JPH0675856U - 四輪駆動車用トランスファ - Google Patents

四輪駆動車用トランスファ

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JPH0675856U
JPH0675856U JP2341993U JP2341993U JPH0675856U JP H0675856 U JPH0675856 U JP H0675856U JP 2341993 U JP2341993 U JP 2341993U JP 2341993 U JP2341993 U JP 2341993U JP H0675856 U JPH0675856 U JP H0675856U
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gear
differential
clutch
output shaft
differential limiting
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JP2341993U
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Inventor
一弘 大関
Original Assignee
栃木富士産業株式会社
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  • Arrangement And Mounting Of Devices That Control Transmission Of Motive Force (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 重量や寸法の増大を招くことのない、軽量で
コンパクトな、それでいて変速比も比較的大きく取れ、
さらに走行状況に応じた差動制限力をも容易に発生でき
るような四輪駆動車用トランスファを提供する。 【構成】 四輪駆動車用トランスファにおいて、遊星歯
車減速装置からなる副変速装置2を駆動スプロケット5
内に収納すると共に、軸方向に隣接して配置される差動
制限用主クラッチ3内にセンターデフ1を収納したこと
を特徴とするもので、差動制限装置は多板式電磁クラッ
チからなるパイロットクラッチと該パイロットクラッチ
の接合時に発生する前後輪間の差動によるカムのスラス
ト力によって倍力されて接合する多板クラッチからなる
主クラッチとで構成されるようにした。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、四輪駆動車のトランスファ装置、特に、前輪側
の出力軸と後輪側の出力軸が互いに平行に配置される縦置き型トランスファ装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の、前輪側の出力軸と後輪側の出力軸が互いに平行に配置
される縦置き型トランスファ装置としては、従来、例えば、図4に示した特開昭
63−199131号公報に記載されたものがある。この従来例のものは、前輪
駆動系と後輪駆動系との間に配置された遊星歯車からなるセンターデフの前輪駆
動系と後輪駆動系と差動ピニオンのキャリヤとを選択的に係脱することによって
二輪駆動と四輪駆動との切換えや、デフロック状態を選択できるようにしてその
操作性の向上を図ったものである。このものを詳述すると、図示されないミッシ
ョンに連結された入力軸37の回転はカウンタギヤとの組合せによる副変速装置
32によって高低2段に変速されてセンターデフ31に伝えられる。入力軸37
の入力歯車39と常時噛合しているカウンタギヤのカウンタ入力歯車40の回転
力はカウンタ出力歯車41を介して出力軸45に遊嵌された中継歯車42を常時
回転させている。入力軸37と中継歯車42との間には軸方向にスライド自在な
副変速シフター44が配置され、該副変速シフター44の図面右方向のスライド
にて副変速シフター44の内歯が中継歯車42の低速係合歯43に係合し、中継
歯車42と出力軸45は一体化するので入力軸37の回転力はカウンタギヤによ
り低速に減速されて出力軸45に出力される。一方、副変速シフター44の図面
左方向のスライドにて副変速シフター44の内歯が入力軸37の端部に形成され
た高速係合歯46に係合し、入力軸37と出力軸45は一体化するので入力軸3
7の回転力はそのまま減速されずに出力軸45に出力される。かくして副変速装
置32による変速後の回転力は、センターデフ31を構成する遊星歯車群のリン
グギヤ47に伝えられる。
【0003】センターデフ31において、サンギヤ49が後輪出力軸38に、リ
