JPH0665265B2 - ユリ属植物の種苗の増殖方法 - Google Patents

ユリ属植物の種苗の増殖方法

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JPH0665265B2
JPH0665265B2 JP61048422A JP4842286A JPH0665265B2 JP H0665265 B2 JPH0665265 B2 JP H0665265B2 JP 61048422 A JP61048422 A JP 61048422A JP 4842286 A JP4842286 A JP 4842286A JP H0665265 B2 JPH0665265 B2 JP H0665265B2
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靜史 谷本
高橋  滋
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三井石油化学工業株式会社
第一園芸株式会社
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  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はユリ属植物を特定の方法によつて組織培養する
ことにより、ユリ種苗を大量に増殖する方法に関する。
〔従来の技術〕
ユリ属植物には多くの品種があり、鉄砲ユリ、カノコユ
リやスカシユリなどは園芸植物として鑑賞用に愛好され
ており、また、オニユリ、ヤマユリなどは食用ユリとし
て利用されている。ユリ属を始めとする球根植物の増殖
は、従来、球根分割、リン片ざし、ムカゴの利用や播種
などによつて増殖が行われてきた。しかし、これらの増
殖法では多くの土地と人手を必要とするばかりでなく、
近年ではウイルス病の蔓延によりユリ種苗の生育速度の
低下や花の品質低下が問題となつている。これらの問題
点を改良し、増殖効率の向上を目的として近年植物組織
培養技術を利用した方法も報告されている(例えば特開
昭55-15734号公報)。組織培養技術による増殖は培養組
織片、培養細胞からの不定芽、不定胚、球根等の分化を
経て達成され、またこれらの分化は植物ホルモンである
サイトカイニンとオーキシンの濃度比によつて制御され
ていると考えられてきた(例えばAnnals of Botany
vol 45.321-327、1980年)。しかし、植物ホルモンの
みでは分化が起こらない植物種や分化が起こつたとして
もその頻度が非常に低い植物種も多数存在し、より直接
的かつ効果的な分化誘導方法の確立が期待されている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
本発明者らは従来のユリ属植物の組織培養方法には前記
した種々の問題点のあることを認知した上で、従来法と
は異なる新規な方法によつてユリ属植物を組織培養して
該植物の種苗を従来に比べて効率良く増殖する方法につ
いて検討した。
〔発明の概要〕
その結果、本発明者らはユリ属植物の細胞に作用して該
植物の球根分化を促進させる物質を見出し、これらの知
見を基にしてユリ属植物の種苗を効率良く増殖する方法
を見出した。すなわち本発明の方法によれば、カルシウ
ムイオノフオア、サイクリツクAMPおよびポリアミンか
らなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む培
地を用いてユリ属植物の組織片または培養細胞を組織培
養することを特徴とするユリ属植物の種苗の増殖方法が
提案される。
〔発明の具体的説明〕
本発明の組織培養において使用されるユリ属植物として
は、従来から知られている該属に属する植物を本発明の
方法に用いることができる。該植物として具体的には、
鉄砲ユリ、カノコユリ、スカシユリ、オニユリ、ヤマユ
リ、笹ユリおよび新鉄砲ユリ等を例示できる。
本発明ではユリ属植物の組織培養は該植物の組織片また
は培養細胞を用いて行うことができる。該組織片として
具体的には茎頂、茎、葉、花、種子、子球(リン片
塊)、リン片、根またはその他の組織を小片に切断した
ユリ属植物の組織片を例示することができ、これらの組
織片は通常、次亜鉛素酸ソーダ、エチルアルコールや炎
によつて殺菌した後に使用される。しかし、無菌的に栽
培したユリ属植物を使用する場合には、上記の殺菌操作
は不要である。また、無病・無ウイルスのユリ属植物の
種苗を増殖する場合には、培養材料として生長点近傍組
織、生長点近傍組織から得られたユリ属植物の前述した
組織片などを用いることができる。本発明のユリ属植物
の組織培養において用いることのできる培養細胞とは、
前記組織片を公知の方法によつて組織培養することによ
つて得られるカルス組織を含めた未分化の不定形細胞で
ある。
本発明においてユリ属植物の組織片又は培養細胞を組織
培養してユリ属植物の種苗を形成させるに当たつて以下
に詳述する方法が採用される。
本発明ではユリ属植物の種苗を増殖させる方法として、
