JPH0661371U - 溶接ヒューム吸引トーチ用ノズル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 シールドガスの流れを乱すことなく、アーク
発生点方向からのガス吸引量を多くし、溶接ヒュームを
効率よく吸引除去できる細径の溶接ヒューム吸引トーチ
用ノズルを提供する。 【構成】 溶接ヒューム吸引トーチ用ノズルは、シール
ドガスを吐出するシールドノズル２と、このシールドノ
ズルに外嵌されその先端部がシールドノズル外面に向け
て縮径した吸引ノズル３と、この吸引ノズルの縮径部３
ａに設けられ溶接ヒュームを含むガスを吸引ノズル内に
導入し、シールドノズルとの間隙を介して溶接ヒューム
を含むガスを吸引させる吸引孔６とを有する。そして、
吸引孔６にはガス流路を規定する流路制御部材としての
壁７が設けられている。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は消耗電極式ガスシールドアーク溶接用トーチに設けられ、シールドノ ズルに外嵌された吸引ノズルによって溶接ヒュームを吸引しながら溶接するヒュ ーム吸引トーチ用の吸引ノズルに関する。

【０００２】

【従来の技術】

アーク熱によって金属を溶融し接合させるアーク溶接法では、アークの熱で気 化した金属が微粉末（溶接ヒューム）となって空気中に拡散する。この溶接ヒュ ームは人体にとって有害であるため局所排気装置を溶接トーチとは別に設けてヒ ュームを吸引し、除去する等の対策がなされている。

【０００３】 一方、高能率な溶接法として知られる消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法 では、溶接トーチをアーク発生点の近くに保持しながら溶接する。このため、こ の消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法においては、溶接ヒュームを吸引する 吸引孔を溶接トーチの先端に配置して、ヒュームを吸引しながら溶接する方法が 開発されている。特に、図８乃至１０に示すように、吸引ノズルを溶接トーチ先 端にあるシールドノズルの外側に、このシールドノズルに対して同軸状に配置し 、前記吸引ノズルの先端に吸引孔を設けた吸引トーチは、吸引ノズルが溶接の作 業性を低下させてしまう弊害は他の吸引トーチに比して少ないので、種々の形状 の溶接トーチが実用化されている。

【０００４】 図８乃至図１０に示すように、シールドノズル２の中心部にコンタクトチップ ５が設けられており、このコンタクトチップ５から給電された溶接ワイヤ１がト ーチ先端から溶接部に向けて送給される。そして、シールドノズル２には吸引ノ ズル３が外嵌され、この吸引ノズル３の先端に吸引孔４ａ，４ｂ，４ｃが設けら れている。

【０００５】 溶接ヒュームの吸引効率に大きな影響を与えるこれらの吸引ノズル３の吸引孔 の形状としては、図８に示すように吸引ノズル３の先端部に円状又は長円状の穴 を設けた吸引孔４ａと、図９に示すように吸引ノズル３の先端に半円状の切り欠 きを設け、シールドノズル２との間にできる隙間を利用した吸引孔４ｂと、図１ ０に示すようにシールドノズル２の外周のほぼその全周にわたって設けられてる 吸引ノズル３との隙間を利用した吸引孔４ｃとがある。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、溶接ヒュームを有効に吸引しようとすれば、図８乃至１０に示 す吸引ノズル４ａ、４ｂ、４ｃの形状では以下のような問題がある。

【０００７】 第１に、吸引ノズルをアーク発生点に近づけるほど溶接ヒュームの吸引効率は 高まるが、図９及び図１０のノズルでは、シールドノズルの先端で吸引すると、 図１１に示すように、シールドガスも同時に吸引してしまい、シールドガスの流 れを乱すので、大気中の窒素がアーク発生点又は溶接金属中に侵入してブローホ ールなどの溶接欠陥を発生させる。

【０００８】 第２に、図８のノズルでは、吸引孔４ａの位置をシールドノズル先端から比較 的遠い位置に配置できるので、シールドガス流の乱れは少ないが、溶接ヒューム の吸引効率を高めようとすれば、吸引モータの能力を強化する必要があり、回収 機が大型化するので装置の移動性及び可搬性が劣化する。

【０００９】 第３に、図８のノズルでは、吸引孔での吸入ガスの流線は、吸引孔の面に直角 方向の軸に対してほぼ対象形である。即ち、図１２に示すように、アーク発生点 方向からの吸引だけでなく、反対方向からも同じ力で吸引していることになり、 アーク発生点以外の部分のガスも大量に吸引してしまい、アーク発生点方向から 生じる溶接ヒュームを有効に吸引することはできない。

