JPH0690799A - 細菌を同定する方法および試薬 - Google Patents

細菌を同定する方法および試薬

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JPH0690799A
JPH0690799A JP3258182A JP25818291A JPH0690799A JP H0690799 A JPH0690799 A JP H0690799A JP 3258182 A JP3258182 A JP 3258182A JP 25818291 A JP25818291 A JP 25818291A JP H0690799 A JPH0690799 A JP H0690799A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 主として、敗血症を引き起こすグラム陽性お
よびグラム陰性細菌並びにその他の細菌の同定および検
出のためにそれぞれに特異的なプローブを用いて細菌中
のポリヌクレオチド配列を検知する方法および試薬の提
供。 【構成】 少なくとも14の(特に約20〜30の)ヌ
クレオチドを有するヌクレオチド配列を含み、且つ下記
配列〔I〕、それにより相補的なヌクレオチド配列、お
よびその変異体および断片、よりなる群から選択される
配列を有する、細菌ヌクレオチド配列にハイブリダイズ
することのできるプローブ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主として、敗血症を引
き起こすグラム陽性およびグラム陰性細菌並びにその他
の細菌の同定および検出のための方法および試薬に関す
る。
【0002】
【従来の技術】細菌によって引き起こされる疾病を治療
して回復させるためには、迅速で正確な病原菌の検出お
よび同定が必要となる。従来は、純粋培養単離と、その
後の、試料の起源、生育の要求性、目に見える生育の形
態 (コロニー) 、顕微鏡的形態学、染色反応および生化
学的性質の知見を用いた同定法によって、検出および同
定が行われてきた。
【0003】細菌の正体を判定するための重要なステッ
プは、グラム染色である。この手順は、スライドガラス
上に熱固定した細菌塗沫標本を塩基性色素、クリスタル
バイオレットで処理することを包含する。あらゆる生物
は、この色素を吸収する。次にこの塗沫標本をグラム氏
のヨウ素液 (3パーセントヨウ素−ヨウ化カリウムを水
または弱いバッファー、pH8.0中に含む、バッファー使
用は、放置によってヨウ素から生じる酸度を中和するた
めである) で覆う。水ですすぎ、アセトンで脱色した
後、標本を水で十分に洗浄し、赤色色素、通常はサフラ
ニンで対比染色する。次に染色された標本を水ですす
ぎ、乾燥し、光学顕微鏡を用いて油浸で検鏡する。
【0004】大半の細菌はこの染色によって二群に分け
られる。グラム陽性細菌は青色に染まり、他方、球菌の
約3分の1、桿菌の2分の1、および螺旋形生物のすべ
ては赤色に染まり、グラム陰性であると称される。この
方法は有効ではあるが、非常に時間がかかり、多くの様
々な手順を包含し、そのために多くのエラーの起こる可
能性がある。グラム染色および他の培養に基づく検出方
法は、純粋培養を得るために最低一晩の試料と培地との
インキュベーションを必要とする。
【0005】一般に敗血症と称される、血液中に細菌ま
たは真菌が存在する状態は、重大な、生命を脅かす臨床
結果をもたらす可能性がある。敗血症によって敗血症性
ショックが起こり得るが、これは以下の症状を包含する
−−−低血圧、乳酸アシドーシス、酸素欠乏症、乏尿、
昏蒙、播種性血管内凝固、胃腸管出血、代謝障害、およ
び敏感皮膚障害、1コロニー形成単位 (CFU) 程度の
量は、敗血症患者の血液試料30ml中に存在し得る。培養
は、現在最も感度が高く、広く利用されている血液中の
細菌または真菌の検出方法であるので、敗血症の疑いの
ある症例の治療は、培養結果を待たず、経験的に始めら
れることもしばしばである。培養と同程度の感度をもつ
血液中の細菌検出のための迅速な診断法が現行法に比べ
て有意義な改良となることは明白である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は
敗血症を引き起こす細菌の迅速な検出および同定のため
の方法および試薬を提供する。検出は、一定の種または
種のグループには存在するが、他には存在しないヌクレ
オチド配列、ならびにそのヌクレオチド配列からの転写
物と、ヌクレオチドプローブとのハイブリッド形成に基
づく。
【0007】望ましい実施態様に於て、ゲノムDNAま
たは16SrRNA逆転写物由来の標的領域を増幅し、
その結果得られた増幅されたDNAを、一定の細菌種ま
たは細菌種群のDNAとはハイブリッド形成するが、他
とはしない一連のプローブで処理する。増幅されたDN
Aとうまくハイブリッド形成するプローブを判定し、ど
のプローブがその増幅されたDNAとハイブリッド形成
するかに基づいて、細菌は、グラム陽性またはグラム陰
性のいずれかとして、あるいは特定の種または種のグル
ープとして分類される。
【0008】また、敗血症を引き起こすグラム陽性、グ
ラム陰性、および他の細菌を同定するための特定のプロ
ーブおよびそれらに相補的なものも、本文中で定義し、
特許請求する。さらに、本発明は、すべての細菌に対し
て特異的なユニバーサル (普遍的) DNA標的領域を増
幅するためのユニバーサル細菌プライマー、およびその
標的領域内の、一定の細菌種または細菌種群に特有のヌ
クレオチド配列とハイブリッド形成する一連のプローブ
を含有するポリメラーゼ・チェイン・リアクション (P
CR) キットの調剤および利用を意図する。
【0009】なお,添付の図において、図1は、グラム
陽性、グラム陰性および他の細菌に於て、PCRによる
標的領域の増幅に使用することのできる二つのユニバー
サル細菌プライマーDG74およびRW01を示す。図
2は、グラム陽性特異的プローブRW03を示す。
【0010】図3は、グラム陰性プローブの四つの候
補、PW04,DL04,DL05およびRDR278
を示す。図4は,ユニバーサル細菌プローブの二つの候
補、RDR244およびRDR245を示す。図5は、
大腸菌 (Escherichia coli) /腸内細菌プローブを示
す。
【0011】図6は、バイテロイデスプローブを示す。
また、表において、表1は、グラム陰性プローブRW0
