JPH07107984A - 染色体にマルチコピーのトリプトファンオペロンを含むバクテリアによるl−トリプトファンの製造 - Google Patents
染色体にマルチコピーのトリプトファンオペロンを含むバクテリアによるl−トリプトファンの製造Info
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- JPH07107984A JPH07107984A JP21136193A JP21136193A JPH07107984A JP H07107984 A JPH07107984 A JP H07107984A JP 21136193 A JP21136193 A JP 21136193A JP 21136193 A JP21136193 A JP 21136193A JP H07107984 A JPH07107984 A JP H07107984A
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- plasmid
- operon
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 染色体にマルチコピーのトリプトファンオペ
ロンを含んだバクテリアと、それによるL−トリプトフ
ァンの生産に関するものである。 【構成】 高トリプトファン生産株の遺伝子からクロー
ン化された突然変異trpオペロンを含むプラスミド、
宿主株と該プラスミドとの同種組換えにより得られた組
換えバクテリア、および該組換えバクテリアをL−トリ
プトファン生産培地で増殖させる過程を含む直接発酵に
よるL−トリプトファンの製造方法。
ロンを含んだバクテリアと、それによるL−トリプトフ
ァンの生産に関するものである。 【構成】 高トリプトファン生産株の遺伝子からクロー
ン化された突然変異trpオペロンを含むプラスミド、
宿主株と該プラスミドとの同種組換えにより得られた組
換えバクテリア、および該組換えバクテリアをL−トリ
プトファン生産培地で増殖させる過程を含む直接発酵に
よるL−トリプトファンの製造方法。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、染色体にマルチコピー
数のトリプトファンオペロンを含むバクテリア、および
染色体にマルチコピー数のトリプトファンオペロンを含
むバクテリアによるL−トリプトファンの製造に関す
る。
数のトリプトファンオペロンを含むバクテリア、および
染色体にマルチコピー数のトリプトファンオペロンを含
むバクテリアによるL−トリプトファンの製造に関す
る。
【0002】
【従来の技術】L−トリプトファンは重要なアミノ酸で
ある。幾つかの文献には、L−トリプトファンを添加し
た飼料によって家禽や豚の成長を促進できると報告され
ている[バターハム(Batterham)およびワトソン(Watso
n) 1985]。そのため、L−トリプトファンを経済的
に製造する方法はアミノ酸産業において注目を集めてい
る。L−トリプトファンの微生物による製造方法がいく
つか報告されている。例えば、グルコース系の炭化水素
類からの直接発酵[キノ(Kino)ら、1988]、L−ト
リプトファンの前駆物質からのバイオ変換[海老原ら、
1969]、およびL−トリプトファンの前駆物質から
の酵素反応[中沢ら、1972]などがある。L−トリプ
トファンの生産について、多数の工業プロセスは各種の
組換え株を用いて、それぞれL−トリプトファンのシン
ターゼ[湯川ら、1987]およびトリプトファナーゼを
触媒としてインドール/セリンおよびインドール/ピル
ビン酸塩の変換を行なう。しかし、これらのプロセスに
は、その前駆物質が高価であることや、濃度の高い前駆
物質が微生物の成長と酵素活性を抑えることなどの欠点
がある。これらの問題を解決するために、新しいプロセ
スと安価な前駆物質の代用物が開発された[バン(Bang)
ら、1983;オイタ(oita)ら、1990]。
ある。幾つかの文献には、L−トリプトファンを添加し
た飼料によって家禽や豚の成長を促進できると報告され
ている[バターハム(Batterham)およびワトソン(Watso
n) 1985]。そのため、L−トリプトファンを経済的
に製造する方法はアミノ酸産業において注目を集めてい
る。L−トリプトファンの微生物による製造方法がいく
つか報告されている。例えば、グルコース系の炭化水素
類からの直接発酵[キノ(Kino)ら、1988]、L−ト
リプトファンの前駆物質からのバイオ変換[海老原ら、
1969]、およびL−トリプトファンの前駆物質から
の酵素反応[中沢ら、1972]などがある。L−トリプ
トファンの生産について、多数の工業プロセスは各種の
組換え株を用いて、それぞれL−トリプトファンのシン
ターゼ[湯川ら、1987]およびトリプトファナーゼを
触媒としてインドール/セリンおよびインドール/ピル
ビン酸塩の変換を行なう。しかし、これらのプロセスに
は、その前駆物質が高価であることや、濃度の高い前駆
物質が微生物の成長と酵素活性を抑えることなどの欠点
がある。これらの問題を解決するために、新しいプロセ
スと安価な前駆物質の代用物が開発された[バン(Bang)
ら、1983;オイタ(oita)ら、1990]。
【0003】経済上の角度から見れば、安価なグルコー
ス系炭化水素の直接発酵によりL−トリプトファンを生
産する方法は、低コストで大量生産できる選別肢であ
る。工業上、ブレビバクテリウム(Brevi bacterium)
(松井ら、1988)、コリネバクテリウム(Corynebact
erium)(萩野および中山、1975)、およびバシラス
(Bacillus)(椎野ら、1973)等の典型的なグルタミ
ン酸生産菌株を用いてL−トリプトファンを生産するこ
とが一般的である。しかし、L−トリプトファン合成の
遺伝的情報とその代謝経路が詳しく解明されているエシ
ェリキア・コリ(Escherichia coli)は、L−トリプト
ファン生産用微生物の有力候補として考えられる[アビ