ングギヤ47とサンギヤ49の両方に噛合するピニオン48のキャリヤ50が前
輪系への駆動スプロケット35に連結されるよう構成されている。駆動スプロケ
ット35からはチェーン34によって従動スプロケット36に回転駆動力が伝え
られ、前輪出力軸55を回転させる。このようなセンターデフ31において、駆
動スプロケット35の図面右側に設けた差動制限装置33の差動制限シフター5
4を軸方向にスライドさせることによって、図4の位置では、後輪出力軸38の
リヤ係合歯53とキャリヤ50のキャリヤ係合歯52とが連結されるので、サン
ギヤ49に対してピニオン48が噛合回転することはできず、前記出力軸45と
一体のリングギヤ47の回転はそのまま後輪出力軸38に伝えられる。このと
き、差動制限シフター54は駆動スプロケット35のフロント係合歯51とは連
結されていないので、前輪系に駆動力を伝えることはない。いわゆる後輪駆動に
よる二輪駆動状態を呈するものである。次に、差動制限シフター54を図4の位
置から僅か左方向にスライドさせることによって、後輪出力軸38のリヤ係合歯
53とキャリヤ50のキャリヤ係合歯52さらに駆動スプロケット35のフロン
ト係合歯51との三者が連結され、前記後輪駆動による直結の二輪駆動状態か
ら、駆動スプロケット35を介して前輪にも駆動力を伝えることとなり、いわゆ
るデフロックの四輪駆動状態となる。さらに、差動制限シフター54を左方向に
スライドさせることによって、後輪出力軸38のリヤ係合歯53との係合は解か
れ、キャリヤ50のキャリヤ係合歯52と駆動スプロケット35のフロント係合
歯51とが連結される。この場合には、前輪系と後輪系との直結状態は解かれ、
前輪系と後輪系との間に生じた差動はピニオン48の公転により吸収されるいわ
ゆる差動フリーの状態になる。
【0004】このような四輪駆動車用トランスファは、副変速装置により高低に
変速すると共に、多様な駆動状態が選択できるためにきわめて利便性が高いもの
あるが、副変速装置としてカウンタギヤを配置したり、その変速には軸方向にス
ライドする副変速シフターを介在させるために、入力軸と前輪出力軸との軸間距
離を大きく取らねばならない他、軸方向の寸法が大きくなりがちであった。しか
も、上記カウンタギヤを採用した副変速装置は重量が大きいばかりでなく、変速
比もさほど大きくは取れないものであった。そこで、カウンターギヤを使用した
副変速装置に代えて遊星歯車減速装置を使用した副変速装置を配置したものも考
えられた。しかしながら、そのようなものでも、副変速装置、センターデフ、駆
動スプロケットさらには差動制限装置が軸方向に直列に配置されており、軸方向
の寸法の増大は免れ得ないものであった。また、この種のセンターデフにおいて
は、前輪系と後輪系とのロック状態がオンあるいはオフのみであって、差動制限
力を加減制御して前輪系と後輪系への駆動力をきめ細かに配分することは不可能
であった。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】このため、上述した従来の装置に見られたよう
な重量や寸法の増大を招くことのない、軽量でコンパクトな、それでいて変速比
も比較的大きく取れ、さらに走行状況に応じた差動制限力をも容易に発生できる
ような四輪駆動車用トランスファをの開発が待たれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、本考案では、上記した従来の課題を解決
するための手段として、四輪駆動車用トランスファにおいて、遊星歯車減速装置
からなる副変速装置を駆動スプロケット内に収納すると共に、軸方向に隣接して
配置される差動制限装置における差動制限用主クラッチ内にベベルギヤからなる
センターデフを収納したことを特徴とするものである。
【0007】
【作用】本考案では、上記構成により、遊星歯車減速装置からなる副変速装置を
駆動スプロケット内に収納することによって、駆動スプロケット、遊星歯車減速
装置のリングギヤ、プラネタリギヤ、サンギヤ等を同一軸心状に重合して、軽量
で、変速比も比較的大きく取れ、従来のカウンタギヤによる副変速装置に要して
いた空間を全く必要としないものとなり、軸方向の寸法を大幅に縮小できるのみ
ならず、前輪出力軸を入力軸から遠ざけて軸間距離を大きく取る必要もない。ま
た、遊星歯車減速装置からなる副変速装置の軸方向に隣接して配置される差動制
限用主クラッチ内にベベルギヤからなるセンターデフを収納したことによって、
遊星歯車減速装置のキャリヤギヤをセンターデフのピニオン支持部材に兼用する
ことができて、装置全体がさらにコンパクトになるものである。
【0008】