【００１０】 第４に、図８の例に示すノズルの吸引孔面を、図１３に示すように、アーク発 生点方向に向けると吸引の流線は溶接ヒュームを吸引できる方向になるが、同図 に示すように吸引ノズルの外径が大きくなり、トーチ全体の重量が重くなるほか 、溶接作業者がアーク発生点を見にくくなるほど、溶接トーチとしての操作性が 劣るという欠点がある。

【００１１】 本考案はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、シールドガスの流れを 乱すことなく、アーク発生点方向からのガス吸引量を多くし、溶接ヒュームを効 率よく吸引除去できる細径の溶接ヒューム吸引トーチ用ノズルを提供することを 目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】

本考案に係る溶接ヒューム吸引トーチ用ノズルは、シールドガスを吐出するシ ールドノズルと、このシールドノズルに外嵌されその先端部が前記シールドノズ ル外面に向けて縮径した吸引ノズルと、この吸引ノズルの前記縮径部に設けられ 溶接ヒュームを含むガスを前記吸引ノズル内に導入し、前記シールドノズルとの 間隙を介して前記溶接ヒュームを含むガスを吸引させる吸引孔とを有する溶接ヒ ューム吸引トーチ用ノズルにおいて、前記吸引孔にはヒュームを含むガスの流路 を規定する流路制御部材が設けられていることを特徴とする。

【００１３】

【作用】

本考案においては、吸引孔にヒューム含有ガスの流路を規定する流路制御部材 を設けたので、溶接ヒュームを含むガスは吸引ノズル内に入るときに、その流線 が整えられて、乱れが少ないヒューム含有ガス流が形成される。そして、この流 路制御部材により、ヒューム含有ガス流を吸引ノズルの軸方向に平行な方向に規 制できるので、アーク発生点から吸引孔に向うヒューム含有ガスを優先的に吸引 することができる。このため溶接ヒュームを高効率で吸引することができる。

【００１４】 この場合に、吸引孔自体はアーク発生点に向ける必要がないので、ノズルを小 型化することができる。また、吸引孔は吸引ノズルの縮径部に設けたので、シー ルドガス流を乱すこともない。

【００１５】

【実施例】

以下、本考案の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。

【００１６】 図１は本考案の実施例に係る溶接ヒューム吸引トーチ用ノズルを示す模式的断 面図である。シールドノズル２の中心にコンタクトチップ５が配設されており、 このコンタクトチップ５内を溶接ワイヤ１が挿通してアーク溶接部に送給される 。溶接ワイヤ１はコンタクトチップ５により給電される。

【００１７】 吸引ノズル３はシールドノズル２に外嵌するようにして設けられている。この 吸引ノズル３の先端部はシールドノズル２の外面に向けて縮径しており、この縮 径部３ａに複数個の円形断面の吸引孔６が設けられている。そして、この吸引孔 ６には、流路制御部材としての筒状の壁７が設けられている。この壁７は、吸引 孔６の周縁から吸引ノズル３の軸方向に吸引ノズル内部に向けて延長する。吸引 孔６を設ける位置は、吸引孔６のシールドノズル側端部と、シールドノズル２と の間の距離Ｌが2mm以上となる位置である。

【００１８】 次に、このように、構成された溶接ヒューム吸引トーチ用ノズルの動作につい て説明する。シールドノズル２からシールドガスを吐出し、コンタクトチップ５ から給電された溶接ワイヤ１と被溶接物との間にアークを形成して溶接が開始さ れる。そして、吸引ノズル３とシールドノズル２との間の空間を真空ポンプファ ン等により吸引することにより、溶接点で発生したヒュームがこの周囲のガスと 共に吸引ノズル３内に吸引される。この場合に、溶接ヒュームを含むガスは、筒 状壁７を通過してその流れ方向が吸引ノズル３に平行の方向に規制されるので、 吸引孔６にはアーク溶接点からのヒューム含有ガス流が優先的に導入され、吸引 孔６の周囲又は吸引孔６よりも吸引ノズル３の基端部３ｃ側の部分から吸引孔６ 内に回り込んで侵入するガスの量は極めて少ない。このため、溶接ヒュームを含 むガスを高効率で吸引することができる。

【００１９】 また、本実施例においては、吸引孔６の位置が縮径部３ａの先端部３ｂから2m m以上、即ちシールドノズル２よりも2mm以上離れたものであるから、シールドノ ズル２から吐出されたシールドガス流を吸引孔６から吸引してそのガス流を乱し てしまうことがない。

