JPH0696181B2

JPH0696181B2 - 薄肉鋳片鋳造用冷却ドラムに対する不規則ディンプルの形成方法

Info

Publication number: JPH0696181B2
Application number: JP11579489A
Authority: JP
Inventors: 尚古谷; 仁丹野; 保彦尾松; 重典田中; 恵一山本; 邦政佐々木
Original assignee: Mitsubishi Heavy Industries Ltd; Nippon Steel Corp
Current assignee: Mitsubishi Heavy Industries Ltd; Nippon Steel Corp
Priority date: 1989-05-08
Filing date: 1989-05-08
Publication date: 1994-11-30
Anticipated expiration: 2009-11-30
Also published as: JPH02295647A

Description

【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明は、ツインドラム方式，単ドラム方式，ドラム−
ベルト方式等によって薄肉鋳片を連続鋳造するときに使
用される冷却ドラムに、ディンプルを不規則に形成する
方法に関する。

〔従来の技術〕

連続鋳造の分野では、製造コストの切り下げ，新材質の
創出等を目的として、最終形状に近い薄肉鋳片を溶融金
属から直接的に製造する技術の開発が強く望まれてい
る。この要求に応えるべく、内部水冷機構を備えた一対
の冷却ドラムを使用するツインドラム方式，一本の冷却
ドラムを使用する単ドラム方式，冷却ドラムとベルトと
の間に湯溜り部を形成するドラム−ベルト方式等の各種
方法がこれまで提案され、その一部は工業生産のレベル
にまで達している。

これらの連続鋳造方法においては、薄肉鋳片の表面性状
を安定して高水準に維持することが重要である。すなわ
ち、これら連続鋳造方法は、旧来の連続鋳造設備によっ
て製造されるスラブの場合と異なり、後続する工程で圧
延される度合を小さくすることができる薄肉鋳片を得る
ことを狙って開発されたものである。そのため、薄肉鋳
片に肉厚変動，表面割れ等があると、これが製品表面の
欠陥となって残り、商品価値を著しく損なう危険が大き
い。

そこで、良好な表面品質をもつ薄肉鋳片を安定して製造
するため、種々の方法が検討され提案されている。たと
えば、特開昭60−184449号公報では、冷却ドラムと凝固
シェルとの間に断熱層として働くエアギャップを形成す
るように、冷却ドラムの周面に凹凸を設けることが提案
されている。このエアギャップによって、冷却ドラムの
抜熱能力が小さくなり、溶融金属の緩慢な冷却が行われ
る。その結果、凝固シェルの厚みが板幅方向で均一化さ
れ、形状特性の優れた薄肉鋳片が製造可能になるとされ
ている。

また、本発明者等も、特定サイズのディンプルをもつ冷
却ドラムや、ディンプルの分布状態，面積率等を特定し
た冷却ドラム等を開発し、特願昭62-240479号，特願昭6
2-240481号，特願昭63-202962号等として出願してい
る。

〔発明が解決しようとする課題〕

ところが、周面に凹凸やディンプルを形成した冷却ドラ
ムを使用して薄肉鋳片の鋳造を行うと、得られた鋳片の
表面に横皺が発生しやすい。この原因を、第５図を参照
しながら説明する。第５図は、ツインドラム方式の連続
鋳造機における一方の冷却ドラムのメニスカス周辺部を
示したものであるが、単ドラム方式，ドラム−ベルト方
式にあっても同様な問題が生じる。

冷却ドラム１の周面に形成した凹凸，ディンプル２等に
よって、湯溜り部３に注入された溶融金属４に振動が付
与され、表面波５が発生する。この表面波５は、冷却ド
ラム１の周面に近いほど大きな波となる。また、冷却ド
ラム１の周面に形成した凹凸，ディンプル２等の分布に
規則性が強いほど、ドラム軸方向に連続する表面波５の
長さが大きくなる。たとえば、各ディンプル２を冷却ド
ラム１周面全域にわたって碁盤目状に規則配列したと
き、湯面に生じる表面波５は、湯溜り部３のドラム軸方
向全長にわたるものとなる。

溶融金属４は、矢印Ｄで示した方向に冷却ドラム１が回
転するに伴って、冷却ドラム１の周面で急冷されて凝固
シェルとなり、ドラムギャップに送られる。このとき、
湯面に表面波５が発生していると、溶融金属４と冷却ド
ラム１周面との接触状態が悪化し、界面に不規則な空隙
が生じ易くなる。この空隙によって冷却ドラム１に対す
る伝熱量が低下し、凝固シェルの成長や冷却速度が鋳片
の長手方向に不規則に変化する。その結果、鋳造された
薄肉鋳片に横皺が発生する。