【実施例】以下本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図1に示すものは本
考案の四輪駆動車用トランスファのスケルトンである。四輪駆動車用トランスフ
ァにおいて、遊星歯車減速装置からなる副変速装置2を駆動スプロケット5内に
収納すると共に、軸方向に隣接して配置される差動制限装置における差動制限用
主クラッチ3内にベベルギヤからなるセンターデフ1を収納したことを特徴とす
る構造の概略を示している。次に、図2に本考案の実施例を示し、詳細に説明す
る。図2では、図1のスケルトンにおける入力軸、副変速装置、センターデフ、
出力軸の中心線の上半部について説明する。図示しないミッションからの駆動力
を受ける入力軸7と後輪出力軸18は基本的にベベルギヤからなるセンターデフ
1を挟んで軸方向に直列に配置されている。入力軸7の後輪出力軸18側の端部
近傍はサンギヤ8とされている。該サンギヤ8の外周に適宜複数個のプラネタリ
ギヤ9が噛合配置され、これらプラネタリギヤ9をピンにて回転自在にそれらを
保持するキャリヤギヤ12がその前後端をそれぞれ入力軸7および後輪出力軸1
8の端部に回転自在に支持されている。キャリヤギヤ12の後輪出力軸18への
支持部は後述するセンターデフ1のピニオン13の支持部材を兼用している。プ
ラネタリギヤ9の径方向外側には、内歯を有するリングギヤ11とその外側の駆
動スプロケット5が配置され、プラネタリギヤ9とリングギヤ11とが噛合され
ている。キャリヤギヤ12の入力軸7側は、充分長く延設されて入力軸7外周に
軸支される。リングギヤ11の入力軸7側も充分に長く延設されて副変速シフタ
ー10を構成し、リヤギヤ12外周に軸支される。副変速シフター10の端部に
はシフター係合歯21が形成され、ケーシングに固定されたリングギヤロック歯
20と係脱することによりリングギヤ11としての回転をロックあるいはフリー
とするものである。
【0009】一方、前輪系への駆動力を伝える駆動スプロケット5には後述する
ドラム状の差動制限装置における差動制限用主クラッチ3のアウター15が連設
されている。該アウター15はさらに後輪出力軸18側に延設されて差動制限用
パイロットクラッチ22のアウターを兼用している。アウター15の駆動スプロ
ケット5側には前記キャリヤギヤ12に沿う形で径方向内側に延設されたフロン
トサイドギヤ14が設けられ、センターデフ1のピニオン13が噛合する。該ピ
ニオン13の径方向外側に近接して差動制限用主クラッチ3のインナー16が配
置され、該インナー16と後輪出力軸18とがリヤサイドギヤ17を介して一体
に連結されている。後輪出力軸18とリヤサイドギヤ17とはスプライン嵌合で
ある。差動制限用主クラッチ3と後輪出力軸18側のケーシングとの間には、差
動制限用パイロットクラッチ22が配置されている。差動制限用パイロットクラ
ッチ22の径方向内側で前記リヤサイドギヤ17の外周面上には、カムリング2
3、押圧カムリング24、ボール25からなる倍力発生装置が組み入れられてお
り、押圧カム24はインナー16のスプラインに係合している。前記差動制限用
主クラッチ3および差動制限用パイロットクラッチ22のいずれにも、摩擦板を
構成する多数の板体が交互に重合されて形成された多板クラッチ28、29によ
りクラッチ部を形成している。いずれの多板クラッチ28、29も軸方向には移
動自在であるが、アウター15側にスプライン嵌合してアウター15と回転を共
にするグループと、インナー16あるいはカムリング23側にスプライン嵌合し
てそれらと回転を共にするグループに分けられている。27は電磁石であり、そ
の通電によってアーマチャ26を吸引し、電磁力の大きさに応じて差動制限用パ
イロットクラッチ22の多数の多板クラッチ29を適宜の摩擦力にて接触させ
る。
【0010】次に、このように構成された本考案の作用を説明する。副変速装置
2におけるリングギヤ11を兼用した副変速シフター10が図2の状態のとき
は、リングギヤ11の内歯はプラネタリギヤ9の歯とキャリヤギヤ12の外側の
歯に同時に噛合しているため、キャリヤギヤ12に対するプラネタリギヤ9の相
対回転は不能である。したがって、サンギヤ8からの入力軸7の駆動力はプラネ
タリギヤ9を回転することなくリングギヤ11およびキャリヤギヤ12を一体に
回転させ、センターデフ1のピニオン13を高速公転させる。前輪系と後輪系と
の間に駆動抵抗の差がなければ、ピニオン13は自転することなく前輪系に連結
されたフロントサイドギヤ14と後輪系に連結されたリヤサイドギヤ17と共に
回転して駆動力を前輪および後輪に均等に伝える。ここで、路面状況や操向のた
めに前輪系と後輪系との間に駆動抵抗に差が生じた場合は、ピニオン13は、そ
