JPH07132140A - 医療用補綴材料 - Google Patents

医療用補綴材料

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JPH07132140A
JPH07132140A JP5279625A JP27962593A JPH07132140A JP H07132140 A JPH07132140 A JP H07132140A JP 5279625 A JP5279625 A JP 5279625A JP 27962593 A JP27962593 A JP 27962593A JP H07132140 A JPH07132140 A JP H07132140A
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JP
Japan
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cellulose
hydroxyapatite
microbial cellulose
calcium phosphate
microbial
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JP5279625A
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English (en)
Inventor
Yoshiko Suwa
佳子 諏訪
Hajime Saito
肇 斎藤
Shigeo Niwa
滋郎 丹羽
Yoshiro Sato
義郎 佐藤
Shigeru Yamanaka
茂 山中
Eiji Ono
栄治 小野
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KYORITSU YOGYO GENRYO KK
S T K CERAMICS KENKYUSHO KK
Ajinomoto Co Inc
STK Ceramics Laboratory Corp
Original Assignee
KYORITSU YOGYO GENRYO KK
S T K CERAMICS KENKYUSHO KK
Ajinomoto Co Inc
STK Ceramics Laboratory Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 生体適合性や細胞親和性に優れ、また周辺の
他臓器組織との癒着を惹き起こさない、可撓性に富む、
高靱性、高強度の医療用補綴材料を提供する。 【構成】 微生物が産生する微生物セルロースにて構成
されたセルロース基材の一方の面に、リン酸カルシウム
系材料を固着、保持せしめる一方、かかるセルロース基
材の他方の面が、前記微生物セルロースのみにて構成さ
れるようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、医療用補綴材料、特に微生物の
産生するセルロース(微生物セルロース)とリン酸カル
シウム系材料からなる生体組織被覆材料に係り、更に詳
しくは病変または損傷のために切除、修復した腱組織や
硬組織等の生体組織の手術後の創傷部位を被覆して、周
辺組織との癒着を防止すると同時に、生体組織を保護
し、組織の新生を助けるための、生体親和性に優れた、
可撓性を有する医療用補綴材料に関するものである。
【0002】
【背景技術】従来から、人工皮膚、臓器被覆材、臓器包
接材、組織修復材等として、生体内に埋入されて、生体
の組織の保護や被覆、または組織の一部若しくは全部を
代替するための材料が、種々開発されて来ている。しか
して、それらの材料は、何れも、多価アルコール、天然
及び合成高分子、多糖類、動物タンパク等から構成され
るものであるために、生体内での適応性に関して、多く
の問題を内在するものであった。
【0003】例えば、生体吸収性材料は、生体内で溶解
し、その溶解によって分解した物質が生体毒性を与える
可能性がある。また、溶解しなくても、生体組織との間
の機械的刺激によって炎症反応を起こしたり、抗原抗体
反応を惹き起こす可能性がある。更に、周辺生体組織と
の癒着の可能性がある等の問題が内在しているのであ
る。特に、臓器被覆に用いる場合において、生体親和性
に優れた材料は、臓器の被覆後、周辺生体組織との間に
癒着を惹き起こし易い問題がある。そして、そのような
材料は、埋入材と臓器との間の固定には利点となるが、
それの周辺組織との癒着は、治療の後、臓器の自由な運