また、横皺発生に至らないまでも、表面波５によって凝
固シェルの成長や冷却条件が不規則に変動するため、薄
肉鋳片の熱履歴が局部的に異なったものとなる。この熱
履歴の相違は、製品表面に光沢ムラ，粗大結晶組織等の
欠陥として現れ、特に表面性状を重要視するステンレス
鋼薄板等にあっては商品価値を著しく低下させる。

この表面波に起因する欠陥を解消する上では、特願昭62
−240481号で提案したように、周面にディンプル２を不
規則に形成した冷却ドラム１を使用することが好まし
い。しかし、冷却ドラム１全周にわたってディンプル２
を不規則分布で形成することは非常に困難である。

すなわち、この種のディンプル２は、通常エッチングに
より形成されるが、そのためにはエッチングパターンを
表示したフィルムが使用される。ところが、充分な面積
をもつフィルムにディンプル２の不規則配置を表示した
パターンを形成し、このエッチングパターンを冷却ドラ
ム１の周面全域に写し撮ることは、大規模な設備を必要
とし、ディンプル２の形成に対する費用負担が大きなも
のとなる。

そこで、エッチングパターンを複数のブロックに分割
し、このブロックを繋ぎ合わせることによって、ディン
プル２を形成することになる。しかし、この方式では、
各ブロック単位でエッチングパターンが繰り返されるこ
とになり、結果として冷却ドラム１の周面に形成された
ディンプル２が規則的に分布されたものとなる。この規
則的分布のために、依然として湯溜り部３の湯面に表面
波５が発生することを完全に防止できない。

本発明は、このような問題に鑑み、複数種類のエッチン
グパターンを表示したフィルムをランダムに繋ぎ合わ
せ、冷却ドラムの全周にわたってディンプルが不規則に
分布されるパターンを得、このパターンをエッチングす
ることによって、必要とする不規則分布をもつディンプ
ルを冷却ドラムの全周に簡単に形成することを目的とす
る。

〔課題を解決するための手段〕

本発明のディンプル形成方法は、その目的を達成するた
めに、深さ５〜100μｍ及び直径0.1〜1.2mmのディンプ
ルを不規則な分布で周面に形成した冷却ドラムを製造す
る際、ディンプル形成予定位置を表示した部分平面をも
つ複数種類のパターン群を用意し、該パターン群からラ
ンダムに複数のパターンを選択して原稿を作成し、該原
稿に基づいてディンプル形成予定位置を表示する複数の
フィルムを作成し、これらフィルムを冷却ドラムの周面
に巻き付けて前記複数種類のパターンを前記冷却ドラム
の周面に写し撮り、エッチングすることを特徴とする。

〔実施例〕

冷却ドラム１の周面に形成される個々のディンプル２
は、緩冷却効果，凝固シェルに対する拘束力，加工性等
を考慮して、５〜100μｍの深さ及び0.1〜1.2mmの直径
をもったものである。ディンプル２の直径が0.1mm未満
では、緩冷却効果及び凝固シェルに対する拘束力が小さ
いばかりか、クリーニングが難しく、ドラム表面の打ち
疵や摩耗の影響を受け易くなり、しかも加工も困難にな
る。他方、ディンプル２の直径が1.2mmを超えると、デ
ィンプル２自体が微少割れの起点になり易くなり、ディ
ンプル２に溶融金属４が侵入し、得られた薄肉鋳片の表
面に多数の微細な突起が形成される。また、ディンプル
２が５μｍ未満の浅いものであると、そこに形成される
エアギャップの断熱効果が著しく低下する。加えて、デ
ィンプル２に溶融金属４が侵入して鋳片の表面に微細な
突起が形成され、製品の品質上からも好ましくない。他
方、100μｍを超える深さをもつディンプル２にあって
は、開口直径1.2mm以下のディンプル２に関する限り、
効果の増大が認められない。

第１図に示したf₁,f₂,f₃……は、このディンプル２を不
規則分布で冷却ドラム１の周面一部に形成するために使
用されるフィルムに形成されたパターンを示す。図中、
黒点が、エッチングによって冷却ドラム１の周面にディ
ンプル２が形成される個所を表している。個々のパター
ンf₁,f₂,f₃……は、それぞれの黒点の位置がランダムに
配置されており、且つ各パターンf₁,f₂,f₃……の間でも
黒点の配置形態が異なっている。なお各パターンf₁,f₂,
f₃……において黒点が占める面積率は、ディンプル２に
よる効果を確保するため10〜30％の範囲に維持すること
が好ましい。

