JPH07126776A - 繊維強化金属複合材料 - Google Patents

繊維強化金属複合材料

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JPH07126776A
JPH07126776A JP27854093A JP27854093A JPH07126776A JP H07126776 A JPH07126776 A JP H07126776A JP 27854093 A JP27854093 A JP 27854093A JP 27854093 A JP27854093 A JP 27854093A JP H07126776 A JPH07126776 A JP H07126776A
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fiber
alloy
sic
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fibers
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JP27854093A
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Tetsuaki Tsuda
哲明 津田
Junichi Uchida
淳一 内田
Masaru Abe
賢 阿部
Yuji Takatani
有志 高谷
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 遊離炭素量1重量%以下の炭化ケイ素繊維を
強化材とし、Al、Mg、Tiまたはこれらの合金を基材とす
る繊維強化金属複合材料において、繊維の濡れ性低下に
よる強度低下や、SiCと基材金属類との界面でのケイ化
物脆化層の生成を抑制し、高温強度の経時耐久性を改善
する。 【構成】 炭化ケイ素繊維の表面を、Ti:0.1〜80重量
%、Mn:0.1〜40重量%、残部AlからなるAl−Ti−Mn合金
の付着量 0.1〜100 g/m2の皮膜で被覆する。皮膜形成は
溶融塩電解めっきで行うことが好ましい。この皮膜の下
に、付着量 0.1〜20g/m2のNi、ZnまたはNi−Zn合金から
なる内層を形成してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属質の基材 (マトリ
ックス) をセラミック繊維で強化した繊維強化金属複合
材料に関する。より具体的には、本発明は、炭化ケイ素
繊維を強化材とし、軽金属またはその合金を基材とす
る、航空・宇宙などの用途に好適な高温強度の経時耐久
性に優れた繊維強化金属複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】航空・宇宙分野で使用される金属材料
は、軽量性が必須条件となることから、マグネシウム、
アルミニウム、チタンといった軽金属およびそれらの合
金が主流である。しかし、この分野で必要な高温比強度
(強度/密度) 、比弾性 (弾性率/密度) 、共振特性な
どの要求性能が高度化するにつれて、既存の金属材料で
は要求を満たすことが困難となってきた。
【0003】近年になって、このような金属または合金
(以下、金属と合金を総称して金属類という)を無機質
繊維で強化した、FRM (fiber reinforced metal) と
略称される繊維強化金属複合材料が、上記要求を満たす
ことができる材料として注目を集めている。強化材とな
る無機質繊維としては、アルミナ繊維、炭素繊維、シリ
カ繊維、炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維や、ボロ
ン繊維、ベリリウム繊維などの金属繊維が開発されてい
る。中でも炭化ケイ素 (SiC、シリコンカーバイド) の
繊維は、機械的特性、耐酸化性、および耐熱性に優れて
いることから、FRMに最適の強化材であると考えられ
ている。
【0004】炭化ケイ素繊維は、(A) 炭素繊維にSiCを
CVD法により蒸着被覆した繊維径150 μm程度の太い
繊維 (CVD法繊維) 、(B) 有機珪素化合物 (例、ジメ
チルクロロシラン) を重合させて得たポリカルボシラン
を繊維前駆体 (プレカーサ)とし、これを溶融紡糸、不
