JPH0697072A - 化合物半導体基板及びその製造方法 - Google Patents

化合物半導体基板及びその製造方法

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JPH0697072A
JPH0697072A JP24494892A JP24494892A JPH0697072A JP H0697072 A JPH0697072 A JP H0697072A JP 24494892 A JP24494892 A JP 24494892A JP 24494892 A JP24494892 A JP 24494892A JP H0697072 A JPH0697072 A JP H0697072A
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JP
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compound semiconductor
semiconductor substrate
substrate
molecular layer
plane
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JP24494892A
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Takuya Fujii
卓也 藤井
Mitsuru Sugawara
充 菅原
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Fujitsu Ltd
Optoelectronics Technology Research Laboratory
Original Assignee
Fujitsu Ltd
Optoelectronics Technology Research Laboratory
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 量子細線構造を形成するに都合のよいインジ
ウムとリンを組成に含む化合物半導体基板及びその製造
方法を提供することを目的とする。 【構成】 インジウムとリンを組成に含み、{100}
面から[011]方向ないし[011]方向を基準にし
て僅かに[01−1]方向寄りの方向に微傾斜した主面
を有し、この主面には、{100}面をステップ上面と
し所定の平滑性を有するステップ前側面を持った分子層
ステップが[011]方向に所定範囲内の周期性をもっ
て階段状に形成された構成となっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化合物半導体基板に関
し、特に、分子層ステップが階段状に形成されてている
インジウム・リン系の化合物半導体基板及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の半導体装置の製造技術の進展によ
り、光学的な非線形効果を高めること等を目的として、
量子井戸細線に代表されるように、より微細な量子井戸
構造を有する半導体結晶の製造が試みられている。その
ような半導体結晶の製造方法の1つとして、GaAsか
らなる化合物半導体基板を用い、{100}結晶面等の
低指数面方位から傾斜角度にして1〜2度くらい微傾斜
した主面を有する結晶基板上にGaAsの結晶成長を行
い、基板表面に周期10nm程度の周期で、ステップ前側
面が平滑な分子層ステップを階段状に作製し、その微細
なステップ構造を利用する方法が知られている。
【0003】かかる方法の成否は、機械的に切り出され
研磨された結晶基板表面の乱れた分子層ステップ構造を
結晶成長技術により、いかに周期的でかつステップ前側
面が平担な分子層ステップ構造に修正できるかにかかっ
ている。これまでに、GaAs系結晶基板上に周期的か
つステップ前側面が平担な分子層ステップ構造を作製す
る手法については、よく研究されており、GaAs系の
結晶基板の場合には、{100}面から[0−11]方
向に微傾斜した主面を有するGaAs基板上に有機金属
気相成長法(MOVPE)でGaAs、AlAsあるい
はAlGaAs結晶を成長させることによって、結晶基
板表面の乱れた分子層ステップ構造を周期的でかつステ
ップ前側面が平担な分子層ステップ構造に修正できるこ
とが知られている。
【0004】また、{100}面から[0−11]方向
