JPH0653818B2 - 電気伝導性有機高分子系材料 - Google Patents

電気伝導性有機高分子系材料

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JPH0653818B2
JPH0653818B2 JP23788085A JP23788085A JPH0653818B2 JP H0653818 B2 JPH0653818 B2 JP H0653818B2 JP 23788085 A JP23788085 A JP 23788085A JP 23788085 A JP23788085 A JP 23788085A JP H0653818 B2 JPH0653818 B2 JP H0653818B2
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静邦 矢田
之規 羽藤
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鐘紡株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は電気伝導性有機高分子系材料に係り、更に詳し
くはフェノール樹脂及び熱処理されたフェノール繊維か
らなる複合成形体の熱処理物である電気伝導性有機高分
子系材料に関する。
(従来の技術) 高分子材料は成型性、軽量性および量産性に優れてい
る。そのため高分子材料のこれらの特性を生かして、電
気的に半導性を有する有機高分子材料がエレクトロニク
ス産業を始めとして多くの産業分野において希求されて
いる。初期の有機半導体はフィルム状あるは板状体等に
成形することが困難であり、又n型あるいはp型の不純
物半導体としての性質を有していなかったため、用途的
にも限定されていた。近年、比較的成形性に優れた有機
半導体が得られるようになり、しかもこれらの半導体に
電子供与性ドーパントあるいは電子受容性ドーパントを
ドーピングすることによってn型あるいはp型の有機半
導体とすることが可能となった。そのような有機半導体
の代表例として、ポリアセチレンがある。この有機半導
体は約10-5(Ω・cm)-1の電気伝導度を有しているがI2
AsF5等の電子受容性ドーパントあるいはLi、Na等の電子
供与性ドーパントをドーピングすることによって電気伝
導度を大巾に向上させることができ、102〜103(Ωcm)-1
の伝導度が得られている。ところがポリアセチレンは酸
素によって酸化され易い欠点がある。このため空気中で
取り扱うことが困難であり、工業材料としては実用性に
欠ける。
また、本願と同一出願人の出願にかかる特開昭58−1
36,649号公報には、(A)炭素、水素および酸素か
ら成る芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって、水素
原子/炭素原子の原子比が0.60〜0.15のポリア
セン系骨格構造を含有する不溶不融性基体と、(B)電子
供与性ドーピング剤又は電子受容性ドーピング剤とから
成り、(C)電気伝導性が未ドープの該基体よりも大であ
る電気伝導性有機高分子系材料が開示されている。上記
不溶不融性基体は、耐熱性耐酸化性に優れており、しか
も上記のとおり電子供与性ドーピング剤あるいは電子受
容性ドーピング剤によってドーピーグが可能であり、p
型あるいはn型の性質を示す有機半導体を与える。
また、本願と同一出願人の出願にかかる先願の特願昭5
9−8152号は未だ未公開であるが、同先願におい
て、 (A) 炭素、水素および酸素からなる芳香族系縮合ポリ
マーの熱処理物であって、水素原子/炭素原子の原子比
が0.60〜0.15であり、かつBET法による比表
面積値が600m2/g以上であるポリアセン系骨格構造
を含有する不溶不融性基体と、 (B) 電子供与性ドーピング剤又は電子受容性ドーピン
グ剤とからなり、 (C) 電気伝導度が未ドープの該基体よりも大であるこ
とを特徴とする電気伝導性有機高分子系材料が提案され
ている。
この有機高分子系材料は比表面積値が600m2/g以上
であるため、比較的イオン半径の大きなドーパント例え
