JPH0689668B2 - ２サイクルエンジンの排気装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、２サイクルエンジンの排気装置に関する。

〔従来の技術〕

２サイクルエンジンでは、掃気効率を高めるため、掃気
口が閉じてから排気口が閉じられるまでの間に、この排
気口の周辺に正圧の圧力波を作用させ、排気口から吹き
抜けた新気を燃焼室に押し戻すことが行なわれている。

ところで、この圧力波が排気口に戻るタイミングは、排
気管の管長や口径に大きく影響され、従来、この排気管
の形状寸法は、エンジンの最高出力が得られる回転領域
に合わせて決められることが多い。

〔発明が解決しようとする問題点〕

ところが、このようにすると、排気の圧力波をガス交換
に有効に利用できる回転領域が狭くなり、その他の回転
領域においては、排気口が閉じられる以前に、この排気
口の周辺に負圧の圧力波が到達して、燃焼室に充填され
た新気が排気管内に吸い出されてしまうことがあった。

このため、燃焼室内のガス交換に難があり、エンジン出
力に悪影響を及ぼす不具合がある。

〔問題点を解決するための手段〕

そこで、本発明においては、排気口に連なる排気管の下
流端部に、排気下流側に進むに従って口径が逐次増大す
るテーパ状の内管を収容し、この排気管の下流端に、内
管の内部空間と外方とを連通させる開口を設けるととも
に、これら内管と排気管との間には、排気下流端が閉塞
された共鳴室を形成したことを特徴とする。

〔作用〕

この構成によれば、排気口が開かれると、排気の圧力波
は正圧となって排気管内を伝播し、内管の内部空間およ
び共鳴室に至る。この場合、内部空間の下流端は開口さ
れているから、上記正圧波は開口端で逆反射し、負圧波
となって排気口に戻ってくる。これに対し、共鳴室の下
流端は閉塞されているから、上記正圧波は正反射をして
排気口に戻ってくることになり、排気管内には正圧およ
び負圧の二種類の反射波が存在することになる。

したがって、内管の入口部分で正圧波と負圧波の周期が
丁度重なり合うエンジン回転数のときには、これら正圧
波と負圧波とが互いに共振して打消し合い、負圧波が減
衰されるから、この共振が生じるエンジン回転数を、こ
れまで排気口が閉じられる以前にこの排気口に負圧が作
用する回転領域と一致するように、内管の形状や寸法を
決定すれば、排気口に対する負圧の悪影響を少なく抑え
ることができる。

また、内管は排気下流側に進むに従ってテーパ状に拡径
されているから、高速回転領域では、この内管によるカ
デナシ効果（吸引作用）が促進され、排気口周辺への負
圧波の到達が早められ、かつ、この負圧波の勢力も大き
くなる。この結果、高速回転領域では、排気口および掃
気口が共に開いている掃気期間中に、上記負圧波が排気
口に到達することになり、掃気を促進させる。

〔発明の実施例〕

以下本発明の第１実施例を、第１図および第２図にもと
づいて説明する。

第１図中符号１は２サイクルエンジンであり、そのシリ
ンダ２の内面には、ピストン３によって開閉される吸気
口４、排気口５および掃気口６が開口されている。

なお、掃気口６は図示しない掃気通路を介してクランク
室に通じている。

ところで、上記シリンダ２の排気口５には、排気管７が
接続されている。この排気管７は排気下流側に進むに従
って通路断面積が逐次拡大するテーパ管部８と、このテ
ーパ管部８に連続して略ストレートに延びる直管部９と
からなり、この直管部９の下流端を閉塞する端板10に
は、外方に開口するテールパイプ11が取付けられてい
る。

排気管７の下流端である直管部９内には、排気下流側に
進むに従って口径が逐次拡大するテーパ状の内管12が収
容されている。内管12の上流端は、直管部９よりも小径
をなして排気管７内に開口されており、この内管12の下
流端外周部は直管部９の内周面に対し全周に亘って溶接
されている。このため、内管12の内側にはテールパイプ
11を介して外方に開口する内部空間13が形成されている
とともに、これら内管12の外面と直管部９の内面との間
には、排気上流端が排気管７の内部に連なり、かつ、排
気下流端が閉塞された共鳴室14が形成されている。

