JPH0651627B2 - 腹膜透析用組成物 - Google Patents

腹膜透析用組成物

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JPH0651627B2
JPH0651627B2 JP60027581A JP2758185A JPH0651627B2 JP H0651627 B2 JPH0651627 B2 JP H0651627B2 JP 60027581 A JP60027581 A JP 60027581A JP 2758185 A JP2758185 A JP 2758185A JP H0651627 B2 JPH0651627 B2 JP H0651627B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の要約〕 腹膜透析用組成物はグルコースポリマー混合物からなる
浸透剤を含有し、前記混合物は12より大きいD.P.(重合
度)のグルコースポリマーを50重量%より多く含有す
る。腹膜透析を行なう方法は、この種の腹膜透析用組成
物を患者の腹腔内に導入することからなっている。腎機
能不全による以外の原因で生じた毒血症に罹患した患者
の治療方法は、12より大きいD.P.のグルコースポリマー
を少なくとも15重量%含有するグルコースポリマー混合
物を浸透剤として含む腹膜透析用組成物を、患者の腹腔
内に導入することにより腹膜透析を行なうことからなっ
ている。
〔発明の属する技術分野〕
本発明は、腹膜透析に関するものである。
〔従来技術とその問題点〕
本出願人による英国特許出願第8400523号(既に英国特
許公開第2132914A号として公開されている)は、グル
コースポリマー混合物からなる浸透剤を含有した腹膜透
析用組成物を開示しており、この場合混合物は12より大
きいD.P.(D.P.は「重合度」の略称である)のグルコー
スポリマーを少なくとも15重量%、好ましくは20〜50重
量%含有する。
腹膜透析は、急性および慢性腎不全の治療に使用するこ
とができる。この治療は、患者の腎臓が正常に機能する
ような組成まで患者の血液組成を回復させ、かつ正常な
状態に血液を維持するのに理想的である。現在の技術状
態においてはこのような理想的結果がまだ達成されてお
らず、恐らく近い将来にもたとえばホルモンおよび酵素
の合成のような幾つかの正常な腎機能としては達成され
ないと思われ、これら機能の喪失を補なうことが期待さ
れ得ないような種類の透析である。しかしながら、認識
されている不完全さにもかかわらず、デキストロースを
浸透剤として使用する腹膜透析の確立された技術は大き
い価値を有し、その改良は極めて重要である。
本出願人による英国特許出願第8400523号明細書に説明
したように、12より大きいD.P.のグルコースポリマーを
少なくとも15重量%含有するグルコースポリマー混合物
である浸透剤の使用は、デキストロースを浸透剤として
使用するよりも利点を有する。比度、或る種の目的には
12より大きいD.P.グルコースポリマーを50重量%より多
く含有するグルコースポリマー混合物である浸透剤を使
用するのが有利であることを突き止めた。
上記英国特許出願第8400523号の実施例5に記載した組
成のグルコースポリマー混合物を浸透剤として含有する
腹膜透析溶液を用いて行なった臨床試験は、尿素,クレ
アチニン,尿酸および燐酸塩の抽出割合が浸透剤として
デキストロースを使用して得られる割合よりも著しく高
いことを示している。インスリン分泌は上昇せず、血中
グルコースは、ほぼ正常であり、かつ極く少量のアミノ
酸のみが腹膜中へ移動した。これらの望ましい結果は、
透析溶液におけるグルコースポリマー混合物の初期濃度
を変化させることにより、患者の必要性に応じて変化さ
せうる割合で血液から水を除去することを組み合せて達
成された。
明らかに、腹膜透析におけるこの種のグルコースポリマ
