JPH0693388A - 耐食性及び延靱性に優れた高Si含有ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐食性及び延靱性に優れた高Si含有ステンレス鋼およびその製造方法

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JPH0693388A
JPH0693388A JP15225793A JP15225793A JPH0693388A JP H0693388 A JPH0693388 A JP H0693388A JP 15225793 A JP15225793 A JP 15225793A JP 15225793 A JP15225793 A JP 15225793A JP H0693388 A JPH0693388 A JP H0693388A
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corrosion resistance
steel
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stainless steel
sulfuric acid
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JP15225793A
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Inventor
Tatsuyuki Hirai
龍至 平井
Norimi Wada
典巳 和田
Yasuo Kobayashi
泰男 小林
Ryuichiro Ebara
隆一郎 江原
Hideo Nakamoto
英雄 中本
Masato Zama
正人 座間
Makoto Nakamura
誠 中村
Hajime Nagano
長野  肇
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
JFE Engineering Corp
Original Assignee
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】重量%で、C:0.08%以下と、Si:5.0 〜8.
0 %と、Mn:2.0 %以下と、Ni:10〜35%と、C
r:10〜25%と、Cu:0.5 〜3.0 %及びMo:0.2 〜
2.0 %の1種または2種と、残部Fe及び不可避的不純
物からなり、且つCr,Mo,Si及びNi含有量が下
記(1)式を満たす耐食性及び延靱性に優れた高Si含
有ステンレス鋼。Cr(%)+Mo(%)+3×Si
(%)−Ni(%)−14<5 (1) 【効果】95%硫酸中においては65〜100℃、98
%硫酸中では150〜220℃の環境で良好な耐食性を
有し、かつ構造用材料としての延靱性に優れたステンレ
ス鋼板を熱間圧延または熱間鍛造によって容易に得られ
る。したがって、硫酸製造プラントの乾燥塔、吸収塔等
の装置材料として利用できる安価なステンレス鋼板を提
供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、硫酸製造プラントの
乾燥塔、吸収塔等の装置材料として利用できる、延靱性
ならびに高温、高濃度硫酸中での耐食性に優れた高Si
含有ステンレス鋼及びその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来技術】接触式硫酸製造法で重要となる吸収、乾
燥、冷却工程において、装置材料は一般的に、濃度95
〜99%、温度65〜120℃の硫酸環境に曝される。
本材料としては、従来、耐酸レンガを内張りした炭素
鋼、Cr鋳鉄、高Si鋳鉄、ステンレス鋼、高Ni合金
等が使用されている。しかし、耐酸レンガでは長時間使
用すると目地より硫酸が浸透し、外側の炭素鋼が腐食さ
れる問題がある。また、鋳鉄では装置の設計上、制限を
受けるばかりでなく、内部欠陥が多いためメインテナン
スにも難がある。一方、ステンレス鋼及び高Ni合金は
構造用材料として適しているが、SUS316L等の汎
用ステンレスでは上記環境に耐えず、また、UNS N
10276等の高Ni合金でも100℃以上の温度では
使用できない。
【0003】一般に乾燥塔での操業環境は、濃度95
%、温度65℃程度の硫酸中であるが、配管類の一部に
おいては100℃程度まで温度が上昇することもある。
さらに、98%硫酸環境である吸収塔は、現状100〜