4およびDL04に関するハイブリッド形成データをま
とめたものである。表2は、グラム陰性プローブ、RD
R278およびDL04;ユニバーサルプローブの二候
補、RDR244;およびRDR245;およびバクロ
テロイデスプローブのRDR279を調べた結果をまと
めたものである。
【0012】表3は、実施例6記載のようにRDR24
4およびRDR245について調べた生物の一覧であ
る。表4は、大腸菌/腸内細菌プローブRDR140K
Gについて得られたデーターの一覧である。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、グラム陽性ま
たはグラム陰性細菌のいずれか一方に特有のヌクレオチ
ド配列、または一定の細菌種または細菌種群に特有のヌ
クレオチド配列をプローブとハイブリッド形成させるこ
とによって、細菌の存在を判定し、これを同定するため
の方法に関する。
【0014】感染の原因を知るためにプローブとして特
定のポリヌクレオチド配列を使用することは、疑問の余
地のある免疫学的同定アッセイに対する貴重な代替法と
なっている。例えば、1984年6月19日付PCT第WO84/0
2721号公報は、標的核酸配列を検出するためのハイブリ
ッド形成法に於て、リボソームRNA、トランスファー
RNA、または他のRNAからなる標的核酸配列に相補
的な核酸プローブの使用を記載している。このアッセイ
は公知のDNAハイブリッド形成アッセイよりも高い感
度と特異性を与えるが、相補的プローブの使用を必要と
するハイブリッド形成法は、一般に試験生物の培養に依
存し、それ故迅速な診断には適さない。標的DNAを増
幅する方法が利用可能であるならば、臨床検体について
直接プローブを使用することができる。
【0015】本発明で使用するについて、敗血症を引き
起こす細菌種または細菌種群に関するプローブは以下を
包含するがそれらに限定されない: ユニバーサル細菌プローブ グラム陰性プローブ グラム陽性プローブ 大腸菌/腸内細菌プローブ バクテロイデスプローブ 上記プローブはポリメラーゼ・チェイン・リアクション
(PCR) によって増幅されたDNAまたはRNAとの
ハイブリッド形成に有用であると考えられる。PCR
は、インビトロの培養が困難であったりまたは長くかか
る小量の病原体の検出に使用できる有力な技法であり、
または検出のために生物検体の存在を必要とする他の方
法の代替として有力な技法である。そのもっとも簡単な
形において、PCRは、反対鎖とハイブリッド形成し、
且つ標的DNA内の対象領域に隣接する、二つのオリゴ
ヌクレオチドプライマーを用いて、インビトロで特定の
DNA配列を酵素合成するための方法である。鋳型の変
性、プライマーアニーリング、およびDNAポリメラー
ゼによるアニールしたプライマーの伸長を包含するサイ
クルを何回も繰り返すことによって、プライマーの5'末
端によって限定される末端を有する特定のフラグメント
が指数的に蓄積される。報告によれば、PCRによって
特定のDNA配列を1012倍に選択的に濃縮することがで
きる。PCR法は、 Saikiら、(1985) Science 230, 13
50-1354 に記載され、米国特許第4,683,195 、4,683,20
2 、および4,800,159号の主題である。このPCR法は
鎌状赤血球貧血 Saikiら、(1985)上記) およびヒト免疫
不全ウイルス (HIV) RNA(Byrneら、(1988) Nuc.
Acids Res. 16, 4165)に関わるベータ−グロビン遺伝子
中の異常な配列の存在を検出するために用いられた。し
かしながら、この方法が利用できるためには、それ以前
に、その疾病に関わるポリヌクレオチドのヌクレオチド
配列を十分明らかにして増幅のためのプライマーをデザ
インし、さらに増幅産物を検出するために十分特異的な
プローブをデザインしなければならない。
【0016】本発明は、細菌ポリヌクレオチドの含有が
疑われる試料中の当該ポリヌクレオチドの存在を検出す
るための方法を与える。ここに於て、当該ポリヌクレオ
チドは選択された標的領域を含有し、該方法は以下を含
んでなる: (a) 標的領域があれば、これを検出可能レベルまで増
幅する; (b) 増幅された標的領域があれば、これをプローブと
ともに、ハイブリッド二本鎖の特異性を許容する条件下
で、インキュベートする;および (c) 増幅された標的領域があれば、これとプローブと
の間に形成されるハイブリッドを検出する。
【0017】上記方法に於て、また特別の実施態様とし
て、細菌は、敗血症を引き起こす、グラム陽性またはグ
ラム陰性または他の特定の細菌種または細菌種群であっ
てよい。プローブは、限定されることなく、ユニバーサ
ル細菌プローブ、大腸菌/腸内細菌プローブ、グラム陰
性プローブ、グラム陽性プローブ、またはバクテロイデ
スプローブ、あるいはこれらのプローブの組合せであっ
てよい。
【0018】このように、本発明の方法によって、先行
技術の検出方法でこれまで可能であった以上に迅速に細
菌の存在を検出することができる。基本的なPCRの手
順は、以下のように行われる。対象となる特定の核酸配
列、すなわち「標的配列」、の含有が疑われる試料を用
意する。試料に含まれるその核酸を、まず必要に応じて
精製酵素としてTthDNAポリメラーゼを用いてcD
NAに逆転写する。つぎに、当業者に公知の物理的、化
学的または酵素的方法を包含するなんらかの適当な変性
法を用いて変性させる。二本鎖を分離する望ましい物理
的方法は、完全に (>99%) 変性するまでその核酸を加
熱することである。典型的な熱変性は、現行の技術によ
って約5秒から10分までの範囲の時間のあいだ、約80℃
から約150℃までの範囲の温度を必要とする。
【0019】次に変性したDNA鎖を、選択されたオリ
ゴヌクレオチドプライマーとともに、そのプライマーと
一本鎖オリゴヌクレオチドとが結合できるようにハイブ
リッド形成条件下でインキュベートする。当業者に公知
であるように、プライマーは、二本鎖配列に沿ったこれ
らのプライマーの相対的な位置が、一方のプライマーか
ら合成された伸長産物がその相補物から離れたときにも
う一方のプライマーの伸長のための鋳型として働き、一
定の長さの複製鎖を生じるような位置関係となるよう
に、選択される。
【0020】プライマーは、ポリメラーゼ反応に必要な
試薬の存在下で伸長産物の合成を開始するに十分な長さ
を有していなければならない。プライマーの正確な長さ