ー混合物の使用は、当分野において著しい技術の進歩を
示す。しかしながら、浸透剤としてこれらのグルコース
ポリマー混合物を含有する透析溶液が全ゆる臨床目的に
同等に、有効であると期待するのは合理的でない。特に
透析溶液の性能は一般に、これをたとえば急性腎不全の
治療におけるような間けつ的腹膜透析に使用する場合に
は、連続腹膜透析に使用する場合よりも重要性が低いと
思われる。何故なら、連続腹膜透析を受ける患者は、こ
の治療における欠点の蓄積作用を受けるからである。
上記英国特許出願第8400523号の実施例5に示したグル
コースポリマー組成物を10重量%もしくはそれ以上含有
する溶液を使用する場合、或る種の患者では腹膜から少
糖類が著しく損失することを突き止めた(本明細書にお
いて、少糖類とは2〜10のD.P.を有するグルコースポリ
マーを意味する)。この結果、血清中のマルトースおよ
びマルトトリオースのレベルが上昇した。不連続透析の
場合には、血清マルトースレベルが18時間にわたり徐々
にしか低下しないことが判明し、このことは少糖類の蓄
積が生じたことを示唆する。血清と腹膜との両者におけ
るグルコースポリマーの濃度を測定することにより、少
糖類より分子量の高いグルコースポリマーの性質を評価
した結果、腹膜中にはこれらが良好に保持されるのに対
し、血清中にはこれらが最小量で出現することが判明し
た。
上記英国特許出願第8400523号の透析用組成物は浸透剤
としてデキストロースを含有する同様な組成物よりも明
らかに優れているが、腹膜から血清へ炭水化物が移動す
る可能性をさらに減少させるような腹膜透析用組成物を
提供することが望ましいことは勿論である。
〔発明の目的〕
したがって、本発明の目的は、この観点およびその他の
観点から改良された性質を有する腹膜透析用組成物を提
供することである。
〔発明の要点〕
本発明は、グルコースポリマー混合物らなる浸透剤を含
有し、前記混合物が12より大きいD.P.のグルコースポリ
マーを50重量%より多く含有する腹膜透析用組成物を提
供する。多くの目的で、この混合物は12より大きいD.P.
のグルコースポリマーを50〜90重量%含有することがで
きる。腹膜から血清への炭水化物の移動を最小に保つこ
とが望ましいような患者の治療には、12より大きいD.P.
のグルコースポリマーを75〜100重量%。好ましくは90
〜100重量%含有する混合物を使用するのが有利であ
る。ポリマー混合物の平均分子量は好ましくは15,000〜
25,000、より好ましくは18,000〜22,000(高圧液体クロ
マトグラフィーにより測定)である。
連続腹膜透析の治療を受けている患者の場合、グルコー
スポリマー混合物における少糖類の含有量を、腹膜から
血清への少糖類の移動により過多の炭水化物蓄積が生じ
ないような低いレベルに保つことが特に望ましい。種々
異なる患者はこの点において種々異なる要求を有する
が、特にC.A.P.D.(連続通院腹膜透析)のような連続治
療を受けている患者には、10より大きいD.P.のグルコー
スポリマーを90〜100重量%含有するグルコースポリマ
ー混合物の少糖類含有量を10重量%以下とすることが望
ましい。
本発明の組成物における遊離グルコースの含有量は医者
の判断による。一般に、グルコースポリマー混合物は0
〜3重量%のグルコースを含有するが、患者の必要性に
応じてそれ以上の量を存在させることもできる。
腹膜透析に使用するには、本発明の組成物は好ましくは
2〜10重量%のグルコースポリマー混合物を含有する水
溶液の形態であり、その濃度は治療の性質および患者の
要求性に応じて選択される。この濃度の上限は、いずれ
の場合にも溶液を患者の腹膜中に導入しかつそこから抜
き取るために使用する透析装置の最小孔寸法を容易に通
過するような低いレベルに溶液の粘度を保つようにされ
る。下限は、血清から水と廃棄物とを除去するのに充分
であるが、許容しえない程急速な水の除去速度を与える
