去が不要であり、ま
た水溶液の充填及び脱気が極めて容易であるという特徴
を有する。このように、本発明の滅菌法によれば、殆ど
濾過性能等を低下させることなく膜を用いた血液浄化用
透析器の高圧蒸気滅菌が可能であり、また本発明の滅菌
済みの膜を用いた血液浄化用透析器は、使用時のプライ
ミングが非常に容易に行うことができる。よって、本発
明の効果は極めて大である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年2月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 血液浄化用透析器の滅菌方法及び滅菌
済み血液浄化用透析器
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は膜を用いた血液浄化用透
析器の滅菌処理方法、詳しくは血液浄化用透析器の内部
の膜の劣化を極力抑えることにより、透析器の性能を低
下させずに高圧蒸気滅菌処理を行う方法、並びに、使用
前のプライミング処理を極めて容易に行うことができ
る、滅菌処理済みの膜を用いた血液浄化用透析器に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように、血液の浄化処理を人工的
に行う医療器具として、いわゆる人工腎臓等の血液浄化
用透析器が知られている。すなわち、ここで言う血液浄
化用透析器とは、半透膜を介して血液と透析液を接触さ
せて、その濃度の差を利用して血液中の老廃物を透析液
に移行させたり、圧力勾配によって血液中の水分を除去
することを目的とする医療用具である。
【0003】一般的に血液浄化用透析器は製造段階では
菌による汚染の恐れがあるために、滅菌して使用者に供
され、使用者は必要な前処理(プライミングなど)を施
して使用する。現在、これらの血液浄化用透析器の滅菌
法として、ホルマリン滅菌法、エチレンオキサイドガス
等を用いたガス滅菌法、ガンマ線等の放射線滅菌法、高
圧蒸気滅菌法等が用いられている。しかし、ホルマリン
滅菌法及びガス滅菌法は、使用時に血液浄化用透析器内
に残存するガスや薬液等を完全に洗い流すことは困難
で、これらガスや薬液等が残留し、毒化して体内に注入
される危険性がある。また、放射線滅菌法は設備的、法
的な制約を伴うと共に、容器や膜素材を変性、分解さ
せ、その分解物等が血液中へ溶出される危険性がある。
【0004】上記のような事情から、クリーンで残留毒
性の心配のない、高圧蒸気による滅菌法が提案されてい
る。しかし、高圧蒸気滅菌法においても、容器や膜等が
高温、高圧の蒸気に暴露されることなどにより、容器の
変形・破損や、膜の種類によっては膜素材の劣化等を生
じることとなる。特に膜の劣化は、透析器の濾過性能の
低下と直接関係するため、それらを防止するための方策
が講じられている。
【0005】例えば、特公昭60−9818には生理食
塩水等の水溶液を充満した透析器本体に、水溶液の熱膨
張分を定量的に吸収する非膨張性液圧緩和管体を接続し
た人工臓器が記載され、当該人工臓器を蒸気滅菌した場
合、容器のひび割れ、破壊を生じず、滅菌後の後処理の
手間を省き、使用時に血液回路等との接続が容易に行え
る旨記載され、特公昭60−20016には蒸気滅菌時
の昇温及び降温速度を60℃〜滅菌温度の範囲では0.
05〜5℃/分とし、熱膨張速度を制御して蒸気滅菌す
ることにより、人工臓器の変形・破損を防止する方法が
記載されている。しかし、これらは内部の気体や液体の
熱膨張による容器の破損等に対する方策であり、膜の劣
化による透析器の濾過性能の低下を防止する方策につい
ては何等記載がない。
【0006】また、特公昭55−36340には透析器
内部を生理食塩水などにより密に満たし、各出入り口を
密封した後に蒸気滅菌することにより、使用時における
液体の流入叉は空気抜きの面倒や洗浄の手間をなくす方
法が記載され、特公昭59−46612には透析器の血
液口または透析液口に導管等により水溶液を接続した後
に蒸気滅菌し、次いで冷却し滅菌された水溶液を吸引充
填することにより、使用時における中空糸内の気泡の完
全除去と水溶液充填の手間をなくす方法が記載され、特
開平4−96760には血液の流入及び流出ポートに適
切な空間を設けることにより、中空糸膜を固定接着して
いる樹脂中のイソシアネートが、充填液である水と反応
した結果、生成する二酸化炭素の気泡が中空糸中に入る
ことにより、プライミング性の低下を抑制する方法が記
載されている。しかし、これらも主に使用時における水
溶液の充填や空気抜きの省略または簡略化に関する方策
であり、上記と同様に膜の劣化による透析器の濾過性能
の低下を防止する方策については何等記載がない。
【0007】高圧蒸気滅菌時の膜の劣化を防止する方策
としては、従来は膜にグリセリンを付着させ、膜構造を
保持する方法が採られていたが、滅菌済みの膜にグリセ