に微傾斜した主面を有するGaAs基板上に分子線エピ
タキシャル結晶成長法(MBE)でGaAs、AlAs
あるいはAlGaAs結晶を成長させることによって、
結晶基板表面の乱れた分子層ステップ構造を周期的でか
つステップ前側面が平担な分子層ステップ構造に修正で
きることも知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】光通信用の光半導体装
置等に、上述した周期的でかつステップ前側面が平担な
分子層ステップ構造を利用して作製される量子細線構造
を搭載しようとする場合、InP系の結晶基板上に周期
的でかつステップ前側面が平担な分子層ステップ構造を
作製する必要がある。
【0006】しかしながら、InP系の結晶基板を用い
る場合については、周期的かつステップ前側面が平担な
分子層ステップ構造を作製する手法について十分な検討
がされていない。本発明の目的は、量子細線構造を形成
するに都合のよいインジウムとリンを組成に含む化合物
半導体基板及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明による化合物半導体基板においては、インジ
ウムとリンを組成に含み、{100}面から[011]
方向ないし[011]方向を基準にして僅かに[01−
1]方向寄りの方向に微傾斜した主面を有し、この主面
には、{100}面をステップ上面とし所定の平滑性を
有するステップ前側面を持った分子層ステップが[01
1]方向に所定範囲内の周期性をもって階段状に形成さ
れた構成となっている。
【0008】また、本発明による化合物半導体基板の製
造方法においては、{100}面から[011]方向な
いし[011]方向を基準にして僅かに[01−1]方
向寄りの方向に微傾斜した面が基準面となるように機械
的に加工されたインジウムとリンを組成に含む化合物半
導体からなる材料基板を用意し、その基準面上に有機金
属気相成長法により結晶成長を行なうことにより、上記
した化合物半導体基板を製造することを特徴としてい
る。
【0009】本発明における課題解決手段を上述のよう
に定めるに至るまでの考察の過程を以下に説明する。本
発明は上述したように、インジウムとリンを組成に含
み、量子細線構造を形成するに都合のよい整った分子層
ステップ構造を有する化合物半導体基板及びその製造方
法を提供することを目的としている。しかし、そのよう
な分子層ステップ構造が半導体基板上に形成されている
か否かを調べることは容易ではない。本願発明者は、以
下の方法によりこれを調べることとした。
【0010】すなわち、図1に示したように、InPの
傾斜基板1上に結晶成長を行い、バッファ層2を形成す
る。次に、バッファ層2の表面に形成されている分子層
ステップ構造の状態を調べるため、バッファ層2上にI
nPからなる障壁層3を形成し、この障壁層3上にIn
GaAsからなる量子井戸5を形成し、この上にInP
からなる障壁層6を形成する。障壁層3は十分に薄く
し、バッファ層2と障壁層3の表面ステップ構造が実質
的に変化しないようにする。
【0011】量子井戸5からの低温での発光スペクトル
を解析することによって、バッファ層2の表面の分子層
ステップ構造の周期性を推定することができる。すなわ
ち、分子層ステップ前側面が凸凹していたり、分子層ス
テップの周期が不規則な場合には、発光スペクトルの幅
が広くなり、逆に、整ったステップ前側面を有する分子
層ステップが一定の周期で規則的に形成されている場合
には、発光スペクトルの幅が狭くなる。
【0012】これは、バッファ層2、すなわち障壁層3
の表面に形成されている分子層ステップ構造に乱れがあ
る場合には、その上に形成される量子井戸5の幅が揃わ
ず、井戸幅の揺らぎが生ずるためである。したがって、
量子井戸5の発光半値幅を測定することにより、間接的
に分子層ステップ構造の状態を評価できる。この場合、
量子井戸の井戸幅をLw、発光エネルギーをE(L
w)、発光全半値幅をΓ、バッファ層2表面の分子層ス
テップ構造の乱れ具合を△dとすれば、次式が成り立
つ。
【0013】 Γ=2△d{dE(Lw)/dLw} …(a) ここで、△dが2倍されているのは、△dを2倍するこ
とによって、これが量子井戸幅の揺らぎ幅(ばらつき)
を与えるからである。そして、上記(a)式中、Γは実
測することができ、また、発光エネルギーE(Lw)を
井戸幅Lwで微分した値dE(Lw)/dLwは、いろ
いろな井戸幅の量子井戸を形成し、それぞれの発光エネ
