JPH0684142U - ごみ焼却炉における火格子段落部の耐火壁構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】焼却炉内の異常温度上昇により溶融する焼却
灰、低融点金属及びガラス等が火格子段落部に溶融固着
するのを防ぐ事により、火格子上のごみの移送を順調な
らしめ火格子面積を有効活用するとともに、火格子段落
部に付着したクリンカを容易に離脱させる事により、連
続操業を可能とし、除去作業を不要とし、耐火材の損耗
を防止できる火格子段落部の耐火壁構造を提供する。 【構成】複数の火格子が設置され、これら火格子間に落
差を有するごみ焼却炉において、前記火格子間の落差を
構成する火格子段落部１には、冷却手段Ａが設置される
とともに、該冷却手段Ａの前面に不定形耐火物からなり
炉内に面する耐火壁部Ｂが設けられてなる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、一般廃棄物や産業廃棄物などのごみを焼却するごみ焼却炉の火格子 段落部の耐火壁構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

図３は、複数の火格子間に落差を有するごみ焼却炉の概略構成および燃焼状態 を示す断面図であり、図４は従来方式の火格子段落部の概略構造を示す断面図で ある。

【０００３】 図３において、ホッパａに投入されたごみｒは、乾燥火格子ｂ上で乾燥され、 燃え易い部分に着火した後、乾燥火格子段落部ｃにより落差を設けられた燃焼火 格子ｄに落下する。

【０００４】 燃焼火格子ｄ上に落下したごみｒは、火格子下方から送入される燃焼空気ｅと 、焼却炉本体ｆ内の燃焼火焔から発する放射熱により盛んに燃焼しながら移送さ れ、燃焼火格子段落部ｇにより落差を設けられた後燃焼火格子ｈに落下する。

【０００５】 後燃焼火格子ｈ上でも、上述と同様の過程を経ながら燃焼し、ごみｒは焼却灰 ｊとなり、後燃焼火格子段落部ｋにより落差を設けられた燃焼完結装置ｍに堆積 される。

【０００６】 燃焼完結装置ｍでは、焼却灰ｊは、その中に残存する未燃分を完全燃焼させた 後、図示しない灰冷却装置に落下して、外部に搬出される。

【０００７】 上述の燃焼過程で発生する未燃ガスを含む燃焼ガスｎは、焼却炉本体ｆ内で燃 焼火焔から発する放射熱と２次空気ｐの供給により２次燃焼して高温の排ガスｑ となり、図示しないガス冷却設備以降の排ガス処理設備等で無害化されて大気中 に放出される。

【０００８】 前記燃焼火格子段落部ｇは、図４に示すように、粘土質か炭化珪素質の耐火レ ンガ或いは不定形耐火物で成る表層ｇ１と、背面の断熱レンガｇ２とで構成する とともに、断熱レンガｇ２の背面は高温の燃焼空気ｅの流れに接している構造が 一般的である。

【０００９】 そして、ごみ焼却炉においては、ごみを完全焼却させて公害をなくすとともに 、炉壁及び支持材等から成る炉材を損傷させないために、焼却炉内温度を８００ 〜９００℃に収めるように制御されている。

【００１０】

【考案が解決しようとする課題】

然しながら、ごみ中にはプラスチック類や紙のように発熱量が高く燃え易い物 から、野菜や果物などの水分が多く燃え難い物、或いは空缶・瓶や土砂などの不 燃物が混在しているために、部分的に燃焼状態が異なり、炉内温度を完全に均等 にするのは不可能であり、局部的な異常高温状態の発生は避けられない。

【００１１】 この異常高温状態になり易い場所は、燃焼の最盛部であり火焔の放射熱を最も 受け易い、図３における燃焼火格子ｄの後半から後燃焼火格子ｈの前半にかけて であり、次いで、乾燥火格子段落部ｃである。

【００１２】 これらの場所の焼却炉本体ｆの壁面には、付着した飛灰が異常高温によって溶 融固着してクリンカとなり、各火格子段落部ｃ，ｇ，ｋには、移送されているご みｒ中の亜鉛・アルミ等の低融点金属やガラスが溶融して灰と混合した状態でク リンカ状となり段落部表層ｇ１に固着する。

【００１３】 このクリンカが次第に成長して山状に突出し、各火格子上を移送されるごみｒ の動きを阻害するだけでなく、火格子上に覆いかぶさって火格子の有効面積を狭 めることになる。

【００１４】 そのため、クリンカが或程度以上成長すると、焼却作業を停止して溶融固着し たクリンカを除去する必要が生じ、その結果、焼却炉の連続操業に支障をきたす とともに、従業員には不潔で過重な労働を強いる結果となっていた。