ア(Abia)ら、1980;トリベ(Tribe)およびピッタ
ード(Pittard)1979]。
ス系炭化水素の直接発酵によりL−トリプトファンを生
産する方法は、低コストで大量生産できる選別肢であ
る。工業上、ブレビバクテリウム(Brevi bacterium)
(松井ら、1988)、コリネバクテリウム(Corynebact
erium)(萩野および中山、1975)、およびバシラス
(Bacillus)(椎野ら、1973)等の典型的なグルタミ
ン酸生産菌株を用いてL−トリプトファンを生産するこ
とが一般的である。しかし、L−トリプトファン合成の
遺伝的情報とその代謝経路が詳しく解明されているエシ
ェリキア・コリ(Escherichia coli)は、L−トリプト
ファン生産用微生物の有力候補として考えられる[アビ
ア(Abia)ら、1980;トリベ(Tribe)およびピッタ
ード(Pittard)1979]。
【0004】エシェリキア・コリ(Escherichia coli)
では、L−トリプトファンの生合成が複雑な機構によっ
て厳密に制御されている[スミス(Smith)およびヤノフ
スキー(Yanofsky)1962]。そのうえ、trpオペロ
ンの酵素のフィードバックおよび抑制阻害も詳しく研究
された。そこで、伝統的な突然変異により、特定の経路
にあるフィードバックおよび抑制制御を取り除くと、L
−トリプトファンが過剰生成される。一方、様々なプラ
スミドにおいて異なったコピー数のクローン化trpオ
ペロンを含むエシェリキア・コリ菌株が報告されている
[アンダーソン(Anderson)およびクラウス(Klaus)19
83; アイバ(Aiba)ら、1982]。これらの結果
は、L−トリプトファンの生産とtrpオペロンのコピ
ー数との関係を示す。しかし、trpオペロンの発現頻
度が高すぎたら(過剰発現)、プラスミドが不安定にな
り、かえってL−トリプトファン生産が低下することに
なる。組換えプラスミドを安定化させるために、抗生物
質を選別プレッシャーとして加えることが一般的である
が、工業的スケールでは、抗生物質の使用はコストが高
くて実用化しにくい。
では、L−トリプトファンの生合成が複雑な機構によっ
て厳密に制御されている[スミス(Smith)およびヤノフ
スキー(Yanofsky)1962]。そのうえ、trpオペロ
ンの酵素のフィードバックおよび抑制阻害も詳しく研究
された。そこで、伝統的な突然変異により、特定の経路
にあるフィードバックおよび抑制制御を取り除くと、L
−トリプトファンが過剰生成される。一方、様々なプラ
スミドにおいて異なったコピー数のクローン化trpオ
ペロンを含むエシェリキア・コリ菌株が報告されている
[アンダーソン(Anderson)およびクラウス(Klaus)19
83; アイバ(Aiba)ら、1982]。これらの結果
は、L−トリプトファンの生産とtrpオペロンのコピ
ー数との関係を示す。しかし、trpオペロンの発現頻
度が高すぎたら(過剰発現)、プラスミドが不安定にな
り、かえってL−トリプトファン生産が低下することに
なる。組換えプラスミドを安定化させるために、抗生物
質を選別プレッシャーとして加えることが一般的である
が、工業的スケールでは、抗生物質の使用はコストが高
くて実用化しにくい。
【0005】本発明者らは、L−トリプトファン生産に
対するフィードバック耐性trpオペロン遺伝子量の効
果を調べた。また、不安定なプラスミドを宿主株に導入
すると、同種組換えが起こり、プラスミドがマルチコピ
ーの状態として組み込まれることを発見した。そのう
え、本発明は、選別プレッシャーを与えない状態で、プ
ラスミドを安定に保持しながら効果的にL−トリプトフ
ァンを生産できる組換え株を開発した。
対するフィードバック耐性trpオペロン遺伝子量の効
果を調べた。また、不安定なプラスミドを宿主株に導入
すると、同種組換えが起こり、プラスミドがマルチコピ
ーの状態として組み込まれることを発見した。そのう
え、本発明は、選別プレッシャーを与えない状態で、プ
ラスミドを安定に保持しながら効果的にL−トリプトフ
ァンを生産できる組換え株を開発した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
一つの目的としては、トリプトファンを大量生産できる
菌株の遺伝子からクローン化した突然変異trpオペロ
ンを含むプラスミドを提供することである。
一つの目的としては、トリプトファンを大量生産できる
菌株の遺伝子からクローン化した突然変異trpオペロ
ンを含むプラスミドを提供することである。
【0007】本発明のもう一つの目的としては、染色体
にマルチコピーのトリプトファンオペロンを含む組換え
バクテリアを提供することである。
にマルチコピーのトリプトファンオペロンを含む組換え
バクテリアを提供することである。
【0008】本発明のまたもう一つの目的として、染色
体にマルチコピーのトリプトファンオペロンを持つ組換
えバクテリアを利用し、L−トリプトファンを生産する
方法を提供することである。
体にマルチコピーのトリプトファンオペロンを持つ組換
えバクテリアを利用し、L−トリプトファンを生産する
方法を提供することである。
【0009】本発明の上述の目的と他の目的、利点と特
徴は、以下の詳細な説明を参考にして、もっと完全に理
解されるべきである。
徴は、以下の詳細な説明を参考にして、もっと完全に理
解されるべきである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、染色体にマル
チコピーのトリプトファンオペロン(trpオペロン)を
含むバクテリア、および染色体にマルチコピーのトリプ
トファンオペロンを含むバクテリアによるL−トリプト
ファンの生産に関するものである。
チコピーのトリプトファンオペロン(trpオペロン)を
含むバクテリア、および染色体にマルチコピーのトリプ
トファンオペロンを含むバクテリアによるL−トリプト
ファンの生産に関するものである。
【0011】突然変異は、L−トリプトファン生合成の