融化を経て高温焼成して製造される繊維径10〜15μm程
度の連続繊維 (プレカーサ法繊維) 、および(C) 気相
法、液相法、固相法などの各種の方法で製造される繊維
径数μm以下、長さ数十〜数百μmのウイスカーに大別
される。
【0005】このような各種のSiC繊維で金属類を強化
したFRMがこれまでに数多く試作されてきたが、SiC
繊維の持つ高温強度性能が十分に発揮されたものを得る
ことは困難であった。このような複合材料の高温強度性
能が低下する原因としては、次の要因が考えられる。
【0006】(1) 複合化の製造工程における原因 溶融した基材金属類による強化繊維の濡れ性が悪い。
その結果、基材と繊維間に間隙が生じ、繊維による強化
が不完全となる。 繊維と溶融金属類との接触時に界面反応が起こり、界
面に脆化層が形成されるために、強度が低下する。
【0007】(2) 高温での使用中における原因 繊維自身が熱分解等により劣化する。
【0008】高温での使用中に繊維と基材金属類との
反応・拡散により脆化層が形成され、強度が低下する。
【0009】上記のSiC繊維のうち、(A) のCVD法繊
維および(C) のウイスカーは、一般に溶融金属類との濡
れ性が悪く、これが原因で低温および高温のいずれの強
度も不十分であった。また、製造時のSiCと溶融金属類
との反応により繊維/金属界面に脆いケイ化物からなる
脆化層が生成すること、さらには使用中の繊維と基材金
属類との反応・拡散で同様の脆化層が形成することも強
度低下につながっていた。
【0010】一方、(B) のプレカーサ法による連続繊維
は、その製法上から、SiC繊維中に0.01〜40重量%の遊
離炭素を含有している。この遊離炭素は溶融金属類
(例、マグネシウム) 中で界面炭化物層を形成し、溶融
金属類による濡れ性を改善すると同時に、界面でのケイ
化物の生成も抑制する。この点に着目して、特公昭58−
43461 号公報では、2〜20重量%の遊離炭素を含有する
SiC繊維を使用してFRMを製造している。しかし、遊
離炭素を含有するSiC繊維を使用すると、繊維表面の遊
離炭素または使用中に繊維内部より表面に拡散してきた
遊離炭素が、基材中の易炭化性の金属元素と反応して、
脆化した炭化物層を形成し、FRMの機械的強度の低下
を生ずるだけでなく、基材中にも成分組成の異なる脆化
層が形成されることが認められている。
【0011】この遊離炭素による使用中の強度低下を抑
制するために、特開昭53−30407 号公報では、0.01〜40
重量%の遊離炭素を含有するSiC繊維の表面に金属、合
金またはセラミックを被覆してから基材金属と複合化し
ている。被覆に用いる金属類としては、安定な炭化物を
形成するB、Mn、Mo、Al、W、Si、Cr、Ca、Ce、V、
U、Th、Nb、Ta、Ti、Zr、Hfなどの金属が例示されてい
る。このような金属で被覆すると、繊維中の遊離炭素と
の反応により界面近傍に安定な炭化物層が形成され、こ
の炭化物層により繊維中の遊離炭素が基材金属類とが反
応して脆化することが阻止される。この公報には、Be、
Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Pd、Ag、Cd、Sn、Sb、P
t、Au、Pdなどの金属および合金も、被覆材料として有
用であることが記載されている。
【0012】ただし、上記公報には、被覆材料として上
記の多様な金属またはその合金、さらには各種のセラミ
ックが例示され、特定の被覆材料、例えば、合金が特に
有効であることは示されていない。また、上記公報の実
施例では、SiC繊維の遊離炭素含有量はいずれも5重量
%以上と高く、特に炭化物形成性の金属または合金で被
覆した実施例は、遊離炭素含有量が10〜20重量%と非常
に高くなっている。
【0013】同様の目的で、特公平1−22334 号公報に
おいては、遊離炭素を0.01〜40重量%含有するSiC繊維
の表面をBi、Ba、Sr、Ceの1種以上の金属で被覆してか
ら、基材金属と複合化している。
【0014】このような表面被覆により、SiC繊維中の
遊離炭素と基材との反応による劣化は防止できる。しか
し、表面被覆したSiC繊維を使用したFRMにおいて
も、使用環境が700 ℃を超える高温環境になると熱劣化
が起こることが経験されてきた。この熱劣化は、700 ℃
以上の高温で繊維中の遊離炭素が熱分解して繊維の形状
