JPH0671065U - ラチェットレンチ及び締付工具 - Google Patents

ラチェットレンチ及び締付工具

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JPH0671065U
JPH0671065U JP1853893U JP1853893U JPH0671065U JP H0671065 U JPH0671065 U JP H0671065U JP 1853893 U JP1853893 U JP 1853893U JP 1853893 U JP1853893 U JP 1853893U JP H0671065 U JPH0671065 U JP H0671065U
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光 宮野
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旭金属工業株式会社
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Abstract

(57)【要約】 【目的】係合部の歯の破損、あるいは、ラチェット爪の
折れる恐れの少ないラチェットレンチ、及びボルトとナ
ットとを、又は、二つのナットを同時に容易に締緩でき
る締付工具を提供する。 【構成】ラチェットレンチ1は、歯部11bとを有する
係合部材11と、複数の歯からなるラチェット歯16a
を有するラチェット爪16と、爪付勢用コイルバネ17
と、平滑面18aを有する鋼球18とから構成したラチ
ェット機構を備えたものとする。又、締付工具は、上記
ラチェットレンチ1のラチェット機構を備えた上部スパ
ナ部材100及び下部スパナ部材101と、シリンダー
本体31とロッド32とから構成される操作部材3とを
備え、そして、上部スパナ部材100、下部スパナ部材
101各々の基端を、シリンダー本体31、ロッド32
夫々に回動自在に取り付けたものとする。。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ラチェットレンチ、及びボルトとナットとを、あるいは二つのナッ トを同時に係合して締緩する締付工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ラチェットレンチとしては、図8に示すようなものが従来から広く知られてい る。 このラチェットレンチは、後方側に操作把持部a2を有する長尺状のレンチ本 体aと、レンチ本体aの先端側に回動自在に取り付けられボルト等に係合する係 合部bとを備え、又、係合部bに複数の歯からなる歯部b1を設けるとともに、 レンチ本体aにその歯部b1に係合するラチェット爪a1を設けたものとし、レ ンチ本体aの操作把持部a2を回動操作してレンチ本体aの先端側を正回転させ ることにより係合部bの歯部b1とラチェット爪a1とが係止して係合部bがレ ンチ本体aに伴い正回転する一方、レンチ本体aの操作把持部a2を逆回転させ ることによりラチェット爪a1が係合部bの歯部b1を滑ってレンチ本体aのみ が回転するようにしたものである。こうすることにより、レンチ本体aを正、逆 回転を繰り返し行うことで、ボルト等に係合した係合部bを逆回転させることな く正回転のみ行わせることができ、例えばボルトの締め付けを容易に行えるよう にしたものである。 しかしながら、このものにおいては、係合部材bへのレンチ本体aの回転力の 伝達を、係合部材bの歯部b1の一歯とラチェット爪a1とによって行われてい るため、レンチ本体aの回転力が大きい場合には、ラチェット部b1のラチェッ ト歯が破損したり、あるいは、ラチェット爪a1が折れる場合があるという課題 がある。
【0003】 一方、ボルトとナットとを、あるいは二つのナットを互いに締め付ける、ある いは緩める際、一方側のみを回転させても他方もそれに伴って共に回ってしまう 。そのため、従来、双方にスパナ部材を係合し、二つのスパナ部材を互いに反対 方向に回転させることにより行われている。 しかし、二つのスパナ部材を一人の人間が同時に操作するのはめんどうなもの であり、特に強い締め付けトルクによって締め付ける必要のある場合や強く締め 付けられたものを緩める場合には困難なものとなる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、以上の実情に鑑み提案されたものでその目的とするところは、レン チ本体の回転力が大きい場合にも係合部材の歯の破損、あるいは、ラチェット爪 の折れる恐れの少ないラチェットレンチを提供する。