ばClO4 -、BF4 -等でもスムーズにドーピングしうる。し
かしながら、この先願においてもポリアセン系骨格構造
を有する不溶不融性基体からなる電気伝導性高分子系材
料は機械的強度に問題があり、その点で実用化は未だ不
充分であった。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明の目的は機械的強度に優れた電気伝導性有機高分
子系材料を提供することにある。
本発明の他の目的は耐熱性,耐酸化性に優れた電気伝導
性有機高分子系材料を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は電気供与性ドーパントおよび
/または電気受容性ドーパントをドーピングした電気伝
導性有機高分子系材料を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は比較的イオン半径の大きな電
子供与性ドーパントおよび/または電子受容性ドーパン
トでさえもスムーズにドーピングし得る電気伝導性有機
高分子系材料を抵抗することにある。
本発明のさらに他の目的はフィルム状,板状等の成形体
である電気伝導性有機高分子系材料を提供することにあ
る。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明
らかとなろう。
(問題点を解決するための手段) 上述の目的は、150℃以上の温度で熱処理したフェノ
ール繊維もしくは繊維構造物の熱処理物と、フェノール
樹脂と塩化亜鉛とから形成された複合成形体を、非酸化
性雰囲気中で熱処理して得られた水素原子/炭素原子の
原子比が0.05〜0.6であり、且つBET法による
比表面積値が600m2/g以上であるポリアセン系骨格
構造を有する不溶不融性基体からなる電気伝導性有機高
分子系材料によって達成される。
フェノール繊維とは例えばノボラック型フェノール樹脂
を溶融紡糸したものを酸又は塩基性触媒下でホルムアル
デヒド等の硬化剤によって架橋した繊維があり、またフ
ェノール繊維構造物とは上記フェノール繊維からなる構
造物、例えば編織物不織布等が挙げられる。
繊維もしくは繊維構造物の熱処理物はフェノール繊維も
しくは繊維構造物を150℃以上の温度で10分〜10
時間熱処理することにより得られるが、この熱処理は非
酸化性雰囲気下あるいは酸化性雰囲気下のいずれの条件
でもよいが、非酸化性雰囲気下で行うのがより好まし
い。熱処理温度が150℃未満の場合には繊維もしくは
繊維構造物の熱処理物(以下繊維状熱処理物と略記す
る)、フェノール樹脂及び塩化亜鉛からなる複合成形体
を非酸化性雰囲気下で熱処理しポリアセン系骨格構造を
有する不溶不融性基体からなる成形体を得ようとすると
き、成形体にクラックが発生する割合が増加する傾向が
ある。そしてこれらの素材から構成される複合成形体は
例えば繊維状熱処理物、未硬化フェノール樹脂及び塩化
亜鉛を適当な条件下で混合成形し、硬化することによっ
て得られる。混合方法としては上記した3成分が均一に
混合できるならば乾式混合、湿式混合等どのような方法
でもよいが、充分均一に混合するには適当な溶媒、例え
ば水、メタノール、アセトン等を加えることによって未
硬化フェノール樹脂及び塩化亜鉛を溶液状にした後、繊
維状熱処理物を添加し、混合するのがよい。又繊維状熱
処理物が編織物あるいはフェルト状の場合にはこれらに
前記した未硬化フェノール樹脂及び塩化亜鉛の溶液を含
浸させてプリプレグを作ればよい。成形方法としては一
般に樹脂成形品を作る場合と同様な方法で可能である
が、例えばフィルム状を得たい場合に上記した3成分混
合スラリーをアプリケータによって適当な厚みに成膜す
ればよい。又板状体を得る場合では一般によく知られて
いるように壁枠を作って加圧成形すればよい。又上記し
たプリプレグを金属等の平板の間に入れ加圧成形すれば
適当な厚みの板が得られる。硬化方法としては未硬化フ
ェノール樹脂としてレゾールを用いる場合では成形時あ
るいは成形後に50〜200℃の温度で熱硬化するのが
簡便である。特に壁枠等を使用してプレス成形する方法
では成形と同時に加熱して硬化することが出来る。又未
硬化フェノール樹脂としてノボラックを使用する場合に