損耗を引起し、強度が著しく低下することに原因があ
る。耐熱材料であるFRMはこのような高温環境で使用
されることが多いため、繊維中の遊離炭素量は可及的に
低いことが望ましい。
【0015】この観点から、プレカーサ法によるSiC連
続繊維について、プレカーサの化合物種の適切な選択と
焼成条件の調整により、遊離炭素量を1重量%以下、さ
らには0.01重量%以下まで低減させる技術が開発されて
いる。しかし、繊維中の遊離炭素が少なくなると、(A)
や(C) のSiC繊維と同様に、溶融金属類との濡れ性の低
下による強度低下や、SiC繊維と溶融金属類との接触時
のケイ化物形成や使用中の脆化層の形成による強度低下
化が問題となってくる。
【0016】また、プレカーサ法連続繊維は、従来は溶
融紡糸後の不融化を酸素中での加熱による酸素不融化法
により行っていたため、繊維が2〜15%の酸素を含有し
ていた。この酸素が原因となって、1500℃以上でSiC繊
維自体が熱分解して粉状化し、著しい強度低下を生ずる
という欠点があった。この点については、不融化を電子
線照射により行うことで、酸素含有量1重量%以下のSi
C繊維を製造する技術が最近になって開発された。この
低酸素SiC繊維は、1500℃を超えるような超高温 (例、
1800〜2000℃) でも優れた熱的安定性を示す。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、SiC
繊維を強化材とするFRMにおける上述した問題点を解
消することである。具体的には、700 ℃を超える高温環
境で長期間安定して使用できるように、遊離炭素量の少
ないSiC繊維を強化用繊維に用い、この場合に問題とな
る繊維の濡れ性低下による強度低下や、SiCと基材金属
類との界面でのケイ化物脆化層の生成が抑制された、高
温強度の経時耐久性に優れる繊維強化金属複合材料を提
供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】高温耐熱性に優れた遊離
炭素量の少ない低炭素SiC繊維を強化材とする金属複合
材料においては、製造時および使用中のSiCと基材金属
類との反応による脆化の問題を解消する必要がある。遊
離炭素の含有量が少ない場合には、SiC繊維上に炭化物
を形成し易い金属類を単に被覆しても、被覆皮膜中をSi
Cや基材金属類が拡散するのを抑制する炭化物層が被覆
内に形成されない。
【0019】本発明者らは、各種の被覆材料について検
討した結果、特定組成のAl−Ti−Mn合金層が、その内部
でのSiの拡散速度が遅く、ケイ化物生成の抑制に有効で
あり、SiC繊維をこの合金層で被覆しておくと、得られ
るFRMの高温強度の劣化が防止できることを見出し、
本発明に到達した。
【0020】ここに、本発明は、遊離炭素量1重量%以
下のSiC繊維を強化材とし、Al、MgおよびTiから選ばれ
た少なくとも1種の金属またはその合金を基材とする繊
維強化金属複合材料 (FRM) において、該炭化ケイ素
繊維が、Ti:0.1〜80重量%、Mn:0.1〜40重量%、残部Al
(但し、Al:15重量%以上) からなる、付着量 0.1〜10
0 g/m2のAl−Ti−Mn合金被覆層を表面に有することを特
徴とする、高温強度に優れたFRMを要旨とする。
【0021】1態様において、前記炭化ケイ素繊維と前
記Al−Ti−Mn合金被覆層との中間に、内層として、付着
量 0.1〜20 g/m2 のNi、ZnまたはNi−Zn合金層をさらに
有していてもよい。
【0022】また、好適態様にあっては、前記Al−Ti−
Mn合金被覆層は、塩化アルミニウムを主体とし、 0.1〜
50g/L のTiイオンと 0.001〜5g/L のMnイオンとを含有
する塩化物浴を用いた溶融塩電解法により形成される。
【0023】
【作用】本発明のFRMにおける強化材は、連続繊維と
短繊維のいずれでもよく、繊維径にも特に制限はない
が、一般には 0.1〜200 μm、特に 0.1〜50μmの範囲
内が好ましい。従って、前述した(A) CVD法繊維、
(B) プレカーサ法繊維、および(C) ウイスカーのいずれ
も強化材として使用できる。(A) は、炭素繊維などの別
材質の芯にSiCを被覆したものであり、(B) と(C) は実
質的に繊維全体がSiCから構成される。このうち特に好
ましいSiC繊維は、実質的に繊維全体がSiCからなり、
