JPH068359Y2 - 農用トラクタにおける伝動装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （イ）産業上の利用分野 本考案は農用トラクタにおける伝動装置に関する。

（ロ）従来技術 従来、農用トラクタにおける伝動装置としてミッション
ケース内のデフ装置を前後進変速装置と走行変速装置と
を介して駆動するものは既に知られている。

（ハ）考案が解決しようとする問題点 前記既知の農用トラクタにおける伝動装置は前後進変速
装置と走行変速装置とがそれぞれ独立しており、そのた
め前進駆動ギヤと後進方向回転をデフピニオン軸のギヤ
に伝達するカウンターギヤとを同一の変速軸に取付けて
いたので、トランスミッションケースがギヤ一個分前後
に長くなり、ホイルベースを一定に構成すると運転部ス
テップ面がそのぶんだけ狭くなると共にギヤ数が多くな
ってコスト高になった。

（ニ）問題点を解決するための手段 本考案はミッションケース内にデフピニオン軸と変速軸
を併設し、該変速軸に前進駆動ギヤとバックギヤとを回
転自在に支承し、それらのギヤの間に回転は伝えるが軸
芯方向には移動する切換クラッチを前進駆動ギヤ又はバ
ックギヤに係脱するように介装した農用トラクタにおい
て、前記前進駆動ギヤに、バックギヤによりカウンター
ギヤを介して駆動されるギヤを噛合させ、前記デフピニ
オン軸に動力を伝達すると共に軸芯方向にシフト可能に
係合した変速ギヤを前記前進駆動ギヤに係脱するように
設けたことにより前記前進駆動ギヤを前進変速系の駆動
ギヤと後進変速系のカウンターギヤに兼用し得るように
して前述の問題点を解決した。

（ホ）作用 エンジンの動力は入力軸によりミッションケースの前伝
動室の下部からデフ機構の下方を経て後伝動室を経て前
動室の副変速機構及び前後進変速機構に伝動され、切換
クラッチを前進駆動ギヤに噛合させ、デフピニオン軸の
変速ギヤを摺動させて変速軸の前進駆動ギヤ又は他の変
速ギヤに噛合させるとデフピニオン軸は適宜変速され
る。

また、切換クラッチをバックギヤに係合させるとバック
駆動ギヤがカウンターギヤを介して逆方向に駆動され、
その際、前記前進駆動ギヤが後進伝動系のカウンターギ
ヤとなり、変速ギヤを前進駆動ギヤに噛合させると後進
伝動を行なうことができる。

（ヘ）実施例 本考案の一実施例を図面について説明すると、１は伝動
軸２を内装していて上面が操縦部のデッキＡとなってい
る伝動ケースであって、その前部に連結したクラッチハ
ウジング３の前部にはエンジンを搭載すると共に操向ハ
ンドル５を設け、後部にはミッションケース６を連結し
てあり、該ミッションケース６のデフ軸７の後部両側に
はそれぞれ後輪８の車軸10、デフ軸７のギヤに噛合する
受動ギヤ11及びブレーキを内装した終減速ケース13を取
付けてある。

また、デフ装置はデフピニオン軸14のピニオン15に噛合
すると共にデフケースと一体回転するギヤ17と差動ギヤ
等からなり、このデフ装置の前後には前伝動室20と後伝
動室21を設け、前伝動室20には前後進変速機構22と、走
行副変速機構23と、前輪25,25を駆動する前輪動力取出
機構26とが内装されており、後伝動室21にはＰＴＯ変速
機構27と走行主変速機構28とが内装されている。

更に、エンジン４の動力はそのフライホイル30に取付け
た主クラッチ31のデスク32、軸33、伝動ケース34内のギ
ヤ35,36、前記伝動軸２及びスプライン継手37を介して
ミッションケース６の入力軸38に伝達される。