フィードバック阻害効果を抑えることが知られており、
突然変異株の中でも、5−フッ素トリプトファン耐性
株、イー・コリ EMS4−C25は18時間内3g/
リットルのL−トリプトファンを生産する能力を持つ。
このイー・コリ EMS4−C25から得られたフィー
ドバック耐性trpオペロンを、pUC19およびpH
SG576に挿入してそれぞれpTC701およびpT
C576を得た。pHSG576およびpTC701が
イー・コリ に導入されたとき、遺伝子組込みが同種組
換えの方式で行なわれた。サザンハイブリッド形成(So
uthern hybridization)の技術により、本発明者らは、
挿入されたプラスミドがマルチコピーとして存在するこ
とを明らかにした。外来trpオペロンを持つ組込み株
は、宿主株よりも高い活性のアントラニル酸シンターゼ
およびトリプロファンシンターゼを持ったことで、D−
グルコースから13%変換収率で9.2g/リットルの
L−トリプトファンを生成する能力を持つ。この組込み
株は、バッチ式発酵により、17時間内に16g/リッ
トルのL−トリプトファンを生産でき、かつ細胞内の外
来trpオペロンを安定させる選別プレッシャーとして
の抗生物質を不用とする。trpオペロンを持つプラス
ミドの組込みおよび増幅過程は、プラスミドを安定さ
せ、L−トリプトファンの生産量を増加した。イー・コ
リ EMS4−C25は、通商産業省工業技術院生命工
学工業技術研究所に、ブダペスト条約の下、受託番号F
ERM BP−4374にて、平成5年8月2日に寄託
してある。
フィードバック阻害効果を抑えることが知られており、
突然変異株の中でも、5−フッ素トリプトファン耐性
株、イー・コリ EMS4−C25は18時間内3g/
リットルのL−トリプトファンを生産する能力を持つ。
このイー・コリ EMS4−C25から得られたフィー
ドバック耐性trpオペロンを、pUC19およびpH
SG576に挿入してそれぞれpTC701およびpT
C576を得た。pHSG576およびpTC701が
イー・コリ に導入されたとき、遺伝子組込みが同種組
換えの方式で行なわれた。サザンハイブリッド形成(So
uthern hybridization)の技術により、本発明者らは、
挿入されたプラスミドがマルチコピーとして存在するこ
とを明らかにした。外来trpオペロンを持つ組込み株
は、宿主株よりも高い活性のアントラニル酸シンターゼ
およびトリプロファンシンターゼを持ったことで、D−
グルコースから13%変換収率で9.2g/リットルの
L−トリプトファンを生成する能力を持つ。この組込み
株は、バッチ式発酵により、17時間内に16g/リッ
トルのL−トリプトファンを生産でき、かつ細胞内の外
来trpオペロンを安定させる選別プレッシャーとして
の抗生物質を不用とする。trpオペロンを持つプラス
ミドの組込みおよび増幅過程は、プラスミドを安定さ
せ、L−トリプトファンの生産量を増加した。イー・コ
リ EMS4−C25は、通商産業省工業技術院生命工
学工業技術研究所に、ブダペスト条約の下、受託番号F
ERM BP−4374にて、平成5年8月2日に寄託
してある。
【0012】
材料および方法 菌株およびプラスミド イー・コリ W3110 trpEは、アメリカン・タイ
プ・カルチャー・コレクション(America Type Cultu
re Collection)から購入したものであり、フィードバ
ック耐性trpオペロンを持ったイー・コリ EMS4
−C25は、イー・コリ K12をN−メチル−N'−ニ
トロ−N−ニトロソグアニジン(N−methyl−N'−nit
ro−N−nitrosoguanidine)の処理により単離した5−
フッ素トリプトファン耐性株から選別されたものであ
る。プラスミドpTC701およびpTC576は、そ
れぞれ、突然変異したtrpオペロンをハイコピー数ベ
クターpUC19のSmaI部位に、またはローコピー
数ベクターpHSG576のEcoRI−BamHI部
位に挿入して得られたものである。
プ・カルチャー・コレクション(America Type Cultu
re Collection)から購入したものであり、フィードバ
ック耐性trpオペロンを持ったイー・コリ EMS4
−C25は、イー・コリ K12をN−メチル−N'−ニ
トロ−N−ニトロソグアニジン(N−methyl−N'−nit
ro−N−nitrosoguanidine)の処理により単離した5−
フッ素トリプトファン耐性株から選別されたものであ
る。プラスミドpTC701およびpTC576は、そ
れぞれ、突然変異したtrpオペロンをハイコピー数ベ
クターpUC19のSmaI部位に、またはローコピー
数ベクターpHSG576のEcoRI−BamHI部
位に挿入して得られたものである。
【0013】プラスミドの構築 染色体DNAは、マニアティス(Maniatis)ら(198
3)の方法によって生成された。制限酵素とT4DNA
リガーゼは業者[ベーリンガー・マンハイム・バイオケ
ミカルズ(Boehringer Mannheim Biochemicals)、イ
ンディアナポリス、アメリカ合衆国]が提供した方法に
したがって使用した。プラスミドDNAは、アルカリ分
解法で単離され、CsCl−臭素エチジウム平衡遠心法に
よって精製された。制限されたDNA断片は、低ゲル化
温度アガロース[ベセスダ・リサーチ・ラボラトリーズ
(Bethesda Research Laboratories)、 ゲイザスバー
グ、アメリカ合衆国]から回収され、バイスランダー(W
eislander)ら(1979)の方法で精製された。イー・コ
リ EMS4−C25のゲノムライブラリーは、ベクタ
ーとしてのファージEMBLを使って生成した。trp
オペロンを含む8.7kb DNA断片は、SmaI処理
とプラークハイブリッド形成選別によって得られた。こ
のDNA断片をpUC19ベクターのSmaI部位に挿
入してpTC701を得た。pTC701をEcoRI
およびBamHIエンドヌクレアーゼで処理することに
