JPH0680492A

JPH0680492A - ガス発生剤組成物

Info

Publication number: JPH0680492A
Application number: JP23040592A
Authority: JP
Inventors: Kazunori Matsuda; 和典松田; Koji Ochi; 弘二越智
Original assignee: Nippon Oil and Fats Co Ltd
Current assignee: NOF Corp
Priority date: 1992-08-28
Filing date: 1992-08-28
Publication date: 1994-03-22

Abstract

(57)【要約】【目的】燃焼速度を高く維持できるとともに、ガス発
生剤組成物の燃焼により生成するガスが清浄であり、燃
焼残渣の毒性を極めて低く抑えることができ、取扱い上
または使用上安全なガス発生剤組成物を提供する。【構成】ガス発生剤組成物は、水素を含まないビテト
ラゾール化合物のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金
属塩と酸化剤とからなり、前記酸化剤が二酸化マンガン
または過塩素酸カリウムであることを特徴とする。ま
た、水素を含まないビテトラゾール化合物の金属塩と酸
化剤とからなり、前記ビテトラゾール化合物の金属塩が
マンガン塩であり、酸化剤が二酸化マンガンまたは過塩
素酸カリウムであってもよい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、例えばエアバッグを
膨張させるためのガス発生装置（以下、単に「ガス発生
器」という）に利用されるガス発生剤組成物に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】ガス発生剤は、通常ペレット状もしくは
ディスク状に加圧形成され、ステンレスやアルミニウム
等の金属製ガス発生器ケースの中に組み込まれる。この
エアバッグは、例えば、自動車の室内のステアリングホ
イールに装着され、乗員の衝突保護用として用いられ
る。

【０００３】このガス発生剤組成物は自動車用として特
に適しているが、空気を入れて膨らませるゴムボートの
ように、大量のガスを必要とするものに使用することも
できる。さらに、船舶、飛行機のような高速で移動する
乗り物について、衝突または墜落時に乗客を保護するた
め、エアバッグを利用することは当該技術分野において
知られている。その際、エアバッグに装填されるガス発
生剤の形状は、要求性能に応じて粉体、ペレット、ブロ
ック等様々である。

【０００４】このようなガス発生剤として、アジ化ナト
リウムと各種酸化剤とを主成分とするものが知られてい
る。アジ化ナトリウムは毒性の強い物質であり、容易に
加水分解されてアジ化水素を生成する。このアジ化水素
は極めて毒性が高く、かつ爆発し易い物質である。さら
に、アジ化ナトリウム、アジ化水素ともに、銅や鉛のよ
うな重金属と容易に反応して、極めて不安定な爆発性の
固体を形成する。

【０００５】このようなアジド化合物からなるガス発生
剤組成物を安全に取り扱うには、その製造、貯蔵および
最終的廃棄の際にまで特別な取扱いをする事が必要であ
る。その上、アジ化ナトリウムと酸化剤とからなるガス
発生剤組成物は、燃焼にともなって有害なナトリウムや
ナトリウム化合物を生成する。

【０００６】このような観点から、アジ化ナトリウムを
含まないガス発生剤組成物により、前記目的を達成させ
る手段が提案されている。例えば、特公昭５７−２６７
７号公報には、アジ化ナトリウムとアミノテトラゾール
またはアミノテトラゾール水和物と酸化剤との３成分か
らなるガス発生剤組成物が提案されている。酸化剤とし
ては、過塩素酸のアルカリ金属塩または重クロム酸のア
ルカリ金属塩が示されている。

【０００７】また、特公平２−２２５１５９号公報には
水素を含むテトラゾール化合物と、酸素を含む酸化剤か
らなるガス発生組成物が提案されている。酸素を含む酸
化剤としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびア
ンモニウムの硝酸塩または過塩素酸塩が示されている。

【０００８】一方、特公昭６４−６１５６号公報には水
素を含まないビテトラゾールのアルカリ金属、アルカリ
土類金属塩と酸化剤としてアルカリ金属、アルカリ土類
金属の硝酸塩、亜硝酸塩とからなるガス発生剤組成物が
提案されている。