動を阻害し、機能回復訓練の妨げとなるのである。
【0004】また、生体硬組織の複雑損傷や関節手術後
の治癒までの保護被覆材として用いる場合や、腱の切断
部位の修復用被覆材として用いる場合のような、臓器の
保護被覆後も、そのまま体内で吸収される材料として使
用する場合には、被覆材料の可撓性、高強度、高靱性等
の機械的性質が要求されると共に、周辺組織との間に癒
着を生じさせないことが強く望まれている。治癒後の臓
器の自由な運動の阻害は、患者に大きな苦痛を強いるこ
とになるからである。しかして、従来から提案されてい
る材料は、何れも、そのような要求を充分に満たすもの
ではなかったのである。
【0005】このため、生体組織との癒着を伴わず、し
かも皮膚のように緩く生体組織と結合する、生体親和性
に優れた、高強度、高靱性の可撓性に富む被覆材の開発
が、強く望まれているのである。
【0006】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、上記した事情に
鑑みて為されたものあって、その課題とするところは、
生体適合性や細胞親和性に優れ、しかも周辺の他臓器組
織との癒着を惹き起こさない、可撓性に富む、高靱性、
高強度のリン酸カルシウム系材料で被覆された微生物セ
ルロースより成る医療用補綴材料を提供することにあ
る。
【0007】
【解決手段】そして、本発明は、かかる課題を解決する
ために、微生物が産生する微生物セルロースにて構成さ
れたセルロース基材の一方の面に、リン酸カルシウム系
材料を固着、保持せしめる一方、かかるセルロース基材
の他方の面が、前記微生物セルロースのみにて構成され
るようにしたことを特徴とする医療用補綴材料を、その
要旨とするものである。
【0008】なお、かかる本発明に従う医療用補綴材料
において、リン酸カルシウム系材料としては、Ca/P
モル比がそれぞれ1.5〜2.0の範囲内にある、α−
若しくはβ−リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタ
イトまたは炭酸含有ハイドロキシアパタイト、或いはそ
れらの複合混合物からなる粉末、顆粒状物または繊維状
物が、有利に用いられることとなる。
【0009】また、本発明において、セルロース基材の
一方の面に対するリン酸カルシウム系材料の固着保持
は、有利には、リン酸カルシウム系材料が、微生物セル
ロースのゾルと共に、セルロース基材の一方の面に適用
されることによって実現され、これにより、かかるリン
酸カルシウム系材料をより強固に固着保持せしめ得るの
である。
【0010】
【具体的構成・作用】ところで、かかる本発明に用いら
れる、微生物が産生するセルロースたる微生物セルロー
スは、既に、優れた生体組織代替材料であることが報告
されている。例えば、特開昭63−152601号公
報、特開平1−50815号公報、特開平3−1657
74号公報等には、微生物セルロースは、生体適合性が
高く、医療用パッド、人工皮膚、培養皮膚担体、細胞培
養用担体、口腔内添付材として、また腸管、食道、腹
壁、軟骨等の代替材料として使用することが出来ること
が示されており、それら用途への使用において、生体組
織との付着性が良好であることが特徴とされている。し
かし、そのような特徴は、周辺生体組織との癒着が問題
となるような場合においては、新たな問題を惹起して、
上述した材料を、そのまま用いることは出来ないのであ
る。例えば、切断された腱の修復の場合、腱の新生まで
の修復期間に生体組織との付着性の良い保護被覆材を用
いると、腱組織とは、生体親和性があると同時に、強固
に接着されることが必要であるが、それと周辺組織との
間に癒着を生じると、それは、回復後の機能回復訓練の
妨げとなるからである。
【0011】そこで、本発明者らが、生体親和性に優れ
ていると同時に、周辺組織との間に癒着を起こさせない
材料を開発すべく、鋭意検討した結果、リン酸カルシウ
ム系材料、特にハイドロキシアパタイトを、上記した微
生物セルロースからなるセルロース基材の片面にのみ固
着保持せしめ、一体的な被覆層を、その表面に形成する
ことによって、その目的を良好に達成することが出来る
ことを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0012】すなわち、リン酸カルシウム系材料、特に
ハイドロキシアパタイトは、凝固因子を吸収し、抗血栓
性があり、結合組織の増殖を抑制する等の優れた特質を
有する生体材料であり、この特徴を生かして、それを生
体親和性の良い微生物セルロースからなる基材(膜)上
