JPH0654753U - コークス炉補修用の断熱ボックス - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 作業スペース内の温度を下げ、煉瓦積み時の
作業環境を改善する。 【構成】 外形を強度構造部材で形成し、底部以外の壁
を断熱材で形成し、下部に空気を送る流路を設けてい
る。そして、上記断熱材の壁に冷却媒体を流通させる細
管を内蔵している。別の態様では、側壁を複数の断熱パ
ネルで形成し、この断熱パネルに冷却媒体を流通させる
細管を内蔵する。上記各断熱パネルに内蔵した細管をそ
れぞれ個別に炉外の冷却媒体供給管、排出管に接続すれ
ば、冷却効率がよくなる。 【効果】 断熱材の壁の内面温度が大幅に低くなり、作
業スペース内の温度が長時間連続作業ができる状態まで
下がる。このため、作業環境が改善されると共に、補修
作業時間を大幅に短縮できる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、コークス炉炭化室の煉瓦を熱間で補修する際に使用する断熱ボック スに関する。

【０００２】

【従来の技術】

コークス炉の炭化室には、様々な損傷が発生し、この中、磨耗、目地切れ、亀 裂欠け等の損傷については、ドライシーリング、吹付け、溶射等の方法によって 補修されているが、煉瓦が脱落した場合、その壁面の補修は、煉瓦の差し替え、 積替えによる方法によらなければならない。そして、この補修に際しては、現在 のところ、作業者が炉内に入って直接煉瓦積みをする作業をしなければならない 。

【０００３】 しかし、煉瓦積みを行う場合、コークス炉の特性による制約があり、炭化室の 温度を所定の値以下に下げることはできない。即ち、コークス炉は、約５７０℃ 付近で結晶形が変態する硅石煉瓦で構築されているので、炉壁をこの温度付近よ りも下げた状態にすると、煉瓦に大きな収縮が起こって、割れが生じ、窯全体の 損傷を引き起こす。又、補修する炭化室の温度を下げ過ぎると、隣接する窯の操 業低下を招くことになる。このため、煉瓦積みによる炭化室の補修は、熱間で行 い、且つ短時間で終了させることが要求される。

【０００４】 炭化室の補修を熱間で行う際には、炭化室内を５００℃〜６００℃まで降温さ せた後、炭化室内の壁面損傷箇所まで断熱ボックスを挿入し、この断熱ボックス 内へ作業者が入って煉瓦積みを行う。従来から使用されている断熱ボックスとし ては、図７に示すものがある。

【０００５】 図７は従来の断熱ボックスの斜視図、図８は断熱ボックス内へ作業者が入って 煉瓦積みをしている状態を示す図である。この断熱ボックスは鋼製の強度構造部 材と、石膏ボード、岩綿、セラミックファイバーなどの断熱材によって箱形に形 成されている。４は作業者が入る作業スペース、５は煉瓦積みをするために設け られた作業用の開口である。又、６は送気ダクトであり、７は作業スペース４の 床に設けられた通気孔である。そして、図８における８はブロワー、９は排気ダ クトである。

【０００６】 このように、作業スペース２が、炭化室の壁との間に断熱材を配置して区画し ただけの状態では、その温度上昇を十分に抑制することはできないので、炉外か ら作業スペース２内へ空気（季節によっては冷却した空気）を送り込むようにな っている。

【０００７】 なお、炉外から空気を送らなければならないのは、断熱材によって形成される 壁の厚さが制限され、必要厚さの断熱壁を設けることができないためである。断 熱効果を上げるためには、断熱壁の厚さを増す必要があるが、炭化室の幅が狭く ４００〜４７０ｍｍしかないため、壁の厚さを増すと、作業スペースがますます 狭くなり、煉瓦積み作業が非常にやりにくくなる。

【０００８】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、従来の断熱ボックスにおいては、作業スペース内の温度上昇を抑制す るために、冷風を送り込むようになっているが、上述のように、その断熱壁の厚 さには制限があるので、作業スペース壁の内面温度は十分には下がらない。そし て、壁の内面温度が高いままの状態で冷風を送り込んでも、作業スペース内は未 だ相当の高温状態になる。このため、作業スペース内は作業者が極く短時間しか 入っていられないほどの苛酷な温度条件になる。

【０００９】 本考案は、作業スペース内の温度を下げ、煉瓦積み時の作業環境を改善するこ とができるコークス炉補修用の断熱ボックスを提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するために、本考案においては、断熱材よりなる壁に冷却媒 体を流通させる細管を内蔵している。 又、断熱材よりなる側壁を複数の断熱パネルによって形成し、この断熱パネル に冷却媒体を流通させる細管を内蔵してもよい。 上記各断熱パネルに内蔵した細管はそれぞれ個別に炉外の冷却媒体供給管及び 排出管に接続するのが好ましい。