【０００９】また、特公昭６４−６１５７号公報には水
素を含まないビデトラゾールのアルカリ金属、アルカリ
土類金属塩と硫黄、三塩化クロム、二硫化モリブテン、
三弗化鉄からなるガス発生剤組成物も提案されている。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の技術
で使用されているアミノテトラゾールやビテトラゾール
化合物は摩擦や衝撃感度が高く取扱い上非常に危険であ
るとともに、アミノテトラゾールは熱的に不安定なもの
であるため、不適当である。また、分子中に水素が含ま
れているテトラゾール化合物は、燃焼による生成ガス中
に極めて有毒であるシアン化水素やアンモニアガスを生
じるという問題がある。

【００１１】水素を含まないビテトラゾール化合物の金
属塩と酸化剤として硝酸塩、亜硝酸塩、硫黄あるいは二
硫化モリブデン等とからなるガス発生剤組成物は燃焼速
度が遅く、短時間で大量のガスを発生させることは困難
であるという問題がある。

【００１２】この発明はこのような従来技術に着目して
なされたものであって、その目的は燃焼速度を高く維持
できるとともに、ガス発生剤組成物の燃焼により生成す
るガスが清浄であり、燃焼残渣の毒性を極めて低く抑え
ることができ、取扱い上または使用上安全なガス発生剤
組成物を提供することにある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】この発明者らは上記の課
題を解決すべく研究を重ねた結果、水素を含まないビテ
トラゾール化合物の金属塩を用い、特定の酸化剤を用い
たガス発生剤組成物を使用することで上記課題を解決す
ることができることを見出し、この発明を完成するに至
った。

【００１４】すなわち、第１の発明は、水素を含まない
ビテトラゾール化合物のアルカリ金属塩またはアルカリ
土類金属塩と酸化剤とからなるガス発生剤組成物におい
て、酸化剤が二酸化マンガンまたは過塩素酸カリウムで
あることを特徴とする。第２の発明は、水素を含まない
ビテトラゾール化合物の金属塩と酸化剤とからなるガス
発生剤組成物において、ビテトラゾール化合物の金属塩
がマンガン塩であり、酸化剤が二酸化マンガンまたは過
塩素酸カリウムであることを特徴とする。

【００１５】次に、この発明について詳細に説明する。
水素を含まないビテトラゾールとは、ビテトラゾール二
カリウム（K₂C₂N₈）のように分子中に水素が含まれてい
ないものであり、例えば特公昭６４−６１５７号公報に
示されているビテトラゾール化合物があげられる。

【００１６】ビテトラゾール化合物中に水素が含有され
ていると燃焼ガス中に、シアン化水素やアンモニアガス
が生成する。このシアン化水素は極めて毒性が強く、ア
ンモニアガスは極めて刺激臭が強い。エアバックを膨ら
ませるためのガスとして、このようなガスは人体との接
触が考えられるため不適当である。

【００１７】水素を含まないビテトラゾールの金属塩と
しては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、例えばビテ
トラゾール二ナトリウム、ビテトラゾール二カリウム、
ビテトラゾール二リチウム、ビテトラゾールカルシウム
が好ましく、これら二種以上の混合物であってもよい。
また、この発明ではアルカリ金属またはアルカリ土類金
属以外のビテトラゾールマンガンも適当である。

【００１８】この発明で使用する酸化剤は過塩素酸カリ
ウムまたは二酸化マンガンである。過塩素酸カリウムあ
るいは二酸化マンガンを使用することで、高い燃焼速度
を有するガス発生剤組成物を得ることができる。なかで
も、より高い燃焼速度を得るためには、その粒径が過塩
素酸カリウムは２０μm 以下、二酸化マンガンは１０μ
m 以下が特に好ましい。

【００１９】酸素を含まない酸化剤、例えば硫黄、三塩
化クロム、二硫化モリブデン、三弗化鉄の場合、または
酸素を含む酸化剤、例えばアルカリ金属またはアルカリ
土類金属の硝酸塩、亜硝酸塩や酸化鉄、酸化銅のような
金属酸化物の場合、燃焼速度が遅く、短時間のうちに大
量のガスを発生することが困難である。

