JPH0673472U - 調心型ローラクラッチユニット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 取付誤差等に伴う回転軸１の傾きを吸収し、
クラッチの機能安定化、ならびに耐久性の向上を図ると
同時に、クラッチＯＮ・ＯＦＦ時の衝撃・振動を緩和す
る。 【構成】 クラッチ外輪２ａの爪部２ａ２を軸受ハウジ
ング５の内径フランジ部５ｄの内側に組み入れると共
に、爪部２ａ３を凹部５ｅに係合可能に適合させること
により、クラッチ外輪２ａと軸受ハウジング５とを軸方
向および回転方向に係合可能に係合一体化してある。さ
らに、爪部２ａ３と凹部５ｅの両側壁との間に弾性部材
７を圧縮介在させ、クラッチ外輪２ａと軸受ハウジング
５との間に回転方向の弾性力を付与している。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、ローラクラッチと転がり軸受とを一体にユニット化したローラクラ ッチユニットに関し、例えば、全自動洗濯機において洗濯脱水槽の回転制御用機 器として利用することができる。

【０００２】

【従来の技術】

例えば、全自動洗濯機では洗濯物の洗い・すすぎおよび脱水が一つの洗濯脱水 槽で行なわれるため、洗濯脱水槽は洗い・すすぎ時は停止し、脱水時にのみ回転 するようになっている。この洗濯脱水槽の回転制御は、その底面中央部から下方 に延びた筒状槽軸の回転を制御することによりなされる。すなわち、筒状槽軸に は回転源に正・逆回転自在に連結されたファン軸が挿通されており、洗い・すす ぎ時、筒状槽軸の正・逆回転をワンウェイクラッチおよびブレーキベルトでロッ クしながらファン軸のみを正・逆回転させ、脱水時には、ブレーキベルトのロッ クを解除すると共に、ファン軸をワンウェイクラッチのフリー方向に回転させて 、槽軸をファン軸と共回りさせるのである。そして、脱水が完了すると、ブレー キベルトを作動させて筒状槽軸の回転を停止させる。

【０００３】 ところで、上記ワンウェイクラッチとして、一般に、ローラクラッチが使用さ れる場合が多い。ローラクラッチは、例えば、内周面に複数のカム面を備え、各 カム面で、制御すべき回転軸の外周面との間に正回転方向にくさび空間を形成す るクラッチ外輪と、このくさび空間に係合・離脱可能に配された複数のニードル ローラと、ニードルローラを収容する複数のポケットを備えた保持器と、ニード ルローラをくさび空間側に押圧するバネ手段とで構成される。回転軸の逆回転に 対しては、ニードルローラが回転軸との間の摩擦力を受けて逆回転方向に移動し 、くさび空間から離脱することによりトルク伝達を遮断する。逆に、回転軸の正 回転に対しては、ニードルローラが正回転方向に移動し、くさび空間に係合する ことによりトルク伝達を行なう。バネ手段は、ニードルローラを離脱状態から係 合状態へとすみやかに移行させ、クラッチの応答性を高める。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

ローラクラッチは、本来、トルクの伝達・遮断を行なうものであり、それ自体 、回転軸を回転自在に支持する機能は持たない。そのため、従来より、ローラク ラッチと転がり軸受とを併用し、回転軸の支持機能を転がり軸受に負わせ、ロー ラクラッチには本来のトルクの伝達・遮断機能のみを行なわせるといった支持構 造が採用されてきた。具体的には、別体のローラクラッチと転がり軸受とをそれ ぞれ取付フレームに支持させるいわゆる分離タイプと、ローラクラッチと転がり 軸受とを一体にユニット化したものを取付フレームに支持させるユニットタイプ とが知られている。後者のユニットタイプは、分離タイプに比べ組込みが容易で 、しかもローラクラッチと転がり軸受との同軸度（平行度）を容易に確保できる という利点がある。