120℃で操業されているが、温度を上げることにより
操業効率の向上を図ることが可能となるため、150℃
以上での使用に耐える材料が必要とされている。
【0004】上記環境での使用を目的としたステンレス
鋼として、特開昭63−207998号公報、特開平2
−107745号公報及び特開平3−158437号公
報には高Cr系のフェライトステンレス鋼あるいは2相
ステンレス鋼が開示されている。しかし、高Crステン
レス鋼の耐食性が良好であるのは、共沸組成(98.3
%)に近い濃度の硫酸中において150℃程度までの温
度であり、さらに、濃度95%程度では温度65℃でも
耐食性に劣っている。一方、特開昭52−4418号公
報及び特開平2−290949号公報には、ステンレス
鋼のSi含有量を高めることにより、95%及び98%
のいずれの硫酸濃度においても高温まで良好な耐食性が
得られると開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、高Si含有ス
テンレス鋼ではSi含有量の増加にともない、硬い(H
V:500〜1000)金属間化合物やδフェライト等
の脆化相が生成する。特に、鋳造過程において最終凝固
する鋼塊中心に近い部位ほど偏析が著しいため、この脆
化相が増加し、熱間加工性に劣るばかりでなく、製品と
なった鋼板の延靱性も著しく劣化する。したがって、通
常の鋳造法によって得られた鋼塊では、熱間圧延または
熱間鍛造による厚板製造が困難であり、且つ構造用材料
として重要な延靱性にも劣るという問題点を有する。
【0006】中心偏析のない鋼塊を得る方法としては、
高Si含有ステンレス鋼の粉末をHIP処理等によって
焼結する方法が考えられるが、この方法で得られた鋼塊
は高価なものである。
【0007】この発明は上記のような従来技術における
問題を解決するためになされたもので、熱間圧延または
熱間鍛造による厚板製造が容易となる高Si含有ステン
レス鋼の成分範囲及び製造条件を規定することにより、
95%硫酸中においては100℃まで、98%硫酸中で
は150℃以上の環境で良好な耐食性を有し、かつ構造
用材料としての延靱性に優れたステンレス鋼を安価に得
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1発明は、重量%で、
C:0.08%以下と、Si:5.0〜8.0%と、M
n:2.0%以下と、Ni:10〜35%と、Cr:1
0〜25%と、Cu:0.5〜3.0%及びMo:0.
2〜2.0%の1種または2種と、残部Fe及び不可避
的不純物からなり、且つCr,Mo,Si及びNi含有
量が下記(1)式を満たす耐食性及び延靱性に優れた高
Si含有ステンレス鋼である。
【0009】 Cr(%)+Mo(%)+3×Si(%)−Ni(%)−14<5 ……( 1) 第2発明は、重量%で、C:0.08%以下と、Si:
5.0〜8.0%と、Mn:2.0%以下と、Ni:1
0〜35%と、Cr:10〜25%と、Pd:0.00
5〜1.0%と、Cu:0.5〜3.0%及びMo:
0.2〜2.0%の1種または2種と、残部Fe及び不
可避的不純物からなり、且つCr,Mo,Si及びNi
含有量が上記(1)式を満たす耐食性及び延靱性に優れ
た高Si含有ステンレス鋼である。
【0010】第3発明は、請求項1または請求項2のい
ずれかに記載された成分を有する鋼塊を、1050〜1
150℃、且つ下記(2)式を満足する温度域(T℃)
で均熱後、900℃以上の温度域で圧下比または鍛造比
2.0以上、且つ加工終了温度700℃以上で熱間圧延
または熱間鍛造する耐食性及び延靱性に優れた高Si含
有ステンレス鋼の製造方法である。 T(℃)<1470−35×Si(%)−5×Ni(%) ……(2)
【0011】
【作用】以下に、この発明のステンレス鋼の成分限定理
由を述べる。Cは含有量が多くなると炭化物を形成し、
耐食性を劣化させるため、その上限値は0.08%とす
る。
【0012】Siは高温、高濃度硫酸中での耐食性を著
しく向上させる成分であるが、上記環境で良好な耐食性
を得るには、5.0%以上含有する必要がある。また、
8.0%を超えて添加すると多量の金属間化合物の生成
により、鋳造時に凝固割れが発生する。したがって、S
i含有量は5.0〜8.0%とする。
【0013】Mnは脱酸作用を有する成分であり、オー
ステナイト生成元素でもある。しかし、その含有量が
2.0%を超えると耐食性が劣化する。したがって、M
n含有量の上限値は2.0%とする。