より、8.7kb DNA断片が選別された後、pHSG
576のEcoRIおよびBamHI切断部位に挿入し
てpTC576を得た(図1)。
3)の方法によって生成された。制限酵素とT4DNA
リガーゼは業者[ベーリンガー・マンハイム・バイオケ
ミカルズ(Boehringer Mannheim Biochemicals)、イ
ンディアナポリス、アメリカ合衆国]が提供した方法に
したがって使用した。プラスミドDNAは、アルカリ分
解法で単離され、CsCl−臭素エチジウム平衡遠心法に
よって精製された。制限されたDNA断片は、低ゲル化
温度アガロース[ベセスダ・リサーチ・ラボラトリーズ
(Bethesda Research Laboratories)、 ゲイザスバー
グ、アメリカ合衆国]から回収され、バイスランダー(W
eislander)ら(1979)の方法で精製された。イー・コ
リ EMS4−C25のゲノムライブラリーは、ベクタ
ーとしてのファージEMBLを使って生成した。trp
オペロンを含む8.7kb DNA断片は、SmaI処理
とプラークハイブリッド形成選別によって得られた。こ
のDNA断片をpUC19ベクターのSmaI部位に挿
入してpTC701を得た。pTC701をEcoRI
およびBamHIエンドヌクレアーゼで処理することに
より、8.7kb DNA断片が選別された後、pHSG
576のEcoRIおよびBamHI切断部位に挿入し
てpTC576を得た(図1)。
【0014】DNAハイブリッド形成 サザンハイブリッド形成およびニック翻訳は、マニアテ
ィス(Maniatis)ら(1982)の方法により、非放射性
DNA標識および検出キット[ベーリンガー・マンハイ
ム・バイオケミカルズ]を使って手作業で行なわれた。
DNA断片は、SDS−PAGEで解析した後、ナイロ
ン膜にトランスブロットした。DNAは、トランス照明
デバイス(transillumination)を用いて3分間UV−ク
ロスリンクして固定した。制限されていないDNAサン
プルは、ドットブロット装置を用いてナイロン膜に吸着
された[マニアティス(Maniatis)ら1982]。ハイブ
リッド形成は、ジゴキシゲニン標識(digoxigenin labe
l)したpHSG576またはtrpオペロンをプローブ
として使用することにより行なわれた。プローブが抗体
−酵素共役物、抗ジゴキシゲニンおよびアルカリホスフ
ァターゼを含んだ溶液で培養された後、抗体−抗原共役
物の位置が酵素呈色反応により可視化される。呈色の強
度はCAMAG TLCスキャナーで評価される。
ィス(Maniatis)ら(1982)の方法により、非放射性
DNA標識および検出キット[ベーリンガー・マンハイ
ム・バイオケミカルズ]を使って手作業で行なわれた。
DNA断片は、SDS−PAGEで解析した後、ナイロ
ン膜にトランスブロットした。DNAは、トランス照明
デバイス(transillumination)を用いて3分間UV−ク
ロスリンクして固定した。制限されていないDNAサン
プルは、ドットブロット装置を用いてナイロン膜に吸着
された[マニアティス(Maniatis)ら1982]。ハイブ
リッド形成は、ジゴキシゲニン標識(digoxigenin labe
l)したpHSG576またはtrpオペロンをプローブ
として使用することにより行なわれた。プローブが抗体
−酵素共役物、抗ジゴキシゲニンおよびアルカリホスフ
ァターゼを含んだ溶液で培養された後、抗体−抗原共役
物の位置が酵素呈色反応により可視化される。呈色の強
度はCAMAG TLCスキャナーで評価される。
【0015】プラスミドの表現型安定性 細胞をルリア−バータニ(Luria−Bertani)(LB)ブロ
スで25世代培養した後、それを希釈してLBアガーに
移した。菌株はレプリカ平板法により、抗生物質を含む
LBアガープレートに移してその耐薬性を調べた。クロ
ラムフェニコールおよびアンピシリンの使用量は、30
ug/mlおよび100ug/mlであった。
スで25世代培養した後、それを希釈してLBアガーに
移した。菌株はレプリカ平板法により、抗生物質を含む
LBアガープレートに移してその耐薬性を調べた。クロ
ラムフェニコールおよびアンピシリンの使用量は、30
ug/mlおよび100ug/mlであった。
【0016】L−トリプトファンの醗酵 予め、細胞をLBブロスで培養し、中間−対数期(mid-l
ogarithmic phase)、0.15mlの培養液を0.1% K
H2PO4、0.2% Na2HPO4、1.0%(NH4)2SO
4、0.02%MgSO4、0.05%クエン酸ナトリウ
ム、0.8%酵母エキス、7%グルコースおよび3%Ca
CO3 15mlを含む15ml培養液に移した。発酵
は、37℃に200rpmで振動しながら行った。
ogarithmic phase)、0.15mlの培養液を0.1% K
H2PO4、0.2% Na2HPO4、1.0%(NH4)2SO
4、0.02%MgSO4、0.05%クエン酸ナトリウ
ム、0.8%酵母エキス、7%グルコースおよび3%Ca
CO3 15mlを含む15ml培養液に移した。発酵
は、37℃に200rpmで振動しながら行った。
【0017】発酵も5リットルの容器で行なわれる。こ
の場合には、50mlのLB培地を入れた500mlフ
ラスコに0.2mlの凍結した17%グリセロールを有
するストック培養液を無菌的に加え、37℃で、回転振
動器で撹拌しながら一夜培養した。培養液を、さらに、
3リットルの5%D−グルコースを添加した発酵培地を
入れた発酵槽に導入した。培地のpHは、25%のアモ
ニア液でpH6.8に保持した。温度は、37℃に制御
された。50%(W/V)D−グルコースを含む培地を、
D−グルコースの濃度を1〜2%の間に保持するために
無菌的に発酵槽に導入した。エアレーションは、1 vv
mに保持され、溶存酸素はインペーラスピードコンドロ
ーラを用いて空気飽和濃度の20%以上に制御された。
試料をそれぞれ異なった間隔で採って、そのグルコース
量、酢酸量、L−トリプトファン量および細胞密度を測
定した。細胞密度は、水で希釈した後に吸光光度計を使
