JPH0668439B2 - 積層型熱交換器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は自動車用空調装置のエバポレータなどとして使
用するに適した積層型熱交換器に関する。

［従来の技術］ 上記のエバポレータの極く一般的な構成は、伝熱媒体と
しての冷媒の熱交換用流路をなす多数個の偏平管を、各
々の偏平管の冷媒の出口と入口とが相互に連接されるよ
うにして、且つ隣接偏平管の間に被冷却空気の通路を存
置させた状態のもとに積層合体させて成り立っている。

各偏平管は第５図にその平面形状を例示した如く、アル
ミニウム板製の浅い盆状の２枚の管プレート1Aと1Bを、
向かい合わせにろう付け接合して作成されている（管プ
レートの側面形状は第２図を参照のこと）。

偏平管の内部にはその長手方向の一端部分ｃを残して中
央部仕切壁ｂを設けることによってＵ字形の冷媒流路
（イ）を形成させ、この流路の両末端に冷媒入口1aと出
口1bを設けると共に、流路のほぼ全域に亘って、冷媒の
流れ方向に対して斜めに整列させるようにして多数の迷
路形成用リブｅを打ち出し法によって突設させている。

［発明が解決しようとする問題点］ 上記の如き構造を備えた従来の積層型熱交換器は、同一
形状同一寸法の２枚の管プレート1Aと1Bを貼り合わせる
ことによって、相対向する位置を占めるリブ同志はＸ字
状につき合わされることになり、偏平管内には矢印
（イ）で示されたように冷媒の流れをジグザグ状に蛇行
させる迷路が形作られて、熱交換性能は大きく向上され
る。このことは自動車用空調装置に使われる熱交換器の
ように、設置スペースが極く限られているために、極力
外形をコンパクトにまとめることが求められる場合に特
に重要となる。

そこで本願発明者は、この種の構造を備えた熱交換器の
うちの特にエバポレータについて、更に熱交換性能を向
上させるための方法を様々に模索している過程で次のよ
うな事実に着目した。

即ち、従来のエバポレータを構成する管プレートの正面
図としての第５図を参照しながら説明すると、入口穴1a
から気・液混在の２相状態のもとに偏平管１内に流入し
た冷媒は、迷路形成用リブｅ群に行く手を阻まれて図中
の矢印（イ）で示されたようにジグザク状に蛇行しなが
ら、Ｕ字形流路を進行し、Ｕターン個所に至って進路を
屈曲反転させられる。冷媒流は圧送状態にあるので進路
反転に伴って遠心力が生じ、より質量の大きい液相冷媒
はより大きい遠心作用力を受けて中央部仕切壁ｂから遠
ざかる方向に偏向させられるが、質量の小さい気相冷媒
にはさほど遠心力は作用せず、このためにＵ字形冷媒流
路の下流側流路（図中では仕切壁ｂの右側）内の、仕切
壁ｂに接する下方の破線斜線で示した流域Ｄは冷却仕事
に役立たない気相冷媒だけで占められる状態にもたらさ
れることが判明したのである。つまり冷却仕事の行われ
る場所としてのＵ字形冷媒流路域のうち、流域Ｄ部分は
現実にはエバポレータの熱交換仕事に全く関与していな
かったことになる。

本願発明は上述のごとき知見に基づいてなされたもので
あって、その目的とするところは、屈曲した伝熱媒体流
路が設けられている積層型熱交換器において、熱交換仕
事に関与しない伝熱媒体のよどみ個所の発生を予防する
ための対策が講じられた偏平管備える熱交換器を提供す
るにある。

［問題点を解決するための手段］ 上記の目的を達成するために本発明による積層型熱交換
器は、内部を仕切壁で分割し、屈曲した伝熱媒体流路を
形成させ、この流路の両端に伝熱媒体の入口と出口を設
けた偏平管群を積層合体させて作成された積層型熱交換
器において、前記屈曲された伝熱媒体流路の屈曲部下流
側流路の前記仕切壁に沿って生ずる伝熱媒体流のよどみ
となる個所を、屈曲部上流側流路に短絡させるための連
通孔を前記仕切壁に設ける構成を採用した。

［作用及び発明の効果］ 上記の構成を備えた積層型熱交換器は、各偏平管の入口
から管内に流入し屈曲した流路を出口に向けてたどる伝
熱媒体は、流路の屈曲個所に達して進路を反転させた際
に遠心作用力を受けるので、屈曲部の下流側流路には仕
切壁に沿って伝熱媒体がほとんど流通することのない
“よどみ”個所が形成されようとするが、従来の同種の
積層型熱交換器とは異なって、仕切壁にはこのよどみが
形成される個所と、屈曲前の上流側流路を短絡させる連
通孔が設けてあるので、上流側流路を進行する伝熱媒体
の一部は、この連通孔を通ってよどみを生じやすい個所
に流入してよどみ個所は生じなくなる。

従って本発明による積層型熱交換器は、連通孔を有しな
い点を除いて同一構造同一寸法の従来の積層型熱交換器
に較べて熱交換仕事の行なわれる伝熱面積がかなり増加
し、この増加分だけ熱交換性能が向上する。