は適当な硬化剤、例えばヘキサメチレンテトラミンの如
きそれ自体がホルムアルデヒドの発生剤であると同時に
有機塩基発生剤である硬化剤をあらかじめ混合してお
き、成形後、加熱硬化すればよい。
この様にして得られた複合成形体は繊維状熱処理物、フ
ェノール樹脂及び塩化亜鉛から成っており、フィルム
状、板状等任意の形状を有した、機械的強度に非常に優
れた成形体であり、適当な大きさに切断したり、円形、
矩形等の形状に加工することが可能である。この複合成
形体は後に述べる方法によってポリアセン系骨格構造を
有する不溶不融性基体とするのであるが、この基体の機
械的強度は複合成形体中の繊維状熱処理物によって発揮
されるものである。即ち、繊維状熱処理物により不溶不
融性基体からなる電気伝導性有機高分子系材料の強度が
大巾に向上するのである。
複合成形体における繊維状熱処理物は極少量でも効果は
認められるが好ましくは繊維状熱処理物/フェノール樹
脂の重量比が0.05以上である。0.05未満では得
られるポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体
の強度増加に乏しい。また塩化亜鉛はこれら複合成形体
を後に示す方法によって不溶不融性基体とするとき、基
体の比表面積値(BET法)を高くする効果を発現し、
その量は少量でもよいが好ましくは塩化亜鉛/(フェノ
ール樹脂+繊維状熱処理物)の重量比が0.5〜7であ
る。0.5未満では塩化亜鉛による添加効果に乏しく不
溶不融性基体の比表面積値の増大にはあまり寄与しな
い。又、塩化亜鉛の量が7を越える場合にはフェノール
樹脂の絶対量が少なくなり、フィルムあるいは板状等の
成形が困難になり、又未硬化フェノール樹脂の硬化反応
が起り難くなり、問題点が生じる。
次にこれら複合成形体は非酸化性雰囲気中で熱処理して
水素原子/炭素原子の原子比が0.05〜0.6好まし
くは0.15〜0.60のポリアセン系骨格構造を有し
た不溶不融性基体を製造する。この際熱処理温度は通常
400〜800℃であり、熱処理の好ましい昇温条件は
複合成形体の組成比、硬化条件あるいはその形状によっ
て多少異なるが、一般には室温から300℃程度の温度
までは比較的大きな昇温速度とすることが可能であり、
例えば100℃/時間の速度とすることも可能である。
300℃以上の温度となると、フェノール樹脂及び繊維
状熱処理物の熱分解が開始し、水蒸気、水素、メタン、
一酸化炭素等のガスが発生し始めるため、充分に遅い速
度で昇温せしめるのが有利である。
このようにして得られたポリアセン系骨格構造を有した
基体は50〜100℃の温水にて洗浄し、基体中に残存
している塩化亜鉛を除去し、乾燥する。
この様にしてポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融
性基体からなる電気伝導性有機高分子系材料を得るので
あるが、この基体の水素原子/炭素原子の原子比が0.
6を越える場合には未だポリアセン系骨格構造が発達し
ていないため、電子の共役系が局存化していると考えら
れ、ドーパントをドーピングしても電気伝導度が増大せ
ずn型あるいはp型の半導体とならない。又H/Cの原
子比が0.05未満の場合にはポリアセン系骨格構造は
充分に発達し、電子の共役系は充分に非局在化して、ド
ーパントはドーピングされるがドーピング前の基体自体
の電気伝導度はかなり大きいため、ドーピングの電気伝
導度に対する寄与が小さく、電気伝導度が未ドープの該
基体よりもそれ程増大しない。
又、このポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基
体のBET法による比表面積値は、塩化亜鉛を使用して
製造しているため極めて大きな値となるが600m2/g
以上であると特に好ましい。
本発明のポリアセン系骨格構造を有する不溶不融性基体
はBET法による比表面積値が600m2/g以上と極め
て大きいためドーピング速度が大きく、厚みのある基体
に対しても短時間でドーピングが可能であり、又イオン
半径の大きいドーパント例えばClO4 -、BF4 -等のドーパ
ントをスムーズに基体中にドーピングすることが可能で