又、本考案は、ボルトとナ ットとを、又は二つのナットを同時に容易に締緩できる締付工具を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は、以下の特徴を有するラチェットレンチを提供することにより上記課 題を解決する。 本考案のラチェットレンチは、レンチ本体(10)と、レンチ本体(10)に回動自在 に係合される筒状の係合部材(11)と、ラチェット爪部材(12)とを備えてなる。 レンチ本体(10)は、ラチェット爪部材(12)を収納し得るラチェット爪配設部(1 4)を備える。 係合部材(11)は、内周部にボルト,ナット等の締付部材に係合し得る係合部(1 1a) を有する。又、外周部に全周に渡って形成された複数の歯からなる歯部(11b ) を有する。 ラチェット爪部材(12)は、ラチェット爪(16)と、ラチェット爪(16)を付勢する 付勢手段(17)と、爪案内部材(18)とを備える。 ラチェット爪(16)は、係合部材(11)の歯部(11b) における複数の歯各々と歯合 し得る複数の歯からなるラチェット歯(16a) を備える。そして、レンチ本体(10) のラチェット爪配設部(14)内に移動可能に配設される。 付勢手段(17)は、ラチェット爪(16)のラチェット歯(16a) を係合部材(11)の歯 部(11b) 側に常時付勢するものであり、この付勢により両歯(16a)(11b)が歯合で きるようになされる。 案内部材(18)は、レンチ本体(10)のラチェット爪配設部(14)内に配設されるこ とにより、係合部材(11)と案内部材(18)との間にラチェット爪(16)を係合部材(1 1)と案内部材(18)とで挾持し得る挾持部(19)が形成される。更に、この案内部材 (18)は、ラチェット爪(16)を所定方向に案内する案内部(18a) を備える。 そして、この案内部材(18)の案内部(18a) により係合部材(11)の歯部(18a) に 歯合したラチェット爪(16)がレンチ本体(10)の一方向への回動に伴い挾持部(19) に案内されて挾持されるとともに、レンチ本体(10)の他方向への回動に伴い挾持 部(19)から係合部材(11)の径外方向に案内されるようになされたものである。
【0006】 又、本考案は、以下の特徴を有する締付工具を提供することにより上記課題を 解決する。 本考案の締付工具は、先端側にボルトの頭部やナット等の締付部材(S) に係合 する係合部(11a) を有する二つのスパナ部材(100)(101)と、これらのスパナ部材 (100)(101)を操作する操作部材(3) とを備えてなる。 操作部材(3) は、操作本体(31)と、この操作本体(31)に対し可動する可動部材 (32)とを備える。 少なくとも一方のスパナ部材(100)(101)には、ラチェット爪配設部(14)を有す るレンチ本体(10)と、筒状の係合部材(11)と、ラチェット爪(16)と、ラチェット 爪(16)を係合部材(11)側に常時付勢する付勢手段(17)と、爪案内部材(18)とが備 えられる。 係合部材(11)は、内周部に係合部(11a) を有する。又、外周部に全周に渡って 刻設された複数の歯からなる歯部(11b) を有する。そして、レンチ本体(10)の先 端部に回動自在に配設される。 ラチェット爪(16)は、係合部材(11)の歯部(11b) における複数の歯各々と歯合 し得る複数の歯からなるラチェット歯(16a) を備える。そして、レンチ本体(10) のラチェット爪配設部(14)内に移動可能に配設される。 案内部材(18)は、レンチ本体(10)のラチェット爪配設部(14)内に配設されるこ とにより、係合部材(11)と案内部材(18)との間にラチェット爪(16)を係合部材(1 1)と案内部材(18)とで挾持し得る挾持部(19)が形成される。更に、この案内部材 (18)は、ラチェット爪(16)を所定方向に案内する案内部(18a) を備える。そして 、この案内部材(18)の案内部(18a) により係合部材(11)の歯部(18a) に歯合した ラチェット爪(16)がレンチ本体(10)の一方向への回動に伴い挾持部(19)に案内さ れて挾持されるとともに、レンチ本体(10)の他方向への回動に伴い挾持部(19)か ら係合部材(11)の径外方向に案内されるようになされる。 そして、これらのスパナ部材(100)(101)各々の基端部は、操作本体(31)と可動 部材(32)とに夫々回動自在に取付けられることにより締付部材(S) に係合した両 スパナ部材(100)(101)が可動部材(32)の可動に伴い互いに反対方向の回転力が付 与されるようになされたものである。
【0007】
【作用】
