JPH0687108A - 木材組織の透過性改善法 - Google Patents

木材組織の透過性改善法

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JPH0687108A
JPH0687108A JP26315591A JP26315591A JPH0687108A JP H0687108 A JPH0687108 A JP H0687108A JP 26315591 A JP26315591 A JP 26315591A JP 26315591 A JP26315591 A JP 26315591A JP H0687108 A JPH0687108 A JP H0687108A
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靖 金川
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 木材組織の透過性を改善して化学処理性や乾
燥性を向上させるために行われる水蒸気爆砕法と呼ばれ
る方法に関するもので、蒸煮条件を厳しくすると木材表
面に割れやへこみが生じ、蒸煮条件を緩くすると肝心の
心材部に透過性が付与されないという問題を解決する。 【構成】 木材2を収納した加圧容器3に加圧水蒸気を
注入して所定時間蒸煮したあと加圧容器3内を急速に大
気開放することにより、閉鎖された壁孔を開口させる木
材2の水蒸気爆砕法において、一回当たりの蒸煮条件を
緩くして複数回蒸煮処理と大気開放とを繰り返すと共
に、繰り返しにかかる大気開放と蒸煮処理との間に放置
時間を設けた。蒸煮条件の緩い蒸煮処理と大気開放とを
複数回施すことにより、壁孔の開放が順次木材の中心部
へと波及し、心材部の中心まで透過性を付与することが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、木材組織の透過性を改
善して化学処理性あるいは乾燥性を向上させるために行
われる水蒸気爆砕法と呼ばれる方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、木材に各種の薬剤や樹脂を浸透さ
せて、木材の有効利用や用途範囲を拡大することが行わ
れている。木材に薬剤や樹脂を浸透させるには、木材組
織が透過性を有していることが必要であるが、針葉樹で
は、樹心に近い心材部では細胞の壁孔が閉鎖され、透過
性を失っている。
【0003】そこで閉鎖された壁孔を破壊して透過性を
改善する手段として、水蒸気爆砕法が利用される。水蒸
気爆砕法は、木材を加圧容器に収納し、これに加圧水蒸
気を注入して蒸煮したあと、加圧容器内を急激に大気開
放するという操作によって行われる。すなわち、木材組
織に加圧水蒸気を作用させて木材細胞に高い内圧を生じ
させ、容器を急激に開放することにより外圧を大気圧ま
で低下させ、その圧力差で壁孔を閉鎖している物質を破
壊して、木材組織に透過性を付与するものである。
【0004】木材は、樹心に近い心材部と樹皮に近い辺
材部とで組織が異なっており、辺材部は壁孔が開放され
て透過性を有しているが、心材部は、前述したように、
その心材化の過程で壁孔が閉鎖されて透過性を失ってい
る。木材の化学処理性あるいは乾燥性を向上させるため
には、木材全体が透過性を備えておらなければならず、
従って心材部に透過性を付与することが重要になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】水蒸気爆砕法で心材部
の中心まで透過性を付与するには、心材部の木材細胞に
内圧を発生させる必要があるから、蒸煮条件を厳しくす
る必要がある。一方、蒸煮条件を厳しくすると、比較的
軟化点の低いヘミセルロースや細胞壁の中間層にあるリ
グニンが溶出し、木材表面に割れやへこみが生じて品質
が低下する。
【0006】そこで木材の品位が低下しない蒸煮条件を
見い出し、その条件下で水蒸気爆砕法を施して透過性を
付与していた。しかし、木材といってもその材質、心材
化の進度、処理時の寸法等が様々であり、木材の品位を
落とさずに心材部の中心まで透過性を付与することは困
難であった。
【0007】本発明は、上記問題を解決することを課題
としており、木材の品位を低下させることなく木材全体
に透過性を付与することができる水蒸気爆砕法を提供す
ることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明方法は、木材2を
収納した加圧容器3に加圧水蒸気を注入し、所定時間蒸
煮したあと加圧容器内を急速に大気開放することによ
り、木材2の閉鎖された壁孔を開口させる水蒸気爆砕法
において、一回当たりの蒸煮条件を緩くして複数回蒸煮
処理と大気開放とを繰り返すと共に、繰り返しにかかる
大気開放と蒸煮処理との間に放置時間を設けたことを特
徴とするものである。
【0009】
【作用】本発明による水蒸気爆砕法では、一回当たりの
蒸煮条件が緩く、かつ各蒸煮処理の間に常圧下での放置
時間があるので、ヘミセルロースやリグニンの溶出が防
止され、木材の強度が低下せず、表面に割れやへこみが
発生しない。更に、蒸煮条件の緩い蒸煮処理と大気開放
とを複数回施すことにより、壁孔の開放が順次木材の中
心部へと波及し、心材部の中心まで透過性を付与するこ
とができる。
【0010】
【実施例】図2は本発明の実施に使用する装置の断面図
である。装置は、台車1に載置された木材2を密閉状態
で収納する加圧容器3と該加圧容器に加圧水蒸気を供給
する水蒸気発生装置4とを備えている。加圧容器3は、
大径の排気管5を備えており、この排気管5には、大気
圧開放弁6が設けられている。
【0011】水蒸気発生装置4にはその水蒸気圧を制御
する自動制御器7が設けられており、水蒸気発生装置4
は、バルブを備えた配管9を介して、一定圧力の水蒸気
を加圧容器3に供給する。加圧容器3内で凝縮した水蒸
気は、ドレン口10を通って排出される。ドレン口10
は、通常はバルブ11で閉鎖されている。台車1は加圧
容器3から引き出されたレール12によって出し入れ可
能である。
【0012】図1は本発明の処理工程を示したブロック
図である。まず台車1に木材2を搭載して圧力容器3に
収納し、扉13を閉めて加圧容器3を密閉する。次にバ
ルブ8を開いて水蒸気発生装置4から加圧蒸気を圧力容
器3内に注入し、木材2を蒸煮する。所定の蒸煮時間が
経過したら、大気圧開放弁6を開いて加圧容器3内の水
蒸気を一気に放出し、容器内の圧力を大気圧に戻す。こ
の状態で一定時間放置して木材を冷却する。放置時間が
経過したら、大気圧開放弁6を閉鎖して加圧容器3を密
閉し、加圧水蒸気を供給して再び蒸煮し、所定の蒸煮時
間が経過したら容器3内を一気に大気圧に戻して再度一
定時間放置する。このような処理を木材の種類や材質等
に合わせて必要な回数だけ行う。
【0013】以下に示す本発明方法の効果の確認試験で
は、供試木材の辺材部が透過性を有していることからこ
れを除外し、心材部についてのみ試験データを収集し
た。供試材としては、すぎの生の黒色心材を用い、繊維
方向40cm、放射方向5cm、接線方向5cmの大きさと
し、春材を使用した。
【0014】始めに供試材の蒸煮条件を決定するため、
処理時間と圧力とを変化させて最適条件を選定した。な
お、蒸煮処理による透過性は、染着水の自然浸透による
毛管上昇高さで評価し、心材の細胞壁や細胞間層の損傷
は、木口面の走査型電子顕微鏡による観察により評価
し、表面の品位は目視による割れやへこみの有無とその
程度で評価した。
【0015】従来の処理条件やリグニン、ヘミセルロー
スの軟化温度等を考慮して、一回の蒸煮時間を15分と
し、水蒸気圧を2、4、6Kgf/cm2 に変化させた試験を
行った。また水蒸気圧を6Kgf/cm2 一定とし、蒸煮時間
を15、60、120分と変化させた試験を行った。そ
の結果は図3ないし図6に示されており、図3から圧力
の上昇に伴って透過性が上昇していることがわかり、図
4から蒸煮時間の増加にしたがって透過性が全体的に緩
やかに上昇していることがわかる。これにより、処理時
間を余り長くする必要がないことがわかる。
【0016】図5及び図6は、水蒸気圧を6Kgf/cm2
し、蒸煮時間を60分として蒸煮処理した心材の柾目面
及び板目面の電子顕微鏡写真の模式図である。図5及び
図6によれば、亀裂が壁孔から細胞壁にまで達してお
り、細胞壁間が剥離している。また、目視観察によれ
ば、木口面から表面にかけて割れが発生しており、表面
にへこみが発生していた。
【0017】以上の試験結果から、蒸煮条件を6Kgf/cm
2 で15分処理したあと15分間放置するという処理を