に固着せしめて、その表面を被覆することにより、生体
適合性や細胞親和性に富み、且つ生体組織との癒着を惹
き起こさない、実用的な医療用補綴材料が実現され得た
のである。また、リン酸カルシウム系材料の中でも、α
−及びβ−リン酸三カルシウムは、ハイドロキシアパタ
イトと同様に、生体親和性に優れると共に、生体吸収性
に優れた材料であることが知られており、また炭酸含有
ハイドロキシアパタイトは、純粋なハイドロキシアパタ
イトよりも更に生体親和性に優れているものであって、
共に、本発明の目的に充分応え得る材料である。
【0013】そして、このような本発明に従って得られ
る医療用補綴材料としての新規な生体組織被覆材料、一
般に膜材料は、その一面が微生物セルロース層のみから
なり、他面はハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシ
ウム系材料を固着、被覆させた層よりなるものであっ
て、そのうちの微生物セルロースのみからなる側は、創
傷接触面に使用され、保護被覆して修復したい生体組
織、例えば切断されたアキレス腱を被覆し、創傷面と接
着させることにより、創傷面を保護固定し、創傷の早期
回復と細菌感染の防止に役立てられることとなる。一
方、ハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウム系材
料を被覆固着させた面は、周囲の臓器と接する側に面す
るように配されることにより、周辺組織との癒着を防止
し、結合組織の増殖や抗原抗体反応を抑制することが出
来る。この周辺組織との癒着が防止されることによっ
て、臓器の自由な運動が妨げられずに、創傷治癒後の機
能回復訓練期間を短縮させることが出来るのである。
【0014】なお、本発明で用いられるセルロース基材
は、一般に、薄膜状乃至はシート状形状を呈するもので
あり、またそれが円筒状等の形状とされたものであって
も、何等差し支えないが、そのようなセルロース基材を
与える微生物セルロースは、良く知られているように、
セルロース及びセルロースを主鎖としたヘテロ多糖を含
むもの、またはβ,α等のグルカンを含むものである。
ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分は、マン
ノース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、ア
ラビノース、ラムノース、ウロン酸等の六炭糖、五炭
糖、及び有機酸等である。これらの多糖が単一物質であ
る場合もあるし、2種以上の多糖が混在していても良
い。微生物セルロースは、上記のようなものであれば何
でも良いのである。
【0015】また、そのようなセルロースを生産する微
生物も良く知られているところであり、特に、限定はさ
れないが、その一例を挙げると、アセトバクター・アセ
チ・サブスピーシス・キシリナムATCC10821、
或いは同パストリアヌス、同ランセンス、サルシナ・ベ
ントリクリ、バクテリウム・キシロイデス、シュードモ
ナス属細菌、アグロバクテリウム属細菌、リゾビウム属
細菌等を利用することが出来る。
【0016】そして、セルロースの生成蓄積の為には、
上記の微生物を用いて、通常の細菌を培養する一般的な
方法に従えば良い。即ち、炭素源、窒素源、無機塩類、
その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄
養素を含有する通常の栄養培地を添加すれば良い。温度
については、20℃〜40℃に制御し、培養される。培
養方法としては静置培養が一般的であり、上記の培地に
上記の菌を摂取して、一日〜二ヵ月間培養すると、培養
液の表面に約90%以上の液体成分を含んだ、ゲル状を
した膜状の微生物セルロースが生成する。このようにし
て得られた微生物セルロースは、液体成分と共に、菌体
や培地成分をも含むので、希アルカリ、希酸、有機溶
媒、熱水、界面活性剤等を単独或いは混合して用いて、
洗浄を行なうことにより、体内に入れた場合に有害な抗
原性物質、発熱性物質等が除去される。
【0017】かくして得られるセルロースは、電子顕微
鏡観察によると、20〜50nmの繊維状セルロースが
複雑に絡み合った構造を有しており、その外観は、ゲル
状である。これを加熱、加圧、又は脱水することによ
り、薄膜となる。また、そのゲル状物を、一旦離解した
後、用いることも可能である。
【0018】本発明において、上記したセルロースゲル
は、乾燥した状態において、医療用補綴材料として各種
の用途に適用されることとなるが、そのような補綴材料
