JPH07126669A - 脱硫剤含有エマルジョン燃料およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 粘度が高く、硫黄含有量が多い燃料であって
も高い脱硫剤利用率および高い脱硫率を確保して燃焼す
ることができる脱硫剤含有エマルジョン燃料の製造方法
を提供する。 【構成】 高粘度で硫黄含有量の多い可燃物、例えばオ
リノコタールに脱硫剤としてＣａ（ＯＨ）₂ スラリを添
加し、高剪断力下で混練して分散し、次いで界面活性剤
および水を添加し、混合してＯ／Ｗ型エマルジョンとす
る。 【効果】 燃焼性が高く、ハンドリング性に優れ、しか
も脱硫作用を有するエマルジョン燃料が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、脱硫剤含有エマルジョ
ン燃料およびその製造方法に係り、特に硫黄（Ｓ）含有
量が多く、粘度が高い可燃物であっても既存の液体燃料
と同様に取り扱いまたは燃焼することができる脱硫剤含
有エマルジョン燃料およびその製造方法に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】世界中に大量に埋蔵されている重質油、
ビチューメン等は安価な燃料源として期待されている
が、粘度が高くしかも硫黄含有量が多いためにその利用
分野はそれほど拡大していない。このうよな高硫黄、高
粘度燃料について、燃焼前に水素化脱硫法等によって予
め硫黄分を除去する方法やエマルジョン（Ｏ／Ｗ型）化
して取り扱い性を改善してから燃焼し、燃焼排ガスを脱
硫する方法等が工夫されているが、いずれの場合も多く
の費用がかかるという問題がある。一方、高硫黄、高粘
度燃料をＯ／Ｗ型エマルジョンとし、これに脱硫剤を混
合して燃焼する方法も提案されているが、脱硫剤利用率
が低く、脱硫率も十分なものではなかった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術の問題点を解決し、粘度が高く硫黄含有量が多
い燃料であっても、既存の液体燃料と同様に取り扱うこ
とができ、高い脱硫剤利用率および脱硫率を確保して安
定燃焼することができる脱硫剤含有エマルジョン燃料お
よびその製造方法を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本願で特許請求される発明は、以下の通りである。 （１）脱硫剤を分散した、重質油、ビチューメンをはじ
めとする高粘度で硫黄含有量の多い可燃物を水中に分散
してＯ／Ｗ型エマルジョンとしたことを特徴とする脱硫
剤含有エマルジョン燃料。 （２）重質油、ビチューメンをはじめとする高粘度で硫
黄含有量の多い可燃物に脱硫剤を添加し、高剪断力下で
混練して該脱硫剤を前記高粘度で硫黄含有量の多い可燃
物中に分散し、次いで界面活性剤および水を添加し、混
合してＯ／Ｗ型エマルジョンとすることを特徴とする脱
硫剤含有エマルジョン燃料の製造方法。

【０００５】

【作用】重質油、ビチューメンをはじめとする高粘度で
硫黄含有量の多い可燃物に脱硫剤を添加して高剪断力下
で混練することにより、前記高粘度で硫黄含有量の多い
可燃物中に脱硫剤が均一に分散する。この脱硫剤が分散
した可燃物に界面活性剤および水を添加して混合するこ
とにより、前記脱硫剤の大部分が油滴中に残留、分散し
たＯ／Ｗ型エマルジョン燃料となる。油滴中に残留、分
散した脱硫剤は再凝集しにくいので、脱硫剤の分散性が
高い脱硫剤含有エマルジョン燃料となり、燃焼時の脱硫
剤利用率および脱硫率が向上する。

【０００６】本発明において高粘度で硫黄含有量の多い
可燃物としては、例えばビチューメン、アスファルト、
ピッチ、コールタール、石油系の重質留分等があげられ
る。脱硫剤としては、例えばカルシウム（Ｃａ）、ナト
リウム（Ｎａ）、カリウム（Ｋ）、リチウム（Ｌｉ）、
マグネシウム（Ｍｇ）、鉄（Ｆｅ）等の金属化合物があ
げられ、カルウシム化合物としては、例えばＣａ（Ｏ
Ｈ）₂ 、ＣａＯ、ＣａＣＯ₃ 、Ｃａ（ＣＯＯＨ）₂ など
が使用される。このような脱硫剤は単独または２以上の
混合物として使用される。脱硫剤は、例えば粉体、水ス
ラリまたは水溶液として使用されるが、その形態は特に
限定されない。脱硫剤の添加量は、高粘度で硫黄含有量
の多い可燃物に含まれる全硫黄分に対し、モル比で１〜
３であることが好ましい。

【０００７】本発明において、脱硫剤を高粘度で硫黄含
有量の多い可燃物に分散する際の剪断速度は、例えば３
〜３０ｍ／ｓｅｃである。また脱硫剤の高粘度で硫黄含
有量の多い可燃物への分散性および／または脱硫剤が分
散した前記可燃物の水中への分散性を向上させるため
に、分散安定剤を添加することが好ましい。分散安定剤
としては、例えばポリ酢酸ビニルの部分鹸化物等が使用
される。