【０００５】 ところで、全自動洗濯機などにおいて、取付誤差等によって回転軸に傾きが生 じる場合がある。回転軸の傾きが大きいと、トルク伝達時、ローラクラッチのク ラッチ外輪に偏荷重が作用することにより、各カム面に均等にトルクが伝達され ず、カム面の耐久性に影響が生じることが予想される。また、ニードルローラを くさび空間側に押圧するバネ手段の耐久性も懸念される。

【０００６】 一方、クラッチのＯＮ・ＯＦＦ時には多少なりとも衝撃・振動が生じるもので あるが、これがあまり大きいといわゆるタタキ音が発生する可能性がある。特に 、全自動洗濯機に使用されるローラクラッチにあっては、近時の洗濯容量増大化 の傾向から、そのサイズが大型化しているため、タタキ音対策が極めて重要な課 題になってきている。

【０００７】 そこで、本考案の目的は、このような取付誤差等に伴う回転軸の傾きを吸収し 、クラッチの機能安定化、ならびに耐久性の向上を図ると同時に、クラッチＯＮ ・ＯＦＦ時の衝撃・振動を緩和することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

請求項１の調心型ローラクラッチユニットは、内周面に複数のカム面を備え、 各カム面で、制御すべき回転部材の外周面との間にクサビ空間を形成するクラッ チ外輪、クサビ空間に係合・離脱可能に配されたローラ、およびローラを収容す る保持器を有するローラクラッチと、このローラクラッチと軸心を揃えて配置さ れ、回転部材を回転自在に支持する転がり軸受と、ローラクラッチを収容保持す る筒状のクラッチハウジングと、転がり軸受を収容保持する筒状の軸受ハウジン グとで構成されるものであって、クラッチ外輪と軸受ハウジングとを軸方向およ び回転方向に係合可能に係合一体化すると共に、両者の間に回転方向の弾性力を 付与したものである。

【０００９】 請求項２の調心型ローラクラッチユニットは、クラッチハウジングと軸受ハウ ジングとを軸方向および回転方向に係合可能に係合一体化すると共に、両者の間 に回転方向の弾性力を付与したものである。

【００１０】

【作用】

クラッチ外輪と軸受ハウジングとは、相互に軸方向および回転方向に係合可能 に係合一体化されており、係合可能領域内において、両者間の相対移動が許容さ れている。回転部材に傾きがあると、ローラクラッチがこの傾きに応じて上記領 域内を移動し、回転部材とローラクラッチとの軸心のずれを自動的に調心する。 一方、クラッチのＯＮ・ＯＦＦ時、ローラクラッチが軸受ハウジングに対して 急激な移動を行なうと、両者の係合部の急激な当接によっていわゆるタタキ音等 が発生する可能性がある。そこで、クラッチ外輪と軸受ハウジングとの間に軸方 向の弾性力を付与することにより、ローラクラッチの急激な移動を抑制すること としたものである。

【００１１】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に従って説明する。

【００１２】 図１に示すように、この実施例の調心型ローラクラッチユニットは、回転軸１ を回転制御するためのローラクラッチ２と、ローラクラッチ２と軸心を揃えて配 置され、回転軸１を回転自在に支持するための転がり軸受３（例えば、密封型の 深溝玉軸受）と、転がり軸受３を収容保持する筒状の軸受ハウジング５とを主要 な要素として構成される。

【００１３】 ローラクラッチ２は、内周面に複数のカム面２ａ１を備え、各カム面２ａ１で 、回転軸１の外周面との間に例えば正回転方向にくさび空間を形成するクラッチ 外輪２ａと、くさび空間に係合・離脱可能に配された複数のニードルローラ２ｂ と、ニードルローラ２ｂを収容保持する複数のポケットを備えた例えば樹脂製の 保持器２ｃと、保持器２ｃのポケットの側壁とニードルローラ２ｂの外周面との 間に介在し、ニードルローラ２ｂをくさび空間側に押圧するバネ手段（図示省略 ）とで構成される。尚、このローラクラッチ２の機能については、前述した従来 のものと何ら変わりないので、ここでは説明を省略する。