を構成するセルロース基材は、例えば、直径:約50m
m、厚さ:約1mm、重量:約4〜5g、エタノール中に
保存された円盤状の微生物セルロースゲルから作製され
る。このセルロースゲルは、半透明の弾力性に富む、丈
夫な寒天状のゲルであるが、乾燥後は、直径:約50m
m、厚さ:0.01〜0.02mm、重量:約0.05〜
0.06gの高強度、高靱性の半透明薄膜となり、下表
の如き機械的性質を示すものである。
【0019】
【0020】ところで、本発明に従う医療用補綴材料
は、所定のセルロース基材の一方の面にのみリン酸カル
シウム系材料を固着保持せしめ得る公知の各種の手法に
従って製造可能であるが、一般に、上記したセルロース
ゲルの膜乃至はシート状物をセルロース基材を与える材
料として用い、そのセルロースゲルの片面に所定のリン
酸カルシウム系材料を適用して保持せしめ、その後、乾
燥することによって、有利に得ることが可能である。
【0021】具体的には、本発明において、リン酸カル
シウム系材料としてハイドロキシアパタイトを用い、そ
れを片面にのみ被覆固着せしめた微生物セルロースシー
トを作製するには、有利には、次のようにして行なわれ
ることとなる。
【0022】先ず、上記の微生物セルロースからなるセ
ルロースゲルに、エタノール又は水で希釈したエタノー
ルを加えて、ミキサーでセルロース繊維を離解させ、セ
ルロースゾルを調製する。一方、リン酸カルシウム系材
料として、Ca/P=1.67のハイドロキシアパタイ
ト粉末を用いることとして、そのようなハイドロキシア
パタイト粉末を水酸化カルシウムとリン酸より湿式法に
よって合成する(特開平4−209711号公報参
照)。そして、その合成粉を、そのまま用いるか或いは
それを500℃〜1000℃、好ましくは500℃〜7
00℃で仮焼して、その取り扱い性を向上せしめた粉末
を用い、それを、水と共に、ポットミルで湿式粉砕し
て、粒径が0.1〜0.5μmのハイドロキシアパタイ
トスラリーとする。
【0023】そして、この得られたセルロースゾルとハ
イドロキシアパタイトスラリーの各一定量に、エタノー
ル若しくは水で希釈したエタノールを加えて、ミキサー
で混合し、混合コロイドゾルを得る。
【0024】一方、円盤状等の所定形状の微生物セルロ
ースゲルを用意し、それを吸引タイプのナイロン製メン
ブレンフィルター上に載せ、軽く吸引して、かかる微生
物セルロースゲルをフィルターに固定した後、上記で調
製された混合コロイドゾルの一定量を、該微生物セルロ
ースゲル上に均一に延抻せしめた後、超音波発生機内に
おいて一定時間超音波を照射せしめることにより、ハイ
ドロキシアパタイト層をセルロースゲル内に良く含浸せ
しめ、その後、水分を吸引分離する。
【0025】次いで、メンブレンから脱水ゲルを剥離し
て、3〜10kg/cm2 の圧力でプレスしながら、100
℃〜150℃程度に加熱し、脱水乾燥することにより、
片面にのみハイドロキシアパタイトを被覆固着せしめて
なるハイドロキシアパタイト担持微生物セルロースシー
トが作製されることとなるのである。
【0026】なお、かくして得られた微生物セルロース
シート(薄膜)に担持されたハイドロキシアパタイト
(粒子)は、微生物セルロース繊維と絡み合って微生物
セルロース薄膜に結合固着され、刃物で擦っても、容易
には剥離しないものである。これは、微生物セルロース
が正または負に帯電した有機種を有し、一方ハイドロキ
シアパタイトがCa2+イオン、OH- 基を有し、これら
の化学種とセルロース繊維との間に化学結合または水素
結合が生成されることによるものと考えられている。
【0027】なお、上記では、リン酸カルシウム系材料
として、ハイドロキシアパタイトが用いられているが、
それに代えて、α−若しくはβ−リン酸三カルシウムや
炭酸含有ハイドロキシアパタイト、更にはハイドロキシ
アパタイトを含むそれら成分の複合混合物等からなるも
のであっても、それらが何れもCa/Pモル比=1.5
〜2.0の範囲内のものであれば、ハイドロキシアパタ
イトと同様な効果を得ることが出来る。また、それらリ
ン酸カルシウム系材料は、粉末の他、顆粒状物であって
も、また繊維状物であっても、何等差し支えなく、その
サイズとしては、セルロース基材の一面に固着保持せし
められ得る限りにおいて、適宜の大きさとされることと
なるが、一般に1μm以下の大きさのものが好適に用い
られることとなる。
【0028】また、上述の如き補綴材料の製造に際し
て、前記セルロースゾルとリン酸カルシウム系材料のス
ラリーとを混合して得られる混合コロイドゾルに対し
