JPH066488B2 - 針状ペロブスカイト型チタン酸鉛微結晶の製造方法 - Google Patents

針状ペロブスカイト型チタン酸鉛微結晶の製造方法

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JPH066488B2 JP3731585A JP3731585A JPH066488B2 JP H066488 B2 JPH066488 B2 JP H066488B2 JP 3731585 A JP3731585 A JP 3731585A JP 3731585 A JP3731585 A JP 3731585A JP H066488 B2 JPH066488 B2 JP H066488B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、強誘電材料、圧電材料、焦電材料として有用
で、特に粒子形状が針状であるペロブスカイト型チタン
酸鉛微結晶の製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
誘電体磁器の分野においては、電子部品の小型化や用途
の多様化等から、原料となる誘電体酸化物微粒子の新た
なる合成法の開発が進められている。
例えば、多層セラミックコンデンサにおいては、大容量
化とともに小型・軽量化を図るために、セラミック層の
厚みを薄くすることが必要で、原料である誘電体酸化物
の微粒子化が重要な課題となる。また、コンデンサの耐
圧の点からは、焼結段階での異常粒成長や不均一粒子の
生成は好ましくなく、均一微粒子の合成法の開発が急務
となっている。
あるいは、圧電体や焦電体を利用した圧電アクチュエー
タやバイモルフ,焦電型赤外線センサ等においても、同
様な理由から均一微粒子化技術の開発が要望されるとと
もに、特に、センサへの利用を考えた場合には、配向性
セラミックを作成することができれば、高周波スパッタ
法による配向性薄膜に比べて、製造コストの点等で有利
であると考えられる。
一方、誘電体磁器の原料となる誘電体酸化物としては、
数々の優れた特性を有するチタン酸鉛が広く用いられて
いる。そして、このチタン酸鉛(PbTiO3)は、一
般に、酸化鉛(PbO)と酸化チタン(TiO2)とを
混合し、ボールミルで粉砕混合した後、800〜100
0℃で仮焼成し、さらに均一になるまで再度粉砕して、
本焼成を行うという固相反応法により合成されている。
ところで、このような固相反応法によりチタン酸鉛微粒
子を合成する際には、ボールミルを使用するので不純物
が混入し易く、またPbOの蒸発が大きな問題となる。
すなわち、上記仮焼成時の温度が高い程、PbOの蒸発
量が指数関数的に多くなり、得られるチタン酸鉛微粒子
の組成が変わってしまう虞れがある。したがって、これ
を回避するために、PbO雰囲気中で焼成を行う等、熱
処理時に相当な工夫をする必要がある。あるいは、Pb
Oの蒸発を抑えるために、仮焼成の温度を下げ、しかる
後に本焼成を行うことも考えられるが、この場合には、
上記仮焼成終了時に未反応のPbOが相当量残留してお
り、この未反応のPbOが上記本焼成の段階で気化して
しまう虞れもあり、ここでも雰囲気コントロールの必要
がある。このようなことから、上述のような熱処理を利
用した固相反応法によって得られるチタン酸鉛微粒子で
は、Pb1-STiO3というように、ペロブスカイト型構
造におけるAサイト欠陥が生じ易く、この非化学量論性
が圧電特性や焦電特性等に悪影響を及ぼす虞れが高い。
また、仮に化学量論性の高いものが高温熱処理によって
得られると仮定しても、前述のような原料調製手順によ
る限り、焼結性は悪くなり、得られるペロブスカイト型
チタン酸鉛微結晶の粒径は不均一で、粒子の形状にも統
一性は認められない。
したがって、以上のような理由から、固相反応法による
チタン酸鉛の純粋な形での誘電体磁器への応用例はほと
んどなく、圧電特性と焼結性の相反する特性のうちいず
れか一方を重視して実用に供しているのが実情である。
一方、一般式M(OR)nで表される有機金属化合物を
合成し、これから一般式MIII(OR)で表される
