JPH07127899A - 空調ダクトのユニット化工法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 結露が効果的に防止される空調ダクトを、短
期間に低コストで且つ安全に施工できる工法を提供す
る。 【構成】 それぞれフレキシブルで伸縮可能なメインダ
クト４と枝ダクト７が接続され、植毛断熱処理が施され
た空調用のダクトユニット１を製作し、このダクトユニ
ット１を施工現場に搬入して、上階の床スラブに吊り込
むユニット化工法である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、空調設備のダクト工事
を短工期で行う上で好適な空調ダクトのユニット化工法
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】例えば、オフィスビルなどを対象とした
空調設備においては、天井空間に広範囲にわたって空調
ダクトが設けられている。従来、この空調ダクトの工事
は、搬送に不都合のない長さに製作された直管状のスパ
イラルダクトと、それを接続するエルボやチーズ、レジ
ューサーなどの各種継手を、それぞれ単品の形で建築現
場に搬入し、建築現場では、先ず、ダクト工が、それら
の部材を脚立やローリングタワー足場の上で接続しつつ
上階の床スラブに吊り込み、しかる後、断熱工が保温や
結露防止のための断熱工事を行うといった手順で行われ
ている。

【０００３】スパイラルダクトの接続は、各種継手に直
管状のスパイラルダクトを差し込んだ後、その差し込み
部分をビス止めし、さらに、差し込み部にエア漏れ防止
のためのダクト用粘着テープを巻き付けることによって
行われ、断熱工事は、アルミ箔付きのグラスウールをダ
クトに巻き込むことによって行われている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記の工法では、次の
ような欠点があった。 二業種（ダクト工と断熱工）の作業となり、工程が異
なるので、空調ダクト全体の工期が長くなる。 ダクトの接続に、ビス止め、粘着テープの巻き付けと
いった手間のかかる作業が必要である。 ダクトの吊り込み後、断熱工事を行うので、ダクトや
継手の吊り金具等が邪魔になって作業性が悪くなるばか
りでなく、断熱材のアルミ箔付きグラスウールを巻き付
けにくい個所が生じ、ダクト外面に結露を生じさせる事
故がしばしば発生する。 脚立やローリングタワー足場を使用した高所での作業
が多く、安全上、支障を来し易い。

【０００５】このような従来欠点の解消策としては、予
め、工場でスパイラルダクトを接続すると共に、アルミ
箔付きグラスウールを巻き付けたダクトユニットを制作
し、これを建築現場に搬入して、上階の床スラブに吊り
込むことも考えられるのであるが、長尺物の輸送、施工
現場への持ち込みは困難であり、実際上、不可能であ
る。

【０００６】そこで、本発明は、アルミやスチールによ
るフレキシブルダクトと、そのフレキシフブル性を阻害
しない断熱構造をうまく組み合わせることによって、上
記の従来欠点を一掃し、結露が効果的に防止される空調
ダクトを短期間に低コストで且つ安全に施工できるよう
にした空調ダクトのユニット化工法を提供するものであ
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明では、フレキシブルなメインダクトにフレキ
シブルな枝ダクトが継手を介して接続され、且つ、植毛
断熱の処理が施された空調用のダクトユニットを製作
し、このダクトユニットを上階の床スラブに吊り込むよ
うにしている。尚、メインダクトならびに枝ダクトは、
単に、フレキシブルなものであってもよいが、更に、そ
れぞれを伸縮可能に構成することが望ましいことは言う
までもない。

【０００８】

【作用】上記の工法によれば、ダクトがフレキシブルで
あることに加えて、このダクトのフレキシブル性を損な
わせない植毛断熱という断熱構造を採用しているので、
上記のダクトユニットをループ状や二つ折りの状態な
ど、コンパクトな形状にして建築現場への運搬や施工現
場への搬入を行うことができ、施工現場では、所定の形
状に広げて吊り込むだけで、断熱構造の空調ダクトが得
られることになる。しかも、予め、工場などで断熱処理
を行うため、隅々まで完璧に断熱処理を行うことがで
き、結露事故の発生が確実に防止される。

【０００９】メインダクトならびに枝ダクトのそれぞれ
がフレキシブルであるから、空調装置やエア吹き出し口
などに対するダクトユニットの接続やダクトユニットど
うしの接続に際して、空調装置やエア吹き出し口などの
設置位置や、ダクトユニットの吊り込み位置に誤差があ
っても、この誤差を吸収して無理なく接続することがで
きる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１はダクト系が広範囲にわたる規模の空調設備
を対象にして、そのダクト系を複数のゾーンに対応させ
るように区分けした内の端末のダクトユニット１を示し
ている。