て、最終製品(補綴材料)の補強や靱性の向上、親和性
の改善等を目的として、多糖類、多価アルコール、天然
及び合成高分子、タンパク質等を適宜に添加、配合せし
めたり、また同様な目的をもって、微生物セルロースゲ
ルに含浸せしめたりすることが出来る。特に、タンパク
質の場合において、微生物セルロースゲルをタンパク質
溶液に浸漬させるだけで、容易に吸着させることが出
来、例えばコラーゲンではトリス緩衝液を用いて、pH
7.6程度にすれば良く、またゼラチンの場合には、温
度を数℃に下げれば良い。また、上記した補綴材料の製
造手法においては、リン酸カルシウム系材料の有効な固
着保持を図るべく、それが、微生物セルロースのゾルと
共に、セルロース基材の一方の面に適用されているが、
適当な接着剤等を用いて、リン酸カルシウム系材料を微
生物セルロースゲル乃至はそれから得られるセルロース
基材の一方の面に固着保持せしめるようにすることも可
能である。
【0029】
【実施例】以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本
発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明
が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも
受けるものでないことは、言うまでもないところであ
る。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には
上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない
限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変
更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解さ
れるべきである。
【0030】実施例 1 エタノールに含浸せしめた厚さ:約1mm、直径:50mm
の円盤状の微生物セルロースゲル(重量:約4g、固形
分:0.59g)を、吸引タイプのナイロン製メンブレ
ンフィルター上に載せ、軽く吸引することよって、フィ
ルターに固定せしめた。
【0031】一方、上記と同じ微生物セルロースゲル
を、ホモミキサーを用いて10000rpmの回転数で
10分間攪拌することにより離解せしめ、セルロースゾ
ルを得た。また、公知の湿式法で得られたハイドロキシ
アパタイト微粉末(Ca/P=1.67)を700℃、
3時間の条件下に仮焼した後、ポットミルで6時間湿式
粉砕することにより、ハイドロキシアパタイトスラリー
(粒径:約0.19μm)を得た。そして、この得られ
たセルロースゾルとハイドロキシアパタイトスラリーと
を所定量秤取し、50%エタノール水溶液によって希釈
した後、ホモミキサーにて、10000rpmの回転数
で10分間、攪拌、混合せしめることにより、均一な混
合コロイドゾルを調製した。なお、この混合コロイドゾ
ル中のセルロース含有量は0.06g/100ml、ハ
イドロキシアパタイト含有量は0.6g/100mlで
あり、長時間放置しても、分離したり、沈殿を生じるこ
とのないコロイドゾルであった。
【0032】次いで、かかる混合コロイドゾルの5ml
を、前記ナイロン製メンブレンフィルター上に固定した
微生物セルロースゲルの上に載せた後、超音波振動機を
用いて30分間振動を与えて、コロイド層を充分に微生
物セルロースゲル中に含浸せしめた。その後、そのまま
吸引、濾過、脱水せしめ、更に約5kg/cm2 の圧力でプ
レス加圧した後、120℃の温度で5分間加熱、乾燥せ
しめることによって、片面にハイドロキシアパタイト被
覆層を固着、保持せしめた半透明のハイドロキシアパタ
イト被覆薄膜を得た。この薄膜の一面は、ハイドロキシ
アパタイトが強固に固着せしめられている一方、他面は
ハイドロキシアパタイトが存在せず、微生物セルロース
繊維の絡み合った層のみから構成されている。そして、
微生物セルロースを被覆したハイドロキシアパタイト微
粒子は、繊維と絡みあって強固に固着せしめられてお
り、ナイフで擦っても剥がれることはなかった。これ
は、微生物セルロースが正または負に帯電した有機基を
有する一方、ハイドロキシアパタイトがCa2+イオンや
OH- を有し、これらの化学種とセルロースとの間に化
学結合または水素結合が生成されていることによるもの
と考えられる。
【0033】以上のようにして作製された、ハイドロキ
シアパタイト被覆層を一面に有する微生物セルロース薄