複合アルコキシドの合成した後、加水分解するという、
いわゆる金属アルコキシド法も提案されているが、製造
コストや生産性等の点で非常に問題が多い。また、得ら
れる沈澱は高純度のものであるが、非晶質であり、やは
り400℃程度の熱処理を施す必要があるため、PbO
の蒸発の虞れもある。さらに、得られるチタン酸鉛微結
晶の粒子の均一性は良好であるが、粒子形状は球形に近
いものである。
〔発明が解決しようとする問題点〕
このように、従来の合成法では、均一性や純度の高いチ
タン酸鉛微結晶を得ることは困難であり、特に用途に応
じてチタン酸鉛微結晶の形状を制御することは、全く不
可能であった。
そこで本発明は、前述の如き当該技術分野の実情に鑑み
て提案されたものであって、複合材料的見地から用途の
多様化に対応することが可能で、かつ組成の均一性が高
く、高純度なチタン酸鉛微結晶を製造することが可能な
ペロブスカイト型チタン酸鉛微結晶の製造方法を提供す
ることを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者等は、高純度で、均一かつ格子歪の少ない結晶
性チタン酸鉛微粒子を湿式合成することが可能な合成方
法は開発せんものと長期に亘り鋭意研究の結果、pHお
よび合成温度を所定の値に設定して湿式合成を行うこと
により、ペロブスカイト型チタン酸鉛微結晶、パイロク
ロア型チタン酸鉛微結晶あるいは新規な結晶相を有する
針状チタン酸鉛微結晶を合成することが可能で、さら
に、この新規な結晶相を有する針状チタン酸鉛微結晶を
熱処理することにより、針状性を崩すことなくペロブス
カイト型のチタン酸鉛微結晶に相変化させることが可能
であることを見出し、この知見に基づいて本発明をなす
に至った。
すなわち、本発明は、CuターゲットによるX線回折で
2θ=30.71°(θ:回折角)近傍部に回折ピーク
を有し正方晶系の針状結晶であるチタン酸鉛微結晶に対
し、520℃以上で熱処理を施すことを特徴とするもの
である。
本発明において原料として使用されるチタン酸鉛微結晶
は、その組成がPbTiO3でありながら、従来知られ
ていない全く新規なる結晶相(以下、PX相とする)を
有するものである。
上記PX相のチタン酸鉛微結晶を作成するには、例えば
四塩化チタン(TiC4)のような可溶性のチタン化
合物もしくはその加水分解生成物と、鉛化合物の加水分
解生成物もしくはその水溶性塩とを混合し、アルカリ性
の水溶液中で100℃以上の高温で反応させ、生成した
沈澱物を水あるいは温水で洗浄してK+,Na+等のアル
カリ陽イオンやCl-等の陰イオンを完全に除去し、濾
過・乾燥すればよい。
ここで、上記反応時のpHや反応温度が重要であって、
これらpHや反応温度に応じて、上述のPX相のチタン
酸鉛微結晶や、ペロブスカイト相(以下、PE相とす
る)あるいはパイロクロア相(以下、PY相とする)の
チタン酸鉛微結晶が生成する。本発明者等は、実験を重
ね、上記反応時のpHと反応温度を変えて得られるチタ
ン酸鉛微結晶の相図の作成を試みた。結果を第1図に示
す。この第1図から、PY相は低アルカリ高温域から高
アルカリ低温域で安定であり、PE相は高アルカリ高温
域のみ安定で、さらに、PX相は特定の範囲内でのみ生
成することが判明した。なお、この第1図において、
( )内は副生成物的に若干生成するものを表し、AM
は非晶質(アモルファス)状態のチタン酸鉛を表す。
すなわち、PX相のチタン酸鉛微結晶を作成するには、
pH11.2〜13.0、反応温度145℃以上とする
必要があり、pH11.5〜12.5、反応温度180
℃以上とすることが好ましい。このように設定すること
により、PX相がほとんど単一相として生成する。ま
た、反応時間は、1時間以内で充分である。
上記PX相のチタン酸鉛微結晶を合成する上で、出発原
料となるTi化合物もしくはその加水分解生成物を得る
には、TiCl4,Ti(SO42のような塩を水に溶
解させるか、もしくは、その水溶液を、KOH,NaO
H,NH4OH,LiOHのようなアルカリ水溶液で加
水分解させればよい。ただし、Ti(SO42を用いる