は、温度、プライマーの起源、および当該方法の使用法
を包含する多数の要因によって決まるであろう。例え
ば、標的配列の複雑さに応じて、オリゴヌクレオチドプ
ライマーは、それより多いことも少ないこともあるが、
典型的にはおよそ15−30ヌクレオチドを有する。短いプ
ライマーは一般に鋳型と十分安定なハイブリッド複合体
を形成するために低めの温度を必要とする。プライマー
は、その各鎖と選択的にハイブリッド形成するために十
分相補的でなければならない。
【0021】ここで用いられるプライマーは、増幅すべ
き個々の特定配列の各鎖に対して「実質的に」相補的で
あるように選択される。プライマーは鋳型の正確な配列
を反映している必要はないが、各鎖と選択的にハイブリ
ッド形成するに十分相補的でなければならない。プライ
マーが、増幅すべき核酸鎖の一方の配列と十分な相補性
を保持して、それとハイブリッド形成し、それによって
重合法で伸長することのできる二本鎖構造を形成する限
り、相補的でない塩基またはより長い配列をプライマー
のあちこちに挿入することができ、またはプライマーが
その特定配列に相補的なサブセットを含有することがで
きる。プライマーの非−相補的ヌクレオチド配列は、制
限酵素部位を包含することができる。制限酵素部位を標
的配列の末端に付加することは、後続の標的配列のクロ
ーニングに特に有用である。
【0022】本発明で用いられるオリゴヌクレオチドプ
ライマーおよびプローブを第1−6図に示す。なんらか
の適当な方法によって、これらを作製することができ
る。特定の配列を有するオリゴヌクレオチドの作製方法
は当業者に公知であり、例えば、適当な配列のクローニ
ングおよび制限、および直接的な化学合成を包含する。
必要ならば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学
的、または化学的方法によって検出可能な標識取り込み
法を用いて、プライマーを標識することができる。
【0023】次に、鋳型に依存したオリゴヌクレオチド
プライマーの伸長が、十分量の4種のデオキシリボヌク
レオシド三リン酸 (dATP, dGTP, dCTPおよ
びdTTP) または類縁体の存在下で、適当な塩類、金
属カチオンおよびpH緩衝系からなる反応液中で、重合試
薬によって触媒される。好適な重合試薬は、プライマー
および鋳型に依存したDNA合成を触媒することで知ら
れる酵素である。公知のDNAポリメラーゼは、例え
ば、大腸菌DNAポリメラーゼIまたはそのクレノウフ
ラグメント、T4DNAポリメラーゼ、TaqDNAポ
リメラーゼ、The-rmus thermophilus 由来TthDNA
ポリメラーゼ、Thermococcus litoralis由来DNAポリ
メラーゼを包含する。これらのDNAポリメラーゼを用
いてDNA合成を触媒するための反応条件は、当業者に
周知である。
【0024】合成産物は、鋳型鎖およびプライマー伸長
鎖からなる二本鎖分子であり、標的配列を包含する。こ
れらの産物が引き続いて、別の複製のための鋳型として
働く。第二回目の複製に於て、第一回目のプライマー伸
長鎖をそれと相補的なプライマーとアニールする;合成
は、プライマー配列またはその相補物が5'および3'末端
の両方に結合した「短い」産物を生じる。変性、プライ
マーアニーリングおよび伸長のサイクルを繰り返すこと
によって、プライマーにより限定される標的領域の指数
的な蓄積をもたらす。十分な回数の繰り返しによって核
酸の標的領域を含有するポリヌクレオチドを必要な量だ
け得ることができる。必要量は様々ではあるが、その産
物ポリヌクレオチドが果たすべき作用によって決まる。
【0025】PCR法を、様々な手順で順次行うことが
できる。例えば、PCR法を段階的に行うことができ、
この場合、各段階の後で新試薬が添加される。またすべ
ての試薬を一度に添加する方法で行うこともできる。あ
るいは、一部を段階的に行うこともでき、この場合新試
薬は一定数の段階の後で添加される。望ましい方法に於
て、耐熱性酵素を利用する自動化されたプロセスとして
PCR反応を行う。このプロセスに於て、反応混合液は
変性段階、プライマーアニーリング段階および合成段階
を通して繰り返して使用される。耐熱酵素を用いて行う
のに特に適したDNAサーマルサイクラーを利用するこ
とができるが、これは液体の出入り無しに温度を繰り返
し変化させることを利用し、それによって各サイクルご
とに酵素を添加する必要を省いている。このタイプの機
械は市販されている。
【0026】PCRによる増幅後、標的DNAが効率的
に増幅され、プライマーが増幅すべき標的領域に対して
高度に特異的であるならば、標識ポリヌクレオチドを直
接ゲル分析によって検出することができる。PCRの有
効性を保証するために、グリセロールおよび他のジメチ
ルスルフォキシドのような関連の溶媒を用いて、増幅レ
ベルでPCRの感度を増加させることができ、強固な二
次構造を有するDNA領域の配列決定に付随する問題を
克服することができる。この問題とは、 (1)重合試薬
によって完全には伸長されない鋳型が高頻度で現れるた
めに、PCRの効率が低いこと、または (2) GC含有
量が高いために高温での二本鎖DNAの変性が不完全で
あることを包含する。このような溶媒の使用は、増幅レ
ベルで、アッセイの感度を約数フェムト (10-15 ) グラ
ムDNA (単一の細菌細胞に対応すると考えられる) ま
で高めることができる。このような感度レベルは、増幅
された標的DNAをプローブを用いて検出する必要性を
排除し、それによって、放射性プローブ、ゲル電気泳
動、サザンブロッティング、フィルターハイブリッド形
成、洗浄およびオートラジオグフラフィーの必要性を省
く。グリセロールの濃度範囲は、約5%−20%(v/v) で
あり、DMSO濃度範囲は約3%−10%(v/v)である。
【0027】あるいはまた、本発明にしたがって、厳し
い条件から穏やかな条件までのハイブリッド形成および
洗浄条件のもとで、標的配列と安定なハイブリッドを形
成するプローブポリヌクレオチドとハイブリッド形成に
よって、標的ポリヌクレオチドを検出することができ
る。プローブが標的配列に対して完全に (すなわち約99
%またはそれ以上) 相補的であることが予想されるなら
ば、厳しい条件が用いられよう。いくつかのミスマッチ
が予想される場合、例えば、プローブが完全には相補的
でないような結果となった変異株が予想される場合に