【００１４】 クラッチ外輪２ａの一方の端面には、円周等配位置の３箇所において外径側に 突出した３つの爪部２ａ２と外側に屈曲した３つの爪部２ａ３とを設けてある。 また、軸受ハウジング５の他方の端面には、内径側に延びた内径フランジ部５ｄ と、内径フランジ部５ｄを円周等配位置の３箇所において切欠いた切欠き状の３ つの凹部５ｅを設けてある。爪部２ａ２と爪部２ａ３の形成位相は等間にずれて おり、爪部２ａ３の形成位相は凹部５ｅに対応している。尚、この実施例では、 クラッチ外輪２ａの他方の端面に設けた鍔部２ａ４と、軸受ハウジング５の内径 に嵌着したリング状のストッパ部材６とによって、保持器２ｃを軸方向の両側に 抜け止め規制する構成にしてある。

【００１５】 そして、爪部２ａ２を内径フランジ部５ｄの内側に組み入れると共に、爪部２ ａ３を凹部５ｅに係合可能に適合させることにより、クラッチ外輪２ａと軸受ハ ウジング５とを軸方向および回転方向に係合可能に係合一体化してある。さらに 、爪部２ａ３と凹部５ｅの両側壁との間に弾性部材７を圧縮介在させ、クラッチ 外輪２ａと軸受ハウジング５との間に回転方向の弾性力を付与している。弾性部 材７は、クラッチ外輪２ａと軸受ハウジング５との係合部に介在して、両者の間 に回転方向の弾性力を付与できるものであれば、その材質、形状等を特に問わな いが、この実施例では、図２に拡大して示すように、弾性部材７としてバネ鋼か らなるキャップ状の部材を使用している。この弾性部材７は、爪部２ａ３に適合 してこれを収容する内側空間部７ａと、凹部５ｅの両側壁に弾性的に接触する一 対の舌片７ｂからなる。

【００１６】 また、爪部２ａ２と内径フランジ部５ｄとの間に軸方向すきまＳ１、弾性部材 ７の端面とストッパ部材６の端面との間に軸方向すきまＳ２を設け、さらに、弾 性部材７と凹部５ｅの底壁との間に半径すきまＳ３、クラッチ外輪２ａの外径と 内径フランジ部５ｄの内径との間に半径すきまＳ４を設けてある。尚、これらす きまは、０．５ｍｍ程度の僅かなものである。

【００１７】 クラッチ外輪２ａと軸受ハウジング５とは、以上説明したような態様で、軸方 向および回転方向に係合可能に係合一体され、かつ、回転方向の弾性力を付与さ れる。軸方向すきまＳ１、Ｓ２、半径すきまＳ３、Ｓ４の存在、および、弾性部 材７の弾性変形能により、ローラクラッチ２が、軸受ハウジング５に対し軸方向 および半径方向に揺動移動することが可能となる（軸受ハウジング５は、通常、 相手側フレームに固定される）。そのため、例えば取付誤差等によって回転軸１ に傾きが生じると、ローラクラッチ２が回転軸１の傾きに応じて揺動移動し、ロ ーラクラッチ２と回転軸１との軸心のずれを自動的に調心する。

【００１８】 さらに、ローラクラッチ２の急激な移動が弾性部材７の回転方向の弾性力によ って抑制されるので、クラッチ外輪２ａと軸受ハウジング５との係合部分におけ る急激な当接状態が生じにくい。そのため、クラッチＯＮ・ＯＦＦ時の衝撃、振 動が緩和され、特に、タタキ音対策として有効な手段となる。