【００１１】

【作用】

作業スペースの断熱材の壁に細管を内蔵しておき、この細管に冷却媒体を流通 させると、壁の厚さを特別に厚くしなくても、壁の内面温度を低い状態に保つこ とができる。このため、断熱壁からの輻射熱が極度に減少し、作業スペース内の 温度はあまり上昇しなくなる。このようにして、作業スペースの内面温度を低く した上で、更に、冷風を送り込むと、作業スペース内は正常な作業ができる状態 に保たれる。

【００１２】 冷却媒体を流通させる細管の両端は、それぞれ供給管、排出管に接続されてい る。断熱壁を複数の断熱パネルで形成した場合、各断熱パネルの細管を、それぞ れ個別に炉外の冷却媒体供給管及び排出管に接続すると、冷却効率がよくなる。

【００１３】

【実施例】

図１〜図３は本考案の一実施例を示し、図１は概略の正面図、図２は概略の断 面図、図３は図１の断熱ボックスを構成するユニットの概略正面図である。 本実施例の断熱ボックス１は複数の断熱ボックスユニットが連結された構成に なっており、図１においては、断熱ボックスユニット１ａと断熱ボックスユニッ ト１ｂが止め金具１０によって連結された例が示されている。ユニット１ａ、ユ ニット１ｂは、鋼の強度構造部材によって形作られ、その壁はセラミックファイ バーのボード、セラミックファイバーをフェルト状にしたもの等の断熱材で形成 されている。壁の厚さは５０〜１００ｍｍ程度である。ユニット１ａは炭化室へ 挿入して補修箇所に位置させるものであり、ユニット１ｂと連結する１面だけが 開放された構造になっている。

【００１４】 又、作業者が煉瓦積みをするための開口１１が設けられている。１２は開口１ １を開閉するための引き戸であり、断熱材よりなる。連結するユニットの数は、 炭化室の補修位置（ボックスの挿入距離）によって異なり、窯口から近い箇所を 補修する場合には１基でよく、ユニット１ａを窯口から遠い箇所まで挿入する場 合には複数基にする。３０は断熱ボックス１を載せて炭化室内へ挿入するための 受け台車、３１はローラーコンベアである。又、３２は炭化室の炉敷、３３は炉 外に配置された作業デッキを示す。このように、本実施例の断熱ボックスは、ユ ニット１ａに必要に応じてユニット１ｂを１基以上連結し、順次、炉内へ挿入す る構成になっている。

【００１５】 図２、図３に示すように、各ユニットの壁内には、冷却媒体である水を流通さ せるための金属細管１３がヘアピン状に埋め込まれている。金属細管１３は、径 が５〜２０ｍｍで、配置間隔は５０〜１００ｍｍになっている。細管１３の入口 及び出口には、ワンタッチで接続できる管継手１４，１５が取付けられており、 この管継手１４，１５には、これと継合する同種類の管継手を備えた冷却水供給 管１６、冷却水排出管１７がそれぞれ接続されている。図２における４は作業ス ペース、６は図示しないブロワーから導入される冷気を作業スペース４へ送り込 む送気ダクトである。

【００１６】 図４、図５は本考案の他の実施例を示し、図４は概略の部分正面図、図５は概 略の断面図である。図４及び図５において、図１〜図３と同じ構成の部分には同 一の符号を付し説明を省略する。本実施例においては、側壁が複数の断熱パネル ３によって構成されている。この断熱パネル３はセラミックファイバーのボード 、セラミックファイバーをフェルト状にしたもの等の断熱材で形成されている。 又、断熱パネル３には、上述の実施例の場合と同様に、水を流通させるための金 属細管１３が埋め込まれている。各断熱パネル３に埋め込まれた細管１３は、管 継手１４，１５によって、それぞれ個別の冷却水供給管１６、冷却水排出管１７ に接続されている。即ち、各断熱パネル３はそれぞれ個別の冷却水流路によって 冷却される。

【００１７】 なお、冷却効率をよくするためには、断熱パネル３の冷却水流路は個別にした 方がよいが、断熱パネル３が小さく、細管１３の径が小さく、或いは細管１３の 配置間隔が狭くなっているような場合には、適当数の断熱パネルの細管１３を接 続し、冷却領域をブロック化してもよい。