ある。例えばClO4 -イオンを基体にLi/LiClO41モル/
プピレンカーボネート/基体の構成で電解ドーピング
する場合、比表面積値が600m2/g未満では電極間電
圧4Vの電位差でドーピングすることは難しいが、本発
明の600m2/g以上の基体ではこの電位差で充分にCl
O4 -イオンを基体中に導入することができる。
又、不溶不融性基体からなる電気伝導性有機高分子系材
料はフィルム状,板状あるいは円筒状等々、任意の形状
の成形体に加工出来るが、熱処理したフェノール繊維も
しくは繊維構造物を使用して製造しているため、機械的
強度に優れており、実用上充分な強度を有している。特
にフェノール繊維もしくは繊維構造物として編織物ある
いはフェルト状の繊維集合体を用いて製造したときには
基体からなる成形体の厚み,大きさ,密度等を任意に設
定出来るのみならず、その強度も特に優れたものが得ら
れる。
ところで本発明のH/Cの原子比が0.60〜0.05
のポリアセン系骨格構造を有した不溶不融性基体の電気
伝導度はH/Cの原子比によって大きく異なっている
が、例えばH/C=0.6の場合では、約10-11Ω-1cm
-1以下であり、又H/C=0.05では約100Ω-1cm-1
の半導体である。該基材に後に示すような電子供与性ド
ーパントあるいは電子受容性ドーパントをドーピングす
ると大巾に電気伝導度が増大し、n型あるいはp型の半
導体となるものである。
又、該ポリアセン系骨格構造を有する不溶不融性基体は
BET法による比表面積値が600m2/g以上と非常に
大きな値を示すため、酸素等のガスが侵入し、劣化し易
いと考えられるが、実現には空気中に長時間放置して
も、物性等に変化はなく、例えば空気中に1000時間
放置しても電気伝導度に変化がなく、酸化安定性に優れ
ているものである。
かかる本発明の不溶不融性基体にドーピングし得る電気
供与性ドーパント、あるいは電子受容性ドーパントとし
ては一般に知られているドーピング剤のいずれもが可能
である。
電子供与性ドーパントとしては電子を離し易い物質が用
いられる。例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ル
ビジウムあるいはセシウムの如き周期律表の1A族金属
が好まいく用いられる。またテトラアルキルアンモニウ
ムカチオン例えば(C2H5)4N+、(C4H9)4N+等も好ましく用
いられる。
また電子受容性ドーパントとしては電子を受け取り易い
物質が用いられる。例えば弗素、塩素、臭素、沃素の如
きハロゲン、AsF5、PF5、BF3、BCl3、BBr3の如きハロゲ
ン化合物、SO3あるいはN2O5の如き非金属元素の酸化物
あるいはH2SO4、HNO3又はHClO4の如き無機酸に由来する
陰イオン等が好ましく用いられる。
かかるドーパントのドーピング方法としてはポリアセチ
レンあるいはポリフェニレンについて従来用いられてい
るドーピング法と本質的に同じ方法を使用することがで
きる。
ドーパントがアルカリ金属の場合には、溶融したアルカ
リ金属あるいはアルカリ金属の蒸気と不溶不融性基体と
を接触せしめてドーピングすることができ、また例えば
テトラヒドロフラン中で生成せしめたアルカリ金属ナフ
タレン錯体と不溶不融性基体とを接触せしめてドーピン
グすることもできる。
ドーパントがハロゲン、ハロゲン化合物あるいは非金属
元素の酸化物である場合にはこれらのガスを不溶不融性
基体と接触せしめることにより容易にドーピングを行う
ことができる。
ドーパントが無機酸に由来する陰イオンである場合に
は、無機酸を不溶不融性基体に直接塗布あるいは含浸せ
しめるかあるいはこれらの無機酸を含む電解液中で不溶
不融性基体を陽極として電解してドーピングを行うこと
もできる。
ドーパントは一般に芳香族系縮合ポリマーの繰返し単位
に対して10-5モル以上の割合で得られる本発明の有機高
分子材料に存在するように用いられる。
かくして得られるH/Cの原子比が0.60〜0.05
のポリアセン骨格構造を有した不溶不融性基体にドーパ
ントをドーピングした本発明の有機高分子系材料はドー
ピング前の不溶不融性基体の電気伝導度よりも高い電気
伝導度、好ましくはドーピング前の不溶不融性基体より