リンが残存し付着しているため、プライミングに大変手
間が掛かり、装置の準備処理に時間を要していた。その
ため、特開平2−218374では透析器内の中空糸膜
の全表面にグリセリンの代わりに食塩等の塩を付着させ
た後に蒸気滅菌することにより、滅菌時の膜の劣化を防
止する方法が記載されている。この方法によれば、膜の
劣化を充分に防止できる上に、膜への付着物が塩である
が故にプライミングが大変容易である旨記載されてい
る。しかし、膜に塩を付着させる方法によっても、プラ
イミングの際に、塩の除去洗浄は当然のこととして、気
泡の完全除去及び水溶液の充填等の作業はなお必要とさ
れる。
【0008】このように、高圧蒸気滅菌時に膜そのもの
の劣化を防止することにより透析器の性能を維持する方
法、並びに、使用時にプライミングを行う際に気泡の除
去等が容易に行える血液浄化用透析器で、満足できるも
のは未だ得られていないのが実状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、高圧蒸
気滅菌時に膜そのものの劣化を防止する方法及び使用時
にプライミングが容易に行える血液浄化用透析器を得る
ために鋭意検討した結果、透析容器内に充填した水溶液
中に残存する気泡や溶存する気体を極力少なくすると同
時に当該水溶液により膜を充分な湿潤状態とした後に、
蒸気滅菌を行うことにより、高温・高圧蒸気による膜の
配列の局所的な乱れや膜の素材の部分的な劣化が抑えら
れ、血液浄化用透析器の透析効率等が維持されることを
見い出した。また、上記方法により滅菌された血液浄化
用透析器は、膜が気泡や溶存気体を含まない水溶液によ
り湿潤されているため、使用時のプライミングが非常に
容易に実施できることを見い出した。
【0010】本発明者らは、かかる知見に基づき更に重
ねて検討した結果、本発明を完成するに至ったものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、膜
を用いた血液浄化用透析器の滅菌方法であって、脱気し
た、水または人体に無害な物質の水溶液によって、前記
膜を湿潤状態にする前処理工程と、前記湿潤状態を保持
した状態で高圧蒸気滅菌を行う滅菌工程とからなること
を特徴とする血液浄化用透析器の滅菌方法、並びに、膜
を用いた血液浄化用透析器であって、脱気した、水また
は人体に無害な物質の水溶液によって、前記膜が湿潤状
態となっていることを特徴とする滅菌処理済みの血液浄
化用透析器を提供するものである。
【0012】本発明における膜を用いた血液浄化用透析
器とは、半透膜を介して血液と透析液を接触させて、そ
の濃度の差を利用して血液中の老廃物を透析液に移行さ
せたり、圧力勾配によって血液中の水分を除去すること
を目的とする医療用具をいい、いわゆる人工腎臓に限定
されるものではなく、人工肺臓、人工肝臓、人工膵臓等
を含む。
【0013】本発明において用いられる膜としては、セ
ルロース、セルロースエステル、ポリアクリロニトリ
ル、ポリビニルアルコール、芳香族系ポリアミド、ポリ
カーボネイト、ポリスルホン叉はポリエステル等からな
る中空糸膜叉は平膜等が挙げられるが、上記に何等限定
されるものではない。
【0014】本発明において脱気した水叉は水溶液は、
例えば減圧法、超音波法、沸騰法叉はこれらを組み合わ
せた方法等により得られるが、その方法は何等上記に限
定されるものではない。なお、本発明における脱気した
水溶液の脱気の程度は、例えば通常の空気雰囲気下にお
いて脱気した場合、25℃における溶存酸素濃度が約1
mg/l以下となることをいうが、脱気の程度は何等こ
れに限定されるものではなく、水溶液中に残存する気泡
や溶存する気体は少ないほど好ましい。これは、高圧蒸
気滅菌時に残存する気泡や溶存する気体が少ないほど、
膜の劣化が抑制されるからである。
【0015】本発明における人体に無害な物質の水溶液
としては、例えばエタノール等のアルコール類、塩化ナ
トリウム等の無機塩、クエン酸、安息香酸等の有機化合
物等の適当量を水に混和叉は溶解したもの等が挙げられ
るが、これらは上記に何等限定されるものではない。ま
た、これらの物質は特に必要な場合を除いては、むしろ
添加する必要はなく、水溶液として無菌水または生理食
塩液を用いるのが好ましい。使用時にプライミングを行
う際に不要物質の除去が容易に行え、叉はその必要がな
くなるからである。
【0016】本発明における湿潤状態とは、少なくとも
膜の孔内に水溶液が完全に充填され、膜の孔内に気泡が
全く残存していない状態をいう。透析器内、特に膜の孔
内に気泡が存在した場合、これらの気泡により膜の劣化
が生じるためである。
【0017】本発明において使用する高圧蒸気滅菌法と
は、原則として日本薬局法に規定される高圧蒸気滅菌法
をいうが、いわゆる高圧蒸気を用いる滅菌法でこれらと
同様の効果が期待できるものを含む。なお、日本薬局法
には例えば115℃で30分間、121℃で20分間、