本考案のラチェットレンチにおいては、ラチェット爪部材を、ラチェット爪と 、付勢手段と、案内部材とを備えたものとし、そして、ラチェット爪を、係合部 材の歯部における複数の歯各々と歯合し得る複数の歯からなるラチェット歯を備 えたものとするため、レンチ本体の回転力を複数の歯同士で受けることができる 。これにより、レンチ本体の回転力が大きい場合にも係合部の歯の破損、あるい は、ラチェット爪の折れる恐れの少ないものにできる。又、その際、案内部材に より、係合部材の歯部に歯合したラチェット爪をレンチ本体の一方向への回転に 伴い挾持部に案内して挾持するため、両者の歯合が外れるのを確実に防止できる 。
【0008】 又、本考案の締付工具においては、二つのスパナ部材の内、少なくとも一方の スパナ部材に、筒状の係合部材と、複数の歯からなるラチェット歯を有するラチ ェット歯と、ラチェット爪を所定方向に案内する案内部を有する案内部材とを備 えたものとし、そして、これらのスパナ部材各々の基端部を、操作本体と可動部 材とに夫々回動自在に取付け、可動部材の可動に伴い締付部材に係合した両スパ ナ部材の係合部各々に互いに反対方向の回転力が付与できるものとする。 これにより、例えばボルトにナットを螺合させる場合、各々に両スパナ部材の 係合部各々を係合し、可動部材を可動させれば係合部各々によってボルトとナッ トとを互いに反対方向に回転させることができ、共回りすることなくボルトにナ ットを容易に締め付けることができる。又、その際、ラチェット爪のラチェット 歯及び係合部材の歯部各々の歯ピッチを小さくしておくことにより、歯合させる 際の遊びを少なくすることができ、効率良く係合部材を回転させることができる 。
【0009】
【実施例】
以下、図面を基に本考案の一実施例を具体的に説明する。 図1は、本考案のラチェットレンチの一実施例の平面図である。
【0010】 本考案のラチェットレンチ1は、図1に示すように本体部1aと、この本体部 1aの手前側に取り付けられた長尺状の操作把持部1bとからなる。
【0011】 本体部1aは、図2、図3に示すようにレンチ本体10と、このレンチ本体1 0に回動自在に取り付けられる係合部材11と、ラチェット爪部材12とを備え てなる。
【0012】 レンチ本体10は、係合部材11を嵌合するための係合部材嵌合孔13と、こ の係合部材嵌合孔13の周部における手前側にラチェット爪配設部14としての 空間部を有しており、このラチェット爪配設部14にラチェット爪部材12を収 納できるようになされている。
【0013】 係合部材11は、スパナ本体1aと別体の筒状体のものから構成され、内周に 正12角形に形成された係合部11aを備え、ボルトの頭部やナット等の締付部 材に係合できるようにされている。又、図2に示すように外周の上下中央部には 、全周に渡って歯部11bが備えられている。この実施例における係合部材11 は、外周の直径が約30mm程度の大きさのものからなり、そして、その外周に 合計72個の歯が刻設されることによって歯部11bが形成されている。そして 、この係合部材11は、スパナ本体1aの係合部材嵌合孔13に、スパナ本体1 aの下方側から嵌合された後、スパナ本体1aの上方側に突出した部分に止め輪 4を嵌め入れることによってスパナ本体1aに回転自在に係合されている。従っ て、この係合部材11は、スパナ本体1aに容易に着脱でき、種々の大きさの係 合部11aのものを締付部材の大きさに応じて適宜選択して交換できる。
【0014】 ラチェット爪部材12は、図3に示すように左部と右部とに対をなして配設さ れる二つからなり、左部のものは締付部材を締め付ける際に使用される締付用と してのものであり、右部のものは緩め用としてのものである。これら各々は、ラ チェット爪16と、このラチェット爪16を係合部材11方向に付勢する爪付勢 用コイルバネ17と、鋼球18とから構成されている。この鋼球18は、ラチェ ット爪16を所定方向に案内する案内部材としてのもので、鋼球18の先端の一 部をカットすることによって形成した平滑面18aを有し、この平滑面18aに 沿ってラチェット爪16が滑ることにより所定方向に案内する。そして、鋼球1 8の球状部がスパナ本体1aのラチェット爪配設部14に設けられた鋼球嵌合孔 14aに回転自在に嵌め入れられることによって、係合部材11の歯部11bと 鋼球18の平滑面18aとの間に一方向側にいくにつれ(図示の左側の鋼球18 では右側にいくにつれ、右側の鋼球18では左側にいくにつれ)その間隔の狭く なる挾持部19が形成されている。
【0015】 一方、ラチェット爪16は、係合部材11の対向面にラチェット歯16aが刻 設されている。このラチェット歯16aは、複数の歯から構成されており、係合 部材11の歯部11bにおける複数の歯と同時に歯合できるようになされている 。又、ラチェット爪16の後端面は、平滑面に形成されている。そして、これら の二つの爪部材16、16は、スパナ本体1aのラチェット爪配設部14の左部 と右部とに夫々、その後端面が鋼球18、18各々の平滑面18a、18aに当 接するようにしてラチェット爪配設部14内を略左右方向に移動可能に配設され ている。尚、図1中の9は、ラチェット爪配設部14の上方を覆うカバーを示し 、カバーによってラチェット爪配設部14にセットされた上記ラチェット爪16 、16等のラチェット爪部材12が落ちないようになされている。