このように黒点をランダムに配置し、且つその配置形態
が相互に異なる複数種類のパターンf₁,f₂,f₃……をもつ
フィルム群を複数用意する。このフィルム群から適宜の
フィルムを選択し、そのフィルムに隣接するフィルムを
ランダムに選択する。たとえば、冷却ドラム１の全周面
に相当する面積をもつ二次元平面Ａの番地X₁Y₁に、パタ
ーンf₁を割り付ける。次いで、フィルム群からランダム
に選択したパターンf₂を隣接する番地X₁Y₂に、パターン
f₃を番地X₂Y₁に割り付ける。以降、この作業を繰り返す
ことによって、二次元平面Ａ全体にわたって、黒点が不
規則に配置されたパターンを形成することができる。

個々のパターンf₁,f₂,f₃……は、第２図に示した手順で
作成される。たとえば10mm×10mmのパターン単位に相当
する面積の部分平面の中で乱数を発生させて起点のX,Y
座標を定め、その起点に乱数により発生させて求めたサ
イズの黒点を描く。

そして、乱数を発生して、起点を中心とする隣接区域か
ら次の黒点のＸ座標,Y座標及び径を定める。この二次の
黒点と起点にプロットした黒点とを比較し、両者の中心
と中心間距離から両者の半径の値を引いた距離（以下、
この距離を近接ディンプル間距離という）が設定距離ｌ
以上であれば、二次の黒点をその位置にプロットする。
ここで、設定距離ｌは、比較している両方のディンプル
のうち、大きい方をr₁としたとき、ｌ＝0.8×r₁と設定
した。

また、両者の間の距離が設定距離ｌ未満であれば、乱数
発生を再度行って、新たに次の黒点のＸ座標,Y座標及び
径を定める。この操作の繰返しにより、常に既に求めら
れた複数の黒点と新たに乱数により発生させた黒点間の
近接ディンプル間距離を各々求め、その中の最小値を最
近接ディンプル間距離として求める。そして、最近接デ
ィンプル間距離が設定距離ｌ以上であれば黒点をその位
置にプロットし、設定距離ｌ未満であれば新たな乱数を
発生させて部分平面上に多数の黒点をランダムに配置す
る。

次いで、この部分平面に対して黒点が占める面積率を演
算し、この面積率が目標範囲にある場合には、目標値を
満足するパターンが得られたものとして作業を完了す
る。逆に、面積率が目標範囲にないとき、頭初に戻って
黒点をプロットし直す。このようにして、部分平面に黒
点がランダムに配置されたパターンf₁が得られる。

これらパターンf₁,f₂,f₃……は、大きな面積をもつ冷却
ドラム１の全周面にわたってディンプル２を不規則分布
で配置させる上から、できるだけ数多く用意しておくこ
とが好ましい。また、第１図では、二次元平面Ａを碁盤
目状に区分して番地Ｘ_ｎＹ_ｎとしている。しかし、二次
元平面Ａの区分は、これに限ることなく、Ｘ方向及び／
又はＹ方向に関し番地Ｘ_ｎ−１Ｙ_ｎ又は番地Ｘ_ｎＹ
_ｎ−１に対して番地Ｘ_ｎＹ_ｎの位相をずらせたものであ
っても良い。

このようにして、冷却ドラム１の全周面に相当する面積
をもつ二次元平面Ａに対して、黒点が割り付けられた原
稿が作成される。第３図は、この原稿を使用して、冷却
ドラムの周面に不規則分布でディンプルを形成する工程
を示したフロー図である。原稿11から、ディンプル形成
予定位置に黒点を描いたフィルム12を作成する。このフ
ィルム12は、冷却ドラムの全周面を複数に分割した内の
一つの区分に相当する面積をもつものである。他方、デ
ィンプルが形成される冷却ドラム13は、その全周面に紫
外線硬化型で耐酸性のマスキング樹脂14を塗布してお
く。

このマスキング樹脂14上に、複数のフィルム12を繋ぎ合
わせながら巻き付ける。フィルム12が巻き付けられた冷
却ドラム13は、紫外線15に照射される。このとき、黒点
は紫外線15を遮光するため黒点に相当する位置のマスキ
ング樹脂14は未硬化のままで残り、他の部分のマスキン
グ樹脂14は硬化される。次いで、このマスキング樹脂14
に現像液16を吹き付け、ディンプル形成予定位置のマス
キング樹脂14を除去する。なお、この段階で不良部を検
査し、原稿11の黒点配置に対応しない個所について、部
分的な修正を施すことが好ましい。