は、ハイブリッド形成条件を弱くすることができる。し
かしながら、非特異的/偶発的結合を除外する条件が選
ばれる。ハイブリッド形成に影響を及ぼし、非特異的結
合に反して選択する条件は、当業者に公知である。一般
に、低い塩濃度および高温は結合のストリンジェンシー
を増加させる。例えば、ストリンジェント条件とは、約
65℃のインキュベーション/洗浄温度で、約0.1×SS
C、0.1%SDSを含有する溶液中でインキュベートす
ることであり、中程度のストリンジェント条件とは、約
50−65℃のインキュベーション/洗浄温度で、約1−2
×SSC、0.1%SDSを含有する溶液中でインキュベ
ートすることであると通常考えられている。弱いストリ
ンジェント条件とは、30−50℃で、2×SSCである。
【0028】ハイブリッド形成および洗浄の別法では、
弱いストリンジェント条件 (5×SSPE, 0.5%SD
S) でハイブリッド形成した後、3M塩化テトラメチル
アンモニウム (TMACl) の存在下で高ストリンジェ
ント条件で洗浄する。TMAClの効果は、A−Tおよ
びG−C塩基対の相対的結合を等しくして、一定温度で
のハイブリッド形成効率がポリヌクレオチドの長さの関
数となるようにする。TMAClを用いて、ストリンジ
ェンシーを望ましいレベルとするように、洗浄温度を変
化させることができる。 (塩化テトラメチルアンモニウ
ム中での塩基組成依存性ハイブリッド形成:高度に複雑
な遺伝子ライブラリーのオリゴヌクレオチドスクリーニ
ング法;Woodら、(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
82, 1585-1588参照) 。
【0029】細菌の標的配列に関するプローブを16S
rRNA遺伝子配列またはその相補物から誘導すること
ができる。プローブは、その標記領域をカバーするがプ
ライマーを排除し、そして標的領域に対して特異的なハ
イブリッド形成をもたらすような、あらゆる適当な長さ
を持つことができる。一般に、プローブは、相補的DN
A鎖のいずれか一方の少なくとも14ヌクレオチド、望ま
しくは少なくとも18ヌクレオチド、さらに望ましくは少
なくとも20から30ヌクレオチドを有する。実際、標的の
配列は、相補的DNA鎖のいずれか一方から由来するこ
とができる。もし完全な相補性が存在するならば、すな
わちその菌株がプローブと同一の配列を有するならば、
二本鎖はストリンジェント条件下でも比較的安定である
ので、プローブは短くてもよい。すなわち約10−30塩基
対の範囲であってよい。ある程度のミスマッチがプロー
ブについて予想されるならば、すなわちプローブが変異
した領域とハイブリッド形成することが疑われる場合に
は、プローブはもっと長くなる。その理由は長さがミス
マッチの影響の一部を相殺すると考えられるからであ
る。プローブを標的領域のサブセットから作製すること
ができ、したがって標的領域全体をカバーする必要はな
い。プローブが標的領域の当該部分とハイブリッド形成
することによって特異的に標的領域を同定するとすれ
ば、標的領域のあらゆるサブセットをプローブの構築に
用いることができる。必要ならば、プローブを標識する
こともできる。適当であると考えられる様々な標識、並
びにそれらをプローブに取り込むための方法が公知であ
り、標識は、例えば、32Pのような放射性元素、または
他の認識可能な機能を有する構造、例えばビオチン (ス
ペーサーアームの使用が望ましい) 、蛍光色素、高電子
密度試薬、検出の容易な反応産物を生じうる酵素 (例え
ば、アルカリホスファターゼおよび西洋ワサビペルオキ
シダーゼ) 、または、対応する特異的抗血清またはモノ
クローナル抗体が入手可能な抗原、を包含する。
【0030】標的領域のヌクレオチド配列の分析を、Gy
llenstenおよびErlich, (1988)Proc. Natl. Acad. Sci.
USA. 85, 7652-7656 に記載のように、PCR増幅産物
の直接分析によって行うことができる。プローブによっ
て検出されたPCR産物の長さを決定することが望まし
いと思われる。変異した細菌菌株が標的領域内に欠失ま
たは挿入を有する場合、あるいは、PCR産物の長さを
確認したいと思う場合には特にこのことが当てはまる。
このような状況では、産物にプローブとのハイブリッド
形成のみならず分子量分析を科すことが望ましい。核酸
の分子量を決定する方法は公知であり、例えば、ゲル電
気泳動、勾配沈降法及びゲル排除クロマトグラフィーを
包含する。
【0031】生物試料中の標的配列の存在は、PCR増
幅技法を行った核酸とプローブとの間でハイブリッドが
形成されるかどうかを判定することによって検出され
る。プローブと核酸配列との間で形成されるハイブリッ
ドの検出方法は公知である。例えば、非標識試料をそれ
が結合する固相マトリックスに移し、結合した試料を、
標識プローブとの特異的ハイブリッド形成を可能にする
ような条件にさらす;次に標識プローブの存在について
固相マトリックスを試験する。あるいはまた、試料が標
識されている場合には、非標識プローブを固相に結合
し、適当なハイブリッド形成条件にさらした後、標識の
存在についてマトリックスを調べる。Saikiら、(1988)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 86, 6230-6234は、多数
のプローブを固相支持体に固定化し、対象となる増幅さ
れた標的ポリヌクレオチドを検出するためにハイブリッ
ド形成を利用する方法を記載する。後者の方法は、必要
な情報のタイプに応じて、増幅された標的DNAを様々
なレベルで同定することができる一連のプローブの使用
によく適している。別法に於て、液相サンドイッチアッ
セイを標識ポリヌクレオチドプローブとともに用いるこ
とができ、このようなプローブの作製方法は1989年4月
11日付米国特許第4,820,630号に記載される。
【0032】また、前記のあらゆるPCR法の実施に利
用されるPCRキットも本発明の範囲内である。細菌検
出のためのPCRキットは、第1の容器および第2の容
器を含んでなり、ここで第1の容器は細菌内のポリヌク
レオチド配列の標的領域を増幅することができるプライ
マーを含有し、第2の容器は増幅された標的核酸配列と
ハイブリッド形成することのできる一またはそれ以上の
プローブを含有する。望ましくは、用いられるプライマ
ーは図1に示すようなものであり、プローブは図2−図