【0016】 そして、これら一対のラチェット爪部材12、12は、スパナ本体1aに回動 自在に取付けられた長尺状の切替え操作片5によって選択的に機能する。詳しく は、図2、図3に示すように切替え操作片5の基端部には、円筒状の軸部51が 設けられ、又、この軸部51にはボール52と、ボール52を径外方向に付勢す るコイルバネ53とが備えており、そして、この軸部51がスパナ本体1aに穿 設した切替え操作片用孔14bに嵌挿されることによって回動自在に取り付けら れるとともに、その切替え操作片用孔14bの内周に穿設された二つのボール嵌 合凹部14c、14dに嵌まり込むことによって所定位置で係止できるようにな されている。一方、操作片5の先端部は、下方に突設される突片54を有し、こ の突片54が二つのラチェット爪16、16間におけるラチェット爪配設部14 内に突出され切替え操作片5の回動に伴いラチェット爪16を爪付勢用コイルバ ネ17に抗して係合部材11の径外方向に押し退け、その状態で維持させる。例 えば、この図3に示すように切替え操作片5の突片54を右側に回動し、軸部5 1のボール52を切替え操作片用孔14bの右側のボール嵌合凹部14dに入れ ることにより、右側のラチェット爪16が切替え操作片5の突片54によって右 側に押し退けられた状態となる。従って、この場合は、左方側のラチェット爪1 6のみがスパナ本体1aの回動操作に伴って係合部材11の歯部11bに歯合し うることになる。
【0017】 尚、ラチェット爪部材12、12の切替えは、上記切替え操作片5によるもの に限らず、他の切替え手段によって行っても良く、適宜変更できる。又、この実 施例では、左部と右部に夫々、ラチェット爪部材12、12を配設し、切替え操 作片5によって切替え可能になされているが、左部又は右部の一方にのみにラチ ェット爪部材12を配設するようにしても良い。従って、その場合は、切替え操 作片5も不要である。
【0018】 次に、このラチェット爪部材12によるラチェット機構について説明する。 先ず、ボルト等の締付部材を締め付けるには、切替え操作片5を回動操作して 図3に示すように左側の締付用のラチェット爪16のみが作動する状態とする。 そして、締付部材を係合部11aによって係合した後、スパナ本体1aの操作把 持部1bを左方向(図示のX方向)に回転させると鋼球18がスパナ本体1aに 伴ってX方向に移動しようとする力がかかるため、その力によって平滑面18a がラチェット爪16の後端面を滑り、その結果、ラチェット爪16を挾持部19 に案内する。又、その際、鋼球18は、ラチェット爪16の後端面によって、僅 かながら鋼球嵌合孔14a内を図示のV方向に自転して平滑面18aが係合部材 11側に向く。そして、ラチェット爪16は挾持部19に入るとそれ以上右方に 行けなくなり、係合部材11と平滑面18aとに挾持され、鋼球18に伴って移 動する。従って、このラチェット爪16に歯合した係合部材11もラチェット爪 16によってスパナ本体1aの回転に伴い回転し、締付部材を右回転(図示のX 1方向)させることができる。その際、ラチェット爪16のラチェット歯16a と係合部材11の歯部11bとの歯合が、複数の歯同士が噛み合うことにより行 われているため、大きいトルクがかかった場合にもラチェット歯16aや歯部1 1bに損傷をきたすことがない。よって、例えば図8に示した従来品のように一 つのラチェット爪が係合部材の歯部に噛み合うことにより行われる場合に発生す るラチェット爪の折れ損や歯部の破損が防止できる。又、従来品では、係合部材 の歯部における各歯の歯丈が小さいとラチェット爪が滑ってしまう。しかしなが ら、本考案のように複数の歯同士が噛み合うことにより歯合が行われ、しかも、 ラチェット爪16を挾持部19において挾持するため、スパナ本体1aの回転力 の増加に比例してラチェット爪16を係合部材11の径内方向に押圧することが でき、歯同士の滑りの恐れが少なくなる。又、これにより、各歯の歯丈を小さく 形成しておくことができる。従って、係合部材11の肉厚tを厚くすることがで き、係合部材41の破損の恐れの少ないものにでき、この点でも有利である。