程大きくないような血清と腹膜との間の浸透圧の勾配を
確立するための要求に依存する。各患者につき個々に処
方する必要があるが、C.A.P.D.を受けている大抵の患者
には約2〜約4重量%の濃度が適当であると思われる。
特定したグルコースポリマー混合物を存在させる以外に
は、透析溶液はデキストロースを浸透剤として使用する
公知の透析溶液と同様な組成を有し、この組成は当業界
で周知されており、本発明の一部と構成しない。
本発明による透析溶液の使用方法は、公知の透析溶液と
同様である。この溶液を腹膜中に潅流させ、そこに所定
時間滞留させた後に抜き取って、新たな溶液と交換す
る。本発明の溶液を用いれば、公知の透析溶液の場合よ
りも長時間にわたり透析効果が維持されることが判明し
た。これは、従来必要とされていたよりも少量の潅流に
より患者から水と廃棄物とを充分除去しうる可能性を与
え、このことはC.A.P.D.において特に重要であり、透析
溶液の交換頻度が少なくなる程、感染の機会も低くなる
(感染は主として新鮮溶液による排液の交換の際に生ず
る)。
本発明に使用する浸透剤の利点の1つは、デキストロー
スを浸透剤として使用する場合に可能であってよりも長
時間にわたり腹膜に対する浸透圧勾配を維持しうること
である。デキストロースを用いた場合、浸透圧勾配の急
速な低下により比較的高い初期浸透圧を有する透析溶液
を使用する必要があった。人血の浸透圧は300ミリオス
モル/kgの程度である。腹膜に対するストレスを最小に
するには、透析溶液の浸透圧が患者の血液における浸透
圧を、充分な透析効果を達成するのに適する程度にでき
るだけ少なく越えることが望ましい。本発明の組成物は
デキストロースを浸透剤とする場合、或いは相当割合の
少糖類を含有するグルコースポリマーの場合よりも著し
く低い透析溶液の初期浸透圧によって充分な透析を達成
することができると同時に、従来使用された透析溶液よ
りも長時間にわたり透析を維持することが可能となる。
好適な場合、本発明の腹膜透析溶液を8時間程度の長さ
にわたり腹膜中に有利に残留させることができる。慢性
腎不全に罹患しかつ連続腹膜透析の処理を受けている患
者に対する毎日の処方は、毎日3回交換する。それぞれ
の潅流は1日当りの全潅流が6となるような容量で2
ずつである。1日当りに抜き取られる液体の全量は7.
2であり、これは透析液と血漿との間に平衡を達成す
る成分につき5ml/minの除去に相当する。
急性腎不全(すなわち、下記するように薬剤の過剰投与
から生ずる中毒)に罹患している患者を治療する場合、
毎時3を潅流しかつ1時間の終了時毎に約4ずつ抜
き取る方式が可能であり、これは約70ml/minの除去に相
当する。これは、100ml/minの程度である血液潅流によ
り達成されうるような除去速度よりも低い。しかしなが
ら、血液潅流は長時間持続することができない。或る場
合には、6時間までの潅流時間が危険なしに耐えうる最
高の長さである。これに対し、腹膜透析は、この種の危
険なしにそれよりずっと長時間にわたり持続することが
できる。
本発明に使用するグルコースポリマー混合物は、澱粉を
公知方法で加水分解し、次いで得られたグルコースポリ
マーの混合物を処理してより低分子量のグルコースポリ
マーを全部または部分的に除去して製造することができ
る。好ましくは、グルコースポリマー混合物は、英国特
許公開第2132914A号公報に記載された方法により製造
され、低分子量ポリマーの除去は公知の分画技術、たと
えば溶剤分画、或いは適当な分離特性を有する透過膜を
用いたポリマーの分離により行なわれる。
一般に、使用する分画技術は主として低分子量ポリマー
を除去するようなものである。しかしながら、所望に応
じグルコースポリマーの最終混合物が全て水溶性であっ
て、静置に際し高分子量ポリマーが溶液から沈澱する傾
向を持たないような確保するのに必要であれば、極めて