ルギーを測定することにより、容易に求めることができ
る。なお、井戸幅のばらつきにΓが敏感なLw<10nm
の領域に限れば、実験結果から、発光エネルギーE(L
w)はほぼ次式で求まる。
【0014】 E(Lw)=1.06−0.21 log10(Lw) …(b) ただし、E(Lw)の単位をeV、Lwの単位をnmと
する。この(b)式から、発光エネルギーE(Lw)を
井戸幅Lwで微分した値dE(Lw)/dLwは、Lw
に比例し、よって、ΓはLwに反比例することが分か
る。そして、2△dはこの場合の比例係数を与えること
になる((a)式参照)。
【0015】上記(b)式を利用して井戸幅のばらつき
を評価できるか否かを確かめるために行った実験結果を
図2に示す。この実験は、次のようにして行った。ま
ず、(100)面から<01−1>方向に2度微傾斜し
た面を有するInP結晶基板上に、InPの結晶成長を
行って表面に分子層ステップ構造を有する層厚1μmの
InPバッファ層を形成したものを複数作製する。次
に、このバッファ層の上に基板毎に井戸幅Lwの異なる
量子井戸を形成する。そして、温度4.2Kにおけるそ
れぞれの量子井戸からの発光全反値幅Γを測定した。こ
の結果を発光全反値幅Γを井戸幅Lwに対してプロット
したものが図2である。
【0016】この図から、ΓとLwとの間に反比例の関
係が成立していることが分かり、上記(a)式からバッ
ファ層表面の分子層ステップ構造の乱れ具合を示す△d
を得られることが分かる。この結果を踏まえて、本願発
明者は、成長温度を約620℃、成長速度を約1μm/
h、成長圧力を約0.1気圧として有機金属気相成長法
(MOVPE)で結晶成長を行い、(100)面から種
々の方向に微傾斜したInPの傾斜基板上に形成された
分子層ステップ構造が整っているか否かを、その上部に
形成したInGaAsの井戸層とInPの障壁層からな
る量子井戸構造からの4.2Kにおけるフォトルミネッ
センスの発光半値幅を測定することにより間接的に評価
した。
【0017】次に、結晶傾斜基板の微傾斜の方向を変化
させた場合に上述した△dがどのように変化するかを調
べた結果について、バッファ層をInPとした場合とI
nGaAsとした場合とを比較して図3に示す。同図は
縦軸に上述の△dを1分子層厚(monolayer:ML=約0.3n
m )を単位としてとり、横軸に傾斜基板の傾斜方向をと
って示している。
【0018】同図中、(111)Bは、(111)B面
が分子層ステップの前側面として現れる[01−1]方
向に微傾斜した傾斜基板を用いた場合を意味し、(11
1)Aは、(111)A面が分子層ステップの前側面と
して現れる[011]方向に微傾斜した傾斜基板を用い
た場合を意味している。また、(101)はこれらの中
間方向に微傾斜した傾斜基板を用いた場合を示してい
る。
【0019】ここで、(111)B面とは、(−11
1)及びこれと等価なすべての面(1−11)(11−
1)(−1−1−1)を意味し、(111)A面とは、
(111)及びこれと等価なすべての面(−1−11)
(1−1−1)(−11−1)を意味する。この図か
ら、InPをバッファ層とした場合は、△d即ちバッフ
ァ層表面の分子層ステップ構造の乱れ具合は傾斜基板の
微傾斜の方向によってあまり影響を受けないのに対し、
InGaAsをバッファ層とした場合は、△dは傾斜基
板の微傾斜方向に依存し、傾斜方向によって△dは大き
な変化をすることが分かる。このように、InGaAs
の場合に微傾斜の方向に△dが強く依存するのは、以下
の理由によると考えられる。
【0020】すなわち、(111)Bの場合は結晶の成
長速度に異方性がほとんどないため、ステップ前側面の
凸凹はほとんど平坦化されないが、仮に上下に重なって
いるステップの前側面が相互に衝突(一致)した場合で
も、衝突面が大きく育つことがない。したがって、△d
は主としてステップ前側面の凸凹によって定まり、△d
は約0.5ML程度の値となる。これに対し、(111)
Aの場合は、結晶の成長速度に強い異方性があり、ステ
ップ前側面に沿った方向における成長速度が速いため、
ステップ前側面の凸凹は平坦化されるものの、仮に上下
に重なっているステップの前側面が相互に衝突した場
合、ステップの前進速度が遅いために衝突面が大きく育
ってしまうことがある。このようにステップ前側面の衝
突によって多分子層ステップが形成されることをステッ
プバンチング(Step Bunching)というが、ステップバ
ンチングが生じた場合、バッファ層表面の分子層ステッ