6に示すプローブから選択される。これらはいずれも、
標識されていても、いなくともよい。標識されていない
ならば、標識するための成分もキット中に入れることが
できる。キットは、特定のハイブリッド形成プロトコー
ルに必要な、他の適当なパッケージされた試薬および材
料、例えば、標準物質、および/または重合試薬、並び
にテストを実施するための説明書、を含有することがで
きる。
【0033】使用に際して、PCRキットを構成する物
質を核酸試料に加えると、標的核酸配列の検出および増
幅を可能にする反応試薬混合物を生じる。したがって、
この反応試薬混合物は、キットの構成物質ならびに対象
となるポリヌクレオチドを含有する核酸試料を包含す
る。より明確にするために、以下のプローブおよびプラ
イマーヌクレオチド塩基対データを提示する:図4のプ
ローブRDR245は、大腸菌16SリボソームRNA
遺伝子のヌクレオチド塩基番号1369−1395の相補物に相
当し、Neefs ら (下記) の文献に詳述される。
【0034】図1のプライマーRW01は、大腸菌16
SリボソームRNA遺伝子のヌクレオチド塩基番号1170
−1189に相当し、Neefs の文献に詳述される。図1のプ
ライマーD674は、大腸菌16SリボソームRNA遺
伝子のヌクレオチド塩基番号1522−1540の相補物に相当
し、Neefs の文献に詳述される。図2のプローブRW0
3は、大腸菌16SリボソームRNA遺伝子のヌクレオ
チド塩基番号1190−1217に相当し、Neefs の文献に詳述
される。
【0035】図3のプローブDL04およびRDR27
8は、大腸菌16SリボソームRNA遺伝子のヌクレオ
チド塩基番号1190−1217の相補物に相当し、Neefs の文
献に詳述される。図5のプローブRDR140KGは、
大腸菌16SリボソームRNA遺伝子のヌクレオチド塩
基番号1458−1482に相当し、Neefs の文献に詳述され
る。
【0036】図6のプローブRDR279は、大腸菌1
6SリボソームRNA遺伝子のヌクレオチド塩基番号11
90−1217の相補物に相当し、Neefs の文献に詳述され
る。16SrRNA遺伝子に基づく、様々な微生物に由
来する核酸を検出するためのオリゴヌクレオチドプロー
ブが、科学文献に記載されている。例えば、ユニバーサ
ル細菌プローブはWilsonら("ポリメラーゼ・チェイン・
リアクションによる細菌16SリボソームDNAの増
幅", Kenneth Wilson, Rhonda BlitchingtonおよびRona
ld Greene (1990), Journal of Clinical Microbiolog
y, 28, 1942-1946)およびChenら("真正細菌核酸を検出
・増幅するための広範囲DNAプローブ",Kui Chen, Ha
rold Neimark, Peter Rumore, および Charles Steinma
n, (1989)FEMS microbiology letters, 57, 19-24) に
よって記載されている。属−および種−特異的プローブ
の例は、Barry ら (“微生物のDNAプローブを作製す
るための一般的方法", Tom Barry, Richard Powell, Fr
ank Gannon(1990), Biotech-nology 8, 233-236)、Atla
s およびBej ("PCRと遺伝子プローブを用いた環境水
試料中の細菌病原体の検出”Ronald Atlas and Asim Be
j, "PCR protocols :A guide to metheds and applicat
ions," (1990) p.399-406 (Jnis M.A., ed.),Academic
Press, Inc.) によって記載され、またGenprobeの国際
特許出願第WO88/03957号公報に記載されている。本出願
によって請求される発明は、検出される細菌の範囲に於
いて上記発明とは異なる。グラム陽性およびグラム陰性
プローブは一定範囲の異なる細菌属を検出し、したがっ
て、ユニバーサル細菌プローブより特異性が高く、属−
または種−特異的プローブよりは広範である。ユニバー
サル細菌プローブ、グラム陽性およびグラム陰性プロー
ブ、および種または群特異的プローブを包含する一連の
プローブを使用することにより、属−または種−特異的
プローブを集めて使用するよりも信頼性の高い細菌検出
を得ることができるが、これはユニバーサル細菌プロー
ブおよびグラム陰性またはグラム陽性プローブが、もっ
と特異的なプローブのいずれによっても検出されない細
菌を検出することができるためである。また、記載した
一連のプローブは、単一のユニバーサル細菌プローブよ
りも臨床上より有用な情報を提供する;これは、グラム
陰性対グラム陽性細菌の感染について、異なる抗生物質
治療が推奨されるためである。
【0037】以下の実施例は、本発明の様々な方法およ
び化合物の説明を意図するものである。
【0038】
【実施例】実施例1 以下の実施例のプローブを設計するために使用する方法 候補となるグラム陰性プローブRW04, DL04, D
L05およびRDR278, グラム陽性プローブRW0
3およびバクテロイドプローブRDR279はGenbank
またはEMBLのヌクレオチド配列ライブラリーのデー
タから設計した(Dams等「小型リボソームサブユニット
RNA配列の編集」(1988), NucleicAcid Research, 1
6巻、補遺;Neefs 等「小型リボソームサブユニットR
NA配列の編集」 (1990), 18, 2237-2317, 補遺;およ
び、C. Woeseの報告文「細菌の進化」(1987), Microbio
logical Reviews, 51(2), 221-271)。
【0039】プローブの位置は種々の細菌群に独特の
「配列サイン」を含む16SrRNA遺伝子内の領域の
発見に基づいて選択した (Woese の文献) 。これらの6
プローブは全てこの遺伝子の同じ領域に位置している。
プローブのヌクレオチド配列は検出すべき細菌の各群に
対して有効な配列に基づいて設計し、そして除外すべき
細菌の群の相当する配列と比較した。例えばグラム陽性
プローブは、グラム陽性細菌の殆どでみとめられる配列
の大部分と合致し、そしてグラム陰性細菌の相当する配
列とは異なるよう設計した。
【0040】候補となるユニバーサル細菌プローブRD
