JPH0651294A - 液晶素子およびその製造方法 - Google Patents

液晶素子およびその製造方法

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JPH0651294A
JPH0651294A JP22455692A JP22455692A JPH0651294A JP H0651294 A JPH0651294 A JP H0651294A JP 22455692 A JP22455692 A JP 22455692A JP 22455692 A JP22455692 A JP 22455692A JP H0651294 A JPH0651294 A JP H0651294A
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JP
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liquid crystal
porous material
network polymer
crystal element
film
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JP22455692A
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English (en)
Inventor
Toshiichi Onishi
敏一 大西
Kazuo Yoshinaga
和夫 吉永
Masao Sugata
正夫 菅田
Ryoji Fujiwara
良治 藤原
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Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 電圧−透過率特性のヒステリシスが小さく、
階調表示が可能な液晶素子及びその製造方法を提供す
る。 【構成】 電極を有する1対の基板間にネットワークポ
リマーから成る多孔質材料と低分子液晶化合物を有する
液晶素子を、ネットワークポリマーの表面を削除した多
孔質材料を1対の基板間に挾持し、該基板間に低分子液
晶化合物を注入し、さらにネットワークポリマーの表面
を低分子液晶化合物に対して非相溶とする表面処理を施
し、しかも処理された層厚が0.2μm以下になるよう
に表面処理を施した多孔質材料を1対の基板間に挾持
し、多孔質材料挾持した基板間に該低分子液晶化合物を
注入して製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明の第一の発明および第二の
発明は、透過光と散乱光を用いる電気光学表示用の液晶
素子およびその製造方法に関し、特に連続気孔を有する
フィルム状多孔質材料と低分子液晶化合物からなるもの
を用いた表示用の液晶素子およびその製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】
○本発明の第一及び第2の発明の従来の技術 液晶は、過去に種々の熱光学および電気光学ディスプレ
イ等の用途に用いられてきた。これらのディスプレイ
は、駆動電圧が低く、消費エネルギーも少ないために現
在もなお活発に研究が進められている。
【0003】従来の液晶素子としては、例えばエム・シ
ャット(M.Schadt)とダブリュー・ヘルフリッ
ヒ(W.Helfrich)著“アプライド・フィジッ
クス・レターズ”(“Applied Physics
Letters”)第18巻、第4号(1971年2
月15日発行)第127頁〜128頁の“ボルテージ・
ディペンダント・オプティカル・アクティビィティー・
オブ・ア・ツイステッド・ネマチック・リキッド・クリ
スタル”(“Voltage Dependent O
ptical Activity of a Twis
ted Nematic liquid Crysta
l”)に示されたツイステッド・ネマチック(twis
ted nematic)液晶を用いたものが知られて
いる。このTN液晶は画素密度を高くしたマトリクス電極
構造を用いた時分割駆動の時、クロストークを発生する
問題点があるため、画素数が制限されていた。
【0004】また、電界応答が遅く視野角特性が悪いた
めにディスプレイとしての用途は限定されていた。ま
た、各画素に薄膜トランジスタを形成する工程が極めて
煩雑な上、大面積の表示素子を作成することが難しい問
題点がある。
【0005】この様な従来型の液晶素子の欠点を改善す
るものとして、双安定性を有する液晶素子の使用が、ク
ラーク(Clark)およびラガウェル(Lagerw
all)により提案されている(特開昭56−1072
16号公報、米国特許第4367924号明細書等)。
双安定性を有する液晶としては、一般にカイラルスメク
ティックC相(Sm* C)またはH相(Sm* H)を有
する強誘電性液晶が用いられる。
【0006】この強誘電性液晶(FLC)は、自発分極
を有するために非常に速い応答速度を有する上に、メモ
リー性のある双安定状態を発現させることができる。さ
らに、視野角特性もすぐれていることから、大容量、大
面積のディスプレイ用材料として適していると考えられ
る。しかし、実際に液晶セルを形成する場合、広い面積
にわたってモノドメイン化することは困難であり、大画
面の表示素子を作るには技術上の問題があった。
【0007】近年、液晶素子を容易に作成し大型化する
試みが行なわれている。その1つとして、低分子液晶化
合物を種々の重合体マトリックス中に保持して用いるも
のがある。その具体例として、低分子液晶化合物をポリ
ビニルアルコールマトリックス中にカプセル化して用い
るものとしてマンチェスターR&Dパートナーシップに
より出願されたものが知られている。(米国特許第44
35047号)また、連結した管状に低分子液晶化合物
を保持したものとして米国特許第4707080号が知
られている。
【0008】また、多孔質ポリマーフィルム中に低分子
液晶化合物を含浸させて用いるものもあり、例えば特開
昭61−167922号公報、米国特許第441149
5号が知られている。
【0009】前者の低分子液晶化合物を種々の重合体マ
トリックス中に保持して用いるものは、重合体マトリッ
クスと低分子液晶化合物の界面が素子化する時に形成さ
れ、かつ例えばラビング処理したポリイミド配向膜のよ
うな、明確な界面規制力が付与されないために、不安定
化しやすい問題があった。その結果、駆動電圧を印加し
た場合に、昇圧と降圧で光透過率にヒステリシスが観測