そして、前記ＰＴＯ変速機構27は、上記入力軸38の後端
にスプライン嵌合している駆動ギヤ41（後伝動室21の前
壁にベアリング21aで支承されていて入力軸38にスプラ
イン嵌合している）及びミッションケース６の後壁とに
ベアリングを介して支承したＰＴＯ軸40と、該ＰＴＯ軸
40にスプライン固定されたハブ42aの外周にスプライン
嵌合したスリーブ42、、リテーナー43a,ニードルベアリ
ング43bを介して遊嵌したギヤ43，44、ハブにスプライ
ン嵌合したスリーブ45及び遊嵌したギヤ46と、その上部
に支承したカウンター軸52と、前記駆動ギヤ41に噛合し
たギヤ47、それと一体で前記ギヤ43に噛合するギヤ48、
前記ギヤ44に噛合するギヤ50及び前記ギヤ46に噛合する
ギヤ51をそれぞれスプライン嵌合させて構成してある。

また、走行変速軸は副変速軸53と主変速軸55とそれらを
連結したスプライン継手54とで構成されていて後伝動室
21の上部からデフ装置の上部を経て前伝動室20の上部に
亘っており、前記走行主変速機構28は、前記カウンター
軸52の上方に支承した前記主変速軸55と、該主変速軸55
に遊嵌していて前記ギヤ47に噛合するギヤ56、ハブにス
プライン嵌合したスリーブ57、主変速軸55に遊嵌してい
て前記ギヤ48，50に噛合したギヤ58，59、ハブにスプラ
イン嵌合したスリーブ60、主変速軸55に遊嵌していて前
記ギヤ51に噛合するギヤ61とで構成されており、前記Ｐ
ＴＯ変速機構27のカウンター軸52は主変速軸55に動力を
分配する。

前記前伝動室20内の走行副変速機構23は、副変速軸53に
遊嵌された一体なギヤ62，63及び前進駆動ギヤ69と、デ
フピニオン軸14に遊嵌したギヤ64及びスプライン嵌合さ
せた変速ギヤ65，66と、前記入力軸38に遊嵌した減速ギ
ヤ67とで構成されている。

更に、その上方の前記前後進変速機構22は、副変速軸53
に遊嵌したバックギヤ68、前記ギヤ62，63と一体な前進
駆動ギヤ69及び、該前進駆動ギヤ69とバックギヤ68との
間に介装されていてハブにスプライン嵌合させたスリー
ブからなる切換クラッチ70と、カウンタ軸71に遊嵌され
ていてカウンターギヤ72を介して前記バックギヤ68と前
進駆動ギヤ69とに噛合したギヤ73とで構成されている。

前記前輪動力取出機構26は、デフピニオン軸14にスプラ
イン嵌合させたギヤ74と、それに噛合していて入力軸38
に遊嵌された増速ギヤ75と、動力取出軸76にスプライン
嵌合させた断続ギヤ77とで構成されている。

而して、前記操縦席78の左右両側には前部がデッキＡま
で下降したレバーパネル80，80を設けてあり、左側のレ
バーパネル80の前部の上部には走行主変速機構28のスリ
ーブ57，60にリンク機構81，81を介して操作する主変速
レバー82を、中間部には走行副変速機構23の変速ギヤ6
5，66を作動させる副変速レバー83及び切換クラッチ70
を作動させる前後進変速レバー84を、下部には前輪動力
取出機構26の断続ギヤ77をリンク機構85を介して作動さ
せる前輪駆動操作レバー86を設けてあり、右側のレバー
パネル80には、ＰＴＯ変速レバー87を設けてある。

