JPH07128469A - 高速炉の炉心 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】炉心燃料部が溶融燃料プール状態となっても即
発臨界以下にできる。 【構成】炉心燃料集合体１と、この炉心燃料集合体１の
外周に配置されるブランケット燃料集合体2aとからなる
高速炉の炉心において、ブランケット燃料集合体2aは炉
心燃料集合体１の炉心燃料部６の高さに相当する高さの
一部分に中間プレナム領域７を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は液体金属冷却用高速増殖
炉（以下高速炉と記す）に使用され、特に炉心構成要素
の構成、配置を改良した高速炉の炉心に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に高速炉の炉心は、図８に示すよう
に核分裂性物質を装荷した多数の炉心燃料集合体１と、
これらの燃料集合体１間に配置される制御棒集合体（図
示せず）と、多数の炉心燃料集合体１の外周に配置され
る複数のブランケット燃料集合体２と、このブランケッ
ト燃料集合体２の外周に配置される複数の中性子遮蔽体
３とから構成されている。

【０００３】炉心燃料集合体１は、ラッパ管（図示せ
ず）の内部に複数本の燃料要素を結束し、更にその燃料
要素は被覆管の内部に劣化ウラン燃料からなる上部軸ブ
ランケット部４と、下部軸ブランケット部５及び両者の
中間に配置される核分裂性物質と親物質の混合物である
炉心燃料部６が配置されている。

【０００４】つまり、炉心燃料集合体１は炉心の高さ方
向から上部軸ブランケット部４、炉心燃料部６および下
部軸ブランケット部５が順次配置された構造になってい
る。また、炉心燃料集合体１は熱除去のための冷却材と
して主に液体金属ナトリウムが使用され、この冷却材は
エントランスノズルから流入し燃料要素の間隙を流れ、
ハンドリングヘッドの流出孔から流出している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】通常、ナトリウムは異
常な温度上昇を生じることはないが、熱除去能力を喪失
する事象を想定すると、ナトリウムが定められた温度以
上に上昇し、長時間後に燃料と構造材から構成され高温
度のナトリウムが流れる炉心燃料集合体１は溶融する。

【０００６】溶融後の挙動は種々の形態が考えられる
が、臨界性の点では炉心燃料部６の炉心燃料のみが溶融
し、下部軸ブランケット部５の上部に円盤上に溶融した
状態が最も臨界性が高くなる。この溶融状態を一般に溶
融燃料プールと称している。

【０００７】溶融燃料プールは、厚くなるほど臨界性が
高くなる。しかし、炉心燃料集合体１の周囲に配置され
るブランケット燃料集合体２からなる径ブランケット部
は内部の径ブランケット燃料が低温で熱容量が大きいこ
とから溶融せず、溶融燃料プールの径方向の広がりは炉
心燃料部６の外周、即ち、下部軸ブランケット部５の上
面に制限される。

【０００８】ところで、この時の臨界度が即発臨界を超
過すると燃料は急激に出力上昇し、大きなエネルギを放
出する。これはプラントの安全設計上好ましくない。し
かし、高速炉では下部軸ブランケット５の上部に全ての
炉心燃料が溶融した溶融燃料プールが生じた場合、20＄
程度の超臨界となり、即発臨界を越えてしまう課題があ
る。

【０００９】本発明は上記課題を解決するためになされ
たもので、炉心燃料部が溶融燃料プール状態となっても
即発臨界以下にできる高速炉を提供する事を目的とす
る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は、核分裂性物質
を装荷した多数の炉心燃料集合体と、この多数の炉心燃
料集合体の間に配置される制御棒集合体と、前記多数の
炉心燃料集合体の外周に配置されるブランケット燃料集
合体と、このブランケット燃料集合体の外周に配置され
る中性子遮蔽体とからなる高速炉の炉心において、前記
ブランケット燃料集合体の燃料要素には前記炉心燃料集
合体の炉心燃料部の高さに相当する高さの一部分に中間
プレナム部が設けられていることを特徴とする。