なお、本実施例の排気管７の形状寸法は、排気口５に正
圧波が戻るタイミングを、第２図中R₃からR₄までの高速
回転領域で同調させた高速型となっている。

このような構成において、ピストン３の下降により排気
口５が開かれると、排気の圧力波は正圧となって排気管
７内を伝播し、内管12の内部空間13と外側の共鳴室14に
達する。

この場合、内部空間13の下流端はテールパイプ11を通じ
て開口されているから、上記正圧波はテールパイプ11の
開口端で逆反射し、負圧波となって排気口５に戻ってく
る。これに対し、共鳴室14の下流端は閉塞されているか
ら、上記正圧波は正反射をして排気口５に戻ってくるこ
とになり、排気管７内には正圧および負圧の二種類の反
射波が存在することになる。

したがって、内管12の入口部分で正圧波と負圧波の周期
が丁度重なり合うエンジン回転数のときには、これら正
圧波と負圧波とが互いに共振して打消し合い、負圧波が
減衰されるから、この共振現象が生じるエンジン回転数
を、従来、排気口５が閉じるまでの期間中に負圧波が引
返してくる低中速回転領域（第２図中回転数R₁からR₃で
示す）と一致するように、内管12の形状や寸法を決定す
れば、排気口５に対する負圧の悪影響を少なく抑えるこ
とができる。

よって、燃焼室から新気の吸い出しを未然に防止するこ
とができ、掃気効率が向上して、第２図中実線で示すよ
うに、従来に比べて低中速回転領域での出力が向上す
る。

また、上記内管12は排気下流側に進むに従ってテーパ状
に拡径されているから、エンジン回転数がR₃を上回った
高速回転領域では、内管12によるカデナシ効果（吸引作
用）が促進され、排気口５への負圧波の到達が早められ
る。このことから、高速回転領域では、排気口５および
掃気口６が共に開口されている掃気期間中に排気口５が
負圧となり、燃焼ガスの吸い出しおよび新気の充填を助
けるから、共鳴室14を設けたことによる悪影響は何等生
じることはなく、これまでと同様に高出力が得られる。

なお、本発明は上述した第１実施例に制約されるもので
はなく、例えば第３図に示す本発明の第２実施例のよう
に、表面積の大きな内管12の下流端部に、共鳴室14と内
部空間13とを連通させる多数の小孔21…を開設しても良
い。

この構成によると、排気流量の少ない低速回転領域で
は、小孔21…での損失も少なく、共鳴室14の下流端が開
口されているのと何等変りがないため、内管12が存在し
ないのと等しい状態となり、正圧波の発生が抑えられ
る。

一方、排気流量が増大する中高速回転領域では、小孔21
…の等価径が小さくなって、排気が通過する際の抵抗が
増大するから、これら小孔21…は実質的に閉じられた状
態となり、見掛け上、エンジンの回転速度に応じて共鳴
室14の容積が変化することになる。

したがって、負圧波を共振減衰させる同調回転数の範囲
をより広げることができ、全回転領域に亘って出力が向
上する。

〔発明の効果〕

以上詳述した本発明によれば、掃気口が閉じてから排気
口が閉じられるまでの期間中に、この排気口の周辺に負
圧が作用するような回転領域において、排気口に作用す
る負圧を減衰させることができ、このため、燃焼室から
の新気の吸い出しを防止でき、エンジン出力が向上す
る。

また、高速回転領域では、内管のカデナシ効果により掃
気期間中に負圧波が排気口に到達し、掃気を助けるか
ら、共鳴室が高速回転領域に及ぼす影響は少なく、これ
までと同様に高出力が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第２図は本発明の第１実施例を示し、第１
図は断面図、第２図は特性図、第３図は本発明の第２実
施例を示す断面図である。 ５……排気口、７……排気管、11……開口（テールパイ
プ）、12……内管、13……内部空間、14……共鳴室。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】排気口に連なる排気管の下流端部に、排気
   下流側に進むに従って口径が逐次増大するテーパ状の内
   管を収容し、この排気管の下流端に、内管の内部空間と
   外方とを連通させる開口を設けるとともに、これら内管
   と排気管との間には、排気下流端が閉塞された共鳴室を
   形成したことを特徴とする２サイクルエンジンの排気装
   置。
2. 【請求項２】上記内管の周面に、その内部空間と共鳴室
   とを連通させる多数の小孔を開設したことを特徴とする
   特許請求の範囲第（１）項記載の２サイクルエンジンの
   排気装置。