高分子量のポリマーを除去するために使用することもで
きる。
〔発明の実施例〕
以下、実施例により本発明を説明するが、これらのみに
限定されない。
実施例1 英国特許公開第2132914A号の実施例5におけるグルコ
ースポリマー混合物を水性エタノール液により反復洗浄
して、濾液中に低分子量グルコースポリマーを除去し
た。固体残留物のクロマトグラフ分析は、このような2
回の抽出の後にグルコースポリマー混合物が5重量%未
満の12もしくはそれ以下のD.P.を有するポリマーを有す
ることを示した。グルコースポリマー混合物の溶液を活
性炭のカラムに通すことにより発熱物質を除去した後、
このグルコースポリマー混合物は本発明による腹膜透析
用組成物における透析剤として使用するのに好適であっ
た。
実施例2 英国特許公開第2132914A号の実施例5におけるグルコ
ースポリマー混合物を水中に溶解させた。この溶液へ連
続攪拌しながら95w/w%エタノールを、55%エタノー
ルの濃度に達するまで加えた。次いで沈澱した高分子量
ポリマーをデカントにより分離した。この分離されたシ
ロップの1部を分析し、次の組成を有することが判っ
た: G1 0.5 G2 1.2 G3 1.4 G4 1.1 G5 1.9 G6 3.6 G7 2.2 G8 0.7 G9 0.5 G10 0.4 G11 0.3 G12 0.3 G13−14 7.2 G15 もしくはそれ以上 79.1 かくして、このポリマー混合物(これは本発明による浸
透剤として使用することができる)は、12より大きいD.
P.のポリマー86.3%とD.P.1〜10のポリマー13.5%とを
含有した。
分離したシロップの残部を水中に再溶解させかつ95w/
w%エタノールの添加により再沈澱させ、今回は65%エ
タノールの濃度にした。次いで、沈澱物を水中に溶解さ
せ、そして溶液を蒸発乾固させた。かくして得られたグ
ルコースポリマー混合物の組成は次の通りであった: G1 − G2 0.7 G3 0.9 G4 0.6 G5 0.9 G6 2.0 G7 1.7 G8 0.5 G9 0.3 G10 0.3 G11 0.2 G12 0.2 G13−14 5.8 G15 もしくはそれ以上 86.1 かくして、このポリマー混合物は12より大きいD.P.のポ
リマー91.9%とD.P.2〜10のポリマー7.9%とを含有し
た。H.P.L.C.により測定したこのポリマー混合物の平均
分子量は23,700であった。このグルコースポリマー混合
物を臨床試験およびその他の試験の検体とし、「実施例
2のグルコースポリマー混合物」として下記に引用す
る。
実施例3 英国特許公開第2132914A号の実施例5に記載したグル
コースポリマー混合物23gを水中に溶解させ、この溶液
は37の容積を有した。85w/w%エタノールの32.5
を加えた。
4時間静置して2相を分離させた後、高分子量のポリマ
ーを約10%含有する下相シロップを抜き取って捨てた。
上相へ85w/w%エタノール40を加えて、初期ポリマ
ーの53%をさらに沈澱させた。このシロップ相(21)
を水により46まで希釈し、かつ85w/w%エタノール
の75により再沈澱させて、初期グルコースポリマーの
31%を得た。さらに2回再沈澱させた後、初期グルコー
スポリマーの27%収率が得られた。このように得られた
ポリマー混合物の組成は次の通りであった: G1 0.15 G2 0.5 G3 0.8 G4 0.6 G5 0.9 G6 2.2 G7 1.9 G8 0.6 G9 0.3 G10 0.3 G11 0.1 G12 0.1 G13−14 5.6 G15 もしくはそれ以上 85.8 かくして、このポリマー混合物は、12より大きいD.P.の
ポリマー91.4%とD.P.1〜10のポリマー8.25%とを含有
した。H.P.L.C.により測定したポリマー混合物の平均分
子量は19,800であった。
実施例4 2種の組成物を用いて成人男子を腹膜透析にかせること