【００１１】

【作用】本発明による高速炉炉心は径ブランケット領域
の下部に構造材のみで構成される中間プレナム部を設
け、溶融燃料プールが浸入可能な構成とする事で溶融燃
料プールを偏平化する。

【００１２】すなわち、熱除去能力を喪失する事故の場
合、ナトリウムが定められた温度以上に上昇し、長時間
後に燃料と構造材と高温の冷却材が流れる炉心燃料集合
体が溶融する。その結果、炉心燃料のみが溶融し、下部
軸ブランケット部の上部に円盤上に溶融し、溶融燃料プ
ールが形成される。

【００１３】溶融燃料プールは、炉心部周辺で径ブラン
ケット燃料集合体に接触する。径ブランケット領域下部
には構造材のみで構成される中間プレナム部が設けられ
ているため、溶融燃料プールはそれらの構造材を容易に
溶融し、径ブランケット方向に浸入していく。その結
果、炉心部全体が溶融しても溶融燃料プールは偏平化さ
れるため、臨界性は即発臨界以下の状態となる。

【００１４】

【実施例】図１から図４を参照しながら本発明に係る高
速炉の炉心の第１の実施例を説明する。なお、図中、図
８と同一部分には同一符号を付している。図２は図１と
対応し、炉心溶融時を示し、図３は図１における炉心燃
料集合体とブランケット燃料集合体を示し、図４は図３
におけるブランケット燃料集合体の燃料要素を示してい
る。

【００１５】すなわち、図１において多数配置された炉
心燃料集合体１の外周面にブランケット燃料集合体２ａ
が配置され、このブランケット燃料集合体２ａの外周面
に中性子遮蔽体３が配置されている。炉心燃料集合体１
は親物質からなる上部軸ブランケット部４、下部軸ブラ
ンケット部５およびその中間に炉心燃料部６が配置され
たものからなっている。径ブランケット燃料集合体２ａ
は炉心燃料部６の領域に相当する領域に核分裂ガスを蓄
積する中間プレナム部７が設けられたものからなってい
る。炉心燃料部６は核分裂性物質を燃料とし、上下部軸
ブランケット部４、５は親物質を含んでいる。

【００１６】以上のようにして本実施例に係る炉心は構
成されているが、何らかの事象により炉心燃料部６の全
部が溶融し、下部軸ブランケット部５の上部レベルに溶
融燃料プール８が形成された状態を図２に示す。何らか
の事象時に冷却材の流量低下、除熱源喪失等が生じ炉心
燃料が高温となって溶融するとまず下部軸ブランケット
部５の上面に溶融燃料プール８が形成される。

【００１７】続いて、溶融燃料プール８は径ブランケッ
ト部９に挟まれる中間プレナム部７に接触し、その部分
を溶融、蒸発させつつ径方向に侵入拡大していく。その
結果、炉心部全体が溶融しても溶融燃料プール８は偏平
化されるため、臨界性は即発臨界以下の状態となる。

【００１８】図３は炉心燃料集合体１とブランケット燃
料集合体２ａの縦断面を示したものである。すなわち、
前記炉心燃料集合体１およびブランケット燃料集合体２
ａはともにラッパ管10内に燃料要素11、11a の束が収納
され、ラッパ管10には上部にハンドリングヘッド12が設
けられ下部にエントランスノズル13が接触され、内部上
方に中性子遮蔽体14が収納されている。

【００１９】エントランスノズル13の上部側面は肉厚に
形成されて、中性子遮蔽体の役目をなしている。図３中
符号15は上部ガスプレナム部、16は下部ガスプレナム部
で、それぞれ位置する部分の領域を示している。また符
号17はオリフィス板で冷却材が流入する流入量をコント
ロールするものである。

【００２０】図４は図３におけるブランケット燃料集合
体2aの燃料要素11a を縦断面で示している。すなわち、
符号18は被覆管で、この被覆管18内には上から順に上部
ガスプレナム部19, スプリング押え20、スプリング21，
上部燃料スタック22、上部円板状プラグ23、円管スリー
ブ24、下部円板状プラグ25、下部燃料スタック26が形成
または収納されている。また、被覆管18の上端は上部端
栓27で閉塞され下端は下部端栓28で閉塞されている。