【0014】Niはオーステナイト組織を得るのに必須
の成分であり、含有量が10%未満ではδフェライトや
金属間化合物等の脆化相が多くなり延靱性を劣化させ
る。また、Cr,Mo及びSi含有量の増加にともない
Ni含有量も多くする必要がある(詳細は後述する)。
ただし、その含有量を多くするとコスト高になるばかり
でなく、部分溶融温度が低下し、熱間加工が可能な温度
範囲が狭くなり鋼板等の製造が不可能となるため、上限
値は35%とする。
【0015】Crはステンレス鋼の一般的な耐食性に対
して最も重要な元素であり、高Si含有ステンレス鋼に
おいては、その含有量を10%以上とする必要がある。
一方、高温高濃度硫酸中での耐食性もCr含有量の増加
にともない向上するが、25%を超えると耐食性に及ぼ
す効果は飽和する。また、Cr含有量が多くなると脆化
相の析出が促進される。したがって、Crは含有量は1
0〜25%とする。
【0016】Pdは、高温高濃度硫酸中での耐食性向上
に有効な成分であることを発明者らが見出したことに基
づいて添加している。特に98%、180℃以上の硫酸
環境では、Pdの微量添加によりSi含有量を若干低下
させても、Pd無添加鋼と同等の耐食性が得られる。し
かし、その含有量が0.005%未満ではその効果が発
揮されず、また、1.0%を超えて添加しても耐食性に
及ぼす効果は飽和し、コスト高となる。したがって、P
d含有量は0.005〜1.0%とする。
【0017】Cuは、95%硫酸中での耐食性向上に有
効な成分であることを発明者らが見出したことに基づい
て添加している。特にその効果は、温度が高くなるほど
顕著となるが、含有量が0.5%未満では発揮されな
い。また、3.0%を超えて添加しても耐食性に及ぼす
効果は飽和するので、Cu含有量は0.5〜3.0%と
する。
【0018】Moは、Cuと同様、95%硫酸中での耐
食性向上に有効な成分であることを発明者らが見出した
ことに基づいて添加している。Moは、含有量が0.2
%未満ではその効果が発揮されない。また、2.0%を
超えて添加しても耐食性に及ぼす効果は飽和し、かつ含
有量の増加にともないCrと同様、変形抵抗の増加や脆
化相の形成が促進されるので、上限値は2.0%とす
る。
【0019】また、本発明者らは、圧延時の割れ発生と
熱間引張試験による絞りとの関係を調べ、絞りが50%
以上であれば割れが生じないことを明らかにした。さら
に、本鋼においては、上記した脆化相の体積率Fpが
(3)式で表わせ、その体積率が5%以上になると、9
00〜1000℃の温度域における熱間引張試験で絞り
が50%未満となるばかりでなく、鋼板の延靱性が著し
く劣化することを見出した。したがって、Cr,Mo,
Si及びNi含有量は上記の限定に加えて、(1)式を
満たす範囲とする。
【0020】 Fp(%)=Cr(%)+Mo(%)+3×Si(%)−Ni(%)−14 ……(3) Cr(%)+Mo(%)+3×Si(%)−Ni(%)−14<5 ……( 1) 次に、製造条件の限定理由を述べると、本発明鋼におい
て鋳造ままの鋼塊では、上記した脆化相の体積率Fpが
(3)式で求められる値よりも多くなる。特に、偏析が
著しい鋼塊中心ほどFpが増加し、二枚割れ(圧延中に
板厚中心部に割れが発生し、鋼板が二枚状になること)
等の原因となるため、より多くのNi添加が必要とな
る。しかし、Ni含有量を増加することは、後述する部
分溶融温度の低下につながり、熱間加工が可能な温度域
を逆に狭める結果となる。しかし、本発明者らは脆化相
の体積率Fpに及ぼす長時間均熱の影響を詳細に検討し
た結果、特定の温度域で均熱処理を施すことにより、鋼
塊中心部においても表層部とほぼ同程度のFpとなり、
その時のFpが(3)式で表せることを見出した。ただ
し、均熱温度が1050℃未満では100時間以上の均
熱を施しても、上記効果が得られず、また、1150℃
を超えると逆にFpは増加する。さらに、本発明鋼はS
i含有量の増加にともない、低融点の金属間化合物を形
成するため、均熱温度が高すぎると部分溶融を起こし、
熱間加工中に割れを生じる。本発明者らは、本発明鋼の
部分溶融する最低温度Tmが(4)式となることを見出
した。したがって、鋼塊に対する熱間加工前の均熱条件
は、1050〜1150℃、且つ(2)式を満足する温
度域とする。
【0021】 Fp(%)=Cr(%)+Mo(%)+3×Si(%)−Ni(%)−14 ……(3) Tm(℃)=1470−35×Si(%)−5×Ni(%) ……(4) T(℃)<1470−35×Si(%)−5×Ni(%) ……(2) また、本発明鋼は鋼塊の結晶粒が粗大であるため、未再