ときは、これらアルカリ溶液で加水分解してTiO2
nH2O(酸化チタン水和物)を作成し、デカンテーシ
ョンや濾過を繰り返して、▲SO2- 4▼を除去すればよ
い。
また、鉛化合物としては、酢酸鉛Pb(CH3COO)2
・3H2,硝酸鉛Pb(NO32,塩化鉛PbCl2等が
使用できる。ただし、塩化鉛を使用する場合には、あら
かじめアルカリ性の熱水で処理しておくことが好まし
い。
これら出発原料のモル比は特に問わないが、1:1の割
合で合成することができる。また、このとき、Pbが過
剰の場合には簡単に洗浄できるが、Tiが過剰の場合に
は除去操作が必要である。
上述のように、100℃以上の高温で反応させる場合に
使用される装置としては、いわゆるオートクレーブと称
される装置が使用され、その内容器には、高アルカリ,
高温に耐え得る材料、例えばポリテトラフルオルエチレ
ン(いわゆるテフロン)等を使用することが好ましい。
上記PX相のチタン酸鉛微結晶は、ペロブスカイト相の
チタン酸鉛結晶とも、またパイロクロア相のチタン酸鉛
結晶とも異なる回折パターンを有するものであって、そ
の回折X線スペクトルは第2図に示すようなものであ
る。なお、この第2図にスペクトルを示すチタン酸鉛微
結晶は、前述の製造方法に従い、pH12.0、反応温
度182℃、反応時間1時間の条件で合成したものであ
り、また、X線回折は、Cuターゲットを用い、Niフ
ィルターを使用して測定した。
本発明者等は、この回折パターンの各回折X線ピークの
回折角θの値から、回折結晶面間隔およびミラー指数を
計算により求めた。結晶を次表に示す。
すなわち、上記PX相のチタン酸鉛微結晶は、2θ=2
2.76°,2θ=28.91°,2θ=30.71
°,2θ=32.00°,2θ=43.65°,2θ=
55.40°(θ:回折角)にそれぞれ強い回折X線ピ
ークを有する。また、このチタン酸鉛微結晶は、a=1
2.34Å,c=14.5Åの正方晶であることが確認
された。
また、上記PX相のチタン酸鉛微結晶は、太さ0.1〜
0.2μ,長さ10μ以上の針状粒子であり、合成時の
Pb/Tiモル比は1.01程度と極めて化学量論性が
高い。
本発明においては、このようなPX相のチタン酸鉛微結
晶に対して熱処理を施して、ペロブスカイト相へ相変化
させる。
上記PX相に対する熱処理温度としては、所定の熱処理
温度での保持時間が10時間以上程度の長時間熱処理の
場合には、520℃以上であればよく、550℃以上で
あることがより好ましい。また、最終到達温度での保持
時間がない場合には、熱処理温度が580℃以上であれ
ばPE相(ペロブスカイト相)への相変化が始まる。こ
こで、完全にペロブスカイト相の強誘電相を用いるとき
には、650℃以上の熱処理を施すことが好ましい。一
方、特に活性度が要求される場合には、熱処理温度を低
くする方が望ましく、580℃〜620℃の熱処理温度
が好ましい。
ただし、上記いずれの場合においても、熱処理温度が9
00℃を越えると、粒子形状が球形に近くなる等、針状
性が崩れる虞れがある。したがって、針状性を重要視す
るのであれば、900℃以下であることが好ましい。
〔作用〕
このように、pH11.2〜13.0、温度145℃以
上の条件で湿式合成される新規結晶相であるPX相のチ
タン酸鉛微結晶に対して520℃以上で熱処理を施すこ
とにより、針状性を有するペロブスカイト型のチタン酸
鉛微結晶が合成される。
〔実施例〕
以下、本発明を具体的な実験例から説明する。なお、本
発明がこの実験例に限定されるものでないことは言うま
でもない。
実験例1. ビーカに氷水を用意し、これに四塩化チタン液を静かに
少しずつ滴下した。このとき、初期においては白濁した
が、数時間撹拌を続けると、完全に透明な四塩化チタン
水溶液が得られた。これを250mlのメスフラスコに
移し、標準溶液とした。この標準溶液から10mlを正
確に分取し、過剰アンモニア水で加水分解し、TiO2
・nH2Oを濾別した後、1000℃で熱処理して重量
法から濃度を決定した。ここで、四塩化チタンの濃度は
0.9681mol/であった。
一方、酢酸鉛Pb(CH3COO)2・3H2Oの22.