【００２１】スプリング押え20の中央には貫通孔29が形
成され、上部円板状プラグ23にはガス抜き孔30が形成さ
れ、下部円板状プラグ25にもガス抜き孔31が形成されて
いる。円管スリーブ24内は中間プレナム32を形成する。

【００２２】上述したように本実施例においては燃料要
素11a に中間プレナム32を形成することによって燃料要
素11a の上部ガスプレナム部19または下部ガスプレナム
部（図示せず）を短縮し、燃料要素11a の全長を短縮す
ることで、図３に示したように中性子遮蔽体14の長さの
増大に振り向け、炉心燃料集合体１の中性子遮蔽体14の
長さより大きくすることができる。その結果、炉心の軸
方向遮蔽能力は従来よりも強化される。

【００２３】また、図４に示したように中間プレナム32
は上部燃料スタック22を支持し、ガス抜き孔30を有する
上部円板状プラグ23と、下部燃料スタック26上に載置
し、ガス抜き孔31を有する下部円板状プラグ25およびこ
れら円板状プラグ23、25で挟まれる円管スリーブ24から
なっている。したがって、燃料スタック22、26の熱膨脹
等による変形が生じても中間プレナム24の部分への局所
的な応力集中を避けることができる。

【００２４】なお、上記実施例において、炉心配置およ
びブランケット燃料集合体2a、中性子遮蔽体14の構成と
配置は図示のように限定されるものではなく、炉心燃料
溶融事に即発臨界以下となるように溶融燃料プールの形
状が形成されるような配置にすればよい。ブランケット
燃料集合体２ａ内の中間プレナム以外の部分は増殖性要
求がない場合を想定すると不要であり、図５に示したよ
うに燃料支持部に置き換えてもよい。また燃料スタック
の短い下部ガスプレナム方式のブランケット燃料として
もよい。

【００２５】つぎに、図６および図７を参照しながら本
発明に係る高速炉の炉心の第２の実施例を説明する。な
お、図中第１の実施例と同一部分については同一符号を
付して重複する部分の説明は省略する。

【００２６】この第２の実施例が第１の実施例と異なる
点は図６に示したようにブランケット燃料集合体2aの外
周に配置される中性子遮蔽体3aの下部に溶融し易い構造
材の低融点領域33を配置する。これにより図２に示す溶
融燃料プール８の径方向への偏平化を促進する作用を得
ることができる。

【００２７】図７に本実施例に係わる中性子遮蔽体3aの
概念図を示す。上記中間プレナム以下の部分を低融点中
性子遮蔽体要素34を設置したものである。但し、中性子
遮蔽体要素36の下部から溶融燃料が炉容器下部に落下し
て原子炉容器下部で再臨界とならないよう低融点中性子
遮蔽体要素34の更に下方に高融点キャッチャ35を配置す
る。

【００２８】すなわち、図７における中性子遮蔽体3aは
ラッパ管10内に複数本の中性子遮蔽体要素が上部支持板
37によって支持されており、この上部支持板37の下方に
低融点中性子遮蔽体要素34が下部支持板38によって支持
されている。下部支持板38の下方には貫通孔を有する高
融点キャッチャ35が設けられている。ラッパ管10は上端
にハンドリングヘッド12が接続され、下端にエントラン
スノズル13が接続されている。

【００２９】本実施例によればブランケット燃料集合体
2aに中間プレナム部７を設け、中性子遮蔽体3aに低融点
領域33を設けることによって溶融燃料プール８の径方向
への偏平化をはかることができ、全炉心スランピングで
も臨界とならない炉心構造を得ることができる。

【００３０】なお、上記実施例において、ブランケット
燃料集合体の中間プレナム部および下部燃料スタックの
代りに上部燃料スタックの支持部を設けることができ
る。また、ブランケット燃料集合体の燃料要素の長さを
炉心燃料集合体の燃料要素の長さよりも短くすることが
できる。さらにブランケット燃料集合体において軸方向
遮蔽体長を炉心燃料集合体の軸方向遮蔽体長よりも長く
することができる。