【０００８】本発明において、高粘度で硫黄含有量の多
い可燃物を分散する水の代わりにアルコールを用い、前
記高粘度で硫黄含有量の多い可燃物をＯ／Ａ型エマルジ
ョン燃料とすることもできる。本発明の脱硫剤含有エマ
ルジョン燃料の製造方法を、現在注目を集めているオリ
ノコタールのＯ／Ｗ型エマルジョン燃料（オリマルジョ
ン）の製造過程に採用することにより、前記オリノコタ
ールをクリーンな燃料に変換することができる。

【０００９】

【実施例】次に本発明を実施例によってさらに詳細に説
明する。オリノコタールに、脱硫剤として、Ｃａ（Ｏ
Ｈ）₂ ４０重量％の水溶液をＣａ分が前記オリノコター
ルに含まれる全Ｓ分に対してモル比で１．３となるよう
に添加した後、混練機（混練回転数：５０ｒｐｍ）で１
５分間混練してこれを前記オリノコタール中に分散させ
る。次いで脱硫剤が分散したオリノコタール７０重量部
に、界面活性剤として、例えばノニルフェノール・ポリ
オキシエチレンエーテルを１重量部および水を３０重量
部加えて１５分間混練して脱硫剤含有Ｏ／Ｗエマルジョ
ン燃料とした。この脱硫剤含有エマルジョン燃料（オリ
マルジョン）を燃焼したところ、燃焼条件によって差が
あるものの、６０〜９０％の高い脱硫率が得られた。

【００１０】図１は、本実施例で得られた脱硫剤含有エ
マルジョン燃料の概念図、図２は図１の部分拡大図であ
る。図において連続相である水相中に不連続相であるオ
リノコタールが分散しており、該オリノコタール（油
滴）中に微細なＣａ（ＯＨ）₂水溶液の液滴がほぼ均一
に分散している。本実施例によれば、先ずオリノコター
ル中に脱硫剤を分散した後、これに界面活性剤および水
を加えて混合し、Ｏ／Ｗ型エマルジョンとしたことによ
り、オリノコタール（油滴）に分散した脱硫剤が水相に
溶出することがなく、しかも油滴中で凝集することもな
いので、脱硫剤が均一に分散したオリノコタールがさら
に水相に分散した、安定な二重構造エマルジョン燃料が
得られる。従って、燃焼環境における脱硫剤利用率が著
しく向上し、脱硫剤添加量は従来の半分以下で十分とな
る。すなわち、従来オリマルジョンに添加されていた脱
硫剤は全硫黄分に対してモル比で５以上であるのに対
し、本実施例ではこれをモル比で１〜２に低減すること
ができる。

【００１１】本実施例において、Ｏ／Ｗ型オリマルジョ
ンを転相してＷ／Ｏ型とし、これに脱硫剤を添加して混
合することにより、水滴が分散したオリノコタール中に
脱硫剤を分散させたＷ／Ｏ型オリマルジョンとし、その
後、Ｏ／Ｗ型に調整し直してもよい。

【００１２】

【発明の効果】請求項１記載の発明によれば、高硫黄、
高粘度可燃物が油滴となって水中にほぼ均一に分散し、
さらにこの油滴中に脱硫剤がほぼ均一に分散しているの
で、燃料としてのハンドリング性に優れ、しかも脱硫剤
利用率が向上し、燃焼時に高い脱硫率が得られる。

【００１３】請求項２記載の発明によれば、高粘度で硫
黄含有量の多い可燃物に脱硫剤を添加して高剪断力下で
混練して脱硫剤を前記可燃物中に分散し、次いで界面活
性剤および水を添加し、混合してＯ／Ｗ型エマルジョン
とすることにより、燃焼性が高く、ハンドリング性に優
れ、しかも脱硫作用を具備したエマルジョン燃料が得ら
れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例で得られたオリマルジョンの
概念図。

【図２】図１の部分拡大図。

【符号の説明】

１…水相、２…油相（オリノコタールの油滴）、３…脱
硫剤。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 脱硫剤を分散した、重質油、ビチューメ
   ンをはじめとする高粘度で硫黄含有量の多い可燃物を水
   中に分散してＯ／Ｗ型エマルジョンとしたことを特徴と
   する脱硫剤含有エマルジョン燃料。
2. 【請求項２】 重質油、ビチューメンをはじめとする高
   粘度で硫黄含有量の多い可燃物に脱硫剤を添加し、高剪
   断力下で混練して該脱硫剤を前記高粘度で硫黄含有量の
   多い可燃物中に分散し、次いで界面活性剤および水を添
   加し、混合してＯ／Ｗ型エマルジョンとすることを特徴
   とする脱硫剤含有エマルジョン燃料の製造方法。