され、TV等の階調表示が必要な場合に、画質,コント
ラスト等が劣化する問題点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
○本発明の第一の発明が解決しようとする課題 しかしながら、ネットワークポリマーが3次元ネットワ
ークを形成している多孔質材料を用いた液晶素子では、
液晶の電界応答による液晶分子の運動により、ネットワ
ークポリマー、特に径の細いポリマーや一端が自由端と
なったポリマーを動かすために、液晶素子の電圧−透過
率特性にヒステリシスが生じ、階調表示が難しいという
欠点があった。
【0011】また、液晶素子の透過率や駆動電圧を最適
化するために、多孔質材料の孔径(又は、逆に言えばネ
ットワークポリマー径)の最適化が必要とされるが、多
孔質材料の最適化が難しく、例えば、微小な孔径や径の
小さいネットワークポリマーが混在してしまうという欠
点があった。
【0012】本発明は、この様な従来技術の欠点を改善
するためになされたものであり、液晶素子の液晶の電界
応答に伴って動きやすい微細なネットワークポリマーを
減少させ、電圧−透過率特性でのヒステリシスが小さ
く、階調表示が可能な液晶素子及びその製造方法を提供
することを目的とするものである。
【0013】 ○本発明の第二の発明が解決しようとする課題 しかしながら、多孔質フィルムを用いた場合、特に低分
子液晶化合物と多孔質フィルムを形成する高分子材料が
相溶性を有し、膨潤さらには溶解する際は、液晶素子を
駆動すると、電圧−透過率特性にヒステリシスが生じ、
階調表示ができないという問題点があった。
【0014】本発明は、この様な従来技術の欠点を改善
するためになされたものであり、電極を有する1対の基
板間にネットワークポリマーから成る多孔質材料と低分
子液晶化合物を有する液晶素子において、少なくともネ
ットワークポリマーの表面を表面処理して低分子液晶化
合物と非相溶とすることにより、液晶素子の印加電圧−
透過率特性のヒステリスシを小さくすることができ、階
調表示が可能な液晶素子を提供するものである。
【0015】また、プラズマ重合処理等ネットワークポ
リマーの表面処理の工程を有する液晶素子の製造方法を
提供し、多孔質材料に対する効果的な表面処理を行なう
ことを可能とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
○本発明の第一の発明の課題を解決するための手段 即ち、本発明の第一の発明は、電極を有する1対の基板
間にネットワークポリマーから成る多孔質材料と低分子
液晶化合物を有する液晶素子において、ネットワークポ
リマーの一部がエッチング処理により削除されているこ
とを特徴とする液晶素子である。
【0017】また、本発明の第一の発明は、電極を有す
る1対の基板間にネットワークポリマーからなる多孔質
材料と低分子液晶化合物を有する液晶素子の製造方法に
おいて、該ネットワークポリマーの表面を削除する工程
と、該削除処理された多孔質材料を該電極を有する1対
の基板間に挾持る工程と、該基板間に該低分子液晶化合
物を注入する工程から成ることを特徴とする液晶素子の
製造方法である。
【0018】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、電極を有する1対の基板間にネットワークポリマー
から成る多孔質材料と低分子液晶化合物有する液晶素子
及びその製造方法において、多孔質材料の径の小さいネ
ットワークポリマーを削除する削除処理工程をドライエ
ッチング等の手法により行なうことにより、液晶素子と
した際に液晶の応答に伴って動きやすい微細なネットワ
ークポリマーが減少するために、電圧−透過率特性での
ヒステリシスが小さく、階調表示を可能とするものであ
る。
【0019】次に、図面を用いて本発明について更に詳
しく説明する。図1は本発明の液晶素子の一例を示す断
面図である。同図において、基板101,101′はガ
ラス,プラスチック等を用いることができる。基板とし
て用いることができるポリマーフィルムには、下記に示
すようなものが挙げられるが、これらに限定されるもの
ではない。
【0020】すなわち、低密度ポリエチレンフィルム、
高密度ポリエチレンフィルム(三井東圧化学 ハイブロ
ン等)、ポリプロピレンフィルム(東レ トレファン
等)、ポリエステルフィルム(デュポン マイラー
等)、ポリビニルアルコールフィルム(日本合成化学工
業 ハイセロン等)、ポリアミドフィルム(東洋合成フ
ィルム レイファン等)、ポリカーボネートフィルム
(帝人 テイジンパンライト等)、ポリイミドフィルム
(デュポン KAPTON等)、ポリ塩化ビニルフィルム(三
菱樹脂 ヒシレックス等)、ポリ四ふっ化エチレンフィ
ルム(三井フロロケミカル テフロン等)、ポリアクリ
ルフィルム(住友ベークライト スミライト)、ポリス
チレンフィルム(旭ダウ スタイロシート)、ポリ塩化
ビニリデンフィルム(旭ダウ サランフィルム)、セル
ロースフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム(デュポン
テドラー)等が挙げられる。
【0021】基板上には、電極102,102′を形成
するが、該電極には、ITO,SnO2 等の透明電極や
Al,Au,Ag,Cu,Cr等の金属膜が用いられ
る。なお、反射型表示素子としては、電極と反射層を兼
ねていてもよい。
【0022】更に、電極の上に表示層103を形成する
が、表示層103を形成するには、接着層106を介す
るか、もしくは直接に連続気孔を有するフィルム状多孔
質材料104を積層し、その後に低分子液晶化合物10
5を含浸させることによって行なうことができる。
【0023】用いられる表示層の厚みは、通常0.5〜
100μmであり、0.5μm未満ではコントラストが
十分でなく、100μmを越えると駆動電圧が大きいた
めに高速駆動が困難となる。より好ましくは、1〜50
μmの厚さが用いられる。
【0024】本発明の液晶素子においては、表示層10
3には連続気孔を有するフィルム状多孔質材料104に
低分子液晶化合物105を含浸させてなる表示材料が用
いられる。このとき、表示層においては、フィルム状多
孔質材料は連続したマトリックスを形成し、低分子液晶
化合物は島状もしくは管状となり分散している。島もし
くは管の径は、0.1〜10μmが好ましい。島もしく
は管の径が0.1〜10μmの範囲以外の場合では、散
乱効率が悪く十分なコントラストが得られない。より好
ましくは、0.5〜5μmで用いられる。