い、660nmの吸光で測定した。グルコースおよび酢
酸の濃度の測定は、IBM炭化水素カラムHPLC法
[ウォーター(Water)社]を用いて、溶出液を80%アセ
トニトリール/水系、流速を1.2ml/分にして室温
で行った。L−トリプトファンの濃度は、ALPKEM
自動分析器と、UV検出器を持ったHPLCで測定し
た。
の場合には、50mlのLB培地を入れた500mlフ
ラスコに0.2mlの凍結した17%グリセロールを有
するストック培養液を無菌的に加え、37℃で、回転振
動器で撹拌しながら一夜培養した。培養液を、さらに、
3リットルの5%D−グルコースを添加した発酵培地を
入れた発酵槽に導入した。培地のpHは、25%のアモ
ニア液でpH6.8に保持した。温度は、37℃に制御
された。50%(W/V)D−グルコースを含む培地を、
D−グルコースの濃度を1〜2%の間に保持するために
無菌的に発酵槽に導入した。エアレーションは、1 vv
mに保持され、溶存酸素はインペーラスピードコンドロ
ーラを用いて空気飽和濃度の20%以上に制御された。
試料をそれぞれ異なった間隔で採って、そのグルコース
量、酢酸量、L−トリプトファン量および細胞密度を測
定した。細胞密度は、水で希釈した後に吸光光度計を使
い、660nmの吸光で測定した。グルコースおよび酢
酸の濃度の測定は、IBM炭化水素カラムHPLC法
[ウォーター(Water)社]を用いて、溶出液を80%アセ
トニトリール/水系、流速を1.2ml/分にして室温
で行った。L−トリプトファンの濃度は、ALPKEM
自動分析器と、UV検出器を持ったHPLCで測定し
た。
【0018】酵素活性測定 アントラニル酸合成酵素(EC 4.1.3.27)とトリプ
トファン合成酵素(EC 4.2.1.20)の活性は、スミ
ス・ヤノフスキー(Smith Yanofsky)(1962)の方法
にしたがって測定した。活性の単位は、30℃で1分間
毎に1umolの基質を消費する酵素量、または1um
olの生成物を生産する酵素量で定義された。特定活性
は、1mgのプロテインに含まれる酵素活性(ミリ単位)
で定義された。プロテイン濃度は、牛血清アルブミンを
スタンダードにしてロウリィ(Lowry)法(1951)で
定量された。
トファン合成酵素(EC 4.2.1.20)の活性は、スミ
ス・ヤノフスキー(Smith Yanofsky)(1962)の方法
にしたがって測定した。活性の単位は、30℃で1分間
毎に1umolの基質を消費する酵素量、または1um
olの生成物を生産する酵素量で定義された。特定活性
は、1mgのプロテインに含まれる酵素活性(ミリ単位)
で定義された。プロテイン濃度は、牛血清アルブミンを
スタンダードにしてロウリィ(Lowry)法(1951)で
定量された。
【0019】組換え株によるL−トリプトファンの発酵 クラシック突然変異により選別された5−フッ素トリプ
トファン耐性異変株(イー・コリ EMS4−C25)
は、発酵培地で3g/1リットル−トリプトファンを生
産した。この変異株はフィードバック阻害耐性酵素:ア
ントラニル酸シンターゼとトリプトファンシンターゼ
(図2)を含み、trpオペロンの突然変異を示す。突
然変異したtrpオペロンの遺伝子量効果がL−トリプ
トファンの生産を増加するかどうかを調べるために、t
rpオペロンを持ったプラスミドpTC701を構築し
た。trpオペロンを含む8.7kb DNA断片を、イ
ー・コリ EMS4−C25のゲノムライブラリーから
得、それをpUC19に挿入してプラスミドpTC70
1を構築し、最小培地でtrpオペロン欠乏株イー・コ
リ W3110 trpEを補足する。大部分の細胞は、
100世代後にプラスミドを失ったものの、形質転換株
は、培地でD−グルコースから2%の変換収率で1.5
g/リットル L−トリプトファンを生産できた。イー
・コリ EMS4−C25にプラスミドpTC701を
導入することにより、L−トリプトファンの生産は、4
g/リットルまで上昇し、プラスミドの表現型安定度は
50世代後に僅か22%であった。この形質転換株を数
回再培養し、抗生物質を含んだLBアガープレートで精
製することにより、100コロニーから表現型安定度が
90%、L−トリプトファン生産が9.2g/mlに及
ぶ株が得られた。形質転換株はプラスミドの表現型安定
性が高く、宿主からプラスミドを分離できなかったの
で、プラスミドは宿主細胞の染色体に挿入されたと思わ
れた。
トファン耐性異変株(イー・コリ EMS4−C25)
は、発酵培地で3g/1リットル−トリプトファンを生
産した。この変異株はフィードバック阻害耐性酵素:ア
ントラニル酸シンターゼとトリプトファンシンターゼ
(図2)を含み、trpオペロンの突然変異を示す。突
然変異したtrpオペロンの遺伝子量効果がL−トリプ
トファンの生産を増加するかどうかを調べるために、t
rpオペロンを持ったプラスミドpTC701を構築し
た。trpオペロンを含む8.7kb DNA断片を、イ
ー・コリ EMS4−C25のゲノムライブラリーから
得、それをpUC19に挿入してプラスミドpTC70
1を構築し、最小培地でtrpオペロン欠乏株イー・コ
リ W3110 trpEを補足する。大部分の細胞は、
100世代後にプラスミドを失ったものの、形質転換株
は、培地でD−グルコースから2%の変換収率で1.5
g/リットル L−トリプトファンを生産できた。イー
・コリ EMS4−C25にプラスミドpTC701を
導入することにより、L−トリプトファンの生産は、4
g/リットルまで上昇し、プラスミドの表現型安定度は
50世代後に僅か22%であった。この形質転換株を数
回再培養し、抗生物質を含んだLBアガープレートで精
製することにより、100コロニーから表現型安定度が
90%、L−トリプトファン生産が9.2g/mlに及
ぶ株が得られた。形質転換株はプラスミドの表現型安定
性が高く、宿主からプラスミドを分離できなかったの
で、プラスミドは宿主細胞の染色体に挿入されたと思わ
れた。
【0020】アイバ(Aiba)ら(1982)はローコピ