【００１５】 さらに、焼却炉本体ｆの壁面のクリンカは比較的除去し易いのに対し、火格子 段落部のクリンカは金属との混合溶融物であるために、溶融物が表層ｇ１の耐火 物の気孔内に浸入して表層ｇ１と一体化する結果、簡単には除去できず、削岩機 等で破壊せざるを得ない。また、クリンカ組織が強固であるために、除去作業時 に段落部の表層ｇ１の表面をえぐり取ることになり、遂には段落部を崩壊に至ら しめるという問題があった。

【００１６】

【課題を解決するための手段】

本考案に係るごみ焼却炉における火格子段落部の耐火壁構造は、複数の火格子 が設置され、これら火格子間に落差を有するごみ焼却炉において、前記火格子間 の落差を構成する段落部には、冷却手段が設置されるとともに、該冷却手段の前 面に不定形耐火物からなり炉内に面する耐火壁部が設けられたものである。

【００１７】

【作用】

冷却手段により、該冷却手段の前面に構築された不定形耐火物による耐火壁部 を、背面側から冷却することにより、高温で溶融する焼却灰、低融点金属および ガラス等が火格子段落部に溶融固着することを防止する。

【００１８】

【実施例】

以下、本考案の一実施例を図面を参照して説明する。

【００１９】 図１は本考案に係る火格子段落部の概略構造を示す断面図であり、図２は火格 子段落部の耐火壁部を冷却する冷却手段の概略構造図である。

【００２０】 図１及び図２において、１は、ごみ焼却炉内に形成される複数の火格子段落部 の代表として示した燃焼火格子段落部である。この燃焼火格子段落部１は、燃焼 火格子２と後燃焼火格子３との間に介在して、燃焼火格子２上での燃焼により生 成したごみの塊及び燃え残った難燃物等を後燃焼火格子３上に落下させることに より崩壊させ、通気性を良くするとともに、火種を巻き込んで燃焼を促進させる 目的の構造物である。

【００２１】 燃焼火格子段落部１は、ごみ焼却炉の左右の壁体４，４間に配設された冷却手 段Ａと、該冷却手段Ａの前面に設けられゴミ焼却炉内に面する耐火壁部Ｂとから 構成されている。

【００２２】 前記冷却手段Ａは、左右に分けて設けられた２つの空冷ボックス１１と、これ ら空冷ボックス１１に連通された空気入口ノズル１２及び空気出口ノズル１３と を備えている。

【００２３】 前記空冷ボックス１１は、下面が後燃焼火格子梁５上に設置されるとともに、 焼却炉壁４側の端部が該焼却炉壁４に保持されている。

【００２４】 また、空冷ボックス１１は、中央部が仕切板１１ａにより上下に仕切られ、空 気入口ノズル１２及び空気出口ノズル１３と反対側に形成された通気孔１１ｂで 上下が連通されている。

【００２５】 そして、空冷ボックス１１の下部には、前記空気入口ノズル１２が焼却炉壁４ を貫通して取付けられるとともに、空冷ボックス１１の上部には、前記空気出口 ノズル１３が同じく焼却炉壁４を貫通して取付けられている。

【００２６】 前記空気入口ノズル１２及び前記空気出口ノズル１３には、図示しない冷却空 気送風機、調整弁等からなる冷風供給手段が連設されている。

【００２７】 前記耐火壁部Ｂは、前記冷却手段Ａの前面及び上面に配設された主壁体１４と 、該主壁体１４の上部に設けられた投下ブロック１５、主壁体１４の下部に設け られ燃焼火格子段落部１と後燃焼火格子３との間の接合部である遮蔽板１６と、 この遮蔽板１６の表面を保護する保護材１７とで構成されている。

【００２８】 前記主壁体１４は、前記空冷ボックス１１に溶接された複数のキャスタフック １８により前記空冷ボックス１１に固設されている。

【００２９】 この主壁体１４は、表１に示すように、熱伝導率が高く気孔率が低い炭化珪素 質キャスタブルの如き不定形耐火物で構成されている。

【００３０】

【表１】

【００３１】 前記投下ブロック１５は、燃焼火格子２と燃焼火格子段落部１とを接合するも ので、幅方向に複数個配設されている。この投下ブロック１５も前記主壁体１４ と同様に不定形耐火物で構成されている。

【００３２】 また、前記保護材１７は、前記主壁体１４の下方に間隙１４１を挟んで配置さ れており、前記主壁体１４及び投下ブロック１５と同様に不定形耐火物で構成さ れている。

【００３３】 そして、前記主壁体１４及び前記保護材１７は、前記左右の空冷ボックス１１ と同様に、中央部で左右に２分割された状態で配設されている。

【００３４】 さらに、前記冷却手段Ａの背面には断熱材１９が配設されている。断熱材１９ は、断熱レンガ等からなり、主壁体１４から燃焼火格子２の下部構造材６への伝 熱を防いでいる。