【００２０】 次に、この吸引孔及び流路制御部材の形成方法について説明する。

【００２１】 図８に示す従来のノズルの吸引孔はプレス又はドリルにより吸引ノズル縮径部 の面を抜き取ることにより行っている。しかし、この吸引孔の穿孔を図２に示す ように、プレスにより縮径部３ａにこの縮径部面に対して略垂直の方向に剪断力 を加えることにより行えば、開口部は吸引ノズル３内に折れ曲がり、吸引孔６の 開口と同時に吸引ガスの流線を規制する流路制御部材としての壁７ａを形成する ことができる。図３はこのようにして形成された吸引孔６及び壁７ａを示す。こ の場合に、図４に示すように、壁７ｂを吸引ノズル３の長手方向に対して平行で なく、傾斜したものにすることもできる。

【００２２】 また、図５、６に示すように、図２に示す壁７ａと同様に面に垂直方向の剪断 力を加えて吸引ノズル３の軸方向に平行の壁７ａを形成した後、吸引孔６の上縁 部の部分を持ち上げて、外側に突出する庇状の壁７ｃを設けてもよい。

【００２３】 次に、図１に示す実施例ノズルの溶接ヒューム吸引効率を図８に示す従来ノズ ルと比較して説明する。図７は横軸にシールドガスとしての炭酸ガス流量（リッ トル／分）をとり、縦軸にヒューム吸引効率（％）をとって実施例ノズルと従来 例ノズルとの吸引効率を比較するグラフ図である。なお、この吸引効率とは、全 ヒューム発生量に対するヒューム吸引トーチによって吸引除去されるヒューム吸 引量の比率である。但し、溶接方法は、下向きビードオンプレート溶接であり、 溶接ワイヤは直径が1.2mmのフラックス入りワイヤである。溶接条件は電流が300 Ａ、電圧が34Ｖ、溶接速度が30cm／分、ワイヤ突き出し長さは25mmである。

【００２４】 この図７から明かなように、実施例ノズルは従来ノズルよりヒューム吸引効率 が高く、特に、両者の差は炭酸ガス流量が多くなるほど大きくなり、本実施例の ノズルのヒューム吸引効率が高いことがわかる。

【００２５】

【考案の効果】

以上説明したように本考案によれば、吸引ノズルを介して吸引するヒューム含 有ガスの流線を吸引ノズルの軸方向に平行に規制することができるので、アーク 溶接点からのヒューム含有ガス流を優先的に吸引ノズル内に導入することができ 、溶接ヒュームの吸引効率を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１の実施例に係る溶接ヒューム吸引
トーチ用ノズルを示す横軸断面図である。

【図２】本考案の第２の実施例に係る溶接ヒューム吸引
トーチ用ノズルを示す横軸断面図である。

【図３】同じくその外観斜視図である。

【図４】本考案の第３の実施例に係る溶接ヒューム吸引
トーチ用ノズルを示す横軸断面図である。

【図５】本考案の第４の実施例に係る溶接ヒューム吸引
トーチ用ノズルを示す横軸断面図である。

【図６】同じくその外観斜視図である。

【図７】本考案の効果を示すグラフ図である。

【図８】従来の第１の吸引トーチ用ノズルを示す外観斜
視図である。

【図９】従来の第２の吸引トーチ用ノズルを示す外観斜
視図である。

【図１０】従来の第３の吸引トーチ用ノズルを示す外観
斜視図である。

【図１１】従来の第２、３のノズルの欠点を説明する模
式的断面図である。

【図１２】従来の第１のノズルの欠点を説明する模式的
断面図である。

【図１３】従来の第１のノズルの欠点を説明する模式的
断面図である。

【符号の説明】

１；溶接ワイヤ ２；シールドノズル ３；吸引ノズル ３ａ；縮径部 ４ａ、４ｂ、４ｃ；吸引孔 ５；コンタクトチップ ６；吸引孔 ７ａ、７ｂ、７ｃ；壁（流量制御部材）

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 シールドガスを吐出するシールドノズル
   と、このシールドノズルに外嵌されその先端部が前記シ
   ールドノズル外面に向けて縮径した吸引ノズルと、この
   吸引ノズルの前記縮径部に設けられ溶接ヒュームを含む
   ガスを前記吸引ノズル内に導入し、前記シールドノズル
   との間隙を介して前記溶接ヒュームを含むガスを吸引さ
   せる吸引孔とを有する溶接ヒューム吸引トーチ用ノズル
   において、前記吸引孔にはガス流路を規定する流路制御
   部材が設けられていることを特徴とする溶接ヒューム吸
   引トーチ用ノズル。
2. 【請求項２】 前記流路制御部材は、前記吸引孔から前
   記吸引ノズル内部に向けて前記吸引ノズルの軸方向に延
   びる流路壁を有することを特徴とする請求項１に記載の
   溶接ヒューム吸引トーチ用ノズル。