ー数ベクターpSC101は安定的に宿主に保持される
ことを報告している。そこで、pSC101 oriを
含むpHSG576ベクターは、trpオペロンサブク
ローニングに使われた。プラスミドpTC576は、p
HSG576にtrpオペロンを挿入したものである。
イー・コリ EMS−C25にプラスミドpTC576
を導入し、形質転換株を新鮮な培地で数回再培養した
後、pTC701を含む株に匹敵できるL−トリプトフ
ァンおよびプラスミド表現型安定度を持つ株が選別され
た。結果を下記「表1」に示す。
ー数ベクターpSC101は安定的に宿主に保持される
ことを報告している。そこで、pSC101 oriを
含むpHSG576ベクターは、trpオペロンサブク
ローニングに使われた。プラスミドpTC576は、p
HSG576にtrpオペロンを挿入したものである。
イー・コリ EMS−C25にプラスミドpTC576
を導入し、形質転換株を新鮮な培地で数回再培養した
後、pTC701を含む株に匹敵できるL−トリプトフ
ァンおよびプラスミド表現型安定度を持つ株が選別され
た。結果を下記「表1」に示す。
【0021】
【表1】
【0022】サザンおよびドットハイブリッド形成 同種組換えを確認するために、サザンおよびドットブロ
ットが行なわれた。trpオペロン遺伝子の発現は、ア
ントラニル酸シンターゼおよびトリプトファンシンター
ゼの活性を指標にして調べられた。
ットが行なわれた。trpオペロン遺伝子の発現は、ア
ントラニル酸シンターゼおよびトリプトファンシンター
ゼの活性を指標にして調べられた。
【0023】イー・コリにpTC576が組込まれたこ
とは、染色体DNAおよびpHSG576をハイブリッ
ド形成させることによって確認された(図3)。酵素顕色
反応により、これらのブロットの中で、非形質転換細胞
以外のサンプルは、すべて強いハイブリッドを示してい
た。pHSG576はlacZ遺伝子を持つので、非形
質転換株も弱いハイブリッドを示していた。
とは、染色体DNAおよびpHSG576をハイブリッ
ド形成させることによって確認された(図3)。酵素顕色
反応により、これらのブロットの中で、非形質転換細胞
以外のサンプルは、すべて強いハイブリッドを示してい
た。pHSG576はlacZ遺伝子を持つので、非形
質転換株も弱いハイブリッドを示していた。
【0024】バクテリア染色体に組込まれたプラスミド
の増幅 イー・コリ EMS4−C25および組込まれた株のゲ
ノムDNAをEcoRIおよびClaIエンドヌクレア
ーゼで処理した後、電気泳動にかけ、ブロットしてtr
pオペロン断片でプローブした。図4では、C25/E
coRIと標識されたレーンに1つのバンドが見られ、
それは1ngのイー・コリ EMS4−C25株のゲノ
ムDNAをEcoRIエンドヌクレアーゼで処理してt
rpオペロンでプローブするものである。一方、D15
/EcoRIと標識されたレーンに3つのバンド(23
kbの所にほぼ重なる二つのバンドがある)が見られ、
それは1ngの組込まれた株のゲノムDNAをEcoR
Iエンドヌクレアーゼで処理してtrpオペロンでプロ
ーブしたものである。バンドの色の強度をスキャンし、
図5に示している同種組換えモデルを参照しながら、組
込まれた株の染色体にtrpオペロンが3コピーあるこ
とが分かった。このモデルはまた、EMS4−C25/
pTC576が組込まれた株の染色体にはtrpオペロ
ンを3コピー持てば、エンドヌクレアーゼClaIによ
って4つのtrpオペロンハイブリッドのバンドに分解
されることを示唆する(図5)。D15/ClaIと標識
されたレーン(図4)にあるそれぞれ制限分解断片におい
て、組込まれた株には、trpオペロン制限分解断片に
相当するところに増幅されたバンドが酵素反応の顕色と
して現れた。バンド顕色強度から、染色体にtrpオペ
ロンが3つあることが分かった。
の増幅 イー・コリ EMS4−C25および組込まれた株のゲ
ノムDNAをEcoRIおよびClaIエンドヌクレア
ーゼで処理した後、電気泳動にかけ、ブロットしてtr
pオペロン断片でプローブした。図4では、C25/E
coRIと標識されたレーンに1つのバンドが見られ、
それは1ngのイー・コリ EMS4−C25株のゲノ
ムDNAをEcoRIエンドヌクレアーゼで処理してt
rpオペロンでプローブするものである。一方、D15
/EcoRIと標識されたレーンに3つのバンド(23
kbの所にほぼ重なる二つのバンドがある)が見られ、
それは1ngの組込まれた株のゲノムDNAをEcoR
Iエンドヌクレアーゼで処理してtrpオペロンでプロ
ーブしたものである。バンドの色の強度をスキャンし、
図5に示している同種組換えモデルを参照しながら、組
込まれた株の染色体にtrpオペロンが3コピーあるこ
とが分かった。このモデルはまた、EMS4−C25/
pTC576が組込まれた株の染色体にはtrpオペロ
ンを3コピー持てば、エンドヌクレアーゼClaIによ
って4つのtrpオペロンハイブリッドのバンドに分解
されることを示唆する(図5)。D15/ClaIと標識
されたレーン(図4)にあるそれぞれ制限分解断片におい
て、組込まれた株には、trpオペロン制限分解断片に
相当するところに増幅されたバンドが酵素反応の顕色と
して現れた。バンド顕色強度から、染色体にtrpオペ
ロンが3つあることが分かった。
【0025】pTC701とpTC576の組込みと増
幅により、多クローン化trpオペロン遺伝子が非常に
安定になり、L−トリプトファン生合成が抗生物質の添
加による選別プレシャーがなくても促進された(表
1)。下記「表2」に示すのは、L−トリプトファン生
産に対するtrpオペロン量と遺伝子表現の影響であ
る。データにより、アントラニル酸シンターゼとトリプ
トファンシンターゼの活性とL−トリプトファンの生産
はtrpオペロンのコピー数に比例することが示唆され
る。
幅により、多クローン化trpオペロン遺伝子が非常に
安定になり、L−トリプトファン生合成が抗生物質の添
加による選別プレシャーがなくても促進された(表