も10倍以上又はそれ以上適当な方法によれば103〜108
倍、又はそれ以上の高い電気伝導度を示す。
電子供与性ドーパントをドーピングされた本発明の電気
伝導性有機高分子系材料はn型(電子過剰型)半導体又
は導体の電気伝導性を有する。また、電子受容性ドーパ
ントをドーピングされた本発明の電気伝導性有機高分子
系材料はp型(正孔過剰型)半導体又は導体の電気伝導
度を有する。
一方、本発明によればドーパントとして電子供与性ドー
パントと電子受容性ドーパントとを一緒に用いることも
できる。これらのドーパントが本発明の電気伝導性有機
高分子系材料にほぼ均一に混在する場合にはいずれか一
方の多く存在する方のドーパントによってp型又はn型
となる。例えば、電子供与性ドーパントが多く存在する
場合にはn型となり、電子受容性ドーパントが多く存在
する場合にはp型となる。ドーパントが混在するこのよ
うな電気伝導性有機高分子系材料は、ドーパントの混合
物と不溶不融性基体とを接触せしめるか、あるいは一方
のドーパントに接触せしめ、次に他方のドーパントに接
触せしめることによって製造できる。
また本発明には所謂p−n接合面を有する電気伝導性有
機高分子系材料も含まれる。かかる材料は、不溶不融性
基体成形体の一方から電子供与性ドーパントをドーピン
グせしめ、他方から電子受容性ドーパントをドーピング
せしめるか、あるいは不溶不融性基体成形体の全面にい
ずれか一方のドーパントをドーピングせしめ、次いで他
方のドーパントをその面の一部のみにドーピングせしめ
ることによって製造できる。
(発明の効果) 本発明の電気伝導性有機高分子系材料は機械的強度に優
れているため、薄いフィルムから厚い板状体あるいは円
筒状等任意の形状の成形体とする事が可能であり、これ
らは例えばダイオード太陽電池あるいはバッテリー用の
電極等として種々の分野において用いられる。
以下実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1 フェノール繊維の平織クロス(日本カイノール社製)を
電気炉にて窒素雰囲気中、300℃の温度で4時間熱処
理を行ない、繊維状熱処理物を得た。この繊維状熱処理
物に、レゾール型フェノール樹脂(約65%濃度の水溶
液)と水と塩化亜鉛とを重量比で10/5/26の割合
で混合した溶液を含浸させ、得られた溶液含浸クロスを
100℃に加熱された積層板用加圧成形機を用いて約1
0分間加圧下、成形硬化し、厚み500μmの板状の複
合成形体を得た。この複合成形体において繊維状熱処理
物/フェノール樹脂の重量比は0.11であった。又塩
化亜鉛/(フェノール樹脂+繊維状熱処理物)の重量比
は3.6であった。そして上記レゾール、水及び塩化亜
鉛混合溶液をアプリケーターにて成膜した後、100℃
の温度で20分間硬化反応させて厚み500μの板状成
形体を得た。この板状成形体において繊維状熱処理物/
フェノール樹脂の重量比は0であり、又塩化亜鉛/(繊
維状熱処理物+フェノール繊維)の重量比は4.0であ
った。
次にこれらの複合成形体をシリコニット電気炉に入れ、
雰囲気中にて550℃まで約40℃/hrの速度にて
昇温し、熱処理し、次に100℃の温水にて約5時間洗
浄し、残存している塩化亜鉛を除去し、その後減圧乾燥
することによって不溶不融性基体からなる板状体を得
た。
これらの不溶不融性基体の板状体のうち、上記した本発
明の繊維状熱処理物を使用した複合成形体より得られた
板状基体は機械的強度に優れており、取扱いが容易であ
ったが、繊維状熱処理物を使用せずに作った複合成形体
より得られた板状基体は強度が弱く、取り扱いに注意を
要した。曲げ強度の測定値を第1表に示す。
次に複合成形体より得られた本発明の不溶不融性基体を
ケイ光X線分析にかけたところ、Znは0.01重量%
(対基体)以下であり、又Clは0.5重量%以下であ
り、塩化亜鉛は基体中にほとんど残存していない事が判
明した。又この基体をX線回折したところ、2θで20
〜22゜の所にメインピークが存在し、又41〜46゜
の範囲に小さなピークが認められ基体がポリアセン系骨
格構造を有していることが確認された。
次に繊維状熱処理物を使用する以外は上記本発明と同様