【００２０】次にこの発明にガス発生剤組成物の反応に
ついて説明する。水素を含まないビテトラゾールの金属
塩の代表としてビテトラゾール二カリウムと過塩素酸ナ
トリウム、または二酸化マンガンとは次のように反応す
る。４Ｋ₂Ｃ₂Ｎ₈＋５ＫＣｌＯ₄→５ＫＣｌ＋１６Ｎ₂＋
４Ｋ₂Ｏ＋８ＣＯ₂ Ｋ₂Ｃ₂Ｎ₈＋５ＭｎＯ₂→４Ｎ₂＋Ｋ₂Ｏ＋２ＣＯ₂
＋５ＭｎＯこの反応式から化学量論比を求めるとビテトラゾール二
カリウム５５重量％、過塩素酸カリウム４５重量％、ま
たはビテトラゾール二カリウム３３重量％、二酸化マン
ガン６７重量％である。

【００２１】これよりもビテトラゾール金属塩が少ない
と、人体に有害な窒素酸化物が生じる傾向がある。ま
た、これよりもビテトラゾールの金属塩が多い場合、反
応性が低下し、反応が持続しない可能性が生じる。これ
は、燃焼速度の低下や、燃焼中に自然消火の可能性があ
ることを表している。

【００２２】水素を含まないビテトラゾール化合物の金
属塩と酸化剤の配合割合については、上記のように使用
するビテトラゾール化合物の金属塩の種類と、酸化剤の
種類によりその最適組成は異なるが、ビテトラゾール化
合物の金属塩が５０〜８０重量％、過塩素酸カリウムが
２０〜５０重量％、またはビテトラゾール化合物の金属
塩が２０〜５０重量％、二酸化マンガンが５０〜８０重
量％の間であることが適当である。

【００２３】

【実施例】次に、この発明を具体化した実施例を比較例
と対比して説明する。（実施例１）ビテトラゾール二カリウム７０重量％およ
び過塩素酸カリウム３０重量％からなる混合物に水／ア
セトン混合液を適量添加した後、品川式混和機（三英製
作所製商品名）で約２０分間混合した。混合後の湿薬を
３２メッシュの絹網を用いて裏ごしすることにより、粒
径約０．５ｍｍの造粒薬を作った。造粒薬を乾燥した
後、その２．０ｇを島津製作所製のカロリーメータ、型
式Ｐ−２０２の密閉容器で着火させ、燃焼後のガスを、
サンコープラスチック社製、容量１リットルのテドラー
パックで補集した後、アンモニアガスおよびシアン化水
素濃度を光明理化学工業社製の北川式ガス検知管を用い
て判定した。

【００２４】また、これとは別に、専用の金型と手動式
油圧プレス機を使用し、横５ｍｍ×縦８ｍｍ×長さ５０
ｍｍの角柱状成形品（以下「ストランド」という）を作
成し、燃焼速度の測定に用いた。すなわち、ストランド
の側面をエポキシ樹脂でコーティングすることにより、
全面燃焼を防止する対策を施した後、直径０．５ｍｍの
ドリルを用いて長手方向に適当な間隔で２箇所の小穴を
開け、ここに燃焼時間測定用の溶断ヒューズを各穴１本
ずつ貫通させた。

【００２５】そして、このストランド試料を所定の固定
台に設置し、３０気圧の加圧下で、ストランドの一端か
らニクロム線で点火し、燃焼面が通過する際にヒューズ
が溶断する瞬間を電気的に測定し、２点間の距離をその
時間差で割ることにより、燃焼速度を線燃焼速度として
求めた。その結果を表１に示す。（実施例２〜４）表１に示す配合条件で、実施例１と同
様な方法により、ガス発生剤組成物を各々製造し、同じ
方法で各々の特性を評価した。その結果を表１に示す。

【００２６】

【表１】

【００２７】（比較例１〜８）表２に示す配合条件で、
実施例１と同様な方法により、ガス発生剤組成物を各々
製造し、同じ方法でそれぞれの特性を評価した。その結
果を表２に示す。

【００２８】

【表２】

【００２９】（比較例９）表３に示す配合条件で、実施
例１と同様な方法により、ガス発生剤組成物を各々製造
し、同じ方法でそれぞれの特性を評価した。その結果を
表３に示す。

【００３０】

【表３】

【００３１】（実施例５〜１０）表４に示す配合条件
で、実施例１と同様な方法により、ガス発生剤組成物を
各々製造し、同じ方法でそれぞれの特性を評価した。そ
の結果を表４に示す。