プ構造の規則性あるいは表面平坦性は急激に悪化し、△
dが大きくなる。このため、△dは約1.3ML程度の値
となっているのである。
【0021】また、(101)の場合に△dが(11
1)Aの場合よりも大きな値をとるのは、ステップ前側
面の凸凹とステップバンチングとが混在しているためと
考えられる。図4及び図5は、(111)Bと(11
1)Aのそれぞれに対してInGaAsをバッファ層と
した場合のバッファ層表面の干渉顕微鏡観察による表面
像である。図4に示したように、(111)Bの場合の
表面モホロジーパターンは、複雑に曲がりくねったもの
で、期待される分子層ステップの前側面が沿うべき<0
11>方向以外の方向に伸びた線が見られる。他方、図
5に示したように、(111)Aの場合の表面モホロジ
ーパターンは、微傾斜方向に直角の方向すなわち期待さ
れる分子層ステップの前側面が沿うべき<01−1>方
向に伸びているのが見られる。
【0022】これは、図5に示した<011>方向に微
傾斜した(111)Aの場合は、結晶成長がステップ前
側面に沿って速く、すなわち、(111)Aのステップ
前側面に発生するキンク(Kink)の成長速度が速く、ス
テップの前進が遅いことを表し、他方、図4に示した<
01−1>方向に微傾斜した(111)Bの場合は、
(111)Aの場合のような結晶の成長速度に異方性が
ほとんど無いことを表している。このことは、微傾斜の
方向に△dが強く依存する理由について記述したところ
と整合する。
【0023】この図4及び図5の表面モホロジーパター
ンについての考察の結果、ステップ前側面を平坦化する
には、微傾斜方向に直角な方向への結晶成長速度が微傾
斜方向への結晶成長速度よりも十分に速いことが必要
で、{100}面から微傾斜した面を主面とするInP
基板上に有機金属気相成長法で結晶成長を行うことによ
って、基板表面に整った分子層ステップ構造を形成する
場合には、微傾斜の方向を[011]方向とすることが
良いと分かる。
【0024】このため、本発明による化合物半導体基板
においては、上述したように、インジウムとリンを組成
に含み、{100}面から[011]方向に微傾斜した
主面を有し、この主面には、{100}面をステップ上
面とし所定の平滑性を有するステップ前側面を持った分
子層ステップが[011]方向に所定範囲内の周期性を
もって階段状に形成された構成となっている。
【0025】また、本発明による化合物半導体基板の製
造方法においては、{100}面から[011]方向に
微傾斜した面が基準面となるように機械的に加工された
インジウムとリンを組成に含む化合物半導体からなる材
料基板を用意し、その基準面上に有機金属気相成長法に
より結晶成長を行なうことにより、上記した化合物半導
体基板を製造することを特徴としている。
【0026】ところで、InGaAsをバッファ層とし
た(111)Bと(111)Aの場合の表面構造を考え
るに、これらは図6(A)及び(B)に示したようにな
っていると考えられる。図6(A)及び(B)は、In
GaAsをバッファ層とした(111)Bと(111)
Aの場合の表面構造をそれぞれ模式的に示した斜視図で
ある。
【0027】同図(A)に示した(111)Bの場合
は、上述したように結晶の成長速度に異方性がほとんど
ないため、ステップ前側面の凸凹はほとんど平坦化され
ないが、仮に上下に重なっているステップの前側面が相
互に衝突(一致)した場合でも、衝突面が大きく育つこ
とがない。これに対し、同図(B)に示した(111)
Aの場合は、結晶の成長速度に強い異方性があり、ステ
ップ前側面に沿った方向における成長速度が速いため、
ステップ前側面の凸凹は平坦化されるものの、仮に上下
に重なっているステップの前側面が相互に衝突した場
合、ステップの前進速度が遅いために衝突面が大きく育
ってしまうことがある。このようにステップバンチング
が生じた場合、バッファ層表面の分子層ステップ構造の
規則性あるいは表面平坦性は急激に悪化する。このこと
も、微傾斜の方向に△dが強く依存する理由について記
述したところと整合する。
【0028】これまで、InGaAsをバッファ層とし
た場合について詳述したが、InPをバッファ層とした
場合にも、上述したのと同様のことが生じていると考え
られる。しかし、実際には、図3に示したように、In
Pをバッファ層とした場合は、△d即ちバッファ層表面
の分子層ステップ構造の乱れ具合は傾斜基板の微傾斜の
方向によってあまり影響を受けておらず、ステップバン