【0025】本発明におけるフィルム状多孔質材料とし
ては、好ましいものとして高分子化合物が用いられ、フ
ィルム状に成形が容易で強度も高いことから実用上有用
である。本発明で用いることができるフィルム状多孔質
材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0026】ポリ[(1−クロロジフルオロメチル)−
2−クロロ−1,2,2−トリフルオロエチルアクリレ
ート] ポリ(1−クロロジフルオロメチルアクリレート) ポリ(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブ
チルアクリレート) ポリ(パーフルオロイソブチルアクリレート) ポリ[2−(N−プロピル−N−ヘプタデカフルオロオ
クチルスルホニル)アミノエチルアクリレート] ポリ(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,
7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルアクリレ
ート) ポリ(1−トリフルオロメチルテトラフルオロエチルア
クリレート)
【0027】ポリ[2−(2−トリフルオロメチル)テ
トラフルオロエトキシ)エチルアクリレート] ポリ[5−((1−トリフルオロメチル)テトラフルオ
ロエトキシ)ペンチルアクリレート] ポリ[11−((1−トリフルオロメチル)テトラフル
オロエトキシ)ウンデシルアクリレート] ポリ[(1−トリフルオロメチル)−2,2,2−トリ
フルオロエチルアクリレート] ポリ(パーフルオロ−ターシャリーブチルメタクリレー
ト) ポリ[1−(クロロジフルオロメチル)テトラフルオロ
エチルメタクリレート] ポリ(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,
7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルメタクリ
レート)
【0028】ポリ(2,2,3,3−テトラフルオロプ
ロピルメタクリレート) ポリ(1−トリフルオロメチルテトラフルオロエチルメ
タクリレート) ポリ(1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフル
オロエチルメタクリレート) ポリ[(1−トリフルオロメチル)テトラフルオロエト
キシエチレン] ポリ[(1−トリフルオロメチル)テトラフルオロエト
キシメチルエチレン] ポリ[(1−トリフルオロメチル)テトラフルオロエト
キシメチル−1−メチルエチレン−コ−マレイックアシ
ド] ポリ(ヘプタフルオロプロピルエチレン)
【0029】ポリ(テトラフルオロエチレン) ポリ(トリフルオロエチレン) ポリ(トリフルオロメチルエチレン) ポリ(トリフルオロメチルエチレン−コ−テトタフルオ
ロエチレン) ポリ(トリフルオロメチルトリフルオロエチレン) ポリ(ビニリデンフルオライド) ポリ[オキシ−1,2−ビス(パーフルオロイソブトキ
シメチル)−エチレン]
【0030】ポリ[オキシ−1−(3,5−ビス(トリ
フルオロメチル)フェニル)−1−トリフルオロエトキ
シメチルエチレン] ポリ(オキシ−1−ペンタフルオロフェニル−1−トリ
フルオロメチルトリフルオロエトキシメチルエチレン) ポリ(オキシ−1−フェニル−1−トリフルオロメチル
(トリフルオロエトキシメチルエチレン)) ポリ(オキシ−3−トリフルオロメチルフェノキシメチ
ルエチレン) ポリ[オキシ−1−(3−トリフルオロメチル)フェニ
ル−1−トリフルオロメチルトリフルオロエトキシメチ
ルエチレン] ポリ[(1トリフルオロメチルテトラフルオロエトキシ
メチル)エチレン−コ−マレイックアンハイドライド] ポリ[1−(1−トリフルオロメチルテトラフルオロエ
トキシメチル)−1−メチレン−コ−マレイックアンハ
イドライド]
【0031】ポリ(ジメチルシロキサン) 3−フルオロプロピルトリメトキシシランからのポリマ
ー 3−(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,
7,8,8,8−ペンタデカフルオロオキシ)プロピル
トリエトキシシランからのポリマー (3−(1−トリフルオロメチル)テトラフルオロエト
キシ)プロピルトリクロロシランからのポリマー (3−(1−トリフルオロメチル)テトラフルオロエト
キシ)プロピルトリメトキシシランからのポリマー
【0032】ポリ[(ドデカノニルイミノ)エチレン] ポリ[(ヘプタノニルイミノ)エチレン] ポリ[(ヘクサノニルイミノ)エチレン] ポリ[(オクタデカノニルイミノ)エチレン] ポリ[(12,12,13,13,14,14,15,
15,16,16,17,17,18,18,18−ペ
ンタデカフルオロオクタデカノニルイミノ)エチレン] ポリ[(ペンタノニルイミノ)エチレン]
【0033】旭化成工業(株):ハイポア 1000,
2000,3000,4000、 三菱化成工業(株):KT−50,LE−85,デュラ
カード,エクセポール、 積水化学工業(株):セルポア、 等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】本発明において、連続気孔を有するフィル
ム状多孔質材料は非相溶の低分子液晶化合物と組み合わ
せて用いられるが、連続気孔を有するフィルム状多孔質
材料は連続してマトリックスを形成していればよい。用
いられる連続気孔を有するフィルム状多孔質材料の割合
は、通常5〜70wt%で用いられる。5wt%未満で
はマトリックスの効果が減少し低分子液晶化合物を十分
に配向制御させることが困難であり、70wt%を越え
ると低分子液晶化合物による屈折率変化の割合が減少し
てコントラストが十分にはとれなくなるために好ましく
ない。より好ましくは、連続気孔を有するフィルム状多
孔質材料の割合は10〜50wt%で用いられる。
【0035】次に、具体的に用いられる低分子液晶化合
物の構造および低分子液晶化合物組成物の名称を以下に
示すが、これに限定されるものではない。
【0036】
【化1】
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】本発明において、無電界状態では、多孔質
フィルム中に含浸された低分子液晶化合物は無配向の状
態となり、その結果良好な散乱状態を実現できる。この
状態のものへ電界を印加すると、低分子液晶は基板に対
して一様に配向し透明な状態となる。さらに、電圧を除
去すると、再度散乱状態となる。