により臨床試験を行なった。各組成物は腹膜透析に従来
使用される種類の溶液であり、組成は使用した浸透剤の
種類のみが相違した。一方の組成物(溶液A)は1.36重
量%のデキストロースを含有し、他方の組成物は上記実
施例2のグルコースポリマー混合物を5重量%含有し
た。これら試験の結果を次のように要約する: 1.限外濾過の程度は2種の溶液につき同等であった。そ
れぞれの場合、患者には2.2の溶液を与えた。3時間
の後、溶液を患者から抜き取り、溶液Aについては、抜
き取った容量が2.375であるのに対し、溶液Bについ
ては2.430であった。
2.血清中および透析液中の尿酸,燐酸塩,クレアチニン
および尿素のレベルを測定した。腹膜中の溶液を3時間
滞留させた後、透析液中の濃度対血清中の濃度の比は次
の通りであった: 溶液A 溶液B 尿酸 0.60 0.89 燐酸塩 0.68 0.91 クレアチニン 0.73 0.96 尿素 0.94 1.10 溶液Bは溶液Aよりも効率的な抽出を与えることが明ら
かである。尿素の濃度が血清中におけるよりも透析液に
おいて高いことが顕著であり、これは予想し得えないも
のである。この効果は、尿素とグルコースポリマー分子
との複合体の形成によるものである。高分子量グルコー
スポリマーは溶液において螺旋構造を有すると思われ、
したがってこれらはこの種の複合体を形成すると思われ
る。
3.溶液Aの初期浸透圧は334ミリオスモル/kgであり、
溶液Bについては311ミリオスモル/kgであった。3時
間の後、溶液Aにより生成された透析液の浸透圧は初期
値の約80%であったのに対し、溶液Bにより生成された
透析液の浸透圧は初期値と同じレベルに留まった。
実施例5 実施例4の溶液Bの2を糖尿病でない成人男子の腹膜
中に導入し、そこに6時間滞留させた。その期間中、患
者の血清を監視してグルコースレベルと全炭水化物のレ
ベルと測定した。それらの結果(mg/dl)は次の通りで
あった:時間(hrs) 血清グルコース 血清炭水化物 0 79.5 140.0 1/4 73.5 94.0 2 63.5 150.0 4 55.2 160.0 6 50.5 160.0 かくして、患者に対し炭水化物を不当に負荷することな
く透析が行なわれた。24時間当り溶液Bを3回潅流する
ことにより毎日の全炭水化物摂取量は約58gであると推
定される。これに対し、1.36%のデキストロースを含有
する透析溶液の4回の潅流と3.86%のデキストロースを
含有する透析溶液の1回の潅流とを毎日含む処方(従来
の腹膜透析に典型的な処方)によれば、炭水化物摂取量
は約136gになると予想しうる。
実施例6 腹膜透析に使用するのに適した3種の溶液を作成し、こ
れら全ては浸透剤として1つの溶液が1.36%デキストロ
ースを含有し、もう1つが3.86重量%のデキストロース
を含有し、さらにもう1つが実施例2のグルコースポリ
マー混合物を5.0重量%含有した以外は同様な組成であ
る。各溶液の浸透圧を測定して次の結果を得た: これら溶液のうち第3のものが、その他の溶液のいずれ
よりも、使用に際して腹膜に対し低いストレスを与える
ことが明らかである。
実施例7 腹膜透析に使用するのに適した2種の溶液を作成し、こ
れら両者は一方が浸透剤として5.0重量%の上記実施例
2におけるグルコースポリマー混合物を含有し、他方が
浸透剤として英国特許公開第2132914A号の実施例5に
おけるグルコースポリマー混合物5.0重量%を含有した
以外は同様な組成とした。これら溶液を同じ患者に対し
腹膜透析に使用した。全炭水化物含有量を、6時間後に
最終透析液のそれぞれにつき測定した。第1の溶液(本
発明の溶液)により腹膜から失なわれた炭水化物の量は
22.7%であり、第2の溶液では44.9%であることが判明
した。したがって、患者に対する炭水化物負荷は第2の
溶液に対するよりも第1の溶液について著しく低かっ
た。