チングの影響が見られない。
【0029】これは、InPの燐P原子の上気圧がIn
GaAsのAsに比べて一桁以上も高く、このため、
(111)Aの場合にステップ前側面に沿った方向への
結晶成長速度がInGaAsの場合に比べ減速して成長
速度の異方性が弱まった結果、(111)Bの場合と同
様にバッファ層表面の分子層ステップ構造の乱れ具合△
dは主としてステップ前側面の凸凹によって定まり、△
dは約0.5ML程度の値となるものと考えられる。
【0030】なお、GaAs系基板についての従来の実
験結果によれば、微傾斜方向は<01−1>方向すなわ
ち(111)Bがよいとされており、ここで得られた結
論と異なっているが、その原因は不明である。ところ
で、成長温度を低温化してInPのP蒸気圧を低下させ
る等すれば、InPの場合においても[011]方向に
微傾斜した基板上の成長にInGaAsの場合と同様の
成長速度の異方性を実現することも不可能ではない。し
かし、一般に、低温下で良好な結晶を成長させることは
困難である。このため。{100}面から微傾斜した主
面を有するInPの傾斜基板上に有機金属気相成長法で
結晶成長を行い、基板表面に量子細線構造を形成するに
都合のよい整った分子層ステップ構造を得ようとする場
合、成長させるべき結晶としてInGaAsあるいは〓
族元素が主としてAsよりなるInGaAsPとするこ
とが望ましい。
【0031】これまでの説明で、(111)Aの基板と
InGaAsの結晶成長の組み合わせが最適な組み合わ
せであることが分かるが、(111)Aの基板上にIn
GaAsの結晶成長を行う場合には、ステップバンチン
グを生ずるおそれがある。このステップバンチングの発
生を防止するためには、ステップの前進速度を速めれば
よい。しかし、ステップ前側面の沿う方向への成長速度
との間には、十分な速度差(異方性)が確保されている
必要もある。
【0032】このように、十分な異方性を確保しつつ、
ステップの前進速度を速めるには、複数のキンクを各ス
テップに導入すればよく、その為には、上述の微傾斜基
板の微傾斜の方向を[011]方向から僅かに[01−
1]方向寄りの方向とすればよい。このようにすること
によって、結晶成長によって消滅することのない複数の
キンクが各ステップに導入され。ステップの前側面方向
への成長速度を十分に速く保ったまま、各ステップの前
進速度を高めることができる。
【0033】
【作用】本発明による化合物半導体基板によれば、その
分子層ステップ構造を利用して量子細線等の微細構造を
該基板上に得ることが可能となる。また、本発明による
化合物半導体基板の製造方法によれば、{100}面を
ステップ上面とし所定の平滑性を有するステップ前側面
を持った分子層ステップが[011]方向に所定範囲内
の周期性をもって階段状に形成された主面を有する化合
物半導体基板を得ることが可能となる。
【0034】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。本
発明による化合物半導体基板の実施例として、次のよう
な化合物半導体基板を挙げることができる。例えば、イ
ンジウム・リンInPからなる材料基板上にInPやイ
ンジウム・ガリウム・ヒソInGaAs、インジウム・
ガリウム・ヒソ・リンInGaAsPの結晶成長を行っ
た化合物半導体基板であって、(100)面から<01
1>方向に約1°微傾斜した面を主面としており、この
主面には、(100)面をステップ上面とし所定の平滑
性を有するステップ前側面を持った分子層ステップが<
011>方向に所定範囲内の周期性をもって階段状にI
nP、InGaAs、あるいはInGaAsPにより形
成されている化合物半導体基板である。
【0035】なお、ここでいうステップ前側面の所定の
平滑性、あるいは所定範囲内の周期性とは、階段状の分
子層ステップ構造を利用して量子細線等の微細な量子構
造をかかる化合物半導体基板上に作製する場合に障害と
ならない程度のステップ前側面の凸凹や周期の不揃いは
許容できることを意味している。具体的には、ステップ
前側面の平滑性は0.2ML程度以下の範囲内であれば
よく、また、所定範囲内の周期性は誤差1%程度の範囲
内であればよい。また、上記微傾斜の角度は0.5〜2
°程度であればよい。
【0036】このような化合物半導体基板は、本発明に
よる化合物半導体基板の製造方法により製造することが
できる。すなわち、(100)面から<011>方向に
1°微傾斜した面が基準面となるように機械的に加工さ
