JPH0710689B2 - 液体紙容器への不活性ガス置換装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 液体紙容器を成形，充填，封止する充填方法および充填
装置に関するものであり、特に封止された液体紙容器の
内容液面上にヘッドスペースが存在するもの（頂部が屋
根形であるゲーブルトップの紙容器ではヘッドスペース
が必ず発生する）の該ヘッドスペースに不活性ガスを満
たし、該スペース内に存在していた空気と置換する技術
分野に関する。

従来の技術 金属缶，ガラス瓶，プラスチック容器において、内溶液
の酸化防止のため、不活性気体の液滴を容器内に滴下
し、または、ノズルから気体としてガス噴射により、ヘ
ッドスペースに不活性ガスを封入することは、従来、広
く行われている。しかし、ヘッドスペースが存在する液
体用紙容器にガス置換を行う技術は、比較的新しく検討
されてきた事項である。例えば、特開昭58−73521号公
報および特開昭58−216526号公報には、液体は透過させ
ないが気体を透過する透過膜を隔てて、水面下にて、ま
たは中蓋を封止後倒置して、下方からガスを吹き込む方
法が記載されている。前述の方法は、特殊な透過膜を使
用するものであり、またガス吹込装置が大型であり、通
常用いられている充填機の部分的改造のみによっては、
ガス置換工程を充填機に挿入することはできなかった。
不活性ガスの液滴の滴下による方法も、頂部密封シール
後の液体紙容器の内圧が、前記液滴の気化により過剰圧
となり、紙容器の破裂を生じうるため、実用化は不可能
であった。

発明が解決しようとする問題点 果汁等の内溶液の味，香気，栄養成分等は、密封後の紙
容器内の残存空気に含有されている酸素により、時間の
経過と共に酸化されて変化してしまうが、酸化防止のた
めの従来のガス置換技術には前述の諸欠点がある。

本発明は、紙を主体とし、アルミ箔および、またはポリ
エチレン等の合成樹脂の被覆成層により構成される複合
紙容器において、前述の諸欠点を矯正し、充填機上に簡
単な装置を付加するのみで、ガス置換が行われ、味，香
気，栄養成分等を４か月以上保持しうる装置を提供する
ものである。

問題点を解決するための手段 本発明は、前述の諸欠点を解決するため、容器頂部にヘ
ッドスペースが存在する液体紙容器のボトム部を充填機
上で成形し、内溶液を充填し、次いで該紙容器のトップ
部をシールする成形，充填，封止の各ステーションが順
次設けられた液体紙容器用充填機の前記充填ステーショ
ンと前記封止ステーションとの間に設けられた紙容器の
ヘッドスペース内の空気を不活性ガスで置換する不活性
ガス置換装置であって、該不活性ガス置換装置は第１ガ
ス置換ステーションと、これに続く第２ガス置換ステー
ションとからなり、前記第１ガス置換ステーションが前
記充填ステーション直後の紙容器の開口部の開かれた位
置に、第２ガス置換ステーションが前記封止ステーショ
ン直前の紙容器の開口部の半ば閉じられた位置にそれぞ
れ設けられ、不活性ガス噴射ノズルの噴射口は、第１ガ
ス置換ステーションの第１ガス噴射ノズルの噴射口の口
径が紙容器の開かれた開口部に挿入可能な比較的大きい
ものとされ、第２ガス置換ステーションの第２ガス噴射
ノズルの噴射口の口径が紙容器の半ば閉じられた開口部
に挿入可能な比較的小さいものとされ、不活性ガスの流
出速度は、第１ガス噴射ノズルにあっては比較的緩やか
であり、第２ガス噴射ノズルにあっては比較的速くさ
れ、前記両ガス噴射ノズルの噴射口は、共に液体の充填
された紙容器の未封止開口部上端より高い上限位置と、
紙容器のヘッドスペース内の不活性ガスの噴射により液
面からスプラッシュが発生しないそれぞれの下限位置と
の間を昇降可能とされている液体紙容器への不活性ガス
置換装置を提供するものである。