32gを精秤し、100mlの水に溶解した。
次いでこの酢酸鉛溶液にPb/Ti=1.000となる
ように上記四塩化チタン標準溶液を60.79mlを徐
々に加えた。このとき、PbCl2の白色沈澱が生じる
が、これは後の反応において何等支障とならない。
さらに、あらかじめKOH溶液を作成しておき、これを
加えてpHを調製し、pH=12.0とした。また、こ
のとき全溶液量は400mlとなるようにした。
これをテフロン製のオートクレーブ用容器に移し、オー
トクレーブを用い、電気炉により182℃、反応時間1
時間の条件で合成を行った。
得られた沈澱を温水で充分洗浄し、上澄のpHが7付近
になるまでデカンテーションを繰り返し、不純物を除去
した後、これを濾別し、一昼夜乾燥してPX相のチタン
酸鉛微結晶を得た。
このPX相のチタン酸鉛微結晶の走査型電子顕微鏡写真
(SEM)を第3図に示す。この第3図より、得られる
PX相のチタン酸鉛微結晶は、太さ0.1〜0.2μで
長さが10μ以上の針状粒子であることがわかった。
さらに、このPX相のチタン酸鉛微結晶の組成分析を行
ったところ、Pb/Ti=1.01と非常に化学量論性
が高く、また、K+は0.01重量%程度、Na+やCl
-は測定限界以下であった。
次に、上記PX相のチタン酸鉛微結晶の原料粉体を、成
形することなしに、粉体のまま電気炉中で焼成を行っ
た。熱処理条件は、1時間当たり100℃の昇温速度
で、それぞれ所定の温度で保持時間なしで急冷した。な
お、このとき通常の固相反応で行われているようなPb
Oの雰囲気を外側に設けるようなことは、特に行わなか
った。
このようにして得られた粉体の各熱処理温度における相
変化の様子を第4図に示す。なお、ここでは、PX相の
チタン酸鉛微結晶の相対量を(330)の回折X線ピー
ク高さとして表し、また、PE相のチタン酸鉛微結晶の
相対量を(110)の回折X線ピーク高さとして表し
て、その熱処理温度によってPX相からPE相へ変化す
る様子をグラフ化した。
この結果、570℃付近からPE相への転移が始まり、
650℃でほぼ完全にPX相からPE相へ相転移するこ
とが判明した。
また、得られたPE相のチタン酸鉛微結晶の走査電子顕
微鏡写真を第5図に示す。なお、このPE相のチタン酸
鉛微結晶は、ASTMカード〔6−0452〕に示され
るPbTiO3と一致することから確認した。
この第5図より、熱処理を施すことにより、粒子の長さ
が僅かに短くなった感はあるものの、第3図に示すPX
相のチタン酸鉛微結晶はほとんど形状の変わらない針状
性を有するペロブスカイト型チタン酸鉛微結晶が得られ
ることがわかる。
実験例2. 先の実験例と同様の手法によりPX相のチタン酸鉛微結
晶を合成した。
次いで、このPX相のチタン酸鉛微結晶に対して、温度
を変えて10〜13時間の長時間熱処理を行った。
得られたチタン酸鉛微結晶の各熱処理温度における相変
化の様子を第6図に示す。
この第6図より、長時間熱処理では、520℃以上でP
E相への相転移が始まり、550℃以上でほぼ完全にP
E相へ相転移することが判明した。
〔発明の効果〕
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、非
常に均一で二次凝集のない針状のペロブスカイト型チタ
ン酸鉛微結晶を製造することができる。特に、得られる
チタン酸鉛微結晶は、その粒子形状が針状で、太さ0.
1μm程度,長さ10μm以上と特異な形状を有し、複
合材料,強度材料を兼ね備えた圧電材料としての用途が
期待され、配向焼結の可能性も高い。
また、本発明においては、原料組成がPb/Ti≒1.
0のPX相単相を用いているので、従来の固相反応法と
異なり、熱処理を施しても、得られるペロブスカイト型
チタン酸鉛微結晶の組成変動は非常に少ない。
さらに、本発明によれば、熱処理温度を制御することに
より、得られるチタン酸鉛微結晶の活性度を上げること
もでき、高密度焼結材料として使用可能なチタン酸鉛微
結晶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は湿式合成法におけるpH−温度による相図であ
り、第2図は本発明において原料として使用されるPX
相のチタン酸鉛微結晶の回折X線スペクトルである。 第3図はpH12.0,反応温度182℃,反応時間1
時間で得られるPX相のチタン酸鉛微結晶の走査電子顕
微鏡写真、第4時はPX相のPE相への相転移状態を示
す特性図である。 第5図は得られるPE相のチタン酸鉛微結晶の走査電子
顕微鏡写真である。 第6図は長時間熱処理時のPX相のPE相への相転移状
態を示す特性図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】CuターゲットによるX線回折で2θ=3
    0.71°(θ:回折角)近傍部に回折ピークを有し正
    方晶系の針状結晶であるチタン酸鉛微結晶に対し、52
    0℃以上で熱処理を施すことを特徴とする針状ペロブス
    カイト型チタン酸鉛微結晶の製造方法。
  2. 【請求項2】可溶性チタン化合物もしくはその加水分解
    生成物と鉛化合物とを水溶液中でpH11.2〜13.
    0,温度145℃以上で、且つ添付第1図において正方
    晶系のチタン酸鉛針状微結晶PXが主に生成する領域内
    のpH及び温度条件で反応させ、Cuターゲットによる
    X線回折で2θ=30.71°(θ:回折角)近傍部に
    回折ピークを有し正方晶系の針状結晶であるチタン酸鉛
    微結晶を合成することを特徴とする特許請求の範囲第1
    項記載の針状ペロブスカイト型チタン酸鉛微結晶の製造
    方法。
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