にして作成した不溶不融性基体について元素分析、電気
伝導度及びBET法による比表面積値を測定した結果を
比較例として併せて第1表に示す。
次に充分に脱水したプロピレンカーボネートにLiAsF6
溶解させて約1.0モル/の溶液とし、リチウム金属
を負極とし不溶不融性基体の板状体を正極とし上記した
溶液を電解液として、両極間に4Vの電圧を付与し、As
F6 -イオンを不溶不融性基体にドーピングした。ドーピ
ング量は基体中の炭素原子1個当りのAsF6 -イオンの数
で表わす事としたが、本発明ではAsF6 -イオンの数はド
ーピング時に回路に流れた電流値より求めたものであ
る。
このようにしてAsF6 -イオンがドーピングされた不溶不
融性基体よりなる電気伝導性有機高分子系材料が得られ
た。ドーピング後、該材料を取り出してアセトンにて洗
浄し、60℃の温度で60分間減圧乾燥を行い、次に電
気伝導度を測定した。結果を第1表に示す。
実施例2 フェノール繊維のフェルト(日本カイノール社製)を電
気炉にて窒素雰囲気中、200℃、500℃、700℃
に変えて約6時間熱処理を行い繊維状熱処理物を得た。
以上の3種類の繊維状熱処理物にレゾール型フェノール
樹脂(約65%濃度の溶液)と水と塩化亜鉛とを重量比
で10/3/20の割合で混合した溶液を含浸させ、得
られた溶液含浸フェルト状熱処理物を100℃に加熱し
た加圧成形機を使用して加圧下、約10分間成形硬化し
て板状の複合成形体を作成した。これらの複合成形体に
おいて繊維状熱処理物/フェノール樹脂の重量比は約
0.4であり、又塩化亜鉛/(繊維状熱処理物+フェノ
ール樹脂)の重量比は約2.0であった。次に実施例1
と同じ条件にて熱処理、洗浄及び乾燥を行なって不溶不
融性基体の板状体を得た。次にこれらの試料について元
素分析、電気伝導度、BET法による比表面積及び曲げ
強度の測定を行なった。結果を第2表に示す。更に不溶
不融性基体の板状体を用いて実施例1と同様にしてドー
ピングテストを行った。ただし本実施例ではLiAsF6のか
わりにLiClO4を用いた。結果をまとめて第2表に示す。
実施例3 レゾール型フェノール樹脂(約65%の水溶液)と水と
塩化亜鉛とを重量比で10/1/5の割合で混合した溶
液に、フェノール繊維(繊維径、約15μ)のカットフ
ァイバー(カット長約2mm)を窒素雰囲気中、300℃
で4時間熱処理して得られた繊維状熱処理物を加え、充
分に混合した後、混合スラリーを約100℃に加熱した
加圧成形機を使用して加圧下、約10分間成形硬化し
て、約100μ厚のフィルム状複合成形体を得た。この
フィルム状複合成形体における繊維状熱処理物/フェノ
ール樹脂の重量比は0.06であり、又塩化亜鉛/(フ
ェノール樹脂+繊維状熱処理物)の重量比は0.7であ
った。次にこのフィルム状複合成形体をシリコニット電
気炉にて所定温度まで熱処理し、その後実施例1と同様
に温水にて洗浄し、乾燥して水素/炭素の原子比の異な
るフィルム状の不溶不融性基体を得た。この基体につい
て元素分析、電気伝導度、BET法による比表面積値及
び曲げ強度測定を行った。結果をまとめて第3表に示
す。
次に該フィルムを真空ライン中に入れ、真空度を10-2to
rr以下にした後、室温にてヨウ素ガスをラインに導入し
てドーピングを約10分間行った。ドーピング後の電気
伝導度を第3表に示す。またヨウ素をドープした該フィ
ルムをラインから取り出してEPMA(エレクトロンプ
ローブX線マイクロアナリシス)にかけヨウ素の試料の
断面中での分布状態を測定したところ、いずれの試料で
もヨウ素は試料の表面から内部まで均一に分布してい
た。
実施例4 H/Cの原子比が0.21でありBET法による比表面
積値が1600m2/gである実施例1の本発明基体を脱
水したテトラヒドロフラン、ナフタレン及び金属ナトリ
ウムを用いて作成したナトリウムナフタレートのテトラ
ヒドロフラン溶液にドライボックス(N2気流)中にて浸
漬し、ナトリウムのドーピングを試みた。約30分間浸
漬した後、脱水したテトラヒドロフランにて洗浄し室温
にて減圧乾燥を行った。該試料の電気伝導度を測定した
ところ、未ドープの約10-4Ω-1cm-1より大巾に増大し約