【0019】 又、スパナ本体1aの操作把持部1bを右方向(図示のY方向)に回転させる と左側のラチェット爪16は、締付部材Sによる回転抵抗を受けている係合部材 11の歯部11bに歯合しているために動こうとしないが、鋼球18は、スパナ 本体1aの動きに伴いY方向へ移動するとともに、その平滑面18aがラチェッ ト爪16の後端面に当接しているためにラチェット爪配設部14の鋼球嵌合孔1 4a内を図示のZ方向に自転する。従って、ラチェット爪16は、この鋼球18 のY方向への動きにより後端面が鋼球18の平滑面18aを滑る。又、これと同 時に、鋼球18自身のZ方向の回転力を後端面に受ける結果、点線で示すように ラチェット爪16は、係合部材11の径外方向に移動し、ラチェット爪配設部1 4内の左内側面側に押し退き、係合部材11とラチェット爪16との歯合が外れ る。よって、スパナ本体1aの右方向(図示のY方向)への回転により係合部材 11はその回転力が伝達されることがなく静止状態を保ち、スパナ本体1aが係 合部材11に対し空転する。
【0020】 そして、スパナ本体1aの回転を止めるとラチェット爪配設部14の左内側面 側に押し退いていたラチェット爪16が、爪付勢用コイルバネ17の付勢力によ って係合部材11の歯部11bに押し付けられる。これにより、ラチェット爪1 6のラチェット歯16aと係合部材11の歯部11bとが歯合状態になる。その 際、ラチェット爪16が鋼球18と一体に形成されている場合には、ラチェット 歯16aが鋼球18に相当する部分を軸に回転運動するため、ラチェット爪16 と係合部材11との配設位置やラチェット歯16aあるいは歯部11bのピッチ 等に製作誤差等があるとラチェット歯16aの一部だけが歯部11bに歯合し、 ラチェット歯16a全体を歯合させることができない場合が発生する。しかしな がら、この考案のようにラチェット爪16と鋼球18とを別体のものから構成す ることによってラチェット爪16が爪付勢用コイルバネ17によって鋼球18の 平滑面18aを滑るとともに、ラチェット爪16の係合部材11方向への移動に 伴い鋼球18が図3のV方向に自転することによって略ラチェット歯16a全体 が係合部材11の歯部11bに押し付けられ、係合部材11の歯部11bに略同 時に歯合することができる。
【0021】 一方、締付部材を緩める場合は、切替え操作片5の突片54を左側に回動操作 することによって右側のラチェット爪16を作動可能状態にするとともに、左側 のラチェット爪16を作動不能状態にする。そして、スパナ本体1aの操作把持 部1bを右方向(図示のY方向)に回転させと、右側のラチェット爪16が挾持 部19で挾持されて固定し、締付部材を左回転(図示のY1方向)させることが できる。一方、スパナ本体1aの操作把持部1bを左方向(図示のX方向)に回 転させと、右側のラチェット爪16が、上述した左側のラチェット爪16と同様 に機能し、ラチェット爪16と係合部材11との歯合が外れて空転する。
【0022】 尚、案内部材としての鋼球18は、上記態様のものに限らず、例えば図4に示 すように鋼球18に、上記のものと同様な平滑面18aを形成するとともに、ラ チェット爪16の後端面に、鋼球18の球状部に嵌合しうる球状凹部16bを形 成し、一方、スパナ本体1aのラチェット爪配設部14に平滑状の傾斜面14e を形成したものとし、そして、鋼球18の平滑面18aを、傾斜面14eに当接 するように配設するようにしても良い。この場合の鋼球18は、スパナ本体1a の回動に伴い傾斜面14eを摺動し、一方、ラチェット爪16は、鋼球18の動 きに伴い傾斜面14eに沿って移動するとともに、鋼球18の外周を滑る。
【0023】 又、この実施例では、一つのスパナ部材1に左部と右部に夫々、ラチェット爪 部材12、12を配設し、切替え操作片5によって切替え可能になされているが 、左部又は右部の一方にのみラチェット爪部材12を配設するようにしても良く 、適宜変更できる。又、その場合は、切替え操作片5は不要である。
【0024】 次に、本考案の締付工具について説明する。 この締付工具は、図5、図6に示すように上部スパナ部材100と、下部スパ ナ部材101と、これらのスパナ部材100、101を操作する操作部材3とを 備えてなる。
【0025】 上部スパナ部材100及び下部スパナ部材101は、上記のラチェットレンチ 1の本体部1aに相当する部分が使用されたものであり、上述したラチェット機 構を有する。 操作部材3は、この実施例では、シリンダー本体31と、このシリンダー本体 31に対し軸方向に摺動するロッド32とから構成される油圧シリンダーが使用 され、シリンダー本体31に油圧がかけられるとロッド32がシリンダー本体3 1の先端側に突出するようになされている。