【００３２】

【表４】

【００３３】（実施例１１〜１４）下記表５に示す配合
条件で、実施例１と同様な方法により、ガス発生剤組成
物を各々製造し、同じ方法でそれぞれの特性を評価し
た。その結果を表５に示す。

【００３４】

【表５】

【００３５】表１〜５に示した結果からわかるように、
実施例１〜１４に示すビテトラゾールの金属塩及び酸化
剤として過塩素酸カリウムまたは二酸化マンガンからな
るガス発生剤組成物は、比較例１〜８に示すビテトラゾ
ールの金属塩と他の酸化剤とからなるガス発生剤組成物
に比べて非常に高い燃焼速度が得られる。

【００３６】また、実施例１〜４に示すように、水素を
含まないビテトラゾールの金属塩を使用すると、燃焼生
成ガス中にシアン化水素３０ｐｐｍ以下であり、アンモ
ニアも５ｐｐｍ以下である。それに対して、比較例９に
示す水素を含むビテトラゾールはシアン化水素が１５０
ｐｐｍであり、アンモニアは５０ｐｐｍである。このよ
うに、水素を含まないビテトラゾールの金属塩を使用す
ることで、燃焼生成ガスが清浄なものになることが明ら
かである。

【００３７】また、表１の結果からわかるように、ビテ
トラゾール二カリウムの配合比が５０〜８０重量％であ
る実施例１，２においては、燃焼速度を低下させること
はない。一方、ビテトラゾール二カリウムの配合比が５
０重量％未満になった場合（実施例３）、または８０重
量％を越えた場合（実施例４）、いずれも燃焼速度は相
当量低下している。

【００３８】従って、ビテトラゾール二カリウムの配合
比が５０〜８０重量％で、過塩素酸カリウムが２０〜５
０重量％の範囲であれば燃焼速度を低下させることがな
く、特に好ましいことがわかる。

【００３９】また、実施例５〜８に示したようにビテト
ラゾール化合物の金属塩７０重量％、過塩素酸カリウム
３０重量％で製造したガス発生剤組成物、および実施例
９，１０で示したビテトラゾール化合物の金属塩４０重
量％、二酸化マンガン６０重量％で製造したガス発生剤
組成物は高い燃焼速度を有している。

【００４０】さらには、表５の結果からわかるように、
ビテトラゾールマンガンの配合比が２０〜５０重量％で
ある実施例１１，１２においては、燃焼速度を大きく低
下させることはない。

【００４１】一方、ビテトラゾールマンガンの配合比が
５０重量％を越えた場合（実施例１３）、または２０重
量％未満になった場合（実施例１４）、いずれも燃焼速
度は相当程度低下しているが、比較例１〜８に比べれば
十分に確保されている。

【００４２】従って、ビテトラゾールマンガンの配合比
が２０〜５０重量％、二酸化マンガンが５０〜８０重量
％の範囲であれば燃焼速度を顕著に低下させることがな
く、適当であることがわかる。

【００４３】

【発明の効果】以上詳述したように、第１の発明のガス
発生剤組成物は、水素を含まないビテトラゾール化合物
の金属塩と、二酸化マンガンまたは過塩素酸カリウムと
から構成されており、第２の発明のガス発生剤組成物は
水素を含まないビテトラゾール化合物のマンガン塩と二
酸化マンガンまたは過塩素酸カリウムとから構成されて
いる。従って、この発明によれば、高い燃焼速度を維持
しつつ、従来問題であった、燃焼残渣の毒性を極めて低
く抑えることができ、取扱い上または使用上安全である
という優れた効果を奏する。そのため、この発明のガス
発生剤組成物は、自動車等に装着されるエアバッグを膨
張させるためのガス発生器用として非常に有用である。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】水素を含まないビテトラゾール化合物の
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と酸化剤とか
らなるガス発生剤組成物において、酸化剤が二酸化マン
ガンまたは過塩素酸カリウムであることを特徴とするガ
ス発生剤組成物。
【請求項２】水素を含まないビテトラゾール化合物の
金属塩と酸化剤とからなるガス発生剤組成物において、
ビテトラゾール化合物の金属塩がマンガン塩であり、酸
化剤が二酸化マンガンまたは過塩素酸カリウムであるこ
とを特徴とするガス発生剤組成物。