の差に応じて抵抗の大きい方のサイドギヤ上を自転して駆動力を伝えるいわゆる
差動フリー状態となる。また、副変速シフター10を図2の状態より左方にシフ
トすると、リングギヤ11の内歯はキャリヤギヤ12の外側の歯との係合を解か
れ、プラネタリギヤ9とのみ噛合すると共に、シフター係合歯21がケーシング
に固定されたリングギヤロック歯20と係合してリングギヤ11自体の回転は不
能となる。したがって、副変速装置2におけるサンギヤ8の回転はプラネタリギ
ヤ9の自転を生起させると共に、リングギヤ11の内歯上を転動するため公転
し、サンギヤ8、プラネタリギヤ9、リングギヤ11の内歯のそれぞれの歯数に
応じた変速比で減速されてキャリヤギヤ12の低速回転として取り出される。そ
の後の動作は上記高速変速時のセンターデフでのものと同様である。そして、副
変速シフター10を図2の状態より右方にシフトすると、リングギヤ11の内歯
はプラネタリギヤ9の歯とキャリヤギヤ12の外側の歯と、さらにフロントサイ
ドギヤ14の外周に刻設されたロック歯19もに同時に噛合するため、キャリヤ
ギヤ12に対するプラネタリギヤ9の相対回転が不能であることは無論のこと、
キャリヤギヤ12とフロントサイドギヤ14とをも一体化してしまう、つまり、
センターデフ1におけるピニオン13のフロントサイドギヤ14に対する相対回
転が不能となるため、ピニオン13は自転することなくフロントサイドギヤ14
およびリヤサイドギヤ17と一体回転して前輪系の駆動スプロケット5および後
輪出力軸18へ駆動力を伝える。
【0011】次に、差動制限装置における差動制限用主クラッチ3および差動制
限用パイロットクラッチ22の動作について述べる。センターデフ1の差動動作
に制限を付す必要が生じた場合、差動制限用パイロットクラッチ22の電磁石2
7に通電することによりアーマチャ26を吸引し、多板クラッチ29におけるア
ウター15側の板のグループとカムリング23側の板のグループとが所定の摩擦
力で接触する。この結果、カムリング23はアウター15との連れ回りによっ
て、今までリヤサイドギヤ17上で回転を共にしていた押圧カムリング24との
間に相対変位を生じることとなる。図3に示すように、カムリング23と押圧カ
ムリング24のそれぞれの傾斜したカム面は、両部材の相対移動によってそれら
の対向面が狭められるように構成されているので、カムリング23と押圧カムリ
ング24との間に相対変位が生じると、両部材の間に介在されたボール25によ
って押圧カムリング24にスラスト力を付与することになる。電磁石27への通
電電流を制御して、上記スラスト力つまり差動制限力を最大にするとアウター1
5側とインナー16側とは一体となる。すなわち、前輪と後輪間の差動がロック
され、悪路走行や軟弱地からの脱出に最適な走行モードとなる。また、上記スラ
スト力を適宜のものとすることにより、前後輪間での適度の差動を許容して円滑
で安定した操向を可能にする。さらには、前後輪間ロックによるタイトコーナー
ブレーキング現象の発生も防止できる。
【0012】
【考案の効果】本考案では、以上述べてきたように、遊星歯車減速装置からなる
副変速装置を駆動スプロケット内に収納することによって、駆動スプロケット、
遊星歯車減速装置のリングギヤ、プラネタリギヤ、サンギヤ等を同一軸心状に重
合することになり組付け時にお互いの部材がガイドし合うので、組付け性が優れ
る他、駆動スプロケットがドラム状の差動制限装置から近い部位にあるので、チ
ェーンの駆動力による撓みも少ない。しかも、内歯噛合による遊星歯車減速装置
とすることによって、従来のカウンタギヤを使用した外歯噛合による副変速装置
に要していた空間を全く必要としないものとなり、軸方向の寸法を大幅に縮小で
きるのみならず、前輪出力軸と入力軸との軸間距離も小さくでき、さらには、重
量も軽減できた上に変速比も大きく取れるものである。また、遊星歯車減速装置
からなる副変速装置の軸方向に隣接して配置される差動制限用主クラッチ内にベ
ベルギヤからなるセンターデフを収納したことによって、遊星歯車減速装置のキ
ャリヤギヤをセンターデフのピニオン支持部材に兼用することができて、装置全
体がさらにコンパクトになるものである。しかも、センターデフを主クラッチ内
に収容して装置のコンパクト化を図ったものでありながら、差動制限力を主とし
て負担するのは主クラッチの径大部であることから、差動制限効果において軸心
部までクラッチ板体が存在するものと格別に遜色はないものである。