【0026】 シリンダー本体31は、操作部材3における操作本体としてのものであり、先 端部に筒状ケーシング33が備えられている。この筒状ケーシング33は、ロッ ド32の可動範囲以上の長さのものから構成されるとともに、上面に軸方向に沿 う長溝34が設けられている。そして、この筒状ケーシング33の後端がシリン ダー本体31の先端部に、シリンダー本体31の軸方向に伸ばされるようにして 固定されている。又、この筒状ケーシング33の先端部側の下面には、図7に示 すように円筒状の下部スパナ固定部材35が付設されている。この下部スパナ固 定部材35は、下部スパナ部材101を取り付けるためのもので、周面に軸方向 に沿って複数の係止用溝35a…35aを有し、基端が筒状ケーシング33に固 定され、先端側が下方に突設されている。
【0027】 そして、この下部スパナ固定部材35に下部スパナ部材101の取付け用孔1 5が嵌挿されボルトを介することによって下部スパナ部材101が回動自在に取 り付けられる。詳しくは、図6に示すようにボルト7は、軸先端にボール71と 、このボール71を先端側に付勢するコイルバネ72とを備えている。そして、 下部スパナ部材101の後部に穿設した取付け用孔15を、下部スパナ部材10 1の上面が下になるようにして下部スパナ固定部材35の外周に嵌挿した後、ボ ルト7を、下部スパナ部材101に設けたネジ孔に螺合させることによってボー ル71が適宜位置の係止用溝35aに嵌まり込み、これにより、下部スパナ部材 101がスパナ固定部材35に係止されるとともに、ボール71が係止用溝35 aを転がることによって回動する。尚、ボルト7のボール71を嵌め込む係止用 溝35a…35aを適宜選択することにより下部スパナ部材101の係止位置を 上下に調整できる。
【0028】 一方、ロッド32は、可動部材としてのものであり、図7に示すように先端に 円筒状の上部スパナ固定部材36を備えている。この上部スパナ固定部材36は 、上部スパナ部材100を取り付けるためのもので、基端がロッド32に固定さ れ、先端側が上記筒状ケーシング33の長溝34から上方に突設され、ロッド3 2の可動に伴い長溝34に沿って左右方向(図5のX−Y方向)に移動する。又 、上部スパナ固定部材36の先端部には、上部スパナの厚さと略同寸法の長さに 形成された上部スパナ嵌挿部36aが備えられている。そして、図6に示すよう に上部スパナ部材100の取付け用孔15を、上部スパナ部材100の上面が上 になるようにして上部スパナ嵌挿部36aに嵌挿した後、上部スパナ固定部材3 6の上面に設けたネジ孔36bに係止用ボルト8を螺合することによって上部ス パナ部材100が上部スパナ固定部材36に回動自在に取り付けられる。従って 、上部スパナ部材100と下部スパナ部材101とは、操作部材3に取り付けら れた状態では、互いに上下逆さまに配設される。
【0029】 そして、この実施例では、ロッド32は、上部スパナ固定部材36が上記筒状 ケーシング33の下部スパナ固定部材34の上方位置までシリンダー本体31か ら突出するようになされ、その突出状態の平面視においては両スパナ部材1、2 が上下一対をなして重な合うようになされている。
【0030】 尚、操作部材3は、本実施例のように押し用の油圧シリンダーを使用するもの に限らず、例えば引き用の油圧シリンダーを使用しても良い。この場合は、上記 スパナ部材100、101をシリンダー本体31,ロッド32各々の先端に取り 付ければ良い。又、操作本体と可動部材とは、油圧シリンダーによるものに限ら ず、可動部材を操作本体に対し機械的又は電機的に可動するものから構成しても 良く、適宜変更できる。
【0031】 次に、この締付工具の作動について説明する。 この締付工具によって、例えば図5、図6に示すようなフランジFのボルトS 1とナットS2とを互いに締め付けるには、先ず、ボルトS1とナットS2とを 予め手で仮締めしておく。又、両スパナ部材1、2の切替え操作片5は、図3に 示すように突片54を操作し締付用のラチェット爪16が機能するようにセット しておく。そして、シリンダー本体31に取り付けた下部スパナ部材101を、 下方側のボルトS1の頭部に下方側から係合させ、上部スパナ部材100をナッ トS2に係合させるとともに、上部スパナ部材100の取付け用孔15をロッド 32の上部スパナ固定部材36に嵌挿した後、係止用ボルト8を螺合することに よって上部スパナ部材100をロッド32に取り付ける。これにより、セットが 完了する。
【0032】 そして、この状態からロッド32を作動させ、左右方向に往復動させる。ロッ ド32が左方へ突出するとそれに伴い上部スパナ部材100の基端部が左方側( 図示のX方向)に可動させられ、その結果、上部スパナ部材100は、係合部材 11を軸にしてX方向に回動する。その回動に際し、上部スパナ部材100のラ チェット爪16によって係合部材11が共に回転する。これにより、ナットS2 を右回転させ、締め付けることができる。その際、ボルトS1に係合した下部ス パナ部材101は、静止状態を保つため、ボルトS1がナットS2にひきずられ て共回りするようなことが防止される。又、上記上部スパナ部材100を可動さ せる際、ロッド32は、ロッド32の可動方向と、上部スパナ部材100におけ る係合部材11の軸芯と取付け用孔15の軸芯とを結ぶ線p(図5に示す)との なす角度が直角乃至直角に近い角度の範囲を可動するため、最小限の力で上部ス パナ部材100を回動することができ、従って、油圧シリンダーの小さいものを 使用でき、装置全体を小型化できる。