結晶温度域での延性に劣り、熱間加工の末期で割れが発
生し易い。しかし、本発明者らは900℃以上の再結晶
温度域で圧下比または鍛造比2.0以上の圧延または鍛
造を行うことにより、鋼塊表層部で十分な再結晶が起こ
り、未再結晶温度域においても耳割れ等が発生しないこ
とを見出した。但し、加工終了温度が700℃未満にな
ると、いずれの圧延または鍛造条件においても耳割れが
発生するため、加工温度の下限値は700℃とする。
【0022】
【実施例】本発明によるものの具体的な実施例について
説明すると、以下の如くである。 実施例1 表1に示す化学成分の150kgインゴットに対して、
1050℃で10時間の均熱処理を行い、熱間引張サン
プルを採取した。さらに、均熱と同様の1050℃加熱
後、900℃以上で圧下比3.0、仕上温度700℃の
熱間圧延を行い、20mmt の鋼板を製造した。鋼板に
対して1100℃の固溶化熱処理を施した後、腐食試験
サンプル、引張試験片及び2mmVノッチ付きシャルピ
ー衝撃試験片を採取した。また、鋼25〜34及び37
〜42からは孔食電位測定(JIS G0577)用サ
ンプルも採取した。ただし、一部の鋼では鋼板に割れが
発生したため、割れの無い健全部から上記サンプルを採
取した。また、8%を超えるSi含有量の鋼43及び4
4では、鋳込みままのインゴット全体に割れが発生して
いたため、圧延はできなかった。
【0023】熱間引張試験により、部分溶融して絞りが
0%になる最低温度とNi及びSi含有量との関係を図
1に示す。すなわち、この図1によれば部分溶融する最
低温度Tmは、(4)式となることがわかる。
【0024】 Tm(℃)=1470−35×Si(%)−5×Ni(%) ……(4) 95%,100℃、98%,150℃及び98%,18
0℃硫酸中での耐食性とSi含有量との関係を図2、図
3及び図4に、98%,180℃及び98%,220℃
硫酸中での耐食性とPd含有量との関係を図5に各々示
す。Siは脱酸作用を有するため、ステンレス鋼には通
常0.5%程度のSiを添加する。しかし、95%,1
00℃及び98%,150℃硫酸中においては、この図
2及び図3よりPdの有無に関わらず5%以上のSi含
有により、腐食速度が著しく低下することがわかる。一
方、図4及び図5より98%,180℃以上の硫酸中に
おいても良好な耐食性を得るには、Pd無添加鋼におい
て6%以上Siを含有した場合であるが、0.005%
以上Pdを添加するとSi含有量は5%以上でよいこと
がわかる。しかし、Pd含有量が1.0%を超えると腐
食速度は一定になることがわかる。
【0025】95%、100℃硫酸中での耐食性及び
3.5%NaCl中での孔食電位とCr含有量との関係
を図6に示す。図6によれば、Cr含有量が10%未満
になると、Si含有量が8%程度であっても孔食電位は
著しく低下することがわかる。また、硫酸中での耐食性
はCr含有量の増加にともない向上するが、25%を超
えると腐食速度は一定になることが理解される。
【0026】95%,100℃硫酸中での耐食性とCu
含有量及びMo含有量との関係を図7及び図8に各々示
すが、これら図7及び図8によればCuを0.5%以
上、あるいはMoを0.2%以上添加すると、95%,
100℃硫酸中での腐食速度は著しく低下する。しか
し、その含有量がCuでは3%、Moでは2%を超える
と腐食速度は一定になることがわかる。
【0027】98%,150℃硫酸中での耐食性とC含
有量及びMn含有量との関係を図9及び図10にそれぞ
れ示す。図9によればSi含有量が8%程度であって
も、C含有量が0.08%を超えると腐食速度は著しく
高くなる。また、図10によれば同様にMn含有量が
2.0%を超えると腐食速度は増加することがわかる。
【0028】脆化相の体積率Fp、引張試験での伸び及
びシャルピー衝撃試験における0℃の吸収エネルギと成
分との関係を図11に示す。この図11によればFpは
(3)式となり、この値が5%以上になると伸び及び吸
収エネルギが著しく低下し、構造用材料としては不適格
であることがわかる。
【0029】 Fp(%)=Cr(%)+Mo(%)+3×Si(%)−Ni(%)−14 ……(3) 実施例2 表2に示す化学成分の150kgインゴット及びHIP
鋼塊を用いて、熱間加工性、耐食性、延靱性の評価を行
った。なお、HIP鋼塊はアトマイズ粉末を外寸120
t ×180w ×270l 、厚さ10mmの炭素鋼(0.