【0049】本発明で得られる液晶素子において、必要
に応じて(液晶相が室温より高い温度の時などの場合)
液晶素子の加熱を行なうことができる。加熱は、液晶素
子全体を面状ヒータ等で加熱することもできるが、以下
に述べるようにサーマールベットやレーザ光を用いて加
熱することができる。
【0050】レーザー光としては、He−Neガスレー
ザー,Ar2+ガスレーザー,N2 ガスレーザー等のガス
レーザーや、ルビーレーザー,ガラスレーザー,YAG
レーザー等の固体レーザーや、半導体レーザー等を用い
ることが望ましい。また、600nm〜1600nmの
波長範囲の半導体レーザーが好ましく用いられる。特に
好ましくは600〜900nmの波長範囲の半導体レー
ザーが用いられる。また、これらのレーザー光の第2高
調波、第3高調波を用いれば短波長化が可能となる。
【0051】レーザー光を用いる場合は、光吸収層を別
途設けるか、もしくは表示層中にレーザー光吸収化合物
を分散・溶解して用いられる。表示面に光吸収層もしく
は光吸収化合物の影響が出る場合は、可視光域に吸収の
ないものが望ましい。
【0052】表示層へ添加するレーザー光吸収化合物の
例としては、アゾ系化合物、ビスアゾ系化合物、トリス
アゾ系化合物、アンスラキノン系化合物、ナフトキノン
系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン
系化合物、テトラベンゾポルフィリン系化合物、アミニ
ウム塩系化合物、ジイモニウム塩系化合物、金属キレー
ト系化合物等がある。
【0053】前記のレーザー光吸収化合物のうち半導体
レーザー用化合物は近赤外域に吸収をもち、安定な光吸
収色素として有用であり、かつフィルム状多孔質材料に
対して相溶性もしくは分散性がよい。フィルム状多孔質
材料中に混合すれば、熱的に安定な表示媒体を得ること
もできる。また、フィルム状多孔質材料中には上記の化
合物が二種類以上含有されていてもよい。
【0054】また、上記化合物と他の近赤外吸収色素や
2色性色素を組み合せてもよい。好適に組み合せられる
近赤外吸収色素の代表的な例としては、シアニン、メロ
シアニン、フタロシアニン、テトラヒドロコリン、ジオ
キサジン、アントラキノン、トリフェノジチアジン、キ
サンテン、トリフェニルメタン、ピリリウム、クロコニ
ウム、アズレンおよびトリフェニルアミン等の色素が挙
げられる。
【0055】なお、フィルム状多孔質材料に対する上記
化合物の添加量は重量%で、0.1〜20%程度、好ま
しくは、0.5〜10%がよい。
【0056】また本発明で得られる液晶素子において、
カラー表示を行なうために、カラー表示用色素を添加し
ても良い。
【0057】カラー表示用色素としては、従来公知の色
素を用いることができるが、アンスラキノン系、ナフト
キノン系等の液晶用2色性色素を好ましく用いることが
できる。
【0058】これらの色素の添加に関しては、液晶中に
添加しても良くフィルム状多孔質材料中でも良い。また
これらの色素は単独で用いても、混合して用いることも
可能である。
【0059】本発明では、ネットワークポリマーから成
る多孔質材料を処理し、径の細いネットワークポリマー
や一端が自由端となったネットワークポリマーを除去す
る必要がある。除去の方法としては、例えばドライエッ
チングの手法が可能である。
【0060】ドライエッチングとしては、反応性ガスエ
ッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチン
グ(RIE)、反応性イオンビームエッチング(RIB
E)、イオンビームエッチング(不活性ガス)、反応性
レーザービームエッチング等が挙げられる。また、放射
線照射による酸化分解も可能である。
【0061】本発明では、多孔質材料の中の径の小さい
ネットワークポリマーを削除することを特徴としてい
る。径の小さいネットワークポリマーが存在すると低分
子液晶化合物が電界により動く際に、径の小さいネット
ワークポリマーもより安定な状態へ動く。従って、低分
子液晶化合物の動きよりもネットワークポリマーの動き
が遅いために、液晶素子の電圧−透過率特性にヒステリ
シスが生じると考えられる。
【0062】本発明では、多孔質材料を形成するネット
ワークポリマーのうち、径の細いポリマーや一端が自由
端となったポリマーを選択的に除去することが望まし
い。
【0063】また、均一にネットワークポリマーを細く
する場合でも、例えば、ネットワークポリマー径の分布
が図2(a)に示したような不均一な分布の場合には、
処理後径の数平均値か大きくなった図2(b)のような
分布となり、実質上、液晶の電界応答の際に動きやすい
ポリマーを除去したことになり効果がある。また、同時
に気孔率も向上するため、液晶素子の駆動電圧が低くな
るという効果がある。
【0064】一般に、除去されるべきポリマー径として
は、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下で
ある。
【0065】ネットワークポリマーを削除する割合とし
ては、以下に定義する削除率(エッチング処理による多
孔質材料の重量変化率)で0.05%〜30%である。
【0066】
【数1】 A:削除前の多孔質材料の重量 ΔA:削除前後の多孔質材料の重量差
【0067】 ○本発明の第二の発明の課題を解決するための手段 即ち、本発明の第二の発明は、電極を有する1対の基板
間に、ネットワークポリマーから成る多孔質材料と低分
子液晶化合物を有する液晶素子において、少なくとも該
ネットワークポリマーの表面が該低分子液晶化合物に対
して非相溶とする表面処理が施されており、しかも該表
面処理された層厚が0.2μm以下であることを特徴と
する液晶素子である。
【0068】また、本発明の第二の発明は、電極を有す
る1対の基板間にネットワークポリマーから成る多孔質
材料と低分子液晶化合物を有する液晶素子の製造方法に
おいて、該ネットワークポリマーの表面を低分子液晶化
合物に対して非相溶とする表面処理を施し、しかも処理
された層厚が0.2μm以下である表面処理工程と、該
表面処理を施した多孔質材料を1対の基板間に挾持する
工程と、該多孔質材料を挾持した基板間に該低分子液晶
化合物を注入する工程からなることを特徴とする液晶素
子の製造方法である。
【0069】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
よれば、電極を有する1対の基板間にネットワークポリ
マーから成る多孔質材料と低分子液晶化合物を有する液
晶素子において、少なくともネットワークポリマーの表