【0033】 一方、左方へ突出したロッド32が引き込まれるとそれに伴い上部スパナ部材 100の基端部が右方側(図示のY方向)に可動させられ、その結果、上部スパ ナ部材100は、係合部材11を軸にしてY方向に回動する。その回動に際し、 上部スパナ部材100のラチェット爪16が係合部材11の歯部11bから外れ 、係合部材11は回転せずに静止状態に維持される。これにより、上部スパナ部 材100が回動してもナットS2が回転するようなことがない。
【0034】 そして、再度、ロッド32が左方へ突出すると上記のように上部スパナ部材1 00の基端部が左方側に可動し、ナットS2を更に締め付けることができる。そ の際、例えば、図8に示した従来品では空転によって一旦両者の歯合が外れた後 、再度歯合する場合、係合部材11の歯ピッチが大きいため、ラチェット爪40 と係合部材11の歯との間に遊びができてしまい、効率が悪くなる。しかし、本 考案では、ラチェット爪16のラチェット歯16a及び係合部材11の歯部11 b各々の各歯が歯ピッチが小さいため、歯合する際の遊びがほとんどなく、効率 良く係合部材11を回転させることができる。
【0035】 以上のように構成することにより、ボルトとナット、ナット同士、あるいはフ ランジボルト等を容易に且つ確実に締め付けることができる。
【0036】 尚、本実施例の締付工具では、上部スパナ部材100と下部スパナ部材101 との双方を、ラチェット機構を有するものから構成しているが、例えば一方のみ にラチェット機構を有するものとし、他方のものをラチェット機構を有しないレ ンチから構成するようにしても良い。
【0037】
【考案の効果】
以上、実施例で述べたように本考案のラチェットレンチは、レンチ本体の回転 力を複数の歯同士で受けることができ、レンチ本体の回転力が大きい場合にも係 合部の歯の破損、あるいは、ラチェット爪の折れる恐れの少ないものにできる。 又、その際、案内部材により、両者の歯合が外れるのを確実に防止できる。 又、本考案の締付工具においては、例えばボルトにナットを螺合させる場合、 各々に両スパナ部材の係合部各々を係合し、可動部材を可動させれば係合部各々 によってボルトとナットとを互いに反対方向に回転させることができ、共回りす ることなくボルトにナットを容易に締め付けることができる。又、その際、ラチ ェット爪のラチェット歯及び係合部材の歯部各々の歯ピッチを小さくしておくこ とにより、歯合させる際の遊びを少なくすることができ、効率良く係合部材を回 転させることができる。。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のラチェットレンチの一実施例の平面図
である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】ラチェットレンチの内部機構を示す要部拡大説
明図である。
【図4】ラチェット爪部材の他の実施例を示す説明図で
ある。
【図5】本考案の締付工具の一実施例の平面図である
【図6】図5の側面図である。
【図7】操作部材の側面図である。
【図8】ラチェットレンチの従来例の一部を断面にした
平面図である。
【符号の説明】
1 ラチェットレンチ 3 操作部材 5 切替え操作片 10 スパナ本体 11 係合部材 11a 係合部 11b 歯部 12 ラチェット爪部材 14 ラチェット爪配設部 16 ラチェット爪 17 爪付勢用コイルバネ 18 鋼球 18a 平滑面 31 シリンダー本体 32 ロッド 33 筒状ケーシング 34 長溝 100 上部スパナ部材 101 下部スパナ部材 S 締付部材

Claims (2)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】レンチ本体(10)と、レンチ本体(10)に回動
    自在に係合される筒状の係合部材(11)と、ラチェット爪
    部材(12)とを備えてなり、 レンチ本体(10)が、ラチェット爪部材(12)を収納し得る
    ラチェット爪配設部(14)を備え、 係合部材(11)が、内周部にボルト,ナット等の締付部材
    に係合し得る係合部(11a) を有し、外周部に全周に渡っ
    て形成された複数の歯からなる歯部(11b) を有し、 ラチェット爪部材(12)が、ラチェット爪(16)と、ラチェ