02%C鋼)製の缶に充填し、真空密封した後、105
0℃、2000kg/cm2 の条件でHIP処理を行い
製造した。
【0030】インゴットF及びKの脆化相の体積率Fp
と均熱処理条件との関係を図12に示す。この図12に
よればインゴットF及びKともに均熱温度が1050℃
未満では、100時間均熱を施してもFpは鋳造ままと
変わらなく、インゴット表層部に比べ中心部のFpは著
しく高い。これに対し、1050〜1150℃の温度域
で均熱した場合、中心部、表層部ともにFpは低下し、
ほぼ同じ値となる。さらに、1150℃を超える温度で
はFpが増加することがわかる。
【0031】150kgインゴットA〜Q及びHIP鋼
塊S〜Vから熱間引張サンプルを採取し、Tm未満の温
度域における鋼塊の熱間延性を評価した。なお、インゴ
ットA〜Qでは1050℃で10時間均熱後、中心部か
らサンプルを採取した。また、インゴットC及びEのみ
鋳造ままのサンプルも同様に採取した。
【0032】インゴットC,F,K及びHIP鋼塊S,
Tの熱間引張試験における絞りと試験温度及び脆化相の
体積率Fpとの関係を図13に示す。この図13によれ
ば、鋳造ままのインゴットCの絞りは1000℃未満の
温度域で20%以下と劣っている。これに対し、均熱し
たインゴットF及びHIP鋼塊Sは、900〜1000
℃の温度域において50%以上の絞りを示すが、脆化相
の体積率が5%以上である均熱したインゴットK及びH
IP鋼塊Tでは、この温度域で絞りが50%を下回るた
め、熱間加工時に割れの発生する可能性が高いことが理
解された。ただし、900℃未満の温度域においては脆
化相の体積率によらず、インゴットF及びKの絞りは5
0%未満である。
【0033】発明鋼A〜J及び比較鋼K〜Vの脆化相の
体積率Fp及び900〜1000℃における熱間延性と
成分との関係を図14に示す。この図14によれば均熱
したインゴットのFpは中心部においても、HIP鋼塊
と同様に次の(3)式で表せる。また、Fpが5%未満
の鋼では均熱したインゴット及びHIP鋼塊ともに、9
00〜1000℃の温度域における絞りが50%以上と
良好であることがわかる。
【0034】 Fp(%)=Cr(%)+Mo(%)+3×Si(%)−Ni(%)−14 ……(3) インゴットFに対し、1050℃で10時間均熱後、仕
上温度900℃、圧下比1.5〜3.0の分塊圧延を行
い、分塊材の表層部から熱間引張サンプルを採取した。
また、比較としてHIP鋼塊Sに対しても1050℃加
熱、900℃仕上、圧下比2.0の分塊圧延を行い、同
様にサンプルを採取した。分塊材F及びSの熱間引張試
験における絞りと試験温度及び分塊圧延時の圧下比との
関係を図15に示す。この図15によれば、分塊圧延時
の圧下比を2.0以上にすれば、900℃未満の絞りは
HIP鋼塊なみに改善されることがわかる。したがっ
て、仕上温度が900℃未満となる熱間圧延または熱間
鍛造を行っても、900℃以上で圧下比または鍛造比
2.0以上を確保すれば割れ発生を防止できることが予
想される。
【0035】150kgインゴットA〜R及びHIP鋼
塊S〜Vを用いて、熱間圧延または熱間鍛造による20
mmt 鋼板の製造を行い、割れの有無、耐食性及び延靱
性の評価を行った。これらの結果を次の表3及び表4に
示す。表3及び表4によれば、本発明法で製造した高S
i含有ステンレス鋼は割れの発生もなく、95%,65
℃及び100℃硫酸、98%,150℃以上の硫酸中で
良好な耐食性を有し、延靱性にも優れていることがわか
る。中でも、6%以上Siを含有し、且つPdを添加し
た鋼は98%,220℃硫酸中でも十分な耐食性を有し
ている。
【0036】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、95
%硫酸中においては65〜100℃、98%硫酸中では
150〜220℃の環境で良好な耐食性を有し、かつ構
造用材料としての延靱性に優れたステンレス鋼板を熱間
圧延または熱間鍛造によって容易に得られる効果があ
る。したがって、硫酸製造プラントの乾燥塔、吸収塔等
の装置材料として利用できる安価なステンレス鋼板の提
供が可能となる。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による鋼の部分溶融する最低
温度とNi及びSi含有量との関係を示す図。
【図2】実施例1による鋼の95%,100℃硫酸中で
の耐食性とSi含有量との関係を示す図。
【図3】同じく実施例1による鋼の98%,150℃硫
酸中での耐食性とSi含有量との関係を示す図。