該置換装置としてゲーブルトップ型液体紙容器の頂部貼
り合わせ部であるトップシールフィンをヒートシールす
るため該トップシールフィンを予備加熱しつつ、進行中
の充填後の紙容器の前記トップシールフィンをガイドに
より進行方向両側から相互に接近させて行く充填機の箇
所があるが、該箇所を、第１および第２ガス置換ステー
ションとして利用し、両ステーションにおいて、不活性
ガス噴射ノズルの噴射口の口径、不活性ガスの流出速
度、液面への噴射口の距離を、それぞれ前述のように定
め、ガス置換を行い、前記第２ガス置換ステーションで
のガス置換直後、ガス噴射口を上昇せしめてトップシー
ルフィンを密封して液体充填紙容器を完成せしめるよう
にしたものである。

作用 前述の構成とすることにより、高価な不活性ガス置換装
置を充填機に組み込む必要もなく、充填機の封止ステー
ション前のスペースを利用してガス置換ステーションを
設けることができ、液体用紙容器のガス置換が可能とな
り、充填当初の内溶液の良好な味，香気，栄養成分等の
酸化変質防止が実現され、４か月以上の保持が可能とな
ったものである。

実施例 第１図〜第３図に示す第１ガス置換ステーションについ
て説明する。

第１図に示すごとく、充填機の充填ステーション（図示
せず）で内溶液が充填されたゲーブルトップの紙容器１
は、開口部のトップシールフィン３がガイドレール２に
摺接せしめられつつ、開口部が次第に閉じられ矢印Ａ方
向へコンベア７上を移動せしめられトップシール工程に
ある封止ステーション（図示せず）に至る。

第１ガス置換ステーション8Aは、前述のガイドレール2,
2が紙容器１と略同一間隔をもって略平行とされている
ところの、紙容器１の開口部が開かれたままの区域のガ
ス置換ステーションである。該第１ガス置換ステーショ
ン8Aには、紙容器１の直上に、ガス噴射ノズル4Aが垂設
されている。該ガス噴射ノズル4Aは、不活性ガスの流出
速度を比較的緩やかとするため、噴射口の口径が大であ
り、紙容器１の未封止開口部上端より高い上限位置と、
第２図に示されるごとく、紙容器１内に下降せしめら
れ、不活性ガスが噴射される際、紙容器１内の内溶液９
の液面６から、スプラッシュが発生しない程度の低い下
限位置との間を昇降可能に設けられている。

前記ガス噴射ノズル4Aが下限位置まで下降する間に、該
ノズル4Aの噴射口から比較的緩やかな流出速度で不活性
ガスが所定時間（数秒間）噴射される。ガス噴射ノズル
4Aの口径は、紙容器１に接触しない範囲で、なるべく太
目とされ、ガス噴射ノズル4Aの噴射口の開口面積は紙容
器１の未封止開口部の面積の30％近くに設定されること
が望ましい。

第２図，第３図に第１ガス置換ステーション8Aにおける
ガス置換状態を示す。

紙容器１内に、液面６近くまで下降せしめられたガス噴
射ノズル4Aの先端から噴射され流出した不活性ガスは、
噴射ガス流5Aに示すごとく紙容器１内に拡散される。す
なわち、不活性ガスは液面６に向かって噴射され、紙容
器１の内壁に達し、次いでトップシールフィン３に沿っ
て、ある程度の厚みを持ってやや上方に向かう団塊をな
す。

紙容器１を載せて移動するコンベア７の間欠的移動速度
は、充填機全体の間欠的運転ピッチと同期しているの
で、ガス置換工程の設置のためには変更できない。

次に第１図と、第５図，第６図に示された第２ガス置換
ステーション8Bおよび第４図について説明する。

前述の第１ガス置換ステーション8Aにおける不活性ガス
の置換は、第１図に示すごとく、コンベア７の進行方向
の充填ステーション側（図中左側）にて行われるので、
トップシール工程に至るまでの間、紙容器１の未封止開
口部が開放状態にあり、空気が紙容器１内に侵入する恐
れがあり、さらにヘッドスペース中心部とその上にはま
だ空気が存在している。

不活性ガスの流出速度とヘッドスペース内の空気の置換
割合を、流出速度を異にして実験した結果、第４図に示
すグラフが得られた。同グラフに示すごとく、流出速度
が増大すると置換割合は増大するが、流出速度を余り大
とすると、置換率は逆に下がってしまうことが判明し
た。従って、不活性ガスの損失を少なくし、しかも置換
を完全に行うには、紙容器１のヘッドスペースの大小、
ガス噴射ノズル4A,4Bの口径の大小、不活性ガスの流出
量、噴射時間、流出速度の最適値を実験的に定める必要
がある。