    ット爪(16)を付勢する付勢手段(17)と、爪案内部材(18)
    とを備え、 ラチェット爪(16)が、係合部材(11)の歯部(11b) におけ
    る複数の歯各々と歯合し得る複数の歯からなるラチェッ
    ト歯(16a) を備え、レンチ本体(10)のラチェット爪配設
    部(14)内に移動可能に配設され、 付勢手段(17)が、ラチェット爪(16)のラチェット歯(16
    a) を係合部材(11)の歯部(11b) 側に常時付勢するもの
    であり、この付勢により両歯(16a)(11b)が歯合できるよ
    うになされ、 案内部材(18)が、レンチ本体(10)のラチェット爪配設部
    (14)内に配設されることにより、係合部材(11)と案内部
    材(18)との間にラチェット爪(16)を係合部材(11)と案内
    部材(18)とで挾持し得る挾持部(19)が形成され、更に、
    この案内部材(18)が、ラチェット爪(16)を所定方向に案
    内する案内部(18a) を備え、 この案内部材(18)の案内部(18a) により、係合部材(11)
    の歯部(18a) に歯合したラチェット爪(16)がレンチ本体
    (10)の一方向への回動に伴い挾持部(19)に案内されて挾
    持されるとともに、レンチ本体(10)の他方向への回動に
    伴い挾持部(19)から係合部材(11)の径外方向に案内され
    るようになされたものであることを特徴とするラチェッ
    トレンチ。
  2. 【請求項2】先端側にボルトの頭部やナット等の締付部
    材(S) に係合する係合部(11a) を有する二つのスパナ部
    材(100)(101)と、これらのスパナ部材(100)(101)を操作
    する操作部材(3) とを備えてなり、 操作部材(3) が、操作本体(31)と、この操作本体(31)に
    対し可動する可動部材(32)とを備え、 少なくとも一方のスパナ部材(100)(101)には、ラチェッ
    ト爪配設部(14)を有するレンチ本体(10)と、筒状の係合
    部材(11)と、ラチェット爪(16)と、ラチェット爪(16)を
    係合部材(11)側に常時付勢する付勢手段(17)と、爪案内
    部材(18)とが備えられ、 係合部材(11)が、内周部に係合部(11a) を有し、外周部
    に全周に渡って刻設された複数の歯からなる歯部(11b)
    を有し、レンチ本体(10)の先端部に回動自在に配設さ
    れ、 ラチェット爪(16)が、係合部材(11)の歯部(11b) におけ
    る複数の歯各々と歯合し得る複数の歯からなるラチェッ
    ト歯(16a) を備え、レンチ本体(10)のラチェット爪配設
    部(14)内に移動可能に配設され、 案内部材(18)が、レンチ本体(10)のラチェット爪配設部
    (14)内に配設されることにより、係合部材(11)と案内部
    材(18)との間にラチェット爪(16)を係合部材(11)と案内
    部材(18)とで挾持し得る挾持部(19)が形成され、更に、
    この案内部材(18)が、ラチェット爪(16)を所定方向に案
    内する案内部(18a) を備え、この案内部材(18)の案内部
    (18a) により、係合部材(11)の歯部(18a) に歯合したラ
    チェット爪(16)がレンチ本体(10)の一方向への回動に伴
    い挾持部(19)に案内されて挾持されるとともに、レンチ
    本体(10)の他方向への回動に伴い挾持部(19)から係合部
    材(11)の径外方向に案内されるようになされ、 これらのスパナ部材(100)(101)各々の基端部が、操作本
    体(31)と可動部材(32)とに夫々回動自在に取付けられる
    ことにより締付部材(S) に係合した両スパナ部材(100)
    (101)が可動部材(32)の可動に伴い互いに反対方向の回
    転力が付与されるようになされたものであることを特徴
    とする締付工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101358959B1 (ko) * 2012-07-04 2014-02-05 한국중부발전(주) 유압 텐셔너용 래칫 어셈블리 및 이를 포함하는 유압 텐셔너
CN114986137A (zh) * 2022-04-27 2022-09-02 沈阳航空航天大学 一种航空装备螺母专用拧紧设备
CN115224628A (zh) * 2022-07-22 2022-10-21 国网河北省电力有限公司邢台市环城供电分公司 一种绝缘固定杆

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