【００１１】このダクトユニット１は、予め工場で製作
されて、空調設備の施工現場に運搬・搬入され、上階の
床スラブに吊り込み保持されるもので、図２にも示すよ
うに、端末のダクトユニット１から分岐させるダクトユ
ニット１ａの枝ダクト２に対するチーズ３を、メインダ
クト４の上流側に設けると共に、このメインダクト４の
下流側に、チーズ５を介して調和空気の吹き出し口６に
対する枝ダクト７を接続して成る。

【００１２】そしてメインダクト４は、上流側のダクト
ユニット１ｂにソケット８を介して接続される直管状の
空調ダクト４ａと、所定の箇所を９０度に折り曲げてエ
ルボ機能部９を持たせた曲管状の空調ダクト４ｂとを、
レジューサー１０を介して接続すると共に、前記空調ダ
クト４ｂの端部に盲キャップ１１を設けて成る。

【００１３】図４，６に示すように、メインダクト４を
構成するダクト４ａ，４ｂと枝ダクト７のそれぞれは、
分岐ダクトユニット１ａの枝ダクト２も同様であるが、
周壁が軸線方向で凹凸部ａ，ｂを連ねる形状の、フレキ
シブルで且つ伸縮可能な螺旋状の構造であって、アルミ
又は鉄などの金属によって製作されており、外面には保
温や結露防止のための断熱層ｃが付されている。

【００１４】この断熱層ｃは、接着剤によって炭素の短
繊維をダクト外面に貼着する所謂植毛断熱処理によるも
のであって、各ダクト４ａ，４ｂ、７のフレキシブル性
ならびに伸縮性を損なわせないようになっている。尚、
図１，２に示すダクトユニット１は、フレキシブルな各
ダクト４ａ，４ｂ、７を仕様寸法通りに引き延ばし、こ
れらを互いに設計寸法に基づいて接続した工場製作の状
態を示している。

【００１５】次にチーズ３，５であるが、これらは取り
付け対象のダクト径が異なるものの構成的には同じもの
である。この内のダクト下流側のチーズ５を対象にし
て、その具体構造を図３，４に基づいて説明すると、こ
のチーズ５は、ダクト４ｂの所定箇所に横向きに開設さ
れた分岐孔ｄに枝ダクト７を連通接続させるものであっ
て、鉄などの金属によって製作されている。

【００１６】具体的には、ダクト４ｂを左右両側から抱
持する一対の半円筒状部材１２，１２に、ダクト挟着用
の締め付け手段１３に対するフランジ１４を連設すると
共に、前記分岐孔ｄに連通する円筒状の枝ダクト接続部
材１５を一方の半円筒状部材１２に連設し、かつ、半円
筒状部材１２，１２と枝ダクト接続部材１５の各ダクト
連結面部に、ダクト４ａ，４ｂ、７の凹凸部ａ，ｂに係
合する係合部ｅを形成すると共に、半円筒状部材１２，
１２の内面と枝ダクト接続部材１５の内外面のそれぞれ
に、上記した植毛断熱処理によって保温や結露防止のた
めの断熱層ｆを付して成る。

【００１７】尚、前記枝ダクト接続部材１５に係合部ｅ
を形成しているのは、この枝ダクト接続部材１５に対す
る枝ダクト７の接続に際して、枝ダクト７の端部を出来
るだけ平坦に加工するのであるが、それでも凹凸部ａ，
ｂが僅かに残こることから、この凹凸部ａ，ｂに係合さ
せるように、枝ダクト接続部材１５に係合部ｅを形成し
ているのである。

【００１８】この構成によれば、枝ダクト接続部材１５
を分岐孔ｄに位置合わせし、かつ、ダクト４ａ，４ｂの
凹凸部ａ，ｂに半円筒状部材１２，１２の係合部ｅを係
合させて、締め付け手段１３を介して一対の半円筒状部
材１２，１２によりダクト４ｂを挟着抱持させる一方、
前記枝ダクト接続部材１５に、それの凹凸部ａ，ｂに係
合部ｅを係合させるように枝ダクト７をねじ込んで接続
し、この枝ダクト７を金属バンド１６で締め付けること
によって、ダクト４ｂひいてはメインダクト４に下流側
に対する枝ダクト７の分岐接続が抜け止め状態で達成さ
れる。