100Ω-1cm-1となっていた。又該試料についてEPMA
分析を行ったところ、試料内部までナトリウムがドーピ
ングされていた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B32B 5/00 A 7016−4F

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】150℃以上の温度で熱処理したフェノー
    ル繊維もしくは繊維構造物の熱処理物と、フェノール樹
    脂と塩化亜鉛とから形成された複合成形体を、非酸化性
    雰囲気中で熱処理して得られた水素原子/炭素原子の原
    子比が0.05〜0.6であり、且つBET法による比
    表面積値が600m2/g以上であるポリアセン系骨格構
    造を有する不溶不融性基体からなる電気伝導性有機高分
    子系材料。
  2. 【請求項2】複合成形体がフェノール樹脂に対して重量
    比で0.05以上の150℃以上の温度で熱処理したフ
    ェノール繊維もしくは繊維構造物を含むものである特許
    請求の範囲第(1)項に記載の電気伝導性有機高分子系材
    料。
  3. 【請求項3】複合繊維成形体がフェノール樹脂と150
    ℃以上の温度で熱処理したフェノール繊維もしくは繊維
    構造物との総重量に対して0.5〜7の塩化亜鉛を含む
    ものである特許請求の範囲第(1)項又は第(2)項に記載の
    電気伝導性有機高分子系材料。
  4. 【請求項4】150℃以上の温度で熱処理したフェノー
    ル繊維構造物が編織物又はフェルト状のものである特許
    請求の範囲第(1)項乃至第(3)項の何れかに記載の電気伝
    導性有機高分子系材料。
  5. 【請求項5】複合成形体の熱処理物が、水素原子/炭素
    原子の原子比が0.15〜0.6のものである特許請求
    の範囲第(1)項〜第(4)項の何れかに記載の電気伝導性有
    機高分子系材料。
  6. 【請求項6】有機高分子系材料が成形体である特許請求
    の範囲第(1)項〜第(5)項の何れかに記載の電気伝導性有
    機高分子系材料。
  7. 【請求項7】(A) 150℃以上の温度で熱処理したフ
    ェノール繊維もしくは繊維構造物の熱処理物と、フェノ
    ール樹脂と塩化亜鉛とから形成された複合成形体を非酸
    化性雰囲気中で熱処理して得られた水素原子/炭素原子
    の原子比が0.05〜0.6であり、且つBET法によ
    る比表面積値が600m2/g以上であるポリアセン系骨
    格構造を有する不溶不融性基体および (B) 電子供与性ドーパント又は電子受容性ドーパント
    からなり (C) 電気伝導度が未ドープの該基体よりも大であるこ
    とを特徴とする電気伝導性有機高分子系材料。
  8. 【請求項8】電子供与性ドーパントがリチウム、ナトリ
    ウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムを含む第1.A
    族金属である特許請求の範囲第(7)項記載の電気伝導性
    有機高分子系材料。
  9. 【請求項9】電子供与性ドーパンドがテトラ(C1〜C5
    級アルキル)アンモニウムカチオンである特許請求の範
    囲第(7)項に記載の電気伝導性有機高分子系材料。
  10. 【請求項10】電子受容性ドーパントが弗素、塩素、又
    は臭素、沃素である特許請求の範囲第(7)項記載の電気
    伝導性有機高分子系材料。
  11. 【請求項11】電子受容性ドーパントが、AsF5、PF5、B
    F3、BCl3、BBr3である特許請求の範囲第(7)項記載の電
    気伝導性有機高分子系材料。
  12. 【請求項12】電子受容性ドーパントが、SO3あるいはN
    2O5等の非金属元素の酸化物あるいはH2SO4、HNO3あるい
    はHClO4の無機酸に由来する陰イオンである特許請求の
    範囲第(7)項記載の電気伝導性有機高分子系材料。
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