これら2種の溶液により患者に負荷された炭水化物負荷
の性質は或る程度重要である。第1の溶液に使用したグ
ルコースポリマー混合物はD.P.2〜10のポリマー7.9%を
含有したのに対し、第2の溶液はD.P.2〜10のポリマー6
1.8%を含有するグルコースポリマー溶液を使用した。
いずれかの溶液を使用して透析を行なった場合、腹膜を
通して血液中へ移動する全分子量のポリマーの拡散が生
ずる。それぞれの場合、低分子量ポリマーは、高分子量
ポリマーよりも急速に腹膜を透過する。しかしながら、
浸透剤として使用したグルコースポリマー混合物の異な
る組成のため、第1溶液により加えられる炭水化物負荷
は第2溶液により加えられる負荷よりも低い割合の低分
子量ポリマーと高割合の高分子量ポリマーとからなって
いる。
高分子量ポリマーは血液中で血漿アミラーゼにより分解
されて、低分子量のポリマーを生成すると思われる。た
とえば、マルトトリオースのようなこれらのポリマーは
極めて容易には代謝されず、或いは除去されない。第1
溶液におけるこの種のポリマーの濃度は比較的低く、し
たがって透析用として第2溶液を使用する場合よりもず
っと急速に腹膜を通して拡散除去することができる。何
故なら、第2溶液は既に高濃度のこの種のポリマーを含
有するからである。したがって、第1溶液はそれ自身の
分解生成物を血液から除去する能力を有すると云うこと
ができる。
これは、上記の比較試験の過程で行なった観察により示
される。第1溶液を使用する透析に際し、血清および透
析液におけるグルコースレベルを監視した。最初に、血
清グルコースレベル(ミリオスモル1として表わす)
は4.3であった。1時間後、これは4.0まで低下し、2時
間で4.4まで上昇し、かつ最後の4時間で4.2まで徐々に
低下した。透析液のグルコースレベル(最初は顕著でな
い)は最初の1時間で2.1まで急速に上昇し、次いで最
後の5時間でやや遅く4.4に達した。透析液中で絶えず
グルコースレベルが上昇するのに伴なって血液中にほぼ
一定のグルコースレベルが維持されることは、透析液か
ら血液中に流入する高分子量ポリマーが酵素加水分解さ
れて特にグルコースを生成し、次いでこれが透析液中に
この透析液におけるグルコース濃度が血液中の濃度と等
しいレベルに上昇するような時点まで除去される過程と
一致することが判るであろう。同様な過程が少糖類につ
いても生ずると思われ、血液中の少糖類の蓄積は従来或
る患者には問題を提起していた。すなわち、高分子量ポ
リマーの加水分解により血液中に低分子量ポリマーが生
成し、次いで腹膜中に拡散する。この点に関し、患者の
血清マルトースレベルを透析の6時間後に測定した。第
1溶液を使用いた場合、最終血清マルトースレベルは0.
15g/であったのに対し、第2溶液については1.02g
/であることが判明した。
腹膜を通る拡散以外の経路により、恐らくリンパ系によ
り全分子量のポリマーが血液中に入り込みうると云うこ
とができる。
本発明の腹膜透析用組成物、並びに上記英国特許出願第
8400523号(英国特許公開第2132914A号として公開)の
腹膜透析用組成物は、腎機能不全に罹患した患者の治療
だけでなく他の原因による毒血症に罹患した患者の治療
にも価値がある。
したがって、本発明は腎機能不全以外の原因による毒血
症に罹患した患者の治療方法をも提供し、この方法は、
12より大きいD.P.のグルコースポリマーを少なくとも15
重量%、好ましくは50重量%以上含有するグルコースポ
リマー混合物を浸透剤として含む腹膜透析用組成物を、
患者の腹腔内に導入して腹膜透析を行なうことからなっ
ている。
この種の毒血症は、人体の内部障害から生ずる、或いは
外的原因から生ずる毒性を原因とする。
各種の病気および障害が毒血症をもたらし、これは上記
グルコースポリマー混合物を浸透剤として使用する腹膜
透析により治療することができる。これらは、血液中へ
の長鎖脂肪酸の蓄積により生ずる痛風、肝性脳疾患、ア