れたインジウム・リンからなる材料基板を用意し、その
基準面上に有機金属気相成長法(MOVPE)によって
InP、InGaAs、あるいはInGaAsPを結晶
成長させることにより製造できる。
【0037】この製造工程について説明すると、まず、
上述の基準面で切り出された材料基板を用意し、良好な
結晶の成長ができるように、基板表面から酸化膜を除去
する。酸化膜の除去は、硫酸系の酸溶液で基板表面を処
理することによって行うことができる。その後、基準面
上に結晶成長を行う。結晶成長は、成長原料としてトリ
メチルインジウム(TMIn)やトリエチルガリウム(TMG
a)、フォスフィン(PH3 )、アルシン(AsH3
等を用い、キャリアガスとして水素を用いて行う。成長
温度は600℃程度とし、成長圧力は0.1気圧程度、
成長速度は1μm/h程度とする。実際には、まず、
0.4torr程度のフォスフィン(PH3 )雰囲気中で2
0分程度をかけて材料基板を成長温度に昇温し、その後
に続けてInやGaの成長原料を材料基板上に供給する
ことによって結晶成長を行った。
【0038】実験によれば、InPやInGaAsを結
晶成長させる際の〓族原子の材料ガス分圧に最適値が存
在し、InPの場合はフォスフィン(PH3 )分圧が
0.4torr程度、InGaAsの場合はアルシン(As
3 )分圧が0.05torr程度が良い。フォスフィン
(PH3 )分圧がアルシン(AsH3 )分圧よりも高い
のは、PH3 の方がAsH3 よりも熱分解しにくく、ま
た結晶中のP蒸気圧がAs蒸気圧よりも高いためと考え
られる。
【0039】なお、材料基板の基準面の微傾斜角度は、
製造しようとする化合物半導体基板の主面の微傾斜角度
に合わせればよい。本発明による化合物半導体基板の他
の実施例として、主面の微傾斜の方向が<011>方向
を基準にして僅かに<01−1>方向寄りの方向とした
化合物半導体基板を挙げることができる。この場合、微
斜の方向を<011>方向から<01−1>方向寄り
にずらす角度は0°以上2°以内程度とする。
【0040】かかる化合物半導体基板も本発明による化
合物半導体基板の製造方法により製造することができ
る。この場合は、上述した製造方法の実施例において、
材料基板の基準面の微傾斜方向を製造しようとする化合
物半導体基板の主面の微傾斜方向に合わせればよい。と
ころで、材料基板上に結晶成長させる結晶の厚さは、少
なくとも0.2μm以上が必要である。これは、この程
度の結晶成長を行わないと、材料基板表面の複雑に乱れ
たステップ構造を結晶成長によって修正しきれないから
である。
【0041】図7に材料基板上に結晶成長させる結晶の
厚さを変化させたときの結晶表面の分子層ステップ構造
の乱れ具合についての実験結果を示す。この実験は、I
nPを<01−1>方向に微傾斜した材料基板上に成長
させて行った。同図から明らかなように、結晶表面の分
子層ステップ構造の乱れ具合は、成長させた結晶の厚さ
が0.2μmを越えるあたりから一定の値に落ち着くこ
とが分かる。この結果から、安全を考え、0.5μm程
度の結晶成長を行うことが好ましい。
【0042】なお、この結果は上述した他の場合にもほ
ぼ同様にあてはまる。ただし、必要とされる結晶成長の
厚さは成長温度や成長速度に強く依存するため、これら
について上述した条件以外で結晶成長を行う場合は、図
7に示したと同様の実験を行い、必要とされる結晶成長
の厚さを求める必要がある。上述した方法によって、周
期が約17nmの整った単分子層ステップ構造を基板表面
に形成できる。そして、基板上に形成された分子沿うス
テップ構造を利用して量子細線等の微細構造を該基板上
に得ることが可能となり、かかる微細構造を有し特性の
優れた半導体装置を得ることができようになる。
【0043】なお、上述の実施例の説明においては、結
晶面の方位や傾斜方向等について、特定の方位や方向で
示したが、これらに結晶学的に等価な方位や方向であれ
ば全く同性質の化合物半導体基板を得ることができる。
【0044】
【発明の効果】以上の説明したように、本発明による化
合物半導体基板によれば、その分子層ステップ構造を利
用して量子細線等の微細構造を該基板上に得ることが可
能となり、かかる微細構造を有し特性の優れた半導体装
置を得ることができる。また、本発明による化合物半導
体基板の製造方法によれば、{100}面をステップ上
面とし所定の平滑性を有するステップ前側面を持った分
子層ステップが[011]方向に所定範囲内の周期性を
