JPH07102459B2 - アーク溶接におけるアーク長の制御方法 - Google Patents

アーク溶接におけるアーク長の制御方法

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JPH07102459B2
JPH07102459B2 JP11798188A JP11798188A JPH07102459B2 JP H07102459 B2 JPH07102459 B2 JP H07102459B2 JP 11798188 A JP11798188 A JP 11798188A JP 11798188 A JP11798188 A JP 11798188A JP H07102459 B2 JPH07102459 B2 JP H07102459B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、金属材をアーク溶接する際における、アー
ク長の制御方法に関するものである。
〔従来の技術〕
アーク溶接は、一般に第5図に示すように、母材1に向
けて、チップ2の下端から突出するワイヤ3の先端と母
材1との間にアーク4を発生させ、そのアーク熱により
母材1を溶接することにより行なわれる。5は溶接電源
である。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述のアーク溶接において、ワイヤ3の先端と母材1と
の間に発生するアーク4の長さ即ちアーク長laは、適切
なアーク放電を維持するためのもっとも重要な因子であ
る。アーク長laが所定値よりも長くなると、アーク電圧
Vaが高くなり、アーク4が不安定になる。この結果、母
材1の溶込みが浅くなり良好な溶接を行なうことができ
ない。
従来、アーク長laが所定値になるように、ワイヤ3の突
き出し長さ(以下、「ワイヤ突出長」という)Lを設定
し溶接を行なっているが、溶接中に生ずる溶接電流の変
化によってアーク長laが変動する結果、スパッタの発生
やビード形状の不安定を招き、良好な溶接を行なうこと
ができなかった。
従って、この発明の目的は、溶接電流の変化によっても
一定のアーク長を得ることができる、アーク溶接におけ
るアーク長の制御方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
この発明は、上述した問題を解決するためなされたもの
であって、陽極降下電圧とアーク柱降下電圧と陰極降下
電圧との和として表わされるアーク電圧、および、ワイ
ヤ突出部の降下電圧を、それぞれ一定の式によって求
め、次いで、上記のより求められたアーク電圧とワイヤ
突出部の降下電圧に基づいて端子電圧を定め、前記端子
電圧により溶接することによって、アーク長を一定の長
さに制御することに特徴を有するものである。
次に、この発明の第1実施態様を、図面を参照しながら
説明する。
第2図のアークの電圧分布図に示されるように、直流電
源6によって陽極7と陰極8との間に発生するアーク4
のアーク電圧Vaは、陽極降下電圧VAとアーク柱降下電圧
Vpと陰極降下電圧VKとの和として表わされる。
このようなアーク電圧Vaとアーク長laとの関係式を、こ
の発明においては、以下に述べるように、短絡寸前のア
ーク電圧と電位傾度に基づいて定めた。
即ち、陽極降下電圧VAとアーク柱降下電圧Vpと陰極降下
電圧VKとの和として表わされるアーク電圧Vaのうち、ア
ーク柱降下電圧Vpを、電位傾度Xとアーク長laとの積と
なし、陽極降下電圧VAと陰極降下電圧VKとの和を、アー
ク長0のときのアーク電圧Voとなすと、アーク電圧Va
は、下記(1)式によって求められる。
Va=Vo+X・la ……………(1) 但し、Vo:アーク長0のときのアーク電圧であって、陽
極降下電圧VAと陰極降下電圧VKとの和として表わされ
る。
X・la:電位傾度Xと設定されたアーク長laとの積であ
って、アーク柱降下電圧Vpとして表わされる。
第1図に示すワイヤ突出部の降下電圧VLは、下記(2)
式によって求められる。
VL=aLI−bVf/I ……………(2) 但し、L:ワイヤ突出長 I:溶接電流 Vf:ワイヤ送給速度 a,b:ワイヤの成分によって定まる定数 次に、上述の(1)式における電位傾度Xおよびアーク
長0のときのアーク電圧Voについて述べる。
第3図は、溶接電源と電位傾度との関係を示すグラフ
で、下記条件によりアーク溶接を行ない、溶接中にトー
チを高速で上下動させたときのトーチ移動量と端子電圧
Etの変化量とから、電位傾度Xを測定した結果が示され
ている。
(1) 溶接母材:ステンレス鋼板 (2) ワイヤ:1.6mmΦ、フラックスコアードワイヤ (3) シールドガス:CO2ガス (4) 溶接電流:200〜400A 第3図から明らかなように、溶接電流Iの増加に伴って
電位傾度Xは増加した。このような電位傾度Xと溶接電
流Iとの関係を直線によって近似させると、下記(4)
式のようになる。
X(I)=2.0×10-3・I+1.8 …………(4) 第4図は溶接電流と端子電圧との関係を示すグラフで、
上記と同一条件によりアーク溶接を行ない、溶接中にト