88は伝動軸２を覆うと共に伝動ケース34とミッションケ
ース６を連通させたパイプ、89はその下方に連設した導
油パイプである。

前述のトラクタにおいて、ＰＴＯ軸40はＰＴＯ変速レバ
ー87によりスリーブ42を前方へ摺動させて駆動ギヤ41の
クラッチ歯に噛合させると入力軸38と直結となり、スリ
ーブ42を後方へ摺動させてギヤ43のクラッチ歯に噛合さ
せるとギヤ41，47，48，43により変速され、以下同様に
してスリーブ45を前後摺動してギヤ44又は46に係脱する
ことにより変速され、走行主変速機構28は主変速レバー
82によりリンク機構81，81を介してスリーブ57又は60を
前後摺動させてギヤ56又は58，59又は61に係脱すること
により主変速を行ない、前記前後進変速機構22は前後進
変速レバー84により切換クラッチ70を前方の前進駆動ギ
ヤ69に係合させると前進、バックギヤ68に係合させると
カウンタギヤ72を介してギヤ73が回転し、該ギヤ73は前
記前進駆動ギヤ69をカウンタギヤとして回転させ、この
前進駆動ギヤ69に変速ギヤ66を噛合させるか、又は変速
ギヤ65を前進駆動ギヤ69と一体なギヤ63に噛合させると
デフピニオン軸14は逆回転されると共に変速される。

また、走行副変速機構23は副変速レバー83によりリンク
機構85を介して変速ギヤ65を減速ギヤ67又はギヤ63に係
脱し、変速ギヤ66を前進駆動ギヤ69に係脱することによ
り副変速を行なう。

結局、前記前進駆動ギヤ69は前進変速系の駆動ギヤであ
りながら後進変速系のカウンターギヤを兼ねることとな
る。

更に、前記伝動ケース34には機体前部に設けたステアリ
ングバルブからの戻り油及び側部に設けたリリーフバル
ブの戻り油が流入してギヤ35，36等を潤滑し、溜った作
動油は導油パイプ89を通ってミッションケース６に還流
し、その側部の吸出口90から油圧ポンプにより吸出され
て循環する。

（ト）考案の効果 本考案は前述のようにミッションケース内にデフピニオ
ン軸14と変速軸を併設し、該変速軸に前進駆動ギヤ69と
バックギヤ68とを回転自在に支承し、それらのギヤの間
に回転は伝えるが軸芯方向には移動する切換クラッチ70
を前進駆動ギヤ69又はバックギヤ68に係脱するように介
装した農用トラクタにおいて、前記前進駆動ギヤ69に、
バックギヤ68によりカウンターギヤを介して駆動される
ギヤ73を噛合させ、前記デフピニオン軸14に動力を伝達
すると共に軸芯方向にシフト可能に係合した変速ギヤ66
を前記前進駆動ギヤ69に係脱するように設けたので、前
進駆動ギヤ69を、前進時に前進変速系の駆動にすること
は勿論のこと、後進時には後進変速系のカウンターギヤ
72として作動させることができ、結局、前後進変速系の
ギヤを一枚少なくすることができ、それにより変速軸及
びそれに追従した長さにするデフピニオン軸14等を短く
すると共にそれらの軸を支承するミッションケース６の
前後長さをも短くして機体重量及びコストを低減するこ
とができ、しかも、ミッションケース６が操縦席78の下
方から前方へ突出するのを防止して操縦者が足を載せる
操縦部のデッキＡを広くなし、運転環境を良くすること
ができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示すものであって、第１図は
ミッションケース及びクラッチハウジングの展開縦断面
図、第２図は要部の展開断面図、第３図は操縦部の側面
図である。 ６……ミッションケース、７……デフ軸、14……デフピ
ニオン軸、22……前後進変速機構、23……走行副変速機
構、28……走行主変速機構、40……ＰＴＯ軸、53……副
変速軸、65，66……変速ギヤ、68……バックギヤ、69…
…前進駆動ギヤ、70……切換クラッチ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ミッションケース内にデフピニオン軸14と
   変速軸を併設し、該変速軸に前進駆動ギヤ69とバックギ
   ヤ68とを回転自在に支承し、それらのギヤの間に回転は
   伝えるが軸芯方向には移動する切換クラッチ70を前進駆
   動ギヤ69又はバックギヤ68に係脱するように介装した農
   用トラクタにおいて、前記前進駆動ギヤ69に、バックギ
   ヤ68によりカウンターギヤを介して駆動されるギヤ73を
   噛合させ、前記デフピニオン軸14に動力を伝達すると共
   に軸芯方向にシフト可能に係合した変速ギヤ66を前記前
   進駆動ギヤ69に係脱するように設けたことを特徴とする
   農用トラクタにおける伝動装置。