R244およびRDR245は16SrRNA遺伝子の
高度に保存された領域に相当する。この領域のプローブ
配列の殆どは、配列情報が入手できるような細菌種の殆
どに存在し、真核細胞種の核またはミトコンドリアのD
NAには存在しない。更に、上記オリゴヌクレオチド各
々の自己相補性 (自身と塩基対を形成する能力) をウイ
スコンシン大学の一連のプログラムのうちのFOLDと
称されるコンピュータープログラムを用いて調べた。オ
リゴヌクレオチドプローブの位置は可能な場合は2次構
造の形成を最小限にしつつ所望の特異性が維持されるよ
うに選択した。
【0041】E.coli/腸内細菌プローブはGenbank のデ
ータから設計した。プローブは以下の段階により設計し
た。第1に、E.coliおよび Proteus vulgaris に対する
bp1430〜1536のヌクレオチド配列 (Neefs の文献に記
載) (増幅プライマーRW01およびDG74により結
合される370bp 領域内) をNeisseria gonorrhoeae, Pse
udomonas aeruginosaおよびPseudomonas testosteroni
を含む非腸内細菌種のパネルの配列と比較した。配列に
差異の生じた領域を記録し、候補プローブの設計に用い
た。
【0042】第2に、候補プローブをGenbank またはE
MBLに記載されている系統学的に一層異なる種の対応
するヌクレオチド配列と比較して、候補オリゴヌクレオ
チドが別の種を検知しないことを確かめた。第3に、オ
リゴヌクレオチドの自己相補性 (自身と塩基対を形成す
る能力) をOLIGO と称されるコンピュータープログラム
(National Biosciences, Hamel, NN) を用いて調べた。
オリゴヌクレオチドプローブの位置は可能な場合は2次
構造の形成を最小限にしつつ所望の特異性が維持される
ように選択した。実施例2 PCRおよびプローブDL04を用いたグラム陰性細菌
の検知 グラム陰性細菌DNAのPCR増幅を以下のとおり行な
った。使用したプライマーは図1に示す。
【0043】グラム陽性および陰性細菌の両方の標的配
列を増幅するために、下記に示す成分を含有する標準P
CR 2×ミックスを調製した。 10×標準PCR緩衝液 10.0ml 50mM MgCl2 1.0ml dNTP's (2.5mM 総 dNTP's) 2.5ml プライマー RW01 (50mM) 1.0ml プライマー DG74 (50mM) 1.0ml H2O 35.0ml Taq DNA ポリメラーゼ (5U/ml) 0.5ml 10×標準PCR緩衝液は以下の成分を含有する: 100mM トリス-HCl, pH8.3 500mM KCl 15mM MgCl A. グラム陰性細菌DNA試料50mlをPCR 2×ミッ
クス50mlと混合した。
【0044】反応混合物を0.5mlマイクロ遠心管に入
れ、管をパーキンエルマー社製の熱サイクラーに入れ
た。2段階PCRサイクルを用い、サーモサイクラーは
以下のとおり設定した。 1. 時間遅延ファイル :95℃5分 2. サーモサイクルファイル:95℃25秒;55℃25秒; 各インキュベーション25〜35サイクル 3. 時間遅延ファイル :72℃10分 B. 増幅された生成物の検知 増幅反応終了後、PCR反応液100ml 中5mlを10×DN
A染料緩衝液1ml (50%スクロース、10mMトリス、pH7.
5,1mM EDTA, 1.0% SDS, 0.05%ブロムフェノールブル
ー) と混合した。試料を2% Nusieveアガロース, 0.5
% Seakem アガロース, 1×TBE (45mMトリスホウ酸
塩, 1mM EDTA)ゲル上に適用した。ブロモフェノールブ
ルー染料の前線がゲル底部まで泳動した後、ゲルをエチ
ジウムブロミド (5mg/ml) で染色し、水で洗浄し、ポ
ラロイドカメラとオレンジフィルターを用いてUV光下
で撮影した。
【0045】PCR生成物の大きさは約370bp であっ
た。 C. 増幅DNAのナイロン膜への移行 ゲル撮影後、ゲルを室温で10分間 0.25N HClに浸漬し
た。ゲルを水で洗浄し、次に30分間 0.5N NaOH, 1.5M N
aCl の溶液に浸漬した。ゲルを水で洗浄し、30分間1M
トリス、pH7.5, 1.5M NaClの溶液に浸漬した。
【0046】以下の2つの方法、すなわち(1) Stratage
ne Staratavac 真空ブロッターを用いた真空移行、また
は(2) Southernの方法によるキャピラリー移行、の何れ
か一方により、予め水に浸漬したナイロン膜 (Pall Bio
dyne) にDNAを移行させた。移行後Stratagene Stara
talinkerで、UV光を用いてDNAを膜に固定化した。 D. オリゴヌクレオチドプローブDL04の放射標識
(図3) オリゴヌクレオチドDL04を以下の反応混合物中、T
4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて標識した。
【0047】γ-32-P ATP 10ml 10×キナーゼ緩衝液 2.5ml オリゴヌクレオチド (10mM) 2.0ml H2O 8.5ml T4ポリヌクレオチドキナーゼ 2.0ml 10×キナーゼ緩衝液は以下の成分を含有する。
【0048】500mM トリス, pH8 100mM MgCl2 50mM DTT キナーゼ反応混合物を37℃で30分間インキュベートし
た。0.25M EDTA 5.6mlおよび水169.4ml を添加して反応
を停止した。この混合物をBiogel P4 の1.0ml 容カラム
に適用し、5000rpm で5分間、卓上遠心分離器で回転し
て標識オリゴヌクレオチドを組み込まれなかった放射能
から分離した。カラム溶出液の1mlをシンチレーション
液を添加せずにシンチレーションカウンターで計数し
( Cerenkov計数) 、放射能の取込み量の概算値を得た。
各ブロットに対して約1×106 cpmを与えるような量を
用いて後のハイブリダイゼーションを行なった。 E. プローブとDNAとのハイブリダイゼーション DNAブロットを60℃で、5×SSPE, 0.5%SDS
の混合物中、予備ハイブリダイズした (1×SSPE=0.18
M NaCl, 10mM NaPO4, pH 7.4, 1mM EDTA)。標識したオ
リゴヌクレオチドプローブを7.5mlの5×SSPE, 0.