面を表面処理により、低分子液晶化合物と非相溶とする
ことにより、液晶素子の印加電圧−透過率特性のヒステ
リスシを小さくすることができ、階調表示が可能な液晶
素子を提供するものである。また、プラズマ重合処理等
ネットワークポリマーの表面処理の工程を有する液晶素
子の製造方法を提供し、多孔質材料に対する効果的な表
面処理を行なうことを可能としたものである。
【0070】次に、図面を用いて本発明について更に詳
しく説明する。図1は本発明の液晶素子の一例を示す断
面図である。同図において、基板101,101′はガ
ラス,プラスチック等を用いることができる。基板とし
て用いることができるポリマーフィルムには、下記に示
すようなものが挙げられるが、これらに限定されるもの
ではない。
【0071】すなわち、低密度ポリエチレンフィルム、
高密度ポリエチレンフィルム(三井東圧化学 ハイブロ
ン等)、ポリプロピレンフィルム(東レ トレファン
等)、ポリエステルフィルム(デュポン マイラー
等)、ポリビニルアルコールフィルム(日本合成化学工
業 ハイセロン等)、ポリアミドフィルム(東洋合成フ
ィルム レイファン等)、ポリカーボネートフィルム
(帝人 テイジンパンライト等)、ポリイミドフィルム
(デュポン KAPTON等)、ポリ塩化ビニルフィルム(三
菱樹脂 ヒシレックス等)、ポリ四ふっ化エチレンフィ
ルム(三井フロロケミカル テフロン等)、ポリアクリ
ルフィルム(住友ベークライト スミライト)、ポリス
チレンフィルム(旭ダウ スタイロシート)、ポリ塩化
ビニリデンフィルム(旭ダウ サランフィルム)、セル
ロースフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム(デュポン
テドラー)等が挙げられる。
【0072】基板上には、電極102,102′を形成
するが、該電極には、ITO,SnO2 等の透明電極や
Al,Au,Ag,Cu,Cr等の金属膜が用いられ
る。なお、反射型表示素子としては、電極と反射層を兼
ねていてもよい。
【0073】更に、電極の上に表示層103を形成する
が、表示層103を形成するには、接着層106を介す
るか、もしくは直接に連続気孔を有するフィルム状多孔
質材料104を積層し、その後に低分子液晶化合物10
5を含浸させることによって行なうことができる。
【0074】用いられる表示層の厚みは、通常0.5〜
100μmであり、0.5μm未満ではコントラストが
十分でなく、100μmを越えると駆動電圧が大きいた
めに高速駆動が困難となる。より好ましくは、1〜50
μmの厚さが用いられる。
【0075】本発明の液晶素子においては、表示層10
3には連続気孔を有するフィルム状多孔質材料104に
低分子液晶化合物105を含浸させてなる表示材料が用
いられる。このとき、表示層においては、フィルム状多
孔質材料はネットワーク性(又は繊維性)ポリマーから
なり連続したマトリックスを形成し、低分子液晶化合物
は島状もしくは管状となり分散している。島もしくは管
の径は、0.1〜10μmが好ましい。島もしくは管の
径が0.1〜10μmの範囲以外の場合では、散乱効率
が悪く十分なコントラストが得られない。より好ましく
は、0.5〜5μmで用いられる。
【0076】本発明におけるフィルム状多孔質材料とし
ては、好ましいものとして高分子化合物が用いられ、フ
ィルム状に成形が容易で強度も高いことから実用上有用
である。
【0077】フィルム状多孔質材料に用いることができ
る高分子化合物としては、特に限定はなく、ポリオレフ
ィン系、セルロース系材料やポリビニルアルコール、ポ
リカーボネート、PMMA等が挙げられる。本発明で
は、これらの多孔質材料が含浸される液晶と相溶する場
合に特に有効であり、相溶、非相溶は用いられる液晶と
多孔質材料の組合わせにより決定する。従って、用いる
ことのできる多孔質材料の種類が大幅に増加する。
【0078】本発明において、連続気孔を有するフィル
ム状多孔質材料は相溶の低分子液晶化合物と組み合わせ
て用いられるが、連続気孔を有するフィルム状多孔質材
料は連続してマトリックスを形成していればよい。用い
られる連続気孔を有するフィルム状多孔質材料の割合
は、通常5〜70wt%で用いられる。5wt%未満で
はマトリックスの効果が減少し低分子液晶化合物を十分
に配向制御させることが困難であり、70wt%を越え
ると低分子液晶化合物による屈折率変化の割合が減少し
てコントラストが十分にはとれなくなるために好ましく
ない。より好ましくは、連続気孔を有するフィルム状多
孔質材料の割合は10〜50wt%で用いられる。
【0079】ここで、高分子材料である多孔質材料と低
分子液晶化合物の相溶、非相溶は溶解パラメータδ(c
al/cm31/2 で関係づけられる。各種材料の溶解
パラメータδは
【0080】
【数2】 ただし、Ev:モル蒸発エネルギー(cal/mol) v:モル体積(cm3 /mol) で示され、以下の文献にその値が示されている。[ポリ
マー ハンドブック(Polymer Handboo
k),3rdEd.p VII 519、WILEY
INTERSCIENCE、向井,金城著「実学高分
子」p66、講談社サイエンティフィク発行参照]
【0081】2種の材料の相溶、非相溶は、それぞれの
溶解パラメータの値が近いと相溶であり、大きく異なる
と非相溶となっている。本発明では、低分子液晶化合物
と非相溶となるための多孔質材料の表面の溶解パラメー
タの範囲としては、13(cal/cm31/2 以上8
(cal/cm31/2 以下が好ましい。
【0082】多孔質材料表面の溶解パラメータが、8
(cal/cm31/2 より大きく13(cal/cm
31/2 より小さいと低分子液晶化合物と相溶しやすく
なる。また、20(MJ/m31/2 より非常に大きな
値(水の値23.4(cal/cm31/2 程度)であ
ると、液晶素子の耐湿性が悪くなるので、さらに好まし
くは8(cal/cm31/2 以下が良い。
【0083】以上より、多孔質材料の表面の溶解パラメ
ータを13(cal/cm31/2以上8(cal/c
31/2 以下とするためには、多孔質材料を形成する
ネットワークポリマーの表面を表面処理することにより
達成される。表面処理により、ネットワークポリマーの
表面に、例えばフッ素系高分子材料(テフロン,フッ化
ビニリデン等)が形成されることが好ましい。表面処理
を行なう前の多孔質材料のネットワークポリマーの溶解
パラメータは8(cal/cm31/2 〜13(cal
/cm31/2 の範囲である。
【0084】次に、具体的に用いられる低分子液晶化合