ーチを徐々に低下させ、短絡寸前の端子電圧Etを測定し
た結果が示されており、白丸印がその測定結果である。
同図において、黒丸印は、短絡寸前の端子電圧Etから、
第(2)式によって求められるワイヤ突出部の降下電圧
VLを差し引いたものであり、アーク長0のときのアーク
電圧Voと考えられる。
第4図から明らかなように、溶接電流が200〜350Aの範
囲内においてはほぼ直線的な関係にあり、これを近似す
ると、下記(5)式のようになる。
Vo=0.025I+12.7 ……………(5) 溶接電流が400A以上の場合は、アーク短絡前は完全な埋
もれアークになり、ワイヤ先端におけるアークの出方が
異なるので、直線からずれるものと考えられる。
上記(4)式および(5)式により、アーク長とアーク
電圧との関係を示す(1)式が導かれる。(1)式に
(4)式および(5)式を代入すると、次のようにな
る。
Va=0.025I+12.7+(2.0×10-3I+1.8)la 第3式に示すように、端子電圧Etは、アーク電圧Vaとワ
イヤ突出部の降下電圧VLとの和である。
Et=Va+VL ……………(3) 従って、(1)式によって求められたアーク電圧Vaおよ
び(2)式によって求められたワイヤ突出部の降下電圧
VLに基づいて、上記(3)式を満足し得るように端子電
圧Etを定め、端子電圧Etにより溶接することによって、
アーク長を常に一定の長さに制御することができる。
次に、この発明の第2実施態様について説明する。
この実施態様においては、第1図におけるチップ2、母
材1および溶接電源5を接続する導線9の電気抵抗Rに
よる降下電圧Vcを、端子電圧Etの制御要因として更に付
加したものである。
即ち、導線9の電気抵抗Rによる降下電圧Vcは、下記
(6)式によって求められる。
Vc=R・I ……………(6) 端子電圧Etは、上記降下電圧Vcを付加し、下記(7)式
によって定める。
Et=Va+VL+Vc ……………(7) 前記(1)式による電位傾度Xを、 X=k3I+k4となし、 アーク長0のときの仮想アーク電圧Voを、 Vo=k1I+k2となすと、 上記(1)式、(2)式および(7)式から、端子電圧
Etは、下記(8)式のように求められる。
Et=aLI−bVf/I+k1I+k2+(k3I+k4)la+R・I……
………(8) 従って、上記(7)式および(8)式を満足し得るよう
に端子電圧Etを定め、この端子電圧Etにより溶接するこ
とによって、アーク長を常に一定の長さに制御すること
ができる。
〔発明の効果〕
以上述べたように、この発明によれば、溶接電流の変化
によっても一定のアーク長を得ることができ、適切な溶
込みによって品質の優れた溶接部が得られる工業上有用
な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の制御方法を示す説明図、第2図はア
ークの電圧分布図、第3図は溶接電流と電位傾度との関
係を示すグラフ、第4図は溶接電流と端子電圧との関係
を示すグラフ、第5図は従来のアーク溶接を示す説明図
である。図面において、 1……母材、2……チップ、 3……ワイヤ、4……アーク、 5……溶接電源、6……直流電源、 7……陽極、8……陰極、 9……導線。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】陽極降下電圧とアーク柱降下電圧と陰極降
    下電圧との和として表わされるアーク電圧Vaを、下記
    (1)式によって求め、 Va=Vo+X・la ……………(1) 但し、Vo:アーク長0のときのアーク電圧であって、陽
    極降下電圧と陰極降下電圧との和として表わされる。 X・la:電位傾度Xと設定されたアーク長laとの積であ
    って、アーク柱降下電圧として表わされる。 ワイヤ突出部の降下電圧VLを、下記(2)式によって求
    め、 VL=aLI−bVf/I ……………(2) 但し、L:ワイヤ突出長 I:溶接電流 Vf:ワイヤ送給速度 a,b:ワイヤの成分によって定まる定数 次いで、上記(1)式によって求められたアーク電圧Va
    および上記(2)式によって求められたワイヤ突出部の
    降下電圧VLに基づいて、下記(3)式を満足し得るよう
    に、チップと母材との間の電圧Etを定め、前記電圧Etに
    より溶接することによって、アーク長を一定の長さに制
    御することを特徴とする、アーク溶接におけるアーク長
    の制御方法。 Et=Va+VL ……………(3)
  2. 【請求項2】前記チップと母材との間の電圧Etを、前記
    アーク電圧Va、前記ワイヤ突出部の降下電圧VL、およ
    び、溶接電源とチップおよび母材との間の導線の電気抵
    抗Vcに基づいて、下記(4)式を満足し得るように定
    め、前記電圧Etにより溶接することによって、アーク長
    を一定の長さに制御することを特徴とする、請求項1記
    載のアーク溶接におけるアーク長の制御方法。 Et=Va+VL+Vc ……………(4)
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