連続繊維である(B) のプレカーサ法繊維である。
【0024】SiC繊維がいずれの種類であっても、遊離
炭素含有量が1重量%以下、特に好ましくは0.01重量%
以下のSiC繊維を強化材に使用する。SiC繊維の遊離炭
素含有量が0.01重量%を超えると、前述したように、F
RMを700 ℃を超える高温環境で使用した場合に、繊維
中の遊離炭素の熱分解による強度低下が起こるようにな
る。この高温での強度低下は、遊離炭素含有量が1重量
%を超えると特に顕著になるので、本発明では遊離炭素
含有量を1重量%以下に制限した。ただし、このような
強度低下が実質的にない遊離炭素含有量0.01重量%以下
のSiC繊維を使用することが望ましい。
【0025】好適態様においては、SiC繊維は酸素含有
量も1重量%以下、望ましくは0.5重量%以下のもので
ある。前記ように、(B) のプレカーサ法SiC繊維の場
合、従来は不融化工程を酸素含有雰囲気中での加熱によ
り行っていたため、SiC繊維は2〜15%の酸素を含有
し、この酸素のために1500℃以上でSiC繊維自体が熱分
解して粉状化し、著しい強度低下を生ずるという欠点が
あった。これに対し、最近開発された方法に従って不融
化をアルゴンなどの不活性雰囲気中で電子線照射により
行うと、酸素含有量が1重量%以下のSiC連続繊維をプ
レカーサ法で製造得ることができる。酸素含有量が1重
量%以下であると、1500℃を超えるような超高温 (例、
1800〜2000℃) でも優れた熱的安定性を示し、このよう
な超高温環境下でも本発明のFRMを使用することが可
能となる。
【0026】一方、本発明のFRMの基材(マトリック
ス)は、アルミニウム、マグネシウムおよびチタンから
選ばれた少なくとも1種の金属またはその合金である。
使用可能なアルミニウム合金としてはJIS A 5154-O、53
57-H、1060 H18等が、マグネシウム合金としては10%Al-
2%Si-0.7%Zn-残Mg、 3%Al-1%Mn-1.3%Zn-残Mg、さらには
各種のASTM規格Mg合金類 (例、AZ 31, 61, 63, 80, 81,
91, 92, 100; EK 30,33, 41; HK 31, ZE 10, ZK 21, Q
E 22A, LA 141A, TA 54, K1A, M1B) 等が、チタン合金
としては 6Al-4V-残Ti等が例示される。これらの金属お
よび合金 (金属類) は、通常の使用に差し支えない程度
で少量の不純物元素を含有していても構わない。
【0027】FRM中のSiC繊維と基材金属類との割合
は特に限定されるものではないが、好ましいSiC繊維の
割合は15〜70 vol%、より好ましくは20〜60 vol%の範
囲内である。SiC繊維が15 vol%未満では強化効果が小
さく、SiC繊維が70 vol%を超えると、繊維が完全に基
材金属類で結合されず、繊維同士が接触して、却って強
度が低下する。
【0028】本発明のように遊離炭素含有量が少ないSi
C繊維を強化材とする場合、高い強度を保持するには、
SiC繊維と溶融した基材金属類との接触時の界面でのケ
イ化物脆化層の生成、さらには高温環境下での使用中に
おけるSiC繊維と基材金属類との反応・拡散によるケイ
化物脆化層の生成を抑制する必要がある。即ち、炭化物
の形成による脆化はほとんど起こらないが、代わりにケ
イ化物の形成による脆化を防止しなければならないこと
が判明した。
【0029】本発明によれば、SiC繊維を予め特定組成
のAl−Ti−Mn三元系合金層で表面被覆することにより、
上記のケイ化物脆化層の成長・発達が効果的に抑制され
る。その理由は理論的に究明されておらず、将来の研究
に待たねばならないが、本発明で採用するAl−Ti−Mn合
金皮膜中では、Siの拡散速度が極めて遅いことが注目さ
れる。そのため、SiC繊維中のSiの移動が妨げられ、製
造工程での繊維と溶融金属類との接触によるケイ化物生
成と、高温使用時でのSiの基材金属類への拡散によるケ
イ化物生成のいずれに対しても、上記合金皮膜が抑制効
果を発揮でき、高温強度の経時耐久性が確保されるもの
と考えられる。
【0030】SiC繊維を表面被覆するAl−Ti−Mn合金層
の組成は、重量%でTi:0.1〜80%、Mn:0.1〜40%、残部
Alであり、Alは少なくとも15重量%必要である。Tiが0.