1)。下記「表2」に示すのは、L−トリプトファン生
産に対するtrpオペロン量と遺伝子表現の影響であ
る。データにより、アントラニル酸シンターゼとトリプ
トファンシンターゼの活性とL−トリプトファンの生産
はtrpオペロンのコピー数に比例することが示唆され
る。
【0026】
【表2】
【0027】L−トリプトファンの生産性 5リットルの発酵槽でL−トリプトファンの生産性を調
べた。結果を下記「表3」に示す。2リットルの発酵培
地にシード培養液を接種(5%植え込む数)することに
よって導入して発酵を行なった。発酵条件は詳細な説明
に記述した。60%(W/V)D−グルコースが含まれた
培地は、発酵過程の間に、ブロスのD−グルコースの濃
度を1−2%(W/V)の間に制御しながら入れられた。
24時間の発酵をした後、ブロスを遠心し、上清のL−
トリプトファンをHPLCによって定量された。
べた。結果を下記「表3」に示す。2リットルの発酵培
地にシード培養液を接種(5%植え込む数)することに
よって導入して発酵を行なった。発酵条件は詳細な説明
に記述した。60%(W/V)D−グルコースが含まれた
培地は、発酵過程の間に、ブロスのD−グルコースの濃
度を1−2%(W/V)の間に制御しながら入れられた。
24時間の発酵をした後、ブロスを遠心し、上清のL−
トリプトファンをHPLCによって定量された。
【0028】
【表3】
【0029】形質転換する前にレシピエントよりクロー
ン化されたtrpオペロン遺伝子に連結したプラスミド
pUC19とpHSG576は、イー・コリの染色体に
組込まれたことが明らかにされた。DNA制限分解のプ
ロフィル(図4、図5)により、挿入された後のプラスミ
ドと側面に置いたtrpオペロン遺伝子は染色体の中に
タンデムアレー(tandem array)として増幅された。以上
の結果を説明する複製挿入モデルは、すでに報告されて
いる[バシラス・サチリス(Bacillus subtilis) (ハル
デンワング(Haldenwang)ら 1980)、ストレプトコ
ッカス・ニューモニエ(Streptococcus pnemoniae) (ポ
ッツィ(Pozzi)およびギルド(Guild)1985)とサッ
カロミセス・セレビシエ(Saccharmyces cerevisiae)
(ヒネン(Hinnen)ら 1978)]。一般的には、遺伝子
量を増やそうとするとき、recA−欠乏イー・コリ株
は、組換えを抑えるために組換えDNAレシピエントと
して使われる。しかし、組換え株には、プラスミドが不
安定になり、遺伝子生産の収量に対する遺伝子量効果が
低下することがしばしば起こる。本発明には、recA
−陽性株のゲノムにtrpオペロンを含むプラスミドを
増幅、挿入し、L−トリプトファンの生合成を向上する
新たなアプローチを提供した。組込まれた株は、抗生物
質を添加しなくても、trpオペロンを安定的に保持す
ることができ、その同時に相当の量のL−トリプトファ
ンを生産できるので、工業上に適用されるこの株を使っ
た発酵法の開発は今後の目標になるであろ。
ン化されたtrpオペロン遺伝子に連結したプラスミド
pUC19とpHSG576は、イー・コリの染色体に
組込まれたことが明らかにされた。DNA制限分解のプ
ロフィル(図4、図5)により、挿入された後のプラスミ
ドと側面に置いたtrpオペロン遺伝子は染色体の中に
タンデムアレー(tandem array)として増幅された。以上
の結果を説明する複製挿入モデルは、すでに報告されて
いる[バシラス・サチリス(Bacillus subtilis) (ハル
デンワング(Haldenwang)ら 1980)、ストレプトコ
ッカス・ニューモニエ(Streptococcus pnemoniae) (ポ
ッツィ(Pozzi)およびギルド(Guild)1985)とサッ
カロミセス・セレビシエ(Saccharmyces cerevisiae)
(ヒネン(Hinnen)ら 1978)]。一般的には、遺伝子
量を増やそうとするとき、recA−欠乏イー・コリ株
は、組換えを抑えるために組換えDNAレシピエントと
して使われる。しかし、組換え株には、プラスミドが不
安定になり、遺伝子生産の収量に対する遺伝子量効果が
低下することがしばしば起こる。本発明には、recA
−陽性株のゲノムにtrpオペロンを含むプラスミドを
増幅、挿入し、L−トリプトファンの生合成を向上する
新たなアプローチを提供した。組込まれた株は、抗生物
質を添加しなくても、trpオペロンを安定的に保持す
ることができ、その同時に相当の量のL−トリプトファ
ンを生産できるので、工業上に適用されるこの株を使っ
た発酵法の開発は今後の目標になるであろ。
【図1】 (a)および(b)は、それぞれ、プラスミドp
TC576およびpTC701の構成を示す模式図。影
の部分は、挿入されたtrpオペロンの8.7kb DN
A断片を示す。
TC576およびpTC701の構成を示す模式図。影
の部分は、挿入されたtrpオペロンの8.7kb DN
A断片を示す。
【図2】 エシェリキア・コリ由来のアントラニル酸塩
シンターゼ(AS)とトリプトファンシンターゼ(TS)に
対するL−トリプトファンのフィードバック阻害効果を
示すグラフ。
シンターゼ(AS)とトリプトファンシンターゼ(TS)に
対するL−トリプトファンのフィードバック阻害効果を
示すグラフ。
【図3】 組込まれたイー・コリ EMS4−C25(レ
ーン1)とイー・コリ EMS−C25/pTC701か
ら得られたゲノムDNAのサザンブロットによるクロマ
トグラムの図面代用写真。この写真は、pHSG576
プローブのハイブリッド形成パターンを示す。レーン2
から6までは、0.5−1ngの統合菌株のゲノムDN
Aをプローブとハイブリッド形成されたものを示す。レ
ーン7と8はそれぞれ、Hind IIIエンドヌクレアー
ゼによって制限されたpTC576とラムダDNAであ
る。
ーン1)とイー・コリ EMS−C25/pTC701か
ら得られたゲノムDNAのサザンブロットによるクロマ
トグラムの図面代用写真。この写真は、pHSG576