【００３５】 次に、上述のように構成された火格子段落部の耐火壁部Ｂ周辺でのごみの燃焼 状態及び冷却手段Ａの働きについて説明する。

【００３６】 図１及び図２において、燃焼火格子２上で燃え易い部分のみ燃焼したごみは、 燃焼によって生成されたごみの塊及び燃え残った難燃物と共に投下ブロック１５ 部で反転しながら後燃焼火格子３上に落下し、塊を崩壊させて通気性を向上させ るとともに、火種を巻き込み、後燃焼火格子３の下方からの燃焼空気７の供給に より、燃焼火格子段落部１の前面で盛大に燃焼する。

【００３７】 このために、主壁体１４は高熱を受けるが、この主壁体１４は上述した如く熱 伝導率が高いために図示しない冷却空気送風機から空気配管及び調節弁を経由し て空気入口ノズル１２、通気孔１１ｂ、空気出口ノズル１３へと冷風を送ること でこの空冷ボックス１１が冷却され、この作用て昇温した主壁体１４が降温する 。

【００３８】 したがって、ごみと共に移送されてくる亜鉛・アルミ等の低融点金属やガラス 等の溶融物は、主壁体１４の表面に付着することなく冷却固化されて粒状となり 、後燃焼火格子３上を移送されることになる。

【００３９】 また、同じく上述した如く、主壁体１４は緻密な構造であるために、気孔率が 非常に低く、万一異常高温により溶融した物質が主壁体１４の表面に付着しても 、内部に浸入して耐火物と一体化することを阻止し、緩やかな付着状態に止める ことができるほか、炭化珪素質耐火レンガの場合に起こるごみ中の水分の内部浸 入による酸化膨出事故を未然に防止できる。

【００４０】 さらに、主壁体１４と、この主壁体１４に間隙１４１を介して設けられた保護 材１７とがそれぞれ左右２分割されているため、図示しない調節弁の調整により 空冷ボックス１１の温度を変化させれば、左右の主壁体１４及び保護材１７はそ れぞれ別個の膨張・収縮動作を行うため、緩やかに付着している溶融物同士の相 互圧縮により簡単に剥離させることができる。

【００４１】 本例では、燃焼火格子段落部の構造及び動作で説明したが、乾燥火格子段落及 び後燃焼段落部に適用できることはいうまでもない。

【００４２】 また、空冷ボックス１１、主壁体１４、及び保護材１７の分割数は、本例に限 らず、分割しなくても良いし、２以上の複数に分割してもよい。

【００４３】

【考案の効果】

以上述べたように、本考案によれば、熱伝導率の高い不定形耐火物からなる耐 火壁部がその背面から冷却手段により冷却されているため、該耐火壁部の表層部 にクリンカが溶融固着するのを防止でき、従来方式のように表層部にクリンカが 溶融固着して火格子上のごみ移送を妨げたり、火格子面に覆いかぶさって火格子 の有効面積を狭めることがない。

【００４４】 また、耐火壁部を構成する不定形耐火物は非常に緻密で内部に溶融物や水分が 浸入しにくい構造であるために、上記冷却手段による冷却効果と相まって、クリ ンカの付着状態が緩やかになり、付着したクリンカの除去が容易に行えるだけで なく、水分の内部浸入による耐火レンガの酸化膨出事故を防止できる。その結果 、従来方式のように、焼却炉の連続操業を阻害したり、従業員に過酷な除去作業 を強いる事がないばかりでなく、クリンカ除去時の段落部耐火材の表層剥離がな くなり、連続操業の継続可能と相まって、築炉部の寿命を延ばすことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る火格子段落部の概略構成の一例を
示す断面図である。

【図２】本考案に係る冷却手段の概略構成の一例を示す
正面視図である。

【図３】複数の火格子間に落差を有するごみ焼却炉の一
例を示す概略構成を示す断面図である。

【図４】従来方式の火格子段落部の概略構成を示す断面
図である。

【符号の説明】

１ 燃焼火格子段落部 １１ 空冷ボックス １２ 空気入口ノズル １３ 空気出口ノズル １４ 主壁体 ２ 燃焼火格子 ３ 後燃焼火格子 Ａ 冷却手段 Ｂ 耐火壁部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の火格子が設置され、これら火格子
   間に落差を有するごみ焼却炉において、 前記火格子間の落差を構成する段落部には、冷却手段が
   設置されるとともに、該冷却手段の前面に不定形耐火物
   からなり炉内に面する耐火壁部が設けられたことを特徴
   とするごみ焼却炉における火格子段落部の耐火壁構造。