【００３１】また、中性子遮蔽体の下部に溶融炉心燃料
の接触により溶融する低融点材料を設けることができ
る。さらに、中性子遮蔽体に設けた低融点材料の下部に
溶融炉心燃料の接触により容易には溶融しない高融点材
料を配置することができる。

【００３２】

【発明の効果】本発明によれば、高速炉炉心の燃料溶融
時の即発臨界が防止され、従来の炉心に比較して事故時
最大放出エネルギが大きく減少し、安全性、許認可性が
大きく向上するとともに、格納施設等の安全施設容量が
低減し、経済性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る高速炉の炉心の第１の実施例を示
す縦断面図。

【図２】図１における炉心の溶融時の状態を示す縦断面
図。

【図３】図１における炉心の炉心燃料集合体とブランケ
ット燃料集合体を示す縦断面図。

【図４】図３におけるブランケット燃料集合体の燃料要
素を示す縦断面図。

【図５】図３におけるブランケット燃料集合体の他の例
と炉心燃料集合体を示す縦断面図。

【図６】本発明に係る高速炉の炉心の第２の実施例を示
す縦断面図。

【図７】図６における中性子遮蔽体を示す縦断面図。

【図８】従来の高速炉の炉心を示す縦断面図。

【符号の説明】

１…炉心燃料集合体、２・2a…ブランケット燃料集合
体、３・3a…中性子遮蔽体、４…上部軸ブランケット
部、５…下部軸ブランケット部、６…炉心燃料部、７…
中間プレナム部、８…溶融燃料プール、９…径ブランケ
ット部、10…ラッパ管、11・11a …燃料要素、12…ハン
ドリングヘッド、13…エントランスノズル、14…中性子
遮蔽体、15…上部ガスプレナム部、16…下部ガスプレナ
ム部、17…オリフィス板、18…被覆管、19…上部ガスプ
レナム部、20…スプリング押え、21…スプリング、22…
上部燃料スタック、23…上部円板状プラグ、24…円管ス
リーブ、25…下部円板状プラグ、26…下部燃料スタッ
ク、27…上部端栓、28…下部端栓、29…貫通孔、30・31
…ガス抜き孔、32…中間プレナム、33…低融点領域、34
…低融点中性子遮蔽体要素、35…高融点キャッチャ、36
…中性子遮蔽体要素、37…上部支持板、38…下部支持
板。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長岡 一仁 東京都千代田区内幸町一丁目１番３号 東 京電力株式会社内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 核分裂性物質を装荷した多数の炉心燃料
   集合体と、この多数の炉心燃料集合体の間に配置される
   制御棒集合体と、前記多数の炉心燃料集合体の外周に配
   置されるブランケット燃料集合体と、このブランケット
   燃料集合体の外周に配置される中性子遮蔽体とからなる
   高速炉の炉心において、前記ブランケット燃料集合体の
   燃料要素には前記炉心燃料集合体の炉心燃料部の高さに
   相当する高さの一部分に中間プレナム部が設けられてい
   ることを特徴とする高速炉の炉心。
2. 【請求項２】 前記中間プレナム部は前記燃料要素の上
   部燃料スタックと下部燃料スタックとの間に円管スリー
   ブが介在され、この円管スリーブの上下両端にガス抜き
   孔を有する円板状プラグが設けられたものからなること
   を特徴とする請求項１記載の高速炉の炉心。
3. 【請求項３】 前記ブランケット燃料集合体の燃料要素
   の下部には、前記炉心燃料部の高さに相当する高さの一
   部分とその上端が位置する下部ガスプレナム部が設けら
   れていることを特徴とする請求項１記載の高速炉の炉
   心。
4. 【請求項４】 前記中性子遮蔽体には前記炉心燃料部の
   高さに相当する高さの一部に低融点領域が設けられてい
   ることを特徴とする請求項１記載の高速炉の炉心。
5. 【請求項５】 前記低融点領域には低融点中性子遮蔽体
   要素が設けられ、この低融点中性子遮蔽体要素の下方に
   高融点キャッチャが設けられていることを特徴とする請
   求項４記載の高速炉の炉心。