物の構造および低分子液晶化合物組成物の名称を示す
と、上記の第一の発明におけるものと同様の
【化1】〜
【化12】の低分子液晶化合物が挙げられるが、これに
限定されるものではない。
【0085】本発明において、無電界状態では、多孔質
フィルム中に含浸された低分子液晶化合物は無配向の状
態となり、その結果良好な散乱状態を実現できる。この
状態のものへ電界を印加すると、低分子液晶は基板に対
して一様に配向し透明な状態となる。さらに、電圧を除
去すると、再度散乱状態となる。
【0086】本発明で得られる液晶素子において、必要
に応じて(液晶相が室温より高い温度の時などの場合)
液晶素子の加熱を行なうことができる。加熱は、液晶素
子全体を面状ヒータ等で加熱することもできるが、以下
に述べるようにサーマールヘッドやレーザ光を用いて加
熱することができる。
【0087】レーザー光としては、He−Neガスレー
ザー,Ar2+ガスレーザー,N2 ガスレーザー等のガス
レーザーや、ルビーレーザー,ガラスレーザー,YAG
レーザー等の固体レーザーや、半導体レーザー等を用い
ることが望ましい。また、600nm〜1600nmの
波長範囲の半導体レーザーが好ましく用いられる。特に
好ましくは600〜900nmの波長範囲の半導体レー
ザーが用いられる。また、これらのレーザー光の第2高
調波、第3高調波を用いれば短波長化が可能となる。
【0088】レーザー光を用いる場合は、光吸収層を別
途設けるか、もしくは表示層中にレーザー光吸収化合物
を分散・溶解して用いられる。表示面に光吸収層もしく
は光吸収化合物の影響が出る場合は、可視光域に吸収の
ないものが望ましい。
【0089】表示層へ添加するレーザー光吸収化合物の
例としては、アゾ系化合物、ビスアゾ系化合物、トリス
アゾ系化合物、アンスラキノン系化合物、ナフトキノン
系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン
系化合物、テトラベンゾポルフィリン系化合物、アミニ
ウム塩系化合物、ジイモニウム塩系化合物、金属キレー
ト系化合物等がある。
【0090】前記のレーザー光吸収化合物のうち半導体
レーザー用化合物は近赤外域に吸収をもち、安定な光吸
収色素として有用であり、かつフィルム状多孔質材料に
対して相溶性もしくは分散性がよい。フィルム状多孔質
材料中に混合すれば、熱的に安定な表示媒体を得ること
もできる。また、フィルム状多孔質材料中には上記の化
合物が二種類以上含有されていてもよい。
【0091】また、上記化合物と他の近赤外吸収色素や
2色性色素を組み合せてもよい。好適に組み合せられる
近赤外吸収色素の代表的な例としては、シアニン、メロ
シアニン、フタロシアニン、テトラヒドロコリン、ジオ
キサジン、アントラキノン、トリフェノジチアジン、キ
サンテン、トリフェニルメタン、ピリリウム、クロコニ
ウム、アズレンおよびトリフェニルアミン等の色素が挙
げられる。
【0092】なお、フィルム状多孔質材料に対する上記
化合物の添加量は重量%で、0.1〜20%程度、好ま
しくは、0.5〜10%がよい。
【0093】また本発明で得られる液晶素子において、
カラー表示を行なうために、カラー表示用色素を添加し
ても良い。カラー表示用色素としては、従来公知の色素
を用いることができるが、アンスラキノン系、ナフトキ
ノン系等の液晶用2色性色素を好ましく用いることがで
きる。これらの色素の添加に関しては、液晶中に添加し
ても良く、フィルム状多孔質材料中でも良い。またこれ
らの色素は単独で用いてもよく、混合して用いることも
可能である。
【0094】本発明は、多孔質材料が含浸される低分子
液晶化合物とが相溶性を示し、多孔質材料が膨潤又は溶
解する場合に、多孔質材料中の3次元ネットワークポリ
マーの表面を改質し、含浸される低分子液晶化合物と非
相溶とすることを特徴としている。このため表面改質の
方法としては、例えば、以下の手法が挙げられる。
【0095】カップリング剤(シラン系,チタン系,
クロム系など)や界面活性剤処理 表面に高分子膜等の不溶化膜を形成させる。 イ)モノマーをコーティング後に重合又はポリマーをコ
ーティングする方法 ロ)グラフト重合による方法 ハ)プラズマ重合による方法 表面に化学変化を起こし、反応層を形成する。 イ)UV,放射線照射 ロ)高分子非生成プラズマ処理(CASINGなど) ハ)蒸気処理法(フッ素ガス処理等)
【0096】本発明では、表面処理により、ポリマーネ
ットワークの表面を低分子液晶化合物に対して非相溶と
することを特徴としている。表面処理される層の厚みと
しては、0.2μm以下が好ましい。さらに好ましくは
0.1μm以下が良い。0.2μmを越えると多孔質材
料の気孔率の低下、液晶素子の誘電特性の変化が生じ、
液晶素子の光学特性(V−T特性)の変化が生じる。
【0097】さらに、溶解パラメータを13(cal/
cm31/2 とした際に層厚が0.2μmを越えると、
液晶素子の耐湿性が悪くなる。また、表面処理された層
厚の下限は、0.01μm以上であり、この値より小さ
いと低分子液晶に対する非相溶性の点で効果が小さい。
【0098】本発明では、多孔質材料の3次元ネットワ
ークポリマーの表面を含浸される液晶に対して、非相溶
とすることにより液晶素子として駆動させた時、電圧−
透過率特性にヒステリシスがなく、階調表示が良好に行
なえる。
【0099】多孔質材料と液晶とが相溶性を有する場
合、図8に示すように3次元ネットワークポリマーの表
面では、液晶とポリマーとが相溶した領域が形成される
と考えられる。このような相溶領域を有する液晶素子を
駆動させると電界印加時は、相溶領域の応答は、ポリマ
ーの粘性の影響を受け、その運動性が低下するため液晶
のみの領域よりも遅く、続いて電界を消失させた際の応
答も同様に液晶のみの領域よりも遅くなり、この応答の
差がV−T特性のヒステリシスとなって現れる(図9参
照)。従って、このような相溶領域が少ないとヒステリ
シスも小さくなる。
【0100】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。
【0101】○本発明の第一の発明の実施例 実施例1 多孔質ニトロセルロースフィルム(東洋ろ紙(株)、孔
径0.8μm、気孔率80%、150μm厚)を以下の
条件で図4の装置を用いて、プラズマエッチング処理を
行なった。
【0102】 導入ガス O2 圧力 0.1Torr 流量 100sccm 放電 RF 13.56MHz 100W 処理時間、温度 10分,35℃ プラズマ処理前後の多孔質フィルムの削除率は1%であ