1 %未満またはMn0.1 %未満では、ケイ化物生成の抑制
効果が不十分で高温強度耐久性が劣化し、Tiが80%を超
えるか、Mnが40%を超えると、Al−Ti−Mn合金層自体の
脆性が高まる。好ましい組成範囲は、Ti:1〜50%、M
n:1〜35%、残部Alである。なお、この合金層は、第
4成分として、少量の他の1種もしくは2種以上の合金
元素を含有することもできる。
【0031】このAl−Ti−Mn合金被覆層の付着量は 0.1
〜100 g/m2、好ましくは10〜50g/mである。付着
量が0.1 g/m未満では、ケイ化物生成の抑制効
果が不十分で高温強度耐久性が劣化し、100 g/m2を超え
る厚膜被覆は経済的に不利である。
【0032】一般に、Al−Ti−Mn合金被覆層の形成は、
(1) 真空蒸着法、(2) 粉末焼付法、(3) 化学蒸着(CV
D)法、(4) 溶射法(火炎溶射法を含む)、(5) イオン
・プレーティング法、(6) スパッタリング法、および
(7) 溶融塩電解法などにより行うことができる。しか
し、低炭素SiC繊維とAl−Ti−Mn合金溶湯との濡れ性が
悪いため、上記(1) 〜(4) の方法では、本発明で用いる
低炭素SiC繊維上にAl−Ti−Mn合金層を直接被覆するこ
とは困難である。その場合、後述するように、低炭素Si
C繊維をこれと濡れ性のよいNi、ZnまたはNi−Zn合金で
まず被覆しておけば、(1) 〜(4) の方法でAl−Ti−Mn合
金被覆層を形成することができる。
【0033】従って、SiC繊維上に直接Al−Ti−Mn合金
層を形成する場合には、上記(5) 〜(7) のいずれかの方
法を採用することになる。このうち、(5) と(6) の方法
はいずれも高真空プロセスであるため、量産性と経済性
に劣るので、大規模な操業では(7) の溶融塩電解法が好
ましい。
【0034】溶融塩電解法によるAl−Ti−Mn合金層の形
成は、塩化アルミニウムを主体とする塩化物浴を使用し
て行うことができる。この塩化物浴の基本組成は、一般
にはAlCl3 + XCl (XはNa, K, Li の1種もしくは2種以
上)であるが、XCl(アルカリ金属塩化物) に代えて、 B
PC (ブチルピリジニウムクロリド) または EMICl (エチ
ルメチルイミダゾリウムクロリド) などの有機第四級化
合物の塩化物を使用した塩化物浴 (例、AlCl3 + BPC
浴、AlCl3 + EMICl 浴など) を使用することもできる。
溶融塩電解をAlCl3 の過飽和度が高い状態で行うと、高
速成膜可能であり、経済性よくSiC繊維をAl−Ti−Mn合
金で被覆することができる。
【0035】溶融塩電解は、例えば、特開昭61−261492
号および同61−262494号各公報に記載の方法で実施する
ことができる。浴中のAlCl3 濃度は50〜75モル%、特に
60〜70モル%と高くすることが好ましい。AlCl3 濃度が
50モル%未満ではめっき性状が悪化して、めっき皮膜が
粉末状となる。AlCl3 濃度が75モル%より高くなると、
AlCl3 の蒸発が過大となり、実用的ではない。
【0036】この溶融塩浴には、 0.1〜50 g/LのTiイオ
ンと 0.001〜5 g/L のMnイオンとを添加しておく。それ
により、Ti含有率1〜80重量%、Mn含有率 0.1〜40重量
%のAl−Ti−Mn合金皮膜が形成される。TiイオンとMnイ
オンの好ましい含有率はそれぞれ 0.2〜5 g/L および
0.1〜3 g/L である。Tiイオンの供給は、TiCl4 の吹込
み、TiCl3 もしくはTi(AlCl4)2の添加、Tiを陽極として
溶解などの手段により行うことができる。MnイオンはMn
Cl2 の添加、MnもしくはAl−Mn合金を陽極として溶解な
どの手段により供給することができる。
【0037】前述したように、低炭素SiC繊維はAl−Ti
−Mn合金溶湯との濡れ性が悪いので、このSiC繊維をま
ずSiCとの濡れ性がよいNi、ZnまたはNi−Zn合金で被覆
しておいてもよい。その後、さらに上記のAl−Ti−Mn合
金層で被覆すると、内層がNi、ZnまたはNi−Zn合金層、
その上にAl−Ti−Mn合金の表面層からなる2層被覆層で