5%SDSに添加して混合した。予備浸漬したブロット
の入ったプラスチック袋にこの溶液を入れた。ブロット
を1〜18時間60℃でインキュベートした。
【0049】プラスチック袋からブロットを取出し、2
×SSPE, 0.1%SDS溶液中に入れ、室温で10分間
洗浄した。次にグラム陰性プローブDL04の場合はブ
ロットを3M 塩化テトラメチルアンモニウム (TMAC
l) , 50mMトリス, pH8,0.2%SDSの溶液中、10分
間64℃で洗浄した。ブロットを風乾し、Saran ラップに
包み、70℃で1〜72時間、増感スクリーンを用いるか用
いることなく、Kodak XAR-5 X線フィルムのシートと共
にX線フィルムホルダーに取付けた。実施例3 PCRおよびプローブRW03を用いたグラム陽性細菌
の検知 グラム陽性細菌は以下に示す以外は実施例2と同じ方法
および材料を用いて検知した。
【0050】グラム陽性菌DNA含有試料50mlをPCR
2×ミックスに添加した。使用プローブはグラム陽性
特異的プローブRW03であった (図2) 。段階Eにお
いて、ブロットを3M TMACl, 50mMトリス, pH8,
0.2%SDSの溶液中で洗浄する際には、グラム陰性試
験で64℃の温度を用いたのとは異なり、62℃で行なっ
た。実施例4 グラム陰性細菌の検知−プローブRW04とDL04の
比較 候補のグラム陰性プローブRW04を32Pで標識し、T
MACl中での洗浄を62℃で行なった以外は実施例2の
グラム陰性プローブDL04について記載したように、
種々の細菌DNAから得たPCR産物にハイブリダイズ
した。ハイブリダイゼーションのサザンブロット結果を
表1にまとめる。データによれば、2つのプローブで得
たハイブリダイゼーション結果は、たとえ両プローブと
もグラム陰性「ユニバーサル」プローブであるように設
計されても異なっている。RW04はそれが検知する必
要のない多くのグラム陽性種に対して陽性のシグナルを
与えており、DL04はそれが検知すべき陰性種のみに
対して陽性のシグナルを与えている (ただしヒト病原体
でない T. maritimaおよび T. thermophilusを除く) 。
従ってDL04をグラム陰性細菌の検知に有用なプロー
ブとして選択した。その後の試験 (表2) により、DL
04は全グラム陰性種を検知するわけではないことが解
った。第2の候補グラム陰性プローブRDR278は実
施例5において以下に示すように試験した。実施例5 プローブRDR278を用いたグラム陰性細菌の検知 64℃で行なったTMACl洗浄を含め、実施例2の方法
および材料を用いてグラム陰性細菌を検知した。
【0051】グラム陰性プローブRDR278を32Pで
標識し、種々の細菌DNAから得たPCR産物にハイブ
リダイズした。データを表2に示すRDR278はDL
04が検知しなかった種の殆どに対して陽性ハイブリダ
イゼーションシグナルを与えている。試験した種の内、
Bacteroides fragilisは例外であり、これに対しては、
別個のプローブを設計した。従って、グラム陰性プロー
ブDL04とRDR278の組合せにより、試験したグ
ラム陰性細菌の大部分が検知できることがわかる。実施例6 「ユニバーサル」細菌プローブRDR244およびRD
R245を用いた細菌の検知 64℃で行なったTMACl洗浄を含めて、実施例2の方
法および材料を用いた。
【0052】16SrRNA遺伝子の高度に保存された
領域に相当する候補のユニバーサル細菌プローブRDR
244およびRDR245を32Pで標識し、種々の細菌
DNAから得たPCR産物にハイブリダイズした。表3
にRDR244およびRDR245を用いたサザンブロ
ットハイブリダイゼーションにより試験した細菌DNA
をまとめた。両プローブとも何れの細菌種も検知するよ
うに設計したにもかかわらず、両プローブは異なる挙動
を示した。試験した細菌種のうち、RDR244はPept
ostreptococcus magnas (No.29) および P. anaerobius
(No.28)の2種を除く全ての細菌を検知したことがわか
った。RDR245は試験した全細菌を検知した。従っ
て、RDR245をユニバーサル細菌プローブとして選
択した。 実施例7 プローブRDR279を用いたBacteroides gragilisの
検知 64℃で行なったTMACl洗浄を含めて、実施例2の方
法および材料を用いた。
【0053】Bacteroidsの配列サインである領域に相当
するプローブRDR279 (図参照) を32Pで標識し、
種々の細菌DNAから得たPCR産物にハイブリダイズ
した。表2はその他の菌種に対して行なったRDR27
9の試験の結果を示す。このプローブはBacteroides fr
agilisを検知したが、その他の試験した細菌種のいずれ
とも反応しなかった。実施例8 プローブRDR140KGを用いた大腸菌/腸内細菌の
検知 E.coli/腸内細菌を66℃で行なったTMATl洗浄の外
は実施例2の方法および材料を用いて検知した。E.coli
/腸内細菌プローブの結果を表4に示すが、これによれ
ば、このプローブを用いた場合には意図する種のみが検
知されたことが確認された。
【0054】上記のプローブを組み合わせて使用してど
の細菌が血液試料中に存在するかを検知同定するため
に、これらプローブを敗血症の診断に適用する。上記の
全プローブならびに追加のプローブをSaiki 等の記載に
従って逆ドットブロットフォーマットに配置することが
できる。プローブをナイロン膜やマイクロタイタープレ
ートのような担体上に固定化する。増幅したDNAを水
溶液中に、同時にプローブの各々にハイブリダイズす
る。プローブの各々から得られるシグナルのパターンが
標的DNAの特性を示す。例えばDNAがグラム陰性細
菌のものである場合は、増幅されたDNAはユニバーサ
ル細菌プローブおよびグラム陰性プローブの1つと反応
するのみである。DNAがグラム陽性種のものであれ
ば、それはユニバーサル細菌プローブおよびグラム陽性
プローブのみと陽性反応を示す。DNAがBacteroides
種のものである場合は、それはユニバーサル細菌プロー
ブおよびBacteroides プローブに対して陽性シグナルを
示す。DNAがグラム陰性でも陽性でもないような細菌
(例えば T. pallidum, スピロヘータ) のものである場
合、それはユニバーサル細菌プローブとのみ反応する。
細菌DNAが存在しない場合はいずれのプローブも陽性
シグナルを与えない。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【0063】
【0064】上記した本発明は説明を目的として詳述し
たものであるが、当業者は本発明の特許請求の範囲内で
種々の変更や修飾が可能なことが明らかであるだろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】グラム陽性、グラム陰性および他の細菌に於