った。次に、処理した多孔質フィルムを用い、以下のよ
うな手順で液晶セルを作成した。
【0103】20mm角、厚さ0.7mmのBK7ガラ
ス上の片面に透明電極としてITO膜を有する基板上
に、15mm角の上記の処理をした多孔質フィルムを配
置し、基板周辺部に液晶注入口を残してエポキシ接着剤
(ストラクトボンドXN−21F、三井東圧(株)製、
130μmシリカビーズ入り)を塗工し、前述と同様の
ガラス基板をITO電極が取出せるように積層し、エポ
キシ接着剤を硬化させて、図3(a),(b)に示す構
成の液晶セルを作成した。
【0104】次に、液晶セルの液晶注入口から低分子液
晶(ZLI2008 メルク社製、ネマチック液晶組成
物)を減圧注入した。その後、前述のエポキシ接着剤で
液晶注入口を封止した。このようにして得られた液晶素
子のITO電極間に電圧を印加し、電圧−透過率(V−
T)特性を測定したところ、ヒステリシス5%のV−T
特性が得られた。ただし、ヒステリシスは図5に基づき
以下のように定義する。
【0105】
【数3】 T:立上り時の変化率50%の透過率 ΔT:立上り時の変化率50%と同電圧における立下り
時の透過率の増加分 また、透過光量の測定は集光角4°とし、印加電圧は6
0Hz矩形波を用いた。
【0106】比較例1 実施例1で処理前の多孔質フィルムを用いた以外は実施
例1と同様に行ない液晶素子を得た。実施例1と同様に
測定したところ、V−T特性よりヒステリス50%が観
測された。
【0107】○本発明の第二の発明の実施例 実施例2 ニトロセルロースメンブランフィルター(東洋ろ紙
(株)、膜厚150μm、孔径0.8μm、気孔率80
%、溶解パラメータ10.6(cal/cm31/2
を図7に示した装置を用いて、以下の条件でプラズマ重
合処理を行ない、ニトロセルロースネットワークポリマ
ー表面にフッ素系高分子膜CFn (膜厚0.05μm、
溶解パラメータ6.3(cal/cm31/2 )を形成
させた。
【0108】 導入ガス (流量) CF4 (21sccm) H2 (14sccm) 圧力 0.03Torr 放電 RF 13.65MHz パワー
50W 処理時間、温度 30分、 35℃ 次に、表面処理されたニトロセルロースメンブランフィ
ルターを用い、以下のような手順で、液晶セルを作成し
た。
【0109】20mm角、厚さ0.7mmのBK7ガラ
ス上の片面に透明電極としてITO膜を有する基板上
に、15mm角の処理したニトロセルロースメンブラン
フィルターを配置し、基板周辺部に液晶注入口を残し
て、エポキシ接着剤(ストラクトボンド、XN−21
F、三井東圧(株)製、130μmシリカビーズ入れ)
を塗工し、前述と同様のガラス基板を、ITO電極が取
出せるように積層し、エポキシ接着剤を硬化させて、図
3(a),(b)に示す構成の液晶セルを作成した。
【0110】次に、液晶セルの液晶注入口から、低分子
液晶(TN−403、ロッシュ社製、ネマチック液晶組
成物)を減圧注入した。その後、前述のエポキシ接着剤
で液晶注入口を封止した。
【0111】このようにして、得られた液晶素子のIT
O電極間に電圧を印加し、電圧−透過率(V−T)特性
を測定したところ図6(a)のようになり、ヒステリシ
スの小さい(ヒステリシス 5%)V−T特性が得られ
た。ただし、ヒステリシスは図5に基づき以下のように
定義する。
【0112】
【数4】 T:立上り時の変化率50%の透過率 ΔT:立上り時の変化率50%と同電圧における立下り
時の透過率の増加分
【0113】また、透過光量の測定は集光角4°とし、
印加電圧は60Hz矩形波を用いた。また、表面処理さ
れたニトロセルロースメンブランフィルター(5mm×
5m)を1m1の低分子液晶TN−403に浸し、85
℃で3時間保つ溶解性テストを行なったが、変化が見ら
れなかった。
【0114】比較例2 実施例2で、ニトロセルロースメンブランフィルターの
表面処理を行なわなかった以外は実施例2と同様に行な
った。V−T特性は図6(b))のようになり、ヒステ
リシス50%であった。また、実施例2と同様の85
℃,3時間の溶解性テストにより、ニトロセルロースメ
ンブランフィルターは、膨潤し、一部が剥離した。
【0115】実施例3 ニトロセルロースメンブランフィルター(東洋ろ紙
(株)、膜厚125μm、孔径0.8μm、気孔率80
%、溶解パラメータ10.6(cal/cm31/2
をフロロコーティング溶液(フロラード FC−72
2、3M社製、樹脂固形分0.5%)に浸し、溶媒を除
去することにより、ニトロセルロースネットワークポリ
マー表面にフッ素系樹脂をコーティングし(膜厚0.1
μm、、溶解パラメータ6.7(cal/cm3
1/2 )、表面処理を行なった。
【0116】表面処理されたニトロセルロースメンブラ
ンフィルターを用い、実施例2と同様に液晶素子を作成
し、V−T特性を測定したところ、図6(c)のように
なり、ヒステリシスの小さい(ヒステリシス 8%)特
性が得られた。また、実施例2と同様の85℃,3時間
の溶解テストを行なったが、変化は見られなかった。
【0117】
【発明の効果】
○本発明の第一の発明の効果 以上説明したように、本発明の第一の発明によれば、液
晶素子の液晶の電界応答によって動かされる微細なネッ
トワークポリマーが少ないため、電圧−透過率特性のヒ
ステリシスが小さく、階調表示が可能となる効果があ
る。
【0118】また、多孔質材料のネットワークポリマー
の一部を削除する削除工程を有する液晶素子の製造方法
を用いることにより、液晶素子とした際、液晶の電界応
答によって動かされる微細なネットワークポリマーが少
ないため、電圧−透過率特性のヒステリシスが小さく、
階調表示が可能な液晶素子を容易に得ることができると
いう効果がある。
【0119】○本発明の第二の発明の効果 以上説明したように、本発明の第二の発明によれば、電
極を有する1対の基板間に繊維状ポリマーネットワーク
から成る多孔質材料と低分子液晶化合物を有する液晶素
子において、ネットワークポリマーの表面が表面処理さ
れ、低分子液晶化合物と非相溶とすることにより、V−
T特性のヒステリシスが小さい液晶素子となり、階調表
示が可能となるという効果がある。
【0120】また、表面処理の方法として、プラズマ処
理等を用いることにより、ヒステリシスの小さい液晶素
子が、本来の多孔質材料の種類に左右されることなく、
容易に得ることができるという効果がある。また、表面
処理された層厚を0.2μmより小さくすることによ
り、液晶素子の駆動、光学の安定性や耐環境性にも効果
がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶素子の構成の1例を示す説明図で
ある。
【図2】本発明の液晶素子の製造方法で繊維状ポリマー
の削除処理工程前後の繊維状ポリマー径の数分布を示す
説明図である。
【図3】本発明の実施例の液晶素子の構成図であり、図
3(a)は平面図、図3(b)はAA線断面図である。
【図4】本発明の実施例で用いたプラズマ処理装置の構
成図である。
【図5】ヒステリシス(%)の説明図である。
【図6】本発明の実施例2,3及び比較例2の液晶素子
の電圧−透過率(V−T)特性を示す図である。
【図7】本発明の実施例2で用いたプラズマ重合装置の
構成図である。
【図8】ヒステリシスのメカニズムの説明図である。
【図9】ヒステリシスのメカニズムの説明図である。
【符号の説明】
101,101′ 基板 102,102′ 透明電極 103 表示層 104 フィルム状多孔質材料 105 低分子液晶化合物 106 接着層 201 201′ ガラス基板 202 202′ ITO膜 203 封止接着剤 204 低分子液晶化合物 205 多孔質材料(ネットワークポリマー) 206 液晶注入口 301 試料 302 ベルジュア 303 加熱ヒータ 304 バルブ 305 ニードルバルブ 401 液晶分子 402 ポリマー分子
フロントページの続き (72)発明者 藤原 良治 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極を有する1対の基板間にネットワー
    クポリマーから成る多孔質材料と低分子液晶化合物を有
    する液晶素子において、ネットワークポリマーの一部が
    エッチング処理により削除されていることを特徴とする
    液晶素子。
  2. 【請求項2】 径が0.1μm以下のネットワークポリ
    マーが削除されている請求項1記載の液晶素子。
  3. 【請求項3】 前記エッチング処理がドライエッチング
    である請求項1記載の液晶素子。
  4. 【請求項4】 前記エッチング処理がプラズマ処理であ
    る請求項3記載の液晶素子。
  5. 【請求項5】 エッチング処理による多孔質材料の重量
    変化率(削除率)が0.05%〜30%である請求項1
    記載の液晶素子。
  6. 【請求項6】 電極を有する1対の基板間にネットワー
    クポリマーからなる多孔質材料と低分子液晶化合物を有
    する液晶素子の製造方法において、該ネットワークポリ
    マーの表面を削除する工程と、該削除処理された多孔質
    材料を該電極を有する1対の基板間に挾持る工程と、該
    基板間に該低分子液晶化合物を注入する工程から成るこ
    とを特徴とする液晶素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記削除工程を行なうことにより多孔質
    材料の重量変化率(削除率)が0.05%〜30%であ
    る請求項6記載の液晶素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記削除工程が径の小さいネットワーク
    ポリマーほど削除効率が高い請求項6記載の液晶素子の
    製造方法。
  9. 【請求項9】 前記削除処理工程がドライエッチングで
    ある請求項6記載の液晶素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記ドライエッチングがプラズマ処理
    である請求項9記載の液晶素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 電極を有する1対の基板間に、ネット
    ワークポリマーから成る多孔質材料と低分子液晶化合物
    を有する液晶素子において、少なくとも該ネットワーク
    ポリマーの表面が該低分子液晶化合物に対して非相溶と
    する表面処理が施されており、しかも該表面処理された
    層厚が0.2μm以下であることを特徴とする液晶素
    子。
  12. 【請求項12】 前記ネットワークポリマーの表面の溶
    解パラメータが13(cal/cm31/2 以上8(c
    al/cm31/2 以下である請求項10記載の液晶素
    子。
  13. 【請求項13】 電極を有する1対の基板間にネットワ
    ークポリマーから成る多孔質材料と低分子液晶化合物を
    有する液晶素子の製造方法において、該ネットワークポ
    リマーの表面を低分子液晶化合物に対して非相溶とする
    表面処理を施し、しかも処理された層厚が0.2μm以
    下である表面処理工程と、該表面処理を施した多孔質材
    料を1対の基板間に挾持する工程と、該多孔質材料を挾
    持した基板間に該低分子液晶化合物を注入する工程から
    なることを特徴とする液晶素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記表面処理工程により、ネットワー
    クポリマーの表面の溶解パラメータが13(cal/c
    31/2 以上8(cal/cm31/2 以下となる請
    求項13記載の液晶素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 表面処理を行なう前のネットワークポ
    リマーの溶解パラメータが8(cal/cm31/2
    13(cal/cm31/2 である請求項13記載の液
    晶素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記表面処理が、ネットワークポリマ
    ー表面に溶解パラメータが13(cal/cm31/2
    以上8(cal/cm31/2 以下の薄膜を形成する処
    理である請求項15記載の液晶素子の製造方法。
  17. 【請求項17】 該薄膜がプラズマ重合によって形成さ
    れる請求項16記載の液晶素子の製造方法。
  18. 【請求項18】 該薄膜が高分子膜である請求項15ま
    たは16記載の液晶素子の製造方法。
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JP22455692A Pending JPH0651294A (ja) 1992-08-03 1992-08-03 液晶素子およびその製造方法

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