【００１９】而して、図４に一部を取り出して拡大図示
したことで明らかなように、保温や結露防止のために枝
ダクト接続部材１５の外面に付した断熱層ｆが、枝ダク
ト接続部材１５と枝ダクト７との間のシール材として機
能し、前記メインダクト４に対しては、それのダクト外
面と半円筒状部材１２，１２の内面とに付した断熱層
ｃ，ｆが、それの短繊維が相互に噛み合うように挟圧さ
れることで、このメインダクト４と半円筒状部材１２，
１２との間に、断熱層ｃ，ｆによる二層のシールが施さ
れることになる。

【００２０】尚、枝ダクト接続部材１５の内面にも断熱
層ｆを付しているのは、チーズ５の内外面にわたる冷橋
が形成されないようにするためのものであって、例えば
枝ダクト接続部材１５外面の断熱層ｆを半円筒状部材１
２側に迫り出させて、この断熱層ｆを半円筒状部材１２
内面の断熱層ｆに重合させるようにし、もって、チーズ
５の内外面にわたって短経路の冷橋を形成させないよう
にするならば、枝ダクト接続部材１５内面の断熱層ｆを
省略して実施することも可能である。

【００２１】次に、図５，６に基づいてレジューサー１
０の具体構造について説明すると、このレジューサー１
０も鉄などの金属製であって、その外面には上記した植
毛断熱処理による保温や結露防止のための断熱層ｉが付
され、ダクト上流側のチーズ３による調和空気の分岐量
に応じて、その断面積を下流側ほど絞るようにロート状
部分１０ａを形成すると共に、その上流側と下流側とに
ダクト差し込み口１０ｂ，１０ｃを連設して成る。

【００２２】そして、前記差し込み口１０ｂ，１０ｃの
それぞれに、上記した枝ダクト接続部材１５に対する枝
ダクト７の接続と同様に、ダクト４ａ，４ｂの端部に僅
かに残こる凹凸部ａ，ｂに係合する係合部ｊを差し込み
口１０ｂ，１０ｃに形成している。

【００２３】かゝる構成においても、差し込み口１０
ｂ，１０ｃにダクト４ａ，４ｂをねじ込んで接続し、こ
のダクト４ａ，４ｂを金属バンド１７で締め付けること
によって、ダクト４ａ，４ｂどうしの接続が抜け止め状
態で達成されるもので、図６に一部を取り出して拡大図
示したことで明らかなように、保温や結露防止のために
枝ダクト接続部材１５の外面に付した断熱層ｉが、ダク
ト４ａ，４ｂとレジューサー１０との間のシール材とし
て機能する。

【００２４】図７，８に示すように、盲キャップ１１
は、流路閉塞用の蓋部材１８を備える以外は上記したレ
ジューサー１０と構成的に変わりないことから、締め付
け用の金属バンド１７を含めて同じ構成部材に同符号を
付して、その詳細な説明を省略することにする。

【００２５】尚、前記レジューサー１０に上向きブラケ
ット１９を連設し、このブラケット１９と前記チーズ５
のフランジ１４、及び、盲キャップ１１のダクト締め付
け金属バンド１７のそれぞれに、上階の床スラブに対す
るユニット吊り込み用の保持具２０を係止させるための
係止孔ｈを形成している。

【００２６】空調設備の施工に用いる本発明のダクトユ
ニット１は、上記のように構成されており、例えば図９
に示すように、メインダクト４をループ状や二つ折りの
状態などに曲げると共に、これに沿わせるように枝ダク
ト７を曲げて、適宜ワイヤーなどで形状を整えること
で、当該ダクトユニット１の建築現場へのトラック輸送
や施工現場への搬入を難なく行える。

【００２７】或いは図１０に示すように、前記ダクト４
ｂのエルボ機能部９を必要に応じて曲げ戻して、各ダク
ト４ａ，４ｂ、７を収縮させ、かつ図示はしないが、こ
の収縮させたダクトユニット１を例えばループ状に形状
を整えることによっても、当該ダクトユニット１の輸送
や施工現場への搬入を難なく行える。

【００２８】そして、施工現場に搬入されたダクトユニ
ット１を、図１に示した実際の施工形状に戻しつつ、こ
れを吊りボルト２０を介して上階の床スラブに吊り込み
保持させるだけの作業によって、単位ユニット毎に断熱
処理が成された空調ダクトが得られる。