カルシウムイオノフオア(Ca2+-ionoph-ore)、サイク
リツクAMP(Cyclic-adenosine-3′‐5′‐monophospha
te)、およびポリアミンの群から選ばれる少なくとも1
種の化合物を添加した培地を用いて組織培養する方法が
用いられる。該方法によればユリ属植物の組織又は培養
細胞が球根へ分化するのが著しく促進される。このよう
な特定の化合物を添加した培地を用いて組織培養を行う
と球根分化が促進されるということは本発明者に係わる
新規な知見である。
本発明では前記したポリアミン等の特定の化合物を添加
するのに使用される培地は、無機成分および炭素源を必
須成分とし、これに植物ホルモン類、ビタミン類を添加
し、更に必要に応じてアミノ酸類を添加した培地であ
る。該培地の無機成分としては、窒素、リン、カリウ
ム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、
鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ
素、コバルト等の元素を含む無機塩を挙げることがで
き、具体的には硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸ア
ンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化カ
ルシウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリ
ウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナト
リウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸
銅、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブデン、ヨウ
化カリウム、硫酸亜鉛、ホウ酸、塩化コバルト等の化合
物を例示できる。
該培地の炭素源としては、シヨ糖等の炭水化物とその誘
導体、脂肪酸等の有機酸およびエタノール等の1級アル
コールなどを例示できる。
該培地の植物ホルモン類としては、例えば、ナフタレン
酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p-クロロフエノ
キシ酢酸、2,4-ジクロロフエノキシ酢酸(2,4-D)、イ
ンドール酪酸(IBA)およびこれらの誘導体等のオーキ
シン類およびベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼ
アチン等のサイトカイニン類を例示できる。
該培地のビタミン類としては、ビオチン、チアミン(ビ
タミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ピリドキサ
ール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、アス
コルビン酸(ビタミンC)、イノシトール、ニコチン
酸、ニコチン酸アミドおよびリボフラビン(ビタミン
B2)などを例示できる。
該培地のアミノ酸類としては、例えばグリシン、アラニ
ン、グルタミン酸、システイン、フエニルアラニンおよ
びリジンなどを例示できる。
本発明の前記培地は、通常は、前記無機成分を約0.1μ
Mないし約100mM、前記炭素源を約1g/ないし約100g
/、前記植物ホルモン類を約0.1mg/ないし約100mg
/、前記ビタミン類を約0.1mg/ないし約150mg/
および前記アミノ酸類を0ないし約1000mg/含ませて
使用されることが望ましい。
本発明に係わる組織培養に用いられる前記培地として具
体的には、従来から知られている植物の組織培養に用い
られている培地、例えば、ムラシゲ・スクーグ('62)
〔Murashige & Skoog〕の培地、リンスマイヤー・ス
クーズ(RM−1965)〔Linsmaier & Skoog〕の培地、
ホワイト('63)〔White〕の培地、ガンボルグ(Gambor
g)のB−5培地、三井のM−9培地、ニツチ・ニツチ
の培地〔Nitch & Nitch〕等に前記した炭素源および
植物ホルモンを添加し、更に必要に応じて前記したビタ
ミン類、アミノ酸類を添加して調製される培地を例示で
きるが、本発明ではこの中でも特にニツチ・ニツチ、リ
ンスマイヤー・スクーズ又はムラシゲ・スクーグの培地
を用いて調製される培地が好ましい。なお、上記した従
来公知の培地の組成に関しては、例えば、竹内、中島、
古谷著の「新植物組織培養」P386〜P391、朝倉書店、19
79年に記載されている。
本発明で使用できる前記培地は液体培地又は寒天を通常
0.5〜1%含有させた固型培地である。
本発明では前記した培地に添加されるカルシウムイオノ
フオアの培地における濃度は通常10-8〜10-4M/、好
ましくは10-7〜10-5M/の範囲にあり、カルシウムイ
オノフオアの中ではA23187を用いることが好ましい。こ
こでA23187とは6S−〔6α(2S*,3S*)、8β(R*)、