【図4】実施例1による鋼の98%,180℃硫酸中で
の耐食性とSi含有量との関係を示す図。
【図5】同じく実施例1による鋼の98%,180℃及
び220℃硫酸中での耐食性とPd含有量との関係を示
す図。
【図6】実施例1による鋼の95%,100℃硫酸中で
の耐食性および3.5%NaCl中での孔食電位とCr
含有量との関係を示す図。
【図7】同じく実施例1による鋼の95%,100℃硫
酸中での耐食性とCu含有量との関係を示す図。
【図8】実施例1による鋼の95%,100℃硫酸中で
の耐食性とMo含有量との関係を示す図。
【図9】同じく実施例1による鋼の98%,150℃硫
酸中での耐食性とC含有量との関係を示す図。
【図10】実施例1による鋼の98%,150℃硫酸中
での耐食性とMn含有量との関係を示す図。
【図11】同じく実施例1による鋼の脆化相の体積率、
引張試験での伸び及びシャルピー衝撃試験における0℃
の吸収エネルギと成分との関係を示す図。
【図12】本発明における実施例2によるインゴットF
及びKの脆化相の体積率と均熱処理条件との関係を示す
図。
【図13】実施例2によるインゴットC,F,K及びH
IP鋼塊S,Tの熱間引張試験における絞りと試験温度
及び脆化相の体積率との関係を示す図。
【図14】同じく実施例2による発明鋼A〜J及び比較
鋼K〜Vの脆化相の体積率及び900〜1000℃にお
ける熱間延性と成分との関係を示す図。
【図15】実施例2による分塊材F及びSの熱間引張試
験における絞りと試験温度及び分塊圧延時の圧下比との
関係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 泰男 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 江原 隆一郎 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 中本 英雄 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 座間 正人 長崎県長崎市深堀町5丁目717番1号 三 菱重工業株式会社長崎研究所内 (72)発明者 中村 誠 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三 菱重工業株式会社内 (72)発明者 長野 肇 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三 菱重工業株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.08%以下と、S
    i:5.0〜8.0%と、Mn:2.0%以下と、N
    i:10〜35%と、Cr:10〜25%と、Cu:
    0.5〜3.0%及びMo:0.2〜2.0%の1種ま
    たは2種と、残部Fe及び不可避的不純物からなり、且
    つCr,Mo,Si及びNi含有量が下記(1)式を満
    たす耐食性及び延靱性に優れた高Si含有ステンレス
    鋼。 Cr(%)+Mo(%)+3×Si(%)−Ni(%)−14<5 ……( 1)
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.08%以下と、S
    i:5.0〜8.0%と、Mn:2.0%以下と、N
    i:10〜35%と、Cr:10〜25%と、Pd:
    0.005〜1.0%と、Cu:0.5〜3.0%及び
    Mo:0.2〜2.0%の1種または2種と、残部Fe
    及び不可避的不純物からなり、且つCr,Mo,Si及
    びNi含有量が下記(1)式を満たす耐食性及び延靱性
    に優れた高Si含有ステンレス鋼。 Cr(%)+Mo(%)+3×Si(%)−Ni(%)−14<5 ……( 1)
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2のいずれかに記
    載された成分を有する鋼塊を、1050〜1150℃、
    且つ下記(2)式を満足する温度域(T℃)で均熱後、
    900℃以上の温度域で圧下比または鍛造比2.0以
    上、且つ加工終了温度700℃以上で熱間圧延または熱
    間鍛造する耐食性及び延靱性に優れた高Si含有ステン
    レス鋼の製造方法。 T(℃)<1470−35×Si(%)−5×Ni(%) ……(2)
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