て、PCRによる標的領域の増幅に使用することのでき
る二つのユニバーサル細菌プライマーDG74およびR
W01を示す。
【図2】グラム陽性特異的プローブRW03を示す。
【図3】グラム陰性プローブの四つの候補、PW04,
DL04,DL05およびRDR278を示す。
【図4】ユニバーサル細菌プローブの二つの候補、RD
R244およびRDR245を示す。
【図5】大腸菌 (Escherichia coli) /腸内細菌プロー
ブを示す。
【図6】バイテロイデスプローブを示す。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも14のヌクレオチドを有するヌ
    クレオチド配列を含み、且つ下記配列: 5'-GTACAAGGCCCGGGAACGTATTCACCG-3', 5'-GACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGTC-3', 5'-GACGTAAGGGCCATGATGACTTGACGTC-3', 5'-GACGTAAGGGCCATGAGGACTTGACGTC-3', 5'-GGCGCTTACCACTTTGTGATTCATG-3', 5'-GACGTAAGGGCCGTGCTGATTTGACGTC-3', それにより相補的なヌクレオチド配列、およびその変異
    体および断片、よりなる群から選択される配列を有す
    る、細菌ヌクレオチド配列にハイブリダイズすることの
    できるプロープ。
  2. 【請求項2】ヌクレオチド配列が約20〜30のヌクレオチ
    ドよりなる請求項1記載のプローブ。
  3. 【請求項3】 細菌に特異なヌクレオチド配列にハイブ
    リダイズすることができ、下記配列: 5'-GTACAAGGCCCGGGAACGTATTCACCG-3', これに相補的なヌクレオチド配列、およびその変異体お
    よび断片よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を
    有する請求項1または2記載のプローブ。
  4. 【請求項4】 グラム陽性細菌に特異なヌクレオチド配
    列にハイブリダイズすることができ、下記配列: 5'-GACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGTC-3', これに相補的なヌクレオチド配列、およびその変異体お
    よび断片よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を
    有する請求項1または2記載のプローブ。
  5. 【請求項5】 グラム陰性細菌に特異なヌクレオチド配
    列にハイブリダイズすることができ、下記配列: 5'-GACGTAAGGGCCATGATGACTTGACGTC-3', 5'-GACGTAAGGGCCATGAGGACTTGACGTC-3', これに相補的なヌクレオチド配列、およびその変異体お
    よび断片よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を
    有する請求項1または2記載のプローブ。
  6. 【請求項6】 E.coli/腸内細菌に特異なヌクレオチド
    配列にハイブリダイズすることができ、下記配列: 5'-GGCGCTTACCACTTTGTGATTCATG-3', これに相補的なヌクレオチド配列、およびその変異体お
    よび断片よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を
    有する請求項1または2記載のプローブ。
  7. 【請求項7】 バクテロイデス (Bacteroides)に特異な
    ヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができ、下
    記配列: 5'-GACGTAAGGGCCGTGCTGATTTGACGTC-3', これに相補的なヌクレオチド配列、およびその変異体お
    よび断片よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を
    有する請求項1または2記載のプローブ。
  8. 【請求項8】 約15〜約30のヌクレオチドを有するヌク
    レオチド配列を含み、下記配列: 5'-AGGAGGTGATCCAACCGCA-3' また
    は 5'-AACTGGAGGAAGGTGGGGAT-3', またはこれに相補的なヌクレオチド配列、もしくはその
    変異体または断片から成る、細菌に特異なヌクレオチド
    配列にハイブリダイズすることのできるプライマー。
  9. 【請求項9】 下記配列 5'-AGGAGGTGATCCAACCGCA-3', 5'-AACTGGAGGAAGGTGGGGAT-3', これに相補的なヌクレオチド配列、およびその変異体お
    よび断片より成る群から選択されるヌクレオチド配列を
    含む請求項8記載のプライマー。
  10. 【請求項10】 下記段階: (a)標的領域がある場合はこれを検知可能な水準まで
    増幅すること; (b)増幅された標的領域がある場合はこれをハイブリ
    ッド2本鎖の特異性を許容する条件下で請求項1〜7の
    何れか1項記載のプローブとともにインキュベートする
    こと;および (c) 増幅された標的領域がある場合はそれとプローブ
    との間に形成されたハイブリッドを検知すること、 を包含する、選択された標的領域を有する細菌ポリヌク
    レオチドを含有する可能性のある試料中の細菌ポリヌク
    レオチドの存在を判定する方法。
  11. 【請求項11】 標的領域をポリメラーゼ・チェイン・リ
    アクション (PCR) により増幅する請求項10記載の方
    法。
  12. 【請求項12】 請求項8または9のプライマー対を使用
    して標的領域を増幅する請求項10または11記載の方法。
  13. 【請求項13】 細菌のポリヌクレオチド配列の標的領域
    を増幅することのできるプライマーを収容した第1の容
    器、および請求項1〜7の何れか1項記載のプローブの
    1つ以上を収容した第2の容器から成る細菌検知のため
    のPCRキット。
  14. 【請求項14】 第1の容器が請求項8または9記載のプ
    ライマー対を含む請求項13記載のPCRキット。
JP25818291A 1990-10-05 1991-10-04 細菌を同定する方法および試薬 Expired - Lifetime JP3415167B2 (ja)

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