SiC繊維が表面被覆される。内層がNi−Zn合金である場
合、その合金組成は特に制限されない。
【0038】この場合、内層のNi、ZnまたはNi−Zn合金
層の形成方法は特に限定されず、真空蒸着、化学蒸着、
溶射、イオンプレーティング、スパッタリングなどの被
覆方法を採用することも可能であるが、経済性の観点か
ら好ましい被覆方法は周知の水溶液中でのめっき法であ
る。ZnおよびNi−Zn合金めっきの場合は電気めっきが簡
便であり、Niめっきは電気めっきまたは無電解めっきに
より行うことができる。電気めっきは、慣用の硫酸塩
浴、塩化物浴などの酸性水溶液浴、スルファミン酸浴、
さらにはシアン化物浴などの塩基性水溶液浴を使用して
実施できる。無電解めっきも常法により実施すればよ
い。
【0039】内層のNi、ZnまたはNi−Zn合金層の付着量
は 0.1〜20 g/m2 、好ましくは1〜5 g/m2の範囲内であ
る。内層の付着量が0.1 g/m2未満では、SiC繊維の濡れ
性の改善が不十分である。一方、この付着量が20 g/m2
を超えると、SiCの分解を引き起こして、繊維形状が劣
化することがある。
【0040】このようにして、SiC繊維をNi、Znまたは
Ni−Zn合金からなる内層で被覆した場合には、繊維表面
の濡れ性が良好となっているため、外層のAl−Ti−Mn合
金層の形成は前述した(1) 〜(4) のいずれかの方法で行
うことが可能となる。もちろん、この場合であっても、
前記の(5) 〜(7) のいずれかの方法を採用することもで
きる。
【0041】本発明のFRMは、上述のようにAl−Ti−
Mn合金層1層、或いは内層のNi、ZnまたはNi−Zn合金層
と表面のAl−Ti−Mn合金層の2層で被覆されたSiC繊維
を用いて、基材金属と複合化することにより基材金属を
強化した複合材料である。複合化の方法は、従来より公
知の任意の方法を利用できる。例えば、(1) 液体金属含
浸法 (SiC繊維を溶融金属に含浸する方法) 、(2) 拡散
接合法 (金属粉末中にSiC繊維を挿入し、高静水圧をか
けて固める方法) のような固相法、(3) 粉末冶金法 (基
材金属の粉末とSiC繊維との混合物を成形後に加熱し
て、基材金属を焼結または溶結させる方法) 、(4) 溶
射、蒸着、電析などの沈析法、(5) 押出、圧延などの塑
性加工法、(6) 高圧凝固鋳造法などが適用できる。
【0042】
【実施例】平均繊維径15μmのプレカーサ法により製造
された、遊離炭素含有量0.007 重量%、酸素含有量0.4
重量%のSiC連続繊維に、下記方法でZn、NiもしくはNi
−Zn合金の内層被覆層を形成し、または形成せずに、表
面のAl−Ti−Mn合金被覆層(以下、外層という) を形成
した。SiC繊維の表面に被覆された内層および外層の組
成とその形成方法を表1にまとめて示す。
【0043】(A) 内層被覆の形成方法と条件 Zn電気めっき:1M ZnCl2-1M KCl 水溶液中での塩化物
浴電気めっき、浴温50〜70℃、液流速0.5 m/s 、電流密
度50〜200 A/dm2 、めっき膜厚 (付着量) は通電量で調
整。
【0044】Zn−Ni合金電気めっき:1M NiSO4-0.1〜
1M ZnSO4水溶液中での硫酸塩浴電気めっき、浴温50〜70
℃、液流速0.5 m/s 、電流密度20〜120 A/dm2 、めっき
付着量は通電量で調整。
【0045】Ni無電解めっき:NiCl2 20 g/L、還元剤
の次亜リン酸ナトリウム27 g/L、緩衝剤のコハク酸ナト
リウム16 g/Lを含有するめっき浴 (pH 4.5〜5.6 、浴温
50〜85℃) を使用、めっき付着量は浸漬時間で調整。
【0046】(B) 外層被覆の形成方法と条件 溶融塩電解めっき (イ) AlCl3-ブチルピリジニウムクロリド(BPC) 浴 (低Ti
皮膜形成用) AlCl3 67モル%-BPC 33 モル%の溶融塩浴にTiCl3 とMn
Cl2 を添加、浴温40〜80℃、液流速1 m/s 、電流密度
0.5〜3 A/dm2 。めっき皮膜中のTiとMnの割合はTiCl3
とMnCl2 の添加量により、めっき付着量は通電量により
調整。