【００２９】従って、後は、このダクトユニット１のメ
インダクト４とチーズ３、及び、枝ダクト７に、同様に
して上階の床スラブに吊り込み保持された分岐ダクトユ
ニット１ａと上流側のダクトユニット１ｂ、及び、天井
部に設置されたエア吹き出し口６を接続し、更に、上流
側に順次接続されたダクトユニットのメインダクトを空
調装置に接続することで、所定規模の空調設備が施工さ
れる。

【００３０】この接続に際して、メインダクト４ならび
に枝ダクト７のそれぞれがフレキシブルであるから、上
流側のダクトユニット１ｂやエア吹き出し口１７などの
設置位置、更に、ダクトユニット１の吊り込み位置に誤
差があっても、この誤差を吸収して無理なく接続するこ
とができる。

【００３１】上記の工法によれば、断熱処理を済ませた
状態でダクトユニット１を製作するので、この段階で手
間をかけることなく隅々まで完璧に断熱処理を行うこと
ができ、結露事故の発生が確実に防止される。

【００３２】そして、現場での断熱工事が一切不要とな
ることに加えて、既にダクトの接続を済ませたダクトユ
ニット１を吊り込み、上階の床スラブに保持させるだけ
であるから、空調ダクトの施工が一業種（ダクト工）の
作業によって短時間で達成され、しかも、脚立やローリ
ングタワー足場を使用した高所での無理な姿勢による作
業が著しく減少するので、安全性の向上も達成される。

【００３３】尚、ダクト分岐の形態として、メインダク
ト４にＴ字状のチーズ５を介して枝ダクト７を分岐接続
させる形態としているが、このチーズ５をＹ字状のチー
ズに置き換えて実施することも可能である。チーズ５を
十字状の所謂クロスに置き換えて、２本の枝ダクト７を
分岐接続させる形態に変更可能であり、このクロスは、
半円筒状部材１２，１２のそれぞれに枝ダクト接続部材
１５を連設することで簡易に構成できる。そして本発明
では、これらチーズやクロスを継手５と総称している。

【００３４】また実施例では、各空調ダクト４ａ，４
ｂ、７の構造として、凹凸部ａ，ｂを螺旋に連ねる構成
としているが、上記したチーズ５のように、継手を二つ
割りにして空調ダクトを抱持させる構成とする場合は、
それぞれ独立した環状の凹凸部を軸線方向に連ねる構成
の空調ダクトを対象にして本発明を実施することも可能
である。

【００３５】更に、ダクト自体のフレキシブルな機能を
利用して、ダクト４ｂに曲げによるエルボ機能部９を持
たせたが、レジューサー１０と構成的に同じエルボによ
る接続形態をとるもよい。

【００３６】

【発明の効果】本発明による空調ダクトのユニット化工
法は、上述した構成よりなり、ダクトユニットをループ
状や二つ折りの状態など、コンパクトな形状にして建築
現場への運搬や施工現場への搬入を行うことができ、施
工現場では、所定の形状に広げて吊り込むだけで、結露
の虞のない空調ダクトが得られることになり、現場での
断熱工事に要する工程が不要となり、大幅な工期短縮と
コストダウンが可能であり、高所作業が減少するため、
安全性も向上する等の効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】広範囲にわたるダクト系を複数のゾーンに対応
させるように区分けした内の端末のダクトユニットの概
略平面図である。

【図２】ダクトユニットの平面図である。

【図３】チーズの分解斜視図である。

【図４】一部を取り出して拡大図示したチーズの横断平
面図である。

【図５】レジューサーの接続部を示す斜視図である。

【図６】一部を取り出して拡大図示したレジューサーの
縦断側面図である。

【図７】盲キャップの接続部を示す斜視図である。

【図８】盲キャップの縦断側面図である。

【図９】ダクトユニットをループ状に形状を整えた状態
を示す斜視図である。

【図１０】ダクトユニットの各ダクトを収縮させた状態
を示す平面図である。

【符号の説明】 １…ダクトユニット、４…メインダクト、５…継手、７
…枝ダクト。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大久保 泰和 大阪市中央区本町４丁目１番13号 株式会 社竹中工務店大阪本店内 (72)発明者 西 利樹 大阪市中央区本町４丁目１番13号 株式会 社竹中工務店大阪本店内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 フレキシブルなメインダクトにフレキシ
   ブルな枝ダクトが継手を介して接続され、且つ、植毛断
   熱の処理が施された空調用のダクトユニットを製作し、
   このダクトユニットを上階の床スラブに吊り込むことを
   特徴とする空調ダクトのユニット化工法。
2. 【請求項２】 前記メインダクトならびに枝ダクトがそ
   れぞれ伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求
   項１に記載の空調ダクトのユニット化工法。