［実施例］ 以下に付図に示す実施例に基づいて本発明の構成を具体
的に説明する。

第１図〜第４図はいずれも一実施例熱交換器としての自
動車用空気調和装置に組込まれる冷媒蒸発器（エバポレ
ータ）を示している。

エバポレータは内部にＵ字形の冷媒流路を形成させると
共に、流路の両末端部に冷媒入口ポートＡおよび出口ポ
ートＢを設けた偏平管１を図示のように隣接偏平管のポ
ート部同志を重ね合わせるようにして多数積層し、隣接
偏平管の間のポート部が存在しない部分に形成された熱
交換用空隙Ｃに伝熱面積増大用のコルゲートフィン２を
挟み込んで本体部分を構成させている。

偏平管１は、厚さ0.3〜0.8mm、材質A3003のアルミニウ
ム板などの表面にあらかじめA4004などのろう材をクラ
ッドさせた素材板をプレス成形して第１図〜第２図にそ
れぞれ平面図および断面図として描かれた如き“最中の
皮”形状の２枚の管プレート1Aと1Bを作成し凹入側同志
を対向させて重ね合わせることによって形成される。

管プレート1A（1B）はその長手方向（図では上下方向）
の中心先に沿ってその下端部が欠如した仕切壁ｂを設け
ることによって、偏平管１内には１点鎖線矢印（イ）で
示した屈曲部ｃを通過する冷媒流路を形成させている。
そしてこのＵ字形流路の一方の端部に当る個所において
管プレート1A（1B）に膨出個所を設けて冷媒入口ポート
Ａを形成させると共に冷媒入口孔1aを穿っている。同様
にして流路の他方の端部には冷媒出口孔1bを穿った冷媒
出口ポートＢを形成させている。また管プレート1Aおよ
び1Bには多数の短小な突堤状をなすリブｅを設て、両プ
レートのリブが互いにＸ字状をなして交差しつき合わさ
れた状態のもとにこれら両プレートをろう付け接合させ
る構造を採用することによって、両偏平管１の強度を高
めると共に熱交換性能の向上を図っている。

管プレート1Aと1Bの各周縁部にはろう付け接合面として
のフランジ状部ｄを設けると共に、その下端部ｆを管の
外側に水平に降り曲げ、さらにその先端部ｇを下向きに
折り曲げることによって、この折り曲げ個所に、隣接す
る偏平管１群の相互間に形成される熱交換用空隙Ｃの間
隙を所定巾に保つためのスペーサとしての機能を与えて
いる。

管プレート1A及び1Bに設けたＵ字形流路形成用中央仕切
壁ｂには、第１図に例示されるように、液相冷媒の流路
から取り残されて冷媒流がよどんでしまう可能性の高い
よどみ個所Ｄに向けて、流路のＵターン個所をバイパス
させるようにして上流側流路Ｅから短絡的に下流側流路
Ｆに冷媒流を矢印（ロ）の如く流すための連通孔ａが穿
たれている。

連通孔ａは、管プレート1A（1B）のプレス成形時に仕切
壁ｂを打ち出し加工法によって同時形成する際の、打ち
残し部分に当る。

連通孔ａを設ける個所、個数、その配置間隔、孔の大き
さと孔の方向などは、積層型熱交換器の形状寸法、伝熱
媒体の流速・流量などに如何に応じて最適値が相異して
くるので、個々の熱交換器毎に実験に基づいて決定する
のがよい。

コルゲートフィン２は、極く薄いアルミニウム板をピッ
チ巾約4.0mmの波打ち状に屈曲加工して作成されてお
り、相隣る偏平管１の間の熱交換用空隙Ｃの平面積にほ
ぼ等しい広さを有している。

エバポレータの本体を構成する積層偏平管１群のうち、
最外側位置を占める一対の偏平管は、その構成部材であ
る２枚の管プレートのうちの、外側に位置するプレート
が本体への冷媒の導入用または排出用配管４または５の
組み付け用基盤であるジョイントプレート11に置き代え
られている。

そして両配管４と５の基部は配管取付け用継手６または
７にそれぞれろう付け接合されている。配管取付け用継
手にはその側壁面に冷媒出口穴または冷媒入口穴が設け
てあり、この穴をジョイントプレート11の冷媒入口ポー
ト形成用膨出部に穿たれている冷媒入口穴に対向させる
ようにして継手６をジョイントプレート11に当接させ
る。この継手６の外側からエバポレータの両外側端の保
護板としてのサイドプレート12を当てがわせることによ
って、継手６は両プレート11と12の間で挟持された有様
となる。