膜を、その微生物セルロースのみの面がアキレス腱側と
なるように、兎のアキレス腱の周囲に埋入した。そし
て、3週間後に取り出し、腱を10%ホルムアルデヒド
で固定し、ヘマトキシリン−エオシン及びアザン染色を
行ない、TEM及び光顕観察を行なった。また、コント
ラストとして、ハイドロキシアパタイト被覆層の設けら
れていない微生物セルロースのみからなる薄膜を用い
て、同様な実験を行なった。
【0034】その結果、微生物セルロースのみの薄膜及
びハイドロキシアパタイト被覆層を片面に設けた薄膜の
何れにおいても、腱修復の程度には差が見られなかった
が、微生物セルロースのみの薄膜では、腱の周囲に結合
組織が認められたのに対し、ハイドロキシアパタイト被
覆層を有する薄膜にあっては、細胞浸潤が何等見られ
ず、結合組織の増殖が抑制されて、腱の可動性が保持さ
れていた。
【0035】実施例 2 実施例1において用いた微生物セルロースゲルにトリス
緩衝液を加えて、pH=7.6に制御し、これにコラー
ゲン(新田ゼラチン製セルマトリックス、Type 1
A)1mlを含浸せしめ、4℃で一夜放置した後、37
℃の温度下に10分間静置した。そして、この得られた
微生物セルロースゲルを、実施例1と同様にして、ナイ
ロン製メンブレンフィルターに載せて軽く吸引した後、
実施例1において調製された微生物セルロースとハイド
ロキシアパタイトの混合コロイドゾルの5mlを載せ
て、超音波振動機で30分間振動させた後、吸引濾過
し、更に5kg/cm2 の加圧下で120℃の温度に3分間
加熱することによって、コラーゲン含有ハイドロキシア
パタイトコーティング微生物セルロース薄膜を得た。
【0036】この得られたセルロース薄膜を用いて実施
例1と同様に実施した、兎のアキレス腱の周囲に埋入す
る臨床実験では、実施例1と同様の良好な結果を得た。
【0037】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従う医療用補綴材料は、微生物セルロース基材の表面
にリン酸カルシウム系材料を固着、被覆せしめ、保持さ
せてなる薄膜状の生体組織被覆材料であって、一方の面
がリン酸カルシウム系材料で被覆され、他方の面が微生
物セルロースからなり、生体適合性や細胞親和性に富む
と共に、周辺の他臓器組織との癒着を効果的に防止せし
め得る、高強度、高靱性の可撓性に富む被覆材料である
ところに、医療用材料としての大きな技術的意義を有す
るものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 諏訪 佳子 愛知県名古屋市港区築三町一丁目11番地 株式会社エス・ティー・ケー・セラミック ス研究所内 (72)発明者 斎藤 肇 愛知県愛知郡日進町東山7−1409 (72)発明者 丹羽 滋郎 愛知県愛知郡日進町五色園2−1213 (72)発明者 佐藤 義郎 愛知県名古屋市中川区尾頭橋2−19−3 (72)発明者 山中 茂 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の 素株式会社中央研究所内 (72)発明者 小野 栄治 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の 素株式会社中央研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物が産生する微生物セルロースにて
    構成されたセルロース基材の一方の面に、リン酸カルシ
    ウム系材料を固着、保持せしめる一方、かかるセルロー
    ス基材の他方の面が、前記微生物セルロースのみにて構
    成されるようにしたことを特徴とする医療用補綴材料。
  2. 【請求項2】 前記リン酸カルシウム系材料が、Ca/
    Pモル比がそれぞれ1.5〜2.0の範囲内にある、α
    −若しくはβ−リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパ
    タイトまたは炭酸含有ハイドロキシアパタイト、或いは
    それらの複合混合物からなる粉末、顆粒状物、または繊
    維状物である請求項1に記載の医療用補綴材料。
  3. 【請求項3】 前記リン酸カルシウム系材料が、前記微
    生物セルロースのゾルと共に、前記セルロース基材の一
    方の面に適用されて、固着保持せしめられている請求項
    1または2に記載の医療用補綴材料。
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