ミノ酸オパチエス(MSUD)、神経障害を包含し、さらに
血漿中の水の過多が毒素を構成する処置困難な心臓疾患
の場合を包含する。
人体に対する外的原因からの毒素により生ずる毒血症
は、例えばバルビツール酸、サリチル酸、リチウムまた
はキニジンのような薬剤の過剰投与による中毒の場合、
或いはたとえば除草剤パラクワットのような工業用もし
くは農業用薬剤による中毒の場合を包含する。
上記グルコースポリマー混合物を浸透剤として使用する
腹膜透析による毒血症の治療の価値を検討する際、人体
から腹水中への薬剤の除去速度は次のような多数の因子
に依存するという事実を考慮する必要がある: 1.血漿蛋白質が薬剤と結合うる程度。何故なら、血漿水
中に遊離している分子のみが透析されるからである。
2.薬剤の分布容積。これは、血液中に存在し、したがっ
て直ちに透析にかけられる薬剤の全体重に対する割合を
決定する。分布の容積が大きければ(すなわち血液中の
全薬剤の割合が低ければ)、薬剤を顕著に除去するには
長時間の透析が必要とされる。
さらに、この種の治療の程度は次の因子に依存する: (a)顕著な除去速度が達成されうるかどうか、 (b)除去速度が人体の通常の除去速度(代謝もしくは排
泄による)と比較して大きいかどうか、および (c)腹膜透析を迅速かつ容易に患者に対し開始しうるか
どうか。
(c)について大抵の場合、腹膜透析を血液透析または血
液潅流よりも迅速かつ容易に行ないうると思われ、恐ら
く患者に害を与える危険が少ない。さらに、血液潅流と
異なり、腹膜透析を長時間継続して薬剤の血中レベルが
再上昇する(組織からの逆流による)のを防止すること
ができ、この再上昇はたとえば血小板の損失のような問
題により血液潅流を停止せねばならない場合に生ずる。
上記のように、血漿蛋白質に対する薬剤の結合は、腹膜
に対する薬剤の除去速度を制約する。何故なら、未結合
の薬剤のみが遊離して、透析溶液中の薬剤と平衡するか
らである。しかしながら、透析溶液における遊離薬剤の
濃度と血漿中の濃度より低いレベルまで低下させうる場
合、より良好な除去が達成される。この目的で、天然も
しくは合成の錯生成剤が考えられる。たとえば、或る場
合には透析溶液中のヒトアルブミンの存在は、たとえば
血漿蛋白質に強度に結合される三環式降圧防止剤のよう
な或る種の薬剤の除去を改善する可能性を与える。
パラクワット中毒の治療に対する腹膜透析の有用性に関
する検討により、本発明のこの面を説明する(パラクワ
ットは除草剤、1.1′−ジメチル−4.4′−ジピリジウム
シクロライドの商品名である)。
パラクワット(PQ)中毒患者の場合、初期の重大な現象
は腎不全である。腎不全の開始時点および程度は、どの
程度のPQが人体中に残存して肺における毒物濃度を徐々
に蓄積しうるかを決定する。腎臓の病巣は可逆的である
が、肺の病巣は可逆的でなく、一般に患者が大量投与を
受けなければ死亡の原因となり、2〜3日以内に死亡す
る。腎不全の開始と肺における毒物レベルの蓄積との間
の期間(ヒトの場合、約12〜18時間)に、PQを循環から
除去する方法は価値があるであろう。この方法は容易に
実施できねばならず(1時間以内)、かつ腎機能が回復
し始めかつPQの人体負荷が殆んど除去されるまで、長時
間(3〜4日間)にわたり維持できねばならない。
上記グルコースポリマー混合物による腹膜透析は、PQの
除去に対し血液透析または血液潅流にとって魅力的かつ
良好な代案となる。下記する試験の目的は、犬の腹膜に
おける特定グルコースポリマーの溶液がPQを循環から抽
出するかどうかを決定することである。
実験法 28.5kgのグレイハウンド種の犬をペントバルビタールで
麻酔した。一方の前足静脈中に静脈カニューレを挿入し
て血液試料を採取し、そして他方の前足静脈にはPQを投
入した。膀胱カテーテルを挿入して尿を採取した。パラ
クワット20mg/kg(570mgおよび116μgのC14−PQ−51.