3回繰り返す試験を行った。その試験結果は、図7ない
し図9に示されている。処理回数に伴ってどの程度の深
度まで透過性が改善されているかを知るために、木口面
から20cmの所で切断した部分(中央部という)の透過
性も測定した。
【0018】図9より、未処理のものは毛管上昇高さが
2mmであるのに対し、1回処理したものは、木口部で1
0mm、中央部で4mmである。3回処理したものは、木口
部で11mm、中央部で8mmである。第1回目の処理では
木口面と比べて中央部の透過性の増加量は低いが、第2
回目以後では木口面の透過性の増加量が低くなるのに対
して中央部の透過性の増加量は変化せず、従って、処理
回数を増やすことにより木口面と中央部の透過性を同一
にすることができる。
【0019】図8及び図9は、木口面の柾目面の壁孔付
近の電子顕微鏡写真の模式図であり、図8は1回処理し
たものであり、図9は3回処理したものである。1回処
理したものでは、壁孔が若干開放されており、3回処理
したものでは、壁孔が完全に開放されている。また、3
回処理したものでも細胞壁の損傷や細胞壁間の剥離は殆
ど認められない。このように、緩い条件の蒸煮処理を繰
り返すことにより、強度の低下を招くことなく心材全体
に透過性を付与することができる。
【0020】
【発明の効果】以上のように、本発明方法は、緩い蒸煮
条件で壁孔を開口させるものであるから、木材組織を損
傷することなく木材全体に透過性を付与することがで
き、木材の品質を低下させることなく化学処理性や乾燥
性を向上し、木材の有効利用や用途範囲を拡大すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工程図
【図2】本発明の実施に使用する装置の断面図
【図3】圧力変化に伴う透過性の変化を示すグラフ
【図4】蒸煮時間の変化に伴う透過性の変化を示すグラ
【図5】6Kgf/cm2 ×60分の蒸煮処理後の柾目面の模
式図
【図6】6Kgf/cm2 ×60分の蒸煮処理後の板目面の模
式図
【図7】処理回数に伴う透過性の変化を示すグラフ
【図8】1回処理後の柾目面の模式図
【図9】3回処理後の柾目面の模式図
【符号の説明】
2 木材 3 加圧容器
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年9月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正内容】
【図8】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正内容】
【図9】

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 木材(2) を収納した加圧容器(3) に加圧
    水蒸気を注入し、所定時間蒸煮したあと加圧容器内を急
    速に大気開放することにより、木材細胞の閉鎖された壁
    孔を開口させる木材組織の透過性改善法において、一回
    当たりの蒸煮条件を緩くした複数回の蒸煮処理と大気開
    放とを繰り返すと共に、繰り返しにかかる大気開放と蒸
    煮処理との間に放置時間を設けたことを特徴とする、木
    材組織の透過性改善法。
JP26315591A 1991-09-13 1991-09-13 木材組織の透過性改善法 Expired - Lifetime JP2835793B2 (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1996011780A1 (fr) * 1994-10-12 1996-04-25 Chuou Mokuzai Kaihatsu Kabushiki Kaisha Bois d'×uvre a membranes de faveoles detruites

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1996011780A1 (fr) * 1994-10-12 1996-04-25 Chuou Mokuzai Kaihatsu Kabushiki Kaisha Bois d'×uvre a membranes de faveoles detruites

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