【0047】(ロ) AlCl3-エチルメチルイミダゾリウムク
ロリド(EMIC)浴 (低Ti皮膜形成用) AlCl3 67モル%−EMIC 33 モル%の溶融塩浴にTiCl3
MnCl2 を添加、浴温40〜80℃、液流速1 m/s 、電流密度
0.1〜1 A/dm2 。めっき皮膜中のTiとMnの割合はTiCl3
とMnCl2 の添加量により、めっき付着量は通電量により
調整。
【0048】(ハ) AlCl3-KCl 浴 (高Ti皮膜形成用) AlCl3 59モル%-NaCl 26モル%-KCl 14 モル%の溶融塩
浴にTiCl3 とMnCl2 を添加、浴温 180〜220 ℃、液流速
1 m/s 、電流密度 1〜20 A/dm2。めっき皮膜中のTiとMn
の割合はTiCl3 とMnCl2 の添加量により、膜厚 (付着
量) は通電量により調整。
【0049】スパッタリング 真空中にArガスを導入し、Al−Ti−Mn合金ターゲットに
電圧を印加。市販のマグネトロン型スパッタリング装置
を使用し、グロー放電によりイオン化したArをターゲッ
トに衝突させ、合金ターゲットよりAl、Ti、Mn原子を叩
き出し、基材のSiC繊維上に成膜。 条件:基材予熱温度50℃、Arガス操作圧力5×10-3 Tor
r 、RF出力1kW、成膜速度0.001 μm/s。
【0050】イオンプレーティング アーク放電型イオンプレーティング装置を使用して、高
真空下、ルツボ内のAl−Ti−Mn合金を電子ビーム加熱銃
により蒸発させる。この金属蒸気をアーク放電によりプ
ラズマ化し、基材繊維に負のバイアス電圧を印加して成
膜。 条件:基材予熱温度150 ℃、真空度 0.5×10-7 Torr 、
バイアス電圧 100V、成膜速度0.01μm/s。
【0051】真空蒸着 高真空下Al−Ti−Mn合金を電子ビーム加熱銃により気化
し、予熱された基材繊維上に析出させる。 条件:基材温度250 ℃、真空度 0.7×10-7 Torr 、成膜
速度 0.005μm/s。
【0052】化学蒸着 (CVD) AlCl3, TiCl4, MnCl2 の各ガスをキャリアーガス(H2)で
減圧 (10-2 Torr)反応室に導入し、約1150℃の反応温度
で分解させて基材繊維上に成膜。
【0053】プラズマ溶射 Ar+H2混合ガス・プラズマ溶射装置を使用し、溶射チャ
ンバー内を約10-2Torrに減圧して酸素を除去した後、Ar
スで100 Torrに圧力調整する。次いで、Al、Ti、Mn粉末
を合計で1kg/hr の速度で供給し、プラズマアーク出力
80 kW でプラズマジェットを基材繊維に向けて噴射し、
成膜。
【0054】粉末焼付 基材繊維を、塩化アルミニウム、塩化マンガン、塩化チ
タンの混合物を含有する20%水溶液に1時間浸漬した
後、1200℃に5時間加熱して焼付けを行い、Al−Ti−Mn
合金被膜を繊維上に形成する。
【0055】以上のいずれかの方法で表面被覆が施され
たSiC繊維の束を、Arガス雰囲気中で基材金属となるA
l、Mg、Tiまたはこれら金属の合金の溶湯中に通した
後、溶湯表面に50 Kg/cm2 の圧力をかけて繊維間に溶湯
を浸透させることにより、SiC繊維の割合が20〜40 vol
%の範囲内であるFRMを作製した。基材として使用し
た合金は、Al合金がJIS A 5357 H38、Mg合金がASTM AZ
31、Ti合金がTi-6%Al-4%Vであった。本発明で使用した
低炭素SiC繊維は、そのままでは上記溶融金属との濡れ
性が悪いが、表面被覆を施すことにより濡れ性が改善さ
れ、溶融金属との接触で金属が繊維に容易に付着した。
得られたFRMの高温強度耐久性を下記の試験法で評価
した。基材金属の種類と試験結果も表1に併せて示す。
【0056】高温強度耐久性試験:各FRMの試験片に
700 ℃×30分間→500 ℃×50時間を1サイクルとする繰
り返し熱負荷を50サイクルをかけた後、引張強度を測定
した。結果は、この熱負荷試験開始前の初期引張強度に
対する比率 (強度保持率、R) として、次の基準で評価
した。 R= (熱負荷試験後の引張強度) / (熱負荷試験前の引
張強度) ◎:R≧0.9 、○: 0.9>R≧0.75、△:0.75>R≧0.