9β、11α〕‐5-(methylamino)‐2-〔〔3,9,11-trim
ethyl-8-〔1-methy1-2-oxo-2-(1H-pyrro1-2-y1)ethy
1〕‐1,7-dioxaspiro〔5,5〕‐undec-2-y1〕methy1〕‐
4-benzoxazolecarboxylic acidである。同様にサイク
リツクAMPについては通常は10-9〜10-5M/、好ましく
は10-8〜10-6M/の範囲にある。ポリアミンについて
は通常は10-6〜10-3M/、好ましくは10-5〜10-4M/
の範囲にある。
ここで本発明において培地に加えられるポリアミンとは
ポリメチレン基〔−(CH2)n-、nは整数〕の両端にア
ミノ基及び/又はイミノ基を有する構造単位をもつ化合
物であつて、具体的にはスペルミン〔Bis(aminopropy
l)‐tetramethylenedi-amine;H2N(CH23NH(CH24N
H(CH23NH2〕、スペルミジン〔H2N(CH23NH(CH2
4NH2〕およびプトレシン〔H2N(CH24NH2〕などのテト
ラメチレンジアミン類を例示できる。
本発明では前記したユリ属植物の組織片又は培養細胞
は、本出願人に係わる特願昭60-128348号と同様に酸素
含有気体を通気させた液体培地を用いて組織培養するこ
ともできる。
本発明の方法によれば、ユリ属植物の組織片または培養
細胞からリン片塊状をした子球(小球根を含む)を効率
良く多量に得ることができる。この点について更に言及
すると、本発明の方法によつて得られる子球のリン片塊
は、これを多数のリン片に分離して、これらを更に本発
明に係わる前記した培養方法によつて多数の子球としユ
リ種苗を大量に増殖することができる。尚、本発明で得
られたユリ属植物の子球は通常の栽培を行うと、性質が
一定で健全な植物体に生長し、美しい花を咲かせること
ができる。
〔発明の効果〕
本発明のユリ属植物の組織培養方法を用いればユリ属植
物の組織又は培養細胞から従来法に比べて効率良く高品
質の子球を多量に培養することができ、ユリ種苗を多量
に増殖することができる。
〔実施例〕
以下、実施例を用いて本発明の構成および効果を具体的
に説明する。
実施例1〜5 鉄砲ユリ球根のリン片を70%エタノールおよび次亜塩素
酸ソーダ水溶液(有効塩素量1%)で殺菌して、約2mm
幅に切断した後に、シヨ糖4%、ナフタレン酢酸0.01mg
/、ベンジルアデニン0.02mg/および本発明に係わ
る特定の化合物としてA23187、サイクリツクAMP、スペ
ルミン、スペルミジンおよびプトレシンから選ばれる化
合物を表1に示した濃度で含有するpH6.0の無菌のムラ
シゲスクーグ(1962年)の寒天培地(寒天濃度0.8%)
を調製し、これに先の鉄砲ユリのリン片の1gの切片を10
個添加して、25℃で明所で3週間培養したところ切片10
個当たりの球根の形成数として表1に示す結果を得た。
いずれも処理した試料では分化して得られる球根数は比
較例1に比べて増加した。
比較例1 実施例1において培地として本発明に係わる特定の化合
物を含有しない以外は該実施例と同様にして鉄砲ユリを
組織培養した結果を表1に示した。
比較例2〜3 実施例1において本発明に係わる特定の化合物の代わり
にverapanul、TFP(trifluoperazine)を各々10-4M/
の濃度で培地に添加して実施例1と同様にして培養した
結果を表1に示した。
実施例6〜8 実施例1において材料として鉄砲ユリ葉切片を用いる以
外は該実施例1と同様にして鉄砲ユリを組織培養した結
果、表2に示す結果を得た。いずれも処理した試料では
分化する球根数も比較例4に比べて増加した。
実施例9〜11 実施例1において、材料として鉄砲ユリカルス細胞を用
いた以外は実施例1と同様にして行つた。
実施例12 実施例1において、材料として笹ユリリン片切片を用い
た以外は実施例1と同様にして行つた。
実施例13,14 実施例1において、材料として新鉄砲ユリリン片を用い
た以外は実施例1と同様にして行つた。
比較例4〜7 実施例6〜14において、培地として本発明に係わる特定
の化合物を含有しない以外は該実施例と同様にして鉄砲
ユリ葉切片、鉄砲ユリカルス細胞、笹ユリリン片切片、
新鉄砲ユリリン片切片を組織培養した結果を表2に示し
た。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カルシウムイオノフオア、サイクリツクAM
    Pおよびポリアミンからなる群から選ばれた少なくとも
    1種の化合物を含む培地を用いてユリ属植物の組織片ま
    たは培養細胞を組織培養することを特徴とするユリ属植
    物の種苗の増殖方法。
  2. 【請求項2】カルシウムイオノフオアがA23187である特
    許請求の範囲第(1)項記載の方法。
  3. 【請求項3】ポリアミンがスペルミン、スペルミジン又
    はプトレシンである特許請求の範囲第(1)項記載の方
    法。
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