第４図に示したグラフは、ガス置換工程を充填機上の１
個のステーションで行う場合を示しており、本発明はこ
れから得られた知見と、充填機の充填工程とトップシー
ル工程の間の紙容器の上部の開口状況とからなされたも
のである。第２ガス置換ステーション8Bは、紙容器１の
未封止開口部の面積が第１ステーションにおけるよりも
狭い。それは該ステーション8Bではガイドレール2,2の
間隔が狭められているからである。従って第２ガス噴射
ノズル4Bは、第１ガス噴射ノズル4Aよりも、噴射口の口
径が小さくされ、不活性ガスは、比較的速い流出速度
で、噴射ガス流5Bに示すごとく噴射される。第２ガス噴
射ノズル4Bの噴射口と液面６との距離は、第１ガス噴射
ノズル4Aにおけるよりも大きい。さもないとガスの噴射
速度が大であるから液面６からスプラッシュが生ずる。

噴射口の下限位置が高く、同時に細いことの結果、噴射
され流出した不活性ガスの団塊は主として、ヘッドスペ
ースの中心と、それより上の領域においてガス置換を行
う。この第２の噴射により、第５図，第６図に示すごと
く、第１の噴射の後部分的にしか充されなかったヘッド
スペースを不活性ガスで完全に充すことができる。

発明の効果 本発明は、従来の充填機上の充填工程とトップシール工
程の間の２ピッチをそれぞれ第１および第２ガス置換ス
テーションとして利用したので各ピッチにおけるガスの
噴射時間は余裕をもって設定することができ、第１ステ
ーションにおいては、不活性ガスの団塊が主として紙容
器のヘッドスペースの液面近くの領域と容器壁沿いの領
域とを置換し、第２ステーションにおいては、主として
不活性ガスがヘッドスペースの中心領域とそれより上の
領域を置換する効果を発揮し、全体として充填機の運転
速度を変更することなく、不活性ガスの損失を少なく
し、かつ置換効率の高いガス置換を行うことができる効
果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の実施例の第１および第２ガス置換ス
テーションの斜視図、第２図は第１ガス置換ステーショ
ンにおける不活性ガス噴射状態を示す紙容器中央縦断面
図、第３図は同上平面図、第４図は不活性ガス流出速度
と置換割合を示す線図、第５図は第２ガス置換ステーシ
ョンにおける不活性ガス噴射状態を示す紙容器中央縦断
面図、第６図は同上平面図である。 1:紙容器、4A:第１ガス噴射ノズル、4B:第２ガス噴射ノ
ズル、5A,5B:噴射ガス流、6:液面、8A:第１ガス置換ス
テーション、8B:第２ガス置換ステーション、9:内溶
液。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】容器頂部にヘッドスペースが存在する液体
   紙容器のボトム部を充填機上で成形し、内溶液を充填
   し、次いで該紙容器のトップ部ををシールする成形，充
   填，封止の各ステーションが順次設けられた液体紙容器
   用充填機の前記充填ステーションと前記封止ステーショ
   ンとの間に設けられた紙容器のヘッドスペース内の空気
   を不活性ガスで置換する不活性ガス置換装置であって、
   該不活性ガス置換装置は第１ガス置換ステーションと、
   これに続く第２ガス置換ステーションとからなり、前記
   第１ガス置換ステーションが前記充填ステーション直後
   の紙容器の開口部の開かれた位置に、第２ガス置換ステ
   ーションが前記封止ステーション直前の紙容器の開口部
   の半ば閉じられた位置にそれぞれ設けられ、不活性ガス
   噴射ノズルの噴射口は、第１ガス置換ステーションの第
   １ガス噴射ノズルの噴射口の口径が紙容器の開かれた開
   口部に挿入可能な比較的大きいものとされ、第２ガス置
   換ステーションの第２ガス噴射ノズルの噴射口の口径が
   紙容器の半ば閉じられた開口部に挿入可能な比較的小さ
   いものとされ、不活性ガスの流出速度は、第１ガス噴射
   ノズルにあっては比較的緩やかであり、第２ガス噴射ノ
   ズルにあっては比較的速くされ、前記両ガス噴射ノズル
   の噴射口は、共に液体の充填された紙容器の未封止開口
   部上端より高い上限位置と、紙容器のヘッドスペース内
   の不活性ガスの噴射により液面からスプラッシュが発生
   しないそれぞれの下限位置との間を昇降可能とされてい
   ることを特徴とする液体紙容器の不活性ガス置換装置。