【００１９】 尚、この実施例では、爪部２ａ３と凹部５ｅとの係合部が円周等配位置の３箇 所に設けられているが、この係合部は少なくとも１箇所に設ければ良い。また、 この実施例では、クラッチ外輪２ａと軸受ハウジング５とを係合一体化する構成 にしてあるが、クラッチ外輪２ａに筒状のクラッチハウジングを外嵌し、このク ラッチハウジングを以上説明した態様に準じて軸受ハウジング５に軸方向および 回転方向に係合可能に係合一体化するようにしても良い。

【００２０】 さらに、本考案は、以上例示したものに限定されず、例えば、ローラクラッチ としてツーウェイタイプのローラクラッチを使用する、ローラクラッチに内輪を 具備させる、転がり軸受としてアンギュラー玉軸受等を使用する、軸受ハウジン グ５として他の形状のものを使用する、クラッチ外輪２ａあるいはクラッチハウ ジングと軸受ハウジング５とを他の係合構造により係合一体化するいった種々の 改変が可能である。

【００２１】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案によれば、クラッチ外輪又はクラッチハウジング と軸受ハウジングとを回転方向および軸方向に係合可能に係合一体化したので、 取付誤差等によって回転部材に傾きが生じた場合でも、この傾きがローラクラッ チの移動によって自動的に調心されることにより、トルク伝達時の偏荷重が防止 され、安定したクラッチ機能を確保することができると共に、ローラクラッチの 耐久性を向上させることができる。また、クラッチ外輪又はクラッチハウジング と軸受ハウジングとの間に回転方向の弾性力を付与し、ローラクラッチの軸受ハ ウジングに対する急激な移動を抑制したので、クラッチのＯＮ・ＯＦＦ時、係合 部の急激な当接による衝撃・振動が緩和され、いわゆるタタキ音対策として有効 な手段となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例を示す断面図（図ａ：図ｂにお
けるａ−ａ断面）、矢視図（図ｂ：図ａにおけるｂ方向
矢視）である。

【図２】図１における弾性部材の装着状態を示す拡大図
（図ａ）、弾性部材の装着過程を示す斜視図（図ｂ）で
ある。

【符号の説明】

１ 回転軸 ２ ローラクラッチ ２ａ クラッチ外輪 ２ａ１ カム面 ２ｂ ローラ ２ｃ 保持器 ２ｄ バネ手段 ３ 転がり軸受 ５ 軸受ハウジング ７ 弾性部材

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 内周面に複数のカム面を備え、各カム面
   で、制御すべき回転部材の外周面との間にクサビ空間を
   形成するクラッチ外輪、前記クサビ空間に係合・離脱可
   能に配されたローラ、および前記ローラを収容する保持
   器を有するローラクラッチと、このローラクラッチと軸
   心を揃えて配置され、回転部材を回転自在に支持する転
   がり軸受と、前記転がり軸受を収容保持する筒状の軸受
   ハウジングとで構成されるものであって、前記クラッチ
   外輪と前記軸受ハウジングとを軸方向および回転方向に
   係合可能に係合一体化すると共に、両者の間に回転方向
   の弾性力を付与したことを特徴とする調心型ローラクラ
   ッチユニット。
2. 【請求項２】 内周面に複数のカム面を備え、各カム面
   で、制御すべき回転部材の外周面との間にクサビ空間を
   形成するクラッチ外輪、前記クサビ空間に係合・離脱可
   能に配されたローラ、および前記ローラを収容する保持
   器を有するローラクラッチと、このローラクラッチと軸
   心を揃えて配置され、回転部材を回転自在に支持する転
   がり軸受と、前記ローラクラッチを収容保持する筒状の
   クラッチハウジングと、前記転がり軸受を収容保持する
   筒状の軸受ハウジングとで構成されるものであって、前
   記クラッチハウジングと前記軸受ハウジングとを軸方向
   および回転方向に係合可能に係合一体化すると共に、両
   者の間に回転方向の弾性力を付与したことを特徴とする
   調心型ローラクラッチユニット。