【提出日】平成5年9月7日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】考案の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】 【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、四輪駆動車のトランスファ装置、特に、前輪側の出力軸と後輪側の 出力軸が互いに平行に配置される縦置き型トランスファ装置に関するものである 。
【0002】
【従来の技術】
この種の、前輪側の出力軸と後輪側の出力軸が互いに平行に配置される縦置き 型トランスファ装置としては、従来、例えば、図4に示した特開昭63−199 131号公報に記載されたものがある。 この従来例のものは、前輪駆動系と後輪駆動系との間に配置された遊星歯車か らなるセンターデフの前輪駆動系と後輪駆動系と差動ピニオンのキャリヤとを選 択的に係脱することによって二輪駆動と四輪駆動との切換えや、デフロック状態 を選択できるようにしてその操作性の向上を図ったものである。 このものを詳述すると、図示されないミッションに連結された入力軸37の回 転はカウンタギヤとの組合せによる副変速装置32によって高低2段に変速され てセンターデフ31に伝えられる。 入力軸37の入力歯車39と常時噛合しているカウンタギヤのカウンタ入力歯 車40の回転力はカウンタ出力歯車41を介して出力軸45に遊嵌された中継歯 車42を常時回転させている。 入力軸37と中継歯車42との間には軸方向にスライド自在な副変速シフター 44が配置され、該副変速シフター44の図面右方向のスライドにて副変速シフ ター44の内歯が中継歯車42の低速係合歯43に係合し、中継歯車42と出力 軸45は一体化するので入力軸37の回転力はカウンタギヤにより低速に減速さ れて出力軸45に出力される。 一方、副変速シフター44の図面左方向のスライドにて副変速シフター44の 内歯が入力軸37の端部に形成された高速係合歯46に係合し、入力軸37と出 力軸45は一体化するので入力軸37の回転力はそのまま減速されずに出力軸4 5に出力される。 かくして副変速装置32による変速後の回転力は、センターデフ31を構成す る遊星歯車群のリングギヤ47に伝えられる。
【0003】 センターデフ31において、サンギヤ49が後輪出力軸38に、リングギヤ4 7とサンギヤ49の両方に噛合するピニオン48のキャリヤ50が前輪系への駆 動スプロケット35に連結されるよう構成されている。 駆動スプロケット35からはチェーン34によって従動スプロケット36に回 転駆動力が伝えられ、前輪出力軸55を回転させる。 このようなセンターデフ31において、駆動スプロケット35の図面右側に設 けた差動制限装置33の差動制限シフター54を軸方向にスライドさせることに よって、図4の位置では、後輪出力軸38のリヤ係合歯53とキャリヤ50のキ ャリヤ係合歯52とが連結されるので、サンギヤ49に対してピニオン48が噛 合回転することはできず、前記出力軸45と一体のリングギヤ47の回転はその まま後輪出力軸38に伝えられる。このとき、差動制限シフター54は駆動スプ ロケット35のフロント係合歯51とは連結されていないので、前輪系に駆動力 を伝えることはない。いわゆる後輪駆動による二輪駆動状態を呈するものである 。 次に、差動制限シフター54を図4の位置から僅か左方向にスライドさせるこ とによって、後輪出力軸38のリヤ係合歯53とキャリヤ50のキャリヤ係合歯 52さらに駆動スプロケット35のフロント係合歯51との三者が連結され、前 記後輪駆動による直結の二輪駆動状態から、駆動スプロケット35を介して前輪 にも駆動力を伝えることとなり、いわゆるデフロックの四輪駆動状態となる。 さらに、差動制限シフター54を左方向にスライドさせることによって、後輪 出力軸38のリヤ係合歯53との係合は解かれ、キャリヤ50のキャリヤ係合歯 52と駆動スプロケット35のフロント係合歯51とが連結される。 この場合には、前輪系と後輪系との直結状態は解かれ、前輪系と後輪系との間 に生じた差動はピニオン48の公転により吸収されるいわゆる差動フリーの状態 になる。
【0004】 このような四輪駆動車用トランスファは、副変速装置により高低に変速すると 共に、多様な駆動状態が選択できるためにきわめて利便性が高いものあるが、副 変速装置としてカウンタギヤを配置したり、その変速には軸方向にスライドする 副変速シフターを介在させるために、入力軸と前輪出力軸との軸間距離を大きく 取らねばならない他、軸方向の寸法が大きくなりがちであった。 しかも、上記カウンタギヤを採用した副変速装置は重量が大きいばかりでなく 、変速比もさほど大きくは取れないものであった。 そこで、カウンターギヤを使用した副変速装置に代えて遊星歯車減速装置を使 用した副変速装置を記置したものも考えられた。 しかしながら、そのようなものでも、副変速装置、センターデフ、駆動スプロ ケットさらには差動制限装置が軸方向に直列に配置されており、軸方向の寸法の 増大は免れ得ないものであった。 また、この種のセンターデフにおいては、前輪系と後輪系とのロック状態がオ ンあるいはオフのみであって、差動制限力を加減制御して前輪系と後輪系への駆 動力をきめ細かに配分することは不可能であった。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