【００１８】 上記断熱ボックスの側壁は、図６に示すように、断熱パネル３と鋼製の支持枠 ２によって構成されている。支持枠２は、ベースプレート２０の上に断面がＨ形 の案内部材２１が固着され、この案内部材２１に連結部材２２が固着されて、格 子状に形成されている。又、上記断熱パネル３は、上部に溝形の凹部１８が形成 され、下部にこの凹部１８に嵌め合わせられる形状の凸部１９が形成されている 。そして、Ｈ形をなす案内部材２１の凹部に、複数の断熱パネル３を順次嵌め込 んで一体にする。なお、この断熱ボックスにおいは、煉瓦積みをするための開口 を設けた断熱パネルを準備しておき、この断熱パネルを補修位置に配置して側壁 の組み立てを行う。このため、断熱パネルを作り替えることなく、適宜、任意の 箇所に開口を設けることができる。

【００１９】 次に、図２の断熱ボックスを使用し、炭化室の煉瓦積替えを行った結果につい て説明する。この場合、炭化室の幅は４３０ｍｍ、その補修時の壁面温度は約６ ００℃、煉瓦が脱落した補修箇所の大きさは幅３００ｍｍ、高さ２００ｍｍであ った。使用した断熱ボックスは、大きさが幅３８０ｍｍ、高さ２５００ｍｍ、奥 行き２０００ｍｍであり、側壁を形成する断熱パネルはセラミックファイバーよ りなる厚さが５０ｍｍのものであった。断熱パネル内には、角形で４０ｍｍ×８ ０ｍｍの金属管を３００ｍｍの間隔で配置した。又、金属管に流通させる冷却水 は個別の冷却水流路から供給した。そして、断熱ボックス下部の送気ダクトへ、 約２２℃の空気を４０００ｍ³ ／時の流量で吹き込んだ。

【００２０】 上記条件で補修を行ったところ、作業スペース内の温度は約３０℃に抑えるこ とができた。又、補修の所要時間は、炭化室内への断熱ボックスの設置（挿入） １時間、煉瓦積替え作業２．５時間、断熱ボックスの取り出し０．５時間で、合 計４時間であった。

【００２１】 これに対し、従来の断熱ボックスを使用した場合には、作業スペース内の温度 を約６０℃以下にすることはできず、全補修時間は８時間であった。特に、煉瓦 積替え作業には６時間を要した。

【００２２】 上記のように、本考案の断熱ボックスを使用すると、作業スペース内の温度を 、長時間連続して作業ができる３０℃程度まで下げることができ、補修時間を大 幅に短縮することができる。

【００２３】

【考案の効果】

本考案においては、断熱材よりなる壁に冷却媒体を流通させる細管を内蔵して いるので、壁の内面温度が大幅に低くなり、従って、作業スペース内の温度を長 時間連続作業ができる状態まで下げることができる。 本考案を使用すれば、作業環境が改善されると共に、補修作業時間が大幅に短 縮される。

【００２４】 更に、断熱材よりなる側面の壁を複数の断熱パネルによって形成し、この断熱 パネルに内蔵した細管をそれぞれ個別の冷却媒体供給手段、排出手段に接続して 冷却媒体の流路を個別に設ければ、冷却効率がよくなり、作業環境が一層改善さ れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例に係る概略の正面図である。

【図２】本考案の一実施例に係る概略の断面図である。

【図３】図１の断熱ボックスを構成するユニットの概略
正面図である。

【図４】本考案の他の実施例に係る概略の部分正面図で
ある。

【図５】本考案の他の実施例に係る概略の断面図であ
る。

【図６】図４の断熱ボックスの側壁の構成を示す図であ
る。

【図７】従来の断熱ボックスの斜視図である。

【図８】断熱ボックス内へ作業者が入って煉瓦積みをし
ている状態を示す図である。

【符号の説明】

１ 断熱ボックス １ａ，１ｂ 断熱ボックスのユニット ２ 支持枠 ３ 断熱パネル ４ 作業スペース ５ 煉瓦積み作業のための開口 ６ 送気ダクト １１ 煉瓦積み作業のための開口 １３ 冷却媒体を流通させるための細管 １６ 冷却媒体の供給管 １７ 冷却媒体の排出管

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 亀川 啓治 東京都千代田区丸の内一丁目１番２号 日 本鋼管株式会社内

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 強度構造部材によって外形が形成され、
   底部以外の壁が断熱材よりなり、下部に空気を送る流路
   が設けられた断熱ボックスにおいて、前記断熱材よりな
   る壁に冷却媒体を流通させる細管が内蔵されていること
   を特徴とするコークス炉補修用の断熱ボックス。
2. 【請求項２】 断熱材よりなる側壁が複数の断熱パネル
   によって形成され、この断熱パネルに冷却媒体を流通さ
   せる細管が内蔵されていることを特徴とする請求項１記
   載のコークス炉補修用の断熱ボックス。
3. 【請求項３】 各断熱パネルに内蔵された細管がそれぞ
   れ個別に炉外の冷却媒体供給管及び排出管に接続されて
   いることを特徴とする請求項２記載のコークス炉補修用
   の断熱ボックス。