他方の配管取付け用継手７も同様にして冷媒出口穴を設
けたジョイントプレート11に当接される。

８と９はそれぞれ配管４と５の先端に取り付けた管継手
である。

上述の如き構成を備えたエバポレータの組立方法を次に
説明する。

水平に据え置かれている仮組立体圧定用治具の下部圧定
盤の上に先ずサイドプレート12を載せ、次いで配管取付
け用継手部６とコルゲートフィン２とをそれぞれその上
に並べて載せ、さらにジョイントプレート11を載せたう
え、管プレート1Aを重ね合わせることによって、冷媒導
入用配管４を組み付けた最外側偏平管１が仮組立され
る。つづいて更にコルゲートフィン２、管プレート1Bお
よび管プレート1Aの重ね合わせを反復して行うことによ
って、エバポレータ本体部分の仮組立を終り、最後に上
記と同様にして冷媒排出用配管５の取り付け部分を組み
付けることによって仮組立体を完成させる。

しかる後、上部圧定盤をその上に載せて押圧用ねじを締
め付けることによって仮組立体に適宜の圧定力を及ぼし
た状態のもとに、580〜600℃に保たれているろう付け炉
内に納め、エバポレータの素材としてのアルミニウム板
の表面にあらかじめクラッドされているろう材の溶融温
度まで加熱し、次いで冷却させることによってエバポレ
ータの各構成部材のすべてが仮組立構造のもとに互いに
接合されてろう付け組立が一挙に完了する。

次に上記エバポレータの作動を第１図及び第４図を参照
しながら説明する。冷媒の導入用配管４から導入された
気・液２層状態の冷媒は、継手６を経て各偏平管１の入
口ポートＡを貫いて進行する間に各偏平管１内に分配さ
れるようにして流入し、Ｕ字形の流路内を迷路形成用リ
ブｅに行く手を阻まれながら図示矢印（イ）の如くジグ
ザグ状に流れる間に、偏平管１の両外表面に接している
熱交換用空隙Ｃ内を図示矢印（ト）の如く吹き抜けてい
る比較的高温の被空調空気から気化の潜熱を奪うことに
よって冷却仕事を果し、自身は強制液化された状態から
再び気相にもどる。

ほぼ気化し尽して出口穴1bから出口ポートＢに排出され
た各偏平管の冷媒は、集合しながら継手７を経て排出配
管５をたどり、その末端に接続されている冷媒圧縮用コ
ンプレッサ（図示略）に吸入される。

ところで既に述べたように、Ｕ字形流路をたどり屈曲部
ｃに至って進路が反転される際に遠心力を受けた冷媒
は、仕切壁ｂから遠ざかる方向に偏向される現象が生ず
ることに基づいて、従来のエバポレータであれば流れの
よどみ個所Ｄが生ずるはずであるが、この実施例エバポ
レータではよどみが発生するはずの個所Ｄを屈曲部ｃの
上流側流路Ｅに短絡的に連通させるための連通孔ａが設
けてあるために、上流側流路を進む冷媒の一部は、流通
抵抗の大きくジグザク状流路（イ）をたどる間に、流通
抵抗が相対的に小さく局部的低圧域となる連通孔ａの個
所に向けて矢印（ロ）で示したように分流させられ、よ
どみ発生条件が備わった流域Ｄに流入して、熱交換仕事
に関与しない気相冷媒だけが存在する冷媒流のよどみ個
所は消滅する。

上記のエバポレータは、熱交換用流路内の唯１個所に仕
切壁を設けてあるが、例えば並行して２個所以上に仕切
壁を設けることによってＳ字形やＷ字形などの複雑な屈
曲流路が形成されている偏平管を備えたエバポレータに
ついても、本発明による技術は適用できる。

また上記実施例では、伝熱媒体として気体と液体との混
合相からなる冷媒を用いる方法について説明されている
が、液層のみからなる伝熱媒体が屈曲した熱交換用流路
をたどらされる場合にも、屈曲部の下流側によどみ個所
は当然生じ得るので、上記のエバポレータ以外にも、こ
れと同種の構造を備えた他の様々な積層型熱交換器に対
して、本発明の技術思想を有効に活用することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第４図は一実施例熱交換器としての自動車用空
調装置のエバポレータを示しており、第１図と第２図は
偏平管の構成要素としての管プレートの平面図とその
（ニ）−（ニ）断面図であり、第３図と第４図はエバポ
レータの部分縦断面図と外観図である。 第５図は従来のエバポレータに用いられる管プレートの
平面図である。 図中 １……偏平管、1A、1B……管プレート、1a、1b…
…伝熱媒体の入口と出口、ａ……連通孔、ｂ……仕切
壁、ｃ……屈曲部、Ｃ……熱交換用空隙、Ｄ……よどみ
個所、Ｅ、Ｆ……上流側及び下流側流路

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】内部を仕切壁で分割し、屈曲した伝熱媒体
   流路を形成させ、この流路の両端に伝熱媒体の入口と出
   口を設けた偏平管群を積層合体させて作成された積層型
   熱交換器において、 前記屈曲された伝熱媒体流路の屈曲部下流側流路の前記
   仕切壁に沿って生ずる伝熱媒体流のよどみとなる個所
   を、屈曲部上流側流路に短絡させるための連通孔を前記
   仕切壁に設けたことを特徴とする積層型熱交換器。
2. 【請求項２】前記屈曲した伝熱媒体流路は、Ｕ字形乃至
   コの字形をなしていることを特徴とする特許請求の範囲
   第１項記載の積層型熱交換器。