このため、上述した従来の装置に見られたような重量や寸法の増大を招くこと のない、軽量でコンパクトな、それでいて変速比も比較的大きく取れ、さらに走 行状況に応じた差動制限力をも容易に発生できるような四輪駆動車用トランスフ ァをの開発が待たれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本考案では、上記した従来の課題を解決するための手段として、四輪 駆動車用トランスファにおいて、遊星歯車減速装置からなる副変速装置を駆動ス プロケット内に収納すると共に、軸方向に隣接して配置される差動制限装置にお ける差動制限用主クラッチ内にベベルギヤからなるセンターデフを収納したこと を特徴とするものである。
【0007】
【作用】
本考案では、上記構成により、遊星歯車減速装置からなる副変速装置を駆動ス プロケット内に収納することによって、駆動スプロケット、遊星歯車減速装置の リングギヤ、プラネタリギヤ、サンギヤ等を同一軸心状に重合して、軽量で、変 速比も比較的大きく取れ、従来のカウンタギヤによる副変速装置に要していた空 間を全く必要としないものとなり、軸方向の寸法を大幅に縮小できるのみならず 、前輪出力軸を入力軸から遠ざけて軸間距離を大きく取る必要もない。 また、遊星歯車減速装置からなる副変速装置の軸方向に隣接して配置される差 動制限用主クラッチ内にベベルギヤからなるセンターデフを収納したことによっ て、遊星歯車減速装置のキャリヤギヤをセンターデフのピニオン支持部材に兼用 することができて、装置全体がさらにコンパクトになるものである。
【0008】
【実施例】
以下本考案の実施例を図面に基づいて説明する。 図1に示すものは本考案の四輪駆動車用トランスファのスケルトンである。 四輪駆動車用トランスファにおいて、遊星歯車減速装置からなる副変速装置2 を駆動スプロケット5内に収納すると共に、軸方向に隣接して配置される差動制 限装置における差動制限用主クラッチ3内にベベルギヤからなるセンターデフ1 を収納したことを特徴とする構造の概略を示している。 次に、図2に本考案の実施例を示し、詳細に説明する。 図2では、図1のスケルトンにおける入力軸、副変速装置、センターデフ、出 力軸の中心線の上半部について説明する。 図示しないミッションからの駆動力を受ける入力軸7と後輪出力軸18は基本 的にベベルギヤからなるセンターデフ1を挟んで軸方向に直列に配置されている 。入力軸7の後輪出力軸18側の端部近傍はサンギヤ8とされている。該サンギ ヤ8の外周に適宜複数個のプラネタリギヤ9が噛合配置され、これらプラネタリ ギヤ9をピンにて回転自在にそれらを保持するキャリヤギヤ12がその前後端を それぞれ入力軸7および後輪出力軸18の端部に回転自在に支持されている。 キャリヤギヤ12の後輪出力軸18への支持部は後述するセンターデフ1のピ ニオン13の支持部材を兼用している。プラネタリギヤ9の径方向外側には、内 歯を有するリングギヤ11とその外側の駆動スプロケット5が配置され、プラネ タリギヤ9とリングギヤ11とが噛合されている。 キャリヤギヤ12の入力軸7側は、充分長く延設されて入力軸7外周に軸支さ れる。リングギヤ11の入力軸7側も充分に長く延設されて副変速シフター10 を構成し、リヤギヤ12外周に軸支される。 副変速シフター10の端部にはシフター係合歯21が形成され、ケーシングに 固定されたリングギヤロック歯20と係脱することによりリングギヤ11として の回転をロックあるいはフリーとするものである。