ディンプル形成予定位置を除き硬化樹脂被膜17が形成さ
れた冷却ドラム13に対して、エッチング液18を吹き付け
る。これによって、ディンプル形成予定位置の冷却ドラ
ム13表面がエッチングされて、黒点に対応した不規則分
布でディンプルが形成される。エッチング終了後、冷却
ドラム13表面にある硬化樹脂被膜17が薬品で除去され、
冷却ドラム13の表面が中和処理される。最後に、冷却ド
ラム13を水洗，乾燥して、不規則分布でディンプル19が
形成された冷却ドラム13が得られる。

このフローにおいて、各原稿11に多数の黒点が不規則分
布をもって描かれており、しかも複数の原稿11を用意し
ているので、これら原稿11を適宜繋ぎ合わせて冷却ドラ
ム13の周面に巻き付けた場合にあっても、黒点の配置状
態に一定の規則が生じることがない。そのため、エッチ
ングによって形成されたディンプル19も、冷却ドラム13
全周面にわたって、ランダムに配置されたものとなる。
したがって、この冷却ドラム13を使用して薄肉鋳片を鋳
造するとき、第５図で説明したような表面波５が湯溜り
部３の湯面に形成されず、得られた鋳片に横皺等の欠陥
が見られないものであった。

これに対し、たとえば第１図のパターンf₁を各番地Ｘ_ｎ
Ｙ_ｎに割り付けた原稿を使用してフィルムを作成し、エ
ッチングによってディンプルを冷却ドラムの周面に形成
した場合、ディンプルの分布は、第４図に示すようにパ
ターンf₁に相当するピッチｐで繰返しが行われるディン
プル配置となる。すなわち、この場合には、個々のディ
ンプルの間には規則性がないものの、ディンプル群にピ
ッチｐの周期性がある。このため、冷却ドラムに接する
溶融金属に周期的に変化する振動が付与され、この振動
が増幅された結果としての表面波発生を避けられなかっ
た。

〔発明の効果〕

以上に説明したように、本発明においては、ディンプル
形成予定位置を不規則分布で表示した部分平面をもつパ
ターンをランダムに選択して、冷却ドラム全周面に相当
する面積をもつ原稿の上にディンプル形成予定位置を表
示している。この原稿から適宜の枚数のフィルムを作成
して、冷却ドラムの周面に巻き付け、エッチングパター
ンを冷却ドラム全周面に形成し、エッチングすることに
よって、広い面積にわたってディンプルを不規則分布で
形成することが可能となる。そのため、フィルム製造に
大きな設備を必要とせず、従来規模の設備で規則性のな
いディンプルが冷却ドラムの全周面に形成される。この
ようにして得られた冷却ドラムを使用して薄肉鋳片の鋳
造を行うとき、湯溜り部の湯面に表面波が発生すること
がなくなり、表面性状の良好な製品が製造される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に従った原稿作成を説明するための図で
あり、第２図は個々のパターンを作成する手順を説明
し、第３図は得られた原稿からディンプルを冷却ドラム
の周面に形成するフローを示し、第４図は一つのパター
ンを繰返し使用してディンプルを形成した場合を示し、
第５図はディンプルの規則性が湯溜り部の湯面に表面波
を発生させている状況を示す。 1,13:冷却ドラム、2,19:ディンプル 3:湯溜り部、4:溶融金属 5:表面波、11:原稿 12:フィルム、14:マスキング樹脂 15:紫外線、16:現像液 17:硬化樹脂被膜、18:エッチング液 f₁,f₂,f₃……：パターン 1:二次元平面、Ｘ_ｎＹ_ｎ：番地

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者尾松保彦福岡県北九州市八幡東区枝光１丁目１番１号新日本製鐵株式會社設備技術本部内 (72)発明者田中重典山口県光市大字島田3434番地新日本製鐵株式會社光製鐵所内 (72)発明者山本恵一広島県広島市西区観音新町４丁目６番22号三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者佐々木邦政広島県広島市西区観音新町４丁目６番22号三菱重工業株式会社広島製作所内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】深さ５〜100μｍ及び直径0.1〜1.2mmのデ
ィンプルを不規則な分布で周面に形成した冷却ドラムを
製造する際、ディンプル形成予定位置を表示した部分平
面をもつ複数種類のパターン群を用意し、該パターン群
からランダムに複数のパターンを選択して原稿を作成
し、該原稿に基づいてディンプル形成予定位置を表示す
る複数のフィルムを作成し、これらフィルムを冷却ドラ
ムの周面に巻き付けて前記複数種類のパターンを前記冷
却ドラムの周面に写し撮り、エッチングすることを特徴
とする薄肉鋳片製造用冷却ドラムに対する不規則ディン
プルの形成方法。