5μCi)の静脈内投与料を5分間かけて投与した。尿試料
を毎時間採取し、容積を記録すると共に1部を用いて放
射能を測定した。血液試料を30分間毎に採取し、血漿を
分離して計数した。パラクワットを投与してから2時間
後、33ml/kg(1180ml)の腹膜透析溶液(デキストロース
溶液の代りに浸透剤として英国特許公開第2132914A号
の実施例5に示されたグルコースポリマーの混合物10重
量%を含有する以外は慣用の組成による)をカテーテル
により腹膜中に導入した。透析液の試料を2時間にわた
り所定間隔で採取した。腹膜透析液を導入してから2時
間後、カテーテルを外して実験を止めた。
結果 この実験は予定通り完了した。しかしながら、パラクワ
ットの静脈内投与は、予想通り2時間以内に腎不全を誘
発させなかった。パラクワットの腎臓除去は低下しなか
った(第2表)。明らかに、腎不全を発生させるにはよ
り長時間にわたる大量投与が必要とされるであろう。し
かしながら、この実験は明らかに、パラクワットが容易
に血液から腹膜内の透析液中に移動することを示してい
る(第2表)。腹膜内におけるパラクワットの濃度の上
昇速度は、最初に急速であって、血漿濃度に対する平衡
の半分が40分間以内で達成された。他の犬を用いる他の
試験においても同様な結果が得られた。血漿濃度に対す
る平衡の半分が腎不全を有する中毒患者において、40分
間以内に達成され、かつ全部で4の液体を40分間〜1
時間の間隔で液体を交換することにより腹膜中に導入す
ると仮定すれば、毎分2000/40ml、すなわち50ml/minの
パラクワット除去が達成されたことになる。これは中毒
患者における腎臓除去よりもずっと大であり、血液透析
または血液潅流で得られる数値(60〜100ml/min)に匹
敵する。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】グルコースポリマー混合物よりなる浸透剤
    を含有し、前記混合物が12より大きいD.P.のグルコース
    ポリマーを50重量%より多く含有することを特徴とする
    腹膜透析用組成物。
  2. 【請求項2】混合物が12より大きいD.P.のグルコースポ
    リマーを50〜90重量%含有する特許請求の範囲第1項記
    載の組成物。
  3. 【請求項3】混合物が12より大きいD.P.のグルコースポ
    リマーを75〜100重量%含有する特許請求の範囲第1項
    記載の組成物。
  4. 【請求項4】混合物が12より大きいD.P.のグルコースポ
    リマーを90〜100重量%含有する特許請求の範囲第3項
    記載の組成物。
  5. 【請求項5】混合物が2〜10のD.P.のグルコースポリマ
    ーを10重量%以下含有する特許請求の範囲第1項乃至第
    4項のいずれかに記載の組成物。
  6. 【請求項6】混合物が0.0〜3.0%のグルコースを含有す
    る特許請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかに記載の
    組成物。
  7. 【請求項7】2〜10w/v%のグルコースポリマー混合
    物を含有する腹膜透析溶液の形態の特許請求の範囲第1
    項乃至第6項のいずれかに記載の組成物。
  8. 【請求項8】溶液が2〜4w/v%のグルコースポリマー
    混合物を含有する特許請求の範囲第7項記載の組成物。
  9. 【請求項9】グルコースポリマー混合物が澱粉加水分解
    物から得られる特許請求の範囲第1項乃至第8項のいず
    れかに記載の組成物。
  10. 【請求項10】ポリマー混合物の平均分子量が15,000〜
    25,000である特許請求の範囲第1項乃至第9項のいずれ
    かに記載の組成物。
  11. 【請求項11】平均分子量が18,000〜22,000である特許
    請求の範囲第10項記載の組成物。
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