【0009】 一方、前輪系への駆動力を伝える駆動スプロケット5には後述するドラム状の 差動制限装置における差動制限用主クラッチ3のアウター15が連設されている 。該アウター15はさらに後輪出力軸18側に延設されて差動制限用パイロット クラッチ22のアウターを兼用している。アウター15の駆動スプロケット5側 には前記キャリヤギヤ12に沿う形で径方向内側に延設されたフロントサイドギ ヤ14が設けられ、センターデフ1のピニオン13が噛合する。該ピニオン13 の径方向外側に近接して差動制限用主クラッチ3のインナー16が配置され、該 インナー16と後輪出力軸18とがリヤサイドギヤ17を介して一体に連結され ている。後輪出力軸18とリヤサイドギヤ17とはスプライン嵌合である。 差動制限用主クラッチ3と後輪出力軸18側のケーシングとの間には、差動制 限用パイロットクラッチ22が配置されている。差動制限用パイロットクラッチ 22の径方向内側で前記リヤサイドギヤ17の外周面上には、カムリング23、 押圧カムリング24、ボール25からなる倍力発生装置が組み入れられており、 押圧カム24はインナー16のスプラインに係合している。 前記差動制限用主クラッチ3および差動制限用パイロットクラッチ22のいず れにも、摩擦板を構成する多数の板体が交互に重合されて形成された多板クラッ チ28、29によりクラッチ部を形成している。 いずれの多板クラッチ28、29も軸方向には移動自在であるが、アウター1 5側にスプライン嵌合してアウター15と回転を共にするグループと、インナー 16あるいはカムリング23側にスプライン嵌合してそれらと回転を共にするグ ループに分けられている。 27は電磁石であり、その通電によってアーマチャ26を吸引し、電磁力の大 きさに応じて差動制限用パイロットクラッチ22の多数の多板クラッチ29を適 宜の摩擦力にて接触させる。
【0010】 次に、このように構成された本考案の作用を説明する。 副変速装置2におけるリングギヤ11を兼用した副変速シフター10が図2の 状態のときは、リングギヤ11の内歯はプラネタリギヤ9の歯とキャリヤギヤ1 2の外側の歯に同時に噛合しているため、キャリヤギヤ12に対するプラネタリ ギヤ9の相対回転は不能である。したがって、サンギヤ8からの入力軸7の駆動 力はプラネタリギヤ9を回転することなくリングギヤ11およびキャリヤギヤ1 2を一体に回転させ、センターデフ1のピニオン13を高速公転させる。前輪系 と後輪系との間に駆動抵抗の差がなければ、ピニオン13は自転することなく前 輪系に連結されたフロントサイドギヤ14と後輪系に連結されたリヤサイドギヤ 17と共に回転して駆動力を前輪および後輪に均等に伝える。 ここで、路面状況や操向のために前輪系と後輪系との間に駆動抵抗に差が生じ た場合は、ピニオン13は、その差に応じて抵抗の大きい方のサイドギヤ上を自 転して駆動力を伝えるいわゆる差動フリー状態となる。 また、副変速シフター10を図2の状態より左方にシフトすると、リングギヤ 11の内歯はキャリヤギヤ12の外側の歯との係合を解かれ、プラネタリギヤ9 とのみ噛合すると共に、シフター係合歯21がケーシングに固定されたリングギ ヤロック歯20と係合してリングギヤ11自体の回転は不能となる。したがって 、副変速装置2におけるサンギヤ8の回転はプラネタリギヤ9の自転を生起させ ると共に、リングギヤ11の内歯上を転動するため公転し、サンギヤ8、プラネ タリギヤ9、リングギヤ11の内歯のそれぞれの歯数に応じた変速比で減速され てキャリヤギヤ12の低速回転として取り出される。その後の動作は上記高速変 速時のセンターデフでのものと同様である。 そして、副変速シフター10を図2の状態より右方にシフトすると、リングギ ヤ11の内歯はプラネタリギヤ9の歯とキャリヤギヤ12の外側の歯と、さらに フロントサイドギヤ14の外周に刻設されたロック歯19もに同時に噛合するた め、キャリヤギヤ12に対するプラネタリギヤ9の相対回転が不能であることは 無論のこと、キャリヤギヤ12とフロントサイドギヤ14とをも一体化してしま う、つまり、センターデフ1におけるピニオン13のフロントサイドギヤ14に 対する相対回転が不能となるため、ピニオン13は自転することなくフコントサ イドギヤ14およびリヤサイドギヤ17と一体回転して前輪系の駆動スプロケン ト5および後輪出力軸18へ駆動力を伝える。
【0011】 次に、差動制限装置における差動制限用主クラッチ3および差動制限用パイロ ットクラッチ22の動作について述べる。 センターデフ1の差動動作に制限を付す必要が生じた場合、差動制限用パイロ ットクラッチ22の電磁石27に通電することによりアーマチャ26を吸引し、 多板クラッチ29におけるアウター15側の板のグループとカムリング23側の 板のグループとが所定の摩擦力で接触する。この結果、カムリング23はアウタ ー15との連れ回りによって、今までリヤサイドギヤ17上で回転を共にしてい た押圧カムリング24との間に相対変位を生じることとなる。 図3に示すように、カムリング23と押圧カムリング24のそれぞれの傾斜し たカム面は、両部材の相対移動によってそれらの対向面が狭められるように構成 されているので、カムリング23と押圧カムリング24との間に相対変位が生じ ると、両部材の間に介在されたボール25によって押圧カムリング24にスラス ト力を付与することになる。 電磁石27への通電電流を制御して、上記スラスト力つまり差動制限力を最大 にするとアウター15側とインナー16側とは一体となる。すなわち、前輪と後 輪間の差動がロックされ、悪路走行や軟弱地からの脱出に最適な走行モードとな る。 また、上記スラスト力を適宜のものとすることにより、前後輪間での適度の差 動を許容して円滑で安定した操向を可能にする。さらには、前後輪間ロックによ るタイトコーナーブレーキング現象の発生も防止できる。