もって階段状に形成された主面を有する化合物半導体基
板を得ることができ、この化合物半導体基板を用いて上
述した微細構造を有し特性の優れた半導体装置を得るこ
とができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物半導体基板の表面に形成された分子層ス
テップ構造が整っているか否かを評価するために量子井
戸構造が形成された化合物半導体基板の縦断面図であ
る。
【図2】量子井戸幅とその量子井戸からの発光全半値幅
との関係を調べた実験結果を示したグラフである。
【図3】結晶傾斜基板の微傾斜の方向を変化させた場合
に分子層ステップ構造の乱れ具合がどのように変化する
かを調べた結果を示したグラフである。
【図4】(111)Bの傾斜基板上に形成された結晶の
表面モホロジーパターンを示した図である。
【図5】(111)Aの傾斜基板上に形成された結晶の
表面モホロジーパターンを示した図である。
【図6】(A)はInGaAsをバッファ層とした(1
11)B基板の表面構造及び結晶成長機構を模式的に示
した斜視図であり、(B)は(111)A基板の表面構
造及び結晶成長機構を模式的に示した斜視図である。
【図7】材料基板上に結晶成長させる結晶の厚さを変化
させたときの結晶表面の分子層ステップ構造の乱れ具合
についての実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】 1…傾斜基板 2…バッファ層 3…障壁層 5…量子井戸 6…障壁層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インジウムとリンを組成に含み、{10
    0}面から[011]方向に微傾斜した面を主面とし、
    前記主面には、{100}面をステップ上面とし所定の
    平滑性を有するステップ前側面を持った分子層ステップ
    が[011]方向に所定範囲内の周期性をもって階段状
    に形成されていることを特徴とする化合物半導体基板。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の化合物半導体基板におい
    て、 前記主面の微傾斜の方向が[011]方向を基準にして
    僅かに[01−1]方向寄りの方向であることを特徴と
    する化合物半導体基板。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の化合物半導体基板
    において、 前記分子層ステップが、InGaAs若しくは〓族元素
    が主にAsからなるInGaAsPにより形成されてい
    ることを特徴とする化合物半導体基板。
  4. 【請求項4】 {100}面から[011]方向に微傾
    斜した面が基準面となるように機械的に加工されたイン
    ジウムとリンを組成に含む化合物半導体からなる材料基
    板を用意し、その基準面上に有機金属気相成長法により
    化合物半導体を結晶成長することにより、{100}面
    をステップ上面とし所定の平滑性を有するステップ前側
    面を持った分子層ステップが[011]方向に所定範囲
    内の周期性をもって階段状に形成されている主面を有す
    る化合物半導体基板を製造することを特徴とする化合物
    半導体基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の化合物半導体基板の製造
    方法において、 前記基準面の微傾斜の方向が[011]方向を基準にし
    て僅かに[01−1]方向寄りの方向であることを特徴
    とする化合物半導体基板の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5記載の化合物半導体基板
    の製造方法において、 有機金属気相成長法により結晶成長する前記化合物半導
    体は、InGaAs若しくは〓族元素が主にAsからな
    るInGaAsPであることを特徴とする化合物半導体
    基板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009091235A (ja) * 2001-06-08 2009-04-30 Cree Inc 高表面品質GaNウェーハおよびその製造方法

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