5 、×:R<0.5 。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】表1に示した結果から明らかように、本
発明によりSiC繊維の表面をAl−Ti−Mn合金層で被覆し
ておくと、良好な高温強度耐久性が確保された。しか
し、Al−Ti−Mn合金層のTiまたはMn含有量が0.1 重量%
を下回るか、或いはその付着量が0.1 g/m2を下回ると、
高温強度耐久性は不十分となった。
【0059】本発明により、700 ℃以上の高温での強度
に優れているが、溶融金属との濡れ性が悪く、また金属
と接触した時に表面に脆いケイ化物が形成されて脆化し
易いという欠点を持った、低炭素のSiC繊維を強化材と
するFRMにおいて、これらの欠点を解消することがで
きる。それにより、700 ℃以上の高温で長期間使用して
も強度低下が少ない、高温強度の経時耐久性に優れたF
RMが得られ、FRMの性能向上と用途拡大が可能とな
る。
フロントページの続き (72)発明者 高谷 有志 和歌山市湊1850番地 住友金属工業株式会 社和歌山製鉄所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遊離炭素量1重量%以下の炭化ケイ素繊
    維を強化材とし、アルミニウム、マグネシウムおよびチ
    タンから選ばれた少なくとも1種の金属またはその合金
    を基材とする繊維強化金属複合材料において、該炭化ケ
    イ素繊維が、Ti:0.1〜80重量%、Mn:0.1〜40重量%、残
    部Al (但し、Al:15重量%以上) からなる付着量 0.1〜
    100 g/m2のAl−Ti−Mn合金被覆層を表面に有することを
    特徴とする、高温強度に優れた繊維強化金属複合材料。
  2. 【請求項2】 前記炭化ケイ素繊維と前記Al−Ti−Mn合
    金被覆層との中間に、内層として、付着量 0.1〜20 g/m
    2 のNi、ZnまたはNi−Zn合金層をさらに有していること
    を特徴とする、請求項1記載の繊維強化金属複合材料。
  3. 【請求項3】 前記Al−Ti−Mn合金被覆層が、塩化アル
    ミニウムを主体とし、 0.1〜50g/L のTiイオンと 0.001
    〜5g/L のMnイオンとを含有する塩化物浴を用いた溶融
    塩電解法により形成されたものである、請求項1または
    2記載の繊維強化金属複合材料。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002194666A (ja) * 2000-12-25 2002-07-10 Kumeo Usuda 繊維強化金属複合材料に用いられる繊維径が30μm以下で繊維表面の炭素成分を除去したセラミックス繊維とその製法
JP2010516504A (ja) * 2007-01-24 2010-05-20 エアバス・エスエーエス 金属質母材を備えた繊維複合材料及びその製造方法

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JP2002194666A (ja) * 2000-12-25 2002-07-10 Kumeo Usuda 繊維強化金属複合材料に用いられる繊維径が30μm以下で繊維表面の炭素成分を除去したセラミックス繊維とその製法
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