【0012】
【考案の効果】
本考案では、以上述べてきたように、遊星歯車減速装置からなる副変速装置を 駆動スプロケット内に収納することによって、駆動スプロケット、遊星歯車減速 装置のリングギヤ、プラネタリギヤ、サンギヤ等を同一軸心状に重合することに なり組付け時にお互いの部材がガイドし合うので、組付け性が優れる他、駆動ス プロケットがドラム状の差動制限装置から近い部位にあるので、チェーンの駆動 力による撓みも少ない。しかも、内歯噛合による遊星歯車減速装置とすることに よって、従来のカウンタギヤを使用した外歯噛合による副変速装置に要していた 空間を全く必要としないものとなり、軸方向の寸法を大幅に縮小できるのみなら ず、前輪出力軸と入力軸との軸間距離も小さくでき、さらには、重量も軽減でき た上に変速比も大きく取れるものである。 また、遊星歯車減速装置からなる副変速装置の軸方向に隣接して配置される差 動制限用主クラッチ内にベベルギヤからなるセンターデフを収納したことによっ て、遊星歯車減速装置のキャリヤギヤをセンターデフのピニオン支持部材に兼用 することができて、装置全体がさらにコンパクトになるものである。 しかも、センターデフを主クラッチ内に収容して装置のコンパクト化を図った ものでありながら、差動制限力を主として負担するのは主クラッチの径大部であ ることから、差動制限効果において軸心部までクラッチ板体が存在するものと格 別に遜色はないものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の四輪駆動車用トランスファのスケルト
ンを示す図である。
【図2】本考案の四輪駆動車用トランスファの実施例を
示す図である。
【図3】図2のA−A線における矢視断面図である。
【図4】従来例の四輪駆動車用トランスファを示す図で
ある。
【符号の説明】
1 センターデフ 2 副変速装置 3 差動制限用主クラッチ 4 チェーン 5 駆動スプロケット 6 従動スプロケット
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年9月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】実用新案登録請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【実用新案登録請求の範囲】

Claims (2)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 四輪駆動車用トランスファにおいて、遊
    星歯車減速装置からなる副変速装置を駆動スプロケット
    内に収納すると共に、軸方向に隣接して配置される差動
    制限装置における差動制限用主クラッチ内にベベルギヤ
    からなるセンターデフを収納したことを特徴とする四輪
    駆動車用トランスファ。
  2. 【請求項2】 前記主クラッチは前輪側へ駆動力を伝え
    る駆動スプロケットに連結されたアウターと、後輪側へ
    駆動力を伝えるインナーと、これらアウターおよびイン
    ナーのそれぞれに係合された摩擦板が交互に配置された
    ものであり、前記インナーの内側に近接してセンターデ
    フのピニオンが配置されていることを特徴とする請求項
    1に記載の四輪駆動車用トランスファ。
JP2341993U 1993-04-09 1993-04-09 四輪駆動車用トランスファ Pending JPH0675856U (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10364876B2 (en) 2017-07-07 2019-07-30 Hyundai Motor Company Four-wheel driving apparatus for vehicle
CN118013867A (zh) * 2024-04-09 2024-05-10 西北工业大学 大功率跨度的变速水下推进电机及其设计方法、水下装备

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