プローブのハイブリッド形成パターンを示す。レーン2
から6までは、0.5−1ngの統合菌株のゲノムDN
Aをプローブとハイブリッド形成されたものを示す。レ
ーン7と8はそれぞれ、Hind IIIエンドヌクレアー
ゼによって制限されたpTC576とラムダDNAであ
る。
【図4】 イー・コリ EMS4−C25/pTC70
組込み株のゲノムにあるtrpオペロンの増幅を示すク
ロマトグラムの図面代用写真。この写真は、trpオペ
ロンの8.7kb遺伝子断片プローブのハイブリッド形
成パターンを示す。C25/EcoRIとD15/Ec
oRIは、1ngのイー・コリ EMS4−C25とそ
のEcoRIエンドヌクレアーゼにより制限された組込
み株のゲノムDNAである。C25/C1aIとD15
/C1aIはC1aIエンドヌクレアーゼによって制限
された株である。
組込み株のゲノムにあるtrpオペロンの増幅を示すク
ロマトグラムの図面代用写真。この写真は、trpオペ
ロンの8.7kb遺伝子断片プローブのハイブリッド形
成パターンを示す。C25/EcoRIとD15/Ec
oRIは、1ngのイー・コリ EMS4−C25とそ
のEcoRIエンドヌクレアーゼにより制限された組込
み株のゲノムDNAである。C25/C1aIとD15
/C1aIはC1aIエンドヌクレアーゼによって制限
された株である。
【図5】 同種組込みをして増幅されたtrpオペロン
配列を持ったプラスミドを作成するためのフローチャー
ト。染色体にあるtrpオペロンのコピー数は、Eco
RIとC1aIエンドヌクレアーゼに作用され、trp
オペロンプローブでハイブリッド形成されたゲノム断片
を分析することによって判断される。
配列を持ったプラスミドを作成するためのフローチャー
ト。染色体にあるtrpオペロンのコピー数は、Eco
RIとC1aIエンドヌクレアーゼに作用され、trp
オペロンプローブでハイブリッド形成されたゲノム断片
を分析することによって判断される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12P 13/22 C12R 1:19) (72)発明者 ツァイ・シウラン 台湾タイペイ、シンチュン、チュン・シ ン・ストリート42番 5フロアー (72)発明者 モー・ドゥエンガン 台湾タイペイ、チャン・シン・ストリー ト、レイン85、6番 3フロアー
Claims (15)
- 【請求項1】 高トリプトファン生産株の遺伝子からク
ローン化された突然変異trpオペロンを含むプラスミ
ド。 - 【請求項2】 高トリプトファン生産株が突然変異イー
・コリ(E. coli)である請求項1記載のプラスミド。 - 【請求項3】 高トリプトファン生産株がイー・コリ
EMS4−C25である請求項2記載のプラスミド。 - 【請求項4】 突然変異trpオペロンをハイコピー数
ベクターpUC19に挿入して得られた請求項1記載の
プラスミド。 - 【請求項5】 pTC701である請求項1のプラスミ
ド。 - 【請求項6】 突然変異trpオペロンをローコピー数
ベクターpHSG576に挿入して得られた請求項1記
載のプラスミド。 - 【請求項7】 pTC576である請求項1記載のプラ
スミド。 - 【請求項8】 染色体にマルチコピーのトリプトファン
オペロンを含む組換えバクテリア。 - 【請求項9】 宿主株と請求項1記載のプラスミドとの
同種組換えにより得られた請求項8記載の組換えバクテ
リア。 - 【請求項10】 宿主株と請求項5記載のプラスミドと
の同種組換えにより得られた請求項8の組換えバクテリ
ア。 - 【請求項11】 宿主株と請求項7記載のプラスミドと
の同種組換えにより得られた請求項8記載の組換えバク
テリア。 - 【請求項12】 宿主株が突然変異イー・コリである請
求項9、10または11記載の組換えバクテリア。 - 【請求項13】 宿主株がイー・コリ EMS4−C2
5である請求項12記載の組換えバクテリア。 - 【請求項14】 請求項8記載の組換えバクテリアをL
−トリプトファン生産培地で増殖させる過程を含む直接
発酵によるL−トリプトファンの製造方法。 - 【請求項15】 組換えバクテリアにある外来trpオ
ペロンを保持するための選別抗生物質を添加しない請求
項14の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21136193A JPH07107984A (ja) | 1993-08-26 | 1993-08-26 | 染色体にマルチコピーのトリプトファンオペロンを含むバクテリアによるl−トリプトファンの製造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21136193A JPH07107984A (ja) | 1993-08-26 | 1993-08-26 | 染色体にマルチコピーのトリプトファンオペロンを含むバクテリアによるl−トリプトファンの製造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07107984A true JPH07107984A (ja) | 1995-04-25 |
Family
ID=16604701
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP21136193A Pending JPH07107984A (ja) | 1993-08-26 | 1993-08-26 | 染色体にマルチコピーのトリプトファンオペロンを含むバクテリアによるl−トリプトファンの製造 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07107984A (ja) |
-
1993
- 1993-08-26 JP JP21136193A patent/JPH07107984A/ja active Pending
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