または126℃で15分間、飽和水蒸気中で加熱するこ
とにより微生物を殺菌する方法、80〜100℃の水中
または流通水蒸気中で24時間毎に30〜60分間、3
〜5回の加熱を行う間欠滅菌法等が規定されている。
【0018】
【実施例】以下実施例を挙げて、本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに何等限定されるものではな
い。なお、クリアランス、透水性能(以下、UFR)、
透析液側の圧力損失は、ダイアライザー性能評価基準
(日本人工臓器学会 昭和57.9.12発行)のシン
グルパス方式に従って測定した。また、透析液側の圧力
損失は、蒸気滅菌による、中空糸膜の透析器内での配列
の乱れ(均一性)を評価するために設けた。
【0019】[実施例1]内径200μm、膜厚25μ
m、長さ約20cmのセルローストリアセテート中空糸
膜7000本からなる人工腎臓モジュ−ル(膜面積約
0.9m2 )につて、45℃で加温しながらアスピレ−
タ−を用いて30分間、減圧脱気して得られた脱気水
(溶存酸素濃度:0.5mg/l)をモジュ−ルの血液
側、透析液側から気泡の入らないように充填した。この
モジュールに121℃、20分間の高圧蒸気滅菌を行っ
た後、血液ポンプを用いて、150ml/分の流速で、
垂直に立てたモジュールの下部血液側から、上部血液側
に純水を流してプラスチックハンマー等で軽く叩きなが
ら、目視で気泡が出なくなるまで洗浄脱泡を行った。そ
の後、クリアランス、UFR、圧力損失を測定した。結
果を表1に示す。
【0020】[実施例2]実施例1と同型のモジュ−ル
について、室温で30分間、アスピレーターを用いて減
圧しつつ、超音波にて脱気して得られた生理食塩脱気水
(溶存酸素濃度:0.8mg/l)をモジュ−ルの血液
側、透析液側から気泡の入らないように充填した。以
下、実施例1と同様に処理し、測定した。結果を表1に
示す。
【0021】[比較例1]実施例1と同型のモジュ−ル
について、特に脱気処理を施していない純水(溶存酸素
濃度:8.3mg/l)をモジュ−ルの血液側、透析液
側から気泡の入らないように充填した。以下、実施例1
と同様に処理し、測定した。結果を表1に示す。
【0022】[比較例2]実施例1と同型のモジュ−ル
について、特に脱気処理を施していない10重量%塩化
ナトリウム水溶液をモジュ−ルの血液側、透析液側から
気泡の入らないように充填した。以下、実施例1と同様
に処理し、測定した。結果を表1に示す。
【0023】[比較例3]実施例1と同型のモジュ−ル
について、特に脱気処理を施していない20重量%グリ
セリン水溶液をモジュ−ルの血液側、透析液側から気泡
の入らないように充填した。以下、実施例1と同様に処
理し、測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】上記で説明したように本発明は、膜を用
いた血液浄化用透析器の蒸気滅菌法において、膜の劣化
を極力抑えることにより、透析器の濾過性能等を維持す
る方法、並びにプライミングが極めて容易な滅菌済みの
血液浄化用透析器を提供するものである。すなわち、本
発明は高圧蒸気滅菌前に脱気した水溶液で膜を湿潤状態
とするため、蒸気滅菌時に透析器内に残存する気泡や溶
存する気体による膜の劣化を抑えることができ、滅菌前
と比較し殆ど濾過性能等を変化させずに、蒸気滅菌を行
うことができるという特徴を有する。さらに、上記方法
により滅菌された血液浄化用透析器は、膜が脱気された
水溶液により湿潤状態となっているため、特に水溶液と
して無菌水や生理食塩水を用いた場合には、使用時のプ
ライミングにおいて、不要物質の除去が不要であり、ま
た水溶液の充填及び脱気が極めて容易であるという特徴
を有する。このように、本発明の滅菌法によれば、殆ど
濾過性能等を低下させることなく膜を用いた血液浄化用
透析器の高圧蒸気滅菌が可能であり、また本発明の滅菌
済みの膜を用いた血液浄化用透析器は、使用時のプライ
ミングが非常に容易に行うことができる。よって、本発
明の効果は極めて大である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 膜を用いた血液浄化用透析器の滅菌方法
    であって、脱気した、水または人体に無害な物質の水溶
    液によって、前記膜を湿潤状態にする前処理工程と、前
    記湿潤状態を保持した状態で高圧蒸気滅菌を行う滅菌工
    程とからなることを特徴とする血液浄化用透析器の滅菌
    方法。
  2. 【請求項2】 膜を用いた血液浄化用透析器であって、
    脱気した、水または人体に無害な物質の水溶液によっ
    て、前記膜が湿潤状態となっていることを特徴とする滅
    菌処理済みの血液浄化用透析器。
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